タイトル: | 公開特許公報(A)_蛍光標識オリゴヌクレオチドと該オリゴヌクレオチドを利用する方法 |
出願番号: | 2007017736 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | C12N 15/09,C12Q 1/68 |
阿部 友照 王 凡 JP 2008182920 公開特許公報(A) 20080814 2007017736 20070129 蛍光標識オリゴヌクレオチドと該オリゴヌクレオチドを利用する方法 ソニー株式会社 000002185 渡邊 薫 100112874 阿部 友照 王 凡 C12N 15/09 20060101AFI20080718BHJP C12Q 1/68 20060101ALI20080718BHJP JPC12N15/00 AC12Q1/68 A 4 1 OL 15 4B024 4B063 4B024AA11 4B024AA20 4B024CA04 4B024CA09 4B024HA13 4B024HA14 4B063QA12 4B063QA18 4B063QQ42 4B063QQ52 4B063QR08 4B063QR56 4B063QR62 4B063QR82 4B063QS25 4B063QS34 4B063QS36 4B063QX02 本発明は、新規構造の蛍光標識オリゴヌクレオチドに関する。より詳細には、オリゴヌクレオチドの新規な蛍光標識構造に基づいて、該オリゴヌクレオチドの伸長反応の開始を簡易、かつ、確実に知ることができる技術に関する。 生化学分野において「プライマー(primer)」は、DNAの酵素的合成の開始に必要なオリゴヌクレオチドであって、鋳型と塩基対で相補的に結合する短い一本鎖のDNAあるいはRNAを意味する。 DNAの合成では、DNAポリメラーゼ(DNA合成酵素、DNApolymerase)が該プライマーの3′-OH基にデオキシリボヌクレオチドを結合することによって、DNA鎖の伸長が始まる。また、DNAの複製の開始においてもプライマーが必須であり、この場合、短いポリ・リボヌクレオチド(RNA)鎖がプライマーの役割を果たす。mRNAから逆転写酵素でcDNAを合成する場合もプライマーが必要である。ポリメラーゼ連鎖反応(以下、PCR)でもプライマーが使用され、このプライマーの選択次第で、目的のDNAを正しく効率よく増幅できるか否かが決まる。 「プライマー伸長方法(primer extension technique)」は、一般には、RNAの転写開始部位や発現量を調べる方法のことを指す。例えば、RNAの転写開始部位を調べる場合、鋳型となるRNAの一部塩基領域と相補的なプライマーDNAを合成し、このプライマーDNAを放射性同位元素などで標識し、その後、前記RNAとハイブリダイズさせ、逆転写酵素でプライマーDNAをRNAの5′末端まで伸長させる。この伸長したDNAを電気泳動にかけてその長さを調べればRNAの転写開始部位を知ることができる。このプライマー伸長反応の基本的な原理については、上記PCRによる核酸鎖増幅の他、ジデオキシ法による塩基配列決定法、ランダムプライマー法によるプローブ作製などに共通して用いられている。このように、プライマーあるいはプライマー伸長反応を利用する技術は多い。 プライマーの伸長の際に、該プライマーの伸長反応を検出する技術もある。例えば、蛍光成分を有するデオキシリボヌクレオチドを取り込ませ、該蛍光成分の蛍光シグナルを検出することで該プライマーの伸長反応を検出する技術が提案されている(特許文献1、特許文献2)。特開2005−000174号公報。特開2003−088367号公報。 次に、DNAポリメラーゼに話しを移す。DNAポリメラーゼは、鋳型の核酸鎖に従ってDNAを合成する酵素の総称であり、伸長する鎖の末端の3′-OH基へ鋳型DNAの塩基配列と相補的なデオキシリボヌクレオチドを、ヌクレオチドをリン酸ジエステル結合により次々と付加し、5′→3′方向へ合成する(5′→3′DNAポリメラーゼ活性)。