生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_炎症性サイトカイン産生抑制剤
出願番号:2007044881
年次:2008
IPC分類:A61K 31/352,A61K 31/202,A61K 31/232,A61P 43/00,A61P 29/00,A61P 19/02,A61P 1/00,A61P 3/10,A61P 17/00,A61P 37/08,A23L 1/30


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山崎 幸苗 河野 泰広 JP 2008208054 公開特許公報(A) 20080911 2007044881 20070226 炎症性サイトカイン産生抑制剤 独立行政法人産業技術総合研究所 301021533 山崎 幸苗 河野 泰広 A61K 31/352 20060101AFI20080815BHJP A61K 31/202 20060101ALI20080815BHJP A61K 31/232 20060101ALI20080815BHJP A61P 43/00 20060101ALI20080815BHJP A61P 29/00 20060101ALI20080815BHJP A61P 19/02 20060101ALI20080815BHJP A61P 1/00 20060101ALI20080815BHJP A61P 3/10 20060101ALI20080815BHJP A61P 17/00 20060101ALI20080815BHJP A61P 37/08 20060101ALI20080815BHJP A23L 1/30 20060101ALN20080815BHJP JPA61K31/352A61K31/202A61K31/232A61P43/00 105A61P29/00A61P29/00 101A61P19/02A61P1/00A61P3/10A61P17/00A61P37/08A61P43/00 121A23L1/30 Z 5 OL 10 4B018 4C086 4C206 4B018MD07 4B018MD08 4B018MD10 4B018MD14 4B018ME03 4B018ME14 4C086AA01 4C086AA02 4C086BA08 4C086MA02 4C086MA04 4C086NA14 4C086ZA66 4C086ZA96 4C086ZB05 4C086ZB11 4C086ZB13 4C086ZB15 4C086ZB21 4C086ZC35 4C086ZC75 4C206AA01 4C206AA02 4C206DA05 4C206DB09 4C206DB43 4C206DB47 4C206MA02 4C206MA04 4C206NA14 4C206ZA66 4C206ZA96 4C206ZB05 4C206ZB11 4C206ZB13 4C206ZB15 4C206ZB21 4C206ZC35 4C206ZC75 本発明は医薬品及び健康食品において有用な、炎症性サイトカインTNF-αやIL-1βの産生等を抑制する薬剤に関する。 リウマチ性関節炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、2型糖尿病、アレルギー性皮膚炎などさまざまな疾病が内因性サイトカインの異常産生で引き起こされることが知られている。そこで、このような疾病の予防・治療のため各種のサイトカインの産生抑制剤が開発されており、イブプロフェンやインドメタシン等既存の抗炎症剤の他、サリドマイド誘導体(非特許文献1参照)、ピラゾロン誘導体(非特許文献2参照)、合成クロメン誘導体(非特許文献3参照)、スベリヒユ科植物のアルカロイド(特許文献1参照)、クロモン誘導体(特許文献2参照)、肝実質細胞増殖因子(特許文献3参照)などがあるが、これらの疾病は慢性的な経過をたどることが多く治療は長期化することから、経口摂取が可能で副作用がなく安全な化合物が特に求められている。このような観点から、乳蛋白の断片ペプチド(特許文献4参照)、甘草やショウガの抽出物(特許文献5)、ドコサヘキサエン酸等の高度不飽和脂肪酸(特許文献6,7参照)、食用植物の種皮や果皮等に含まれるケルセチンやルテオリン等のフラボノイド(特許文献8、9、非特許文献4、5、6、7、8)など食品成分が注目されているが、より活性の強い化合物や当該活性のさらなる増強が必要である。特開2003-26586号公報特開2005-247762号公報特開2000-239182号公報特開2004-196707号公報WO2003/007974特表2006-511514号公報特開2000-159667号公報特開2004-75619号公報特開2001-114686号公報S. Niwayama et al., J. Med. Chem., 39, 3044-3045, 1996M.P. Clark et al., J. Med. Chem., 47, 2724-2727, 2004J-F. Cheng et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 13, 3647-3650, 2003G.K. Rangan etal., Am. J. Physiol., 277(5, Pt.2), F779-F789, 1999A. Xagorari etal., J. Pharmacol. Exp. Ther., 296, 181-187, 2001J. Wang et al.,J. Agric. Food Chem., 50, 4183-4189, 2002S. Hougee etal., Biochem. Pharmacol., 69, 241-248, 2005M. Comalada etal., Biochem. Pharmacol., 72, 1010-1021, 2006 本発明の課題は、上記現状に鑑み、安全性が高く、しかもTNF-αなどの炎症性サイトカインの産生抑制作用が十分に強く、抗炎症剤等として有用な新規な薬剤を開発する点にある。 