タイトル: | 公開特許公報(A)_ドーパミン作動性細胞のインビトロ誘導 |
出願番号: | 2007041989 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | C12N 5/06,A61K 35/12,A61P 25/00,A61P 25/16,A61K 35/30 |
ワイス サミュエル レイノルズ ブレント エイ JP 2007135604 公開特許公報(A) 20070607 2007041989 20070222 ドーパミン作動性細胞のインビトロ誘導 ニューロスフィアーズ ホウルディングス リミテッド 503345112 中村 稔 100059959 大塚 文昭 100067013 宍戸 嘉一 100065189 小川 信夫 100084009 浅井 賢治 100093300 ワイス サミュエル レイノルズ ブレント エイ US 08/339,090 19941114 US 08/482,079 19950607 C12N 5/06 20060101AFI20070511BHJP A61K 35/12 20060101ALI20070511BHJP A61P 25/00 20060101ALI20070511BHJP A61P 25/16 20060101ALI20070511BHJP A61K 35/30 20060101ALI20070511BHJP JPC12N5/00 EA61K35/12A61P25/00A61P25/16A61K35/30 22 1996515599 19951114 OL 22 4B065 4C087 4B065AA90X 4B065AC20 4B065BB02 4B065BB03 4B065BB12 4B065BB15 4B065BB19 4B065BB23 4B065BC03 4B065BC06 4B065BC07 4B065CA44 4C087AA01 4C087AA02 4C087BB45 4C087BB64 4C087MA67 4C087NA10 4C087NA14 4C087ZA01 4C087ZA02優先権主張の基礎となる出願 本出願は1994年11月14日出願の米国特許出願第08/339,090号の一部継続出願である、1995年6月7日出願の米国特許出願第08/482,079号の一部継続出願である。背景技術 分化している神経細胞の表現型発現及び生存並びに確立された神経細胞の生存及び代謝は、種々の細胞外シグナルによって指示されていることが立証されている。隣接する細胞及び神経細胞を取り巻くプロセスは、大部分は成長及びその他の調節因子の放出を通して、細胞分化、代謝機能及び生存の調節において重要な役割を果たしている。 パーキンソン病を含む多くの神経疾患は、神経細胞の特定の群の変性の結果である。パーキンソン病の場合、腹側の被蓋及び黒質(中脳(mesencephalon)、即ち中脳(midbrain)の腹側の部分に位置する)と線条体とを接続する、ドーパミン含有細胞群の変性は異常(condition)の病因と関係がある。 これらのドーパミン作動経路の変性を結果として妨げる又は妨げることができる因子を理解するために、中脳領域から得た組織を広範囲に研究した。ドーパミン作動製ニューロンは培養中ではうまく生存しないので、中脳組織に由来する胚性(embryonic)ドーパミン含有ニューロンは培養することが困難である。しかしながら、これらの培養は、条件培地(conditioned medium)を用いて培養したとき、又は成長因子を用いて処理したときには、高められた生存及び/又は改変された生化学活性を示す。中脳由来の胚組織は、ラットB49膠細胞系、R33神経網膜膠細胞系(neural retina glial cell line)及びJS神経線維腫細胞系(JS Schwannoma cell line)に由来する条件培地(CM)中で成長した(Engele,J.ら、J.Neurosci.Res.、30巻、359〜371頁、1991年)。3つの場合全てにおいて、CMは培養したドーパミン作動性ニューロンの生存を著しく増加させた。ドーパミン作動性ニューロンの高められた生存は、ドーパミン作動性細胞の増殖によるものではなく、ドーパミン作動性ニューロンへの直接の影響よりも、むしろ、中脳の培養に由来の、存在する膠細胞に及ぼすCMの効果及び結果として生じた膠細胞とドーパミン作動性ニューロンとの相互作用に起因していた。 中脳の星状細胞から調製したCM中における胚性の中脳組織の培養、又は中脳由来の星状細胞層上での組織のコカルチャー(co-culture)は、ドーパミン作動性ニューロンを血清の欠乏(deprivation)による死から救う。星状細胞又は線条体及び大脳皮質由来の星状細胞から調製したCMは、著しく弱い保護効果(protective effect)を有していた(Takeshima ら、J.Neurosci.Res.、14(8)巻、4679〜4779頁、1994年)。ある報告において、大脳の星状細胞由来のCMはドーパミン作動性細胞の生存又は増殖に影響を与えないが、細胞群の生化学を変化させ、結果として、ドーパミンの取り込みにおける少しの増加を引き起こした(Gaul及びLubbert、Proc.R.Soc.Lond.B、249巻、57〜63頁、1992年)。 多くが神経組織由来のCMに存在する成長因子は、直接又は隣接する細胞への影響を通じて、ドーパミン作動性ニューロンの生存及び代謝の責任を負う。ドーパミン作動性ニューロンの生存に直接の効果を与えることが報告されている成長因子は、インターロイキン−6(IL−6)(Hamaら、Neurosci.、40(2)巻、445〜452頁、1991年)、脳由来神経栄養因子(neurotrophic factor)(BDNF)(Hyman ら、Nature、350巻、230〜232頁、1991年)、塩基性繊維芽細胞成長因子(FGF−2、形式的にbFGFと記載する)(DalTosoら、J.Neurosci.、8(3)巻、733〜745頁、1988年、Ferrariら、Dev.Biol.、133巻、140〜147頁、1989年)及びラットB49細胞系により分泌された膠細胞系由来神経栄養因子(GDNF)(Lin,L.G.ら、Science、260巻、1130〜1132頁、1993年)を含み、これらの全ては、解離した(dissociated)ラット又はマウス胚中脳培養におけるドーパミン作動性ニューロンの生存を、ニューロン又は膠細胞数の増加なしに特異的に増加させる。GDNFはドーパミン作動性ニューロンの形態的な分化を劇的に増加させ、結果として、より広範囲にわたる神経の成長(outgrowth)及び細胞の大きさの増加を引き起こす。例えば神経成長因子(NGF)(Hatanaka及びTsuki、Dev. Brains Res.、30巻、47〜56頁)、血小板由来増殖因子(PDGF)及びインターロイキン−1(IL−1)(Engele及びBohn、J.Neurosci.、11(10)巻、3070〜3078頁、1991年)、Mayer,E.、Dev.Brain Res.、72巻、253〜258頁、1993年)並びに神経成長因子(NGF)、Engele及びBohn、同書)等のある増殖因子は、胚性の中脳組織において、膠細胞を介した機構を通じて、ドーパミン作動性細胞の生存を支えることが報告されている。 インビボにおける研究は、中脳及び線条体間のドーパミン作動性経路における機構的又は化学的な傷害により引き起こされた損傷は、上皮増殖因子(EGF)(Pezzoli ら、Movement Disorders、6(4)巻、281〜287頁、1991年)及びBDNF(Hyman ら、前出)を用いた処理により、著しく減少したことを示している。FGF−2又はNGFではなく、サイクリックAMPを用いたインビトロ処理は、1−メチル−4−フェニルピリジニウム(MPP+)により生じた化学的に誘導した変性に反応して、培養した中脳のドーパミン作動性ニューロンの生存を増加させた(Hyman ら、前出、Hartikkaら、J.Neurosci.Res.、32巻、190〜201頁、1992年)。