タイトル: | 公開特許公報(A)_ファイトケミカルエキス抽出方法及び該方法によって得られるファイトケミカルエキス |
出願番号: | 2007047918 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | A23L 1/30,A23L 1/212,A23L 2/52,A61K 36/00,A61P 37/04,A61P 39/06,A61P 43/00,A61P 35/00 |
高橋 弘 JP 2008206479 公開特許公報(A) 20080911 2007047918 20070227 ファイトケミカルエキス抽出方法及び該方法によって得られるファイトケミカルエキス 高橋 弘 502405631 西田 研志 100139653 高橋 弘 A23L 1/30 20060101AFI20080815BHJP A23L 1/212 20060101ALI20080815BHJP A23L 2/52 20060101ALI20080815BHJP A61K 36/00 20060101ALI20080815BHJP A61P 37/04 20060101ALI20080815BHJP A61P 39/06 20060101ALI20080815BHJP A61P 43/00 20060101ALI20080815BHJP A61P 35/00 20060101ALI20080815BHJP JPA23L1/30 BA23L1/212 AA23L2/00 FA61K35/78 WA61P37/04A61P39/06A61P43/00 107A61P35/00 11 OL 14 4B016 4B017 4B018 4C088 4B016LC07 4B016LE04 4B016LG01 4B016LG05 4B016LK18 4B016LP01 4B016LP05 4B016LP11 4B017LC03 4B017LG01 4B017LG06 4B017LK23 4B017LP06 4B017LP14 4B017LP18 4B018MD52 4B018MD53 4B018ME06 4B018ME08 4B018ME14 4B018MF01 4B018MF04 4B018MF05 4B018MF07 4C088AB15 4C088AB19 4C088AB40 4C088AB85 4C088AC04 4C088AC05 4C088AC13 4C088BA08 4C088CA01 4C088CA02 4C088CA05 4C088CA11 4C088CA25 4C088MA07 4C088MA43 4C088MA52 4C088ZB02 4C088ZB09 4C088ZB22 4C088ZB26 4C088ZC37 本発明は、植物体細胞のセルロースを分解又は破壊して植物体からファイトケミカルエキスを抽出するファイトケミカルエキス抽出方法、該方法によって得られるファイトケミカルエキス、ファイトケミカル末及びファイトケミカルエキス末を含む飲食物に関する。 一般には「がん細胞」とは「増殖の制御を失って無制限に増殖する細胞」と考えられている。しかし、がんについての研究が進んで、最近分かってきたことは、「がん細胞」は単に「増殖する細胞」ではなくて、「増殖しても、死なない細胞」、すなわち、「細胞死、アポトーシスから逃れるメカニズムを獲得した細胞」が「がん」であるという事実である。従って、死なないメカニズムを持っている為、「がん」は色々な治療法に抵抗する。 私たちの体は、約60兆個の細胞でできている。そして、毎日約1兆個の細胞が死んで、同じ数の細胞が細胞分裂で新たに作られている。この1兆個の新しい細胞のうち、5000〜6000個ぐらい出来損ないの細胞が生まれ、これががん細胞になると考えられている。従って、私達の体の中には常に数多くの「がんの芽」が生まれているはずである。 しかし、多くの場合、私たちはがんを発病しない。