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タイトル:公開特許公報(A)_放線菌を宿主とする新しいタンパク質発現系開発と応用
出願番号:2007032648
年次:2008
IPC分類:C12N 15/09,C12N 1/21,C12P 21/02


特許情報キャッシュ

荻野 千秋 清水 宣明 JP 2008193953 公開特許公報(A) 20080828 2007032648 20070213 放線菌を宿主とする新しいタンパク質発現系開発と応用 国立大学法人金沢大学 504160781 園田 吉隆 100109726 小林 義教 100101199 荻野 千秋 清水 宣明 C12N 15/09 20060101AFI20080801BHJP C12N 1/21 20060101ALI20080801BHJP C12P 21/02 20060101ALI20080801BHJP JPC12N15/00 AC12N1/21C12P21/02 C 14 1 OL 60 (出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成17年度経済産業省地域新生コンソーシアム研究開発事業委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願) 4B024 4B064 4B065 4B024AA20 4B024CA04 4B024DA08 4B024EA04 4B024FA02 4B024FA07 4B024FA18 4B024GA11 4B064AG01 4B064CA04 4B064CA19 4B064CC24 4B064DA01 4B065AA19Y 4B065AA50X 4B065AA90Y 4B065AB01 4B065AC14 4B065BA02 4B065CA44 本発明は、放線菌を宿主とする新しいタンパク質発現系開発と応用に関する。 放線菌は好気的な土壌には必ず、しかも高密度で存在する、グラム陽性の土壌細菌である。放線菌は細菌(Bacteria)の仲間だが、通常の細菌が球状や桿状といった単純な形態しか示さないのに対して、典型的な放線菌は生育のための環境条件が整うと、胞子が発芽し、菌糸を伸ばして分岐し、その後菌糸を伸長させ、気菌糸はやがて分断して胞子となるといった複雑な形態をとる。従って、形態的には細菌というよりも、真核生物である糸状菌に近いといえる。放線菌はまた、医薬品として市場に出回っている抗生物質の大部分が、放線菌によって生産されることから分かるように、抗生物質生産菌の代表であり、多様な抗生物質(二次代謝物)生産能を有している。そして、ゲノム解析の結果、ゲノムサイズとゲノム上にコードされている情報量(遺伝子の数)は、細菌の中では群を抜いて多いことが明らかになり、放線菌は細菌の中では最も進化した生物であると考えられている。 放線菌、特にStreptomycesにおける分子生物学的研究が本格化したのは、1980年代からであるが、研究はそれ以前から行われていた。1950年代半ば、放線菌において遺伝的組み換えが起こることが判明し、それ以降、プラスミドを介した接合やプロトプラスト融合による、遺伝学的解析が地道に行われてきた。研究を行ったのは英国のHopwoodらのグループであり、対象とした菌株はStreptomyces coelicolorである。以後、同株は、Streptomycesの遺伝学的、分子生物学的解析の標準菌となっている(非特許文献1、4参照)。 組み換えDNA技術の開発で、大腸菌を中心とした微生物の分子生物学が盛んになっていったが、放線菌は遺伝学的に大腸菌とは大きく異なっており、放線菌の遺伝子は大腸菌内では発現しないものが多い。このため、独自のクローニング系が必要であった。その後、HopwoodらによりStreptomycesにおいてクローニング系(宿主−ベクター系)が開発されたことが、研究に対する大きな刺激となった。ベクターは放線菌のプラスミドを改良したもので、選択マーカーとしてはチオストレプトン耐性遺伝子が適している。宿主としては、S. coelicolorの近縁の、Streptomyces lividansが標準的に用いられている。S. coelicolorとS. lividansは同種と言えるほど近縁であるが、制限がほとんどなく、形質転換効率が高い等、遺伝子組み換えの宿主としては後者の方が適している。こうして開発された宿主−ベクター系を用い、酵素生産や一次代謝、抗生物質の生合成、形態形成(分化)等に関与する遺伝子がクローニングされ、分子生物学的研究が盛んに行われてきている。(非特許文献1、3、4参照) 本発明者等の研究室では以前より放線菌−大腸菌シャトルベクターであるpUC702に放線菌(Streptoverticillium cinnamoneum)由来分泌性タンパク質Phospholipase D(PLD)の遺伝子及び、その上流プロモーター領域と下流ターミネーター領域を導入したpUC702−promoter−PLDを構築し、放線菌(Streptomyces lividans)に組換えを施すことで、PLDの分泌生産が行えることを確認している。 より詳しく説明すると、このプロモーター領域を組み込むことで野生株に対し、約20倍のPLD生産量を示し、比活性に関しても野生株Streptoverticillium cinnamoneum由来PLDとほぼ同じであった(非特許文献2参照)。 これらの研究成果に関しては、神戸大学の福田秀樹教授らが兵庫TLOを介して、出願している(特許文献1を参照)。これらよりStreptoverticillium cinnamoneum由来PLD発現プロモーターは、放線菌組み換え体においてもPLD生産に効果的に、しかも強力に働いていることが明らかとなっている。特開平2002−51780号公報服部勉,新・土の微生物(9)放線菌の機能と働き 博友社(2003)C.Ogino,H.Fukuda;Over−expression system for secretory phospholipase D by Streptomyces lividans[Appl Microbiol Biotechnol 64,823−828.2004]C.Ogino,H.Fukuda;Phosoholipase D from Streptoverticillium cinnamoneum: protein engineering and application for phospholipids production [Jurnal of Molecular Catalysis B:Enzymatic 23,107−115. 2003]安藤忠彦,物質生産のための遺伝子工学 朝倉書店(1985) 上記のように、大腸菌をはじめとする放線菌以外の微生物では様々な異種由来の遺伝子組み換えタンパク質の発現または分泌生産を行う宿主ベクター系が提案されているにも関わらず、放線菌以外の生物に由来する外来タンパク質の放線菌による発現系または分泌生産系は殆ど報告が無い。そのため、哺乳動物由来の異種タンパク質をはじめとして、様々な有用な外来タンパク質の発現または分泌が放線菌にて期待されてきたが、未だ報告された成功事例はない。 また、本発明者等の所属する研究室では高いリン酸基転移反応を有するPhospholipase D(PLD)を放線菌Streptoverticilium cinnamoneum(IFO 12852)から同定しその遺伝子配列を決定しており、放線菌Streptomyces lividans 1326株を宿主とするPLDの大量分泌発現系を構築したが(非特許文献3を参照)、未だ放線菌により放線菌以外の生物由来の外来タンパク質等を分泌可能な分泌発現系は構築できていない。 本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、放線菌以外の生物に由来する外来タンパク質を放線菌により発現可能な発現系を構築することを目的とする。 放線菌は様々な二次代謝物の生産をおこなったり、多くのタンパク質遺伝子を有していたりすることから、様々なタンパク質の発現が可能であると予想され、物質生産の宿主としての利用が期待されている。本発明者等の所属する研究室の放線菌発現系では、クローニングしたPLD遺伝子の上流に位置するPromoter領域の高い転写能のため、PLDの大量分泌発現が既に可能となっている。 そこで、本発明者等は、PLD遺伝子を他のタンパク質の遺伝子に置き換えることで様々なタンパク質を発現できると考えられるとの着想に基づいて、工業的な有用タンパク質の分泌生産系を構築するために、まず、モデルタンパク質としていくつかの放線菌以外の生物由来の外来タンパク質の発現系を構築し、この放線菌の発現系が外来タンパク質を生産することができるか検討した。 その結果、本発明者等は、上記の発現系を様々な外来由来タンパク質の発現に適用する為に、汎用ベクターの開発を行うために試行錯誤をした結果、ついに特定の構成からなる汎用ベクターを用いることにより、放線菌の発現系で放線菌以外の生物由来の外来タンパク質の分泌発現を行うことができることを見出し、本発明を完成させた。 すなわち、本発明によれば、放線菌以外の生物由来の外来タンパク質を放線菌において発現するベクターであって、ストレプトバーティシリウム・シンナモニウム由来のホスフォリパーゼD遺伝子のプロモーター配列と、プロモーターの下流に発現可能に連結されている、ストレプトバーティシリウム・シンナモニウム由来のホスフォリパーゼD遺伝子のシグナル配列と、シグナル配列の下流に発現可能に連結されている、外来タンパク質をコードする外来塩基配列と、外来タンパク質の下流に連結されている、ストレプトバーティシリウム・シンナモニウム由来のホスフォリパーゼD遺伝子のターミネーター配列と、を備えるベクターが提供される。 このベクターによれば、放線菌の一種であるストレプトバーティシリウム・シンナモニウム(Stv. cinnamoneum)由来のホスフォリパーゼD遺伝子(PLD遺伝子)として、プロモーター領域とPLD遺伝子の培地中への分泌発現に関係するシグナル領域とPLD遺伝子(ORF)下流に存在するターミネーター領域とを用いて、そのシグナル領域の下流にタンパク質としての発現可能な配列にて外来遺伝子を挿入しているため、PLD遺伝子由来の分泌シグナルを用いて、発現された外来タンパク質を放線菌の菌体外の培地中に分泌生産することが可能になる。 また、本発明によれば、放線菌以外の生物由来の外来タンパク質を組み込んで外来タンパク質を放線菌において発現するためのベクターであって、ストレプトバーティシリウム・シンナモニウム由来のホスフォリパーゼD遺伝子のプロモーター配列と、プロモーターの下流に発現可能に連結されている、ストレプトバーティシリウム・シンナモニウム由来のホスフォリパーゼD遺伝子のシグナル配列と、シグナル配列の下流に設けられている外来タンパク質をコードする外来塩基配列を挿入するためのクローニングサイトと、クローニングサイトの下流に連結されている、ストレプトバーティシリウム・シンナモニウム由来のホスフォリパーゼD遺伝子のターミネーター配列と、を備えるベクターが提供される。 このベクターによれば、放線菌の一種であるストレプトバーティシリウム・シンナモニウム(Stv. cinnamoneum)由来のホスフォリパーゼD遺伝子(PLD遺伝子)として、プロモーター領域とPLD遺伝子の培地中への分泌発現に関係するシグナル領域とPLD遺伝子(ORF)下流に存在するターミネーター領域とを用いて、そのシグナル領域の下流にタンパク質としての発現可能な配列にて外来遺伝子を挿入するためのクローニングサイトが設けられているため、そのクローニングサイトに放線菌以外の生物由来の外来タンパク質をコードする外来塩基配列を発現可能な形で挿入することによって、PLD遺伝子由来の分泌シグナルを用いて、発現された外来タンパク質を放線菌の菌体外の培地中に分泌生産することが可能になる。 また、本発明によれば、放線菌以外の生物由来の外来タンパク質を発現するための組換え放線菌であって、外来塩基配列を既に挿入済みの上記ベクターが組み込まれている、組換え放線菌が提供される。 この組換え放線菌によれば、放線菌の一種であるストレプトバーティシリウム・シンナモニウム(Stv. cinnamoneum)由来のホスフォリパーゼD遺伝子(PLD遺伝子)として、プロモーター領域とPLD遺伝子の培地中への分泌発現に関係するシグナル領域とPLD遺伝子(ORF)下流に存在するターミネーター領域とを用いて、そのシグナル領域の下流にタンパク質としての発現可能な配列にて外来遺伝子を挿入しているベクターが組み込まれているため、PLD遺伝子由来の分泌シグナルを用いて、発現された外来タンパク質を放線菌の菌体外の培地中に分泌生産することが可能になる。 また、本発明によれば、放線菌以外の生物由来の外来タンパク質を放線菌において生産する方法であって、上記の組換え放線菌を培地中で培養する工程と、組換え放線菌の菌体または培地から外来タンパク質を取得する工程と、を含む、方法が提供される。 この方法によれば、放線菌の一種であるストレプトバーティシリウム・シンナモニウム(Stv. cinnamoneum)由来のホスフォリパーゼD遺伝子(PLD遺伝子)として、プロモーター領域とPLD遺伝子の培地中への分泌発現に関係するシグナル領域とPLD遺伝子(ORF)下流に存在するターミネーター領域とを用いて、そのシグナル領域の下流にタンパク質としての発現可能な配列にて外来遺伝子を挿入しているベクターが組み込まれている放線菌を用いるため、発現された外来タンパク質を放線菌の菌体外の培地中に分泌生産することが可能になる。 本発明によれば、放線菌以外の生物に由来する外来タンパク質を放線菌により放線菌の菌体外の培地中に分泌生産することができる。 以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。 <概要> 本実施形態に係るベクターは、放線菌以外の生物由来の外来タンパク質を放線菌において発現するベクターであって、ストレプトバーティシリウム・シンナモニウム由来のホスフォリパーゼD遺伝子のプロモーター配列と、プロモーターの下流に発現可能に連結されている、ストレプトバーティシリウム・シンナモニウム由来のホスフォリパーゼD遺伝子のシグナル配列と、シグナル配列の下流に発現可能に連結されている、外来タンパク質をコードする外来塩基配列と、外来タンパク質の下流に連結されている、ストレプトバーティシリウム・シンナモニウム由来のホスフォリパーゼD遺伝子のターミネーター配列と、を備える。 