FGF−2で刺激した星条細胞のCMの使用はドーパミンの取り込みを高めたけれども、このCMの使用は、MPP+を用いてニューロンに化学的に傷害を与えたとき、保護効果を有していなかった(Gaul及びLubbert 前出)。 通常ドーパミン作動するニューロンのもとである胚組織(すなわち、通常ドーパミン作動性組織)から得た細胞の多く、例えば中脳及び嗅球等は、初代培養条件の下、結果としてドーパミン作動性ニューロンに分化するだろう。しかしながら、脳の通常ドーパミン作動性ニューロン領域から得た組織において、神経組織由来の支持細胞層とコカルチャーすることにより、ドーパミン作動性細胞への分化を誘導することができる。嗅球のドーパミン作動性ニューロンは、胚性の嗅球ニューロンを、嗅球の上皮ニューロンと共にコカルチャーしたとき、数において5倍の増加を示した。可溶性の因子であり、上皮細胞に存在するカルシトニン遺伝子関連ペプチド(calcitonin gene-related peptide)(CGRP)は、嗅球における追加のドーパミン作動性ニューロンの誘導の責任を負うことが信じられている(Denis-Donini、Nature、339巻、701〜703頁、1989年)。ラット胚性の新線条体(neostriatal)及び黒質組織の、黒質領域から得た膠細胞の支持細胞層上での、1〜3週間のコカルチャーは、両方の領域から培養した組織において、チロシンヒドロキシラーゼの免疫反応性(TH+)により示されるドーパミン作動性細胞の発現を誘導する。しかしながら、同じ組織を、新線条体由来膠細胞とコカルチャーしたとき、ドーパミン作動性細胞は黒質組織だけでなく、新線条体においても見られた(Beyer ら、Neurosci.Lett.、128巻、1〜3頁、1991年)。新線条体組織(成人においてはドーパミン作動性細胞を含まない領域)におけるTH−IRの出現の基礎となる機構は決定されなかった。しかしながら、これは、線条体組織の存在に対する黒質支持細胞層のTH+細胞の誘導、線条体細胞におけるドーパミン作動性能力の誘導、又は線条体組織におけるドーパミン作動性細胞の誘導によるものであったのかもしれない。そのような細胞は、線条体(Tashiro ら、Neurosci.Lett.、97巻、6〜10頁、1989年)及び皮質(Satoh 及びSuzuki、Dev.Brain Res.、53巻、1〜5頁、1990年)における発達の間、一時的に生じることが報告されている。少数のTH+細胞(140 TH+細胞/cm2)は、BDNF及びドーパミンの組合わせを使用して、10%ウシ胎仔血清を含む培養培地中における、胚ラット皮質由来の組織中で誘導された。BDNF又はドーパミンを単独で使用したとき、ほとんどのTH+細胞は見られなかった(Zhouら、Dev.Brain Res.、81巻、318〜324頁、1994年)。FGF−1と共にインキュベートしたとき、胚マウス線条体組織由来の幾つかの細胞は、TH+を誘導され、FGF−1及び筋肉組織より得た未同定の>10 kDの分画の組合わせを使用して、高められた結果を得ることができる(Duら、J.Neurosci.、14(12)巻、7688〜7694頁、1994年)。 パーキンソン病を特徴付ける黒質のドーパミン作動性ニューロンの変性は、減退している線条体への天然ドーパミンの供給を増加させる薬理学的な干渉を使用することにより標準的に処置される。しかしながら、例えば薬物処置に対する耐性の発達及び考えられる副作用等の、薬物処置に関する問題がある。胚黒質組織を使用した神経移植片は、げっ歯動物及び霊長目の動物並びにある種のヒトにおける実験的に誘導されたパーキンソン症候群を軽減する可能性を示した。しかしながら、移植片の生存は僅かで、胚性ドーパミン作動性組織の限られた量のみが利用できる。1人のヒト移植片に対して充分な数のドーパミン作動性ニューロンを得るために、平均して4〜10の新鮮なヒトの胚が要求される(Widnerら、N Engl J Med、327巻、1556〜1563頁、1992年)。好ましい処置は、生じた変性の防止、又は変性量の減少を含むだろう。一度損傷が生じたときは、神経細胞、好ましくは非腫瘍細胞又は増殖を誘導するために故意に不死化していない細胞、特に好ましくは患者自身の神経組織由来の細胞を使用して、新しいドーパミン作動性ニューロンを移植することにより失われた細胞を置換するだろう。代わりに、侵略性が低い治療は、損傷したドーパミン作動性ニューロンの機能を置換するための、患者自身の神経細胞群のインビボ操作を含むだろう。 先行技術は、膠支持細胞層(glial feeder layer)の使用若しくはある成長因子又は条件培地の、中脳組織又は他のドーパミン作動性組織への適用を通して、ドーパミン作動性細胞の培養を得ることができることを提案している。これらの処置は、分化を誘導するか、生存を増加させるか、又はインビトロで培養した正常なドーパミン作動性組織由来の細胞の代謝を変えることができる。しかしながら、他の非ドーパミン作動性の脳組織由来の細胞をドーパミン作動性細胞に誘導する培養方法は限定されている。一方、例えば黒質及び嗅球等の領域(標準的にはかなり高いドーパミン作動性細胞群を含む領域)由来の支持細胞層は、ある胚性の中枢神経系(CNS)組織内のドーパミン作動性細胞の出現を誘導することができることが証明されているが、非ドーパミン作動性ニューロン組織由来の細胞を、例えば線条体等の、通常ドーパミンを含まない組織におけるドーパミンの出現を誘導するために設計された組織培養における支持細胞層として使用することができる証拠は存在しない。 ある目的、特に移植及びある薬剤テスト操作のためには、ドーパミン作動性細胞の分化を誘導するための、完全に定義された培養培地の使用は有利であろう。もし、細胞がドーパミン作動性及び通常非ドーパミン作動性神経組織由来の細胞であり、従って1つの胚から生成することができるドーパミン作動性細胞の数を最大化するときは、特に有利であろう。 あらゆる年齢の動物から得た組織由来の、全ての脳組織由来の神経細胞を、支持細胞層基質の存在又は非存在下で、ドーパミン作動性細胞への分化を誘導する信頼できる方法に対する必要性が当該技術分野に存在する。特に、通常ドーパミン作動性細胞体を含まないが、正常機能のためにドーパミンを要求する領域、例えば線条体等に由来する細胞におけるドーパミンの発現を誘導することは有利である。 最近、胚性及び成熟した組織から得た多分化能神経幹細胞はインビトロで増殖し、多数の神経幹細胞の子孫を生成することができ、適当な条件下で、ニューロン及び膠に分化することができることが証明されている(PCT出願、国際公開第WO93/01275号、第WO94/16718号、第WO94/10292号及び第WO94/09119号パンフレット)。CNSのあらゆる領域由来の多分化能神経幹細胞の増殖した子孫から、ドーパミン作動性細胞を生成することは有利であろう。 従って、本発明の目的は、例えばドーパミン欠乏の患者への移植及び薬剤スクリーニング(drug screening)操作等の様々な応用のために、ドーパミン作動性細胞の信頼できる供給源を供給するために、通常非ドーパミン作動性組織から得た多数の神経細胞を、インビトロで、ドーパミン作動性細胞に分化するよう誘導する方法を提供することである。 移植用、薬剤スクリーニング用及びその他の目的用のドーパミン作動性細胞の無限の量を供給するために、未分化の、多分化能神経幹細胞の増殖した子孫を含むことが知られているCNSのあらゆる領域に由来する前記細胞を、ドーパミン作動性細胞に分化するよう誘導する方法を提供することは本発明のさらなる目的である。 更に、本発明の目的は、完全に定義された培養条件を使用し、従って、単一の胚性の脳から得たドーパミン作動性細胞の数を増加させるための、細胞の支持層、条件培地又は血清の存在を要求しない組織培養方法を提供することである。そのような細胞は、例えばドーパミン欠乏患者への移植及びある薬剤スクリーニング操作等の特定の応用において使用されるだろう。 本発明のこれらの及び他の目的並びに特徴は、以下に述べる詳細な説明及び添付した請求の範囲より、当業者にとって明白になるだろう。 