したがって、DNAポリメラーゼ反応の開始には、上記したように、3′-OH基を有するプライマーが必要である。 このDNAポリメラーゼは、上記した「5′→3′DNAポリメラーゼ活性」以外に、二つの活性を持っている。その一つは、「二本鎖特異的5′→3′エキソヌクレアーゼ活性」であり、これは、損傷を受けたヌクレオチドを除去したり、DNA/RNAハイブリッド中のRNAを分化したりする。残りの一つは、「プルーフリーディング(proof reading)活性」であり、これは、DNA複製中に誤って取り込まれた塩基を除去する。 DNAポリメラーゼは、構造的にPolI型とα型に分類できる。PolI型酵素は、DNA鎖伸長活性が強くPCRに適しているが、プルーフリーディング活性を持たないものが多いためDNA合成の忠実性には難がある。一方、α型酵素は、プルーフリーディング活性が強く忠実性が高いが、伸長活性が弱い。 本発明では、DNAポリメラーゼによるプライマー伸長の開始を、該プライマー自体の構造を予め工夫しておくことによって検出する技術、より詳しくは、DNAポリメラーゼのプルーフリーディング活性を利用してプライマー伸長の開始を蛍光検出できるように工夫したプライマーの新規構造、並びに、該新規プライマーを利用したプライマー伸長技術やハイブリダイゼーション検出技術などを提供することを主な目的とする。 本発明は、まず、オリゴヌクレオチド断片の新規構造に関するものである。本発明に係るオリゴヌクレオチドは、3′末端ヌクレオチド残基の3′位置に結合された消光物質と、該消光物質の消光作用の射程範囲内に存在するヌクレオチド残基に結合された蛍光物質と、を備えており、前記3′末端ヌクレオチド残基の塩基が鋳型DNAに対してミスマッチ塩基とされていることが特徴である。 即ち、本オリゴヌクレオチドは、通常、3′末端ヌクレオチド残基に位置する消光物質(クエンチャーとも称される。)が、蛍光物質の蛍光を抑制している。しかし、該オリゴヌクレオチドの伸長(プライマー伸長)が起こるときには、DNAポリメラーゼのプルーフリーディング活性によって、鋳型DNAに対してミスマッチ塩基を持つ3′末端ヌクレオチド残基が除去され、該3′末端ヌクレオチド残基に結合している消光物質も本オリゴヌクレオチドから除去される。これにより、本オリゴヌクレオチドに結合している蛍光物質は消光物質の消光作用が及ぶ射程範囲外となるので、所定の励起光の照射によって蛍光を発生し得る状態となる。このような反応機構に基づいて、蛍光検出を行うと、本発明に係るオリゴヌクレオチドの伸長反応が開始したか否かを知ることができる。 次に、本発明は、上記オリゴヌクレオチドを利用する代表的な三つの方法を提供する。 第一には、鋳型DNAに対してミスマッチ塩基を持つ3′末端ヌクレオチド残基をDNAポリメラーゼのプルーフリーディング活性によって除去した後、該オリゴヌクレオチド(プライマー)の伸長を進行させるように工夫したプライマー伸長反応を提供する。このプライマー伸長反応は、上記した反応機構により、プライマーの伸長反応が開始したか否かをリアルタイムで知ることができることが特徴である。 第二には、プルーフリーディング活性を有するDNAポリメラーゼを存在させた反応場に上記オリゴヌクレオチドを存在させておき、該オリゴヌクレオチドと相補的な塩基配列を有する核酸鎖とのハイブリダイゼーションを、前記オリゴヌクレオチドの伸長開始に伴って発生する蛍光により検出することを特徴とするハイブリダイゼーション検出方法を提供する。この方法において本オリゴヌクレオチドは、ハイブリダイゼーション検出用のプローブとして機能する。 