タイトル: | 公開特許公報(A)_イムノクロマトグラフィー法 |
出願番号: | 2007034476 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | G01N 33/543,G01N 33/553 |
知久 浩之 片田 順一 中村 健太郎 JP 2008197038 公開特許公報(A) 20080828 2007034476 20070215 イムノクロマトグラフィー法 富士フイルム株式会社 306037311 特許業務法人特許事務所サイクス 110000109 知久 浩之 片田 順一 中村 健太郎 G01N 33/543 20060101AFI20080801BHJP G01N 33/553 20060101ALI20080801BHJP JPG01N33/543 521G01N33/543 541ZG01N33/553 5 OL 8 本発明は、抗原又は抗体を結合させる粒子として金コロイド標識粒子を用いるイムノクロマトグラフィー法に関する。 尿、血液等の生体試料中に存在する被検物質の存在を定性的にあるいは定量的に測定する方法として、免疫学的測定方法が汎用されている。その中でもイムノクロマトグラフィー法は、操作が簡便であり短時間で測定可能であることから、一般的によく利用されている。しかしながらイムノクロマトグラフィー法は、感度が低いために抗原が検出されず、偽陰性となるといった問題点がある。そのため、イムノクロマトグラフィーのさらなる高感度化が望まれている。 イムノクロマトグラフィー法で用いられている免疫反応としては、競合型反応、サンドイッチ型反応が広く使われている。その中でも、イムノクロマトグラフィーではサンドイッチ型反応が主流であり、その典型例においては、試料中の抗原よりなる被検出物質を検出するために、以下のような操作が行われる。(1)被検出物質である抗原に対する抗体により感作させた微粒子を固相微粒子としてクロマトグラフ媒体に固定化することにより、あるいはこの抗体そのものをクロマトグラフ媒体に直接固定化することにより、反応部位を有するクロマトグラフ媒体を調整する。(2)一方、標識微粒子に被検出物質と特異的に結合可能な抗体を感作させて感作標的微粒子を調整する。(3)この感作標識微粒子を、試料と共に、クロマトグラフ媒体上でクロマトグラフ的に移動させる。また、競合型反応とは、被験物質と、標識物質で修飾した被験物質とを含む溶液を多孔性担体上において展開し、該被験物質に対する抗体を有する多孔性担体上の反応部位において該被験物質と該標識被験物質を競合的反応をさせ、捕捉された標識被験物質を検出する。 以上の操作により、クロマトグラフ媒体に形成された反応部位において、固定化された抗体が固定化試薬となり、これに被検出物質である抗原を介して感作標識微粒子特異的に結合し、その結果、感作標識微粒子が反応部位に捕捉されることにより生ずるシグナルの有無または程度を目視で判定することにより、試料中の被検出物質の存在の有無または量を測定する。 このようなイムノクロマトグラフィー法の高感度化の例として、標識シグナルを大きくするという方法がある。特公平7−60159号公報の実施例では、標識粒子の粒径を大きくすることで高感度化を達成している。特公平7−60159号公報 本発明は、流速を遅くすることで高感度化を行い、特に粒子径の大きな金コロイド粒子をイムノクロマトに適用する時に生じる問題を解決することを解決すべき課題とした。即ち、本発明は、粒子径の大きな金コロイド粒子を用いてイムノクロマトグラフィーを行う方法を検討して、金コロイド粒子を用いた高感度化イムノクロマトグラフィー法を提供することを解決すべき課題とした。 本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、金コロイド粒子を展開させる流速を遅くすることで、粒径に関係なく、限界検出感度を上げることができることを見出した。この傾向は特に、粒径が大きなものほど、顕著にみられた。流速を制御する要因としては、まずクロマトグラフ担体が挙げられる。このクロマトグラフ担体としては、多孔性のメンブレンが用いられているが、その細孔径によって移動層の展開速度を変化させることができる。すなわち、移動層の展開速度は、担体の細孔径が大きいほど速くなり、小さいほど遅くなる。また、移動層の展開速度は、イムノクロマトストリップの最下流に組み込まれる吸収材の吸収力の違いによっても、調節することができる。一般的に、大きなコロイド粒子をメンブレン上で展開せしめる時、コロイド粒子自体の展開速度が遅いため、展開液との移動度の差が大きくなり、結果として、コロイド粒子のみが取り残される。