これは何故かというと、私たち体の中にある「免疫細胞」が、次々とがん細胞を殺して、がんを「小さな芽」のうちに摘み取ってくれるからで、言い換えれば、私達の「免疫システム」が体のすみずみまでパトロールして、「がん細胞」を殺してくれるために、がんが発病しないということになる。 免疫細胞の種類には、大きく分けて、顆粒球、マクロファージの3種類がある。顆粒球というのは細胞の中に顆粒を持っていて、感染症などの時に細菌などの外敵を活性酸素で攻撃する。マクロファージは「貪食細胞」とも呼ばれ、進入してきた病原体をパクパク食べて処理する。また、リンパ球は特定の病原菌やがん細胞などに対して攻撃を仕掛ける特殊部隊といえる。これら、顆粒球、マクロファージ、リンパ球は白血球とも呼ばれ、血管やリンパ管を通って全身に移動して働いている。 がんになると色々な原因で免疫が低下することがはっきりした。疫学調査の結果から、がんの原因の1/3以上は食生活に由来すると考えられている。ところがその一方では、日常食べている野菜や果物などの植物性食品に、がんを予防する効果のある物質が含まれていることも明らかになっている。 アメリカでは、食べ物と健康の研究が進んでおり、デザイナーフーズ計画というがん予防のための国家プロジェクトが1990年にスタートした。これは、米国の国立がん研究所が「がんを食事により予防できるのではないか」という仮説を立てて開始したプロジェクトで、さまざまな分野の研究者が世界中から参画し、「どんな植物性食品ががんを予防する可能性が高いか」の選定を行ったものである。膨大な量の疫学調査のデータを収集し、がん予防に効果がある食品および食品成分約40種類をピックアップ、その重要度に合わせてピラミッド型の図(デザイナーフーズ・リスト)を作成した。 その結果、にんじん、キャベツ、セロリ、玉ネギなど日常の食生活において摂取される野菜類にがん予防の可能性があることが明らかとなった。また、一般的に、野菜は淡色野菜より緑黄色野菜の方が健康的と思われがちであるが、淡色野菜も強いがん予防効果を有することが示されている。更に、トップに位置する食品には、抗酸化作用のある成分が含まれ、活性酸素などによるDNA(遺伝子)の損傷を防いでがんを抑制することが明らかにされてきた。そして、この「デザイナーフーズ・リスト」にあげられた食品は、がん予防以外にも免疫力を高め、生活習慣病を防ぐ作用もある。デザイナーフーズのトップグループに掲げられたのは、緑黄色野菜ではなく、ニンニク、キャベツ、カンゾウ、ショウガ、セロリといった淡色野菜である。 「抗酸化作用」は分かりやすくいえば、酸化を抑えて体をサビつかせないようにする機能である。活性酸素の毒を無毒化する働きである。体内ではスーパーオキシドジスムターゼ、カタラーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼが活性酸素を無毒化しているが、抗酸化力は年齢とともに衰え、活性酸素が多く発生すると働きが追いつかなくなる。そこでファイトケミカルがその働きを強化すると考えられるのである。ファイトケミカルには活性酸素の害を無毒化するすぐれた抗酸化作用があり、活性酸素から体をガードしてくれる。ビタミン類にも抗酸化作用があるので、ファイトケミカルをビタミンと一緒に摂取すれば二重の守りとなる。 抗酸化作用を持つ「ファイトケミカル」には赤ワインに含まれることで知られるポリフェノール、クランベリーに含まれるプロアントシアニジン、お茶に含まれるカテキン、トマトに含まれるリコピンなどがあり、ビタミンC・Eなどの抗酸化ビタミンよりも強力な抗酸化作用があるといわれている。 また、「ファイトケミカル」は活性酸素を除去するとともに、免疫力を高めることもわかってきた。また、抗酸化作用や免疫力を高める作用により、がん予防に効果があることなどが発見されている。