前記の文献は、請求した本発明を開示していると信じられ、先行技術であると推定されるものではない。文献は背景技術の情報の目的のために提供される。発明の概要 インビトロで、神経細胞におけるチロシンヒドロキシラーゼの発現を誘導する方法が開示される。前記方法は、神経細胞を、繊維芽細胞成長因子ファミリーの少なくとも1種及び条件培地及びトランスフォーミング増殖因子ベータファミリー分子からなる群より選ばれる少なくとも1種の添加物を含む培養培地と接触させることからなる。前記方法は、線条体及び皮質等の通常非ドーパミン作動性神経組織から得られる神経細胞におけるチロシンヒドロキシラーゼの発現を誘導する。 ドーパミン作動性細胞を要求する患者における神経障害を治療する方法が開示される。前記方法は、神経細胞を、繊維芽細胞成長因子ファミリーの少なくとも1種及びトランスフォーミング増殖因子ベータファミリーの少なくとも1種を含む培養培地と接触させ、分化する又は分化したドーパミン作動性細胞を生成し、次いでドーパミン作動性細胞を患者に移植することからなる。図面の簡単な説明 図1.成体マウスのサブベントリキュラー(subventricular)領域におけるサブエペンダイマル(subependymal)細胞の分裂を、BrdUの繰返しの注射により24時間かけて標識した。最後の注射30分以内に、マウスを屠殺し、次いで脳を取り除いた。サブベントリキュラー領域を取り除き、分離した細胞を、ラットB49膠細胞系及びFGF−2(20ng/ml)由来の条件培地と共にまたはなしの完全培地を使用して、ポリ−L−オルニチンで被覆したカバーグラス上で培養した。培養3日後、細胞を固定し、TH(ユージーン テック(Eugene Tech)、ポリクローナル 1:1000)及びBrdU(アマシャム(Amersham)、モノクローナル、1:100)について、デュアル−ラベル(dual-label)間接免疫細胞化学処理をした。TH−免疫反応性でもあったBrdUで標識した細胞(分裂しているサブエペンダイマル細胞)は、条件培地及び成長因子を使用した実験においてのみ見られた。(A)TH−免疫反応性(B、矢印)である単一のBrdU−免疫反応性細胞(矢印)は、成熟した増殖しているサブエペンダイマル細胞が、条件培地及び成長因子の存在下でTHの発現を誘導することができることを示唆している。 図2.単一の、分離していない6日齢の初代に生成したニューロスフェア(neurosphere)を、ラットB49膠細胞系及びFGF−2(20ng/ml)由来の条件培地と共のDMEM/F12ホルモン混合培地中、ポリ−L−オルニチンで被覆したカバーグラス上で培養した。24時間後の免疫組織化学的分析は、TH+細胞の存在を明らかにした。(A)培養24時間後のニューロスフェアの位相差顕微鏡写真。(B)TH−免疫組織化学処理した、Aと同様のスフェアは、ニューロン形態を有する少なくとも1種のTH+細胞の存在を明らかにした。 単一の、分離していない6日齢の2世代目(second passage)のニューロスフェアを、BrdUを用いて標識し、次いで線条体由来の星条細胞のコンフルエントベッド上で培養した。培養24時間後、細胞を、TH(ユージーン テック、ポリクローナル 1:1000)及びBrdU(アマシャム、モノクローナル、1:100)について、二重標識間接免疫細胞化学処理をした。(A)BrdU−免疫反応性細胞(矢印)は(B)TH−免疫反応性細胞(矢印)であった。(C)TH−免疫反応性細胞(矢印)はMAP−2免疫反応性(D)であり、これは形態に加えて、他のニューロンの特徴を証明している。発明の詳細な説明 通常非ドーパミン作動性神経組織から得た初代細胞由来のドーパミン作動性細胞のインビトロ誘導 「ドーパミン作動性神経組織」という用語は、完全に発達した状態で、かなりの数のドーパミン作動性細胞体を含むことが知られているCNS領域由来の組織をいう。ドーパミン作動性細胞は、細胞内におけるチロシンヒドロキシラーゼ(TH)の存在又はドーパミンデカルボキシラーゼの存在及び/又はドーパミンベータヒドロキシラーゼの不在、ポリメラーゼ連鎖反応技術又はドーパミンに対する抗体により決定される、神経組織に存在する神経細胞である。チロシンヒドロキシラーゼは、ドーパミン合成を導く生化学経路における律速酵素であり、当該技術分野において一般にドーパミン作動性ニューロンのマーカーとして使用されている。ドーパミン作動性組織は、網膜、嗅球、視床下部、迷走神経背側核、孤束核、ペリアクエデュクタル(periaqueductal)灰白質、腹側のテグメナム(tegmenum)及び黒質の領域に見出される。本明細書において使用される「通常非ドーパミン作動性神経組織」という用語は、ドーパミン作動性神経組織ではない発達したCNS領域由来の組織をいう。 本明細書に開示された方法を使用することにより、分離した神経組織から得た初代細胞のチロシンヒドロキシナーゼの発現が誘導される。「初代神経細胞」という用語は、インビトロで(2世代目の培養に)継代していない神経組織から得た細胞をいう。初代神経細胞は、あらゆる無菌手順を使用した動物からの組織の分離、初代細胞の懸濁液を生成するための組織の分離及び細胞を細胞の生存を支持することが知られている培地に置くことにより調製する。初代細胞は、通常非ドーパミン作動性神経組織から得た細胞内のドーパミン合成を誘導する成長因子からなる培養培地にさらされる。「成長因子」という用語は、例えばタンパク質、ペプチド、アミノ酸、脂質、炭水化物、核酸、ヌクレオチド又は神経細胞に単独又は他の因子との組み合わせて発達(growth)、増殖(proliferative)、又は栄養に関する効果を与える他の物質等の生物学的因子(すなわち、CNS細胞に機能しうる生物的に活性な物質)をいう。ドーパミン合成を誘導する成長因子は細胞上の受容体に結合し、ドーパミン前駆体分子及びドーパミン合成に関係する酵素のメッセンジャーRNA(mRNA)の発現の開始又は発現の増加を誘導する。好ましい成長因子は、繊維芽細胞成長因子ファミリー(例えば、FGF−1又はFGF−2)若しくは細胞上のFGF受容体に結合することができる同等の成長因子である。FGF及び同等の成長因子は、単独又は他の成長因子と組み合わせて使用することができる。成長因子は一般的に約1〜100ng/ml、通常約5ng/ml〜60ng/mlの濃度で添加する。最適濃度は約10〜30ng/mlの範囲にあり、20ng/mlが最も好ましい。FGFファミリーを使用する場合、ヘパラン硫酸、FGFの受容体への結合を促進するグルコサミノグリカン分子は、0.2μg/ml〜20μg/ml、好ましくは0.4μg/ml〜4μg/mlの濃度で培養培地に添加することができる。最も好ましくは、約2μg/mlの濃度である。好ましい態様において、培養培地は、トランスフォーミング成長因子ベータ(TGFβ)ファミリーのメンバーと組み合わせたFGFからなる。TGFβファミリーは、塩基性ミエリンタンパク質(BMP−2、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7)、アクチビンA及びB、デカペンタプレジック(decapentaplegic)(dpp)、60A、OP−2、ドーサリン(dorsalin)、GDF(1、3及び9)、ノダル(nodal)、MIS、インヒビンα、トランスフォーミング成長因子β(TGF−β1、TGF−β2、TGF−β3、TGF−β5)及び膠由来神経栄養因子(glial-derived neurotrophic factor)を含む(Atrisanoら、J.Biochemica et Biophysica Acta、1222巻、71〜80頁、1994年参照)。 もし、TH+細胞を、移植目的又はある薬剤テスト操作目的に使用するならば、細胞の生存を支持するのに必要な栄養分及びホルモンを有する完全に定義された培養培地を使用することが好ましい。「完全に定義された」とは、培地の全ての成分が知られていることを意味する。多数の定義された培養培地は商業的に入手できる。