上記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討の結果、広範囲の植物に分布しているフラボノイドの中でも、これまで抗炎症剤の面からは検討が少ないクリシンやアピゲニン等の式(1)(ただし、R1=R2=R3=H、又はR1=R3=H、R2=OH)で示される化合物が特に高度不飽和脂肪酸との共存下において、マクロファージ様に分化した単球系培養細胞(急性単球性白血病細胞、THP-1)を大腸菌のリポ多糖(LPS)で刺激した時のTNF-αやIL-1β等炎症性サイトカインの産生を強力に抑制することを見いだし、本発明を完成するに至った。 炎症反応の情報伝達体には活性酸素が含まれている(L. Fialkow et al., Free Radic. Biol. Med., 42, 153-164, 2007)。そのため、従来、ケルセチンやルテオリン等の抗酸化性の強力なフラボノイドが有望な抗炎症剤として取り上げられ、炎症性サイトカインの産生を抑制することが明らかにされてきた(T. Wadsworth et al., Biochem. Pharmacol., 57, 941-949, 1999)。しかし、本発明者らが検討したところ、抗酸化性がほとんどないフラボノイドであるクリシンやアピゲニンでもTNF-α等の産生抑制作用があり、しかも高度不飽和脂肪酸との共存下においてさらに強い抑制作用を示すことを見出した。さらに、この不飽和脂肪酸の併用効果はケルセチンやルテオリンの場合にも認められた。高度不飽和脂肪酸が炎症性サイトカインの産生抑制作用を持つことは既に知られており(特表2006-511514、特開2000-159667)、さらに、それがフェルラ酸誘導体やカルコン類との併用で増強されることは本発明者らが最近明らかにしたところである(特願2006-291726)。 しかし、カルコン類を除く狭義のフラボノイドの高度不飽和脂肪酸との組合せによる生物学的効果は未だほとんど調べられていない。本発明は、抗酸化性の有無に関わらずフラボノイドが高度不飽和脂肪酸と共同して強い抗炎症作用を発揮しうることを初めて明らかにしたものである。 すなわち、本発明は以下のとおりである。1)下記式(1)で示される化合物、及び炭素数16〜22の不飽和脂肪酸若しくはそのグリセリド又は低級アルキルエステルを活性成分として含有することを特徴とする動物細胞における炎症性サイトカイン産生抑制剤。2)上記グリセリドが、炭素数16〜22の不飽和脂肪酸のモノ、ジまたはトリグリセリドであることを特徴とする、1)に記載の動物細胞における炎症性サイトカイン産生抑制剤。3)上記低級アルキルエステルが、炭素数16〜22の不飽和脂肪酸のエチル、メチル、プロピル、もしくはブチルエステルであることを特徴とする、1)に記載の動物細胞における炎症性サイトカイン産生抑制剤。4)炭素数16〜22の不飽和脂肪酸が4Z,7Z,10Z,13Z,16Z,19Z-ドコサヘキサエン酸、4Z,7Z,10Z,13Z,16Z-ドコサペンタエン酸、7Z,10Z,13Z,16Z,19Z-ドコサペンタエン酸、5Z,8Z,11Z,14Z,17Z-エイコサペンタエン酸、6Z,9Z,12Z,15Z-オクタデカテトラエン酸、α-リノレン酸、リノール酸、オレイン酸及びアラキドン酸からなる群から選ばれた1種以上であることを特徴とする、1)〜3)のいずれかに記載の動物細胞における炎症性サイトカイン産生抑制剤。5)式(1)で示される化合物がクリシン(式1においてR1=R2=R3=H)、アピゲニン(式1においてR1=R3=H、R2=OH)、ルテオリン(式1においてR1=H, R2=R3=OH)、ケンフェロール(式1においてR1=R2=OH, R3=H)、ケルセチン(式1においてR1=R2=R3=OH)の中から選ばれる1つ以上の化合物であることを特徴とする、1)〜4)のいずれかに記載の動物細胞における炎症性サイトカイン産生抑制剤。 本発明において使用する、式(1)で表される化合物と高度不飽和脂肪酸の混合組成物は、動物の免疫細胞におけるTNF-αやIL-1β等の炎症性サイトカインの産生を抑制する。その結果、個体レベルでは関節リウマチや潰瘍性大腸炎等の慢性炎症疾患の症状を緩和させる効果を有する。 一方、炎症性サイトカインの産生抑制物質として知られている従来のピラゾール誘導体等の物質は、安全性、副作用の問題を抱えているのに対し、本発明のフラボノイド化合物は、従来から、野菜、果物、ハーブ、漢方薬、プロポリス等健康増進剤の成分として喫食あるいは服用されており、またドコサヘキサエン酸等の高度不飽和脂肪酸も魚油の成分として摂取されてきたものであるため、これらの成分の組合せになる本発明の薬剤は安全性が高いものといえる。 TNF-α等の炎症性サイトカインはリウマチや大腸炎ばかりでなく、肥満や誤嚥など色々な局面で過剰生産され、潜在的な疾病原因となっている。従って、このようなTNF-α等の炎症性サイトカインの恒常的なコントロールは健康維持にとり極めて重要な意義がある。本発明の薬剤は上述のように食品やそれに近縁する素材の成分で構成され安全性が高いため、日常的かつ長期の摂取が可能と考えられ、治療剤としてばかりでなく、健康維持機能性食品添加物としても有用な薬剤である。 本発明の炎症性サイトカイン産生抑制剤は、以下の式(1)で表される化合物及び炭素数16〜22の不飽和脂肪酸またはそのグリセリドもしくは低級アルキルエステルを配合することにより得られる。 本発明における式(1)の化合物のうち、好ましい化合物としては、例えばクリシン(式1においてR1=R2=R3=H)、アピゲニン(式1においてR1=R3=H、R2=OH)、ルテオリン(式1においてR1=H, R2=R3=OH)、ケンフェロール(式1においてR1=R2=OH, R3=H)、ケルセチン(式1においてR1=R2=R3= OH)などがあげられる。また、これらのO-グリコシド型の配糖体も用いられる。 これらのフラボノイド化合物は、いずれも30μM の低濃度で動物細胞におけるTNF-α産生を40〜50%抑制するが、これに10μMのドコサヘキサエン酸を併用すると、抑制率は80%以上に達する。また、IL-1βの産生に対してはこれらのフラボノイドを10ないしは30μMにおいて10μMのドコサヘキサエン酸と併用するならば、ドコサヘキサエン酸のみでは65%の抑制率が80%以上となる。 さらに、本発明の式(1)で示される化合物と高度不飽和脂肪酸のコンビネーションは、TNF-αやIL-1β等炎症性サイトカインの産生を抑制するほか、さらに動物細胞における一酸化窒素(NO)の産生をそれぞれ単独使用の場合よりも強力に抑制する。 