また、大きなコロイド粒子をイムノクロマト法で用いる時、反応効率が悪くなるため、反応時間を長くする必要がある。以上のようなことが原因で、粒径の大きな粒子が流速の影響を受けやすいと考えられる。本発明においては、多孔性担体の細孔径を小さくすることにより、もしくは吸収力の違う吸収材を用いることにより、展開液の展開速度を遅くすることによって上記の問題を解決し、高感度な検出を行うことができた。 本発明によれば、被験物質と、該被験物質に対する第一の抗体で修飾した標識物質とを含む溶液を多孔性担体上において展開し、該被験物質に対する第二の抗体を有する多孔性担体上の反応部位において該被験物質と該標識物質を捕捉して該被験物質を検出するイムノクロマトグラフィー法において、被験物質と標識物質とを含む溶液を、多孔性担体上における水平方向の展開速度が1.0mm/sec以下となるように展開することを特徴とするイムノクロマトグラフィー法が提供される。但し、第一の抗体と第二の抗体は同じ物でも良く、異なる物でも良い。 好ましくは、溶液の水平方向の展開速度は0.5mm/sec以下である。 好ましくは、被験物質に対する第一の抗体で修飾した標識物質は、被験物質に対する第一の抗体で修飾した金コロイド粒子である。 好ましくは、被験物質に対する第一の抗体で修飾した金コロイド粒子の平均粒径は80〜250nm、より好ましくは80nm〜100nmである。 好ましくは、多孔質担体の平均孔径は7μm以下である。 本発明によれば、標識粒子の流速を制御することによって、標識粒子の粒径に関係なく検出限界感度を向上させることに成功した。従来、高感度化を行うためには標識シグナルの増大が一般的であった。本発明は、金コロイドのみならず、増大させた標識シグナルを用いた場合にも応用できると考えられ、さらなる高感度化が可能になる。そのため、高感度化を目的とした場合には、非常に利用価値が高い。 以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。<1.イムノクロマトグラフィー> 一般に、イムノクロマトグラフィー法とは以下のような手法で被分析物を簡便・迅速・特異的に判定・測定する手法である。すなわち、被分析物と結合可能な固定化試薬(抗体、抗原等)を含む少なくとも1つの反応部位を有するクロマトグラフィー担体を固定相として用いる。このクロマトグラフィー担体上で、分析対象物結合可能な試薬によって修飾された検出用標識物が分散されてなる分散液を移動層として前記クロマトグラフィー担体中をクロマトグラフィー的に移動させると共に、前記分析対象物と検出用標識物とが特異的に結合しながら、前記反応部位まで到達する。前記反応部位において、前記分析対象物と検出用標識物の複合体が前記固定化試薬に特異的結合することにより、被分析液中に分析対象物が存在する場合にのみ、前記固定化試薬部に検出用標識物が濃縮されることを利用し、それらを目視または適当な機器を用いて被分析液中に被検出物が存在することを定性および定量的に分析する手法である。 本発明によるイムノクロマトグラフィー法は、サンドイッチ型反応、競合型反応で利用することができる。サンドイッチ型反応とは、被験物質と、該被験物質に対する第一の抗体で修飾した標識物質とを含む溶液を多孔性担体上において展開し、該被験物質に対する第二の抗体を有する多孔性担体上の反応部位において該被験物質と該標識物質を捕捉して該被験物質を検出する。即ち、上記の反応部位においては、予め固定化されている被験物質に対する第二の抗体に、被験物質を介して、被験物質に対する第一の抗体で修飾した標識物質が捕捉され、被験物質に対する第二の抗体、被験物質、及び被験物質に対する第一の抗体で修飾した標識物質の3成分が複合体を形成される。また、競合型反応とは、被験物質と、標識物質で修飾した該被験物質とを含む溶液を多孔性担体上において展開し、該被験物質に対する抗体を有する多孔性担体上の反応部位において該被験物質と該標識被験物質を競合的反応させることで、該標識被験物質が捕捉される。これにより、反応部位に標識物質が濃縮され、それを目視または適当な機器を用いて分析することにより、被験物質を分析することができる。<2.検出用標識物> 本発明のイムノクロマトグラフィー法では、分析対象物(抗原)と特異的に結合する抗体又は標準化合物を標識するのに用いる標識として、着色粒子を使用することができる。例えば、ポリスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体のような有機高分子のラテックス着色粒子、金属コロイド又は金属硫化物のような金属等を用いることができる。