タイトル: | 再公表特許(A1)_シチジン5’−モノリン酸の製造法 |
出願番号: | 2007003807 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | C12N 15/09,C12N 9/12,C12N 1/21,C12R 1/15 |
田中 久也 丸山 明彦 米谷 良之 片平 律子 垣田 信吾 三橋 敏 齋藤 純一 小田 秀樹 JP WO2008038149 20080403 IB2007003807 20070927 シチジン5’−モノリン酸の製造法 協和発酵バイオ株式会社 308032666 平木 祐輔 100091096 石井 貞次 100096183 藤田 節 100118773 島村 直己 100101904 田中 久也 丸山 明彦 米谷 良之 片平 律子 垣田 信吾 三橋 敏 齋藤 純一 小田 秀樹 JP 2006262666 20060927 C12N 15/09 20060101AFI20091225BHJP C12N 9/12 20060101ALI20091225BHJP C12N 1/21 20060101ALI20091225BHJP C12R 1/15 20060101ALN20091225BHJP JPC12N15/00 AC12N9/12C12N1/21C12N1/21C12R1:15 AP(BW,GH,GM,KE,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MT,NL,PL,PT,RO,SE,SI,SK,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PG,PH,PL,PT,RO,RS,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,SV,SY,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,ZA,ZM,ZW 再公表特許(A1) 20100128 2008536202 235 4B024 4B050 4B065 4B024AA03 4B024BA10 4B024CA04 4B024DA06 4B024DA10 4B024EA04 4B024GA11 4B050CC01 4B050CC03 4B050DD02 4B050LL05 4B065AA22X 4B065AA24X 4B065AA26X 4B065AA26Y 4B065AB01 4B065AC14 4B065BA02 4B065CA29 4B065CA41 4B065CA44 本発明は、シトシンからシチジン5’−モノリン酸(CMP)を生成する活性を有する新規蛋白質の製造方法、該蛋白質、該蛋白質をコードするDNA、該DNAを含有する組換え体DNA、該組換え体DNAを保有する微生物、および該微生物の培養物などを用いたCMPの製造法に関する。 CMPは他のヌクレオチドであるアデノシン5’−モノリン酸(AMP)、グアノシン5’−モノリン酸(GMP)、ウリジン5’−モノリン酸(UMP)とともに乳児用ミルクの添加物として用いられている。従来、CMPは酵母RNAの酵素的分解法により製造されてきた(非特許文献1)。しかしながら、このRNA分解法では4種のヌクレオチドが同時に作られるため、生産量と需要量との差により生産物に余剰がでる欠点がある。このことから、安価な個別のヌクレオチドの製造法の開発が望まれている。 上記した4種のヌクレオチドのうち、GMPについてはRNA分解法に代替しうる工業的な個別製法が確立されている(特許文献1)。一方、CMP,AMP,UMPについては安価な個別製法はまだ確立されていない。これらヌクレオチドの個別製法としては、サルベージ合成経路を利用して、化学合成法で製造した対応する塩基を基質として用いる方法があり、この経路を利用した具体例として、アデニンを基質としたアデノシン5’−トリリン酸(ATP)の工業的製法があげられる(特許文献2)。 サルベージ合成経路に関与する酵素としては、ウラシルとホスホリボシルピロリン酸(PRPP)からUMPとピロリン酸を生成する反応を触媒するウラシルホスホリボシルトランスフェラーゼ(UPRTase)などの、塩基から対応するヌクレオチドを一段階で生産する酵素が知られている。しかしながら、CMPを生成するサルベージ合成経路の酵素は、すべての生物種にわたって知られていない。J.Gen.Appl.Microbiol.,3,55(1957)特開昭62−285797号公報特開平2‐134394号公報 本発明の目的は、シトシンからCMPを生成する活性を有する新規蛋白質の製造方法、該蛋白質、該蛋白質をコードするDNA、該DNAを含有する組換え体DNA、該組換え体DNAを保有する微生物、および該微生物の培養物などを用いたCMPの製造法を提供することにある。 本発明は以下の(1)〜(14)に関する。(1)シトシンからシチジン5’−モノリン酸(CMP)を生成する活性を有する、配列番号1、2、または30で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質。(2)配列番号1、2、または30で表されるアミノ酸配列において、36番目、94番目、102番目、141番目、143番目および198番目のアミノ酸残基から選ばれる1以上のアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換したアミノ酸配列を有し、かつシトシンからCMPを生成する活性を有する蛋白質。(3)36番目のアミノ酸残基がシステイン、94番目のアミノ酸残基がチロシン、102番目のアミノ酸残基がシステイン、141番目のアミノ酸残基がロイシン、143番目のアミノ酸残基がバリン、または198番目のアミノ酸残基がグリシンに置換したアミノ酸配列を有する上記(2)の蛋白質。 (4)配列番号1、2、または30で表されるアミノ酸配列において、36番目、46番目、94番目、102番目、121番目、141番目、143番目、167番目および198番目のアミノ酸残基から選ばれる1以上のアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換したアミノ酸配列を有し、かつシトシンからCMPを生成する活性を有する蛋白質。(5)上記(1)〜(4)のいずれかの蛋白質のアミノ酸配列において、36番目、94番目、102番目、141番目、143番目、198番目、201番目、204番目および205番目以外のアミノ酸残基から選ばれる1以上のアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換したアミノ酸配列を有し、かつシトシンからCMPを生成する活性を有する蛋白質。 (6)上記(1)〜(4)のいずれかの蛋白質のアミノ酸配列において、36番目、46番目、94番目、102番目、121番目、141番目、143番目、167番目、198番目、201番目、204番目および205番目以外のアミノ酸残基から選ばれる1以上のアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換したアミノ酸配列を有し、かつシトシンからCMPを生成する活性を有する蛋白質。(7)以下の[1]または[2]に記載のDNA。[1]上記(1)〜(4)のいずれかの蛋白質をコードするDNA[2]配列番号3〜5のいずれかで表される塩基配列を有するDNA(8)上記(7)のDNAを含む組換え体DNA。 (9)上記(8)の組換え体DNAを保有する微生物。(10)微生物がエッシェリヒア属、コリネバクテリウム属またはブレビバクテリウム属に属する微生物である、上記(9)の微生物。(11)上記(9)または(10)の微生物の培養物または該培養物の処理物、シトシン、リン酸基供与体およびエネルギー供与体を水性媒体中に存在せしめ、該媒体中にCMPを生成、蓄積させ、該媒体からCMPを採取することを特徴とするCMPの製造法。 (12)上記(9)または(10)の微生物の培養物または該培養物の処理物、コリネバクテリウム属に属する微生物の培養物または該培養物の処理物、シトシン、リン酸基供与体およびエネルギー供与体を水性媒体中に存在せしめ、該媒体中にCMPを生成、蓄積させ、該媒体からCMPを採取することを特徴とするCMPの製造法。(13)コリネバクテリウム属に属する微生物がコリネバクテリウム・アンモニアゲネスである、上記(12)の製造法。(14)上記(9)または(10)の微生物の培養物または該培養物の処理物、シトシン、リン酸供与体およびエネルギー供与体を水性媒体中に存在せしめ、該媒体中に生成するCMPを用いることを特徴とする、有用物質の製造法。 本発明は、また、以下の(15)〜(24)に関する。(15)シトシンからシチジン5’−モノリン酸(CMP)を生成する活性を有する蛋白質の製造方法であって、下記工程を含む方法:[1]ウラシルからウリジン5’−モノリン酸(UMP)を生成する活性を有する蛋白質(UPRTase)の三次元構造情報の一部又は全体を用いてコンピュータ上でUPRTaseにおけるUMP結合部位にCMPを適合させて作成されるUPRTaseとCMPとの複合体モデルを安定化させる、UPRTaseのアミノ酸配列におけるアミノ酸の欠失、置換及び/又は付加を1個以上選択する工程;[2]工程[1]で選択された欠失、置換及び/又は付加を含むUPRTaseの変異蛋白質を製造する工程。 (16)シトシンからシチジン5’−モノリン酸(CMP)を生成する活性を有する蛋白質の製造方法であって、下記工程を含む方法:[11]ウラシルからウリジン5’−モノリン酸(UMP)を生成する活性を有する蛋白質(UPRTase)の三次元構造情報の一部又は全体を用いてコンピュータ上でUPRTaseにおけるUMP結合部位にCMPを適合させて作成されるUPRTaseとCMPとの複合体モデルを安定化させる、UPRTaseのアミノ酸配列におけるアミノ酸の欠失、置換及び/又は付加を1個以上選択する工程;[12]前記複合体モデルの一部又は全体を用いてコンピュータ上で作成される該複合体の多量体モデルを安定化させる、UPRTaseのアミノ酸配列におけるアミノ酸の欠失、置換及び/又は付加を1個以上選択する工程;[13]工程[11]および[12]で選択された欠失、置換及び/又は付加を含むUPRTaseの変異蛋白質を製造する工程。(17)(15)又は(16)に記載の方法により得られる蛋白質。 (18)配列番号15に記載のアミノ酸配列において、1乃至数個のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加されているアミノ酸配列を有し、シトシンからCMPを生成する活性を有し、かつ下記アミノ酸置換を1個以上含む蛋白質:表1に記載の三次元座標原子座標であらわされる配列番号15に記載のアミノ酸配列からなりかつウラシルからUMPを生成する活性を有する蛋白質(UPRTase)の三次元構造情報の一部又は全体を用いてコンピュータ上で作成されるUPRTaseとUMPとの複合体モデルにおいて、UMPのピリミジン環4位のオキソ基の酸素原子から10Åの範囲に構成原子が存在するアミノ酸の置換であって、前記複合体モデルのUMPのオキソ基をアミノ基に変換することによりコンピュータ上で作成されるUPRTaseとCMPとの複合体モデルを安定化させるアミノ酸への置換。(19)前記のアミノ酸置換が配列番号15に記載のアミノ酸配列の205位のグリシンの置換である(18)に記載の蛋白質。 (20)前記のアミノ酸置換が配列番号15に記載のアミノ酸配列の205位のグリシンのアスパラギン酸又はグルタミン酸への置換である(18)に記載の蛋白質。(21)前記のアミノ酸置換が配列番号15に記載のアミノ酸配列の201位のチロシン及び204位のプロリンの置換である(18)に記載の蛋白質。(22)前記のアミノ酸置換が配列番号15に記載のアミノ酸配列の201位のチロシンのリジンへの置換及び204位のプロリンのロイシンへの置換である(18)に記載の蛋白質。(23)前記のUPRTaseとUMPとの複合体モデルにおいてUMPを構成するいずれかの原子から10Åの範囲に構成原子が存在するアミノ酸の置換(ただしUMPのピリミジン環4位のオキソ基の酸素原子から10Åの範囲に構成原子が存在するアミノ酸の置換を除く)であって、前記のUPRTaseとCMPとの複合体モデルを安定化させるアミノ酸への置換を1個以上含む(18)〜(22)のいずれか一項に記載の蛋白質。 (24)表1に記載の三次元座標原子座標であらわされる配列番号15に記載のアミノ酸配列からなりかつウラシルからUMPを生成する活性を有する蛋白質(UPRTase)の三次元構造情報の一部又は全体を用いてコンピュータ上で作成されるUPRTaseとホスホリボシルピロリン酸(PRPP)との複合体モデルにおいてPRPPを構成するいずれかの原子から10Åの範囲に構成原子が存在するアミノ酸の置換であって、該複合体モデルを安定化させるアミノ酸への置換を1個以上含む(18)〜(22)のいずれか一項に記載の蛋白質。(25)前記のUPRTaseとCMPとの複合体モデルの一部又は全体を用いてコンピュータ上で作成される複合体の多量体モデルにおいて、隣接するUPRTase単量体のいずれかの原子から5Å以内に構成原子が存在するアミノ酸 及び隣接するUPRTase単量体の66位Trpのいずれかの構成原子から5Å以内に構成原子が存在するアミノ酸からなる群から選択されるアミノ酸の置換であって、該多量体モデルを安定化させるアミノ酸への置換を1個以上含む(18)〜(24)のいずれか一項に記載の蛋白質。 本発明はさらに、上記いずれかのCPRTaseの製造方法により得られる蛋白質;該蛋白質をコードするDNA;該DNAを含む組換え体DNA;該組換え体DNAを保有する微生物;該微生物を用いたCMPおよびCMPを基質としてまたはCMPを経由して生産される有用物質の製造法に関する。 各種UPRTaseのアミノ酸配列のアラインメント結果を示す図である。G205D、M141L、A143Vのアミノ酸置換を有する変異型Escherichia coli UPRTaseとCMPとの複合体モデルを示す図である。Escherichia coli UPRTaseとCMPとの複合体の四量体のモデルを示す図である。 本発明のシトシンからシチジン5’−モノリン酸(CMP)を生成する活性を有する蛋白質(CPRTase)は、ウラシルからウリジン5’−モノリン酸(UMP)を生成する活性を有する蛋白質(UPRTase)の変異蛋白質として得ることができる。UPRTaseの変異蛋白質とはUPRTaseのアミノ酸配列において1乃至数個のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加されているアミノ酸配列を有する蛋白質を有する。なお、数個とは、30個であればよく、20個であることが好ましく、5個であることがより好ましい。 本明細書において、シトシンからシチジン5’−モノリン酸(CMP)を生成する活性(CPRTase活性)とは、シトシンとPRPPとからCMPとピロリン酸を合成する活性を意味する。本明細書において、CPRTaseはウラシルとPRPPからUMPを合成する活性(UPRTase活性)を同時に有していてもよいが、後述の実施例で行う方法などにより確認できる方法で比較した場合に、CPRTase活性がUPRTase活性よりも高いことが好ましく、CPRTase活性がUPRTase活性よりも10倍高いことがより好ましく、UPRTase活性を実質的に有しないことがさらに好ましい。 CPRTaseの製造のための、UPRTaseに加えるアミノ酸変異の選択は、ランダムに変異蛋白質を作成し、後述の方法によりそれらの変異蛋白質の活性を確認してスクリーニングを行うことが可能である。アミノ酸変異又は変異とは、UPRTaseのアミノ酸配列に加える、アミノ酸の欠失、置換及び/又は付加を意味する。 スクリーニング方法は、特に限定されないが、例としては、任意の変異を有する蛋白質をコードするDNAを含む組換え体DNAを用いて、PyrG(CTPシンセターゼ)、codA(シトシンデアミナーゼ)、cdd(シチジンデアミナーゼ)の3つの酵素活性を喪失しているエッシェリヒア・コリを形質転換し、得られた形質転換体が、シトシン含有最少培地中で生育するか否かを指標に行う方法をあげることができる。また、任意の変異を有する蛋白質を製造し、生成するCMP量を定量し、CPRTase活性を確認することによって行ってもよい。 