本明細書で「完全培地」と称する、好ましい培地は、ダルベッコ改変イーグル培地(Dulbecco's Modified Eagle's Medium)及びF12栄養物(ギブコ(GIBCO))の1:1の混合物に、0.6%グルコース、2mMグルタミン、3mM炭酸水素ナトリウム、5mMHEPES緩衝液及び定義されたホルモン混合物並びに25μg/mlインスリン、100μg/mlトランスフェリン、20μMプロゲステロン、50μMプトレッシン及び30μM塩化セレンを含む塩混合物(シグマ(Sigma)、10容量%)を加えたものからなる。 培養培地は、生きている細胞にさらされ、それゆえ、例えば細胞によって放出される成長因子等の物質を含む培養培地である条件培地(CM)からなっていてもよい。しかしながら、CMの添加は、培養培地を未定義なものにし、それゆえ、細胞を移植目的及びある薬剤テスト操作に使用するときは好ましくない。培養することができるあらゆる組識から得ることができるCMは、通常非ドーパミン作動性神経組織に由来する細胞におけるドーパミン発現を誘導する及び/又はドーパミン誘導成長因子(dopamine-inducing growth factor)の効果を弱めるだろう。あらゆる量のCMを使用することができる(0〜100%)。一般的に、培養培地は、約25〜100%のCMからなるだろう。好ましいCMは、膠細胞に由来する。B49膠細胞系由来のCM(Schubertら、Nature、249巻、224頁、1974年)及び星状細胞由来のCMが特に好ましい。 初代細胞培養を、約102〜107細胞/ml、より好ましくは約106細胞/mlの密度でプレーティングする。次いで細胞は、例えば組織培養フラスコ、ウェル又はペトリ皿等のあらゆる適当な容器中で増殖することができる。容器は、細胞が付着することができる表面を有していてもよいし有していなくてもよい。細胞が付着することが望ましい場合、一般的に、例えばポリ−D−リジン、ポリ−L−オルニチン、マトリゲル(Matrigel)、ラミニン、フィブロネクチン等のイオン的に荷電した表面及び細胞の付着を誘導することが知られているその他の表面を提供する物質で、容器を処理する必要がある。細胞はある種のプラスチックに付着することができる。しかしながら、ガラス物質を使用するときは、その表面を処理することが望ましい。付着が望ましくないときには、ガラス物質又はある未処理のプラスチック製培養基を使用することができる。ポリ−L−オルニチンで処理した培養容器は、細胞が付着することができる特に適した表面を提供する。代わりに、処理した基質とは対照的に、細胞を、あらゆる型の細胞の支持細胞層床又はそれらの組み合わせの上でコカルチャーすることができる。コカルチャーに好ましいのは、例えばニューロン、星状細胞又はCNSのあらゆる領域由来の乏突起膠細胞等の他の神経細胞の支持細胞床(feeder bed)である。 培養物は、できるだけ生理条件に近いように維持する。pHはpH6〜8の間であるべきである。好ましくは約7.2〜7.6、最も好ましくは約pH7.4である。細胞は、生理的水準に近い温度である30〜40℃に、より好ましくは約32〜38℃、最も好ましくは約35〜37.5℃維持すべきである。細胞は、約5%のCO2、95%のO2及び100%の湿度中で維持すべきである。しかしながら、培養条件は変化してもよい。例えば、1%ウシ胎児血清(FBS)の添加は、膠細胞支持層上での培養物の24時間のコカルチャーした後検出されるTH+ニューロンの数の増加を引き起こし、又、細胞を支持細胞層のない定義されていない培養培地中で増殖させたときの、検出されたTH+細胞の数をも増加させた。1つの好ましい態様は、ラットB49膠細胞系及びFGF−2又はEGF及びFGF−2の組み合わせに由来するCMを含む培養培地中で、初代細胞を増殖させることである。移植用及びその他の目的用に定義された培地中で培養した細胞の好ましい態様は、定義された培養培地(例えば完全培地)及びFGF−2とアクチビン又はBMP−2との組み合わせの中、例えばポリ−L−オルニチンを被覆したカバーグラス等の基質を被覆した表面上で直接、初代組織を増殖させることである。 ドーパミン作動性細胞の誘導は、例えばドーパミンに対する抗体を使用する免疫細胞化学等のドーパミンの存在を測定することができるあらゆる方法、又はドーパミンの取り込みを測定することによるドーパミン作動性細胞の生物化学的活性を測定することができるあらゆる方法を使用して決定する。ドーパミンの合成に関係する前駆体分子の存在を測定することができる。例として、例えばポリメラーゼ連鎖反応及びドーパミン合成に関係する酵素のmRNAを検出するインシトゥーハイブリダイゼーション技術等のチロシンヒドロキシラーゼの存在を検出するための免疫細胞化学分析又はアッセイは、ドーパミン作動性細胞の存在を測定するツールとして有用である。ドーパミン作動性ニューロンの同定は、ニューロンの形態的分析若しくは、ニューロン特異的エノラーゼ(NSE)、ニューロフィラメントタンパク質tau−1及びMAP−2に対する免疫反応性若しくはneu−N(ニューロン核抗原(neuronal nuclear antigen)又はβチューブリン及び/又は活発に分裂している細胞を標識するブロモデオキシウリジン(BrdU)に対する免疫反応性を加えたドーパミン又はドーパミン前駆体の存在を示す、二重又は三重の標識化により達成される。胚性の及び成熟した哺乳類の神経組織由来の、インビトロで増殖した多分化能神経幹子孫に由来する、ドーパミン作動性細胞のインビトロ誘導 多分化能神経幹細胞は報告されており、その可能性のある使用は記載されている(Reynolds及びWeiss、Science、255巻、1707頁、1992年、Reynoldsら、J.Neurosci.、12巻、4565頁、1992年、Reynolds及びWeiss、Restorative Neurology and Neuroscience、4巻、208頁、1992年、Reynolds及びWeiss、Cuello編、Neuronal Cell Death and Repair、1993年)。更にこれらの細胞の有用性は、公開されたPCT出願第WO93/01275号、第WO94/16718号、第WO94/10292号及び第WO94/09119号パンフレットに記載されている。本明細書で使用する「神経幹細胞」とは、例えばアンフィレグリン(amphiregulin)、酸性繊維芽細胞成長因子(aFGF又はFGF−1)、塩基性繊維芽細胞成長因子(bFGF又はFGF−2)、トランスフォーミング成長因子アルファ(TGFα)等の増殖誘導成長因子の存在において、インビトロで、増殖を誘導されることができる、未分化の多分化能神経幹細胞をいう。神経幹細胞は自己維持(self-maintenance)することができ、これは各細胞分裂に伴い、娘細胞も幹細胞になることを意味している。単一の多分化能神経幹細胞の非幹細胞子孫(すなわち前駆細胞)は、ニューロン、星状細胞(I型およびII型)及び乏突起膠細胞に分化することができる。それゆえ、その子孫が多分化経路(multiple differentiative pathway)を有するため、神経幹細胞は「多分化能」である。 本明細書で使用する「神経前駆細胞」という用語は、自身は幹細胞ではない、神経幹細胞由来の未分化細胞のことをいう。幹細胞とは異なる、前駆細胞を特徴付ける特徴は、制限された増殖能力を有し、それゆえ自己維持を示さないことである。それは特定の分化経路に付され、適当な条件下、遂には膠又はニューロンに分化するだろう。 本明細書で使用する「前駆細胞」という用語は、神経幹細胞の子孫のことをいい、従って前駆細胞及び娘神経幹細胞を含む。 幹細胞由来のCNS前駆細胞を、以下の実施例3及び前記の公開されたPCT出願に記載された方法を使用することによって培養することができる。胚において、神経幹細胞含む組織は、線条体、皮質、中隔、視床、腹側の中脳及び脊髄を含むあらゆるCNS領域から得ることができる。しかしながら、成人において、神経組織は、好ましくは、様々な空洞及びCNS内の通路(passageway)に並ぶ組織から得る。例えば、組織は、(第一及び第二)側脳室に隣接して並ぶ領域、及び前脳の第三脳室、中脳水道、第四脳室及び中心管から得ることができる。