担体粒子(又はコロイド)の平均粒径は、0.02〜10μmの範囲が好ましい。本発明の好ましい態様によれば、被験物質に対する第一の抗体で修飾した金コロイド粒子の平均粒径は80〜100nmである。色素を含有したリポゾームやマイクロカプセル等も着色粒子として使用することができる。従来公知の着色金属コロイドはいずれも標識用着色粒子として使用することができる。例えば、金コロイド、銀コロイド、白金コロイド、鉄コロイド、水酸化アルミニウムコロイド、などが挙げられる。また、金属硫化物標識としては、例えば、鉄、銀、鉛、銅、カドミウム、ビスマス、アンチモン、錫、又は水銀の各硫化物を挙げることができる。特に、金コロイドと銀コロイドが適当な粒径において、金コロイドは赤色、銀コロイドは黄色を示す点で好ましい。金属コロイドの粒径としては、約1〜500nmが好ましく、特に強い色調が得られる5〜100nmがさらに好ましい。特に好ましくは、金コロイド粒子の平均粒径は80〜250nmであり、さらに好ましくは80nm〜100nmである。本発明のイムノクロマトグラフィー法においては、これらの金属コロイド標識及び/又は金属硫化物標識の1又はそれ以上を標識として用いることができる。金属コロイド/又は金属硫化物標識と特異結合物質との結合は、従来公知の方法(例えばThe Journal of Histochemistry and Cytochemistry, Vol.30,No.7,pp691-696,(1982))に従い、行うことができる。すなわち、金属コロイドと特異結合物質(例えば抗体)を適当な緩衝液中で室温下5分以上混合する。反応後、遠心分離により得た沈殿を、ポリエチレングリコール等の分散剤を含む溶液中に分散させることにより、目的の金属コロイド標識特異結合物質を得ることができる。金属コロイドとして金コロイド粒子を用いる場合には、市販のものを用いてもよい。あるいは、常法、例えば塩化金酸をクエン酸ナトリウムで還元する方法(Nature Phys. Sci., vol.241, 20, (1973)等 )により金コロイド粒子を調製することができる。<3.クロマトグラフ担体> クロマトグラフ担体としては、多孔質担体が好ましい。特に、ニトロセルロース膜、セルロース膜、アセチルセルロース膜、ポリスルホン膜、ポリエーテルスルホン膜、ナイロン膜、ガラス繊維、不織布、布、糸等、が好ましい。多孔質担体を用いる場合、その平均孔径は7μm以下であることが好ましい。 通常クロマトグラフ担体の一部に検出用物質を固定化させて検出ゾーンを作製する。検出用物質は、検出用物質をクロマトグラフ担体の一部に物理的または化学的結合により直接固定化させてもいいし、検出用物質をラテックス粒子などの微粒子に物理的または化学的に結合させ、この微粒子をクロマトグラフ担体の一部にトラップさせて固定化させてもいい。なお、クロマトグラフ担体は、検出用物質を固定化後、不活性蛋白による処理等により非特異的吸着防止処理をして用いるのが好ましい。<4.吸収パッド> 吸収パッドは、添加された試料がクロマト移動により物理的に吸収されると共に、クロマトグラフ担体の検出部に不溶化されない未反応標識物質等を吸収除去する部位であり、セルロース濾紙、不織布、布、セルロースアセテート等吸水性材料が用いられる。添加された試料のクロマト先端部が吸収部に届いてからのクロマトの速度は、吸収材の材質、大きさなどにより異なるので、その選定により分析対象物の測定に合った速度を設定することができる。 本発明のイムノクロマトグラフィー法においては、多孔性のクロマトグラフ担体上における被験物質の水平方向の展開速度は1.0mm/sec以下、好ましくは0.5mm/sec以下となるように展開することができる。 以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。実施例1:1.検出用標識物である抗hCG抗体修飾金コロイド(直径50、80、100 nm)の作成1-1.直径50 nm金コロイド 直径50 nm金コロイド溶液(EM.GC50、BBI社)9 mLに50 mM KH2PO4バッファー(pH 7.0 )1mLを加えることでpHを調整した金コロイド溶液に、50 μg / mLの抗hCGモノクローナル抗体(Anti-hCG 5008 SP-5、Medix Biochemica社)溶液1 mLを加え攪拌した。10分間静置した後、1%ポリエチレングリコール(PEG Mw.20000、品番168-11285、和光純薬)水溶液を550 μL加え攪拌し、続いて10 %牛血清アルブミン(BSA FractionV、品番A-7906、SIGMA)水溶液を1.1 mL加え攪拌した。