例えば、ファイトケミカルは、その白血球を構成する要素のひとつ、マクロファージを活性化することがわかり、また、ユリ科やアブラナ科の野菜に多く含まれるイオウ化合物(植物に含まれる色や香り、苦みの成分であるファイトケミカルの一種)は、免疫細胞を活性酸素から守るため注目を集めている。また、きのこ類のβ-グルカン、ニンニクやネギ類のイオウ化合物、キャベツなどのイソチオシアネート、バナナのオイゲノールなどは免疫細胞(=白血球、リンパ球)の数を増し、働きを活性化する。 このように、野菜・果物などの植物が産生するファイトケミカルは強力な抗酸化作用および抗がん作用を有することが知られているが、ファイトケミカルはセルロースでできた細胞膜の中に含まれているため消化できないという問題点があった。このため未だ、ファイトケミカルを摂取しやすいように調製された飲食物は存在しない。 たとえば、野菜又は果物を搾汁機により搾汁して得られた野菜又は果物ジュースを高圧処理して液状食品を製造する方法(特許文献1)、野菜又は果物ジュースを凍結乾燥する方法(特許文献2)、微粉砕した野菜を酵素処理した後、凍結乾燥して得られたフリーズドライ食品(特許文献3)は公知であるが、野菜又は果物からのファイトケミカルの抽出方法及びファイトケミカル含有食品については知られていない。特開平11−9242号公報特開2003−265150号公報特開2001−8614号公報 本発明は、これらのような問題を解決しようとするものであり、野菜・果物などの植物体から効率的にファイトケミカルを抽出し、ファイトケミカルエキス及びファイトケミカル末の製造を実現することを目的とするものである。 本発明者は、前記の目的を達成すべく鋭意研究の結果、野菜や果物などの植物体を裁断し、煮出し、凍結及び解凍し、酵素処理し又は超音波処理することにより植物体細胞のセルロースが分解又は破壊され、植物体中のファイトケミカルが水性媒体中に抽出されること、また、このようにして得られたファイトケミカルエキスを乾燥することによりファイトケミカル末が得られることを見い出し、本発明を完成するに至った。 すなわち、本発明は、植物体にセルロースを分解する酵素を添加する酵素処理又は植物体に超音波を浴びせる超音波処理を施して、植物体のセルロースを分解又は破壊することにより水性媒体中にファイトケミカルを抽出する抽出工程を含む、ファイトケミカル抽出方法を提供する。 また、本発明は、植物体を裁断する裁断工程と、該裁断工程で裁断された植物体を水性媒体中で煮る煮詰め工程と、該煮詰め工程で煮詰められた植物体を水性媒体の存在下凍結する凍結工程と、該凍結工程で凍結された植物体を解凍する解凍工程とを有するファイトケミカル抽出方法を提供する。 植物体を水性媒体の存在下凍結することにより、水分が凍るとき植物体の細胞内部および細胞膜に無数の氷の結晶が出来るので、溶ける際にその部分が小さな穴として残る。こうして、植物体はスポンジ状の多孔質となる。さらに、植物体細胞の中に存在する水が凍結により膨張するため細胞膜が破壊することが期待される。このため、凍結された植物体を解凍することにより、植物体細胞の中のファイトケミカルが解凍され液体となった水とともに細胞の外へ出やすくなるので、ファイトケミカルの抽出効率が上昇する。 前記解凍工程で解凍された植物体を粉砕することが粉砕工程を更に含むファイトケミカル抽出方法であることが好ましい。該粉砕工程にて植物体が粉砕され、細胞膜が更に破壊されることにより、ファイトケミカルの抽出効率が上昇し、ファイトケミカルエキスの濃度が増加する。 前記裁断工程から冷却工程までの工程の間に又は工程と併行して、植物体に酵素を添加する酵素処理工程及び/又は植物体に超音波を浴びせる超音波処理工程を含むファイトケミカル抽出方法であることがより好ましい。 前記植物体としては、野菜及び/又は果物であることが好ましい。 本発明は、前記ファイトケミカル抽出方法で得られるファイトケミカルエキスを提供する。前記煮詰め工程で得られる煮汁中の固形成分含有率を増加させる濃縮工程を含むことにより、ファイトケミカルが濃縮されたファイトケミカルエキスを提供することができる。 