神経組織由来の成長因子応答性幹細胞は、少なくとも1種の成長因子の存在下、培養培地中で増殖する。培地は好ましくは定義された無血清培地である。単独又はほかの成長因子と組み合わせた、増殖を誘導するために使用してもよい成長因子は、細胞表面の受容体に結合し、細胞に栄養、又は増殖誘導効果を奏するあらゆる分子を含む、前駆細胞を増殖させることができるあらゆる成長因子を含む。そのような因子は、酸性又は塩基性線維芽細胞成長因子(FGF−1及びFGF−2)、上皮成長因子(EGF)、EGF様リガンド(EGF-like ligand)、アンフィレグリン(amphiregulin)、トランスフォーミング成長因子アルファ(TGFα)等を含む。細胞は、分裂を誘導され、星状細胞マーカー、膠線維酸性タンパク質(glial fibrillary acidic protein)(GFAP)、ニューロンマーカー、神経フィラメント(NF)、微小管関連タンパク質(MAP−2)及びニューロン特異的エノラーゼ(NSE)、又は乏突起膠細胞マーカー、ミエリン塩基性タンパク質(myelin basic protein)(MBP)及びガラクトセレブロシド(GalC)に対して免疫反応性がない未分化細胞の集団を生じる。しかしながら、集団内の前駆細胞は、未分化のCNS細胞に見出される中間径フィラメントタンパク質(intermediate filament protein)であるネスチン(nestin)に対し免疫反応性がある。ネスチンマーカーは、Lehndahlら(Cell、60巻、585〜595頁、1990年)により特徴づけられた。前駆細胞の子孫から分化してもよい神経細胞型と関連する成熟した表現型は、ネスチン表現型に対し主に陰性である。 例えばEGF、FGF等の分裂促進因子の連続的な存在下において、ニューロスフェア内の前駆細胞は分裂を続け、結果として、ニューロスフェアの大きさを増大させ、未分化細胞(ネスチン(+)、GFAP(−)、NF(−)、MAP−2(−)、NSE(−)、MBP(−)、Ga1C(−))の数を増加させる。この段階において、細胞は非付着性であり、ニューロスフェアに特有の自由浮遊(free-floating)集団を形成する傾向にある。しかしながら、培養条件は、前駆細胞がネスチン表現型を発現している一方、特有のニューロスフェアを形成しない。 細胞の分化は、イノシトール三リン酸及び細胞内Ca2+の遊離、ジアシルグリセロールの遊離及びロテインキナーゼC及びその他の細胞キナーゼの活性化等を含む、増殖を導く生物学的現象のカスケードを活性化する、当該技術分野において既知のあらゆる方法により誘導されてもよい。ホルボールエステル、分化誘導成長因子及びその他の化学シグナルによる処理は、分化を誘導することができる。分化は、例えばポリ−L−リジン及びポリ−L−オルニチン等のイオン的に荷電した表面で被覆したフラスコ、プレート又はカバーガラス等の固定化基質上に細胞をプレーティングすることによって誘導することができる。 例えばコラーゲン、フィブロネクチン、ラミニン、マトリゲル等のほかの物質を、分化の誘導に使用してもよい。又、分化は、細胞を、増殖誘導成長因子が存在する懸濁液中に置くことによって、増殖のリイニシエーション(reinitiation)なしに(すなわちニューロスフェアの分離なしに)、誘導することができる。 神経幹細胞の子孫の分化を誘導する好ましい方法は、増殖誘導成長因子を含まない培養培地中の固定化した基質上で細胞を培養することからなる。増殖誘導成長因子の除去後、細胞は、基質(例えばポリ−オルニチンで処理したプラスチック又はガラス)に付着し、平板化し(flatten)、ニューロン及び膠細胞への分化を始める。この段階で、培養培地は例えば0.5〜1.0%のウシ胎仔血清(FBS)等の血清を含んでいてもよい。しかしながら、ある用途について、もし定義された条件が要求されるならば、血清は使用されないだろう。2〜3日以内に、ほとんど又は全ての神経幹細胞子孫は、ネスチンに対する免疫応答性を失い、当該技術分野において周知の免疫細胞化学技術の使用による、MAP−2、GFAP及びGa1Cそれぞれに対する免疫応答性に示されるニューロン、星状細胞又は乏突起膠細胞に特異的な抗原を発現する。 要約すると、CNS幹細胞は、線条体、脊髄、脳幹及び視床下部を含む、様々な胚性の又は成熟したCNS領域から単離される。これらの個々の場合において、CNS幹細胞は、自己維持を示し、最後には、ニューロン、星状細胞及び乏突起膠細胞を含む、多数の分化した子孫を生成する。従って、幹細胞は成人の哺乳類のCNSの複数の領域に存在し、インビトロで培養し、成長因子及び/又は他の生物学的因子の適用によって分化が調節される、多数の未分化の神経細胞を得ることができる。これらの技術を使用して増殖した未分化の細胞(細胞懸濁液又は完全なニューロスフェア)を、初代神経組織におけるドーパミン作動性ニューロンの誘導のための前記と同一の方法を使用して培養し、ドーパミン作動性細胞を生成することができる。培養したドーパミン作動性細胞の移植 初代培養又は神経幹細胞の増殖した前駆体の子孫に由来する、分化したドーパミン作動性細胞の精製した群からなる治療用組成物を調製し、レシピエントの脳のドーパミン欠乏領域に投与することができる。代わりに、ドーパミン作動性細胞の形成を誘導する培養培地中で培養した分化細胞からなる治療用組成物を調製してもよい。組成物は、適当な脳領域に投与され、そこで細胞は分化過程が完了する前に移植される。移植に続いて、ドーパミン作動性細胞の分化はインビボで完了するだろう。組成物は、あらゆる適当な精製方法を使用することによって調製した精製細胞からなっていてもよい。又、組成物は、他の型の神経細胞からなっていてもよい。ドーパミン作動性細胞又は前駆細胞を、ドーパミン欠乏領域の近くに移植するあらゆる方法を使用してもよい。例えば線維芽細胞等の細胞懸濁液をCNSに注入する、Gageらの、米国特許第5,082,670号明細書により教示される方法を、本明細書に開示した培養方法により調製した分化したドーパミン作動性細胞の注入に使用してもよい。さらなるアプローチ及び方法は、Neural Grafting in the Mammalian CNS、Bjorklund 及びStenevi 編、1987年に見出すことができるだろう。異種移植及び/又は同種移植は、免疫抑制技術又は移植細胞の生存を高めるホストの寛容性(host tolerance)の誘導を要求するだろう。 ある例においては、レシピエント自身の神経系由来(例えば、生検の間に取り除いた組織由来)の分化する又は分化したドーパミン作動性細胞を調製することができるかもしれない。そのような例において、ドーパミン作動性細胞は、神経幹細胞の子孫に由来する培養中で生成するだろう。分離した神経組織由来の細胞は、例えばEGF又はFGF等の増殖誘導成長因子の存在下で増殖する。数が適当に増えた後、前駆細胞を、ドーパミン作動性細胞の分化を誘導する、成長因子又は成長因子の組み合わせ及び/又は条件培地又は条件培地の組み合わせと接触させる。好ましくは、細胞は増殖し、ドーパミン発現は、定義された培養培地を使用して誘導される。分化する又は分化したドーパミン作動性細胞からなる組成物を、レシピエントの脳の適当な領域に投与する。組成物は更に、成長因子又は移植における細胞の生存を高めるほかの成分からなっていてもよい。培養したドーパミン作動性細胞を使用した薬剤スクリーニング 本明細書に開示した方法を使用して製造したドーパミン作動性細胞を、ドーパミン作動性細胞に対する薬剤及び他の化合物の効果のスクリーニングに使用してもよい。共に係属している米国特許出願第08/311,099号及び第08/339,090号に開示されたスクリーニング方法を使用してもよい。通常、薬剤及び他の化合物の、分化する又は分化した細胞に、ドーパミンを製造させる及び/又は代謝させる能力に対する効果を測定するだろう。実施例1:初代培養の増殖 E14胎仔白色種マウスの脳を、リン酸緩衝食塩水(PBS)中に置き、解剖して線条体、大脳皮質及び中脳を得た。