第三に、プルーフリーディング活性を有するDNAポリメラーゼを存在させた反応場に上記オリゴヌクレオチドを存在させておき、該オリゴヌクレオチドと相補的な塩基配列を有するPCR増幅産物である核酸鎖とのハイブリダイゼーションを、前記オリゴヌクレオチドの伸長開始に伴って発生する蛍光により検出することで、前記PCR増幅産物の検出を行うことを特徴とするPCR増幅産物の検出方法を提供する。 この方法によれば、PCR法による増幅産物の検出、同増幅産物種の定量解析などを行うことができる。例えば、RT-PCR(reverse-transcribed-PCR)からの増幅産物であるcDNA(発現したmRNAの逆転写産物)の定量、即ち、遺伝子発現解析を行うことができる。 本発明に係る新規オリゴヌクレオチドによれば、プライマーとして機能するオリゴヌクレオチドの伸長の開始を蛍光検出によってリアルタイムで知ることができる。 まず、本発明に係るオリゴヌクレオチドの基本構造とその基本的な機能について、図1、図2を参照しながら簡潔に説明する。 まず、図1において、正円で示されているそれぞれの物質は、ヌクレオチドを表しており、全体としてオリゴヌクレオチドを示している。なお、オリゴヌクレオチドは、一般に数塩基〜数十塩基程度のヌクレオチド分子からなる核酸鎖を指すが、その分子数の概念については、本発明の目的に照らし妥当な範囲に解釈されるべきであり、狭く解釈されない。 そして、オリゴヌクレオチドXは、3′末端ヌクレオチド残基N1の五炭糖3′位置に結合された消光物質Qと、該消光物質Qの消光作用が及ぶ射程範囲内に存在するヌクレオチド残基N2に結合された蛍光物質Fと、を備えている。さらに、前記3′末端ヌクレオチド残基N1の塩基が、図1では示さない鋳型DNAに対してミスマッチ塩基とされている。 本オリゴヌクレオチドXは、後述するプライマー伸長反応が始まらない段階では、消光物質Qの影響によって蛍光物質Fの蛍光発生は抑制されている(図1の(A)参照)。一方、本オリゴヌクレオチドXは、鋳型DNA(図示せす。)に相補結合した状態において、DNAポリメラーゼEのプルーフリーディング活性が働くと、3′末端ヌクレオチド残基N1が除去される。 この結果、3′末端ヌクレオチド残基N1に結合されている消光物質Qも除去されるため、蛍光物質Fには消光物質Qの消光作用が及ばなくなる。この状態で、所定波長の励起光Pが照射されると、蛍光物質Fから蛍光が発せられる(図1の(B)参照)。したがって、この蛍光の検出によって、3′末端ヌクレオチド残基N1の除去が起きたことを知ることができる。 図2は、本発明に係るオリゴヌクレオチドXのプライマーとして機能する一実施形態例を示す図である。この図2には、30merのオリゴデオキシリボヌクレオチド(オリゴDNA)であるプライマー(フォワードプライマー、配列番号1)が例示されている。なお、リバースプライマーを配列番号2に示す。 このフォワードプライマー(図1のオリゴヌクレオチドXに対応)は、3′末端ヌクレオチド残基の近傍に位置するヌクレオチド残基に蛍光物質の一例である6-FAMが結合されている。また、3′末端ヌクレオチド残基(この場合、塩基はチミン:T)の五炭糖3′位置に消光物質の一例であるBHQ(Black Hole Quencher)が結合されている(図2の(A)参照)。具体的には、25番目チミン残基に6-FAM、30番目のチミン残基にBHQが結合している。 したがって、このプライマーでは、蛍光物質(6-FAM)は消光物質(BHQ)によって消光されており、かつ、3′末端ヌクレオチド残基(この場合、塩基はチミン:T)の五炭糖3′位置には、水酸基(−OH基)が存在していないため、この状態では、DNAポリメラーゼによるDNA合成(即ち、プライマー伸長)は起こらない。 しかし、本プライマーでは、3′末端ヌクレオチド残基の塩基が鋳型DNAに対して相補的なアデニンではなく、ミスマッチ塩基(T)となるように工夫されている(図2の(B)参照)。