また、CPRTaseの製造のためにUPRTaseに加えるアミノ酸変異の選択の別の方法としては、UPRTaseの三次元構造情報に基づいて作成されるコンピューター上のモデルを利用した方法を挙げることができる。 UPRTaseの三次元構造情報としては、当業者が入手可能ないずれの情報を用いてもよく、結晶構造解析により得られた構造又はPDB(Protein Data Bank)等のデータベースから取得できる構造情報を用いてもよいし、該構造を鋳型としてInsight 97等の蛋白質ホモロジーモデル作成プログラムを用いて作成される構造情報を用いてもよい。また、三次元構造情報はUPRTase単量体の情報であってもよく、二量体または四量体などの多量体の情報であってもよい。さらに、三次元構造情報はUPRTase単量体又は多量体の一部に関するものであってもよいが、後述のUMP結合部位の情報を含んでいることが好ましい。また、多量体モデルの作成に上記三次元情報が用いられる際には単量体同士の境界部分の情報を含むことが好ましい。 UPRTaseに加えるアミノ酸変異の選択のために、例えば、上記のUPRTaseの三次元構造情報を用いてUPRTaseとCMPとの複合体モデルを作成することができる。このモデルの作成には、三次元構造情報の全体を用いてもよく、一部を用いてもよい。一部を用いる場合は少なくとも後述のUMP結合部位を含む部位を選択することが好ましい。また、UPRTaseとCMPとの複合体の安定化に関与すると考えられる部位を予め選択し、該部位を含む複合体モデルを作成してもよい。 三次元構造情報を用い、かつ変異の基となるUPRTaseとしては、ウラシルからウリジン5’−モノリン酸(UMP)を生成する活性を有する蛋白質であればよく、由来する生物については特に限定されない。由来する微生物の例としては、Acholeplasma laidlawii(J Bacteriol.(1983)156:192−7.)、Crithidialuciliae(Comp Biochem Physiol B.(1990)95:159−63.)、Escherichia coli(Biochim Biophys Acta.(1986)881:268−75.、Genbank Accession No.X57104)、Bacillus caldolyticus(J Bacteriol.(1994)176:3698−707.、Genbank Accession No.X99545)、Toxoplasma gondii(Proc Natl Acad Sci U S A.(1995)92:5749−53.、Genbank Accession No.U10246)、Sulfolobus shibatae(Biochim Biophys Acta.(1996)1296:16−22.)を挙げることができる。 UPRTaseにおけるUMP結合部位については、Toxoplasma gondii由来のUPRTaseについて既に報告されている(EMBO J.(1998)17:3219−3232)。この、Toxoplasma gondii由来のUPRTaseにおいては、236番目のフェニルアラニンのアミド水素原子においてピリミジン環2位のカルボニル基酸素原子と、234番目のグリシンのカルボニル基の酸素原子においてピリミジン環3位の水素原子と、また229番目のイソロイシンのアミド水素原子においてピリミジン環4位のカルボニル基酸素原子と水素結合を形成することにより、UMPのピリミジン環との結合を安定化させている。 上記文献に記載のUMP結合部位に関する情報をもとに他の種のUPRTaseについても、UMP結合部位を決定することができる。具体的には、Toxoplasma gondii由来のUPRTaseのアミノ酸配列と、三次元構造情報を用いるUPRTaseのアミノ酸配列のアラインメントを行って(ClustalW[Nucelic Acids Research 22,4673,(1994)](European Bioinformatics Instituteのウェブサイトhttp://www.ebi.ac.uk/clustalwより利用することができる)、遺伝子解析ソフトウェアGenetyx(ソフトウェア開発株式会社)に含まれるアライメント解析ソフト)三次元構造情報におけるUMP結合部位を決定することができる。アライメントを行う際の解析ソフトのパラメーターとしては、デフォルト値を用いることができる。Toxoplasma gondii、Escherichia coli由来のUPRTaseを含む各種UPRTaseのアミノ酸配列のアラインメントを行った例を図1に示す。この結果からEscherichia coli由来のUPRTaseにおいては、202位のイソロイシン、207位のグリシン、209位のアラニン等が、UMPのピリミジン環の結合に関与すると考えられる。 UPRTaseとCMPとの複合体モデルの作成のために、上記のUMP結合部位に、コンピュータ上でCMPを適合させることができる。 UMP結合部位にCMPを適合させる方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。Escherichia coli由来のUPRTaseにUMPをドッキングさせ、Toxoplasma gondii由来のUPRTaseに関してすでに報告されている、UMPのピリミジン環とUPRTaseの水素結合が保たれている配座をとっている構造を選択後、複合体に対しエネルギー極小化させて作成したUMP複合体モデルを用いる。上記複合体モデルにおけるUMPのピリミジン環4位カルボニル基の酸素をアミノ基に置換して、ピリミジン環3位の水素を削除することによって、CMPとして、UMPをCMPに変換する。さらに、該モデルについて再びエネルギー極小化計算を行う。 このようにUMP結合部位にCMPを適合させてUPRTaseとCMPとの複合体モデルを作成することができる。 上述のように作成したUPRTaseとCMPとの複合体モデルを利用した、CPRTase製造のためのUPRTaseのアミノ酸変異の選択は、該モデルを安定化させるUPRTaseのアミノ酸変異の選択をすることにより行えばよい。 本明細書において、「モデルを安定化させる」とは、例えばΔΔGを下げることを意味する。ここで、ΔG(フリーエネルギー変化)は、UPRTaseとUMPの複合体のエネルギーから、蛋白質単体のエネルギーとUMP単体のエネルギーを差し引いたものを意味し、ΔΔGは、ここではUPRTaseとCMPの複合体構造から算出されるΔGから、変異型UPRTaseとCMPの複合体構造から算出されるΔGを引いたものを意味する。例えば、モデルを安定化させるアミノ酸置換等の変異の選択は、コンピュータ上で、変異前と変異後のモデルのΔGの差異を算出し、アミノ酸変異後エネルギーレベルが、5kJ/mol、好ましくは20kJ/mol、さらに好ましくは50kJ/mol以上の低下する変異を選択することにより行うことができる。このような計算はドッキングプログラムGlide などで行うことができる。 また、モデルを安定化させるアミノ酸置換等の変異の選択は、モデルの構成要素間(UPRTaseとCMPとの複合体モデルにおけるUPRTaseとCMPとの間、又は多量体モデルにおける単量体間など)の親和性を指標に行うことができる。すなわち、構成要素間の親和性を上昇させる変異を選択すればよい。 親和性を上昇させる変異の選択は、例えばモデルの目視による観察で行うことができる。モデルにおける構成要素間(UPRTaseとCMP、単量体間など)の疎水相互作用、・静電相互作用・水素結合・π/π相互作用(芳香環の環電流が発生する磁場同士の相互作用)・CH/π相互作用(芳香環の環電流とメチル基の電子が発生する磁場の相互作用)が、増加、又は増強する変異を選択すればよい。 UPRTaseとCMPとの複合体モデルにおいて、具体的には、モデルの安定化のためにまず、UMPとCMPの構造上の差異に着目して変異を選択することができる。UMPとCMPはピリミジン環4位につき、UMPはオキソ基、CMPはアミノ基である点が異なっている。従って例えば、CMPのピリミジン環4位アミノ基の近傍(アミノ基の窒素原子の中心から10Å程度好ましくは8Å程度、より好ましくは5Å程度)に構成原子の中心が存在するUPRTaseのアミノ酸残基をCMPのアミノ基と親和的に相互作用するアミノ酸残基に変更することによりUPRTaseとCMPとの間の親和性を上昇させうる。なお、本明細書において、原子間の距離を示す場合は原子の中心同士の距離を示す。原子間の距離はInsight97によりグラフィックス上に表示させたモデルにおいて、測定したい2つの原子同士をクリックし選択することにより測定することができる。また、UMPとCMPはピリミジン環3位の窒素原子が水素原子を有するか否かにおいて異なっている。従って、例えば、CMPのピリミジン環3位の窒素原子の近傍(該窒素原子の中心から10Å程度好ましくは8Å程度、より好ましくは5Å程度)に構成原子の中心が存在するUPRTaseのアミノ酸残基をCMPのアミノ基と親和的に相互作用するアミノ酸残基に変更することによりUPRTaseとCMPとの間の親和性を上昇させうる。さらに、上記のピリミジン環4位及び3位の近傍のUPRTaseのアミノ酸残基を総合的に判断して変異を選択することも好ましい。これは、UMPとCMPではピリミジン環2位、3位の水素結合のドナー、アクセプターの関係が逆になると考えることができるためなどによる。 このようなUMPとCMPの構造上の差異に着目して選択される変異はUPRTaseとCMPとの複合体モデルの安定化に最も寄与しやすく、UPRTaseの活性変化の要になる変異であると考えられる。 例えば、Escherichia coli UPRTaseでは205位Glyを例えばAsp又はGlu、にすることによって、このAsp又はGlu残基と、シトシンのアミノ基との間に静電的相互作用が生じ、複合体モデルを安定化しうる。また、201位TyrをLysとすることによって、結合部位の形状が、ピリミジン環が結合しうるのに適した、平らな形状となり、複合体モデルを安定化しうる。なお、本明細書において、例えば205位GlyをAspに置換することはG205Dとするように、変異位置を示す数値の前に変異前のアミノ酸、後に変異後のアミノ酸を1文字略号を用いて示すことがある。 UPRTaseとCMPとの複合体モデルを安定化させる変異の選択のために、UPRTaseとUMPとの複合体モデルを用いることもできる。UMPとCMPの結合位置はほぼ同じであると考えられるため、上記の三次元構造情報から直接的に作成されるUMPとUPRTaseとの複合体モデルを用いることで、実質的にCMPとUPRTase相互作用に関与するアミノ酸を選択することができるからである。このモデルにおいて、例えば、UMPのピリミジン環4位オキソ基の近傍のアミノ酸残基(オキソ基の酸素原子の中心から10Å程度好ましくは8Å程度、より好ましくは5Å程度に構成原子の中心が存在するアミノ酸残基)を選択することができる。変異後のアミノ酸は、ピリミジン環4位オキソ基がアミノ基におきかわることを想定して選択すればよい。また、UMPのピリミジン環3位窒素原子の近傍のアミノ酸残基(該窒素原子の中心から10Å程度好ましくは8Å程度、より好ましくは5Å程度に構成原子の中心が存在するアミノ酸残基)を選択することができる。変異後のアミノ酸は、ピリミジン環3位窒素原子に結合する水素原子が無くなることを想定して選択すればよい。 また、UPRTaseとCMPとの複合体モデルを安定化させる変異の選択のために、UPRTaseとシトシン又はウラシルとの複合体モデルを用いることもできる。上述のEMBO J.(1998)17:3219−3232においてはUPRTaseにおけるウラシルの結合について報告されている。上記のUPRTaseとCMPとの複合体モデル又はUPRTaseとUMPとの複合体モデルと同様にUPRTaseとシトシン又はウラシルとの複合体モデルを作成し、前述の方法でこれらの複合体モデルを安定化させる変異を選択すればよい。 CPRTaseの製造のためには、上記のように選択された変異を有する変異UPRTaseとCMPとの複合体モデルを上記と同様に作成し、該モデルを安定化させる追加のアミノ酸変異を選択してもよい。または、上記いずれかの複合体モデルを用いて選択された変異を有する変異UPRTaseのアミノ酸配列をもとにして、ランダムスクリーニングを行い、さらに活性の高いCPRTaseを得ることもできる。 例えば、上記のスクリーニング方法に準じて、上記で選択された変異を有する変異UPRTaseをコードするDNAを鋳型としてエラープローンPCR法などによりランダムな変異を有するDNAを作成し、これらのDNAを含む組換え体DNAを用いて作成した形質転換体を利用してスクリーニングを行うことができる。 上記のUPRTaseとCMPとの複合体モデルやUPRTaseとUMPとの複合体モデルを用いて、UMPとCMPの構造上の差異に着目して選択される変異以外にも、その他のモデルを安定化させる変異を選択することができる。その他の変異は、上記のUMPとCMPの構造上の差異に着目して選択される変異と並存させることが好ましい。その他の選択としては例えばUPRTaseとCMPとの複合体モデルにおいて、CMPを構成するいずれかの原子の中心から10Å程度好ましくは8Å程度、より好ましくは5Å程度の範囲に構成原子の中心が存在するUPRTaseのアミノ酸残基をCMPのアミノ基と親和的に相互作用するアミノ酸残基に変更することが挙げられる。同様に、UPRTaseとUMPとの複合体モデルにおいて、UMPを構成するいずれかの原子の中心から10Å程度好ましくは8Å程度、より好ましくは5Å程度の範囲に構成原子の中心が存在するUPRTaseのアミノ酸残基を変異させるアミノ酸残基として選択することができる。 また、その他の変異の選択のために、CPRTaseのもう一つの基質であるPRPPとUPRTaseとの複合体モデルを作成し、該モデルを安定化させる変異を選択することも可能である。このように選択される変異は上記のUMPとCMPの構造上の差異に着目して選択される変異と並存させることが好ましい。 UPRTaseは通常はダイマーを形成するが、GTPが結合し四量体を形成することによって、PRPPと相互作用するアミノ酸が増加し、UPRTase活性が高まることが知られている(Proc.Natl.Acad.Sci.USA(2002)99:78−83.)。CPRTaseについても同様の傾向が予測できるため、多量体を安定化する変異によっても、CPRTase活性があがると予測できる。したがって、CPRTaseの製造のためにUPRTaseに加えるアミノ酸変異は、UPRTaseの、または、前述のいずれかの複合体の多量体モデルを安定化する変異を選択して行うこともできる。 多量体モデルを安定化させる変異としては、それぞれの単量体同士の境界部分のアミノ酸をコンピューターグラフィクス上で調べ、それらの間にエネルギー的に不安定な要素(例えば静電的反発、立体的反発など)がある場合には不安定な要素を除くまたは相互作用を強めるような変異を行うことができる。例えば隣接するUPRTaseの単量体のいずれかの原子から10Å程度好ましくは8Å程度、より好ましくは5Å程度の範囲に構成原子の中心が存在するアミノ酸を前記の隣接するUPRTaseの単量体と親和的に相互作用するアミノ酸残基に変更することができる。 また、EMBO J.(1998)17:3219−3232.に記載されているように、2番目と3番目のβストランド(B2、B3)からなるβアームと、もう一方の単量体の2番目、3番目、4番目のαヘリックス(A2,A3,A4)の間の相互作用によって、二量体が形成されている。したがって、βアームを含むこれらの領域(B2,B3,A2,A3,A4)に着目した変異を選択することが考えられる。 多量体モデルは、UPRTaseの三次元構造情報、または、好ましくは前述のいずれかの複合体モデルを基に作成すればよい。特に多量体構造は、基質との結合部位を増加させることに寄与すると考えられるため、多量体モデルはUPRTaseとPRPPとの複合体モデルの全体又は一部を用いて作成することも好ましい。 上記のように選択された変異を有するUPRTaseの変異蛋白質を基に、ランダムスクリーニングを行って、さらに活性の高いCPRTaseを得ることもできる。 また、CPRTaseとして得られるUPRTaseの変異蛋白質は上記のように選択される変異とは別に、副次的に導入される変異や、後述のように相互に変換可能なアミノ酸への置換などのその他の変異を含んでいてもよい。