神経組織を、無血清培地中(ダルベッコ改変イーグル培地)(DMEM)及びF12栄養(ギブコ)中で、先端熱加工したパスツールピペットを使用して、機械的に解剖した。細胞を、106細胞/mlの濃度で、0.5ml/ウェルの完全培地中、24ウェルのヌンクロン(Nunclon)培養皿中のポリ−L−オルニチンで被覆した(15μg/ml、シグマ)ガラス製カバーガラス上にプレーティングするか、又は膠支持細胞床でコカルチャーした。成長因子及び/又は条件培地及び/又は1%血清を、実施例6に概説したように添加した。細胞を、95%の空気、5%のCO2の加湿した雰囲気下、37℃でインキュベートした。実施例2:成熟したサブベントリキュラー領域に由来する細胞における、チロシンヒドロキシラーゼ発現の誘導 脳のサブベントリキュラー領域のサブエペンダイマ(subependyma)における増殖している細胞を標識するために、成体のCDl マウスに、滅菌した塩類溶液中のBrdU(シグマ、120mg/kg)の5回の注入を、2時間の間隔を置いて行った(Morshead及びvan der Kooy、J.Neurosci.、1巻、49頁、1992年)。最終のBrdU注射30分後、動物を屠殺した。線条体を取り除き、1mmの冠状切片に切断し、人工脳脊髄液(aCSF、124mM NaCl、5mM KCl、1.3mM MgCl2、2mM CaCl2、26mM NaHCO3及び10mM D−グルコース(pH7.35、〜280mOsmol)中に置き、室温下、95%のCO2を通気した。aCSF中で15分間置いた後、サブベントリキュラー領域を細かく解剖し(micro dissected out)し、小片に切断し、低−Ca2−aCSF溶液(124mM NaCl、5mM KCl、3.2mM MgCl2、0.1mM CaCl2、26mM NaHCO3及び10MM D−グルコース(pH7.35、〜280mOsmol)、1.33mg/ml トリプシン(9000 BAEF(ベンゾイル−L−アルギニンエチルエステル) 単位/mg)、0.67mg/ml ヒアルロニダーゼ(2000単位/mg)及び0.2mg キヌレン酸を含む、マグネチックスターラを有する、スピナフラスコに移した。溶液に、32℃〜35℃で、95%のCO2、5%のO2を通気した。90分後、組織切片を、通常aCSFへ5分間かけて移し、次いで0.7mg/ml オボムコイド(シグマ)を含むDMEM/F12培地中に置いた。組織を、熱加工で狭くしたパスツールピペットを用いて機械的に摩砕した。細胞を400r.p.m.で5分間遠心分離し、ラットB49膠細胞系(実施例5参照)及びFGF−2(20ng/ml)に由来する条件培地と共の又はなしの完全培地中に再懸濁した。それらを、24−ウェルのヌンクロン組織培養皿中の、ポリ−L−オルニチンで被覆したガラス製カバーガラス上にプレーティングし、37℃、湿度100%で、95%のCO2、5%のO2を通気しながら、3日間インキュベートした。細胞を固定し、実施例11に概説したようにして、TH及びBrdUに対する二重標識間接免疫細胞化学処理をした。CM及びFGF−2で処理した細胞においてのみ(図1)、TH−IRでもあった、BrdUで標識された細胞の存在は、成熟した、増殖している、サブベントリキュラー領域の細胞は、CM及び成長因子の存在下、THの発現を誘導することができることを示唆している。実施例3:胚性の幹細胞の単離及び増殖A.マウス幹細胞 胚性の14日齢(E14)CDl 白色種マウス(チャールズ リバー(CharlesRiver)を断頭し、脳及び線条体を、滅菌手順を使用して取り除いた。組織を、先端熱加工したパスツールピペットを用いて、完全培地中に機械的に分離した。細胞を800r.p.m.で5分間遠心分離し、上清を吸引し、計数用に細胞をDMEM/F−12倍地中に再懸濁した。細胞を、16〜20ng/mlのEGF(マウス顎下腺から精製、コラボレーティブ リサーチ(Collaborative Research)又はTGFα(ヒト組み替え、ギブコ)を有する完全培地中に再懸濁し、前処理した基質を有しない75cm2組織培養フラスコ(コーニング(Corning)中へ、0.2×106細胞/mlでプレーティングし、37℃、湿度100%、95%のCO2/5%O2のインキュベーター中に収めた。細胞は、初代48時間以内から3〜4日間まで、インビトロで増殖し(DIV)、4〜6DIVの間、基質をリフトオフ(lift off)するニューロスフェアを形成した。 7DIVの後、ニューロスフェアを取り除き、400r.p.m.で2〜5分間遠心分離し、ペレットを、2mlの完全培地中、先端熱加工したガラス製パスツールピペットを用いて、個々の細胞に機械的に分離した。1×106の細胞を、20mlのEGF含有完全培地を有する75cm2組織培養フラスコ中へ再プレーティングした。幹細胞の増殖及び新しいニューロスフェアの形成を再び開始した(reinitiate)。この手順を、6〜8日毎に繰り返すことができる。B.ヒト幹細胞 以下に示す決まった手順の吸引流産(suction abortion)手順により得た、胎児のヒト前脳組織(受胎後10.5週)を、先端熱加工したパスツールピペットを用いて、完全培地中に機械的に分離し、完全培地中に置いた。細胞を800r.p.m.で5分間遠心分離し、上清を吸引し、計数用に細胞を、DMEM/F−12倍地中に再懸濁した。細胞を、20ng/mlのEGF(カイロン社(Chiron Corp.)及び10ng/mlのFGF−2(アール アンド ディーシステムズ(R&D Systems))を有する完全培地中に再懸濁し、前処理した基質を有しない培養フラスコ(ヌンクロンT175)中へ、約1.5×106細胞/mlでプレーティングし、37℃、湿度100%、95%CO2/5%O2のインキュベーター中に収めた。細胞は、5日後増殖し、10日目までに、21日目から基質をリフトオフしたニューロスフェアの形成を始めた。 15DIVの後、ニューロスフェアを取り除き、1500r.p.m.で7分間遠心分離した。ペレットを、2mlの完全培地中で150回摩砕することにより個々の細胞に機械的に分離した。細胞を計数し、1.5×106細胞/mlを、前記のEGF及びFGF−2を含む完全培地25mlを含む幾つかの培養フラスコ(ヌンクロンT175)の個々のフラスコに再プレーティングした。幹細胞の増殖及び新しいニューロスフェアの形成が再び始まった。手順を2〜3週間毎に(すなわち、細胞が継代することができるように)繰り返した。実施例4:膠細胞支持細胞層の調製 星状細胞の膠細胞支持層を、出生後のマウス(0〜24時間)から得た線条体から調製した。神経組織を解剖し、細かく刻み、次いでDMEM/F12(1:1)/10%FBS20mgを含む15mlの遠心管に移した。組織を、先端熱加工したガラス製ピペットを用いた摩砕により分離し、DMEM/F12/10%FBS20mgを含むコーニング培養フラスコ中に、150,000細胞/mlの濃度でプレーティングした。初代の星状細胞の膠細胞(astrocyte glial cells)が集密に達したとき、細胞を分離し(トリプシン−EDTAを使用)、24ウェル培養皿のポリ−L−オルニチンで被覆したガラス製カバーガラス上に200,000細胞/cm2でプレーティングした。3〜4日後、集密を回復した。初代の組織培養(実施例1)又は6日経過後の、BrdUで標識した2世代目のニューロスフェア(実施例3)の培養から得た細胞を、2回洗浄し、星状細胞支持床上で細胞又はニューロスフェア(実施例6及び7)をコカルチャーする前に、新鮮培地(無血清、EGF又はBrdU)中で再懸濁した。実施例5:条件培地の調製 条件培地(CM)を、星状細胞又はラットB49膠細胞系から調製した(Schubertら、Nature、249巻、224頁、1974年)。星状細胞の膠細胞支持層を調製した(実施例4)。星状細胞層を、CMを収集する前に、一度継代した。ラットB49膠細胞系の細胞を、星状細胞と同様の条件下で培養した。集密な星状細胞又はラットB49膠細胞系培養物を、PBSを用いて一度、無血清完全培地を用いて二度すすぎ、20mlの同様の培地中でインキュベートした。