このため、プルーフリーディング活性を有するDNAポリメラーゼを本プライマーと同反応場に存在させておくと、前記活性によってミスマッチ塩基を有する3′末端ヌクレオチド残基を除去する反応が起き、この反応によって、新たな3′末端ヌクレオチド残基の五炭糖3′位置には、水酸基(−OH基)が形成される(図2の(C)参照)。 このとき、3′末端ヌクレオチド残基とともに消光物質が除去されることになるので、蛍光物質(6−FAM)は励起光によって蛍光を発し得る状態に変化する。この蛍光を検出すると、以下のDNA合成(プライマー伸長)が開始されることを知ることができる。 DNAポリメラーゼは、プライマーの末端ヌクレオチド残基の五炭糖3′位置の水酸基(-OH基)へ鋳型DNAの塩基配列と相補的なデオキシリボヌクレオチドをリン酸ジエステル結合によって次々と付加し、これにより5′→3′方向へDNA合成が進む(5′→3′DNAポリメラーゼ活性)。即ち、プライマーの伸長反応が起こる(図2の(D)参照)。(実施例1) 本実施例1は、上記したオリゴヌクレオチドの機能を検証するとともに、該オリゴヌクレオチドをプローブとして用いて、PCR増幅産物を蛍光検出できた例に関する。 まず、PCR反応に用いるプライマーペアーの片方には修飾のない通常のオリゴDNAを用い、他方には図2に例示したような蛍光標識されたオリゴDNAを用いた。本PCR反応における酵素は、iProof High-Fidelity DNA polymerase(BioRad社)を用いた。また、PCR反応によって増幅する鋳型DNA(template DNA)には全長のβ-actin遺伝子を用いた。 適切な反応条件の下でPCR反応を行う過程で、PCRサイクル毎に溶液からの蛍光シグナルを計測し、X軸にはサイクル数、Y軸には蛍光シグナル強度(相対値)をプロットした(図3の左グラフ参照)。 その結果、鋳型DNAを加えないネガティブコントロールサンプルでは、1から35サイクルを通じて緩やかな蛍光シグナルの上昇が観察されたのに対して(図3のtemplate(-)グラフ参照)、鋳型DNAを加えたサンプルでは18サイクルから35サイクルにかけて、急激なシグナルの増強が観察された(図3のtemplate(+)グラフ参照)。これに対して、酵素を加えないネガティブコントロールサンプルでは、全サイクルにわたってシグナルの増強は観察されなかった(図3のno enzymeグラフ参照)。なお、本実験では、PCRのフォワードプライマーは配列番号1のオリゴヌクレオチドを使用し、リバースプライマーは配列番号2のオリゴヌクレオチドを使用した。 また、上記観察に用いたPCR溶液から一部を分取し、ポリアクリルアミドゲル電気泳動にてPCR産物を解析した(図4の図面代用写真参照)。電気泳動後のゲルは蛍光スキャナーにて観察することで、上記の実験結果との相関を考察した。 酵素を加えないネガティブコントロールサンプルでは、一本のバンドが観察された(図4中の1を参照)。これは、蛍光標識されたオリゴDNAのバックグラウンドシグナルと考えられ、図3中のno enzymeグラフの蛍光シグナルに相当すると考えられる。 鋳型DNA(template DNA)を加えないネガティブコントロールサンプルでは、符号1のバンドに加えてさらに低分子のバンドが観察された(図4の符号2参照)。これは酵素の非特異的なエキソヌクレアーゼ活性により、蛍光プローブの消光物質が付加されたヌクレオチド残基が除去され、蛍光を発するようになったオリゴDNAであると考えられる。このオリゴDNAが生じることによって増加する蛍光シグナルは、図3のtemplate(-)グラフに相当すると考えられる。 また、鋳型DNA(template DNA)を加えたサンプルでは、プライマーと鋳型DNA配列から予想される鎖長のDNAに相当するバンドが観察された(図4の符号3のバンド参照)。このバンドに相当するDNAから生じる蛍光シグナルが、図3のtemplate(+)グラフに相当すると考えられる。 