このベクターによれば、放線菌の一種であるストレプトバーティシリウム・シンナモニウム(Stv. cinnamoneum)由来のホスフォリパーゼD遺伝子(PLD遺伝子)として、プロモーター領域とPLD遺伝子の培地中への分泌発現に関係するシグナル領域とPLD遺伝子(ORF)下流に存在するターミネーター領域とを用いて、そのシグナル領域の下流にタンパク質としての発現可能な配列にて外来遺伝子を挿入しているため、PLD遺伝子由来の分泌シグナルを用いて、発現された外来タンパク質を放線菌の菌体外の培地中に分泌生産することが可能になる。 <プロモーター> 本実施形態で用いるプロモーターは、ストレプトバーティシリウム・シンナモニウム(IFO12852)(Streptoverticillium cinnamoneum 、以下、Stv. cinnamoneum(IFO12852)と略記する)由来のホスフォリパーゼD(phospholipase D、以下、PLDともいう)遺伝子のプロモーターである。 放線菌群の中でも、ストレプトバーティシリウム・シンナモニウム(IFO12852)(Streptoverticillium cinnamoneum 、以下、Stv. cinnamoneum(IFO12852)と略記する)は、現時点において、分泌PLD活性の最も高い菌株であることが判っている(Nakajima et al.,Biotechnol.Bioeng.,Vol.44,1193−1198(1994))。なお、ストレプトバーティシリウムについては、分類上、ストレプトマイセス(Streptomyces)に分類されることがある。 ストレプトバーティシリウム・シンナモニウム由来のホスフォリパーゼD遺伝子のプロモーター配列、構造遺伝子配列、ターミネーター配列を含むクローンの塩基配列を配列番号:4に示す。この配列番号4の配列表における、塩基番号38から塩基番号1407までの塩基配列が、ストレプトバーティシリウム・シンナモニウム由来のホスフォリパーゼD遺伝子のプロモーター配列(配列番号:1)である。 また、本実施形態で用いるプロモーターは、この配列番号4の配列表における、塩基番号38から塩基番号1407までの塩基配列(配列番号:1)において、1もしくは数個の塩基配列が欠失、置換もしくは付加された塩基配列であってもよい。この場合にも、両配列のホモロジーの高さから同様に放線菌での発現効率に優れると考えられるからである。 また、本実施形態で用いるプロモーターは、この配列番号4の配列表における、塩基番号38から塩基番号1407までの塩基配列(配列番号:1)と、相同性が80%以上、90%以上、または95%以上の塩基配列であってもよい。この場合にも、両配列のホモロジーの高さから同様に放線菌での発現効率に優れると考えられるからである。なお、本明細書で定義する相同性については、NCBI BLAST(blastn)(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)で計算したホモロジーの数値に従うものとする。 <外来塩基配列> 本実施形態で用いる外来塩基配列は、放線菌以外の生物由来の外来タンパク質をコードする塩基配列であればよく、任意の塩基配列を用いることができるが、例えば、哺乳動物または枯草菌由来の外来タンパク質をコードする塩基配列を好適に用いることができる。哺乳動物または枯草菌由来の外来タンパク質としては、例えば、後述の実施例2で実証しているように、GFPおよびglobin;A2,B1,B2からなる群から選ばれる1種以上の外来タンパク質などを好適に発現することができる。なお、哺乳動物には、当然にヒトが含まれるものとする。 もっとも、外来塩基配列は、これらの塩基配列に限定されるものではなく、例えば、NO合成酵素、クロロペルオキシダーゼ、CooAなどのヘム結合領域を有する複雑な立体構造タンパク質についても、globin;A2,B1,B2と同様に、本実施形態のベクターで放線菌において好適に発現可能であると考えられる。 <ターミネーター> 本実施形態に係るベクターは、外来塩基配列の下流に連結されているストレプトバーティシリウム・シンナモニウムのゲノム由来のターミネーター配列を備える。このことにより、放線菌以外の生物由来の外来タンパク質の生産能を向上させることができる。 本実施形態で用いるターミネーターは、発現効率の高さからストレプトバーティシリウム・シンナモニウムのゲノム由来のターミネーター配列を用いる。なお、配列番号:4の配列表における、塩基番号3031から塩基番号3213までの塩基配列(配列番号:2)が、ストレプトバーティシリウム・シンナモニウム由来のホスフォリパーゼD遺伝子のターミネーター配列である。 また、本実施形態で用いるターミネーターは、この配列番号:4の配列表における、塩基番号3031から塩基番号3213までの塩基配列(配列番号:2)において、1もしくは数個の塩基配列が欠失、置換もしくは付加された塩基配列であってもよい。この場合にも、両配列のホモロジーの高さから同様に放線菌での発現効率に優れると考えられるからである。 また、本実施形態で用いるターミネーターは、この配列番号:4の配列表における、塩基番号3031から塩基番号3213までの塩基配列(配列番号:2)と、相同性が80%以上、90%以上、または95%以上の塩基配列であってもよい。この場合にも、両配列のホモロジーの高さから同様に放線菌での発現効率に優れると考えられるからである。 <シグナル配列> 本実施形態のベクターは、プロモーターの下流かつ外来塩基配列の上流に、外来タンパク質を放線菌の細胞外に分泌するためのシグナルペプチドをコードするシグナル配列として、ストレプトバーティシリウム・シンナモニウム由来のホスフォリパーゼD遺伝子のシグナル配列を備える。この場合、シグナルペプチドを有することにより、外来タンパク質を放線菌の細胞外に分泌することが可能になる。その結果、外来タンパク質の生産効率が向上し、菌体外に分泌された外来タンパク質を精製することも容易になる。 なお、ストレプトバーティシリウム・シンナモニウムのホスフォリパーゼD遺伝子のシグナル配列は、配列番号:4の配列表における、塩基番号1408から塩基番号1509までの塩基配列(配列番号:3)である。もっとも、シグナル配列は、この配列に限定されるものではなく、放線菌において菌体外への分泌を可能にするのであれば、ストレプトバーティシリウム・シンナモニウム由来のホスフォリパーゼD遺伝子のシグナル配列を一部改変したものであっても利用可能である。 <複製起点配列> 本実施形態のベクターは、放線菌においてベクターの複製を可能にする複製起点配列をさらに備えてもよい。この場合には、放線菌の菌体内でベクターの複製が可能になり、放線菌の増殖によってベクターが落ちてしまうことを抑制することができる。また、放線菌の菌体内でのベクターのコピー数を増加させることができるため、放線菌以外の生物由来の外来タンパク質の生産能を向上させることができる。図1および図5におけるrep遺伝子がこの放線菌においてベクターの複製を可能にする複製起点配列に対応する。 本実施形態のベクターは、大腸菌において前記ベクターの複製を可能にする複製起点配列をさらに備えてもよい。この場合には、ベクターの遺伝子組換え等を大腸菌内で行って大腸菌内で保存することが可能になり、ベクターの修飾・改変・保存等が容易になる。図1および図5におけるori遺伝子がこの大腸菌においてベクターの複製を可能にする複製起点配列に対応する。 <マーカー> 本実施形態のベクターは、抗生物質耐性遺伝子をさらに備えてもよい。この場合には、対応する抗生物質を含む培地で放線菌を培養することにより、放線菌の菌体内からベクターが落ちてしまうことを抑制することができる。また、このベクターで放線菌を形質転換した場合には、実際に形質転換されたか否かを対応する抗生物質を含む培地で放線菌を培養することにより確認することができる。図1および図5におけるAmpr遺伝子がこの抗生物質耐性遺伝子に対応する。もっとも、Ampr遺伝子以外にも、放線菌で一般的に用いられている任意の抗生物質耐性遺伝子を利用可能である。また、抗生物質耐性遺伝子以外のマーカー遺伝子を利用してもよい。 <クローニングサイト> 本実施形態に係るベクターは、外来タンパク質をコードする外来塩基配列を挿入する前の状態では、プロモーターの下流に設けられている外来タンパク質をコードする外来塩基配列を挿入するためのクローニングサイトを有している。このクローニングサイトは、特定の種類の制限酵素(またはその組合せ)によって、ユニークに切断されるサイトであるために、その特定の種類の制限酵素(またはその組合せ)で切断した箇所に、目的の外来タンパク質をコードする外来塩基配列を挿入することができる。 図5では、この外来タンパク質をコードする外来塩基配列を挿入する前の状態のベクターは、pUC18+promoter+termに相当し、クローニングサイトは、NheI 1871、BamHI 1877、BglII 1883を含むサイトである。もっとも、クローニングサイトはこの配列に限定されるわけではなく、pUC18+promoter+termのようなこの外来タンパク質をコードする外来塩基配列を挿入する前の状態のベクターのクローニングサイト以外の配列を切断しない制限酵素サイトの組合せを含む配列であれば好適に用いることができる。 また、この外来タンパク質をコードする外来塩基配列を挿入する前の状態のベクターの構成も、pUC18を基にして構成されたpUC18+promoter+termの構成に限定されるわけではなく、他の放線菌で利用可能なベクターを同様に改変して作製したものであっても好適に利用可能である。なお、蛇足ではあるが、特開2002−51780に記載のベクターは、そのままでは適当なクローニングサイトがないので、外来タンパク質をコードする外来塩基配列を挿入することが困難である。 <組換え放線菌> 本実施形態の組換え放線菌は、放線菌以外の生物由来の外来タンパク質を発現するための組換え放線菌であって、上記のベクターが組み込まれている、組換え放線菌である。この放線菌としては、どのような種類の放線菌を用いてもよいが、例えば、タンパク質の生産能に優れるストレプトマイセス・リヴィダンス(Streptomyces lividans 1326株、以下、S.lividansとも略記する)を好適に用いうる。 このようにして組み換えた放線菌を培地中で培養し、組換え放線菌の菌体または培地から外来タンパク質を取得することにより、放線菌以外の生物由来の外来タンパク質を放線菌において生産することができる。このときの培養方法としては、特に限定されず任意の一般的な放線菌の培養方法を用いることができ、任意の一般的な放線菌用の培地を用いることができる。例えば、LB培地を用いて好気性の振とう培養を行ってもよい。そして、菌体または培地から外来タンパク質を取得して、一般的なタンパク質の精製方法により精製すれば、純度の高い活性な放線菌以外の生物由来の外来タンパク質を生産することができる。 <放線菌ベクターについて> ベクターに使われている放線菌のプラスミド 多くのプラスミドが放線菌から分離されているがその中で選択マーカーが付与され情報発現可能なクローニングサイトが決定されているベクターは、SCP2、SLP1、およびpIJ101の3種類のプラスミド由来のもののみである(非特許文献3参照)。表1はそれらのプラスミドの起源、機能、分子量、コピー数、宿主域および構築された代表的なベクターを示したものである。いずれもHopwood,D.A.グループおよびCohen,S.N.グループによって開発されたものである。それらのうちでpIJ101の機能マップは欠失変異と外来DNAの挿入実験によって詳細に検討され、プラスミドの接合伝達(transfer)、ポック形成(spread)、コピー数の安定性(stability)が決定されている(図9)。 ベクターに使われている選択マーカー 放線菌プラスミドに組み込まれている放線菌由来の選択マーカーは現在9種類ある(非特許文献3参照)。 Selection marker菌株由来 選択マーカーS. coelicolor A3(2) メチレノマイシン耐性(mmy)S. fradiae ネオマイシン耐性(aph)S. fradiae ネオマイシン耐性(eaac)S. azureus チオストレプトン耐性(tsr)S. vinaces バイオマイシン耐性(vph)S. erythreus MLS耐性(mls)S. lividans B−ガラクトシダーゼ(B−gal)S. antibiotics メラニン生成(mel)S. griseus p−アミノ安息香酸合成酵素(pab) 既往の研究で構築されたベクター pIJ702 前述のpIJ101由来のベクターは数多く作られており、そのうちで2種類の選択マーカー(tsr,mel)を有するものがpIJ702である。pIJ702の宿主域はStreptomyces属の多くの種にまたがり、コピー数は40〜300、接合伝達能は消失している。mel遺伝子の発現は誘導的である(非特許文献3参照)。 pUC702 放線菌ベクターpIJ702と大腸菌ベクターpUC19から制限酵素SecIとKpnIにより合成した放線菌と大腸菌のシャトルベクターpUC702が構築されている(Tobias Kieser,Mervyn J.Bibb,Mark J.Buttner,Keith F.Chater,David A.Hoowood;Practical Streptomyces Genetics[The John Innes Foundation, Prited by Crows, Norwich, England. 2000]を参照)(図1)。 pUC702−pro−PLD Stv. cinnamoneumのゲノムから得られたPLD遺伝子及び周辺のプロモーター領域、シグナル領域、ターミネーター領域をpUC702へ導入することで、PLDを大量分泌発現するプラスミドが構築されている(非特許文献2を参照)(図1)。 Stv. cinnamoneum PLD由来プロモーターの特徴 放線菌遺伝子の転写は、その高いGC含有量に起因するプロモーター配列の特異性のために、大腸菌等ではほとんど起こらない。種々の放線菌プロモーターの構造が明らかになっているが、大腸菌のタンパク質発現システム因子であるσ因子との対応がついているのは2〜3例しかない(非特許文献1および服部勉,新・土の微生物(3)遺伝子と土壌微生物 博友社(1998)を参照)。しかしながら、Ribosome Binding Site(rbs)に相当する領域TTTAAGGATGは確認されている。 本発明者達の所属する研究室では、これまでに大腸菌と放線菌のシャトルベクターpUC702プラスミドへStreptoverticillium cinnamoneum由来PLD遺伝子とその上流のプロモーター遺伝子領域を導入したpUC702−promoter−PLDを構築し、放線菌(Streptomyces lividans)に組み込み、その発現について解析を行ってきた(図2)。