変異蛋白質の製造方法は特に限定されないが、後述の具体的な蛋白質の製造で説明する遺伝子組み換えを用いた方法により製造することができる。 1.本発明の蛋白質(CPRTase) 本発明のCPRTaseの例として、以下の(a)〜(d)に記載の蛋白質を挙げることができる。(a)シトシンからCMPを生成する活性を有する、配列番号1、2、または30で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質、(b)配列番号1、2、または30で表されるアミノ酸配列において、36番目、94番目、102番目、141番目、143番目および198番目のアミノ酸残基から選ばれる1以上のアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換したアミノ酸配列を有し、かつシトシンからCMPを生成する活性を有する蛋白質、(c)36番目のアミノ酸残基がシステイン、94番目のアミノ酸残基がチロシン、102番目のアミノ酸残基がシステイン、141番目のアミノ酸残基がロイシン、143番目のアミノ酸残基がバリン、または198番目のアミノ酸残基がグリシンに置換したアミノ酸配列を有する上記(b)の蛋白質、および(d)上記(a)〜(c)のいずれかの蛋白質のアミノ酸配列において、36番目、94番目、102番目、141番目、143番目、198番目、201番目、204番目および205番目以外のアミノ酸残基から選ばれる1以上のアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換したアミノ酸配列を有し、かつシトシンからCMPを生成する活性を有する蛋白質、などをあげることができる。 上記(b)および(d)における「他のアミノ酸残基」は天然型、非天然型のいずれのアミノ酸であってもよい。天然型アミノ酸としては、L−アラニン、L−アスパラギン、L−アスパラギン酸、L−グルタミン、L−グルタミン酸、グリシン、L−ヒスチジン、L−イソロイシン、L−ロイシン、L−リジン、L−アルギニン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−プロリン、L−セリン、L−スレオニン、L−トリプトファン、L−チロシン、L−バリン、L−システインなどがあげられる。 好ましくは上記(b)の他のアミノ酸残基としては、36番目のアミノ酸残基はシステイン、94番目のアミノ酸残基はチロシンまたはフェニルアラニン、102番目のアミノ酸残基はシステイン、141番目のアミノ酸残基はロイシン、イソロイシン、ノルロイシン、バリン、ノルバリン、アラニン、2−アミノブタン酸、メチオニン、O−メチルセリン、t−ブチルグリシン、t−ブチルアラニンおよびシクロヘキシルアラニンから選ばれるアミノ酸、143番目のアミノ酸残基はバリン、ロイシン、イソロイシン、ノルロイシン、ノルバリン、アラニン、2−アミノブタン酸、メチオニン、O−メチルセリン、t−ブチルグリシン、t−ブチルアラニンおよびシクロヘキシルアラニンから選ばれるアミノ酸、198番目のアミノ酸残基はグリシンをあげることができる。 また上記(d)の蛋白質において、相互に置換可能なアミノ酸の例を以下に示す。同一群に含まれるアミノ酸は相互に置換可能である。 A群:ロイシン、イソロイシン、ノルロイシン、バリン、ノルバリン、アラニン、2−アミノブタン酸、メチオニン、O−メチルセリン、t−ブチルグリシン、t−ブチルアラニン、シクロヘキシルアラニン B群:アスパラギン酸、グルタミン酸、イソアスパラギン酸、イソグルタミン酸、2−アミノアジピン酸、2−アミノスベリン酸 C群:アスパラギン、グルタミン D群:リジン、アルギニン、オルニチン、2,4−ジアミノブタン酸、2,3−ジアミノプロピオン酸 E群:プロリン、3−ヒドロキシプロリン、4−ヒドロキシプロリン F群:セリン、スレオニン、ホモセリン G群:フェニルアラニン、チロシン 上記(b)および(d)の蛋白質が、シトシンからCMPを生成する活性を有していることは、該蛋白質をコードするDNAを含む組換え体DNA用いて、PyrG(CTPシンセターゼ)、codA(シトシンデアミナーゼ)、cdd(シチジンデアミナーゼ)の3つの酵素活性を喪失しているエッシェリヒア・コリを形質転換し、得られた形質転換体が、シトシン含有最少培地中で生育できることにより確認することができる。2.本発明のDNA 本発明のDNAとしては、以下の(e)および(f)に記載のDNA(e)上記1の本発明の蛋白質をコードするDNA、および(f)配列番号3〜5のいずれかで表される塩基配列を有するDNAなどをあげることができる。3.本発明のDNAの調製 本発明のDNAは、エッシェリヒア・コリ(Escherichia coli)由来のUPRTaseをコードするDNAに変異を導入することにより取得することができる。(1)エッシェリヒア・コリ由来のUPRTaseをコードするDNAの取得 エッシェリヒア・コリ由来のUPRTaseをコードするDNAを取得する方法としては、エッシェリヒア・コリから斎藤らの方法[Biochim.Biophys.Acta,72,619(1963)]に従い調製できる染色体DNAを鋳型として、配列番号5で表される塩基配列に基づき設計、合成することができるプライマーDNAを用いてPCR等により取得する方法等をあげることができる。 具体的には、エッシェリヒア・コリW3110株から染色体DNAを調製し、該DNAを鋳型として、例えば配列番号6および7で表される塩基配列を有するDNAを化学合成し、該DNAをプライマーセットとして用いたPCRにより取得できる。上記方法により取得できる具体的なDNAとしては、配列番号5で表される塩基配列を有するDNAをあげることができる。 また、配列番号5で表される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAの一部、または全部をプローブとしたハイブリダイゼーション法によってもエッシェリヒア・コリ由来のUPRTaseをコードするDNAを取得することができる。ハイブリダイゼーション法は、Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Third Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press、2001年(以下、モレキュラー・クローニングと略す)に記載されている方法に準じて行うことができる。 さらに、エッシェリヒア・コリ由来のUPRTaseをコードするDNAは、配列番号5で表される塩基配列に基づき、公知の方法で該塩基配列を有するDNAを化学合成することによっても取得できる。(2)本発明のDNAの調製 本発明のDNAは、上記(1)で得られるエッシェリヒア・コリ由来のUPRTaseをコードするDNAに、モレキュラー・クローニングおよびCurrent Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons(1987−1997)(以下、カレントプロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジーと略す)等に記載された方法に従い、部位特異変異を導入することにより取得することができる。また、エラープローンPCR法[Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90,5618(1982)]により、配列番号5で表される塩基配列を有するDNAにランダム変異を導入することによっても取得することができる。 また、各種生物由来の既知のUPRTase、例えばToxoplasma gondiiおよびBacillus caldolyticusなどのUPRTaseとUMPの複合体構造を鋳型とし、エッシェリヒア・コリのホモロジーモデルを作成し、このモデルを基にUMP結合部位付近のアミノ酸残基を抽出し、その中から本来の基質であるウラシルからシトシンへ基質特異性を変換するのに重要な役割を果たすと推定されるアミノ酸残基を選び出し、部位特異的変異を導入してシトシンをCMPへ変換する活性を有する蛋白質を選択することもできる。詳細は上記の「CPRTaseの設計」の項目の記載を参照することができる。4.本発明の蛋白質の製造 上記1の本発明の蛋白質は、モレキュラー・クローニングやカレントプロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー等に記載された方法等を用い、例えば以下の方法により、上記2の本発明のDNAを宿主細胞中で発現させて製造することができる。 即ち、上記3の方法で取得できるDNAを基にして、必要に応じて本発明の蛋白質をコードする部分を含む適当な長さのDNA断片を調製し、該DNA断片を適当な発現ベクターのプロモーターの下流に挿入した組換え体DNAを作製する。該組換え体DNAを、該発現ベクターに適合した宿主細胞に導入することにより、形質転換体を作製することができる。 また該DNA断片の塩基配列を、宿主細胞の発現に最適なコドンとなるように塩基を置換したDNAを調製することにより、本発明の蛋白質を効率的に製造することもできる。 宿主細胞としては、目的とする遺伝子を発現できる細菌であればいずれも用いることができる。発現ベクターとしては、上記宿主細胞において自立複製可能で、本発明のポリペプチドをコードするDNAを転写できる位置にプロモーターを含有しているものが用いられる。 細菌等の原核生物を宿主細胞として用いる場合は、本発明の蛋白質をコードするDNAを含有している組換えベクターは、原核生物中で自立複製可能であると同時に、プロモーター、リボソーム結合配列、本発明のDNA、転写終結配列、より構成されたベクターであることが好ましい。プロモーターを制御する遺伝子が含まれていてもよい。 発現ベクターとしては、例えば宿主細胞にEscherichia属に属する微生物を用いる場合には、pBTrp2、pBTac1、pBTac2(いずれもベーリンガーマンハイム社より市販)、pTrc99A(Pharmacia社製)、pSE280(Invitrogen社製)、pGEMEX−1(Promega社製)、pQE82L(QIAGEN社製)、pKYP10(特開昭58−110600号公報)、pKYP200〔Agric.Biol.Chem.,48,669(1984)〕、pLSA1〔Agric.Biol.Chem.,53,277(1989)〕、pGEL1〔Proc.Natl.Acad.Sci.USA,82,4306(1985)〕、pBluescript II SK(−)(Stratagene社製)、pTrs30〔Escherichia coli JM109/pTrS30(FERM BP−5407)より調製〕、pTrs32〔Escherichia coli JM109/pTrS32(FERM BP−5408)より調製〕、pGHA2〔Escherichia coli IGHA2(FERM BP−400)より調製、特開昭60−221091号公報〕、pGKA2〔Escherichia coli IGKA2(FERM BP−6798)より調製、特開昭60−221091号公報〕、pTerm2(US4686191、US4939094、US5160735)、pSupex、pUB110、pTP5、pC194、pEG400〔J.Bacteriol.,172,2392(1990)〕、pGEX(Pharmacia社製)、pETシステム(Novagen社製)等をあげることができ、宿主細胞にCorynebacterium属に属する微生物を用いる場合には、pCG1(特開昭57−134500号公報)、pCG2(特開昭58−35197号公報)、pCG4(特開昭57−183799号公報)、pCG11(特開昭57−134500号公報)、pCG116、pCE54、pCB101(いずれも特開昭58−105999号公報)、pRI109(再表2000−44886号公報:WO00/44886)、pCE51、pCE52、pCE53[いずれもMolecular and General Genetics,196,175(1984)]等をあげることができる。 プロモーターとしては、宿主細胞中で機能するものであればいかなるものでもよい。例えば、trpプロモーター(Ptrp)、lacプロモーター、PLプロモーター、PRプロモーター、T7プロモーター等の、大腸菌やファージ等に由来するプロモーターをあげることができる。またPtrpを2つ直列させたプロモーター(Ptrp×2)、tacプロモーター、lacT7プロモーター、let Iプロモーターのように人為的に設計改変されたプロモーター等も用いることができる。 リボソーム結合配列であるシャイン−ダルガノ(Shine−Dalgarno)配列と開始コドンとの間を適当な距離(例えば6〜18塩基)に調節したプラスミドを用いることが好ましい。本発明の組換えベクターにおいては、本発明のDNAの発現には転写終結配列は必ずしも必要ではないが、構造遺伝子の直下に転写終結配列を配置することが好ましい。 宿主細胞としては、エシェリヒア属(Escherichia)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、またはブレビバクテリウム(Brevibacterium)に属する微生物、例えば、Escherichia coli、Corynebacterium ammoniagenes、Corynebacterium glutamicum、Brevibacterium immariophilum、Brevibacterium saccharolyticum、Brevibacterium flavum、およびBrevibacterium lactofermentum等をあげることができ、より好ましくはEscherichia coli XL1−Blue、Escherichia coli XL2−Blue、Escherichia coli DH1、Escherichia coli DH5α、Escherichia coli MC1000、Escherichia coli MM294、Escherichia coli W1485、Escherichia coli JM109、Escherichia coli HB101、Escherichia coli No.49、Escherichia coli W3110、Escherichia coli NY49、Escherichia coli GI698、Corynebacterium ammoniagenes ATCC6872、Corynebacterium ammoniagenes ATCC21170、Corynebacterium glutamicum ATCC13032、Corynebacterium glutamicum ATCC21171、Brevibacterium immariophilum ATCC14068、Brevibacterium saccharolyticum ATCC14066、Brevibacterium flavum ATCC14067、Brevibacterium lactofermentum ATCC13869等をあげることができ、さらに好ましくはCorynebacterium ammoniagenes ATCC21170、Corynebacterium glutamicum ATCC21171をあげることができる。 組換えベクターの導入方法としては、上記宿主細胞へDNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、カルシウムイオンを用いる方法〔Proc.Natl.Acad.Sci.USA,69,2110(1972)〕、プロトプラスト法(特開昭57−186492号公報、特開昭57−18649号公報)、電気穿孔法[例えば、Journal of Bacteriology,175,4096(1993)、Appl.Microbiol.Biotechnol.,52,541(1999)]、Gene,17,107(1982)およびMolecular & General Genetics,168,111(1979)に記載の方法等をあげることができる。 本発明の蛋白質の生産形態としては、そのままの構造で生産する以外に、モレキュラー・クローニングに記載されている方法等に準じて、分泌生産、融合蛋白質として生産することもできる。 本発明の蛋白質は、上記方法で得られる形質転換体を培地に培養し、培養物中に本発明の蛋白質を生成、蓄積させ、該培養物より本発明の蛋白質を採取することで得ることができる。 