CMを、インキュベーション開始後24時間、48時間及び72時間後に収集し、次いで1000〜2000r.p.m.で遠心分離し、あらゆる細胞又は細片を取り除いた。CMを−80℃で貯蔵した。実施例6:初代培養由来の細胞におけるTH−IRのインビトロ誘導 系列(paradigum)1:線条体及び大脳皮質の組織由来の初代培養を実施例1に概説したようにして調製した。完全培地(対照)、EGF(20ng/ml)、カイロン)、組換えFGF−2(20ng/ml、アール アンド ディー システムズ)、FGFを加えたEGFの組み合わせ、星状細胞(ACM)又はラットB49膠細胞系条件培地(BCM、実施例5参照)を、単独で又は組み合わせて、プレーティング時(時間、t=0)に個々のウェルに添加した。1%FBS(アップステート バイオテクノロジー インコーポレイテッド(Upstate Biotechnology Incorporated)を、条件培地を入れていない50%のウェルに添加した。TH+細胞検出のための免疫細胞化学分析(実施例5)を、プレーティング24時間後に行った。結果を表1に要約した。1%FBSの無CM(CM-free)ウェルへの添加は、成長因子の存在下において記録されたTH+細胞の数において3倍の増加を引き起こした。FGF−2にBCMを加えた組み合わせは、最も深い結果を与え、平均して約5,000TH+細胞/cm2よりも多い生成を引き起こした。 系列2:初代培養から得た細胞(実施例1)を2回洗浄し、完全培地(対照)又はEGF、FGF−2を添加した完全培地、又はEGF及びFGF−2(各成長因子とも20ng/ml)、1μM BrdU及び1% FBSの組み合わせの存在下、星状細胞支持層上でコカルチャーする(実施例4)前に、新鮮培地中に再懸濁した。間接免疫細胞化学(実施例11)を細胞に行い、24時間培養した。完全培地のみで細胞を培養したときに比べて、FGF−2又はFGF−2を添加したEGFの存在下でコカルチャーしたときに、TH−IRにおける著しい増加が検出された。わずかな、しかし重要な増加が、EGF単独の存在下で見られた。皮質由来の初代細胞は、EGF及びFGF単独に対して類似の反応を示した(対照の値を超える著しい増加)がTH−IRにおける大幅な増加は、EGF及びFGF−2を共に使用したとき見られた。BrdU取り込みに示されるように、成長因子の存在下にもかかわらず、中脳由来の細胞はほとんど有糸分裂的に活性でなかった。結果を表2に要約した。実施例7:定義された培養培地を使用したTH発現のインビトロ誘導 線条体及び大脳皮質の組織由来の初代培養を実施例1に概説したようにして調製した。完全培地(対照)、FGF−2(20ng/ml、アール アンド ディー システムズ)、BMP−2(50ng/ml、カイロン コーポレーション)及びアクチビン(50ng/ml、カイロン コーポレーション)を単独で、又は組み合わせて(FGF−2及びBMP−2を添加した完全培地又はFGF−2及びアクチビンを添加した完全培地)、プレーティング時に個々のウェルに添加した。TH+細胞検出のための免疫細胞化学分析(実施例11)を、プレーティング24時間後に行った。結果を表3に要約した。アクチビンを添加したFGF−2又はBMP−2を添加したFGF−2は、最も深い結果を生じ、平均して約5,000TH+細胞/cm2の生成を引き起こした。対照的に、対照は、完全培地単独と比較して、平均して2TH+細胞/cm2を生成した。実施例8:完全培地を使用した、神経幹細胞由来子孫細胞におけるTH−IRのインビトロ誘導 系列1:単一の、分離していない、6日齢の、初代に生成したニューロスフェア(実施例3参照)を、ラットB49膠細胞系(実施例5参照)CM(実施例5)+20ng/mlのFGF−2を有する又は有しない完全培地中、ポリ−L−オルニチンで被覆したガラス製カバーガラス上にプレーティングし、37℃、湿度100%で、95%のCO2、5%のO2を通気しながら、インキュベートした。プレーティング24時間後、TH+に対する間接免疫細胞化学は、CM及びFGF−2を含むウェル中(図2)、プロセス及びニューロンの形態学と共にTH+細胞の存在を明らかにしたが、完全培地のみを含むウェルにおいては明らかにならなかった。 系列2:単一の、分離していない、6日齢の、2世代目に生成したニューロスフェア(実施例3参照)を、BrdUで標識し、2度洗浄し、完全培地(対照)又はFGF−2(20ng/ml)を添加した完全培地の存在下、星状細胞支持層上でニューロスフェアをコカルチャーする(実施例4)前に、新鮮培地中に再懸濁した。24時間培養した細胞に間接免疫細胞化学(実施例11)を行った。MAP−2陽性に染色した、ニューロン形態を有するTH−IR細胞が、FGF−2を用いて培養したニューロスフェアにおいてみられた。幾つかのTH+細胞は、BrdU免疫反応性を示した(図3)。ラットB49膠細胞系(実施例5参照)CM(実施例5)+20ng/mlのFGF−2を有する又は有しない完全培地中、ポリ−L−オルニチンで被覆したガラス製カバーガラス上にプレーティングし、37℃、湿度100%で、95%のCO2、5%のO2を通気しながらインキュベートした。プレーティング24時間後、TH+に対する間接免疫細胞化学は、CM及びFGF−2を含むウェル中(図2)、プロセス及びニューロンの形態学と共にTH+細胞の存在を明らかにしたが、完全培地のみを含むウェルにおいては明らかにならなかった。実施例9:定義された培養培地を使用した、神経幹細胞由来子孫におけるTH−IRのインビトロ誘導 単一の、分離していない、6日齢の、初代に生成したニューロスフェア(実施例3参照)を、20ng/mlのFGF−2及び20ng/mlのBMP−2の組み合わせ又は20ng/mlのFGF−2及び20ng/mlのアクチビン(実施例7)を有する完全培地中、ポリ−L−オルニチンで被覆したガラス製カバーガラス上にプレーティングし、37℃、湿度100%で、95%のCO2、5%のO2を通気しながらインキュベートした。ドーパミン作動性ニューロンの数を、TH−免疫反応性により決定した(実施例11)。実施例10:ヒト胚性神経幹細胞由来子孫におけるTH−IRのインビトロ誘導 実施例3Bの記載に従い、ヒト神経幹細胞を増殖させ、35回継代し、細胞数を増加させた。12日齢ニューロスフェアを最終世代(final passage)から得た。ニューロスフェアを洗浄し、懸濁し、次いで完全培地中で機械的に分離した。ニューロスフェアを、対照(完全培地)又はTH−誘導条件(0.8ml/ウェル、75%ラットB49膠細胞系由来CM(実施例5)+20ng/ml FGF−2)のいずれかの下、24ウェルのヌンクロン培養皿中の、ポリ−L−オルニチンで被覆した(15μg/ml)ガラス製カバーガラス上にプレーティングし。更に、CM単独(75%)又はFGF−2(20μg/ml)単独を含む細胞調製物をインキュベートし、別々に使用したとき、その効果を決定した。細胞を、37℃、湿度100%で、95の%CO2、5%のO2を通気しながらインキュベートした。1DIV及び3DIV後、TH−IR細胞数を、実施例11に概説したようにして決定した。結果を表4に示す。実施例11:免疫細胞化学 細胞を4%パラホルムアルデヒドで30分間固定し、続いてPBSで10分間の洗浄を3回行った。細胞を、PBS/10%通常ヤギ血清/0.3トリトンX−100中で2時間かけて調製した第一の抗TH抗体(ウサギポリクローナル、1:1,000、エンジーン テック インターショナル インク.(Engene Tech International Inc.)又は1:100、ペル−フリーズ(Pel-freeze))と共にインキュベートした。PBS中で3回のすすぎに続いて、ヤギ抗ウサギローダミン(ジャクソン(Jackson))を、PBS中、室温下で30分間適用した。ある場合においては、MAP−2(ベーリンガー−マンハイム(Boehringer-Mannheim))をニューロンの同定に使用した。次いで細胞をPBS中での10分間の洗浄を3回行い、水ですすぎ、ガラス製スライド上に置き、計数培地(counting medium)としてフルオロセーブ(Fluorosave)(カルバイオケム(Calbiochem))を使用してカバーグラスを置いた(coverslip)。