その結果、放線菌によるタンパク質の大量発現において、プロモーター領域の作用が非常に大きく関与していることが明らかとなっている。なお、図2で示す塩基配列は配列番号:4の塩基配列の塩基番号1410から塩基番号1620に相当する。また、図2で示すアミノ酸配列を配列番号:5で示す。 タンパク質の分泌について 細胞の外側の構造を形成するタンパク質を含め細胞外に放出される全てのタンパク質は、細胞膜を通過することから分泌型タンパク質と呼ばれる。生物の進化の過程でタンパク質の分泌機構は分化し、高度に発達してきた。そのため、分泌型タンパク質が原核細胞の細胞膜を通過する機構及び、真核生物での小胞体膜を透過する機構は類似している。タンパク質のような高分子を分泌することは、外の高分子を取り込むのと同様に細胞膜が極力阻止しているため、タンパク質の分泌機構は共通して巧妙なからくりが用いられている(松澤洋,タンパク質工学の基礎 東京化学同人(2004)を参照)。 分泌型タンパク質は、細胞内のリボソーム上で合成されるとき、N末端側に余分なアミノ酸配列がかなり付加された状態で合成される。その配列はシグナルペプチドと呼ばれ、N領域、H領域、C領域の3部分から構成されている(図2におけるPLDのシグナル領域)。N領域は正電荷に荷電しており、膜との融合に関係している。中央に位置するH領域はαへリックス構造を形成し、細胞膜とよくなじんで潜り込み、本来のタンパク質を形作ることとなる後続のアミノ酸配列をスムーズに通過させる役目を果たす。最後のC領域は、Ala−X−Alaという領域を有しており、シグナルペプチダーゼ(SPase)が認識し切断すると言われている(松澤洋,タンパク質工学の基礎 東京化学同人(2004)を参照)。 タンパク質の分泌機構については様々な報告があり、放線菌などの原核生物では少なくとも4種の分泌機構が存在すると報告されている。その中で、主な機構はSecretory−dependent pathway(Sec−pathway),Signal Recognition Particle pathway(SRP−pathway),Twin Arginine Translocation system(TAT system)の3種類であり、シグナルによって分泌機構が決定されると言われている。 多くの分泌型タンパク質はSec−pathway(図3)によって分泌されると言われる。18−26アミノ酸のシグナルを持つタンパク質はこの分泌機構が適応される。この分泌機構では未フォールディングのタンパク質しか膜を通過できないため、通過後にフォールディングされる。この分泌機構はまず、細胞内のシャペロンSecBpが翻訳されたタンパク質を巻きつけ、未フォールディングの状態を保たせる。タンパク質を巻きつけたSecBpが膜タンパク質SecYEGpに結合しているSecApと結合することでタンパク質は膜まで輸送される。そして、膜タンパク質SecYEGpを通過させ、フォールディングされる。その後、細胞膜の外側に位置するSPaseの働きでシグナルとタンパク質は分離される(Fernando A.Agrraberes,J.Fred Dice;Protein translocation across membranes [Biochimica et Biophysica Acta 1513,1−24.2001]を参照)。 報告は少ないが、SRP−pathway(図3)という分泌機構も存在する。これは疎水性の強いシグナルの場合に適応される。この分泌機構でも同様に膜タンパク質SecYEGpを通過させるために、未フォールディング状態でタンパク質は通過することになる。この分泌機構ではシグナル領域が翻訳されると直ちにSRPが結合する。SRPが細胞膜上のFtsYに結合することで細胞膜上にリボソーム、mRNAが輸送される。SecYEGp近傍でタンパク質の翻訳が行われるため、タンパク質の合成と分泌が同時進行で行われることとなる。合成及び、分泌が終了した後SPaseの働きでシグナルとタンパク質は分離される(Fernando A.Agrraberes,J.Fred Dice;Protein translocation across membranes [Biochimica et Biophysica Acta 1513,1−24.2001]を参照)。 SecYEGpを利用せず、TatA−Dと呼ばれる膜タンパク質を通過する分泌機構をTAT systemと言う。これは、48アミノ酸以上のシグナルに適応される。シグナルは共通して(SRRXFLK(配列番号:6))という配列を持っており、twin arginine motifがSec−pathwayの働きを妨げていると言われている。この分泌機構ではリボソームで翻訳されたタンパク質はフォールディングされ、フォールディングされた状態で分泌される。また、シャペロンなどの働きを必要とせず、シグナルの働きのみで細胞膜まで輸送され、膜タンパク質TatA−Dを通過して分泌され、SPaseの働きでシグナルとタンパク質は分離される(Fernando A.Agrraberes,J.Fred Dice;Protein translocation across membranes [Biochimica et Biophysica Acta 1513,1−24.2001]を参照)。 放線菌分泌発現系の利点 遺伝子操作で外来遺伝子を発現させ、タンパク質を生産させるときにもこの分泌機構は利用できる。細胞の中だけで異種タンパク質を生産させると、微量しか作られない場合は細胞内プロテアーゼで分解されてなくなってしまう恐れが多く、逆に大量に作られる場合でも、分解によるロスや、細胞内の合成の場の状態により活性ある成熟タンパク質にならなかったり、生産が頭打ちになったりする。実際、遺伝子操作により、大腸菌の細胞内で異種タンパク質を生産すると、細胞内のタンパク質の約20%までできるが、不溶性の塊になることが多い。これを正常化するにはグルタチオンなどの酸化還元剤を用い、「巻き戻し」という厄介な操作を必要とする。また、分泌といっても、大腸菌などのグラム陰性菌は細胞膜が二重になっているため、二層の膜の空間(ペリプラズム)に目的タンパク質は蓄積されため、抽出作業を必要とする。放線菌などのようなグラム陽性菌は一層の細胞膜しか持たないため、タンパク質は完全に細胞の外へ出て培地中に蓄積するため、大量生産が期待され、かつ、細胞からの抽出作業を簡略化することができる(松澤洋,タンパク質工学の基礎 東京化学同人(2004)を参照)。 <現状での遺伝子組み換え発現系> タンパク質の遺伝子組み換え発現には、遺伝子やcDNAの同定や確認の為の一過的な小スケールの発現から、タンパク質を物質として単離するための工場レベルでの大規模な発現まで、様々なスケールがある。また、タンパク質の発現の宿主として使われているものにも様々なものがある。簡便さや歴史的な背景から大腸菌の使用が最も多いが、枯草菌、放線菌などの細菌、酵母、哺乳動物の培養細胞、昆虫及びその培養細胞、植物細胞、カビ 等が報告されている。これらの発現系には各々の特徴があり、各発現系の特徴を十分理解した上で目的に合う最適な系を選択する必要がある。 大腸菌での発現系は伝統的な知見が豊富で、これまでに蓄積された発現技術などが応用できる上、培養が簡単でコストが安く、大量発現の宿主として最初に考えられる系である。大腸菌の菌体内で発現したタンパク質は普通、封入体(正しい立体構造を取っていない不溶性タンパク質)として蓄積されることが多い。これは大腸菌体内において、発現タンパク質が非常に多量となる為に、正しく折りたたまれないことが原因である場合が多く、タンパク質機能研究の大きな障害となっている。封入体から活性を持つタンパク質に調整するには、不溶物を尿素(ウレア)や塩酸グアニジン等の変性剤で可溶化したのち、変性から再生させる操作が必要である。他の方法として、タンパク質の折りたたみに共同して働いていることが知られている複数の分子シャペロンが、それぞれひとつのプラスミド上にコードされたベクターを使用してクローニングを行うこともできる。また、大腸菌の発現系の大きな問題点の一つは糖鎖の付加を含む種々の修飾が出来ないことである。 酵母は大腸菌と同様に培養が簡単なので多用されている。菌体内に発現させる場合とシグナルペプチドを付けて菌体外に分泌発現させる場合がある。糖鎖の付加も可能だが、動物細胞でみられる複合型糖鎖の付加はできない。また、大腸菌と同じく、アシル化、アミド化などの修飾も出来ないという欠点も有している。 動物細胞は、タンパク質に翻訳後に修飾を必要とする発現に使われるが、培養には高価な血清が必要で、培養時間も長く、タンパク質の生産量も多くない。このように動物細胞は大量生産には適さない面が多く、医薬品の生産を目的としたり、実験室レベルの小スケールの発現など、大腸菌に比べると使用が限られている。昆虫細胞の培養は血清を必要とするが、密閉系で培養できるので、培養装置が簡便になり、生産性も比較的高い。動物・昆虫細胞や酵母などの真核細胞系での組み換え発現では、発現したタンパク質は可溶性の場合が多く、その場合可溶化や変性回復の操作はいらない(表2、非特許文献4および太田次郎,微生物−バイオテクノロジー入門 朝倉書店(1992)を参照)。 <GFPについて> GFP(Green Fluorescent Protein)は、Aequorea victoria(オワンクラゲ)において、化学発光タンパク質、Aequorin(エオクリン)の青色の光(極大470nm)を緑色の光(極大508nm)にシフトするタンパク質として、1962年、下村脩博士らによって発見され、1992年PrascherらによってそのcDNAはクローニングされた。GFPの一次構造(アミノ酸配列)は、238個のアミノ酸から成るタンパク質であり、65〜67番目のアミノ酸セリン、チロシン、グリシンから発色団p−hydroxybenzylideneimidazolinoneが形成される。GFPの蛍光タンパク質の発光メカニズムの研究が進むに従いHeim,Delagrave,Crameri,CormachらによってGFPタンパク質の変異体が作製され、これらの蛍光タンパク質の有用性が報告されるようになった。中でも65番目のセリンをスレオニンに置換したS65T変異体は励起極大波長が490nmと長波長側にシフトしwtGFPよりも数倍強い蛍光を発することや、アミノ酸置換によっては、タンパク質の高次構造の形成を促進したり、タンパク質の溶解度を高めたりする特性を付与しうることが報告された。現在、市販品として様々な変異体GFPが入手可能である。CLONTEC社のEnhanced Green Fluorescent Protein(EGFP)は、発色団のアミノ酸置換(P64L,S65Tなど)に加え、ヒトのコドン使用頻度に合わせた塩基配列の最適化がなされており、塩基配列としては190箇所以上の変異が導入されている。更に同社より蛍光色の変異体EBPF(Blue)(Y66Hのアミノ酸置換など)、ECFP(Cyan)(Y66Wのアミノ酸置換など)、EYFP(Yellow)(T203Yのアミノ酸置換など)が、ヒトのコドン使用頻度に合わせた塩基配列最適化のうえ、EGFPとは異なる発光色で観察可能な変異体として入手可能である。また同社からは不安定化した変異体や、励起波長をシフトしたり、溶解性を高めたり細胞への毒性を抑えた変異体が作製されている(宮脇敦史,GFPとバイオイメージング 羊土社(2002)を参照)。 GFPを利用する際の発現様式として3つに大別できる。GFPの単独発現、GFPに局在化シグナルを付加、GFPと機能タンパク質との融合の3つである。 <シトクロムP450について> シトクロムP450(Cytochrome P450、以下P450)は微生物から植物、動物まで生物界に広く分布する一群のヘムタンパク質で、還元型で一酸化炭素結合して450nmに極大をもつ特徴的吸収スペクトルを示す。モノオキシゲナーゼ様式の酸素添加酵素活性をもち、触媒する反応の基質特異性が異なる極めて多数の分子種の存在が知られているが、タンパク質の一次構造と高次構造の比較から、P450は一つの共通祖先遺伝子から生物進化の過程で分化し多様化した遺伝子ファミリーであると結論されている。 P450の特徴である一酸化炭素結合物の450nmの吸収スペクトルはプロトヘムの第五配位座にP450タンパク質のシステイン残基の−SH基がイオン化したチオレートアニオン(−S−)が配位していることによる。このシステイン残基の前後のアミノ酸配列はすべてのP450についてよく保存されており“ヘム結合領域”とよばれている。ヘモグロビンなど一酸化炭素結合物の吸収スペクトルの極大が420nmにあるプロトヘムタンパク質では第五配位子はヒスチジン残基のイミダゾールである。P450の変性物であるP420ではタンパク質分子の構造変化によって第五配位子はイミダゾールに置き換わっており、その一酸化炭素結合物の吸収スペクトルはヘモグロビンとほとんど同じである。 P450の基本的な分子構造はX線結晶解析で明らかにされた。P450分子は一辺が約60Å、厚さ約30Åのプリズム型であり、分子全体を貫く長いIへリックスが特徴的である。分子内部には疎水性の基質分子を収容し固定できる空間があり、酸素分子を活性化するヘムがその底部に位置しているのでヘムポケットとよばれる。 ほとんどのP450はモノオキシゲナーゼとして機能するが、この反応には分子状酸素の存在とともにヘム鉄を還元しP450に結合した酸素分子を活性化するための還元力の供給が必要である。このP450還元系には下記の4種類の形式がある。(1)NADPH−シトクロムP450還元酵素(P450還元酵素)(2)シトクロムb5−NADH−シトクロムb5還元酵素系(b5系)(3)NAD(P)H−鉄−硫黄タンパク質系(ISP系)(4)P450と還元系の融合タンパク質(融合タンパク質系)(1)と(2)は真核細胞の小胞体に、(3)はミトコンドリアや細菌に見いだされる。(4)は細菌やカビに見いだされるが、まだその記載例が少ない。なお、P450をその還元系で分類することがある。ISP系から電子をもらうものをクラスI、P450還元酵素によるものをクラスII、P450還元酵素と同様な組成をもつ還元系とP450が融合してできているものをクラスIIIとよんでいる。 P450の研究は医学や薬学、農学分野において研究の重要性が認めらており、特異性の高い酸素添加反応を触媒するP450を有機化合物の工業生産へ応用する試みもなされている。P450分子の基質結合部位を改変して任意の基質特異性をもつP450を創出することは可能と思われ、工業生産へのP450の利用は新しい発展方向のひとつであると期待されている(大村恒雄,P450の分子生物学 講談社(2004)を参照)。 <CYP102A3> Bacillus megateriumに発見されたP450BM3(CYP102A1)は、P450とP450還元酵素が融合して1本のポリペプチド鎖として存在するユニークな構造をもつ。触媒する反応脂肪酸亜末端(ω−1〜ω−3)水酸化反応である。また不飽和脂肪酸のエポキシ化も行う。ゲノム解析の結果、枯草菌(Bacillus subtilis)にも2種類のホモログ(CYP102A2,CYP102A3)の存在が明らかになっている。したがってこの種のP450はBacillus属の細菌に普遍的に存在する可能性がある。脂肪酸は枯草菌に毒性を示すため、本P450は枯草菌にとって解毒酵素として意義があると思われる(大村恒雄,P450の分子生物学 講談社(2004),Andrew W.Munro,Gordon Lindsay;Bacterial cytochromes P−450[Molecular Microbiology 20(6),1115−1125.1996]およびAndrew W.Munro,Kirsty J.McLean;Cytochrome P450−redox partner fusion enzymes[Biochimica et Biophysica Acta 2006]を参照)。 <CYP106A3> Bacillus megaterium ATCC 13368から発見されたCYP106A2はステロイド骨格の基質を触媒する。progesteroneや11−deoxycortisolなど重要なステロイドを水酸化する反応を行うため、バイオテクノロジーの分野で利用されている(C.Virus,R.Bernhardt;Function and engineering of the 15β−hydroxylase CYP106A2[Biochemical Society Transactions Vol.34(6),1215−1218.2006]を参照)。 <ヘモグロビンについて> ヘモグロビン(hemoglobin)とは、血液中に存在する赤血球の中にある蛋白質である。酸素分子と結合する性質を持ち、肺から全身へと酸素を運搬する役割を担っている。鉄イオンがあるため、赤色を帯びている。各サブユニットはグロビンと呼ばれるポリペプチド部分と1つのヘム部分が結合したもので、本件の実施例では後述するように4種類のグロビンからなるヘモグロビンを用いた。 以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。 以下、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。 <概要> 本実施例では、大腸菌の発現系において取得された高活性変異体PLD(C.Ogino,H.Fukuda;Phosoholipase D from Streptoverticillium cinnamoneum:protein engineering and application for phospholipids production (Journal of Molecular Catalysis B:Enzymatic 23,107−115.2003))を放線菌で大量に分泌できる発現系を構築し、解析を行った。また、放線菌を宿主とした有用タンパク質の分泌生産系への応用のために、まず、モデルタンパク質としていくつかの外来タンパク質の発現系を構築し、この放線菌の発現系が外来タンパク質生産に有効であるかを検討した。 そのために、本発明者等は、本組換え発現系の多様なタンパク質発現系への適用可能性を検討することを目的として、構築プラスミド(pUC702−promoter−PLD)のPLD遺伝子領域に様々なタンパク質遺伝子を組み込み、外来由来タンパク質の分泌発現を可能にする宿主ベクター系の開発を行った。そして、真核生物由来のヘム含有タンパク質と枯草菌由来のヘム含有タンパク質の発現に成功した。 このスキームを示す図1に沿って説明すると、目的遺伝子の5’側にNheIサイトを有するように、そして3’側にBamHIかBglII配列を有するようにPCR用プライマーを設計して目的遺伝子を増幅することで、本ベクター(pUC18+promoter+term)に、遺伝子を挿入することが可能であった。本スキームではモデル系として、緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子を挿入するスキームを示した。 挿入したプラスミド(pUC18−pro−gfp)は、それ自身は放線菌に挿入(形質転換)することが困難なベクターであるので、更に放線菌と大腸菌の両方にて形質転換が可能となるシャトルベクターへの遺伝子の挿入を行った。プラスミド(pUC18−pro−gfp)に挿入されたPromoter領域からTerminator領域の終わりまでは、制限酵素HindIIIとKpnIにて取り出すことが可能であった。この切り出した配列を、放線菌・大腸菌のシャトルベクターpUC702に挿入することで、放線菌で大量に分泌生産可能なベクターの構築が完了した。本ベクターシステムを用いて、真核生物由来ヘム含有タンパク質と枯草菌由来ヘム含有タンパク質の発現を確認することが出来た。 本実施例の結果をより詳しく説明すると、放線菌でも変異体PLDをW.T.−PLDと同様に大量分泌発現できることが分かった。さらに、変異体PLDの立体構造解析を行うことによって、W.T.−PLDと比較して活性部位付近に存在する蓋様構造(以下Lid領域)のみが変化していることが推測された。それにより、比活性や基質親和性や触媒能が変化することが示された。また、大腸菌の発現系とは関連性が見られないことが分かり、大腸菌発現系での活性の低い変異体が放線菌の発現系では活性が高くなる可能性があることが示された。さらに、本発現系を様々な外来由来タンパク質の発現に適用する為に、汎用ベクターの開発を行い、放線菌の発現系で外来タンパク質の分泌発現が確認された。 <実験材料および装置> [使用試薬] DNA関連・NaCl nacalai tesque・Tripton nacalai tesque・Yeast extract nacalai tesque・Agar Powder (寒天末) nacalai tesque・アガロースLE(低電気浸透)クラシックタイプ [電気泳動用] nacalai tesque・SDS nacalai tesque・KOAc nacalai tesque・酢酸 nacalai tesque・クロロホルム nacalai tesque・2−プロパノール(イソプロピルアルコール) nacalai tesque・酢酸ナトリウム 関東化学株式会社・エタノール nacalai tesque・メタノール nacalai tesque・エチジウムブロマイド nacalai tesque・Tris nacalai tesque・HCl Wako・EDTA nacalai tesque・Glycerol nacalai tesque・Bromophenol Blue (BPB) nacalai tesque・Dimethyl Sulfoxide (DMSO) Wako(046−21981 Lot.TCQ2620)・6×Loading Dye TOYOBO・分子量マーカー(λ/EcoRI・HindIII) TOYOBO,Wako・Ligation high TOYOBO・MagExtractor, Gel purification kit TOYOBO NPK−601・Restriction enzyme Alw44I,BamHI,BglII,EcoRI,HindIII, KpnI,NheI,PstI,SphI,XbaI TOYOBO・DNA Polymerase Pyrobest, PrimeSTARTM HS TaKaRa KOD−Plus TOYOBO・BigDye ver1.1, BigDye ver3.1, Hi−Di Formamide, POP−6 Polymer, Buffer 10×with EDTA Applied Biosysyems タンパク質関連・APS nacalai tesque・2−Mercaptoethanol nacalai tesque・N,N,N’,N’,−テトラメチルエチレンジアミン(TEMED) nacalai tesque・銀染色IIキット Wako(291−50301)・Na2HPO4 nacalai tesque・NaH2PO4 nacalai tesque・Tween 20 (Polyoxyethylene Sorbitan Monolaurate nacalai tesque 356−24・スキムミルク nacalai tesque・Anti−GFP Epitope Tag Antibody(Rabbit Polyclonal IgG) Affinity BioReagents (PA1−980A)・Anti−Rabbit IgG(FC), AP Conjugate Promega(S3731)・BCIP/NBT Color Development Substrate Promega(S3771) 放線菌培養関連・K2SO4 nacalai tesque・KH2PO4 Wako・MgCl2 Wako・CaCl2・2H2O nacalai tesque・Glucose nacalai tesque・Sucrose nacalai tesque・Glycine nacalai tesque・TES(N−Tris(hydroxymethyl)methyl−2−aminoethanesulfonic Acid) nacalai tesque・Tryptic Soy Broth(TSB)<以下に30g/lあたりの組成を示す> BECTON DICKINSON Pancreatic Digest of Casein(17.0g/l) Enzymatic Digest of Soybean Meal (3.0 g/l) Dextrose(2.5g/l) Sodium Chloride(5.0g/l) Dipotassium Phosphate(2.5g/l)・BACTOTM Peptone BECTON DICKINSON・Yeast extract BECTON DICKINSON・CASAMINO ACIDS BECTON DICKINSON・MALT EXTRACT BECTON DICKINSON・Lysozyme,from Egg white Wako(126−02671)・Thiostrepton from Streptomyces azureus, SIGMA(T8902−1G)・Polyethylene glycol(PEG)1,000 Fluka(81188)・5−Aminolevulinic acid hydrochloride コスモバイオ(AL−00−2) [使用装置]・ディープフリーザー(−85℃) ULTRA LOW MDF−192 (SANYO)・オートクレーブ HIGH−PRESSURE STEAM STERILIZER BS−305(TOMY) KT−2346(ALP)・バイオシェーカー BIO SHAKER BR−40LF(TAITEC) Bio Shaker BR−41FL(TAITEC)・PERSONAL−11 SDセット(TAITEC) Program Incubator IQ802(yamato) EYELATRON FLI−301N(EYELA)・インキュベーター SOFT INCUBATOR SLI−450N(EYELA) INCUBATOR MIR−153(SANYO) COOL INCUBATOR PCI−301(ASONE)・クリーンベンチ BIO−LABO CLEANBENCH NS−8A(十慈フィールド) バイオクリーンベンチ VCB−1600S(Oriental)・遠心分離機 インバータ・コンパクト高速冷却遠心機 6930(KUBOTA) Microtec 1524R(ASTEC) H−103n(KOKUSAN) himac CT13(HITACHI) Centrifuge 5415 R(eppendorf) MR−150(TOMY) CAPSULEFUGE PMC−060(TOMY)(卓上遠心機)・分光光度計 Spectrophotometer U−3010(HITACHI)・アガロース電気泳動装置 Mupid−2plus(ADVANCE)・PAGE電気泳動装置 POWER STATION 1000VC AE−8270(ATTO) POWER STATION 1000VC AE−8450(ATTO)・UVサンプル撮影装置 FAS−III(TOYOBO) DIGITAL IMAGE STOCKER DS−30(TOYOBO)・ブロックインキュベーター BLOCK INCUBATOR BI−515(ASTEC) BLOCK INCUBATOR BI−516C(ASTEC) D−THERMO 501(APEL) HEATING BLOCK HF−41(YAMATO)・減圧乾燥装置 VC−36N(TAITEC) VC−12S(TAITEC)・Vortex mixer TUBE MIXER TM−2000(IWAKI) VORTEX−GENIE2 G−560(Scientific Industries)・PCR装置 PCR System2700(Applied Biosystems) PCR System2720(Applied Biosystems・電子天秤 BJ 610(Sartorius) AX 200(SHIMADZU)・蒸留水装置 STILL ACE SA−2000E(EYELA)・DNA シーケンサー ABI PRISMTM 310 Genetic Analyzer (Applied Biosystems)・エレクトロポレーション装置 Gene Pulser XcellTM エレクトロポレーションシステム(BIO−RAD)・顕微鏡 ECLIPSE 50i(Nikon) ビルケルチュルク血球計算板(エルマ販売株式会社)・イオン交換クロマト装置 GRADIENT PNMP ECONO UV MONITOR MODEL 2110 FRACTION COLLECTOR [菌体]・大腸菌(Escherichia coli : E.coli) Novablue (Novagene) DH5−α (TaKaRaBio)・放線菌(Streptomyces) Streptomyces lividans 1326株 培養温度;28℃、培地;TSB。 本実験を福本らが開始した際に使用した放線菌である。出処は、農林水産省管轄の食品総合研究所(通称:食総研)より、静岡大学農学部農芸化学科の徳山真治先生を介して、分与いただいた菌株である。 Streptomyces lividans(別名Streptomyces violaceoruber)(NBRC 13385) 培養温度; 28 oC、培地; TSB。 