本発明で用いられる炭素数16〜22の不飽和脂肪酸は、2重結合の数が1〜6の天然に広く分布している脂肪酸であり、具体的には、ドコサヘキサエン酸(4Z,7Z,10Z,13Z,16Z,19Z-docosahexaenoic acid)、(n-6)ドコサペンタエン酸(4Z,7Z,10Z,13Z,16Z-docosapentaenoic acid)、(n-3)ドコサペンタエン酸(7Z,10Z,13Z,16Z,19Z-docosapentaenoic acid)、エイコサペンタエン酸(5Z,8Z,11Z,14Z,17Z-eicosapentaenoic acid)、アラキドン酸(5Z,8Z,11Z,14Z-eicosatetraenoic acid)、ステアリドン酸(6Z,9Z,12Z,15Z-octadecatetraenoic acid)、ホモ-γ-リノレン酸(8Z,11Z,14Z-eicosatrienoic acid)、α-リノレン酸(9Z, 12Z, 15Z-octadecatrienoic acid)、γ-リノレン酸(6Z, 9Z, 12Z-octadecatrienoic acid)、リノール酸(9Z,12Z-octadecadienoic acid)、オレイン酸(9Z-octadecenoic acid)、共役リノレン酸(10E, 12Z-octadecadienoic acid又は9Z, 11E-octadecadienoic acid)などが挙げられる。 これらのうちでは、とりわけ魚油に含まれるドコサヘキサエン酸やエイコサペンタエン酸等の高度不飽和脂肪酸が、高い炎症性サイトカイン産生抑制効果をもたらす。 また、これらの不飽和脂肪酸はグリセリドであってもよく、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリドのいずれでもよく、また、グリセロール中の不飽和脂肪酸の結合位置は1、2、3位のいずれでもよく、さらにジグリセリド、トリグリセリドの場合には当該不飽和脂肪酸以外の脂肪酸、例えばパルミチン酸やステアリン酸が結合していてもよい。また、低級アルキルエステルとしてはエチルエステルの他に、メチル、プロピル、もしくはブチルエステルも用いられる。 一方、本発明に関わる式(1)で示される化合物は、それ自体公知であり有機合成も容易であるが、豆類の種皮など食用植物から公知の方法で容易に抽出・調製される(特表2001-500546)。この場合、不都合な夾雑物がなければ粗抽出物のままでも用いられる。特に、当該フラボノイドの配糖体が植物から抽出されることが多いが、それらの配糖体も生体内では酵素的に加水分解されてフラボノイドを生じるので、遊離のフラボノイドと同様に用いられる。不飽和脂肪酸やそれを含むグリセリド、低級アルキルエステルは、魚油、植物油、微生物産生油脂等から公知の方法で容易に製造される。 本発明に用いる場合、式(1)の化合物の添加量は、化合物の種類、精製の方法や程度、求められる効果の程度により、生理的に安全な範囲で加減する。例えば飲用水の1mlもしくは食物の1gあたり数mg以下とするが、総摂取量や摂取形態に応じて、生理的に安全な範囲内で適宜増減する。不飽和脂肪酸もしくはそのグリセリドやエステルの添加量も化合物の種類、純度、求められる効果の程度等により、生理的に安全な範囲内で適宜増減する。次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明する。〔実施例1〕ヒトTHP-1急性単球性白血病細胞(大日本製薬株式会社より購入)を10%の牛胎仔血清(FBS)を含むRPMI-1640培地で前培養後、1 x 105 cells/mlの懸濁液とし、0.1μMのphorbol 12-myristate 13-acetate (PMA) を添加してから0.1mlづつ96-wellプレートに分注した。3日間培養後、細胞がマクロファージ様に分化し底面に張り付いたことを検鏡・確認してから、各ウェルの培地を10μM のドコサヘキサエン酸(DHA)を加えたかもしくは加えていない10%FBS入り新鮮培地の0.2mlづつに交換した。次いで各ウェルの培地に所定濃度(0.1〜3 mM)のサンプルのエタノール溶液またはエタノールのみを2μl添加し、さらに3時間培養した。 次いで、大腸菌細胞膜のリポ多糖(0127:B8、Sigma社製)を33μg/mlの濃度で含むリン酸緩衝液の6μlづつを各ウェルに添加し、20時間培養した。培地を回収し、ELISAキット(Endogen社製)でTNF-α濃度を測定した。培地を回収後ウェルに残った細胞は0.2%クリスタルバイオレット−20%メタノール液で染色し、十分水洗後、1%SDS水溶液の0.1mlづつを各ウェルに加えて色素を溶出させプレートリーダー(595nm)で吸光度を測定して細胞数の指標とした。用いたサンプルのうち、クリシンとケンフェロールはAlexis社製、ルテオリンはExtrasynthese社製、アピゲニンと (+)-カテキンはSigma社製、ケルセチンはNacalai Tesque社製である。 結果を図1に示す。培養液中のサンプルの濃度(μM)は図中横軸に示してある。図1Aの結果から、本発明のフラボノイドが(カテキンを除いて)濃度依存的にTNF-αの産生を抑制し、さらに、培地にドコサヘキサエン酸が同時に添加されていると一層強く抑制することがわかる。後の参考例1で示すようにクリシンやアピゲニンには抗酸化性はほとんどない一方、カテキンが強い抗酸化性を示すが、本実験ではクリシンやアピゲニンがTNF-α産生抑制活性を示すのにカテキンは不活性であったことから、抗酸化性とTNF-α抑制活性は直接の関係がないことが明らかである。なお、図1Bに示すように、細胞数の指標となる色素濃度は実験終了後にコントロールとサンプル間で通常20%以下しか違いがなかったことから、TNF-α産生の大きな低下は細胞の逸失によるものではないことが確認された。〔実施例2〕実施例1の実験で得られた培養液中のIL-1βの濃度をELISA(Endogen社製)で測定した結果を図2に示す。フラボノイドの濃度(μM)は横軸に示してある。この結果から、3μMのアピゲニンや10μMのルテオリンとケンフェロール(図中Kaempf.)