ドーパミン作動性ニューロン数を、200×の倍率での、cm2当たりの全てのTH免疫反応性(TH+)を計数することによって決定した。実施例12:ドーパミン作動性細胞の移植A:培養したヒト神経幹細胞由来の細胞の、パーキンソン病のマウスモデルへの移植 実施例3Bに概説したようにして、胎性のヒト前脳幹細胞を培養中で増殖させ、35回継代した。移植3日前、浮遊しているニューロスフェアを取り除き、ニューロンのTH表現型への分化を高める2つの方法のうちの1つにより処理した。第一のTH増強法について、細胞を前記実施例10に記載したようにして処理した(1μM BrdUを培地に添加)。移植当日、細胞をすすぎ、トリプシン/EDTAを用いて剥離し、次いでトリプシン阻害剤を用いて処理した。細胞を移植のために、20×106細胞/mlの濃度で、HBSS中に懸濁した。第二のTH増強法について、細胞を未処理のフラスコ中に置き、ニューロスフェアを浮遊させたままにした。培養培地成分は第一の方法と同一であった。移植当日、細胞をすすぎ、軽く摩砕し、移植のために、21×106細胞/mlの濃度で、HBSS中に懸濁した。移植の間、全ての細胞を4℃で貯蔵した。 パーキンソン病モデルである宿主ウィスター(Wistar)ラット(約275gm、チャールズ リバー)に対し、6−OHDA(6−ヒドロキシドーパミン、シグマ)の2μg/μl溶液の4μlを、同側の黒質緻密部のドーパミン作動性ニューロン病変に投与した。16日後、ヒト幹細胞子孫を、同側の線条体に与えた。5匹は第一のTH増強方法で処理され、他の5匹は第二の増強方法で処理した。1週間後、6週間後、3月後、動物を屠殺した。 動物を、アルデヒドを用いてトランスカーディアリー(transcardially)に灌流し、脳組織を取り除き、10μm厚さの切片に切断し、次いで顕微鏡スライド上へ直接載せた。二重免疫染色技術を、光学顕微鏡のために使用し、BrdU及びTHに対する抗体を使用して、チロシンヒドロキシラーゼを含む(TH+)移植細胞(BrdU+)を同定した。異なる着色基質は、移植した細胞群がドーパミン作動性表現型を有するニューロンに分化したことを示す二重に標識した細胞の同定を可能にした。B:パーキンソン病は、線条体へのドーパミン作動性経路の変性を特徴とし、この領域における減少したドーパミンレベルに起因する。この状況は筋肉の硬直、振戦及びその他の運動異常を特徴とする。ヒト胎児組織から調製した前駆細胞を増殖させ(実施例3B)、ドーパミン作動性細胞への分化を誘導した(実施例11)。ドーパミン作動性細胞は、定位的にパーキンソン病患者の線条体に注射される。所望により、追加免疫の注射を行ってもよい。代わりに、前駆細胞を、パーキンソン病患者の脳の生検より得た神経組織から調製し、ドーパミン作動性細胞への分化を誘導し(実施例7又は8)、次いで、患者の線条体に定位的に注射する。代わりに、前駆細胞を、ドーパミン作動性細胞の形成を誘導する培養培地の存在下で培養し、前駆細胞がインビボでドーパミン作動性細胞に分化するパーキンソン病患者の線条体に移植してもよい。改善された運動制御は、移植の成功の測定に使用される。実施例12:培養したドーパミン作動性細胞を使用した薬剤スクリーニング 精神医学的疾病の治療に使用される薬剤である、プロザック(Prozac)を、実施例6、7、8、9、10に概説したようにして調製した培養したドーパミン作動性細胞に、1ng/ml〜1000ng/mlの範囲の濃度で添加した。細胞の代謝及び生存に関する、種々の濃度における薬剤の効果を監視した。 本明細書で引用した全ての参考文献、特許文献及び特許出願は参考文献として本明細書に組み込まれている。図1は、成体マウスの脳由来細胞の免疫組織化学的分析の結果を示す。図2は、培養したニューロスフェアの免疫組織化学的分析の結果を示す。図3は、培養したニューロスフェアの免疫組織化学的分析の結果を示す。 神経細胞においてチロシンヒドロキシラーゼの発現を誘導する方法であって、 該神経細胞が少なくとも1種の多分化能神経幹細胞の子孫であり、 該神経細胞を、支持細胞層及び線維芽細胞成長因子ファミリーの少なくとも1種のメンバーを添加した膠細胞の条件培地を用いて培養する工程を含むことを特徴とする方法。 前記支持細胞層が、ドーパミン作動性神経組織ではない発達したCNS領域に由来する通常非ドーパミン作動性神経組織に由来する、請求項1記載の方法。 前記培養培地が更に血清を含んでいる、請求項1記載の方法。 前記神経細胞が、アンフィレグリン、線維芽細胞成長因子及びトランスフォーミング成長因子アルファからなる群より選ばれる増殖誘導成長因子の存在下、インビトロで増殖させた少なくとも1種の多分化能神経幹細胞の子孫であり、該多分化能神経幹細胞は、ニューロン、星状細胞及び乏突起膠細胞へ分化することができる子孫を生成することができる、請求項1記載の方法。 前記神経細胞が、サブベントリキュラー領域、線条体及び皮質からなる群より選ばれる通常非ドーパミン作動性神経組織に由来する、請求項1記載の方法。 前記培養培地が更に膠細胞の条件培地を含んでいる、請求項1記載の方法。 前記条件培地が星状細胞に由来する、請求項6記載の方法。 前記条件培地がラットB49膠細胞系に由来する、請求項6記載の方法。 前記培養培地が更に血清を含んでいる、請求項6記載の方法。 ドーパミン作動性細胞を要求する患者における神経障害を治療するための薬剤の製造における、請求項1に記載の方法にしたがい形成された、分化している又は分化したドーパミン作動性細胞の使用。 前記患者がパーキンソン病を患っており、前記分化している又は分化したドーパミン作動性細胞が前記患者の線条体に投与される、請求項10記載の使用。 前記線維芽細胞成長因子ファミリーのメンバーがFGF−2であり、かつ前記トランスフォーミング成長因子ベータファミリーのメンバーがアクチビン及び骨形成タンパク質からなる群より選ばれる、請求項10記載の使用。 前記培養培地が定義されている、請求項12記載の使用。 前記分化している又は分化したドーパミン作動性細胞が前記患者のCNSから得たものである、請求項10記載の使用。 請求項1に記載の方法にしたがい調製されたチロシンヒドロキシラーゼ発現細胞を含む、細胞培養物。 前記線維芽細胞成長因子ファミリーのメンバーがFGF−2であり、かつ前記トランスフォーミング成長因子ベータファミリーのメンバーがアクチビン及び骨形成タンパク質からなる群より選ばれる、請求項15記載の細胞培養物。 前記培養培地が定義されている、請求項15又は16記載の細胞培養物。 前記神経細胞がヒトのCNSに由来する、請求項15〜17のいずれかに記載の細胞培養物。 線維芽細胞成長因子ファミリーの少なくとも1種のメンバー及びトランスフォーミング成長因子ベータファミリーの少なくとも1種のメンバーを添加した培養培地中で神経細胞を培養することにより形成した、分化している又は分化したドーパミン作動性細胞の、ドーパミン作動性細胞を要求する患者における神経障害を治療するための薬剤の製造における使用であって、 該神経細胞が少なくとも1種の多分化能神経幹細胞の子孫であり、 インビトロでの神経細胞におけるチロシンヒドロキシラーゼの発現が、該神経細胞と、該成長因子を含む培養培地とを接触させることにより誘導され、 該線維芽細胞成長因子ファミリーのメンバーがFGF−2であり、かつ、該トランスフォーミング成長因子ベータファミリーのメンバーがアクチビン及び骨形成タンパク質2からなる群より選ばれることを特徴とする使用。 前記患者がパーキンソン病を患っており、前記分化している又は分化したドーパミン作動性細胞が前記患者の線条体に投与される、請求項19記載の使用。 前記培養培地が定義されている、請求項20記載の使用。 前記分化している又は分化したドーパミン作動性細胞が前記患者のCNSから得たものである、請求項19記載の使用。 【課題】神経細胞でチロシンヒドロキシラーゼの発現を誘導する方法を提供する。【解決手段】神経細胞を、支持細胞層及び線維芽細胞成長因子ファミリーの少なくとも1種のメンバーを添加した膠細胞の条件培地を用いて培養する。【選択図】なし