平成17年度に、発酵研究所(IFO,Institute of Fermentation,Osaka)より移管された独立行政法人製品評価技術基盤機構 バイオテクノロジー本部 生物遺伝資源部門(NBRC)より購入した菌株である。遺伝的性質は、上記Streptomyces lividans 1326株と同等であり、pIJ702系のプラスミドの形質転換に適用可能である。 Streptoverticillium cinnamoneum(別名Streptomyces cinnamoneus)(IFO12852、現在はNBRC12852) 培養温度;28℃、培地;TSB。 神戸大学の福田秀樹らによって、高いリン酸機基転移反応活性を有するPLDを培地中に大量に分泌生産する生産株として、スクリーニングされた菌株である。荻野らによって、この株由来のPLD遺伝子配列が決定され、pIJ702系プラスミドでの遺伝子組み換え系にて使用される遺伝子材料となった。また本菌株のPLD遺伝子上流には、分泌生産に非常に強力に作用する発現プロモーターが存在していることも明らかとなっている。以上の意味で、本研究のオリジナルとなる菌株である。 [試料の組成] [使用プライマー] DNA断片増幅用 Promoter領域増幅用 S−HindIII−promoter(配列番号:7) 5'-CCCAAGCTTACGTCATGGCGGGTCTCTCTCGTC-3' As−BamHI−NheI−signal(配列番号:8) 5'-CCCGGATCCGCTAGCGAAGGCCGGAGCCGCGGGCAG-3' terminator領域増幅用 S−BamHIII−BalII−Terminator(配列番号:9) 5'-CCGGATCCAGATCTTGAGACGACTGAGCGCCCGGA-3' As−EcoRI−kpnI−Terminator(配列番号:10) 5'-CCGAATTCGGTACCATTTCCTCGCTGGTCGGTTCG-3' GFP,BFP遺伝子増幅用 NheI−GFP(配列番号:11) 5'-CCGCTAGCATGGCCAGTAAAGGAGAAGAACTCTTCACTGGA-3' As−BglII−BamHI−GFP(配列番号:12) 5'-CCAGATCTGGATCCTCAGTTGTACAGTTCATCCATGCCATG-3' A1遺伝子増幅用 XbaI−A1(配列番号:13) 5'-CCCTCTAGAGTATGTAACCGACTTGAGCAG-3' As−BamHI−A1(配列番号:14) 5'-CCCGGATCCTTAGCCGGAAATACCGCTAGC-3' A2遺伝子増幅用 NheI−A2(配列番号:15) 5'-CCCGCTAGCGATTGCACTTCCCTCAATCGC-3' As−BamHI−A2(配列番号:16) 5'-CCCGGATCCTTAACCAGAAATGCCGCTGAC-3' S−repair−A2(配列番号:17) 5'-GTTGGAGCTCGTAGCTTCGACAAC-3' As−repair−A2(配列番号:18) 5'-GTTGTCGAAGCTACGAGCTCCAAC-3' B1遺伝子増幅用 NheI−B1(配列番号:19) 5'-CCCGCTAGCGAATGCTGCAGTAGAGGTGAT-3' As−BglII−B1(配列番号:20) 5'-CCCAGATCTTTACAAGCCTGCACCAATACC-3' B2遺伝子増幅用 NheI−B2(配列番号:21) 5'-CCCGCTAGCTCGAGCTGTTGTTCCTCCGAG-3' As−BamHI−B2(配列番号:22) 5'-CCCGGATCCTTACAAGCCTGCTGAGATGCC-3' CYP106A2遺伝子増幅用 S−XbaI−CYP106 (配列番号:23) 5'-CCCTCTAGAATGAAAGAAGTTATTGCAGTA-3' As−BglII−CYP106(配列番号:24) 5'-CCCAGATCTTTACATGCGGCTTGCCTTAAG-3' S−repair−CYP106(配列番号:25) 5'-GATGATATCATCTCTGATCTATTGA-3' As−repair−CYP106(配列番号:26) 5'-GACTTCAATAGATCAGAGATGATAT-3' CYP102A3遺伝子増幅用 S−NheI−CYP102(配列番号:27) 5'-CCCGCTAGCATGAAACAGGCAAGCGCAATA-3' As−BglII−CYP102(配列番号:28) 5'-CCCAGATCTCTACATTCCTGTCCAAACGTCTTT-3' シーケンス用 pUC18への組み込みの際、プロモーター領域確認用 S−M13Fw primer(配列番号:29) 5'-GGGTAACGCCAGGGTTTTCCCAG-3' pUC18ではターミネーターを、pUC702ではプロモーター領域確認用 AS−M13Rv primer(配列番号:30) 5'-GGATAACAATTTCACACAGG-3' pUC702への組み込みの際、ターミネーター領域確認用 Rv−pUC702(配列番号:31) 5'-CCCGGGAGTAATCCTGGGATTAC-3' Promoter領域,Signal領域確認用 promoter−1(配列番号:32) 5'-GCGCGGCGCCCCGCGGCTCGT-3' As−promoter−2(配列番号:33) 5'-ACCCTCGCCCGGCAGCGCGGT-3' promoter−3(配列番号:34) 5'-TAGCCGCGGGCCACGACGTCC-3' Fw−promoter(配列番号:35) 5'-CGTGCGCCGACTCCACGTCCGTGCC-3' Fw−rbs(配列番号:36) 5'-CCCTCTCGGAGGCGGCCTGCCGTACC-3' GFP遺伝子確認用 gfp−1(配列番号:37) 5'-CCATACGGAAAACTTACCCTGAA-3' CYP106A2遺伝子確認用 P450−106A2(Seq1)(配列番号:38) 5'-GGTGGATACCTTATTTCTTC-3' CYP102A3遺伝子確認用 P450−102A3(Seq300)(配列番号:39) 5'-GCCCACCGCATTTTGCTGCC-3' P450−102A3(Seq600)(配列番号:40) 5'-GAAAACGAAGCTGCAGTTCC-3' P450−102A3(Seq900)(配列番号:41) 5'-GTTAACGGATGACACGCCTG-3' P450−102A3(Seq1200)(配列番号:42) 5'-GCGCTTGTATTGGCATGCAG-3' P450−102A3(Seq1500)(配列番号:43) 5'-GGTGAACTGGCTGCTCAAGG-3' P450−102A3(Seq1800)(配列番号:44) 5'-CAGCGATTGGGGAAGGTGAC-3' P450−102A3(Seq2100)(配列番号:45) 5'-CATATCGGAATCCTGCCAAAG-3' P450−102A3(Seq2400)(配列番号:46) 5'-CAAAACGTCTTACCATGCTTG-3' P450−102A3(Seq2700)(配列番号:47) 5'-CGCCTATGAT <実験方法> [遺伝子における基本操作] 現在、目的とするDNAの増幅にはPCR(Polymerase chain reaction)法が一般的に用いられている。PCR法は、極微量のDNAを鋳型とし、わずか数時間で目的とする配列のみを特異的に100万倍以上にも増幅することができる画期的な方法である。現在では、操作の簡便さから、基礎研究、臨床検査、犯罪捜査にいたるまで多彩な分野で応用されている。 DNAの増幅(PCR) PCR法は試験管内で目的のDNA断片を指数関数的に増幅する方法であり、耐熱性DNAポリメラーゼ(DNA polymerase)を用いることで初めて可能になった技術である。PCR反応は3つのステップを1サイクルとして、これを繰り返すことでDNAを増幅する。この反応に必要なものは、鋳型(Template)となるDNA、増幅したい遺伝子部分の5’末端にあたる主鎖、副鎖それぞれの短いDNA断片(Primer)、デオキシリボヌクレオチド類、塩と耐熱性のDNAポリメラーゼである。 最初のステップで95℃前後の熱をかけることで2本鎖になっている鋳型DNAを1本鎖状態(Denature)にし、プライマーが鋳型DNA中の設定している配列部分に結合できる状態にする。次に温度を下げることで、鋳型の相補的配列部分にプライマーが結合し、部分的に2本鎖状態を形成する(アニ−ル(annealing))。最後に鋳型に結合したプライマーを始点にして耐熱性ポリメラーゼがDNAを5’→3’方向に合成し、DNAを伸張(Extension)させる。 以上のような単純なサイクルを繰り返すことで、目的のDNA断片を増幅させることが可能になるが、それぞれの条件は一義的に決定されているものではなく、目的に応じて最適な条件を決定する必要がある。 PCR法の検討項目 PCRにおけるサイクルは基本的には先にもふれたように、熱変性・アニーリング・伸長反応の3段階からなっており、そのうち独自に設定する必要があるのはアニーリング温度、及び各ステップにかける時間、サイクル数である。 アニーリング温度は通常各プライマーのTmを参考にして決定する。2つのプライマーのTmが大きく異なる場合は、低い方のTm付近に設定する。ステップにかける時間・サイクルはまず、ポリメラーゼの説明書に従う。また、Extension Timeは増幅断片1min/1kbpで行う。 Agarose Gel Electrophoresis 2本鎖DNAの場合、塩基の荷電は相補鎖間の水素結合で互いに打ち消しあっているため、分子全体としてはリン酸基のマイナスチャージのみが主となる。また、このリン酸基の個数(荷電)はヌクレオチド数(DNAの分子量)に比例するため、全てのDNA分子は質量あたり一定の力で陽極に引かれることになる。さらに、二重らせん構造を取っているDNAは塩基配列にかかわらず同じ線状分子の形をしており、立体構造の泳動度にほとんど影響を与えない。すなわち、唯一泳動度に影響を与えるのが分子の大きさ(長さ)ということになる。分子量が大きい長い分子ほど泳動移動度が遅くなる。DNA鎖の長さのみに依存した原理を用いて、DNAを分離する。1)アガロースを秤量して三角フラスコに入れ、1×TAEを加えて電子レンジにかけ、アガロースを溶かす。2)アガロースが溶けて均一になった溶液が50℃前後ぐらいまで冷えたらエチジウムブロマイド溶液(10mg/ml)をゲル100mlあたり5μlの割合で加えよく混合する。3)ゲル成型トレイにゲルを流し込み、コームを刺す。4)ゲルを室温で30minほど放置し、十分に冷えて固まったら、コームを抜いてゲルを電気泳動槽にセットする。5)ゲルの上面くらいまで電気泳動バッファー(1×TAE)を満たす。6)サンプルDNAに対して、1/5volumeの6×loading dyeを加える。7)ゲルの穴にサンプルを静かに入れる。8)ゲルの穴にMarker2を入れる。Marker2とは、λ(d857Sam7)を制限酵素HindIII、EcoRIでdouble digestionしたもので、高〜中分子領域のDNA分子量マーカーとして使われる。9)BPB(ブロモフェノールブルー)がゲルの1/2か2/3くらい流れたところ(約20min)で電気泳動を止める。10)トランスイルミネーターにより、UVを照射する(波長302nm)。 Gel purification PCRやRestriction Enzyme Digestionなどの後、目的のサイズのDNA断片のみを回収する方法である。1)アガロース電気泳動、エチジウムブロマイド染色。2)UV照射下(Long wave)で目的のバンドをなるべく小さくなるようにメスで切り出す。3)切り出したゲルを細かくスライスし、1.5mlのチューブに移す。4)400μl吸着液を加え、ゲルが完全に溶解するまで時々撹拌しながら放置。※溶けにくい場合、55℃で放置する。5)30μlの磁性ビーズを加え時々vortexしながら2min静置。6)B/F分離し、600μlの洗浄液を加え10sec,vortexする。7)B/F分離し、1ml 75% ethanolを加え、10sec,vortexする。8)B/F分離し、スピンダウン、完全に上清を除去する。 ※チューブの蓋をあけ、55℃,5min静置する。9)25〜100μlのT.E.を加え10sec,vortexする。10)2min放置し、B/F分離し上清回収する。 Alcohol Precipitation 核酸を精製、濃縮するために用いる最も簡単な方法で、高分子コロイドであるDNAをアルコールと塩で凝縮させて沈殿を得る。使用するアルコールの種類により、エタノール沈殿、イソプロピルアルコール沈殿などがある。余分な塩類や低分子成分は沈殿しないため、DNAの濃縮やバッファーの置換を容易に行うことが可能である。また、エタノール沈殿の場合にはRNAも共沈するが、高分子アルコールのポリエチレングリコール(PEG)を用いてDNAを沈殿させた場合(PEG沈)、RNAの共沈はほとんど起こらないので、シークエンス用のプラスミドのようにRNAを取り除く必要がある場合には、PEG沈が用いられることが多い。 Ethanol Precipitation アルコール沈殿の中で最も一般的な方法である。冷却時間に比例してDNAの収率が高くなる。1)Sampleに約1/10倍量の3M NaOAc(Alkali I−II−III後のようにSampleに塩が含まれている場合は加えなくてよい)と2〜2.5倍量の低温100% Ethanolを加え、Voltexする。2)−20℃で1hまたは、−85℃で20min以上冷却し、4℃,13000rpmで30min遠心して、DNAを沈殿させる。3)上清を慎重に取り除き、70% Ethanolを加えてVoltexし、4℃,13000rpmで5min遠心して洗浄する。(チューブ壁面に70% Ethanolを流し入れることを2回ほど行うだけの洗浄方法もある。)4)減圧乾燥機で完全に乾燥させる。5)TEもしくはDWを適量加え、溶解させる。 Isopropanol Precipitation アルコールを加える量が少量でよいので、サンプル量が多い場合に適している。1h以上の冷却でも収率は変わらないので、エタノール沈殿に比べて短時間の処理で済む。1)Sampleに約1/10倍量の3M NaOAc(アルコール沈殿同様、Sampleに塩が含まれている場合は加えなくてよい)と等量の100% Isopropanolを加え、Voltexする。2)以下、エタノール沈殿と同様。 PEG Precipitation 高分子アルコールであるポリエチレングリコール(PEG)は、DNAの水和水を奪うことで凝集を促進しDNA分子を沈殿させる。