これらの観察結果から、酵素による非特異的なシグナル増加はあるものの、PCR反応によって生じる産物を、蛍光標識されたオリゴDNAによって検出することが可能であることが明らかとなった。(実施例2) 本実施例2は、本発明に係るオリゴヌクレオチド(プライマー)を定量リアルタイムPCR解析に用いた例に関する。本実験では、フォワードプライマーに配列番号3のオリゴヌクレオチドを使用し、リバースプライマーとして配列番号4のオリゴヌクレオチドを用いた。 鋳型(template)として反応チューブに加えるβ-actin遺伝子を1×102コピーから1×107コピーまで10倍毎に量をふって、PCRサイクルの進行に伴う蛍光シグナル強度の変化をそれぞれ観察した。その結果を図5に示す。 また、適当なシグナル強度を閾値と設定し、各サンプルのシグナル強度が閾値に達するPCRサイクル数を、あらかじめ加えた鋳型(template)の量のlog値に対してプロットしたグラフを作成した。そのグラフを図6に示す。 その結果、あらかじめ加えた鋳型(template)の量と閾値に達するPCRサイクル数の間には極めて強い直線的相関(相関係数0.996)が得られた(図6参照)。この結果は、この蛍光標識されたオリゴDNAによって、既存の手法による定量リアルタイムPCR解析と少なくとも同等の定量性を有する解析が可能であることを示している。(実施例3) 本実施例3は、図1に示すような基本構造を備える、蛍光標識オリゴDNA(蛍光プローブ)を基板に固定し、PCR増幅産物の検出を行った応用例に関する。 表面に活性エステル基が生じるように表面処理を施すなどした基板やビーズなどに、5′末端にアミノ基を導入するなどした蛍光標識オリゴDNAを固定することができる。あるいは、アビジンで表面処理された基板やビーズなどに対して5′末端がビオチンでラベルされた蛍光標識オリゴDNAを、アビジン−ビオチン結合により固定することもできる。 このように固定された蛍光標識オリゴDNA(図1再参照)によって特定のPCR増幅産物を検出することが可能である。具体的には、図7に示した例のように、蛍光標識オリゴDNAを固定した基板をPCR反応液中に浸しておいて、液中では通常のPCR反応を進行させる。 この時、基板に固定する蛍光標識オリゴDNAには、PCR反応によって増幅産生される産物に含まれる塩基配列のものを使用することで、溶液中で生じるPCR産物の一部が基板に固定されている蛍光標識オリゴDNAとハイブリダイゼーションし、それに引き続いてプライマー伸長反応が起こる(図7参照)。 よって、このPCR増幅産物の生成は、蛍光標識オリゴDNAのシグナル増加として検出できる。このことを実証するために、実際にある遺伝子をPCR反応によって増幅して、増幅される遺伝子の一部を、基板に固定した蛍光標識オリゴDNAによって検出する実験を行った。 時計遺伝子のひとつであるヒトBmal1遺伝子のほぼ全長を含むDNAを鋳型に、このBmal1遺伝子の一部の配列を増幅するためのプライマーセット、その他必要な基質や緩衝液によって構成されるPCR溶液を調製し、PCR酵素としてiProof High-Fidelity DNA polymeraseを加えたものと、加えないものをそれぞれ200μL容量のPCRチューブ二本に分注した。 それぞれのPCRチューブには、増幅されるBmal1遺伝子断片の内部の配列で設計された蛍光プローブ(図中Positive Probeと表記、配列番号5)、あるいはBmal1遺伝子断片には含まれない配列で設計された蛍光プローブ(図中Negative Probeと表記、配列番号6)を固定した基板を入れ、PCR溶液にて浸した状態でPCR反応を行った(図8の概念図参照)。 