更に、本発明は、前記ファイトケミカルエキス中の固形成分量に対して、デキストリンを0.1〜10重量倍加えてファイトケミカル末を得る工程を含むファイトケミカル末製造方法を提供する。また、該ファイトケミカル末製造方法において、前記煮詰め工程で得られる煮汁中の固形成分含有率を増加させる濃縮工程を更に含むことができる。 また、本発明は、前記ファイトケミカルエキス又は前記ファイトケミカルエキスから得られるファイトケミカル末を含む飲食物を提供する。 野菜、果物などの植物体から抗がん作用や免疫力増強作用や抗酸化作用を有するファイトケミカルを抽出し、更にその抽出物(ファイトケミカルエキス)からファイトケミカル末を製造することにより、ファイトケミカルを日常の食生活で簡便かつ効率的に摂取可能になり、国民のがんの発生率を低下させ、体内の免疫増強作用や抗酸化作用により、国民の生活習慣病を防ぐ効果が期待できる。 次に本発明の内容を詳細に説明する。 本発明は、原料として野菜、果物などの植物体を使用する。野菜としては、ニンニク、キャベツ、ブロッコリー、カンゾウ、ショウガ、パセリ、ホウレン草、セロリ、にんじん、カボチャ、セロリ、レタス、シソ、ネギ、玉ネギ、ピーマン、とうがらし、トマト、バースニップ、ナス、ブロッコリー、カリフラワー、芽キャベツ、大豆、ゴマ、茶、ユリ、アブラナ、ターメリック、バジル、タラゴン、ハッカ、オレガノ、キュウリ、タイム、アサツキ、ローズマリー、セージ、きのこ類が好ましい。 ファイトケミカルとは、果物や野菜に含まれる、色・香り・辛味・苦味の成分(機能性成分)のことで、その数はおよそ1万種類くらいあると考えられている。現在、見つかっているのは900種類ほどである。「ファイト(phyto)」とは、ギリシャ語で「植物」のことで、ファイトケミカルの9割は野菜や果物など植物性食品に含まれていて、主に植物に含まれることからファイトケミカル(phyotochmeical)と呼ばれている。ファイトケミカルは植物が紫外線の害や虫などから自らを守るために作り出した物質である。 抗がん作用をもつファイトケミカルとしては淡色野菜に含まれる「イオウ化合物」があり、また、大豆に含まれるイソフラボンは、女性ホルモン様の作用を持ち、乳がんや前立腺がんに有効とされている。更に、スイカやトマトの赤色成分であるリコピンは前立腺がん、肺がんの予防効果があるため、抗がん作用を求めれば、ニンニク、キャベツ、カンゾウ、ショウガ、セロリなどの淡色野菜やブロッコリー、トマト、大豆、ゴマ、お茶、にんじん、カボチャ、ナス、ピーマン、バースニップ、ブロッコリー、カリフラワー、芽キャベツ、ターメリック、バジル、タラゴン、ハッカ、オレガノ、キュウリ、タイム、アサツキ、ローズマリー、セージ、及びきのこ類などが好ましく、ニンニク、キャベツ、カンゾウ、ショウガ、セロリ、ブロッコリー、トマト、大豆、ゴマ、お茶、にんじん、カボチャがより好ましい。 果物としては、キウイ、バナナ、グレープフルーツ、マンゴー、ブドウ、オレンジ、パパイヤ、パイナップル、リンゴ、メロン、イチジク、スイカ、ナシ、モモ、ブルーベリー、マスクメロン、レモン、柑橘類、クランベリーが好ましい。 果物におけるファイトケミカルの多い順は、キウイ、バナナ、グレープフルーツ、マンゴー、ブドウ、オレンジ、パパイヤ、パイナップル、リンゴ、メロン、イチジク、スイカ、ナシ、モモとされており、キウイ、バナナ、グレープフルーツ、マンゴー、ブドウ、オレンジが特に好ましい。また、癌などの腫瘍を攻撃する腫瘍壊死因子(TNF)を用いて調べられたマクロファージの活性化では、バナナ、スイカ、ブドウ、パイナップルなどが強く活性化することから、この観点からはバナナ、スイカ、ブドウ、パイナップルが好ましい。更に、マウスの実験での白血球の数自体を増やす作用は、バナナ、リンゴ、キウイの順であったことから、この観点からはバナナ、リンゴ、キウイが好ましい。 