タイトル: | 再公表特許(A1)_色素性皮膚病変治療剤 |
出願番号: | 2007000816 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | A61K 31/353,A61P 17/00,C07D 311/32 |
中山 樹一郎 JP WO2008020491 20080221 JP2007000816 20070731 色素性皮膚病変治療剤 関西酵素株式会社 591267785 加藤 久 100099508 久保山 隆 100093285 堀田 幹生 100116296 中山 樹一郎 JP 2006223367 20060818 A61K 31/353 20060101AFI20091204BHJP A61P 17/00 20060101ALI20091204BHJP C07D 311/32 20060101ALI20091204BHJP JPA61K31/353A61P17/00C07D311/32 AP(BW,GH,GM,KE,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MT,NL,PL,PT,RO,SE,SI,SK,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PG,PH,PL,PT,RO,RS,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,SV,SY,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,ZA,ZM,ZW 再公表特許(A1) 20100107 2008529819 11 4C062 4C086 4C062EE54 4C062EE56 4C086AA01 4C086AA02 4C086BA08 4C086MA01 4C086MA04 4C086NA14 4C086ZA89 本発明は、皮膚の母斑性皮膚疾患の色素性病変、あるいは上皮系細胞または神経性細胞の良性の増殖反応もしくは過形成からくる色素斑、神経線維腫の治療剤に関する。 母斑性性格を有する皮膚の色素性病変には表皮基底層のメラノサイトの増殖によるもの、真皮の様々なレベルでの異所性メラノサイトの増殖によるものがある。また、表皮の肥厚、炎症性皮膚疾患後の表皮メラノサイトの増殖からくる色素性病変もある。 レックリングハウゼン病あるいはレックリングハウゼン母斑症とも呼ばれる神経線維腫症の大レックリングハウゼン斑(カフェオレ斑)、小レックリングハウゼン斑は、病理組織学的には、基本的に扁平母斑とほぼ同じ変化を示す色素斑で、基底細胞層でのメラノサイトの増殖、機能亢進によるものである。 レックリングハウゼン病の主病変である神経線維腫は思春期から生じはじめ、社会的、家庭的な生活に支障をきたす。また、脳神経系にも過誤腫的な神経腫瘍を生じることもある。このようなレックリングハウゼン病の発生頻度は人口約3000人の出生について1人の割合であり、現在、日本には約4万人の患者がいると推定されているが、主要症候の神経線維腫は、切除する以外に方法はないとされている難病である。 このレックリングハウゼン病神経線維腫症について、本発明者はこれまでに種々の治療剤を提案している(特許文献1,2参照)。特開平8−119865号公報特開平8−268894号公報 神経線維腫は主にシュワン細胞と線維芽細胞様細胞からなっているが、現在のところ、その発生を予防あるいは抑制しうる画期的な治療剤はまだ見つかっていない。 そこで、本発明は、色素性皮膚病変に有効な治療剤を提供することを目的とする。 本発明者は、これまでの種々の鋭意研究の結果、クワ科植物であるアルトカルパス属植物から抽出精製しうることが知られているアルトカルピンが、上記の色素性皮膚病変に有効に作用することを発見し、本発明に至った。 すなわち、本発明の神経線維腫症治療剤は、アルトカルピンを有効成分として含有することを特徴とする。アルトカルピンが色素性皮膚病の病変細胞の増殖を抑制することについて詳細なメカニズムは未だ明らかではないが、アルトカルピンが病変細胞の細胞膜破壊に関わっていると考えられ、これが病変細胞の増殖抑制のメカニズムの1つとして考えられる。 