は単独ではIL-1βの抑制効果はないが、高度不飽和脂肪酸のDHAと併用すると、DHAの抑制作用を顕著に強化することがわかる。また、ここに示したIL-1βの産生抑制では抗酸化性のないクリシンやアピゲニンの方が抗酸化性のあるルテオリンやケルセチンよりも強い活性を示しており、さらに、いずれの場合もDHAの併用により抑制作用が強化されている。〔実施例3〕実施例1の実験で得られた培養液中のIL-6の濃度をELISA(Endogen社製)で測定した結果を図3に示す。フラボノイドの濃度はいずれも10μMである。この結果から、10μMのアピゲニンやケルセチンは単独でもIL-6の産生を抑制する上、DHAの抑制作用を強化する効果のあることがわかる。〔実施例4〕炎症反応のシグナル分子として一酸化窒素(NO)も重要な役割を果たしており、NOの産生抑制も炎症の抑制につながる。マウスRAW264マクロファージ細胞株(理化学研究所から購入)を10%FBS入りのDMEM培地で前培養し、トリプシン処理で回収して2 x 105 cells/mlの懸濁液とし、0.2mlづつ96-ウェルプレートに植え込んだ。2日間培養後、各ウェルの培地を10μM のドコサヘキサエン酸(DHA)又はエイコサペンタエン酸(EPA)を加えたかもしくは加えていない10%FBS入り新鮮培地の0.2mlづつに交換した。 次いで各ウェルの培地に所定濃度(0.1〜3 mM)のサンプルのエタノール溶液またはエタノールのみを2μl添加し、さらに3時間培養した。次いで、100μg/mlの大腸菌細胞膜リポ多糖(0127:B8、Sigma社製)、10μg/mlのアルギニン、及び1 μg/mlのIFN-γを含む培地を6μlづつ各ウェルに添加し、18時間培養した。培地を回収し、培地中でNOから転換生成した亜硝酸イオンをグリース試薬(Sigma社製)で定量した。図4Aに示した結果から、フラボノイドがLPSで刺激されたマクロファージ細胞におけるNO産生を抑制すること、さらに、DHAやEPAが同時に添加されると一層強く抑制することがわかる。なお、細胞をクリスタルバイオレットで染色し吸光度を測定して細胞数の指標とした結果を図4Bに示してある。〔参考例1〕文献(K. Hyland et al., Anal. Biochem., 135, 280-287, 1983)の方法によりフラボノイドのスーパーオキシドアニオンラジカルの消去能(抗酸化活性)を測定した。結果を図5に示す。細胞試験に用いた濃度(1〜30μM)ではクリシンはほとんど抗酸化性を示さず、また、アピゲニンもカテキンやルテオリンと比べるとごく弱い抗酸化性しか示さないことがわかる。なお、ケルセチンの抗酸化性は本法では測定が困難なので、これに代えて抗酸化性の目安となる次に記載するDPPHラジカルの消去率でクリシンやアピゲニンと比較した。〔参考例2〕文献(L. Wang et al., J. Agric. Food Chem., 54, 9798-9804, 2006)の方法に準じてフラボノイドを加えた時のDPPHラジカルの消去率を吸光度の変化から測定した。結果を図6に示すが、数十μMのレベルではクリシンとアピゲニンはラジカル消去活性をほとんど示さないのに、ケルセチンは強い消去活性を持っていることがわかる。Aは、フラボノイドとDHAの併用によりTHP-1細胞におけるTNF-α産生が抑制されることを示すグラフである。縦軸の値はコントロールウェルにおけるTNF-α濃度を100としたときのサンプルウェルにおけるTNF-α濃度の相対値(3つのウェルの平均と標準偏差)であり、横軸に付した数字はサンプルの濃度(μM)である。Bは各ウェルの細胞をクリスタルバイオレットで染色し、洗浄後、色素を抽出して測定した吸光度(3つのウェルの平均と標準偏差)である。フラボノイド(3〜30μM)とDHAの併用によりTHP-1細胞におけるIL-1β産生が抑制されることを示すグラフである。縦軸の値はコントロールウェルにおけるIL-1β濃度を100としたときのサンプルウェルにおけるIL-1β濃度の相対値(3つのウェルの平均と標準偏差)である。フラボノイド(10μM)とDHAの併用によりTHP-1細胞におけるIL-6産生が抑制されることを示すグラフである。縦軸の値はコントロールウェルにおけるIL-6濃度を100としたときのサンプルウェルにおけるIL-6濃度の相対値(2つのウェルの平均と標準偏差)である。Aは、フラボノイドとPUFA(DHA又はEPA)の併用によりRAW264細胞におけるNO産生が抑制されることを示すグラフである。縦軸の値はコントロールウェルにおけるGriess試薬による発色の吸光度を100としたときのサンプルウェルにおける同様の吸光度の相対値(2つのウェルの平均と標準偏差)であり、横軸に付した数字はサンプルの濃度(μM)である。Bは各ウェルの細胞をクリスタルバイオレットで染色し、洗浄後、色素を抽出して測定した吸光度の相対値(コントロールウェルの値を100として、2つのウェルの平均と標準偏差で表示)である。フラボノイドの活性酸素消去能(抗酸化性)を示すグラフである。フラボノイドのDPPHラジカル消去能を示すグラフである。 下記式(1)で示される化合物、及び炭素数16〜22の不飽和脂肪酸若しくはそのグリセリド又は低級アルキルエステルを活性成分として含有することを特徴とする動物細胞における炎症性サイトカイン産生抑制剤。 上記グリセリドが、炭素数16〜22の不飽和脂肪酸のモノ、ジまたはトリグリセリドであることを特徴とする、請求項1に記載の動物細胞における炎症性サイトカイン産生抑制剤。 上記低級アルキルエステルが、炭素数16〜22の不飽和脂肪酸のエチル、メチル、プロピル、もしくはブチルエステルであることを特徴とする、請求項1に記載の動物細胞における炎症性サイトカイン産生抑制剤。 炭素数16〜22の不飽和脂肪酸が4Z,7Z,10Z,13Z,16Z,19Z-ドコサヘキサエン酸、4Z,7Z,10Z,13Z,16Z-ドコサペンタエン酸、7Z,10Z,13Z,16Z,19Z-ドコサペンタエン酸、5Z,8Z,11Z,14Z,17Z-エイコサペンタエン酸、6Z,9Z,12Z,15Z-オクタデカテトラエン酸、α-リノレン酸、リノール酸、オレイン酸及びアラキドン酸からなる群から選ばれた1種以上であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の動物細胞における炎症性サイトカイン産生抑制剤。 