本発明のI態様によれば、植物体にセルロースを分解する酵素を添加する酵素処理及び/又は植物体に超音波を浴びせる超音波処理を施して、植物体のセルロースを分解又は破壊することにより水性媒体中にファイトケミカルを抽出する抽出工程を含む、ファイトケミカル抽出方法が提供される。 本発明にかかるファイトケミカルの抽出方法における酵素処理としては、たとえばセルロース分解酵素を使用する。具体的には、セルラーゼ(Cellulase)、β-グルコシダーゼ(β-glucosidase)、ヘミセルラーゼ(Hemicellulase)、ペクチナーゼ(Pectinase)などである。酵素処理の条件としては、酵素が失活しない範囲で適宜温度やpHを調整して行う。 本発明にかかるファイトケミカルの抽出方法における植物体に超音波を浴びせる超音波処理としては、植物体にいわゆる超音波(周波数20kHz以上)を浴びせることができる装置であればどのような装置でも使用できる。超音波の周波数としては、20〜100kHzが好ましい。例えば、超音波反応装置(新科産業有限会社製SR40L型)を使用することができる。従って、植物体を水媒体に浸した状態で植物体に超音波を浴びせる超音波処理を施して、水性媒体中にファイトケミカルを抽出することが好ましい。 本発明によれば、植物体の細胞膜を構成するセルロースが酵素により分解される及び/又は細胞膜が超音波により破壊されることにより、植物体中の細胞中に存在するファイトケミカルを水性媒体中に容易に抽出することが可能となる。この結果として、水性媒体中のファイトケミカルの含有量が増加したファイトケミカルエキスを得ることができる。 本発明の他の態様によれば、植物体を裁断し、該裁断された植物体を水性媒体中で煮詰め、該煮詰められた植物体と水性媒体とを冷却し、該冷却された植物体と水性媒体とを凍結し、次いで該凍結された植物体と水性媒体とを解凍するファイトケミカル抽出方法が提供される。 まず、野菜、果物などの植物体を洗浄後、植物体を所定の大きさに裁断する。 植物体を裁断する裁断工程としては、植物体を裁断する工程であり、包丁やスライサーなどで切断する工程が含まれる。該裁断工程により、植物体を1〜10cm、好ましくは2〜5cmに裁断する。1cmより細かく裁断する植物体細胞の裁断面と大気中の空気との接触面積の増加によるファイトケミカルへの悪影響を生じるおそれがある。具体的には、得られるファイトケミカルエキス及びファイトケミカル末が劣化することである。 次いで、煮詰め工程にて裁断された植物体を水性媒体中で煮る。 該煮詰め工程としては、ジャケットに水蒸気や水などを供給して温度制御することのできるジャケット付バッチ式の抽出器に、粉砕された植物体と植物体1に対して0.1〜10重量倍、好ましくは1〜4重量倍の水性媒体の重量倍を加えて、加熱することによって植物体を煮る。抽出器内の温度は50〜100℃、好ましくは90〜100℃である。加圧抽出器を使用すれば、100℃以上の温度でも煮ることができる。煮る時間は温度によって異なるが、例えば10〜60分である。 煮詰め工程中に攪拌機で攪拌すればより効率的にファイトケミカルを水媒体中に抽出することができる。 次いで、煮詰められた植物体と水性媒体とを冷却工程にて冷却した後、冷却された植物体と水性媒体との混合物を冷凍庫中で凍結する凍結工程を行う。 冷却は自然冷却でもよいが、時間を短縮するために、前記ジャケット付抽出器に冷却水を通すことにより冷却することができる。該凍結工程は、水を含有する植物体を凍結する工程であり、該植物体が凍結する温度であればよいが、具体的には、−10〜−40℃が好ましい。 前記凍結工程にて植物体と水性媒体が十分凍結した後、凍結された植物体と水性媒体とを解凍する解凍工程を行う。該解凍工程は、常温に放置することにより行うことができるが、解凍時間を短縮するために、例えば釜の中に入れ加熱する方法で行うことができる。また、マイクロウェーブの照射により加熱することも可能である。 前記凍結工程と前記解凍工程とを複数回繰り返すことが好ましい。