※RNAの除去に行う。1)Sampleに等量のPEG6000 Solutionを加え、Voltexする。2)4℃で1h冷却する。3)4℃,13000rpmで30min遠心操作し、DNAを沈殿させる。4)以下、エタノール沈殿と同様。 Restriction Enzyme Digestion 制限酵素やエンドヌクレアーゼの一種であり、DNAの特定の配列を認識してその部位を切断する酵素である。この性質を利用することによって、任意のDNAの配列の中から目的とする配列のみを切り出したり、別のDNAに組み込んだりすることが可能となる。さらに、目的とするDNA配列が正確な位置に組み込まれているかどうか確かめるためにも用いられる。1)Sampleがプラスミド状の場合、98℃,3min熱を加え、氷上にて冷却する。2)Sampleに制限酵素(全反応液体積の5%以内)、10×Buffer、任意のD.W.を加える。3)37℃で3〜6h反応させる。 Ligation 制限酵素処理して線状化したVectorとDNA fragmentをリン酸ジエステル結合させる方法である。1)組み込みたいDNA fragmentとVectorをDNA濃度に応じ、(3:1〜50:1)で混合し、Sampleを作成する。2)SampleにLigation High(TOYOBO)を半量〜等量混合する。3)16℃で6h〜一晩反応させる。 Competent Cell 大腸菌を宿主として遺伝子の形質転換を行う際、大腸菌が目的のplasmid DNAを取り込みやすいようにするために、細胞壁をコンピテント化する。コンピテント細胞は生育性を保存するためにグリセロールとともに−80℃で凍らせることができ、数年間に渡って保存することが可能である。この方法はDH−1株に最適化されているが、ほとんどの大腸菌に適用できる。この方法により大腸菌Nova Blue,DH−5α株のコンピテントも作成する。 作業はすべてクリーンベンチ内で行い、コンタミネーションに注意する。1)70% Ethanolで滅菌したスプレッダーを用いて、コンピテント化したい大腸菌50μlをLBプレート(抗生物質なし)に均一に塗り広げる。2)37℃で一晩培養する。3)LB培地(抗生物質なし)もしくはTf培地50mlに大腸菌1loopを植菌し、37℃でさらに一晩培養する(Mini culture)。4)LB培地(抗生物質なし)400mlに培養液20mlを加え、OD600=0.5のなるまで約3h、37℃にて培養する(Large culture)。5)氷上で5min冷却する。6)4℃,4000×gで15min遠心し、上清を取り除く。7)集菌した菌体に、氷冷したTfb−1を80mlを加え、ピペッティングにて懸濁する。8)5〜7と同様、5min冷却、遠心し、上清を除いた後にTfb−2を16mlを加えてピペッティングにて懸濁する。9)氷上で15min冷却した後、手早く200μlずつに分注する。10)ディープフリーザー(−85℃)で保存する。 Transformation 形質転換(Transformation)とは、plasmidなどの適当なvectorを用いて大腸菌や培養細胞に新たな遺伝情報を導入する方法である。現在までに、より応用範囲の広いplasmidを用いた形質転換の系が研究されており、現在では大腸菌系での形質転換はもっとも広く用いられている方法である。本研究では遺伝子クローニング用に大腸菌DH5−α株を使用した。1)Plasmid 2.0μl(Ligation後は5μl)にcompetent cell 100μlを加え、30min氷冷する。2)42℃で45sec熱処理(Heat shock)をし、5min以上氷冷する。3)LB溶液(Ampなし)を1ml加え、37℃で1hインキュベートする。4)3000rpm、10min遠心し、上清を取り除く。5)集菌した菌体をピペッティングにて懸濁させ、70% Ethanolで滅菌したスプレッダーを用いて、LBプレート(Amp入り)に大腸菌の形質転換体を均一に塗り広げる。6)37℃で一晩静置培養する。 Alkali−SDS プラスミド増幅のための宿主となる大腸菌には、プラスミド以外のDNAとしてゲノムDNAや種々のRNA、さらに菌体の構成成分としてのタンパク質や脂質などが含まれている。アルカリ法は、これらの混合物からプラスミドDNAを精製する方法である。 操作方法1)オートクレーブ済みの爪楊枝でシングルコロニーをすくい上げ、LB培地(Amp入り)3mlに植菌し、37℃で一晩培養する。2)爪楊枝をピンセットで取り除き、3000rpmで10min遠心して菌を沈殿させ、上清を捨てる。3)Solution Iを100μl加えてVortexし、菌を懸濁する。4)Solution IIを200μl(4N水酸化ナトリウム100μl、1% SDS 100μl)を加え、軽く攪拌する。5)Solution IIIを200μl加えて軽く攪拌し、チューブに移す。6)クロロホルム50μlを加えて、Vortexした後に、4℃,13000rpmで10min遠心する。7)沈殿が入らないように注意しながら、上層(水相)を回収する(境界に存在する白い沈殿物はタンパク質の変性したものであるので極力混入を防ぐ)。 RNase Treatment プラスミド抽出の際に細胞からDNAを抽出すると、細胞中に多量に存在するRNAが混入してしまう。そこでSequence反応のようにRNAの混入が悪影響を及ぼす場合には、RNAを除去する必要があるため、RNase処理を施し、RNAを分解する。1)SampleにR10を1/500倍量程度加える。2)37℃で30min〜6h静置する。 Alkali Denaturation アルカリにより、2本鎖DNAを1本鎖に変性させる方法である。この方法により、DNAにニックが入りやすくなり、ニックが入ったDNA鎖はアルカリ変性によって直鎖状DNAになり、ニックの入らなかったDNA鎖はそのまま環状DNAになる。ここで、アニーリングを行うと、ほとんどの直鎖状DNAは直鎖同士または環上1本鎖DNAと再会合するが、直鎖同士の再会合があるおかげで、一部の環状1本鎖DNAは再会合せずに残る。残った環状1本鎖DNAは再会合せずに残る。残った環状1本鎖DNAには確率的に+鎖と−鎖が等モルずつ含まれ再会合しようとするが、立体障害のため完全に2本鎖に戻ることはできない。こうして残った環状1本鎖DNAが鋳型となり、シークエンス反応が進みやすくなる。1)マイクロチューブにplasmid DNA 5μl2N NaOH 2μl2mM EDTA 2μlD.W. 11μlTotal 20μlを調製する。2)よく混ぜ合わせて、37℃で5minインキュベートする。3)エタノール沈殿を行い、乾燥させる。 DNA Sequence Determination 目的のDNA断片の両側に位置する配列に対するprimerからDNA polymeraseを用いて相補鎖を合成することにより、塩基配列を調べる方法。合成の際にその原料としてヌクレオチド3リン酸(dNTP;dATP,dCTP,dGTP,dTTP)を反応液中に入れるが、そのときにそれぞれのアナログである蛍光標識されたジデオキシヌクレオチド(ddNTP;ddATP,ddCTP,ddGTP,ddTTP)を混合しておく。DNA合成の際に、このジデオキシヌクレオチドがある確率で取り込まれると、そこで合成がストップし、様々な長さの合成産物ができる。それらの断片を1塩基分の長さの違いも区別できる変性ポリアクリルアミドゲルで分離し、これらを、キャピラリー電気泳動を行うことで異なる分子量を会席することが可能となる。なお本研究では、蛍光自動シーケンサーにPerkin Elmer社のABI PRISM 310を用いた。1)シーケンサー用のPCRの反応液を混合し、以下の条件でPCRを行う。プライマーは解析箇所にあわせて、以下の表のように変更する。反応組成Template DNA 0.4μlDilution buffer 3.0μlPrimer 4.0μlDMSO 1.0μlD.W. 9.6μlBig Dye(Ver1.1or3.1)(5pmol/μl) 2.0μlTotal 20μlPCR condition 98℃・5min↓Denature 98℃・30secAnnealing 50℃・15secExtension 60℃・4min *25cycle繰り返す↓4℃2)3M CH3COONa 2μl,100% Ethanol 50μlを加え、室温で15min放置する。なお、これ以降の操作は全て遮光して行う。3)15000rpm,20min以上遠心する。4)ピペットで上清を除去し、70% Ethanol 200μlを加える。5)15000rpm,5min遠心する。6)ピペットで上清を除去し、減圧乾燥する。7)Hi−Diホルミアミドを20μl加える。8)95℃で2min加熱した後、氷上で5min静置する。9)シーケンサー専用のチューブに移し、ABI PRISM 310にて遺伝子配列解析を行う。 [放線菌の形質転換とタンパク質の発現] 放線菌のプロトプラスト調整 あらかじめ用意する物・コットンを詰めてオートクレーブ、乾熱滅菌(150℃,2h)したシリンジ(20ml)・250ml遠心管を培養本数分、10min UV殺菌しておく・10.3%スクロース溶液100ml×培養本数・Lysozyme溶液15ml×培養本数・P−buffer約20ml以上×培養本数 基本的に遠心操作、培養機以外での操作はクリーンベンチ内で行う。1)YEME培地100ml+ステンレスコイルを坂口フラスコへ入れ、オートクレーブ。2)放線菌をTSB培地3mlを入れオートクレーブにかけた試験管にて28℃,200rpmで2〜3日振盪培養(前培養)。3)前培養した菌をYEME培地へ植菌し、28℃,200rpmで30h振盪培養。4)遠心管へ移し、8℃,3000rpm,10min遠心分離し、上澄みを捨てる。5)10.3%スクロース溶液50ml加え懸濁し、8℃,3000rpm,10min 遠心分離し、上澄みを捨てる(これを2回行う)。6)Lysozyme溶液を15ml加え、懸濁し、30℃,60min以上頻繁に懸濁させながら静置。7)P−buffer 15mlを加えてよく懸濁。8)コットンを詰めてあらかじめオートクレーブにかけておいたシリンジを使い、濾過。9)8℃,3000rpm,7min遠心分離し、上澄みを捨て、P−bufferをおよそ1500μl加える。(濾過後の見た目の菌体量によってある程度調整)10)50μlずつ分注する。11)ディープフリーザー(−85℃)で冷凍保存。 放線菌の形質転換(PEG法)及び、抗生物質による選択 あらかじめ用意する物・15mlコーニングを培養本数分UV殺菌しておく・T−buffer 500μl×培養本数・P−buffer 5.5ml×培養本数・R2YEプレートを作り、2〜4hクリーンベンチ内で乾燥させ、水分30%ほど減らしておく 基本的に遠心操作、インキュベーター以外での操作はクリーンベンチ内で行う1)プロトプラストの保存試料を氷上で解凍。2)プラスミド溶液10μlとT−buffer200μl加え、懸濁。3)R2YEプレートに100μlずつ蒔いて、30℃で1〜2日培養。4)0.7%ソフトアガロース(電気泳動アガロースLEクラッシクタイプをD.W.に加えてオートクレーブしたもの)に終濃度500μg/mlとなるようにチオストレプトンを添加し、3mlをプレートに上層し、30℃で5日インキュベート。 形質転換体の培養1)上層したゲルを突き破ったコロニーを白金耳で取り、チオストレプトン(5μg/ml)を加えた3 mlのTSB培地(1.7% of pancreatic digest of casein,0.3% of papaic digest of soybean meal,0.25% of dextrose,0.5% of sodium chloride,0.25%dipotassium phosphate)にて28℃、200rpmで培養を2〜3日行う。2)種培養液3mlを100mlのチオストレプトン(5μg/ml)を加えたTSB培地(坂口フラスコ)へ加え、28℃、200rpmで培養する。※培養液は24hおきにサンプリングする。サンプルは菌体と培養液を分けておき、培養液にはプロテアーゼインヒビターを1/100vol加え4℃にて保管する。 [タンパク質の操作及び、評価] SDS−PAGE SDS−PAGE(Sodium dodecyl sulfate−polyacrylamide gel electrophoresis)は、目的のタンパク質の発現を確認する最も簡単な方法である。SDSを用いて、タンパク質を変性させると同時にして負電荷を帯びさせ、ポリアクリルアミドゲル中で泳動すると、タンパク質は陰極から陽極に移動する。分子量が小さいものほど移動距離は長くなり、大きいものほど移動距離は短くなるので、分子量マーカーと比較することでおよその分子量が推定できる。また、ゲル中のアクリルアミドが高濃度の場合は、広い範囲の分子量をカバーできるが、高分子領域の分解能は低下する。低濃度の場合は、低分子量にタンパク質を分離できないが、高分子領域の分解能は向上する。 操作方法 分析するタンパク質sampleの調整1)2−mercaptoethanol(2−ME)と2×SDS Sample Bufferを1:9(=100μl:900μl)で混合する。2)分析するsampleタンパク質溶液と1)で作ったものを1:1(=15μl:15μl)で混ぜる。3)95℃,3min熱変性後、5min以上氷冷する。 ゲルの作製1)電気泳動用平板型ガラス、コーム、パッキンを70%Ethanolで念入りに拭き組み立てる。2)分離ゲル(Separating Gel)を以下の組成で調整する。ただし、10% APSとTEMEDを混合することで重合が開始するので、10% APSは重合開始直前に加える。3)すばやくかき混ぜた後、分離ゲルをゲル成型板に半分程度まで流し込み、その上に滅菌用の70% Ethanolを吹きかける。4)次に、濃縮ゲル(Stacking Gel)を以下の組成で調整する。Separating Gelと同様、10% APSは重合開始直前に加える。5)分離ゲルが固まったら、エタノールを取り除いた後、濃縮ゲルを流し込み、その上に気泡が入らないようにコームを差し込む。 泳動1)1×SDS−Bufferを泳動槽に2cmほど注入し、ゲル板の底に空気が入らないように注意しながら、泳動槽にゲル板をセットする。2)ゲル板の内側を1×SDS−Bufferで満たし、ゲル穴を壊さないようにコームを静かに抜く。3)マイクロシリンジを用いて、Sampleを20μlずつゲル穴にapplyする。4)SDS−Marker(低分子量マーカー)を5μl applyする。5)電源装置を1000V、20mA/plateにセットし、定電流泳動を行う。6)2.5h程度行い、青色のラインがGelの下端近くまで達したら泳動を終了する。 