式(1)で示される化合物がクリシン(式1においてR1=R2=R3=H)、アピゲニン(式1においてR1=R3=H、R2=OH)、ルテオリン(式1においてR1=H, R2=R3=OH)、ケンフェロール(式1においてR1=R2=OH, R3=H)、ケルセチン(式1においてR1=R2=R3=OH)の中から選ばれる1つ以上の化合物であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の動物細胞における炎症性サイトカイン産生抑制剤。 【課題】安全性が高く、TNF-αなどの炎症性サイトカインの産生抑制作用が十分に強く、抗炎症剤等として有用な新規な薬剤を提供する。【解決手段】下記式(1)で示される化合物、及び炭素数16〜22の不飽和脂肪酸若しくはそのグリセリド又は低級アルキルエステルを活性成分として含有することを特徴とする動物細胞における炎症性サイトカイン産生抑制剤。【選択図】なし


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特許公報(B2)_炎症性サイトカイン産生抑制剤

生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_炎症性サイトカイン産生抑制剤
出願番号:2007044881
年次:2013
IPC分類:A61K 31/352,A61K 31/202,A61K 31/232,A61P 43/00,A61P 29/00


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山崎 幸苗 河野 泰広 JP 5207342 特許公報(B2) 20130301 2007044881 20070226 炎症性サイトカイン産生抑制剤 独立行政法人産業技術総合研究所 301021533 山崎 幸苗 河野 泰広 20130612 A61K 31/352 20060101AFI20130527BHJP A61K 31/202 20060101ALI20130527BHJP A61K 31/232 20060101ALI20130527BHJP A61P 43/00 20060101ALI20130527BHJP A61P 29/00 20060101ALI20130527BHJP JPA61K31/352A61K31/202A61K31/232A61P43/00 105A61P29/00A61P43/00 121 A61K 31/352 A61K 31/202 A61K 31/232 CA/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) 特表2005−532394(JP,A) 特開2000−159667(JP,A) 特表2006−511514(JP,A) サプリメント成分解説,JAMA日本語版,2005年,2月号付録,p.6-9 KOWALSKI, J. et al.,Pharmacological Reports,2005年,Vol.57,p.390-394 HOUGEE, S. et al.,Biochemical Pharmacology,2005年,Vol.69,p.241-248 3 2008208054 20080911 10 20090910 高橋 樹理 本発明は医薬品及び健康食品において有用な、炎症性サイトカインTNF-αやIL-1βの産生等を抑制する薬剤に関する。 リウマチ性関節炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、2型糖尿病、アレルギー性皮膚炎などさまざまな疾病が内因性サイトカインの異常産生で引き起こされることが知られている。そこで、このような疾病の予防・治療のため各種のサイトカインの産生抑制剤が開発されており、イブプロフェンやインドメタシン等既存の抗炎症剤の他、サリドマイド誘導体(非特許文献1参照)、ピラゾロン誘導体(非特許文献2参照)、合成クロメン誘導体(非特許文献3参照)、スベリヒユ科植物のアルカロイド(特許文献1参照)、クロモン誘導体(特許文献2参照)、肝実質細胞増殖因子(特許文献3参照)などがあるが、これらの疾病は慢性的な経過をたどることが多く治療は長期化することから、経口摂取が可能で副作用がなく安全な化合物が特に求められている。このような観点から、乳蛋白の断片ペプチド(特許文献4参照)、甘草やショウガの抽出物(特許文献5)、ドコサヘキサエン酸等の高度不飽和脂肪酸(特許文献6,7参照)、食用植物の種皮や果皮等に含まれるケルセチンやルテオリン等のフラボノイド(特許文献8、9、非特許文献4、5、6、7、8)など食品成分が注目されているが、より活性の強い化合物や当該活性のさらなる増強が必要である。特開2003-26586号公報特開2005-247762号公報特開2000-239182号公報特開2004-196707号公報WO2003/007974特表2006-511514号公報特開2000-159667号公報特開2004-75619号公報特開2001-114686号公報S. Niwayama et al., J. Med. Chem., 39, 3044-3045, 1996M.P. Clark et al., J. Med. Chem., 47, 2724-2727, 2004J-F. Cheng et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 13, 3647-3650, 2003G.K. Rangan etal., Am. J. Physiol., 277(5, Pt.2), F779-F789, 1999A. Xagorari etal., J. Pharmacol. Exp. Ther., 296, 181-187, 2001J. Wang et al.,J. Agric. Food Chem., 50, 4183-4189, 2002S. Hougee etal., Biochem. Pharmacol., 69, 241-248, 2005M. Comalada etal., Biochem. Pharmacol., 72, 1010-1021, 2006 本発明の課題は、上記現状に鑑み、安全性が高く、しかもTNF-αなどの炎症性サイトカインの産生抑制作用が十分に強く、抗炎症剤等として有用な新規な薬剤を開発する点にある。 