該形質転換体の培養は、通常の培養法によって実施することができる。 培養に供する培地としては、該形質転換体が資化し得る炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、該形質転換体の培養を効率的に行える培地であれば天然培地、合成培地のいずれを用いてもよい。 炭素源としては、例えばグルコース、果糖、シュークロース、マルトース、でんぷん加水分解物等の糖類、エタノールなどのアルコール類、酢酸、乳酸、コハク酸等の有機酸類を用いることができる。濃度は5〜400g/lが好ましい。 窒素源としては、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、酢酸アンモニウムなどの各種無機および有機アンモニウム塩類、尿素、その他窒素含有化合物、ならびに肉エキス、酵母エキス、コーン・スティープ・リカー、大豆加水分解物等の窒素含有有機物を用いることができる。濃度は1〜100g/lが好ましい。 無機塩としてはリン酸第一水素カリウム、リン酸第二水素カリウム、硫酸アンモニウム、塩化ナトリウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム等を用いることができる。 その他、必要に応じて、ビオチン、チアミン等の微量栄養源を加えることができる。これら微量栄養源は、肉エキス、酵母エキス、コーン・スティープ・リカー、カザミノ酸等の天然物で代用することもできる。 培養は、振とう培養、深部通気撹拌培養等の好気的条件下で行う。培養温度は20℃〜50℃、好ましくは30℃〜42℃が好ましく、培地中のpHは、4〜10、好ましくは5〜8に維持する。pHの調整は、無機あるいは有機の酸、アルカリ溶液、尿素、炭酸カルシウム、アンモニアなどを用いて行う。培養時間は12時間〜6日間、好ましくは1〜3日間である。また、培養中必要に応じて、カナマイシン等の抗生物質を培地に添加してもよい。 プロモーターとして誘導性のプロモーターを用いた組換えベクターで形質転換した微生物を培養するときには、必要に応じてインデューサーを培地に添加してもよい。例えば、lacプロモーターを用いた組換えベクターで形質転換した微生物を培養するときにはイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド等を、trpプロモーターを用いた組換えベクターで形質転換した微生物を培養するときにはインドールアクリル酸等を培地に添加してもよい。 本発明の蛋白質の生産方法としては、宿主細胞内に生産させる方法、宿主細胞外に分泌させる方法、あるいは宿主細胞外膜上に生産させる方法がある。 本発明の蛋白質が宿主細胞内あるいは宿主細胞外膜上に生産される場合、ポールソンらの方法〔J.Biol.Chem.,264,17619(1989)〕、ロウらの方法〔Proc.Natl.Acad.Sci.USA,86,8227(1989)、Genes Develop.,4,1288(1990)〕、または特開平5−336963号公報、WO94/23021等に記載の方法を準用することにより、該蛋白質を宿主細胞外に積極的に分泌させることができる。 すなわち、遺伝子組換えの手法を用いて、本発明の蛋白質の活性部位を含むポリペプチドの手前にシグナルペプチドを付加した形で発現させることにより、本発明の蛋白質を宿主細胞外に積極的に分泌させることができる。 また、特開平2−227075号公報に記載されている方法に準じて、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子等を用いた遺伝子増幅系を利用して生産量を上昇させることもできる。 本発明の形質転換体により製造された蛋白質を単離精製するためには、通常の酵素の単離精製法を用いることができる。 例えば本発明の蛋白質が、細胞内に溶解状態で発現した場合には、培養終了後、細胞を遠心分離により回収し、水系緩衝液にけん濁後、超音波破砕機、フレンチプレス、マントンガウリンホモゲナイザー、ダイノミル等により細胞を破砕し、無細胞抽出液を得る。該無細胞抽出液を遠心分離することにより得られる上清から、通常の酵素の単離精製法、即ち、溶媒抽出法、硫安等による塩析法、脱塩法、有機溶媒による沈殿法、ジエチルアミノエチル(DEAE)−セファロース、DIAION HPA−75(三菱化成社製)等のレジンを用いた陰イオン交換クロマトグラフィー法、S−Sepharose FF(Pharmacia社製)等のレジンを用いた陽イオン交換クロマトグラフィー法、ブチルセファロース、フェニルセファロース等のレジンを用いた疎水性クロマトグラフィー法、分子篩を用いたゲルろ過法、アフィニティークロマトグラフィー法、クロマトフォーカシング法、等電点電気泳動等の電気泳動法等の手法を単独あるいは組み合わせて用い、精製標品を得ることができる。 また、該蛋白質が細胞内に不溶体を形成して発現した場合は、同様に細胞を回収後、破砕し、遠心分離を行うことにより、沈殿画分として蛋白質の不溶体を回収することができる。回収した蛋白質の不溶体を蛋白質変性剤で可溶化すればよい。該可溶化液を希釈または透析し、該可溶化液中の蛋白質変性剤の濃度を下げることにより、該蛋白質を正常な立体構造に戻すことができる。該操作の後、上記と同様の単離精製法により該蛋白質の精製標品を得ることができる。 本発明の蛋白質、あるいは該蛋白質に糖鎖の付加された蛋白質等の誘導体が細胞外に分泌された場合には、培養上清に該蛋白質あるいは該蛋白質の誘導体を回収することができる。即ち、該培養物を上記と同様の遠心分離等の手法により処理することにより培養上清を取得し、該培養上清から、上記と同様の単離精製法を用いることにより、精製標品を得ることができる。 このようにして取得される蛋白質として、上記1の蛋白質をあげることができる。5.本発明のCMPの製造法 上記4の方法で得られる形質転換体の培養物または該培養物の処理物、シトシン、リン酸基供与体およびエネルギー供与体を水性媒体中に存在せしめ、該媒体中にCMPを生成、蓄積させ、該媒体中からCMPを採取することによりCMPを取得することができる。 また、上記4の方法で得られる形質転換体の培養物または該培養物の処理物、コリネバクテリウム属に属する微生物の培養物または該培養物の処理物、シトシン、リン酸基供与体およびエネルギー供与体を水性媒体中に存在せしめ、該媒体中にCMPを生成、蓄積させ、該媒体からCMPを採取することよってもCMPを取得することができる。 形質転換体を培養する方法としては、上記4の形質転換体の培養法と同様の方法を用いればよい。該形質転換体は、湿菌体として0.5〜500g/l、好ましくは5〜200g/lの濃度で用いられる。 基質として用いるシトシンは、合成品でも天然品でもよい。またシトシンを含有するものであれば精製品、天然物から得られたシトシン含有粗精製物などいずれでもよい。シトシンは1〜100g/l、好ましくは1〜50g/lの濃度で用いられる。 エネルギー供与体としてはグルコース、フラクトース、シュークロース、糖蜜、澱粉加水分解物などの炭水化物、ピルビン酸、乳酸、酢酸、α−ケトグルタル酸などの有機酸、グリシン、アラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸などのアミノ酸等の上記した形質転換体が代謝し、細胞内でATPなどを生成することができる物質であれば、いずれでもよい。これらは5〜200g/lの濃度で用いられる。 リン酸基供与体としては正リン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、テトラポリリン酸、テトラポリメタリン酸などのポリリン酸、ポリメタリン酸、リン酸一カリウム、リン酸二カリウム、リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウムなどの無機のリン酸塩などをあげることができる。これらは1〜50g/lの濃度で用いられる。 コリネバクテリウム属に属する微生物としては、Corynebacterium ammoniagenesおよびCorynebacterium glutamicum等をあげることができ、より好ましくはCorynebacterium ammoniagenes ATCC6872、Corynebacterium ammoniagenes ATCC21170、Corynebacterium glutamicum ATCC13032、Corynebacterium glutamicum ATCC21171等をあげることができる。コリネバクテリウム属に属する微生物は、上記4と同様の方法で培養することができる。コリネバクテリウム属に属する微生物は、湿菌体として0.5〜500g/l、好ましくは5〜200g/lの濃度で用いられる。 水性媒体としては、例えば水、リン酸緩衝液、トリス緩衝液、ホウ酸緩衝液などCMP生産反応を阻害しない塩類を含む水溶液があげられる。また形質転換体またはコリネバクテリウム属に属する微生物を培養して得られる培養物の上清をそのまま水性媒体として用いることもできる。 また上記水性媒体には必要に応じて界面活性剤または有機溶媒を添加してもよい。界面活性剤または有機溶媒を添加することにより、CMPの生産効率をあげることができる。 界面活性剤としては、ポリエチレングリコールステアリルアミン(例えばナイミーンS−215、日本油脂社製)、アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライド(例えばサニゾールB−50、花王社製)などのカチオン性界面活性剤、ラウリル硫酸ナトリウム(例えばパーソフトSL、日本油脂社製)などのアニオン性界面活性剤、ポリエチレングリコールソルビタンモノステアレート(例えばノニオンST221、日本油脂社製)などの非イオン性界面活性剤、ジメチルラウリルベタイン(例えばニッサンアノンBL、日本油脂社製)などの両性界面活性剤などがあげられ、これらは通常0.1〜20g/l、好ましくは1〜10g/lの濃度で用いられる。 有機溶媒としては、トルエン、キシレン、脂肪族アルコール、アセトン、酢酸エチルなどがあげられ、これらは通常0.1〜50ml/l、好ましくは1〜20ml/lの濃度で用いられる。 CMPの生産反応は通気撹拌等により好気的条件下で行う。反応温度は20℃〜50℃、好ましくは30℃〜42℃、培地中のpHは、4〜10、好ましくは5〜8に維持する。pHの調整は、無機あるいは有機の酸、アルカリ溶液、尿素、炭酸カルシウム、アンモニアなどを用いて行う。反応時間は通常1〜48時間である。 反応終了後、菌体などの沈殿物を除去して得られた反応液より、活性炭処理、イオン交換樹脂処理などの公知の方法を併用することによりCMPを単離精製することができる。 また、CMPを基質として又はCMPを経由して生産される有用物質の製造法において、本発明のCMPの製造法により水性媒体中に生成、蓄積するCMP又は水性媒体中から採取したCMPを用いることができる。 上記のようにして生産される有用物質としては例えば、シチジン−5’−トリリン酸、CMP−シアル酸、CDP−コリン等を挙げることができる。 CMPを基質としてシチジン−5’−トリリン酸を製造する方法としては、例えば特開2002−085087号公報および特開2000−217593号公報に記載の方法があげることができ、CMP−シアル酸を製造する方法としては、例えば特開平5−276973号公報、WO2004009830および特開2002−085087号公報に記載の方法をあげることができ、CDP−コリンを製造する方法としては、例えば特開昭63−313594号公報および特公昭48−2358号公報に記載の方法をあげることができる。 以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。 例1活性検出用宿主菌の造成 シトシンとホスホリボシルピロリン酸(PRPP)からCMPを生成する酵素活性を検出するための宿主菌MC1000 ΔcodA Δcdd ΔpyrG::Km株を以下のようにして造成した。(1)シトシンデアミナーゼをコードする遺伝子(codA遺伝子)およびシチジンデアミナーゼをコードする遺伝子(cdd遺伝子)欠損株の調製 Escherichia coli MC1000の染色体DNA上のcodA遺伝子及びcdd遺伝子が欠損した菌株は、ラムダファージの相同組換え系を利用した方法(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,97,6640−6645(2000))に準じて作製した。 Escherichia coli MC1000の染色体DNAは、該微生物を公知の方法によって培養し、培養後カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジーに記載の方法により単離精製した。プラスミドpKD46、pKD3、pKD4およびpCP20は、エシェリヒア・コリ ジェネティックストックセンター(米国エール大学)から該プラスミドを保持するエシェリヒア・コリ株を入手し、該大腸菌から抽出したものを用いた。 配列番号6に表されるEscherichia coliのcodA遺伝子を含む塩基配列のうち、塩基番号1‐1031番目および2094‐3105番目で表される塩基配列部分をPCR反応により増幅した。これらの増幅断片を、pKD4を鋳型とし、配列番号7および8で表される塩基配列からなるDNAをプライマーセットに用いて増幅して得られた両端にFRT(FLP recognition target)サイトを持つaph(aminoglycoside phosphotransferase)遺伝子断片と連結した。 該連結断片を、あらかじめpKD46を導入し、λ Red recombinaseを誘導発現させたEscherichia coli MC1000株にエレクトロポレーション法により導入した。カナマイシン耐性を指標に形質転換体を選択し、染色体上のcodA遺伝子にaph遺伝子が挿入されたことにより該遺伝子が破壊された株を取得した。 次に配列番号9で表されるEscherichia coliのcdd遺伝子を含む塩基配列のうち、塩基番号1−1011番目および1656−2572番目で表される塩基配列部分をPCR反応により増幅した。これらの増幅断片を、pKD3を鋳型とし、配列番号10および11で表される塩基配列からなるDNAをプライマーセットに用いて増幅して得られた両端にFRTサイトを持つcat(chloramphenicol acetyltransferase)遺伝子断片を連結した。 該連結断片を、λ Red recombinaseを誘導発現させた上記で取得したカナマイシン耐性株にエレクトロポレーション法により導入した。カナマイシンおよびクロラムフェニコール耐性を指標に形質転換体を選択し、さらに染色体上のcdd遺伝子にcat遺伝子が挿入されたことにより該遺伝子が破壊された株を取得した。 上記で取得したカナマイシンおよびクロラムフェニコール耐性株からpKD46を除去した後、pCP20を導入してFLP recombinaseを誘導発現させ培養した後、染色体DNAからaph、cat遺伝子が取り除かれた株を、カナマイシンおよびクロラムフェニコール感受性を指標に選択した後、pCP20を除去した。 上記操作で得られた株は、Escherichia coli MC1000株の染色体DNA上の配列番号6で表される塩基配列中の1032‐2093番目、および配列番号9で表される塩基配列中の1012‐1655番目で表される塩基配列に相当する部分が欠失している、すなわちcodA遺伝子およびcdd遺伝子が欠損しているEscherichia coli MC1000株であり、該株をEscherichia coli MC1000△codA△cddと命名した。(2)CTPシンターゼをコードする遺伝子(pyrG遺伝子)破壊株の調製 Escherichia coli MM294株の染色体DNAから、pyrG遺伝子の一部である配列番号12で表される塩基配列からなるDNAを常法に従って調製し、pUC19のBamHI認識部位とKpnI認識部位の間に連結した。 得られた組換えプラスミドDNAをBstXIで消化した後平滑化し、pUC4K(アマシャムバイオサイエンス社から購入)をBamHIで消化した後平滑化して得た、pUC4K由来のaph遺伝子を含む約1.3kbのDNA断片と連結した。 得られたプラスミドDNAをBamHIとKpnIで消化した後精製することで、pyrG遺伝子中にaph遺伝子が挿入されたことにより該遺伝子が破壊された欠損型pyrG遺伝子断片を取得した。 