この溶液を8000×g、4℃、30分間遠心(himacCF16RX、日立)した後、1 mL程度を残して上清を取り除き、超音波洗浄機により金コロイドを再分散した。この後、20 mLの金コロイド保存液(20 mM Tris-HClバッファー(pH 8.2), 0.05%PEG(Mw.20000), 150 mM NaCl, 1%BSA, 0.1%NaN3)に分散し、再び8000×g、4℃、30分間遠心した後、1 mL程度を残して上清を取り除き、超音波洗浄機により金コロイドを再分散し、抗体修飾金コロイド(50 nm)溶液を得た。1-2.直径80 nm金コロイド 直径80 nm金コロイド溶液(Auクエン酸コロイド溶液粒径80 nm品、田中貴金属)9 mLに50 mMグリシンバッファー(pH 9.0)1 mLを加えることでpHを調整した金コロイド溶液に、100 μg / mLの抗hCG抗体(Anti-hCG 5008 SP-5、Medix Biochemica社)溶液1 mLを加え攪拌した。その後は1-1と同様の操作で抗体修飾を行い、抗体修飾金コロイド(80 nm)溶液を得た。1-3.直径100 nm金コロイド 直径100 nm金コロイド溶液(Auクエン酸コロイド溶液粒径100nm品、田中貴金属)9 mLに50 mMグリシンバッファー(pH 9.5)1 mLを加えることでpHを調整した金コロイド溶液に、900 μg / mLの抗hCG抗体(Anti-hCG 5008 SP-5、Medix Biochemica社)溶液1 mLを加え攪拌した。その後は1-1と同様の操作で抗体修飾を行い、抗体修飾金コロイド(100 nm)溶液を得た。2.金コロイド抗体保持パットの作成 上記の1で作成した各抗体修飾金コロイドを、金コロイド塗布液(20 mM Tris-Hclバッファー(pH 8.2), 0.05%PEG(Mw.20000), 5%スクロース)及び水により希釈し、520 nmのODが1.5となるように希釈した。この溶液を、8 mm×150 mmに切ったグラスファイバーパッド(Glass Fiber Conjugate Pad、ミリポア社)1枚あたり0.8 mLずつ均一に塗布し、一晩減圧乾燥し、金コロイド抗体保持パッドを得た。3.抗体固定化メンブレン(クロマトグラフ担体)の作成 25 mm×200 mmに切断したニトロセルロースメンブレン(プラスチックの裏打ちあり、HiFlow Plus HF240、ミリポア社)に関し以下のような方法により抗体を固定し抗体固定化メンブレンを作成した。メンブレンの長辺を下にし、下から8 mmの位置に、0.5 mg / mLとなるように調製した固定化用抗hCGモノクローナル抗体(Anti-Alpha subunit 6601 SPR-5、Medix Biochemica社)溶液をインクジェット方式の塗布機(BioDot社)を用いて幅1 mm程度のライン状に塗布した。同様に、下から12 mmの位置に、0.5 mg / mLとなるように調製したコントロール用抗マウスIgG抗体(抗マウスIgG(H+L),ウサギF(ab')2, 品番566-70621、和光純薬)溶液をライン状に塗布した。塗布したメンブレンは、温風式乾燥機で50 ℃、30分間乾燥した。ブロッキング液(0.5 w%カゼイン(乳由来、品番030-01505、和光純薬)含有50 mMホウ酸バッファー(pH 8.5))500 mLをバットに入れ、そのまま30分間静置した。その後、同様のバットに入れた洗浄・安定化液(0.5 w%スクロース、0.05 w%コール酸ナトリウム、50 mM Tris-Hcl(pH 7.5))500 mLに移して浸し、そのまま30分間静置した。メンブレンを液から取り出し、室温で一晩乾燥し、抗体固定化メンブレンとした。4.キットの組み立て バック粘着シート(ARcare9020、ニップンテクノクラスタ社)に、3で作成した抗体固定化メンブレンを貼り付けた。その際メンブレン長辺側のうち、抗hCG抗体ライン側を下側とする。抗体固定化メンブレンの下側に約2 mm重なるように2で作成した金コロイド抗体保持パッドを貼り付け、約4 mm重なるようにして金コロイド抗体保持パッド下側に試料添加パッド(18 mm×150 mmに切ったグラスファイバーパッド(Glass Fiber Conjugate Pad、ミリポア社))を重ねて貼り付けた。さらに、抗体固定化メンブレンの上側には約5 mm重なるように吸収パッド(20 mm×150 mmに切ったセルロース膜(Cellulose Fiber Sample Pad、ミリポア社))を重ねて貼り付けた。