凍結工程と解凍工程を複数回繰り返すことにより、細胞中の水の凍結膨張による細胞膜の破壊がさらに促進されることが期待される。このことにより、ファイトケミカルの抽出効率がより上昇し、ファイトケミカルエキスの濃度がさらに増加する効果が期待できる。 場合によっては、必要に応じて、前記解凍した植物体と水性媒体とを再度前記煮詰め工程にかけることができる。このことにより、水性媒体への植物体中のファイトケミカルの抽出率が更に上昇する効果がある。 次に、前記解凍工程で解凍された植物体又は前記必要に応じて再度煮詰められた植物体を粉砕する粉砕工程にて粉砕する。 該粉砕工程は、水性媒体中の植物体を粉砕する工程であり、ミキサーの他、ミル及び/又はフードプロセッサーなどが使用される。ミキサーで処理する場合、植物体によっても相違するが、通常の場合10秒〜10分間程度処理すれば、所期の目的が達成される。 植物体と水性媒体の混合物をそのまま粉砕処理することも、櫛などで固液分離した後、分離された植物体を粉砕処理することも可能である。後者の場合、ファイトケミカルの抽出率向上のために粉砕された植物体を再度水性媒体と混合することが必要である。 また、前記裁断工程から冷却工程までの工程の間に又は工程と併行して、植物体に酵素を添加する酵素処理工程及び/又は植物体に超音波を浴びせる超音波処理工程を行う。 酵素処理工程において、例えば、セルラーゼ (Cellulase)は90℃では失活するので、煮詰め工程を90〜100℃の温度で行う場合、煮詰め工程と併行して行うことはできないので、煮詰め工程の前又は後に行うことができる。酵素処理後酵素を失活させるためには、煮詰め工程の前、つまり裁断工程から煮詰め工程までの工程の間に酵素処理を行い、その後、例えば90〜100℃で煮ることにより、煮詰め工程において併行して酵素を失活させることができる。 超音波処理工程については、酵素処理工程における酵素を失活させるという処理は必要ないが、使用する装置によっては、例えば煮詰め工程における好ましい温度(90〜100℃)での処理ができないことがある。この場合には、超音波処理装置の機械特性により煮詰め工程と併行して行うことはできない。 次いで、植物体とファイトケミカルを含有する水媒体(ファイトケミカルエキス)とを分離する。 この方法としては、例えば、スクリーン、ろ過器、遠心分離器などを使用する方法があるが、固体と液体を分離するものであれば分離方式には制限されない。2以上の固液分離方式を採用することもできる。例えば、スクリーンによる分離後、遠心分離機で処理するなどである。 次に、植物体から抽出されたファイトケミカルエキスを乾燥してファイトケミカル末を得る。 この方法としては、熱風噴霧乾燥法、流動層乾燥法、凍結乾燥法などが使用できる。熱風噴霧乾燥法、流動層乾燥法では短時間に乾燥することができるが原料の野菜や果物特有の風味が低下する。この点、凍結乾燥法では乾燥に長時間を要するが、原料の風味が乾燥物に残りやすいメリットがある。更に、ファイトケミカル末のダストを少なくし、形状を整えやすいなどの観点で優れている。 凍結乾燥物はミキサーで粉砕して粉状あるいは一定の粒度分布を有する粒子形状に成形する。あるいは、抽出液をモールドに入れて凍結し乾燥させることにより、所定のモールドの形状を有する凍結乾燥物を得ることができる。この場合、各モールドに1回の飲用相当量の抽出液を入れておけば、1回の飲用量を有する1個の凍結乾燥固形物として得ることができる。 本発明の方法によれば、従来ヒトの体内で抽出されない細胞に包まれたかたちで植物体を食用し又はジュース製造などの残余物として破棄されていたファイトケミカルを効率的に抽出・回収することができる。また、本発明により得られたファイトケミカルエキス又はファイトケミカル末はそのまま飲食することができるし、ファイトケミカルエキス又はファイトケミカル末を含有する飲食物として提供することができる。 