該DNA断片をEscherichia coli JC7623株にエレクトロポレーション法により導入し、カナマイシン耐性を指標にして形質転換株を選択し、さらにシチジン要求性を示す株を単離した。 常法に従い、単離した株からP1 lysateを調製し、Escherichia coli MM294株に感染させ、カナマイシン耐性を示す株を選択することにより、pyrG遺伝子にaph遺伝子が挿入されたことにより染色体DNA上の該遺伝子が破壊された株を取得し、該株をEscherichia coli MM294△pyrG::Kmと命名した。(3)Escherichia coli MC1000 ΔcodA Δcdd ΔpyrG::Km株の調製 常法に従って、上記(2)で得られたEscherichia coli MM294 pyrG::Km株からP1 lysateを調製し、上記(1)で得られたMC1000△codA△cdd株に感染させ、カナマイシン耐性を指標に形質導入株を選択した。得られた形質導入株はcodA遺伝子およびcdd遺伝子が欠損し、かつpyrG遺伝子が破壊された株であり、該株をEscherichia coli MC1000△codA△cdd△pyrG::Kmと命名した。 Escherichia coli MC1000 ΔcodA Δcdd ΔpyrG::Km株はシチジン要求性で、50mg/lのシトシンを含むM9最少寒天培地[グルコース 1.8g、リン酸一水素ナトリウム 6g、リン酸二水素カリウム 3g、塩化ナトリウム 0.5g、塩化アンモニウム 1g、硫酸マグネシウム・7水和物 0.25g、塩化カルシウム・2水和物 15mg、チアミン塩酸塩 10mg、Agar−Noble(Difco社製)20gを水11に含む]では生育できないことを確認した。すなわち、Escherichia coli MC1000 ΔcodA Δcdd ΔpyrG::Km株に変異型UPRTaseを発現するプラスミドを導入して得られる形質転換体は、該変異型酵素がシトシンからCMPを生成する活性を有している場合にのみ、シトシンを含むM9最少培地で生育可能となる。 例2Escherichia coli由来の野生型UPRTaseのクローニング まず、公知の方法によりエッシェリヒア・コリW3110株の染色体DNAを調製し、次いで、該染色体DNAを鋳型とし、配列番号13および14で表される塩基配列からなるDNAをプライマーセットに用いて、Pyrobest DNAポリメラーゼ(宝酒造社製)を使用してPCRを行った。 PCRにより得られた約0.7kbの増幅産物をQiagen PCR Purificatin Kit(Qiagen社製)を用いて精製し、EcoRIおよびBamHIで切断した。該制限酵素処理物をアガロースゲル電気泳動した後、Qiagen Gel Extraction Kit(Qiagen社製)を用いて抽出、精製した。 該DNA断片を、同じくEcoRIおよびBamHIで切断した発現ベクターpTrc99A(Pharmacia社製)と、DNA Ligatin Kit ver.2.0(宝酒造社製)を用いて結合し、得られた結合物を用いてエッシェリヒア・コリ DH5α(東洋紡社製)を形質転換した。 アンピシリン耐性を指標に形質転換株を選択し、得られた該形質転換株を100μg/mlのアンピシリンを含むLB培地で終夜培養した。得られた培養物からQiagen Plasmid Miniprep Kit(Qiagen社製)を用いてプラスミドDNAを調製し、塩基配列を解析することで、該プラスミドは、目的とするエッシェリヒア・コリのUPRTase遺伝子を含む約0.7kbのDNA断片が挿入された構造を有するプラスミドであることを確認し、該プラスミドをpEUP1と命名した。 例3UPRTaseの三次元構造情報の例 Escherichia coli由来の野生型UPRTaseの結晶構造解析を下記に示す通り行った。<結晶化用リコンビナント野生型UPRTaseの調製> X線結晶構造解析のための結晶調製に用いたリコンビナント野生型UPRTaseは以下のように調製した。UPRTaseをコードするupp遺伝子の読み枠(オープンリーディングフレーム)のアミノ末端はMet−10から開始するものとし、Cys−160は分子表面に位置することが予想され精製酵素の濃縮時に凝集の原因となる可能性があったため、これをSerに置換した。以上の形に対応する遺伝子領域を増幅するため、以下の4種類のプライマーを用い、プラスミドpQE82L(Qiagen社)にクローニングされた野生型upp遺伝子を鋳型として、フュージョンPCRを行なった。 配列番号34および35で表される塩基配列を有するpQE_C160S_N1とpQE_C160S_N2、配列番号36および37で表される塩基配列を有するpQE_C160S_C1とpQE_C160S_C2をそれぞれプライマーとしたPCRを別々に行い、それぞれの産物をアガロース電気泳動により精製した。引き続き、それらを混合し鋳型として、pQE_C160S_N1とpQE_C160S_C2をプライマーとして用いることにより、PCRを行なった。これにより増幅された断片を制限酵素BamHIにより消化し、アガロース電気泳動により精製した後、あらかじめ、制限酵素BamHIにより消化し、それをアルカリフォスファターゼ処理したプラスミドpQE82LとライゲーションしEscherichia coli DH5α株を形質転換した。形質転換株よりプラスミドを単離し塩基配列解析を行なうことにより、アミノ末端にヒスチジンタグを持つ融合蛋白質として配列番号38で表されるアミノ酸配列を有するUPRTaseを発現させる構造であることを確認した。このプラスミドを用いてEscherichia coli BL21株を形質転換し、得られた形質転換株を、以下のUPRTase発現株として用いた。なお、C160Sの置換は、酵素の比活性にほとんど影響を与えなかった(データ示さず)。 2Lバッフル付きフラスコに入れた50mg/L アンピシリンを含む250mLのTerrific培地(12g/L トリプトン、24g/L 酵母エキス、9.4g/L リン酸水素カリウム、2.2g/L リン酸2水素カリウム、4mL/L グリセロール、pH7.2に調整)に植菌し、37℃で4時間培養した後、OD660が約2.0になった時点で、最終濃度1mMとなるようIPTGを添加し、引き続き25℃でさらに12時間培養した。得られた培養液を遠心分離することにより集菌し、沈澱した菌体を破砕緩衝液(50mM Na−phosphate pH7.0、300mM NaCl、10mM 2−メルカプトエタノール)に再懸濁し、氷浴により冷却しながら超音波処理により菌体を破砕した。これを10000rpmで一時間遠心し上清に細胞抽出物を得た。ヒスチジンタグ融合タンパク質の精製にはTALONレジン(Clonetech社製)を用いた。50mLの培養液あたり200μLのTALONレジンを使用した。洗浄緩衝液(50mM Na−phosphate pH7.0、15mM イミダゾール、10mM 2−メルカプトエタノール)で洗浄した後、溶出緩衝液(50mM Na−phosphate pH7.0、150mM イミダゾール、10mM 2−メルカプトエタノール)で溶出した。以上の操作は室温で行なった。以下の操作は4℃で行なった。この回収画分を陰イオンクロマトグラフィーの平衡化緩衝液(20mM Tris−HCl,pH8.5)に対して1晩透析した。透析内液を10000rpmの回転数で10分間遠心分離した後、上清画分のみを回収した。陰イオン交換カラム(monoQカラム、GEヘルスケアバイオサイエンス)に添加した。上記緩衝液により十分に平衡化した後、波長280nmでのUV吸収を指標に0→0.5M NaClの直線濃度勾配によって溶出した。活性画分は250〜350mM NaClの範囲に溶出した。この活性画分に、0.5mM DTT、0.5mM GTPの濃度となるよう、ストック溶液を添加した後、amicon ultra−15を用いて濃縮し、さらに濃縮緩衝液(20mM Tris−HCl pH8.5、20mM NaCl、0.5mM DTT、0.5mM GTP)を添加し、もとの緩衝液を交換しながら、18mg/mLの濃度まで濃縮した。 <UPRTaseのX線結晶構造解析> シッティングドロップ蒸気拡散法により結晶化を行なった。上記で調製したリコンビナントUPRTase濃縮溶液と、0.2mM di−ammonium tartrateおよび15−20%(w/v)PEG3350を含む溶液とを等量ずつ混合し、約1週間静置する事により、0.05×0.05×0.15mm3程度の柱状結晶が析出した。 高エネルギー加速器研究機構物質構造科学研究所放射光科学研究施設のビームラインBL5Aにおいて、ADSC製Quantum 315検出器を用いてX線回折データを収集した。波長は1.0000Åに設定し、結晶から検出器までの距離は352.4mmに設定した。測定温度は100Kで行なった。1フレーム当たり振動角1°で20秒間露光した。CCP4パッケージのプログラムMosflmを用いてデータを処理した結果、Rmergeの値は、100−2.3Å分解能で10.8%、最外殻シェルの2.42−2.30Å分解能で61.1%となった。データの完全性は、100−2.3Å分解能で92.9%、最外殻シェルの2.42−2.30Å分解能で89.6%となった。結晶は、三方晶系に属し、空間群P3221、格子定数a=b=73.1Å、c=279.9Å、α=β=90.0Å、γ=120.0Åであった。結晶の非対称単位中には、4分子のUPRTase分子が含まれ、結晶の溶媒含有率は約45%であった。 <立体構造決定>構造決定は、Thermotoga maritima UPRTase(PDB code 1050)の単量体構造をサーチモデルとした分子置換法により行った。構造解析プログラムはMolRep(CCP4 package)を、構造精密化プログラムはCNX(Accelrys社)を、構造表示プログラムはCoot(CCP4 package)を、それぞれ用いた。繰り返し精密化作業を行い、水分子、GTP分子を含む2.3Å分解能の精密化構造を決定し、Rfactorは21.0%(Rfree 28.3%)となった。プログラムPROCHECKを用いてラマチャンドランプロットを作製したところ、グリシン以外の残基のうち、90.6%が最も好ましい領域に位置し、全体の99.9%の残基が許容され得るペプチド結合の二面角を有することが示された。得られた三次元構造情報(構造座標)を表1に示す。 例4a)複合体モデルの作成例3で得られた結晶構造解析結果を用いて、コンピューターグラフィクス上で、Escherichia coli UPRTaseのUMP結合部位にCMPをフィットさせ、結合様式をグラムGlideを用いて、Escherichia coli UPRTaseにUMPをドッキングさせ、既知の相互作用様式をもつUMPの配座を選択後、UMPより8Å以内のアミノ酸残基に対しMMGBSA(Molecular Mechanics−Generalized Born Surface Area)計算し、Escherichia coli UPRTaseとUMPの結合様式モデルを構築させた。次にUMPをCMPにそのまま置き換えて、CMPより8Å以内のアミノ酸残基に対し、MMGBSA計算を行い、UPRTaseとCMPとの複合体モデルを作成した。以降の変異型酵素のデザインにはこのモデルを用いることとした。この複合体モデルをよく観察し、シトシンとの親和性を増大させる変異を設計した。この観察から、まず、シトシンのアミノ基の窒素原子から7.3Åの位置にα炭素原子が存在する205位グリシンを、該アミノ基との親和性を上昇させるアミノ酸に置換することが有効であると考えられた。またシトシンのピリミジン環5位の炭素原子)から3.8Åの位置にε炭素原子が存在する141位メチオニン、シトシンのピリミジン環6位の炭素原子から4.3Åの位置にβ炭素原子)が存在する143位アラニンを、それぞれピリミジン環との親和性を上昇させるアミノ酸に置換することが有効であると考えられた。 上記の3つのアミノ酸残基の位置をよく観察し、置換後のアミノ酸としてそれぞれ、アスパラギン酸(G205D)、ロイシン(M141L)、バリン(A143V)を選択して、これら3つのアミノ酸置換を有する変異型Escherichia coli UPRTaseとCMPの複合体モデルを、CMPより8Å以内のアミノ酸残基に対しMMGBSA計算を行って、構築した(図2)。 CMPと変異型UPRTaseの結合様式モデルでは4位のアミノ基の水素原子とGly207のバックボーンのカルボニル基の酸素原子、および、3位の窒素とAla209のバックボーンのアミド水素原子、2位のカルボニル酸素とGly210のアミド水素原子との間に水素結合が生じている。シトシン認識の鍵になる変異であるAsp205とシトシンは、4位アミノ基の水素原子とAspの側鎖カルボン酸の酸素原子との間に静電相互作用で結合している。したがって、Asp205は同じ負電荷をもつグルタミン酸でも相互作用できる。CMPのピリミジン環は、Leu141のメチル基との間でCH/π相互作用で結合している。CMPとCH/π相互作用で結合するには、Leu141がメチル基を持つIle、Valでもよいと考えられる。さらに、CMPの5位、6位の水素付近では、Val143との間に疎水相互作用で結合していると考えられる。この部位にはもともと空隙が少なく、Valより嵩高いアミノ酸であるLeu、Ileでは立体障害が生じる可能性がある。 また、CMPと野生型UPRTaseの複合体構造解析より、Tyr201は、Asp208と水素結合を作ることによって、Met141と共にピリミジン環をサンドイッチし、シトシン結合部位の一部を形成している。この部位はAsp208と相互作用できる、LysやArgでもよいと思われる。 また、他の種のUPRTaseの構造解析より、PRPPのリン酸基と相互作用すると知られているArg112がB5(5番目のベータストランド)とB6(6番目のベータストランド)の間の非常に運動性が高い、フレキシブルループにある(EMBO J.(1998)17:3219−3232)。フレキシブルループの運動性を制限すれば、Arg112と基質との親和性が強められる可能性がある。具体的には、B6上にあるPro121をProより嵩高いLeu、Ile、Valなどの疎水アミノ酸に置換すれば、B6近傍のA5(5番目のαヘリックス)上のLeu154やAla150との疎水結合が強まるものと期待される。また、Pro121をPhe、Tyr、Trp、Hisなどの芳香族アミノ酸に置換すれば、CH/π相互作用によって、B6とA5の親和性が高まると予想される。 b)四量体モデルの作成X線結晶構造解析の構造情報をもとにそれぞれの単量体同士の境界部分を含む四量体モデルをInsight97によりグラフィクスで作成した(図3)。グラフィックス上の構造をよく観察し、単量体間の親和性を増大させる変異を設計した。四量体インターフェースに位置する(隣接するUPRTase単量体のいずれかの原子から5Å以内に構成原子が存在する)Arg36においては、もう一方の二量体由来のArg36’と距離的に近く、静電的反発が生じていると思われる。従ってこのアミノ酸を、電荷を持たず、かつ立体障害がない程度の大きさのアミノ酸、例えばCys、Ser、Thr、Met、Leu、Ile、Valなどに置換すると、このような反発が除かれ、四量体構造の安定化が期待できる。同じく、Asp94においても同様の理由で静電的反発が生じていると考えられ、これらを電荷のないGly、Ser、Thr、Ala、Leu、Val、Ile、Tyr、Phe、Trpなどに置換すれば四量体構造が安定化する。また四量体中の静電的反発を除くだけではなく、積極的に四量体間の相互作用を強めることによっても、同様の活性向上が期待できる。例えば、Ser46をさらに長鎖のアミノ酸、たとえばAsnに置換すると、二量体を形成しているもう一方の単量体のE98’との間に水素結合が生じ、CPRTase活性向上に繋がると考えられる。また、相手側の単量体に向かって伸びるβアームが構造上重要であると考えられるが、中でもTrp66近傍のアミノ酸に変異を加えることによりCPRTase活性向上につながる可能性がある 例5変異型酵素の取得とその評価(その1) 配列番号15で表されるアミノ酸配列からなるEscherichia coliのUPRTaseの141番目のメチオニン残基を他のアミノ酸に置換することを目的に、配列番号16で表される塩基配列からなるEscherichia coliのUPRTaseをコードするDNAに基づき、配列番号17で表される塩基配列からなるメチオニン残基をコードする領域を任意の塩基(nnn)に置換したDNA、および該塩基配列と相補的な配列番号18で表される塩基配列からなるDNAを合成した。 