本発明において、色素性皮膚病変とは、上述したレックリングハウゼン病カフェオレ斑や小レックリングハウゼン斑、神経線維腫に加え、基本的には表皮の加齢変化による過形成により生じるが臨床的には皮膚の色素性病変とみられる脂漏性角化症や老人性色素斑や、扁平母斑、色素性母斑、太田母斑、青色母斑、異所性蒙古斑などの母斑性色素異常症、炎症後色素沈着症等も指す。 アルトカルピンについては、皮膚癌、乳癌、白血病または子宮頚癌などの各種悪性癌に対して抗癌作用を示すことが特開2003−192590号公報にも記載されているが、本発明のような良性母斑性性格を有する皮膚色素性病変あるいはレックリングハウゼン病にみられる皮膚病変に対して有効、すなわち、アルトカルピンが神経線維腫細胞や正常細胞であるメラノサイトの増殖を抑制する作用を有することを示した報告はこれまでになされていない。 本発明の色素性皮膚病変治療剤は、薬理学的、製剤学的に許容される製造助剤等を用いて常法に従って製造することができる。本発明の色素性皮膚病変治療剤の投与方法は、例えば外用剤としての塗布等や経口剤、注射剤、坐剤が好ましく挙げられる。ここで外用剤としては、軟膏剤、クリーム剤、ローション剤、テープ剤等の各種形態が挙げられる。なお、前記外用剤とするには、例えば、アルコール、脂肪酸エステル等の溶解剤や溶解助剤、カルボキシビニルポリマー、多糖類等の粘着剤、乳化剤、安定剤等の製剤用成分を用いて製造することができる。経口剤としては、たとえば錠剤やカプセル剤等の各種形態が挙げられる。錠剤とするには、たとえば、乳糖、白糖、リン酸カルシウム等の賦形剤、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロース等の結合剤、デンプン、カンテン、ゼラチン粉末などの崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等の滑択剤等の製剤用成分を用いて製造することができる。また、カプセル剤とするには、たとえば、ゼラチン、精製水、単シロップ、アラビアゴム等の製剤用成分を用いて製造することができる。また、注射剤とするには、たとえば、注射用蒸留水、生理食塩水、プロピレングリコール等の溶解剤や溶解補助剤、pH調整剤、安定剤等の製剤用成分を用いて製造することができる。また、坐剤とするには、たとえば、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチン、ポリエチレングリコール等の製剤用成分を用いて製造することができる。 本発明の色素性皮膚病変治療剤の投与量は、投与方法、病変部分の大きさ、患者の年齢、性別、態様等に応じて適宜選択することができる。 本発明によれば、有効成分としてアルトカルピンを含み、このアルトカルピンがメラノサイトの増殖を抑制するので色素性皮膚病変に対して有効である。アルトカルピンを含まないワセリンを塗布したマウスの写真である。1%アルトカルピンを含むワセリンを塗布したマウスの写真である。10%アルトカルピンを含むワセリンを塗布したマウスの写真である。 以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。(実施例1) 商品化されているヒトメラノセルキット(倉敷紡績株式会社製)およびファイブロセルキット(倉敷紡績株式会社製)を用いてアルトカルピンの増殖抑制効果を下記の方法で検討した。 マルチウエルプレート(BECTON DICKINSON)の各ウエルにヒトメラノサイトおよびファイブロブラストをそれぞれ1〜1.5×104個播種し、それぞれ増殖因子を含む合成培養液で培養した。ここで、各ウエルには、DMSO(ジメチルスルホキシド)を溶媒として溶解させたアルトカルピンを、コントロール、2.5μg/ml,5.0μg/ml,10.0μg/ml,20.0μg/mlの各濃度で添加した。そして、1,3,5日間培養後、コウルターカウンターで各ウエル中の細胞数を測定した。なお、経時的な細胞数測定時にアルトカルピンを含む新しい培養液に交換した。 表1に、上記各細胞を用いた計3回の実験結果の平均値を示す。表1よりアルトカルピンがメラノサイトの増殖を特異的に強力に抑制することが明らかとなった。