なお、配列番号5の蛍光プローブの4番目チミン残基には蛍光物質FITC、3′末端のチミン残基にBHQ-1が結合されており、配列番号6の蛍光プローブの5番目チミン残基には蛍光物質FITC、3′末端のチミン残基にBHQ-1が結合され、さらに、5′末端には計6個の炭素鎖を介してアミノ基を導入した。 PCR反応後、蛍光プローブからの蛍光シグナルを観察するために、基板をPCRチューブから取り出して洗浄し、乾燥させた後に蛍光スキャナーにて基板表面の蛍光プローブが固定された部分からの蛍光シグナルを測定した(図8の概念図参照)。 その結果、酵素を加えた反応液と加えない反応液を比較した場合、Negative Probeのシグナル増加に比べ、Positive Probeのシグナル増加が大きかった(図9参照)。図9では同様の実験を3回行い、その平均値と標準偏差を示した。この結果は、Bmal1遺伝子配列の一部がPCR反応によって増幅され、そのPCR増幅産物によって基板に固定された蛍光プローブの蛍光シグナルが増加し、さらにそのシグナル増加がPCR増幅産物に特異的であることを示している。(実施例4) 本実施例4は、複数遺伝子の同時定量解析に関する。 上記実施例をさらに発展させれば、基板に固定された蛍光プローブ(図1参照)によって複数遺伝子の同時定量解析が可能である。つまり、細胞や組織などに由来する全RNA、あるいはcDNAを出発材料として、定量したい複数種類の遺伝子断片を増幅することのできるプライマーを設計する。 RNAを出発材料とした場合は、逆転写反応に続いて、複数種のPCR増幅産物を同時に増幅するマルチプレックスPCRを行う(図10の概念図参照)。この時、マルチプレックスPCRの各産物の増幅効率をそろえるために、各プライマーに共通配列を付加し、後にその配列を認識するユニバーサルプライマーにてマルチプレックスPCRを行うなどしてもよい。 一方基板には、マルチプレックスPCR増幅産物を検出できる配列にて設計された蛍光プローブ(図1の構造)をアレイ状に配し、これをPCR溶液にて満たした状態で反応を行う。この時、光を透過する素材で作られた蓋、あるいは基板を使用することで、反応中に随時外部から蛍光プローブの蛍光シグナルを検出することが可能である。 よって、PCRの各サイクルで蛍光プローブからのシグナルを検出することで、PCR増幅産物の増加をリアルタイムでモニターすることが可能である。通常の定量リアルタイムPCR解析と同様に、シグナルが検出閾値に達するまでのサイクル数を調べることで、サンプル中に含まれていた解析対象遺伝子の相対量(基準となる遺伝子の何倍に相当するか)を決定することができる。 また、相対定量の基準となる遺伝子に存在量が既知のものを設定することで、解析対象遺伝子の絶対量を知ることもできる。また、SMART PCR法(Clontech社)など、発現しているすべての遺伝子由来のcDNAを増幅する手法を取り入れることで、原理的にはすべての遺伝子の網羅的な定量解析も可能である。(実施例5) 本実施例5は、SNP(一塩基多型)などのジェノタイプの決定を迅速に行う技術の応用例に関する。 具体的には、図1の構造を有する蛍光プローブの3′末端のミスマッチ塩基を、調べたいSNPの各アレルと相補的な塩基をあてがうように設計したものを基板に固定しておき、SNPを含むゲノム領域を任意のPCRプライマーにて増幅した産物の検出に用いる。 増幅されたゲノム断片のSNPが、基板に固定された蛍光プローブの3′末端に相補的なアレルであった場合には蛍光シグナルは増加せず、反対に他のアレルであった場合にはシグナルが増加する。この検出では、複数のSNAPについて同時に行うことで、微量のゲノムサンプルから複数のSNPアレルのタイピングができる。 本発明は、例えば、PCR伸長反応技術、ハイブリダイゼーション検出技術(DNAチップ技術を含む)、PCR増幅産物の検出や定量に関する技術、遺伝子発現解析技術(SNP解析技術を含む)などに利用できる。本発明に係るオリゴヌクレオチドXの基本構造とその基本的な機能を説明するための図である。