また、201番目のチロシン残基を他のアミノ酸に置換することを目的に、上記と同様に、該領域を任意の塩基に置換した配列番号19で表される塩基配列からなるDNA、および該塩基配列と相補的な配列番号20で表される塩基配列からなるDNAを合成した。 さらに、プラスミドpEUP1上において、UPRTase遺伝子の上流側に相当する配列番号21で表される塩基配列からなるDNA、および下流側の逆鎖に相当する配列番号22で表される塩基配列からなるDNAを合成した。 配列番号18および21で表される塩基配列を有するDNA、配列番号17および22で表される塩基配列を有するDNA、配列番号20および21で表される塩基配列を有するDNA、並びに配列番号19および22で表される塩基配列を有するDNAをそれぞれプライマーセットとして用い、pEUP1プラスミドDNAを鋳型として、Pyrobest DNAポリメラーゼ(タカラバイオ社製)を使用して、それぞれPCRを行った。 PCRにより得られた約0.5kb、約0.3kb、約0.7kb、および約0.1kbの増幅産物をアガロースゲル電気泳動し、Qiagen Gel Extraction Kitを用いて抽出、精製した。 得られた約0.5kbと約0.3kbの増幅産物、および約0.7kbと約0.1kbの増幅産物をそれぞれ混合し、この2種類の混合物をそれぞれ鋳型として、配列番号9および10で表される塩基配列を有するDNAをプライマーセットとして用い、PCRを行った。 上記PCRにより、それぞれ約0.8kbの増幅DNA断片が得られたので、該DNA断片をアガロースゲル電気泳動した後、Qiagen Gel Extraction Kitを用いて該DNA断片を抽出、精製した後、それぞれEcoRIおよびBamHIで切断し、上記と同様の方法で精製した。 得られたDNA断片を、同じくEcoRIおよびBamHIで切断した発現ベクターpTrc99Aとそれぞれ結合し、該結合体を用いてEscherichia coli MC1000 ΔcodA Δcdd ΔpyrG::Km株を形質転換した。 アンピシリン耐性を指標にしてそれぞれ形質転換体を選択し、該形質転換体を50mg/lのシトシンと100μg/mlのアンピシリンを含むM9最少寒天培地上にレプリカしたところ、それぞれ1個のシングルコロニーが得られたので、141番目のアミノ酸残基の置換体をR1株、201番目のアミノ酸残基の置換体をR2株と命名した。 R1およびR2株が保持するプラスミド中のUPRTase構造遺伝子部分の塩基配列を常法により決定したところ、R1株では141番目のアミノ酸残基がロイシンに、205番目のアミノ酸残基がアスパラギン酸に置換した変異型UPRTase(M141L G205D)をコードするDNA、R2株では201番目のアミノ酸残基がリジンに、204番目のアミノ酸残基がロイシンに置換した変異型UPRTase(Y201K P204L)をコードするDNAが見いだされた。 次に、上記で見いだされた4つのアミノ酸残基の置換変異を単独で有する変異型UPRTase(M141L、G205D、Y201K、P204L)をコードするDNAを、上記と同様に置換したいアミノ酸に対応するコドンを有するプライマーDNAを用いたPCR法により取得した。得られた変異型UPRTaseをコードするDNAは、それぞれpTrc99Aと結合し、該結合体を用いてEscherichia coli MC1000 ΔcodA Δcdd ΔpyrG::Km株を形質転換した。 形質転換体を、50mg/lのシトシンと100μg/mlのアンピシリンを含むM9最少寒天培地上で培養したところ、205番目のアミノ酸残基がアスパラギン酸に置換した変異体(G205D)のみが生育した。 次にR1およびR2株が有する変異型UPRTaseのCMP生成活性を測定することを目的に、ヒスチジンタグを付加した変異型酵素を以下のようにして取得した。 配列番号16で表される、UPRTase遺伝子の5’末端領域の塩基配列に相当する、配列番号23で表される塩基配列からなるDNA、および配列番号22で表される塩基配列からなるDNAをプライマーセットとして用い、R1が保持するプラスミドDNA、R2株が保持するプラスミドDNAおよびpEUP1をそれぞれ鋳型として、Pyrobest DNAポリメラーゼを用いてPCRを行った。 得られた約0.8kbの増幅DNA断片をそれぞれアガロースゲル電気泳動した後、Qiagen Gel Extraction Kitを用いて精製し、SphIおよびHindIIIで切断した。 上記で得られたDNA断片を、同じくSphIおよびHindIIIで切断した発現ベクターpQE82L(Qiagen社製)とそれぞれ結合し、該結合体を用いてEscherichia coli DH5α株を形質転換し、形質転換体をアンピシリン耐性を指標に選択した。 得られた3種の形質転換体をそれぞれ100μg/mlのアンピシリンを含むLB培地で30℃にて一晩種培養した後、得られた培養物を100μg/mlのアンピシリンを含むTeriffic培地〔バクトトリプトン12g、酵母エキス24g、グリセロール4mlを水1Lに含み、pH7.2に調整した培地〕に1%植菌して30℃にて8時間培養した。IPTGを終濃度1mmol/lになるように添加し、さらに6時間培養した後、培養物を遠心分離して菌体を取得した。 該菌体を超音波破砕して粗酵素液を調製し、HiTrap Chelating HP Coulumn(Pharmacia社製)を用いてヒスチジンタグが付加した酵素をそれぞれ精製した。 該精製酵素を反応液〔50mmol/l トリス塩酸(pH7.5)、5mmol/l リン酸一カリウム、5mmol/l 塩化マグネシウム、5mmol/l シトシン、1mmol/l グアノシン5’−トリリン酸、1.5mmol/l PRPP〕に添加し、31℃にて反応を行い、生成するCMPを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により定量した。タンパク濃度はProtein Assay Kit(Pharmacia社製)を用いて測定した。 一方、UMP生成活性については、ヒスチジンタグを付加していない酵素の発現株(宿主はEscherichia coli DH5α株)より調製した粗酵素抽出液を反応液〔50mmol/l トリス塩酸(pH7.5)、5mmol/l リン酸一カリウム、5mmol/l 塩化マグネシウム、5mmol/l ウラシル、1mmol/l グアノシン5’−トリリン酸、1.5mmol/l PRPP〕に添加し、31℃にて反応を行い、生成するUMPをHPLCにより定量した。結果を表2に示す。 表2から明らかなように、野生型酵素ではCMP生成活性は検出されなかったのに対し、R1およびR2株が生産する変異型酵素(Y201K P204LおよびM141L G205D)では明らかな生成活性が認められた。 またCMP生成活性の上昇に応じて本来の活性であるUMP生成活性は顕著に減少していたことから、ウラシルからシトシンへの基質特異性の変換が起きていることが明らかとなった。 4種の単独変異体の活性を比較するとG205D変異体のみがシトシン添加M9最少培地での生育が見られ、UMP生成活性が大幅に減少していたことから、G205D変異が特にシトシンの認識に重要な役割を果たしていると考えられた。 例6変異型酵素の取得とその評価(その2) 例5で得られたM141Lのアミノ酸置換変異を有するUPRTaseをコードするDNAをベクターpTrc99Aに連結したプラスミドを鋳型として、配列番号16で表される塩基配列を有するDNAおよび配列番号23で表される塩基配列からなるDNAをプライマーセットとして用いてPCRを行い、例5と同様にしてM141Lのアミノ酸置換変異を有するUPRTaseをコードするDNAがpQE82Lに連結したプラスミドを得た。 得られたプラスミドを鋳型として、例5と同様に205番目のアミノ酸残基に対応するコドンにグルタミン酸をコードするコドンを有するプライマーDNAを用いたPCRを行ない、141番目のアミノ酸残基がロイシンに、205番目のグリシンがグルタミン酸に置換した変異型UPRTase(M141L G205E)をコードするDNA断片を取得した。 該DNA断片をSphIおよびHindIIIで切断しpQE82Lと連結し、141番目のアミノ酸残基がロイシンに、205番目のグリシンがグルタミン酸に置換した変異型UPRTase(M141L G205E)をヒスチジンタグが付加した状態で発現するプラスミドを取得した。 該変異型UPRTase(M141l G205E)を発現するプラスミドを用いてEscherichia coli DH5α株を形質転換し、形質転換体をアンピシリン耐性を指標に選択した。 上記で得られた変異型UPRTase(M141L G205E)を発現する形質転換体および例5で得られた変異型UPRTase(M141L G205D)を発現する形質転換体を用いて例5と同様の手順により、それぞれヒスチジンタグが付加した変異型UPRTase(M141L G205E)および変異型UPRTase(M141L G205D)を精製した。 該精製酵素を反応液〔50mmol/l トリス塩酸(pH7.5)、10mmol/l 塩化マグネシウム、10mmol/l シトシン、1mmol/l グアノシン5’−トリリン酸、3mmol/l PRPP〕に添加し、32℃にて反応を行い、生成するCMPを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により定量した。タンパク質濃度は、Protein assay kit(Pharmacia社)を用いて測定した。結果を表3に示す。 表3から明らかなように、205番目のアミノ酸がグルタミン酸に置換した変異型UPRTase(M141L G205E)でも、205番目のアミノ酸がアスパラギン酸に置換した変異型UPRTase(M141L G205D)と同様に、明らかなCMP生成活性が認められた。 例7変異型酵素の取得とその評価(その3) 例5で得られたG205Dのアミノ酸置換変異を有するUPRTaseをコードするDNAをベクターpTrc99Aに連結したプラスミドを鋳型として、配列番号16で表される塩基配列を有するDNAおよび配列番号23で表される塩基配列からなるDNAをプライマーセットとして用いてPCRを行い、例5と同様にしてG205Dのアミノ酸置換変異を有するUPRTaseをコードするDNAがpQE82Lに連結したプラスミドを得た。 該変異型UPRTase(G205D)を発現するプラスミドを用いてEscherichia coli DH5α株を形質転換し、形質転換体をアンピシリン耐性を指標に選択した。 上記で得られた変異型UPRTase(G205D)を発現する形質転換体および例5で得られた変異型UPRTase(M141L G205D)を発現する形質転換体を用いて例5と同様の手順により、それぞれヒスチジンタグが付加した変異型UPRTase(G205D)および変異型UPRTase(M141L G205D)を精製した。 該精製酵素を反応液〔50mmol/l トリス塩酸(pH7.5)、10mmol/l 塩化マグネシウム、4mmol/l シトシン、1mmol/l グアノシン5’−トリリン酸、1.5mmol/l PRPP〕に添加し、32℃にて反応を行い、生成するCMPを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により定量した。タンパク質濃度は、Protein assay kit(Pharmacia社)を用いて測定した。結果を表4に示す。 表4から明らかなように、205番目のアミノ酸のアスパラギン酸への置換のみを有する変異型UPRTase(G205D)も、141番目のアミノ酸のロイシンへの置換および205番目のアミノ酸のアスパラギン酸への置換を有する変異型UPRTase(M141L G205D)と同様に、明らかなCMP生成活性を有することがわかった。 例8活性上昇変異酵素の取得とその評価 例5で取得したR2株が保持するプラスミドDNAを鋳型とし、配列番号21で表される塩基配列からなるDNA、および配列番号22で表される塩基配列からなるDNAをプライマーセットとして用いて、Recombinant Taq DNA ポリメラーゼ(タカラバイオ社製)を使用して、0.3mmol/l MgCl2の共存下でエラープローンPCRを行った。 得られた約0.8kbの増幅DNA断片をアガロースゲル電気泳動した後、Qiagen Gel Extraction Kitを用いて精製した後、EcoRIおよびBamHIで切断した。該DNA断片を、同じくEcoRIおよびBamHIで切断した発現ベクターpTrc99Aと結合し、得られた結合体を用いてEscherichia coli MC1000 ΔcodA Δcdd ΔpyrG::Km株を形質転換した。 アンピシリン耐性を指標に形質転換体を選択し、得られた形質転換体を7mg/lの5−フルオロシトシンまたは7mg/lの2,5,6−トリアミノ4−ヒドロキシピリミジンを含むM9最少寒天培地(シトシン50mg/Lと100μg/mlのアンピシリンを含む)上に約15000株ずつそれぞれレプリカして生育を調べた。 その結果、5−フルオロシトシンを含むプレート上で2株(FC35−1、FC35−2と命名)、2,5,6−トリアミノ4−ヒドロキシピリミジンを含むプレート上で1株(TA35−1と命名)がコロニーを形成した。 FC35−1、FC35−2およびTA35−1株よりそれぞれプラスミドDNAを抽出し、UPRTase構造遺伝子部分の塩基配列を決定したところ、FC35−1株が保持する変異型酵素遺伝子は102番目のアミノ酸残基がシステイン、198番目のアミノ酸残基がグリシンに、FC35−2株が保持する変異型酵素遺伝子は94番目のアミノ酸残基がチロシンに、TA35−1株が保持する変異型酵素遺伝子は36番目のアミノ酸残基がシステインに、198番目のアミノ酸残基がグリシンにそれぞれ置換した酵素をコードしていた。 また、該プラスミドDNAを用いてEscherichia coli DH5αを形質転換して得られた3種の形質転換体を100μg/mlのアンピシリンを含むLB培地にて培養後、培養物から粗酵素抽出液を調製してCMP生成活性を測定した。結果を表5に示す。 表5から明らかなように、シトシンアナログである5−フルオロシトシンまたは2,5,6−トリアミノ4−ヒドロキシピリミジンに対する耐性を指標として取得した3株(FC35−1、FC35−2、TA35−1)の生産するUPRTase変異酵素には、鋳型とした変異酵素が有する2個のアミノ酸残基の置換変異(M141L G205D)に加えて、新たに1または2個のアミノ酸残基の置換変異が見いだされ、該変異酵素のCMP生成活性は鋳型とした変異酵素発現株と比較して1.8から40倍に上昇していた。 例9部位特異的変異による活性上昇変異酵素の取得と評価 Escherichia coli由来のUPRTaseのホモロジーモデルを、Bacillus caldolyticus由来のUPRTaseのUMP複合体構造(PDBコード1I5E)を鋳型とし、プログラムInsight97によって作成した。 次にプログラムCHARMM22の分子力場を用い、エネルギー極小化させたUMP結合体モデルを作成した。該モデルを基に、M141L G205D変異酵素のCMP複合体モデルを作成し、エネルギー極小化を行った。この複合体モデルでは、CMPのH5/H6付近に空隙が見られたことから、この空隙を埋めるために143番目のアラニン残基をバリン、ロイシン、イソロイシンなどの嵩高い疎水性アミノ酸に置換することによりCMPとの結合の上昇が期待された。 そこで、部位特異的変異導入により143番目のアラニン残基をバリンに置換する目的で、配列番号16で表される塩基配列に基づき、アラニン残基をコードするコドン(GCA)をバリン残基をコードするコドン(GTT)に置換した塩基配列(配列番号24で表される塩基配列)を有するDNA、および該塩基配列と相補的な相補配列(配列番号25で表される塩基配列)からなるDNAを合成した。 配列番号25および21で表される塩基配列からなるDNA、並びに配列番号24および22で表される塩基配列からなるDNAをそれぞれプライマーセットとして用い、TA35−1株が保持するプラスミドDNAを鋳型として、Pyrobest DNAポリメラーゼを使用してPCRを行った。 