本発明の他の態様によれば、乾燥工程の前に、ファイトケミカルエキス中の固形成分含有率を増加させる濃縮工程が追加される。濃縮法としては、通常の熱濃縮法、膜濃縮法、凍結濃縮法などが使用できる。 濃縮液の固形分濃度としては10〜60重量%に濃縮する。乾燥工程の負荷を下げ、より効率的に乾燥するためには濃縮液濃度は20〜50重量%が好ましい。濃縮液の濃度が高いほど乾燥工程での熱負荷は下がるが、高濃度になりすぎると熱風噴霧乾燥では濃縮液の粘度上昇により運転することができなくなり、凍結乾燥では濃縮液の凝固点降下により乾燥できなくなる。 更に、本発明の他の態様によれば、ファイトケミカルエキス中の固形成分量に対して、デキストリンを0.1〜10重量倍、好ましくは1〜5重量倍加える。前項記載の濃縮工程が行われる場合には、濃縮液に加えるのが好ましい。デキストリンを添加後の濃縮液の濃度は10〜60重量%、好ましくは20〜50重量%である。 デキストリンとしては、 サイクロデキストリン(分子量973)、難消化性デキストリン、クラスターデキストリンなどが使用できる。 デキストリンの添加により乾燥工程におけるファイトケミカルの粒子の形状の均一にすることができるとともに、乾燥工程の歩留まりを上昇させることができる。また、乾燥物である最終製品の外観が向上し、お湯に溶けやすく、更に飲食したときにテイストがマイルドになる効果がある。 本発明の方法で製造されたファイトケミカル末は、持ち運びが容易であり、お湯を加えることによって簡便に飲食することができる。また、例えば粉末野菜スープなどの粉末飲料として利用でき、1パックに1回での使用分を入れておくことにより、例えばインスタントスープとしてお湯を注ぐことにより簡便に飲料を提供することができる。 本発明にかかるファイトケミカルエキス又はファイトケミカル末を日常的に、例えば食事前に摂取することにより、がんを予防し、体内の免疫力、抗酸化力を増加させ、健康の増強を図ることが予想される。 以下に、本発明の乾燥粉末スープの例について説明するが、本発明はこの例により制限を受けるものではなく、本発明の趣旨の範囲内で種々の変更を加えて実施することができるものである。 実施例1 ファイトケミカル粉末の調製 市販のにんじん、玉ネギ、キャベツ、カボチャを水で洗い、それぞれ約100gずつ包丁で2〜3cm程度に裁断した後、裁断した野菜に約1.6リットル(4倍量)の水を入れ、30分間、平均98℃にして野菜を煮詰めた。 次に、煮詰めた野菜と水を常温に冷却後、−30℃の冷凍庫に入れて凍結した。一昼夜凍結した後、冷凍庫から取り出し、ハンマーにて適当な大きさに破砕した後、鍋に入れ加熱し解凍した。 解凍した野菜と水を家庭用ミキサーに入れ、約3分間、野菜を砕いた。得られた粉砕処理スラリーを5000mlのポリ遠心管に入れ、5000gで15分間遠心し、上澄み抽出液約1.5リットル回収した。 回収した上澄み抽出液を5cc採り、実験用熱風乾燥機で90℃、5時間乾燥させて水分を蒸発させた後、常温まで冷却させて重量を測定することにより上澄み抽出液中含まれる固形分量を算出した。算出して得られた固形分重量に対して2倍量のデキストリン(販売者:健康通販有限会社、製造者:有限会社エーエスシーピー、品名:難消化性デキストリン)を加え、よく攪拌・混合した。得られた混合液を温度80℃で30分間滅菌した。 滅菌した混合液を−30℃の冷凍庫で約16時間凍結させた後、凍結物を室温、−72cmHgの真空で凍結乾燥した。得られた乾燥品をミキサーで粉状に砕き、ファイトケミカル含有粉末約50gを得た。 ヒトに対する免疫力・抗酸化作用の効果 5名のパネルに2週間毎日朝食及び夕食の直前、それぞれ上記方法で得られたファイトケミカル乾燥物10gにカップ1杯のお湯(約120ml)で溶かし、与えた。ファイトケミカル粉末を飲用する前と飲用した(2週間)後、各パネルから血液を採取し、血液中の白血球、好中球、単球、リンパ球、血小板の量をそれぞれ測定した。 