本発明に係るオリゴヌクレオチドXの一実施形態例を示す図である。実施例1に関し、PCR反応におけるPCRサイクル毎に溶液からの蛍光シグナルを計測し、X軸にはサイクル数、Y軸には蛍光シグナル強度(相対値)をプロットした図(グラフ)である。実施例1に関し、PCR溶液から一部を分取し、ポリアクリルアミドゲル電気泳動にてPCR産物を解析した図(図面代用写真参照)である。実施例2に関し、鋳型(template)として反応チューブに加えるβ-actin遺伝子を1×102コピーから1×107コピーまで10倍毎に量をふって、PCRサイクルの進行に伴う蛍光シグナル強度の変化をそれぞれ観察した結果を示す図(グラフ)である。実施例2に関し、適当なシグナル強度を閾値と設定し、各サンプルのシグナル強度が閾値に達するPCRサイクル数を、あらかじめ加えた鋳型(template)の量のlog値に対してプロットしたグラフである。実施例3に関し、蛍光標識オリゴDNAを固定した基板をPCR反応液中に浸しておいてPCR反応を進行させる概念を示す図である。実施例3に関するPCR反応系の概念を示す模式図である。実施例3に関し、酵素を加えた反応液と加えない反応液を比較した場合で、Negative Probeのシグナル増加に比べ、Positive Probeのシグナル増加が大きかったことを示す図(グラフ)である。実施例4に関するマルチプレックスPCRの概念を示す模式図である。符号の説明 E 酵素(DNAポリメラーゼ) F 蛍光物質 X 本発明特有の蛍光標識構造を備えるプライマー(オリゴヌクレオチド) N1 3′末端ヌクレオチド残基 Q 消光物質 3′末端ヌクレオチド残基の五炭糖3′位置に結合された消光物質と、該消光物質の消光機能が及ぶ射程範囲内に存在するヌクレオチド残基に結合された蛍光物質と、を備え、前記3′末端ヌクレオチド残基の塩基が鋳型DNAに対してミスマッチ塩基とされているオリゴヌクレオチド。 請求項1記載のオリゴヌクレオチドをプライマーとして利用する方法であって、 前記ミスマッチ塩基を有する3′末端ヌクレオチド残基をDNAポリメラーゼのプルーフリーディング活性によって除去した後、該オリゴヌクレオチド(プライマー)の伸長を進行させ、所定波長の励起光の照射によって得られる前記蛍光物質からの蛍光を検出することにより、プライマー伸長の開始の情報を得ることを特徴とするプライマー伸長反応。 請求項1記載のオリゴヌクレオチドを利用する方法であって、 プルーフリーディング活性を有するDNAポリメラーゼを存在させた反応場に前記プライマーを存在させておき、該オリゴヌクレオチドと相補的な塩基配列を有する核酸鎖とのハイブリダイゼーションを、前記オリゴヌクレオチドを伸長開始に伴って発生する蛍光により検出することを特徴とするハイブリダイゼーション検出方法。 請求項1記載のオリゴヌクレオチドを利用する方法であって、プルーフリーディング活性を有するDNAポリメラーゼを存在させた反応場に前記オリゴヌクレオチドを存在させておき、該オリゴヌクレオチドと相補的な塩基配列を有するPCR増幅産物である核酸鎖とのハイブリダイゼーションを、前記オリゴヌクレオチドの伸長開始に伴って発生する蛍光により検出することで、前記PCR増幅産物の検出を行うことを特徴とするPCR増幅産物の検出方法。 【課題】プライマー伸長の開始をリアルタイムで蛍光検出する技術などを提供すること。【解決手段】3′末端ヌクレオチド残基N1の五炭糖3′位置に結合された消光物質Qと、該消光物質Qの消光機能が及ぶ射程範囲内に存在するヌクレオチド残基N2に結合された蛍光物質Fと、を備えており、そして、前記3′末端ヌクレオチド残基N1の塩基が鋳型DNAに対してミスマッチ塩基とされているオリゴヌクレオチドを提供する。加えて、該オリゴヌクレオチドの伸長開始情報を利用するハイブリダイゼーション検出方法などを提供する。【選択図】 図1配列表