上記PCRで得られた約0.5kbおよび約0.3kbの増幅DNA断片産物をアガロースゲル電気泳動した後、精製した。 次に上記で得られた2種の増幅DNA断片を混合したものを鋳型とし、配列番号21および22で表される塩基配列からなるDNAをプライマーセットとして用いてPCRを行った。 上記PCRで得られた約0.8kbの増幅DNA断片をアガロースゲル電気泳動した後、精製し、EcoRIおよびBamHIで切断した。 該DNA断片を、同じくEcoRIおよびBamHIで切断した発現ベクターpTrc99Aと結合し、得られた結合産物を用いてEscherichia coli DH5α株を形質転換し、アンピシリン耐性を指標にして形質転換体を選択した。 該形質転換体からプラスミドDNAを抽出し、UPRTase構造遺伝子部分の塩基配列を常法により決定することにより、143番目のアラニン残基がバリンに置換した変異酵素をコードするDNAが取得されていることを確認し、該プラスミドDNAをpA143VTA35−1と命名した。 次に、該形質転換体を100μg/mlのアンピシリンを含むLB培地で培養し、培養物から粗酵素抽出液を調製してCMP生成活性を測定したところ、もとのTA35−1株が生産する変異酵素と比較して約2.5倍比活性が上昇していた。 例10活性上昇変異酵素の取得とその評価(その2) 例9で取得したA143VTA35−1株が保持するプラスミドDNAを鋳型とし、配列番号21で表される塩基配列からなるDNA、および配列番号22で表される塩基配列からなるDNAをプライマーセットとして用いて、Recombinant Taq DNA ポリメラーゼ(タカラバイオ社製)を使用して、0.3mmol/l MgCl2の共存下でエラープローンPCRを行った。 例8と同様に、得られた約0.8kbの増幅DNA断片をアガロースゲル電気泳動した後、Qiagen Gel Extraction Kitを用いて精製した後、EcoRIおよびBamHIで切断した。 該DNA断片を、同じくEcoRIおよびBamHIで切断した発現ベクターpTrc99Aと結合し、得られた結合体を用いてEscherichia coli MC1000 ΔcodA Δcdd ΔpyrG::Km株を形質転換した。 アンピシリン耐性を指標に形質転換体を選択し、得られた形質転換体を40mg/lの5−フルオロシトシンまたは50mg/lの5−メチルシトシンを含むM9最少寒天培地(シトシン40mg/Lと100μg/mlのアンピシリンを含む)上に約15000株ずつそれぞれレプリカして生育を調べた。 その結果、5−フルオロシトシンを含むプレート上で1株(FC−5と命名)、5−メチルシトシンを含むプレート上で2株(MC−8、MC−21と命名)がコロニーを形成した。 FC−5、MC−8およびMC−21株よりそれぞれプラスミドDNAを抽出し、UPRTase構造遺伝子部分の塩基配列を決定したところ、FC−5株が保持する変異型酵素遺伝子は167番目のアミノ酸残基がアラニンに、MC−8株が保持する変異型酵素遺伝子は46番目のアミノ酸残基がアスパラギンに、FC−5株が保持する変異型酵素遺伝子は121番目のアミノ酸残基がイソロイシンに、それぞれ置換した酵素をコードしていた。 また、該プラスミドDNAを用いてEscherichia coli DH5αを形質転換して得られた3種の形質転換体を100μg/mlのアンピシリンを含むLB培地にて培養後、培養物から粗酵素抽出液を調製してCMP生成活性を測定した。結果を表6に示す。 表6から明らかなように、シトシンアナログである5−フルオロシトシンまたは5−メチルシトシンに対する耐性を指標として取得した3株(FC−5、MC−8およびMC−21)の生産するUPRTase変異酵素には、鋳型とした変異酵素が有する4個のアミノ酸残基の置換変異(M141L、G205D、R36C、E198G)に加えて、新たに1個のアミノ酸残基の置換変異が見いだされ、該変異酵素のCMP生成活性は鋳型とした変異酵素発現株と比較して1.3から2.3倍に上昇していた。 例11コリネバクテリウム・アンモニアゲネスを宿主としたCMP生産菌の造成 塩基からヌクレオチドへのサルベージ合成を行う場合、コリネバクテリウム・アンモニアゲネスはPRPP供給能力が高く、工業化実績も豊富であることから、生産反応の宿主として好適である。そこでコリネバクテリウム・アンモニアゲネスでUPRTase変異酵素を発現するプラスミドを以下のようにして構築した。 例9で取得したプラスミドpA143VTA35−1を鋳型とし、配列番号26で表される塩基配列からなるDNAと配列番号13で表される塩基配列からなるDNAをプライマーセットとして用いてPCRを行った。 得られた約0.7kbの増幅DNA断片をアガロースゲル電気泳動後、Qiagen Gel Extraction Kitを用いて精製し、SalIおよびBamHIで切断した。 また、コリネ型細菌で発現するプロモーター配列p54−6(GenBank AJ132582)を含む、配列番号27で表される塩基配列を有するDNA断片を、プラスミドベクターpCS299P(特願平11−110437:WO00/63388)のSse8387I−BamHI部位に挿入して取得した発現ベクターpRI109を、同じくSalIおよびBamHIで切断し、上記したDNA断片と結合した。得られた結合物を用いてEscherichia coli DH5α株を形質転換し、カナマイシン耐性を指標として形質転換体を選択した。 得られた形質転換体からプラスミドDNAを抽出し、制限酵素切断解析および塩基配列解析を行い、目的とする変異型UPRTase遺伝子を含む約0.7kbのDNA断片が挿入された構造を有するプラスミドDNAが取得されていることを確認し、該プラスミドDNAをpRA143VTA35−1と命名した。 次にCorynebacterium ammoniagenes ATCC21170株にプラスミドpRA143VTA35−1を、電気穿孔法〔FEMS Microbiology letters,65,299(1989)〕により導入し、カナマイシン耐性を指標にして形質転換体を選択し、得られた形質転換体をコリネバクテリウム・アンモニアゲネス ATCC21170/pRA143VTA35−1と命名した。 例12CMP生産試験(1) 例11で取得したCorynebacterium ammoniagenes ATCC21170/pRA143VTA35−1株を20μg/mlのカナマイシンを含む種培地1〔グルコース50g、ポリペプトン(日本製薬社製)10g、イーストエキス(日本製薬社製)10g、尿素5g、硫酸アンモニウム5g、リン酸二水素カリウム1g、リン酸水素二カリウム3g、硫酸マグネシウム・七水和物1g、硫酸鉄・七水和物10mg、硫酸亜鉛・七水和物10mg、塩化カルシウム・二水和物100mg、硫酸マンガン・五水和物20mg、L−システイン20mg、D−パントテン酸カルシウム10mg、ビタミンB15mg、ニコチン酸5mgおよびビオチン30μgを水1Lに含み、pH7.2に調整した培地〕が10mlの入った大型試験管に一白金耳接種し、30℃、24時間、300rpmにて往復振盪培養した。 次に、得られた培養物4mlを上記と同一組成の液体培地が250ml入った2L容バッフル付三角フラスコに接種し、30℃、24時間、190rpmにて回転振盪培養した。 得られた培養物全量を種培地2〔グルコース100g、エルリッヒカツオエキス(極東製薬工業社製)10g、ポリペプトン10g、リン酸二水素カリウム1g、リン酸水素二カリウム1g、硫酸マグネシウム・七水和物1g、硫酸鉄・七水和物20mg、硫酸亜鉛・七水和物10mg、塩化カルシウム・二水和物100mg、硫酸マンガン・五水和物4.1mg、β−アラニン15mg、L−システイン20mg、ビオチン100μg、尿素2g(別殺菌)およびビタミンB15mg(別殺菌)を水0.9Lに含み、pH7.2に調整した培地〕が2.25L入った5L容発酵槽に接種し、32℃、通気量2.5L/分、600rpmにて、濃アンモニア水でpH6.8に調整しつつ通気攪拌培養した。 培養液上清中のグルコースが消費された時点で培養液250mlを無菌的に採取し、生産培地〔グルコース150g、リン酸二水素カリウム10g、リン酸水素二カリウム10g、硫酸マグネシウム・七水和物5g、硫酸鉄・七水和物20mg、硫酸亜鉛・七水和物10mg、塩化カルシウム・二水和物100mg、硫酸マンガン・五水和物20mg、硫酸銅・五水和物5mg、ニコチン酸5mg、β−アラニン15mg、グルタミン酸1g、L−システイン20mg、ビオチン100μg、尿素2g(別殺菌)およびビタミンB15mg(別殺菌)を水0.9Lに含み、pH6.8に調整した培地〕2.25Lが入った5L容発酵槽に接種し、32℃、通気量2.5L/分、600rpmにて、濃アンモニア水でpH6.8に調整しつつ通気攪拌培養した。 培養液上清中のグルコースが消費された時点で、培養物40mlを採取し250ml容マイクロジャー(エイブル社製、BMJ−25)に入れ、これにグルコース5.2g、シトシン300mg、サニゾールB−50 120mgを添加し、32℃、通気量20ml/分、1100rpmにて、4mol/l KOHでpH7.6に調整しつつCMP生産反応を行った。その結果、反応開始から24時間でCMPが21.5g/L(58.7mmol/l)生成した。このときCDP,CTPの副生はそれぞれ1.6mmol/l、0mmol/lであり、添加したシトシンからCMPへの転換率は約87%であった。 例13CMP生産試験(2) 例9で得られたEscherichia coli DH5α/pA143VTA35−1株を100μg/mlのアンピシリンを含むLB培地が10ml入った大型試験管に一白金耳接種し、30℃、18時間、300rpmにて往復振盪培養した。次に、得られた培養物3mlを100μg/mlのアンピシリンを含むLB培地が300ml入った2L容バッフル付三角フラスコに接種し、30℃、20時間、190rpmにて回転振盪培養した。培養終了後、培養物を遠心分離して菌体を取得した。 一方、Corynebacterium ammoniagenes ATCC21170株をカナマイシンを含まない条件下で例9と同じ方法で5L容発酵槽にて培養した。得られた培養物40mlを250ml容マイクロジャーに入れ、これに上記で取得したEscherichia coli DH5α/pA143VTA35−1株の菌体600mg(湿重量)、グルコース4.0g、シトシン400mg、サニゾールB−50 120mgを添加し、32℃、通気量20ml/分、1100rpmにて、4mol/l KOHでpH7.6に調整しつつCMP生産反応をおこなった。その結果、反応開始から24時間でCMPが14g/L(40mmol/l)生成した。 例14CTP生産試験(1)オロット酸からのCTP生産 Escherichia coli MM294株にSaccharomyces cerevisiae由来のCholine−phosphate cytidylyltransferaseおよびCholine kinase遺伝子とEscherichia coli由来のCTP synthase遺伝子を発現するプラスミドpCKG55を導入したMM294/pCKG55株(特開平5−276974号公報、FERM BP−3717)をアンピシリン50mg/Lを含むL培地[バクトトリプトン(ディフコ社製)10g/L、酵母エキス(ディフコ社製)5g/L、塩化ナトリウム5g/Lを含みpHを7.2に調整した培地]200mlの入った2Lバッフル付き三角フラスコに接種し、25℃にて24時間220rpmにて回転振とう培養した。この培養液20mlを、グルコース5g/L(別殺菌)、ペプトン(極東製薬工業社製)5g/L、リン酸水素二ナトリウム6g/L、リン酸二水素カリウム3g/L、塩化アンモニウム1g/L、硫酸マグネシウム・七水和物250mg/L(別殺菌)およびビタミンB1 4mg/L(別殺菌)の組成からなる液体培地(pH無調整)2.5Lの入った5L容培養槽に接種し、培養温度28℃、攪拌600rpm、通気量2.5L/minの培養条件下、14%アンモニア水を用いてpH7.0に調整しつつ培養を行った。 上記種培養液の上清中のグルコースが消費された時点で、培養液を250ml無菌的に採取し、グルコース5g/L(別殺菌)、ペプトン(極東製薬工業社製)5g/L、リン酸水素二ナトリウム6g/L、リン酸二水素カリウム3g/L、塩化アンモニウム1g/L、硫酸マグネシウム・七水和物250mg/L(別殺菌)およびビタミンB1 4mg/L(別殺菌))の組成からなる液体培地(pH無調整)2.5Lの入った5L容培養槽に接種し、培養温度28℃、攪拌600rpm、通気量2.5L/minの培養条件下、14%アンモニア水を用いてpH7.0に調整しつつ培養を行った。 培養中、培養11時間目から24時間目までの間、グルコース167g/L、ペプトン167g/Lの組成からなるフィード液をペリスタポンプにより30ml/hの速度にて添加した。 例11で得られたコリネバクテリウム・アンモニアゲネスATCC21170株培養液500mlおよびEscherichia coli MM294/pCKG55株培養液185mlをそれぞれ2L容培養槽に入れ、グルコース48g、硫酸マグネシウム・七水和物6.25g、リン酸二水素カリウム40g、キシレン14ml、オロット酸5gを添加し反応液とした。この反応液を、30℃にて攪拌800rpm、通気量0.3L/minの条件下、10mol/lのKOHにてpHを7.4に保ちつつCTP生産反応を行い、生成したCTPをHPLCにより定量した。その結果、反応開始から20時間でCTPが4.0g/L(7.27mmol/l)生成した。 (2)シトシンからのCTP生産 例11と同様にコリネバクテリウム・アンモニアゲネス ATCC21170/pRA143VTA35−1株を培養し、上清中のグルコースが消費された時点で培養を終了した。2L容培養槽にコリネバクテリウム・アンモニアゲネス ATCC21170/pRA143VTA35−1株の培養液500ml、グルコース48g、硫酸マグネシウム・七水和物6.25g、リン酸二水素カリウム40g、キシレン14ml、シトシン5gを添加し反応液とした。この反応液を、30℃にて攪拌800rpm、通気量0.3L/minの条件下、10mol/lのKOHにてpHを7.4に保ちつつCTP反応を行い、生成したCTPをHPLCにより定量した。その結果、反応開始から20時間でCTPが14.0g/L(25.4mmol/l)生成した。 例15CDP−コリン生産試験 例11と同様にコリネバクテリウム・アンモニアゲネス ATCC21170/pRA143VTA35−1株を培養し、上清中のグルコースが消費された時点で培養を終了した。2L容培養槽にコリネバクテリウム・アンモニアゲネス ATCC21170/pRA143VTA35−1株の培養液500ml、Escherichia coli MM294/pCKG55株培養液185ml、グルコース48g、塩化コリン8.4g、硫酸マグネシウム・七水和物6.25g、リン酸二水素カリウム40g、キシレン14ml、シトシン5gを添加し、反応液とした。この反応液を、30℃にて攪拌800rpm、通気量0.3L/minの条件下、10mol/lのKOHにてpHを7.4に保ちつつCDP−コリン生産反応を行い、生成したCDP−コリンをHPLCにより定量した。その結果、反応開始から20時間でCDP−コリンが0.5g/L(1.02mmol/l)生成した。 例16CMP−シアル酸生産試験(1) Escherichia coli由来CMP−シアル酸シンターゼ発現株の調製 発現ベクターpTrS32(FERM BP−5408)をPstIおよびHindIIIで酵素消化し、3.5kbのDNA断片を回収し、同様にpKYP10(特開昭58−110600号公報)をPstIおよびHindIIIで酵素消化し、1.0kbの断片を回収した。該3.5kbと1.0kbの断片を連結し、4.5kbのpTrS31を取得した。 pTrS31をClaIおよびPstIで酵素消化し得られた3.5kbのDNA断片と、pPAC1(FERM BP−6054,WO 98/12343)をClaIおよびPstIで酵素消化して得られた2.3kbのDNA断片とを連結し、5.8kbのpNT22を取得した。 配列番号28および29で表される塩基配列を有する合成DNAを用いて、Escherichia coli K235株(ATCC13027)の染色体DNAより、CMP−シアル酸シンターゼ遺伝子neuAを含むDNA断片を下記方法で増幅した。 