CBB染色によるタンパク質の検出1)SDS−PAGE終了後ゲルを取り出し、不要な部分を切り捨てた後、容器に移し、ゲルが完全に浸るくらいCBB色素溶液を入れ、30minほど染色する。2)CBB色素溶液を保管容器に戻し、脱染液をゲルが浸るくらいに入れ、適度な染色像が得られるまで脱染する。 銀染色によるタンパク質の検出1)SDS−PAGE終了後ゲルを取り出し、不要な部分を切り捨てた後、容器に移し、ゲルが完全に浸るくらい固定液Iを入れ、10min以上(1h程度が好ましい)浸す。 ※固定液I組成Methanol 200ml酢酸 40mlD.W. 160ml2)固定液Iを捨て、固定液IIにて10min以上ゲルを浸す。 ※固定液II組成固定液I 47.5ml固定原液 2.5ml3)固定液IIを捨て、増感液にて10min以上ゲルを浸す。 ※増感液組成増感原液 2.5mlMethanol 23.75mlD.W. 23.75ml4)増感液を捨て、多めの蒸留水にて10min以上ゲルを浸す。5)洗浄中に次の染色液を作成する。染色液A 2.5ml染色液B 2.5ml蒸留水 45ml6)蒸留水を捨て、染色液にて正確に15minゲルを浸す。7)染色液を専用の廃液入れに捨てる。一度は蒸留水ですすぐ。8)蒸留水にて洗浄する。(5minを3回繰り返す)。9)現像液にてゲルを浸す。これにより染色が始まる。 ※現像液組成現像原液 5mlD.W. 47.5ml10)停止液を準備し、現像の程度に合わせて、容器に2.5ml加える。これにより染色は停止する。そのまま10min程度ゲルを浸す。11)容器内の溶液を捨て、蒸留水にて洗浄する。 Western Blotting Western Blottingは、SDS−PAGEを行った後、タンパク質をメンブレンに転写し、抗体を用いて特定のタンパク質を検出する方法である。目的のタンパク質に対する抗体が入手できれば、この方法で検出することができる。 抗体にはポリクローナル抗体とモノクローナル抗体があり、ポリクローナル抗体を作製するには、ウサギなどに抗原を注射して免疫し、抗体のできたところを見計らって採血して血清(抗血清)をとる。Western Blottingにはこれをそのまま希釈して用いる場合もあるし、また抗原カラムなどを用いて特異的抗体を精製してから用いる場合もある。 タンパク質のメンブレンへの転写 準備するものセミドライブロッティング装置電源プラスチックケース振とう機濾紙6枚PVDF膜TBS−T Buffer1×Transfer BufferBlocking Buffer1)7×10cm程の大きさの濾紙を8枚(×ゲルの枚数分)5min程度1×Transfer Bufferに浸す。2)7×10cm程のPVDFメンブレンをメタノールに5min浸した後、濾紙の入っている容器に移し、5min程度1×Transfer Bufferに浸す。ニトロセルロースメンブレンの場合は、メタノールに浸けないでそのまま1×Transfer Bufferに浸す。※メンブレンには素手で触らないようにする。3)SDS−PAGEのゲルを濾紙とメンブレンの入っている容器に移し、1min程度1×Transfer Bufferに浸す。4)予め1×Transfer Bufferで濡らした装置に気泡が入らないように注意しながら陽極側から濾紙4枚、メンブレン、ゲル、濾紙4枚を重ねていく。5)電源装置を150V、70mA/ゲル1枚当たり(定電流)にセットし、45min転写する。6)メンブレンをBlocking Bufferに30min以上振とうする。SDS−Gelは染色を行う。7)Blocking Bufferを捨て、TBS−T Bufferをメンブレンが完全に浸るくらいに入れて、5min振とうして、3回程度洗浄する。 抗体との反応準備するもの器具類プラスチックケース振とう機1)TBS−T Bufferを捨て、メンブレンをナイロンバックに入れ、3辺をポリシーラーで閉じる。2)バックに冷却しておいた一次抗体を入れ、残り1辺を閉じる。3)軽く撹拌した後、4℃で1hr以上反応させる。(通常一晩反応させる)4)一次抗体を捨て、TBS−T Bufferをメンブレンが完全に浸るくらいに入れて、5min振とうして、3回程度洗浄する。5)再び、メンブレンをナイロンバックに入れ、3辺をポリシーラーで閉じる。6)バックに冷却しておいた二次抗体を入れ、残り1辺を閉じる。7)軽く撹拌した後、4℃で1hr以上反応させる。8)二次抗体を捨て、TBS−T Bufferをメンブレンが完全に浸るくらいに入れて、5min振とうして、3回程度洗浄する。 アルカリホスファターゼ反応による抗原の検出準備するものAlkaline Phosphatase BufferNBTBCIP1)発色液を作製する(メンブレン1枚に対して5ml)。2)メンブレンを容器に入れ、発色液を加える。3)バンドが見えてきたら、適当なところで発色液を捨て、H2Oで洗う。4)ドライヤーで乾燥させる。 [タンパク質の精製] 透析 試料中のバッファーを交換したり、脱塩したりする最も一般的な方法が透析とゲルろ過である。透析は非常に薄い(20〜100μm)再生セルロース製多孔性膜を用いて自然拡散によって外液と内液の間で低分子の交換を行う。短時間の透析には、できるだけ細長い(表面積が大きい)ものを選ぶ。 透析膜Dialysis Membrane,Size20 Wako社製546−00051(小ボリューム)Seamless Cellulose Tubing 三光純薬製 UC36−32−100(大ボリューム) Buffer20 mM Acetate Buffer(pH5.6)20 mM Phosphate Buffer(pH7.0)1)市販の透析膜には保存剤としてグリセロールが含まれているので、ビーカーに蒸留水と透析膜を入れ、約10min煮沸して除き、蒸留水で洗浄する。2)透析膜の底を縛り、水を入れ、孔が開いていないかを確認し、水を捨てる。3)上端よりピペットを用いて試料を入れる(*5ml or 50ml)。4)上端の方を数cm残して縛り、ビーカーの壁面にぶら下げる。5)4 ℃のバッファー1Lを加え、4℃、スターラーの上で撹拌する。6)4 h以上後、一度外液のバッファーを交換して、4h以上撹拌を続ける。 ※50mlで行う場合数回バッファーを交換する。7)透析が終わったら、上端よりコーニングに試料を移す。*PLDの透析には培養上清5mlを用い、20mM AcetateBuffer(pH5.6)に置換する。*globin,P450の透析には培養上清50mlを用い、20mM Phosphate Buffer(pH7.0)に置換する。 イオン交換クロマトグラフィー 原理 イオン交換クロマトグラフィーは、一般的な精製方法のひとつで、可溶性タンパク質のほとんどすべてに対応することができる。タンパク質の総電荷は等電点より高いpHでは負となり、等電点より低いpHでは正となる。一方、イオン交換クロマトグラフィーに用いる担体(ゲル)には、正に荷電した陰イオン交換体と負に荷電した陽イオン交換体がある。負の総電荷をもつタンパク質は陰イオン交換体に、正の総電荷をもつタンパク質は陽イオン交換体に結合することができる。結合したタンパク質の溶出には、溶出バッファーのイオン強度(塩濃度)を増大させる方法が一般的に用いられている。イオン強度(塩濃度)の増大はイオン交換体に結合する対イオンを増加させる。対イオンがタンパク質に代わってイオン交換体に結合し、結合の弱いタンパク質から順番に遊離し溶出される。このように、イオン交換クロマトグラフィーはタンパク質のもつ総電荷と解離基との静電的な結合(イオン結合)を利用して行うクロマトグラフィーである。 装置GRADIENT PUMP BIO−RADECONO UV MONITOR BIO−RADMODEL 2110 FRACTION COLLECTOR BIO−RAD globin,P450の精製Ion exchange column:HiTrapTMQ HP(1ml)17−1153−01 Amersham Biosciences AB開始緩衝液A:20mM Phosphate Buffer(pH7.0)溶出緩衝液B:20mM Phosphate Buffer(pH7.0)+1.0M NaCl 操作方法1)UVレコーダーの波長を280nmにセットする。2)開始緩衝液を流速1ml/minで流す。充填層体積の5倍量(15min)の開始緩衝液を流してカラムを平衡化する。3)透析によって塩が取り除かれ、開始バッファーのpHに合わせられた試料(5〜8)を流速1ml/minで2回流し、カラムに結合させる。4)開始緩衝液を流速1ml/minで10分流し、カラムを洗浄する。5)コントローラーでNaCl濃度勾配をつくるように設定する(図4)。6)溶出の開始と同時に、フラクションコレクターをスタートさせる。7)溶液を2mlチューブで分画し、各フラクションについて活性測定、純度測定(SDS−PAGE)を行う。 Bradford method Bradford methodは、Coomassie brilliant blue G−250という色素がタンパク質の塩基性および芳香族アミノ酸の側鎖と結合し、その結果吸収のピークが465 nmから595 nmへとシフトすることを利用した方法である。他のタンパク質定量法と比較して、簡単、迅速、高感度(0.02〜0.1mg/ml)で、還元剤やEDTAの影響をほとんど受けない。スタンダード、バッファー(blank)、目的のタンパク質溶液を測定し、検量線からタンパク質濃度を算出する。スタンダードとして、Bovine serum albumin(BSA)を用いる。1)サンプル50μlにD.W.750μlを加える。2)kid200μlを加え、よくvortexし、37℃で15min放置する。3)波長595nmでの吸光度を測定し、検量線からタンパク質濃度を定量する。 <実施例1:放線菌Streptomyces lividans 1326で外来タンパク質分泌発現ベクターの構築> [ベクター構築で用いる遺伝子組み換え手順の概略]1)PCR及び、2ndPCRにてDNA断片を増幅2)PCR産物の全量をアガロース電気泳動し、Gel精製キットを用いてDNAインサートを単離する。もしくはエタノール沈殿を行い、Bufferなどを除去する。3)DNAインサートはprimerに挿入した任意の制限酵素サイトを持つので、それに対応する制限酵素でベクターも処理する。4)Gel精製キットを用いてDNA断片を単離する。もしくは、エタノール沈殿にてBuffer、制限酵素を除去する。 ※Bufferの異なる制限酵素を用いる場合、3)4)を繰り返し、Bufferを交換して行う。5)Ligationを行う。6)Ligation産物を遺伝子クローニング用大腸菌Nova−BlueもしくはDH5−aに形質転換する。7)形成したコロニーをLB培地(+Amp)3mlに植菌し、一晩培養する(Mini culture)。8)アルカリI−II−III、イソプロピルアルコール沈殿を用いて、ベクターを精製する。9)SampleをRNase処理する。10)アガロース電気泳動を行いインサートが組み込まれたと思われるベクターを選ぶ。11)制限酵素処理やPCR Checkなどで目的のインサートが組み込まれたかを確認。12)インサートが確認されたSampleをポリエチレングリコール沈殿する。13)Sequenceを行い、塩基配列の確認を行う。Sampleの保存は−20℃で行う。 [全体の構築手順](図1および図5)i)任意の制限酵素サイトを付けたプライマーを設計し、放線菌Stv. cinnamoneum染色体由来PLD遺伝子の下流にある翻訳停止領域(Terminator領域)をPCR法で増幅させマルチクローニングサイトを有するpUC18に組み込む。(pUC18+term)ii)シグナル領域の末端のAla,Serをコードする配列をNheIサイトに変え、任意の制限酵素サイトを付けたプライマーを設計し、放線菌Stv. cinnamoneum染色体由来PLD遺伝子の上流にあるプロモーター領域、シグナル領域を、PCR法で増幅させpUC18+termに組み込む。(pUC18+promoter+terminator)iii)目的とするタンパク質の遺伝子を有するプラスミド及び、PCR断片をTemplateにして遺伝子のN末端にNhe■サイト、C末端に任意の制限酵素サイトを付けたプライマーを設計し、PCRにて増幅させpUC18+promoter+terminatorに組み込みpld遺伝子を他の外来タンパク質の遺伝子に置き換える。vi)プロモーター領域、シグナル領域、外来タンパク質遺伝子、ターミネーター領域の全長をベクターより切り出し、大腸菌・放線菌シャトルベクターであるpUC702ベクターへ組み込む。(pUC702−pro−XXX) 増幅するDNA断片の作製の方法を以下に示す。 Promoter、Signal領域の作製 以下の条件のPCRにてPromoter、Signal領域を増幅させる。・使用Template pUC18−pro−PLD・Primer S−HindIII−promoter(配列番号:7) 5’- CCCAAGCTTACGTCATGGCGGGTCTCTCTCGTC-3’ As−BamHI−NheI−signal(配列番号:8) 5’ - CCCGGATCCGCTAGCGAAGGCCGGAGCCGCGGGCAG -3’・反応組成 Template 0.25μl Primer(100pmol/μl) 各0.75μl dNTP(2.5mM each) 2.0μl ×5 Buffer 5.0μl D.W. 16.0μl Poly(Takara Prime STAR HS) 0.25μl Total 25.0μl・Reaction condition(Hot Start) 98℃ 1min ↓ polymerase加える 98℃ 1min ↓Denature 98℃・30secExtension 72℃・2min *25cycle繰り返す ↓ 72℃ 3min ↓ 4℃ 以下の条件のPCRにて各種タンパク質遺伝子を増幅させる。 使用Template・Primer、PCRのExtension Time、制限酵素はたんぱく質遺伝子によって異なるため表18に示す。※残りの条件は同じである。・反応組成 Template 0.25μl Primer(100pmol/μl) 各0.75μl dNTP (2.5 mM each) 2.0μl ×5Buffer 5.0μl D.W. 16.0μl Poly (Takara Prime STAR HS) 0.25μl Total 25.0μl・Reaction condition(Hot Start) 98℃ 1min ↓ polymerase加える 98℃ 1min ↓Denature 98℃・30secExtension 72℃・Xmin *25cycle繰り返す ↓ 72℃・X+0.5min ↓ 4℃ ※pUC18+promoter+terminatorのベクターはシグナル領域のC末端のAla,Serをコードする配列のアミノ酸を変えずに、制限酵素サイトNheIに置き換えて作製した。