これら重ね張り合わせた部材を、部材の長辺側を5 mm幅になるように短辺に平行にギロチン式カッター(CM4000、ニップンテクノクラスタ社)切断していくことで、5 mm×55 mmのイムノクロマト用ストリップを作成した。これらをプラスチックケース(ニップンテクノクラスタ社)に入れ、試験用イムノクロマトキットとした。実施例2 実施例1のニトロセルロースメンブレン(HF240)をニトロセルロースメンブレン(HF120)に変更し、他は同様に作製した。比較例1 実施例1のニトロセルロースメンブレン(HF240)をニトロセルロースメンブレン(HF65)に変更し、他は同様に作製した。[ニトロセルロースメンブレンの流速測定] メンブレンの流速を測定するために、3種類のニトロセルロースメンブレン(HF65、HF120、HF240)を用い、比較例1の方法でキットを作製した。キットのサンプルパッドに100 μLの水を点着し、17.5 mmのメンブレンを水の先端が移動する様子をビデオカメラで記録し、その映像を解析することで17.5 mmを移動するのにかかった時間を求めた。この実験を3回以上繰り返し、その平均時間を求め、移動距離17.5 mmを求めた平均時間で除することで、流速(mm/sec.)を求めた。この結果は表1に示した。メンブレンの平均孔径を変えることで、流速を制御することができた。[最小検出感度試験] 1%BSAを含むPBSバッファーにhCG(リコンビナントhCG R-506、ロート製薬)を溶解し、各濃度の試験用hCG溶液を作成した。 実施例1、2及び比較例1のイムノクロマトキットに、各濃度の試験用hCG溶液を100 μL添加し、60分後に抗体固定メンブレンの抗hCG抗体を塗布した部位(テストライン)を目視した際の着色度合いを、判別し、最も薄い濃度で判別できた抗原濃度をそのキットでの最小検出感度とした。結果を図1に示した。どの粒径の金コロイドを用いた際にも流速を遅くすることで、最小検出感度の向上が見られた。流速2.5 mm/secに比べ流速0.5 mm/secでは、数倍〜10倍の感度向上が確認できた。 流速を遅くすることによる感度上昇は、粒径が大きいほど顕著で、粒径80nm、100nmでは10倍以上の感度上昇が見られた。 本発明で得られた効果は、次の2つである。金コロイド粒子を用いたイムノクロマト法において、(1)粒径に関係なく、流速を遅くすることで、最小検出感度を数倍〜10倍増加させることができた。(2)大きな粒子を用いた場合、流速低下による検出感度の増加効果が大きく、粒径80nm、100nmでは10倍以上の感度上昇が見られた。以上の効果により、低濃度物質の検出もでき、明瞭かつ確実なアッセイ結果を得ることができる。図1は、実施例1、2及び比較例1のイムノクロマトキットを用いて最小検出感度を試験した結果を示す。被験物質と、該被験物質に対する第一の抗体で修飾した標識物質とを含む溶液を多孔性担体上において展開し、該被験物質に対する第二の抗体を有する多孔性担体上の反応部位において該被験物質と該標識物質を捕捉して該被験物質を検出するサンドイッチイムノクロマトグラフィー法、あるいは該被験物質と、該標識物質で修飾した該被験物質とを含む溶液を多孔性担体上において展開し、該被験物質に対する第二の抗体を有する多孔性担体上の反応部位において該被験物質と該標識被験物質を競合的に反応させ、捕捉された該標識被験物質を検出する競合的イムノクロマトグラフィー法において、該被験物質と該標識物質とを含む溶液を、多孔性担体上における水平方向の展開速度が1.0mm/sec以下となるように展開することを特徴とするイムノクロマトグラフィー法。溶液の水平方向の展開速度が0.5mm/sec以下である、請求項1に記載の方法。被験物質に対する第一の抗体で修飾した標識物質が、被験物質に対する第一の抗体で修飾した金コロイド粒子である、請求項1又は2に記載の方法。被験物質に対する第一の抗体で修飾した金コロイド粒子の平均粒径が80nm〜250nmである、請求項3に記載の方法。多孔質担体の平均孔径が7μm以下である、請求項1から4の何れかに記載の方法。 【課題】金コロイド粒子を用いた高感度化イムノクロマトグラフィー法を提供すること。【解決手段】被験物質と、該被験物質に対する第一の抗体で修飾した標識物質とを含む溶液を多孔性担体上において展開し、該被験物質に対する第二の抗体を有する多孔性担体上の反応部位において該被験物質と該標識物質を捕捉して該被験物質を検出するイムノクロマトグラフィー法において、被験物質と標識物質とを含む溶液を、多孔性担体上における水平方向の展開速度が1.0mm/sec以下となるように展開することを特徴とするイムノクロマトグラフィー法。【選択図】なし