上記合成DNAをプライマーセットとして、Pyrobest DNAポリメラーゼを用いてPCRを行った。該PCR反応液の1/10量をアガロースゲル電気泳動し、目的の断片が増幅されていることを確認後、残りの反応液と等量のTE[10mmol/l Tris−HCl、1mmol/l EDTA(pH8.0)]飽和フェノール/クロロホルム(1vol/vol)を添加し、混合した。 該混合液を遠心分離後、得られた上層に2倍容量の冷エタノールを加えて混合し、−80℃に30分間放置した。該溶液を遠心分離しDNAの沈殿を取得し、該DNAの沈殿を20μlのTEに溶解した。該溶解液5μlを用い、DNAを制限酵素HindIIIおよびBamHIで切断し、アガロースゲル電気泳動によりDNA断片を分離した後、1.3kbの断片を回収した。 pBluescript II SK(+)(ストラタジーン社製)0.2μgを制限酵素HindIIIおよびBamHIで切断後、アガロースゲル電気泳動によりDNA断片を分離し、同様に2.9kbのDNA断片を回収した。 該1.3kbおよび2.9kbの断片をライゲーションキットを用いて、16℃で16時間、連結反応を行った。該連結反応液を用いてEscherichia coli NM522を公知の方法に従って形質転換し、得られた形質転換体を50μg/mlのアンピシリンを含むLB寒天培地に塗布後、30℃で一晩培養した。 生育した形質転換体を50μg/mlのアンピシリンを含むLB液体培地にて30℃で一晩培養して得られた培養物から、クラボウ社製自動核酸分離装置PI50を用いてプラスミドを抽出した。 得られたプラスミドに含まれるPCR増幅断片の塩基配列を常法により決定したところ、GenBank ACCESSION No.J05023に記載のEscherichia coli由来のCMP−シアル酸シンターゼをコードするneuAと同じ塩基配列であった。 該プラスミドをClaIおよびBamHIで切断後、アガロースゲル電気泳動によりDNA断片を分離し、1.3kbのDNA断片を回収した。 pNT22 0.2μgを制限酵素ClaIおよびBamHIで切断後、アガロースゲル電気泳動によりDNA断片を分離し、同様に5.5kbのDNA断片を回収した。 該1.3kbおよび5.5kbの断片をライゲーションキットを用いて、16℃で16時間、連結反応を行った。該連結反応液を用いてEscherichia coli NM522を公知の方法に従って形質転換し、形質転換体を50μg/mlのアンピシリンを含むLB寒天培地に塗布後、30℃で一晩培養した。 生育した形質転換体を50μg/mlのアンピシリンを含むLB液体培地にて30℃で一晩培養して得られた培養物から、PI50を用いてプラスミドを抽出した。該プラスミドの構造を制限酵素消化によって確認し、該プラスミドをpTA23と命名した。 Escherichia coli NM522をpTA23を用いて再度形質転換し、得られた形質転換体をEscherichia coli NM522/pTA23と命名した。 (2)CMP−シアル酸生産試験 一方、Escherichia coli NM522/pTA23をアンピシリン50μg/Lを含むL培地[バクトトリプトン(ディフコ社製)10g/L、酵母エキス(ディフコ社製)5g/L、塩化ナトリウム5g/Lを含みpHを7.2に調整した培地]200mlの入った2Lバッフル付き三角フラスコに接種し、25℃にて24時間220rpmにて回転振とう培養した。この培養液20mlを、グルコース5g/L(別殺菌)、ペプトン(極東製薬工業社製)5g/L、リン酸水素二ナトリウム6g/L、リン酸二水素カリウム3g/L、塩化アンモニウム1g/L、硫酸マグネシウム・七水和物250mg/L(別殺菌)およびビタミンB1 4mg/L(別殺菌)の組成からなる液体培地(pH無調整)2.5Lの入った5L容培養槽に接種し、培養温度28℃、攪拌600rpm、通気量2.5L/minの培養条件下、14%アンモニア水を用いてpH7.0に調整しつつ培養を行った。 上記種培養液の上清中のグルコースが消費された時点で、培養液を250ml無菌的に採取し、グルコース5g/L(別殺菌)、ペプトン(極東製薬工業社製)5g/L、リン酸水素二ナトリウム6g/L、リン酸二水素カリウム3g/L、塩化アンモニウム1g/L、硫酸マグネシウム・七水和物250mg/L(別殺菌)およびビタミンB1 4mg/L(別殺菌))の組成からなる液体培地(pH無調整)2.5Lの入った5L容培養槽に接種し、培養温度28℃、攪拌600rpm、通気量2.5L/minの培養条件下、14%アンモニア水を用いてpH7.0に調整しつつ培養を行った。 培養中、培養11時間目から24時間目までの間、グルコース167g/L、ペプトン167g/Lの組成からなるフィード液をペリスタポンプにより30ml/hの速度にて添加した。 例11と同様にコリネバクテリウム・アンモニアゲネス ATCC21170/pRA143VTA35−1株を培養し、上清中のグルコースが消費された時点で培養を終了した。2L容培養槽にコリネバクテリウム・アンモニアゲネス ATCC21170/pRA143VTA35−1株の培養液500mlとEscherichia coli NM522/pTA23株の培養液185ml、フラクトース48g、硫酸マグネシウム・七水和物6.25g、リン酸二水素カリウム40g、キシレン14ml、シトシン5g、シアル酸14gを添加した。これら混合液を、30℃にて攪拌800rpm、通気量0.3L/minの条件下、10mol/lのKOHにてpHを7.4に保ちつつCMP−シアル酸反応を行い、生成したCMP−シアル酸をHPLCにより定量した。その結果、反応開始から20時間でCMP−シアル酸が4.5g/L(7.07mmol/l)生成した。 本発明により、シトシンからCMPを生成する活性を有する蛋白質を得ることができる。この蛋白質を用いてCMPを安価、かつ効率よく生産することができる。 配列表フリーテキスト 配列番号1−人工配列の説明:変異蛋白質配列番号2−人工配列の説明:変異蛋白質配列番号3−人工配列の説明:変異DNA配列番号4−人工配列の説明:変異DNA配列番号5−人工配列の説明:変異DNA配列番号7−人工配列の説明:合成DNA配列番号8−人工配列の説明:合成DNA配列番号10−人工配列の説明:合成DNA配列番号11−人工配列の説明:合成DNA配列番号13−人工配列の説明:合成DNA配列番号14−人工配列の説明:合成DNA配列番号17−人工配列の説明:合成DNA配列番号18−人工配列の説明:合成DNA配列番号19−人工配列の説明:合成DNA配列番号20−人工配列の説明:合成DNA配列番号21−人工配列の説明:合成DNA配列番号22−人工配列の説明:合成DNA配列番号23−人工配列の説明:合成DNA配列番号24−人工配列の説明:合成DNA配列番号25−人工配列の説明:合成DNA配列番号26−人工配列の説明:合成DNA配列番号28−人工配列の説明:合成DNA配列番号29−人工配列の説明:合成DNA配列番号30−人工配列の説明:変異蛋白質配列番号34−人工配列の説明:合成DNA配列番号35−人工配列の説明:合成DNA配列番号36−人工配列の説明:合成DNA配列番号37−人工配列の説明:合成DNA配列番号38−人工配列の説明:変異蛋白質 シトシンからシチジン5’−モノリン酸(CMP)を生成する活性を有する蛋白質の製造方法であって、下記工程を含む方法:[1]ウラシルからウリジン5’−モノリン酸(UMP)を生成する活性を有する蛋白質(UPRTase)の三次元構造情報の一部又は全体を用いてコンピュータ上でUPRTaseにおけるUMP結合部位にCMPを適合させて作成されるUPRTaseとCMPとの複合体モデルを安定化させる、UPRTaseのアミノ酸配列におけるアミノ酸の欠失、置換及び/又は付加を1個以上選択する工程;[2]工程[1]で選択された欠失、置換及び/又は付加を含むUPRTaseの変異蛋白質を製造する工程。 シトシンからシチジン5’−モノリン酸(CMP)を生成する活性を有する蛋白質の製造方法であって、下記工程を含む方法:[11]ウラシルからウリジン5’−モノリン酸(UMP)を生成する活性を有する蛋白質(UPRTase)の三次元構造情報の一部又は全体を用いてコンピュータ上でUPRTaseにおけるUMP結合部位にCMPを適合させて作成されるUPRTaseとCMPとの複合体モデルを安定化させる、UPRTaseのアミノ酸配列におけるアミノ酸の欠失、置換及び/又は付加を1個以上選択する工程;[12]前記複合体モデルの一部又は全体を用いてコンピュータ上で作成される該複合体の多量体モデルを安定化させる、UPRTaseのアミノ酸配列におけるアミノ酸の欠失、置換及び/又は付加を1個以上選択する工程;[13]工程[11]および[12]で選択された欠失、置換及び/又は付加を含むUPRTaseの変異蛋白質を製造する工程。 請求項1又は2に記載の方法により得られる蛋白質。 配列番号15に記載のアミノ酸配列において、1乃至数個のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加されているアミノ酸配列を有し、シトシンからCMPを生成する活性を有し、かつ下記アミノ酸置換を1個以上含む蛋白質:表1に記載の三次元座標原子座標であらわされる配列番号15に記載のアミノ酸配列からなりかつウラシルからUMPを生成する活性を有する蛋白質(UPRTase)の三次元構造情報の一部又は全体を用いてコンピュータ上で作成されるUPRTaseとUMPとの複合体モデルにおいて、UMPのピリミジン環4位のオキソ基の酸素原子から10Åの範囲に構成原子が存在するアミノ酸の置換であって、前記複合体モデルのUMPのオキソ基をアミノ基に変換することによりコンピュータ上で作成されるUPRTaseとCMPとの複合体モデルを安定化させるアミノ酸への置換。 前記のアミノ酸置換が配列番号15に記載のアミノ酸配列の205位のグリシンの置換である請求項4に記載の蛋白質。 前記のアミノ酸置換が配列番号15に記載のアミノ酸配列の205位のグリシンのアスパラギン酸又はグルタミン酸への置換である請求項4に記載の蛋白質。 前記のアミノ酸置換が配列番号15に記載のアミノ酸配列の201位のチロシン及び204位のプロリンの置換である請求項4に記載の蛋白質。 前記のアミノ酸置換が配列番号15に記載のアミノ酸配列の201位のチロシンのリジンへの置換及び204位のプロリンのロイシンへの置換である請求項4に記載の蛋白質。 前記のUPRTaseとUMPとの複合体モデルにおいてUMPを構成するいずれかの原子から10Åの範囲に構成原子が存在するアミノ酸の置換(ただしUMPのピリミジン環4位のオキソ基の酸素原子から10Åの範囲に構成原子が存在するアミノ酸の置換を除く)であって、前記のUPRTaseとCMPとの複合体モデルを安定化させるアミノ酸への置換を1個以上含む請求項4〜8のいずれか一項に記載の蛋白質。 表1に記載の三次元座標原子座標であらわされる配列番号15に記載のアミノ酸配列からなりかつウラシルからUMPを生成する活性を有する蛋白質(UPRTase)の三次元構造情報の一部又は全体を用いてコンピュータ上で作成されるUPRTaseとホスホリボシルピロリン酸(PRPP)との複合体モデルにおいてPRPPを構成するいずれかの原子から10Åの範囲に構成原子が存在するアミノ酸の置換であって、該複合体モデルを安定化させるアミノ酸への置換を1個以上含む請求項4〜8のいずれか一項に記載の蛋白質。 前記のUPRTaseとCMPとの複合体モデルの一部又は全体を用いてコンピュータ上で作成される複合体の多量体モデルにおいて、隣接するUPRTase単量体のいずれかの原子から5Å以内に構成原子が存在するアミノ酸 及び隣接するUPRTase単量体の66位Trpのいずれかの構成原子から5Å以内に構成原子が存在するアミノ酸からなる群から選択されるアミノ酸の置換であって、該多量体モデルを安定化させるアミノ酸への置換を1個以上含む請求項4〜10のいずれか一項に記載の蛋白質。 シトシンからシチジン5’−モノリン酸(CMP)を生成する活性を有する、配列番号1、2、または30で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質。 配列番号1、2、または30で表されるアミノ酸配列において、36番目、94番目、102番目、141番目、143番目および198番目のアミノ酸残基から選ばれる1以上のアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換したアミノ酸配列を有し、かつシトシンからCMPを生成する活性を有する蛋白質。 36番目のアミノ酸残基がシステイン、94番目のアミノ酸残基がチロシン、102番目のアミノ酸残基がシステイン、141番目のアミノ酸残基がロイシン、143番目のアミノ酸残基がバリン、または198番目のアミノ酸残基がグリシンに置換したアミノ酸配列を有する請求項12記載の蛋白質。 配列番号1、2、または30で表されるアミノ酸配列において、36番目、46番目、94番目、102番目、121番目、141番目、143番目、167番目および198番目のアミノ酸残基から選ばれる1以上のアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換したアミノ酸配列を有し、かつシトシンからCMPを生成する活性を有する蛋白質。 請求項12〜15のいずれか1項に記載の蛋白質のアミノ酸配列において、36番目、94番目、102番目、141番目、143番目、198番目、201番目、204番目および205番目以外のアミノ酸残基から選ばれる1以上のアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換したアミノ酸配列を有し、かつシトシンからCMPを生成する活性を有する蛋白質。 請求項12〜15のいずれか1項に記載の蛋白質のアミノ酸配列において、36番目、46番目、94番目、102番目、121番目、141番目、143番目、167番目、198番目、201番目、204番目および205番目以外のアミノ酸残基から選ばれる1以上のアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換したアミノ酸配列を有し、かつシトシンからCMPを生成する活性を有する蛋白質。 以下の[1]または[2]記載のDNA。[1]請求項3〜17のいずれかに記載の蛋白質をコードするDNA[2]配列番号3〜5のいずれかで表される塩基配列を有するDNA 請求項18に記載のDNAを含む組換え体DNA。 請求項19記載の組換え体DNAを保有する微生物。 微生物がエッシェリヒア属、コリネバクテリウム属またはブレビバクテリウム属に属する微生物である、請求項20記載の微生物。 請求項20または21に記載の微生物の培養物または該培養物の処理物、シトシン、リン酸基供与体およびエネルギー供与体を水性媒体中に存在せしめ、該媒体中にCMPを生成、蓄積させ、該媒体からCMPを採取することを特徴とするCMPの製造法。 請求項20または21に記載の微生物の培養物または該培養物の処理物、コリネバクテリウム属に属する微生物の培養物または該培養物の処理物、シトシン、リン酸基供与体およびエネルギー供与体を水性媒体中に存在せしめ、該媒体中にCMPを生成、蓄積させ、該媒体からCMPを採取することを特徴とするCMPの製造法。 コリネバクテリウム属に属する微生物がコリネバクテリウム・アンモニアゲネスである、請求項23記載の製造法。 請求項20または21に記載の微生物の培養物または該培養物の処理物、シトシン、リン酸供与体およびエネルギー供与体を水性媒体中に存在せしめ、該媒体中に生成するCMPを用いることを特徴とする、有用物質の製造法。 本発明により、シトシンからシチジン5’−モノリン酸(CMP)を生成する活性を有する、配列番号1、2、または30で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質、および配列番号1、2、または30で表されるアミノ酸配列において、36番目、46番目、94番目、102番目、121番目、141番目、143番目、167番目、および198番目のアミノ酸残基から選ばれる1以上のアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換したアミノ酸配列を有する蛋白質が提供される。 配列表20080821A1633001671 【0167】【配列表】