上記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討の結果、広範囲の植物に分布しているフラボノイドの中でも、これまで抗炎症剤の面からは検討が少ないクリシンやアピゲニン等の式(1)(ただし、R1=R2=R3=H、又はR1=R3=H、R2=OH)で示される化合物が特に高度不飽和脂肪酸との共存下において、マクロファージ様に分化した単球系培養細胞(急性単球性白血病細胞、THP-1)を大腸菌のリポ多糖(LPS)で刺激した時のTNF-αやIL-1β等炎症性サイトカインの産生を強力に抑制することを見いだし、本発明を完成するに至った。 炎症反応の情報伝達体には活性酸素が含まれている(L. Fialkow et al., Free Radic. Biol. Med., 42, 153-164, 2007)。そのため、従来、ケルセチンやルテオリン等の抗酸化性の強力なフラボノイドが有望な抗炎症剤として取り上げられ、炎症性サイトカインの産生を抑制することが明らかにされてきた(T. Wadsworth et al., Biochem. Pharmacol., 57, 941-949, 1999)。しかし、本発明者らが検討したところ、抗酸化性がほとんどないフラボノイドであるクリシンやアピゲニンでもTNF-α等の産生抑制作用があり、しかも高度不飽和脂肪酸との共存下においてさらに強い抑制作用を示すことを見出した。さらに、この不飽和脂肪酸の併用効果はケルセチンやルテオリンの場合にも認められた。高度不飽和脂肪酸が炎症性サイトカインの産生抑制作用を持つことは既に知られており(特表2006-511514、特開2000-159667)、さらに、それがフェルラ酸誘導体やカルコン類との併用で増強されることは本発明者らが最近明らかにしたところである(特願2006-291726)。 しかし、カルコン類を除く狭義のフラボノイドの高度不飽和脂肪酸との組合せによる生物学的効果は未だほとんど調べられていない。本発明は、抗酸化性の有無に関わらずフラボノイドが高度不飽和脂肪酸と共同して強い抗炎症作用を発揮しうることを初めて明らかにしたものである。 すなわち、本発明は以下のとおりである。1)下記式(1)で示される化合物、及び炭素数16〜22の不飽和脂肪酸若しくはそのグリセリド又は低級アルキルエステルを活性成分として含有することを特徴とする動物細胞における炎症性サイトカイン産生抑制剤。2)上記グリセリドが、炭素数16〜22の不飽和脂肪酸のモノ、ジまたはトリグリセリドであることを特徴とする、1)に記載の動物細胞における炎症性サイトカイン産生抑制剤。3)上記低級アルキルエステルが、炭素数16〜22の不飽和脂肪酸のエチル、メチル、プロピル、もしくはブチルエステルであることを特徴とする、1)に記載の動物細胞における炎症性サイトカイン産生抑制剤。4)炭素数16〜22の不飽和脂肪酸が4Z,7Z,10Z,13Z,16Z,19Z-ドコサヘキサエン酸、4Z,7Z,10Z,13Z,16Z-ドコサペンタエン酸、7Z,10Z,13Z,16Z,19Z-ドコサペンタエン酸、5Z,8Z,11Z,14Z,17Z-エイコサペンタエン酸、6Z,9Z,12Z,15Z-オクタデカテトラエン酸、α-リノレン酸、リノール酸、オレイン酸及びアラキドン酸からなる群から選ばれた1種以上であることを特徴とする、1)〜3)のいずれかに記載の動物細胞における炎症性サイトカイン産生抑制剤。5)式(1)で示される化合物がクリシン(式1においてR1=R2=R3=H)、アピゲニン(式1においてR1=R3=H、R2=OH)、ルテオリン(式1においてR1=H, R2=R3=OH)、ケンフェロール(式1においてR1=R2=OH, R3=H)、ケルセチン(式1においてR1=R2=R3=OH)の中から選ばれる1つ以上の化合物であることを特徴とする、1)〜4)のいずれかに記載の動物細胞における炎症性サイトカイン産生抑制剤。 本発明において使用する、式(1)で表される化合物と高度不飽和脂肪酸の混合組成物は、動物の免疫細胞におけるTNF-αやIL-1β等の炎症性サイトカインの産生を抑制する。その結果、個体レベルでは関節リウマチや潰瘍性大腸炎等の慢性炎症疾患の症状を緩和させる効果を有する。 一方、炎症性サイトカインの産生抑制物質として知られている従来のピラゾール誘導体等の物質は、安全性、副作用の問題を抱えているのに対し、本発明のフラボノイド化合物は、従来から、野菜、果物、ハーブ、漢方薬、プロポリス等健康増進剤の成分として喫食あるいは服用されており、またドコサヘキサエン酸等の高度不飽和脂肪酸も魚油の成分として摂取されてきたものであるため、これらの成分の組合せになる本発明の薬剤は安全性が高いものといえる。 TNF-α等の炎症性サイトカインはリウマチや大腸炎ばかりでなく、肥満や誤嚥など色々な局面で過剰生産され、潜在的な疾病原因となっている。従って、このようなTNF-α等の炎症性サイトカインの恒常的なコントロールは健康維持にとり極めて重要な意義がある。本発明の薬剤は上述のように食品やそれに近縁する素材の成分で構成され安全性が高いため、日常的かつ長期の摂取が可能と考えられ、治療剤としてばかりでなく、健康維持機能性食品添加物としても有用な薬剤である。 本発明の炎症性サイトカイン産生抑制剤は、以下の式(1)で表される化合物及び炭素数16〜22の不飽和脂肪酸またはそのグリセリドもしくは低級アルキルエステルを配合することにより得られる。 本発明における式(1)の化合物のうち、好ましい化合物としては、例えばクリシン(式1においてR1=R2=R3=H)、アピゲニン(式1においてR1=R3=H、R2=OH)、ルテオリン(式1においてR1=H, R2=R3=OH)、ケンフェロール(式1においてR1=R2=OH, R3=H)、ケルセチン(式1においてR1=R2=R3= OH)などがあげられる。また、これらのO-グリコシド型の配糖体も用いられる。 これらのフラボノイド化合物は、いずれも30μM の低濃度で動物細胞におけるTNF-α産生を40〜50%抑制するが、これに10μMのドコサヘキサエン酸を併用すると、抑制率は80%以上に達する。