コントロールに対する細胞増殖抑制率(%)(3回の実験の平均値)(実施例2) レックリングハウゼン病患者の皮膚神経線維腫の切除標本より無菌的に細胞を初代培養した。2例の患者の神経線維腫より細胞株を採取し、実施例1で記載したアルトカルピンの各濃度による神経線維腫細胞の増殖抑制効果を検討した。培養液として、実施例1に記載した線維芽細胞(ファイブロブラスト)用の増殖因子を含む合成培養液と、10%FCSおよび1%抗生物質を含むMEM培養液を使用した。 表2に、レックリングハウゼン病患者由来の神経線維腫細胞に対する各培養液での増殖抑制率を示す。線維芽細胞用合成培養液では、神経線維腫細胞の増殖は、アルトカルピンによりほぼヒト線維芽細胞に対する効果と同等と考えられる。10%FCSを含むMEM培養液では、アルトカルピンの濃度依存性および経時的増殖抑制が若干明らかではないが、ほぼ線維芽細胞培養液での結果に類するものと考えられる。コントロールに対する神経線維腫細胞増殖抑制率(%)(2回の実験の平均値) (実施例3) サンプルとして、尾周辺を剃毛したマウス(C57black6mouse)を使用した。このマウスの剃毛部位に1%及び10%アルトカルピンを含むワセリンを塗布し、4週間後の皮膚色素への影響を観察した。アルトカルピンを含むワセリンの塗布量は2g/回、1回/日である。また、比較例として、アルトカルピンを含まないワセリンを塗布したマウスについて同様の観察を行った。 アルトカルピンを含むワセリンと含まないワセリンを塗布後に、皮膚の色を肉眼で観察し、アルトカルピンの動物皮膚の色素の減弱に対する有効性を評価した。 図1にアルトカルピンを含まないワセリンを塗布したマウスの写真を示す。皮膚の色は塗布前と同じく黒色であり、4週間塗布を続けても皮膚色素に変化は認められなかった。 一方、1%アルトカルピンを含むワセリンを塗布したマウスは塗布後数日目から皮膚色素の退色が確認された。図2に1%アルトカルピンを含むワセリンを4週間塗布後のマウスの写真を示すが、皮膚色素の退色が進行し、黒色の皮膚が肌色味を帯びるようになることが確認された。 また、同様に10%アルトカルピンを含むワセリンを塗布したマウスも、塗布後数日目から皮膚色素の退色が確認された。図3に10%アルトカルピンを含むワセリンを4週間塗布後のマウスの写真を示すが、上記の1%アルトカルピンを含むワセリンを塗布したマウスと比較して、皮膚色素の退色がさらに進行し、皮膚が白色味を帯びるようになることが確認された。 本試験の結果から、アルトカルピンに皮膚色素を退色させる効果があることは明らかであり、アルトカルピンは色素異常疾患の治療薬となりうることが示された。 上記実施例で明らかなように、アルトカルピンはメラノサイトの増殖を抑制するので、扁平母斑、色素性母斑、太田母斑、青色母斑、異所性蒙古斑などの母斑性色素異常症、炎症後色素沈着証、老人性色素斑などの各種色素性皮膚病変由来の細胞に対してもアルトカルピンは有効であるといえる。 本発明によれば、有効成分としてアルトカルピンを含み、このアルトカルピンがメラノサイトおよび神経線維腫細胞の増殖を抑制するのでレックリングハウゼン病カフェオレ斑や小レックリングハウゼン斑、神経線維腫、脂漏性角化症、老人性色素斑、扁平母斑、色素性母斑、太田母斑、青色母斑、異所性蒙古斑などの母斑性色素異常症、炎症後色素沈着症などの色素性皮膚病変の治療剤として有用である。 アルトカルピンを有効成分として含有する色素性皮膚病変治療剤。 剤形が外用剤、経口剤、注射剤、坐剤のいずれかである請求項1記載の色素性皮膚病変治療剤。 前記外用剤は、軟膏剤、クリーム剤、ローション剤またはテープ剤である請求項2記載の色素性皮膚病変治療剤。 色素性皮膚病変に有効な治療剤を提供する。アルトカルピンを有効成分として含有する色素性皮膚病変治療剤である。色素性皮膚病変としては、レックリングハウゼン病カフェオレ斑や小レックリングハウゼン斑、神経線維腫だけでなく、基本的には表皮の加齢変化による過形成により生じるが臨床的には皮膚の色素性病変とみられる脂漏性角化症や老人性色素斑や、扁平母斑、色素性母斑、太田母斑、青色母斑、異所性蒙古斑などの母斑性色素異常症、炎症後色素沈着症等が挙げられる。