遺伝子がタンパク質に翻訳され、分泌される際、このSerの後ろでアミノ酸が切られる。そのため、発現させたいタンパク質遺伝子のN末端にNheIサイトを付けてDNA断片を増幅し、挿入することで目的のタンパク質のみを分泌発現することが可能である(図6)。図6において、上段の塩基配列を配列番号:48とし、上段のアミノ酸配列を配列番号:49とし、中断の左側の配列を配列番号:50とし、中断の右側の配列を配列番号:51とし、下段の塩基配列の省略箇所の左側を配列番号:52とし、下段の塩基配列の省略箇所の右側を配列番号:53とし、下段のアミノ酸配列の省略箇所の左側を配列番号:54とし、下段のアミノ酸配列の省略箇所の右側を配列番号:55とする。 <実施例2:外来タンパク質の発現> PLDを大量に分泌発現できる放線菌の発現系で、外来タンパク質を発現させるため、pUC702−pro−pldのPLD遺伝子を外来タンパク質遺伝子に置き換えたベクターを構築し(図5)、放線菌S. lividansに形質転換を施し、放線菌で外来タンパク質の発現を試みた。 [GFP,BFPについて] PLDを発現させた場合と同様に、上記のタンパク質遺伝子に置き換えたベクターの形質転換体もTSB培地にて28℃で72h培養し、培養上清及び、菌体内のタンパク質を解析した。 結果及び、考察 まず、SDS−PAGEでタンパク質を分離し、タンパク質の発現の確認を行った。しかし、目的タンパク質の大きさに優位的なバンドは見られず、PLDの発現の場合のように大量分泌発現(50−100mg/l)はされないことが分かった。 そこで、GFP抗体を用いてWestern blottingを行った(図7)。BFPは菌内外において検出されなかった。GFPは菌体内外において検出された。しかしながら、菌体内外でGFPのサイズと同様のバンドと非常に低いバンドが検出された。低いサイズのバンドはGFPが分解されたものと考えられる。菌体内の低いバンド、菌体内のGFPのバンド、菌体外のGFPのバンド、菌体外の低いバンドという順でバンドの濃さが薄くなっていることが分かる。 これらから、GFPは発現するものの、そのほとんどが、菌体内にて分解され、微少量しか分泌されないと考えられる。データからの考察は以上であるが、GFPは様々な変異体が作られ、様々な生物に組み換えが検討されており多くの知見がある(宮脇敦史,GFPとバイオイメージング 羊土社(2002)を参照)。その知見を参考にすると、発現しないことに関して、菌体内で不溶性画分になることが挙げられる。 微生物でGFPの発現を行った場合、タンパク質の合成速度が速すぎると、GFPはフォールディングされずに、菌体内にインクルージョンボディとして蓄積されると言われている。我々の用いた放線菌発現系は当てはまる。また、生物種によってGFPの向き不向きがあり、微生物ではwtGFP,GFPuv,GFPmut3.1などの変異体が適しており、動植物細胞ではヒトのコドン使用頻度に合わせた塩基配列の最適化がされた変異体EGFPが適している。今回用いたGFPは全てEGFPであるためにこれも要因のひとつであると考えられる。 [globin;A1,A2,B1,B2,P450;CYP102A3,CYP106A2について] PLDを発現させた場合と同様に、上記のタンパク質遺伝子に置き換えたベクターの形質転換体もTSB培地にて28℃で72h培養し、培養上清及び、菌体内のタンパク質を解析した。 結果及び、考察 まず、SDS−PAGEでタンパク質を分離し、タンパク質の発現の確認を行った。しかし、目的タンパク質の大きさに優位的なバンドは見られず、PLDの発現の場合のように大量分泌発現(50−100mg/l)はされないことが分かった。 そこで、globin抗体を用いてWestern blottingを行った(図8)。※P450の抗体はないため、Western blottingはできない。A1については検出されなかった。A2,B1,B2については目的のバンドに検出された。よって、ヘム結合領域を有し、組み換えによる可溶タンパク質の発現の報告がほとんどなされていない(Tong−Fian Shen,Chien Ho;Production of unmodified human adult hemoglobin in Escherichia coli[Proc.Natl.Acad.Sci.USA Vol.90,8108−8112.1993]を参照)globinというタンパク質の一種を放線菌の発現系にて発現できた。この結果より、NO合成酵素、クロロペルオキシダーゼ、CooAなどのヘム結合領域を有する複雑な立体構造タンパク質(大村恒雄,P450の分子生物学 講談社(2004))の発現の可能性を示すことができた。 培養条件の検討 TSB培地にてglobinの発現を行った際、発現は確認されたものの発現量は微少量であったことから、globinが立体構造を形成するために必要なヘミンが放線菌体内で十分に合成されていないと考えられる。大腸菌の発現系において、同じようなヘム結合領域を有するタンパク質P450についてヘミン(非特許文献2)や5−amino levulinic acid hydrochloride(5−ALA)(Ingela Jansson,John B.Schenkman;Enhanced expression of CYP1B1 in Escherichia coli[Toxicology 144,211−219.2000])を添加することで発現が誘導されたという報告があるために培養条件の検討を行った。ヘミン添加については制約が多いため、まず、5−ALA添加を試みた。本培養の際、TSB培地に2.5mMになるように5−ALAを添加して同様に28℃で72h培養し、培養上清及び、菌体内のタンパク質を解析した。 結果及び考察 72h培養を行った後、遠心にて培養上清と菌に分けた際、全てのglobin,P450の培養上清が赤くなった。そこで、同様にSDS−PAGEとWestern blottingによる解析を行った結果、SDS−PAGEでは発現は確認されなかった。しかし、Western blottingによってA2,B1,B2が検出された(※5−ALA無添加とほとんど変わらないため不図示)。培地が赤いことから、発現していると仮定し、発現したglobin,P450の濃縮やCD−spectrum、吸光度計で解析を行うために、精製を行った。 globinの精製 培養上清50mlを透析にてBuffer交換と脱塩を行い、陰イオン交換クロマトグラフィーにて精製を行った。各フラクションの液の色から、赤い色のフラクションを見つけ出し、SDS−PAGEによって精製されているかを確認した。 結果及び考察 精製を行ったところ、6種類とも21〜25の分画にピンク色の液が精製された。SDS−PAGEで21〜25のフラクションのタンパク質を解析した。6種類ともglobinでもP450でもないバンドの高さにタンパク質が確認された(不図示)。そこで確認のため、形質転換を施していないS.lividansを5−ALAを添加した同様の培地で培養を行ったところ、培地は赤くなった。つまり、5−ALAを培地に添加することでS.lividansが染色体DNA上にある分泌型のヘム結合タンパク質の誘導が起こったと考えられる。よって、5−ALAを培地に添加しても、globin,P450の発現は変化が見られないことが示された。 <結論> 上記の実施例の結果から、本件発明において初めて構築されたpUC702−pro−pldのPLD遺伝子を外来タンパク質遺伝子に置き換えたベクターを用いた放線菌の発現系において、外来タンパク質発現の検討を行ったところ、GFP,globin;A2,B1,B2の分泌発現が可能であることが明らかとなった。 これらのGFP,globin;A2,B1,B2は、いずれも放線菌以外の生物由来の外来タンパク質であるため、本件発明において初めて構築されたpUC702−pro−pldのPLD遺伝子を外来タンパク質遺伝子に置き換えたベクターは、哺乳動物、枯草菌をはじめとする放線菌以外の生物由来の外来タンパク質であっても、放線菌で好適に発現・分泌を可能にするベクターであると考えられる。 以上、本発明を実施例に基づいて説明した。この実施例はあくまで例示であり、種々の変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。 たとえば、上記実施例では、配線材料として銅を用いたが、銅および銀を含む合金としてもよい。この場合、・・・ また、低誘電率膜として、・・・・実施例で用いたベクター(pUC18+promoter+term)に、緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子を挿入するスキームを示した模式図である。pUC702−promoter−PLDを用いた放線菌でのPLDの分泌におけるプロモーター領域の作用を説明するための図である。放線菌におけるSec−pathwayおよびSRP−pathwayによるタンパク質の分泌機構について説明するための図である。イオン交換クロマトグラフィーにおける溶出バッファーの塩濃度勾配について説明するための模式図である。実施例で用いた放線菌Streptomyces lividans 1326で外来タンパク質を分泌する発現ベクターの構築を説明するためのスキームを示した模式図である。図5で説明したベクターで発現させたいタンパク質遺伝子のN末端にNheIサイトを付けてDNA断片を増幅し、挿入することで目的のタンパク質のみを分泌発現することを可能にする方法を説明するための配列を示す模式図である。図5で説明したベクターを用いてGFP,BFP,GST−GFPを放線菌で発現させた場合のSDS−PAGEの結果を示した写真である。図5で説明したベクターを用いてglobin;A1,A2,B1,B2,P450;CYP102A3,CYP106A2を放線菌で発現させた場合のSDS−PAGEの結果を示した写真である。Hopwood,D.A.グループおよびCohen,S.N.グループによって開発されたpIJ101の制限酵素地図である。 放線菌以外の生物由来の外来タンパク質を放線菌において発現するベクターであって、 ストレプトバーティシリウム・シンナモニウム由来のホスフォリパーゼD遺伝子のプロモーター配列と、 前記プロモーターの下流に発現可能に連結されている、前記ストレプトバーティシリウム・シンナモニウム由来のホスフォリパーゼD遺伝子のシグナル配列と、 前記シグナル配列の下流に発現可能に連結されている、外来タンパク質をコードする外来塩基配列と、 前記外来タンパク質の下流に連結されている、ストレプトバーティシリウム・シンナモニウム由来のホスフォリパーゼD遺伝子のターミネーター配列と、を備えるベクター。 請求項1のベクターにおいて、 前記プロモーター配列は、配列番号1に記載のプロモーター配列において1または数個の塩基が欠失・置換・付加されてなる塩基配列からなる、ベクター。 請求項1または2記載のベクターにおいて、 前記ターミネーター配列は、配列番号2に記載のターミネーター配列において1または数個の塩基が欠失・置換・付加されてなる塩基配列からなる、ベクター。 請求項1乃至3いずれかに記載のベクターにおいて、 前記シグナル配列は、配列番号3に記載のシグナル配列のコードするシグナルペプチドのアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸残基が欠失・置換・付加されてなるアミノ酸配列をコードする塩基配列からなる、ベクター。 請求項1乃至4いずれかに記載のベクターにおいて、 前記外来塩基配列は、哺乳動物または枯草菌由来の外来タンパク質をコードする塩基配列である、ベクター。 請求項5記載のベクターにおいて、 前記外来塩基配列は、GFPおよびglobin;A2,B1,B2からなる群から選ばれる1種以上の外来タンパク質をコードする塩基配列である、ベクター。 請求項1乃至6いずれかに記載のベクターにおいて、 プラスミドである、ベクター。 請求項1乃至7いずれかに記載のベクターにおいて、 前記放線菌において前記ベクターの複製を可能にする複製起点配列をさらに備える、ベクター。 請求項1乃至8いずれかに記載のベクターにおいて、 大腸菌において前記ベクターの複製を可能にする複製起点配列をさらに備える。ベクター。 請求項1乃至9いずれかに記載のベクターにおいて、 抗生物質耐性遺伝子をさらに備える、ベクター。 放線菌以外の生物由来の外来タンパク質を組み込んで前記外来タンパク質を放線菌において発現するためのベクターであって、 ストレプトバーティシリウム・シンナモニウム由来のホスフォリパーゼD遺伝子のプロモーター配列と、 前記プロモーターの下流に発現可能に連結されている、前記ストレプトバーティシリウム・シンナモニウム由来のホスフォリパーゼD遺伝子のシグナル配列と、 前記シグナル配列の下流に設けられている前記外来タンパク質をコードする外来塩基配列を挿入するためのクローニングサイトと、 前記クローニングサイトの下流に連結されている、ストレプトバーティシリウム・シンナモニウム由来のホスフォリパーゼD遺伝子のターミネーター配列と、を備えるベクター。 放線菌以外の生物由来の外来タンパク質を発現するための組換え放線菌であって、 請求項1乃至10いずれかに記載のベクターが組み込まれている、組換え放線菌。 請求項12記載の組換え放線菌において、 ストレプトマイセス・リヴィダンスである、組換え放線菌。 放線菌以外の生物由来の外来タンパク質を放線菌において生産する方法であって、 請求項12または13記載の組換え放線菌を培地中で培養する工程と、 前記組換え放線菌の菌体または培地から前記外来タンパク質を取得する工程と、を含む、方法。 【課題】放線菌以外の生物に由来する外来タンパク質を放線菌により発現可能な発現系を構築する。【解決手段】放線菌以外の生物由来の外来タンパク質を放線菌において発現するベクターであって、ストレプトバーティシリウム・シンナモニウム由来のホスフォリパーゼD遺伝子のプロモーター配列と、プロモーターの下流に発現可能に連結されている、ストレプトバーティシリウム・シンナモニウム由来のホスフォリパーゼD遺伝子のシグナル配列と、シグナル配列の下流に発現可能に連結されている、外来タンパク質をコードする外来塩基配列と、外来タンパク質の下流に連結されている、ストレプトバーティシリウム・シンナモニウム由来のホスフォリパーゼD遺伝子のターミネーター配列と、を備えるベクター。【選択図】図1配列表


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