また、IL-1βの産生に対してはこれらのフラボノイドを10ないしは30μMにおいて10μMのドコサヘキサエン酸と併用するならば、ドコサヘキサエン酸のみでは65%の抑制率が80%以上となる。 さらに、本発明の式(1)で示される化合物と高度不飽和脂肪酸のコンビネーションは、TNF-αやIL-1β等炎症性サイトカインの産生を抑制するほか、さらに動物細胞における一酸化窒素(NO)の産生をそれぞれ単独使用の場合よりも強力に抑制する。 本発明で用いられる炭素数16〜22の不飽和脂肪酸は、2重結合の数が1〜6の天然に広く分布している脂肪酸であり、具体的には、ドコサヘキサエン酸(4Z,7Z,10Z,13Z,16Z,19Z-docosahexaenoic acid)、(n-6)ドコサペンタエン酸(4Z,7Z,10Z,13Z,16Z-docosapentaenoic acid)、(n-3)ドコサペンタエン酸(7Z,10Z,13Z,16Z,19Z-docosapentaenoic acid)、エイコサペンタエン酸(5Z,8Z,11Z,14Z,17Z-eicosapentaenoic acid)、アラキドン酸(5Z,8Z,11Z,14Z-eicosatetraenoic acid)、ステアリドン酸(6Z,9Z,12Z,15Z-octadecatetraenoic acid)、ホモ-γ-リノレン酸(8Z,11Z,14Z-eicosatrienoic acid)、α-リノレン酸(9Z, 12Z, 15Z-octadecatrienoic acid)、γ-リノレン酸(6Z, 9Z, 12Z-octadecatrienoic acid)、リノール酸(9Z,12Z-octadecadienoic acid)、オレイン酸(9Z-octadecenoic acid)、共役リノレン酸(10E, 12Z-octadecadienoic acid又は9Z, 11E-octadecadienoic acid)などが挙げられる。 これらのうちでは、とりわけ魚油に含まれるドコサヘキサエン酸やエイコサペンタエン酸等の高度不飽和脂肪酸が、高い炎症性サイトカイン産生抑制効果をもたらす。 また、これらの不飽和脂肪酸はグリセリドであってもよく、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリドのいずれでもよく、また、グリセロール中の不飽和脂肪酸の結合位置は1、2、3位のいずれでもよく、さらにジグリセリド、トリグリセリドの場合には当該不飽和脂肪酸以外の脂肪酸、例えばパルミチン酸やステアリン酸が結合していてもよい。また、低級アルキルエステルとしてはエチルエステルの他に、メチル、プロピル、もしくはブチルエステルも用いられる。 一方、本発明に関わる式(1)で示される化合物は、それ自体公知であり有機合成も容易であるが、豆類の種皮など食用植物から公知の方法で容易に抽出・調製される(特表2001-500546)。この場合、不都合な夾雑物がなければ粗抽出物のままでも用いられる。特に、当該フラボノイドの配糖体が植物から抽出されることが多いが、それらの配糖体も生体内では酵素的に加水分解されてフラボノイドを生じるので、遊離のフラボノイドと同様に用いられる。不飽和脂肪酸やそれを含むグリセリド、低級アルキルエステルは、魚油、植物油、微生物産生油脂等から公知の方法で容易に製造される。 本発明に用いる場合、式(1)の化合物の添加量は、化合物の種類、精製の方法や程度、求められる効果の程度により、生理的に安全な範囲で加減する。例えば飲用水の1mlもしくは食物の1gあたり数mg以下とするが、総摂取量や摂取形態に応じて、生理的に安全な範囲内で適宜増減する。不飽和脂肪酸もしくはそのグリセリドやエステルの添加量も化合物の種類、純度、求められる効果の程度等により、生理的に安全な範囲内で適宜増減する。次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明する。〔実施例1〕ヒトTHP-1急性単球性白血病細胞(大日本製薬株式会社より購入)を10%の牛胎仔血清(FBS)を含むRPMI-1640培地で前培養後、1 x 105 cells/mlの懸濁液とし、0.1μMのphorbol 12-myristate 13-acetate (PMA) を添加してから0.1mlづつ96-wellプレートに分注した。3日間培養後、細胞がマクロファージ様に分化し底面に張り付いたことを検鏡・確認してから、各ウェルの培地を10μM のドコサヘキサエン酸(DHA)を加えたかもしくは加えていない10%FBS入り新鮮培地の0.2mlづつに交換した。次いで各ウェルの培地に所定濃度(0.1〜3 mM)のサンプルのエタノール溶液またはエタノールのみを2μl添加し、さらに3時間培養した。 次いで、大腸菌細胞膜のリポ多糖(0127:B8、Sigma社製)を33μg/mlの濃度で含むリン酸緩衝液の6μlづつを各ウェルに添加し、20時間培養した。培地を回収し、ELISAキット(Endogen社製)でTNF-α濃度を測定した。培地を回収後ウェルに残った細胞は0.2%クリスタルバイオレット−20%メタノール液で染色し、十分水洗後、1%SDS水溶液の0.1mlづつを各ウェルに加えて色素を溶出させプレートリーダー(595nm)で吸光度を測定して細胞数の指標とした。用いたサンプルのうち、クリシンとケンフェロールはAlexis社製、ルテオリンはExtrasynthese社製、アピゲニンと (+)-カテキンはSigma社製、ケルセチンはNacalai Tesque社製である。 結果を図1に示す。培養液中のサンプルの濃度(μM)は図中横軸に示してある。図1Aの結果から、本発明のフラボノイドが(カテキンを除いて)濃度依存的にTNF-αの産生を抑制し、さらに、培地にドコサヘキサエン酸が同時に添加されていると一層強く抑制することがわかる。後の参考例1で示すようにクリシンやアピゲニンには抗酸化性はほとんどない一方、カテキンが強い抗酸化性を示すが、本実験ではクリシンやアピゲニンがTNF-α産生抑制活性を示すのにカテキンは不活性であったことから、抗酸化性とTNF-α抑制活性は直接の関係がないことが明らかである。なお、図1Bに示すように、細胞数の指標となる色素濃度は実験終了後にコントロールとサンプル間で通常20%以下しか違いがなかったことから、TNF-α産生の大きな低下は細胞の逸失によるものではないことが確認された。