対象として、市販の粉末乾燥スープ(製造者:(株)ポッカコーポレーション、品名:じっくりコトコト煮込んだ彩り野菜のコンソメ)を、別の5名のパネルが同様な方法で飲用した。各パネルから飲用の前と後に採血し、血液中の白血球、好中球、単球、リンパ球、血小板をそれぞれ測定した。 表1から分かるように、ファイトケミカル含有乾燥物飲用後の5名のパネルの血液中の白血球、好中球、単球、リンパ球、血小板の量の平均値はいずれも飲用前のそれぞれの量の平均値より増加した。統計的には、好中球及び白血球においてそれぞれ危険率5%及び10%で有意に増加した。 一方、市販の粉末乾燥スープでは表2に示すように、血液中の白血球、好中球、単球、リンパ球、血小板の量のいずれについても飲用前後で有位な差は認められなかった。 したがって、本発明に係るファイトケミカル含有乾燥物は、日常的飲用によりヒトの血液中の白血球、好中球などを増加させるので体内の免疫力・抗酸化作用を増強させるといえる。 本発明は、野菜・果物などの植物体からファイトケミカルを好適に抽出すること、及び抽出されたファイトケミカルエキス及びそのファイトケミカル末を含有する飲食物に好適に使用することができる。 植物体にセルロースを分解する酵素を添加する酵素処理又は植物体に超音波を浴びせる超音波処理を施して、植物体のセルロースを分解又は破壊することにより水性媒体中にファイトケミカルを抽出する抽出工程を含む、ファイトケミカル抽出方法。 植物体を裁断する裁断工程と、該裁断工程で裁断された植物体を水性媒体中で煮る煮詰め工程と、該煮詰め工程で煮詰められた植物体を水性媒体の存在下凍結する凍結工程と、該凍結工程で凍結された植物体を解凍する解凍工程とを有するファイトケミカル抽出方法。 前記解凍工程で解凍された植物体を粉砕する粉砕工程を更に含む請求項2に記載のファイトケミカル抽出方法。 前記裁断工程から冷却工程までの工程の間に又は工程と併行して、植物体に酵素を添加する酵素処理工程及び/又は植物体に超音波を浴びせる超音波処理工程を含む請求項2又は3記載のファイトケミカル抽出方法。 植物体が野菜及び/又は果物のものである請求項1又は2記載のファイトケミカル抽出方法。 野菜が、ニンニク、キャベツ、ブロッコリー、カンゾウ、ショウガ、パセリ、ホウレン草、セロリ、にんじん、カボチャ、セロリ、レタス、シソ、ネギ、玉ネギ、ピーマン、とうがらし、トマト、バースニップ、ナス、ブロッコリー、カリフラワー、芽キャベツ、大豆、ゴマ、茶、ユリ、アブラナ、ターメリック、バジル、タラゴン、ハッカ、オレガノ、キュウリ、タイム、アサツキ、ローズマリー、セージ、及びきのこ類からなる群から選ばれるものである請求項5記載のファイトケミカル抽出方法。 果物が、キウイ、バナナ、グレープフルーツ、マンゴー、ブドウ、オレンジ、パパイヤ、パイナップル、リンゴ、メロン、イチジク、スイカ、ナシ、モモ、ブルーベリー、マスクメロン、レモン、柑橘類及びクランベリーからなる群から選ばれるものである請求項5記載のファイトケミカル抽出方法。 請求項1又は2記載の方法で得られるファイトケミカルエキス。 請求項8記載のファイトケミカルエキス中の固形成分量に対して、デキストリンを0.1〜10重量倍加えてファイトケミカルエキス末を得る工程を含むファイトケミカルエキス末製造方法。 請求項8記載のファイトケミカルエキスから得られるファイトケミカル末。 請求項10記載のファイトケミカルエキス末を含む飲食物。 【課題】野菜・果物などの植物体から効率的にファイトケミカルを抽出し、ファイトケミカルエキス及びファイトケミカル末の製造を実現する。【解決手段】セルロースを分解する酵素を添加する酵素処理や超音波を浴びせる超音波処理を施して植物体のセルロースを分解又は破壊すること、又は、植物体を裁断する裁断工程と、裁断工程で裁断された植物体を水性媒体中で煮る煮詰め工程と、煮詰め工程で煮詰められた植物体を水性媒体の存在下凍結する凍結工程と、凍結工程で凍結された植物体を解凍する解凍工程とを有する。【選択図】なし