〔実施例2〕実施例1の実験で得られた培養液中のIL-1βの濃度をELISA(Endogen社製)で測定した結果を図2に示す。フラボノイドの濃度(μM)は横軸に示してある。この結果から、3μMのアピゲニンや10μMのルテオリンとケンフェロール(図中Kaempf.)は単独ではIL-1βの抑制効果はないが、高度不飽和脂肪酸のDHAと併用すると、DHAの抑制作用を顕著に強化することがわかる。また、ここに示したIL-1βの産生抑制では抗酸化性のないクリシンやアピゲニンの方が抗酸化性のあるルテオリンやケルセチンよりも強い活性を示しており、さらに、いずれの場合もDHAの併用により抑制作用が強化されている。〔実施例3〕実施例1の実験で得られた培養液中のIL-6の濃度をELISA(Endogen社製)で測定した結果を図3に示す。フラボノイドの濃度はいずれも10μMである。この結果から、10μMのアピゲニンやケルセチンは単独でもIL-6の産生を抑制する上、DHAの抑制作用を強化する効果のあることがわかる。〔実施例4〕炎症反応のシグナル分子として一酸化窒素(NO)も重要な役割を果たしており、NOの産生抑制も炎症の抑制につながる。マウスRAW264マクロファージ細胞株(理化学研究所から購入)を10%FBS入りのDMEM培地で前培養し、トリプシン処理で回収して2 x 105 cells/mlの懸濁液とし、0.2mlづつ96-ウェルプレートに植え込んだ。2日間培養後、各ウェルの培地を10μM のドコサヘキサエン酸(DHA)又はエイコサペンタエン酸(EPA)を加えたかもしくは加えていない10%FBS入り新鮮培地の0.2mlづつに交換した。 次いで各ウェルの培地に所定濃度(0.1〜3 mM)のサンプルのエタノール溶液またはエタノールのみを2μl添加し、さらに3時間培養した。次いで、100μg/mlの大腸菌細胞膜リポ多糖(0127:B8、Sigma社製)、10μg/mlのアルギニン、及び1 μg/mlのIFN-γを含む培地を6μlづつ各ウェルに添加し、18時間培養した。培地を回収し、培地中でNOから転換生成した亜硝酸イオンをグリース試薬(Sigma社製)で定量した。図4Aに示した結果から、フラボノイドがLPSで刺激されたマクロファージ細胞におけるNO産生を抑制すること、さらに、DHAやEPAが同時に添加されると一層強く抑制することがわかる。なお、細胞をクリスタルバイオレットで染色し吸光度を測定して細胞数の指標とした結果を図4Bに示してある。〔参考例1〕文献(K. Hyland et al., Anal. Biochem., 135, 280-287, 1983)の方法によりフラボノイドのスーパーオキシドアニオンラジカルの消去能(抗酸化活性)を測定した。結果を図5に示す。細胞試験に用いた濃度(1〜30μM)ではクリシンはほとんど抗酸化性を示さず、また、アピゲニンもカテキンやルテオリンと比べるとごく弱い抗酸化性しか示さないことがわかる。なお、ケルセチンの抗酸化性は本法では測定が困難なので、これに代えて抗酸化性の目安となる次に記載するDPPHラジカルの消去率でクリシンやアピゲニンと比較した。〔参考例2〕文献(L. Wang et al., J. Agric. Food Chem., 54, 9798-9804, 2006)の方法に準じてフラボノイドを加えた時のDPPHラジカルの消去率を吸光度の変化から測定した。結果を図6に示すが、数十μMのレベルではクリシンとアピゲニンはラジカル消去活性をほとんど示さないのに、ケルセチンは強い消去活性を持っていることがわかる。Aは、フラボノイドとDHAの併用によりTHP-1細胞におけるTNF-α産生が抑制されることを示すグラフである。縦軸の値はコントロールウェルにおけるTNF-α濃度を100としたときのサンプルウェルにおけるTNF-α濃度の相対値(3つのウェルの平均と標準偏差)であり、横軸に付した数字はサンプルの濃度(μM)である。Bは各ウェルの細胞をクリスタルバイオレットで染色し、洗浄後、色素を抽出して測定した吸光度(3つのウェルの平均と標準偏差)である。フラボノイド(3〜30μM)とDHAの併用によりTHP-1細胞におけるIL-1β産生が抑制されることを示すグラフである。縦軸の値はコントロールウェルにおけるIL-1β濃度を100としたときのサンプルウェルにおけるIL-1β濃度の相対値(3つのウェルの平均と標準偏差)である。フラボノイド(10μM)とDHAの併用によりTHP-1細胞におけるIL-6産生が抑制されることを示すグラフである。縦軸の値はコントロールウェルにおけるIL-6濃度を100としたときのサンプルウェルにおけるIL-6濃度の相対値(2つのウェルの平均と標準偏差)である。Aは、フラボノイドとPUFA(DHA又はEPA)の併用によりRAW264細胞におけるNO産生が抑制されることを示すグラフである。縦軸の値はコントロールウェルにおけるGriess試薬による発色の吸光度を100としたときのサンプルウェルにおける同様の吸光度の相対値(2つのウェルの平均と標準偏差)であり、横軸に付した数字はサンプルの濃度(μM)である。Bは各ウェルの細胞をクリスタルバイオレットで染色し、洗浄後、色素を抽出して測定した吸光度の相対値(コントロールウェルの値を100として、2つのウェルの平均と標準偏差で表示)である。フラボノイドの活性酸素消去能(抗酸化性)を示すグラフである。フラボノイドのDPPHラジカル消去能を示すグラフである。 下記式(1)においてR1=R2=R3=OHであるケルセチン、及びドコサヘキサエン酸若しくはそのグリセリド又は低級アルキルエステルを活性成分として含有することを特徴とする動物細胞におけるIL−1β産生抑制剤(但し、トコフェロール又はその誘導体を含有する場合を除く。); 上記グリセリドが、ドコサヘキサエン酸のモノ、ジまたはトリグリセリドであることを特徴とする、請求項1に記載の動物細胞におけるIL−1β産生抑制剤。 上記低級アルキルエステルが、ドコサヘキサエン酸のエチル、メチル、プロピル、もしくはブチルエステルであることを特徴とする、請求項1に記載の動物細胞におけるIL−1β産生抑制剤。


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