タイトル: | 特許公報(B2)_乳製品及びその製造方法 |
出願番号: | 2006553031 |
年次: | 2011 |
IPC分類: | A23C 19/032,A23C 9/12,C12N 15/09 |
小寺 智博 中越 裕行 三輪 典子 中村 奈巳 若林 秀彦 JP 4711464 特許公報(B2) 20110401 2006553031 20060111 乳製品及びその製造方法 味の素株式会社 000000066 天野エンザイム株式会社 000216162 霜越 正夫 100064687 小寺 智博 中越 裕行 三輪 典子 中村 奈巳 若林 秀彦 JP 2005005854 20050113 20110629 A23C 19/032 20060101AFI20110609BHJP A23C 9/12 20060101ALI20110609BHJP C12N 15/09 20060101ALN20110609BHJP JPA23C19/032A23C9/12C12N15/00 A A23C JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) CA/BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN) 特開2001−120179(JP,A) 特開2000−014317(JP,A) 特開平11−042086(JP,A) 特許第3961956(JP,B2) 特開2000−050887(JP,A) 米国特許第03857967(US,A) 4 JP2006300574 20060111 WO2006075772 20060720 14 20081126 冨士 良宏本発明はタンパク質脱アミド酵素を用いた食感がなめらかで酸味、苦味の抑制された乳製品及びその製造方法に関するものである。 チーズ、ヨーグルト等の乳製品は、かつては日本人にとって馴染みの薄い食材であったが、近年では、その健康栄養上の機能より、喫食されるようになってきており、消費者の多様な嗜好に適応するべく様々な種類の乳製品が上市されている。 乳製品への酵素の利用については、チーズの凝乳酵素であるレンネットがよく知られているが、トランスグルタミナーゼをチーズに利用する方法(特開平8−173032号公報)やヨーグルトに利用する方法(特開平6−197688号公報)も知られている。タンパク質脱アミド酵素の利用については、特開2000−50887号公報には、タンパク質脱アミド酵素によりカゼインを脱アミド化し、分散性、溶解性を向上する方法、濃縮牛乳にトランスグルタミナーゼを作用させてプリン様食品を製造する際にトランスグルタミナーゼ反応を停止させる目的でタンパク質脱アミド酵素を添加する方法が開示されてぃる。特開2001−218590号公報には、タンパク質脱アミド酵素により乳カゼイネート、乳清蛋白質を脱アミド化し、泡沫特性、乳化特性、溶解性特許を向上させる方法が開示されている。特開2003−250460号公報には、タンパク質脱アミド酵素により、β−ラクトグロブリンを脱アミド化し、泡沫特性、乳化特性を向上させる方法が開示されている。しかし、これらの特許文献には、本発明の食感がなめらかで、酸味、苦味の抑制された乳製品、特に食感がなめらかで、酸味の抑制されたチーズ、ヨーグルトを得る方法について記載されていない。 本発明は、消費者の多様な嗜好性に対応するために、食感が滑らかで酸味の抑制された乳製品及びそれらの製造方法を提供するものである。本発明者らは、上記の課題に鑑み鋭意研究を行った結果、原料乳に、タンパク質脱アミド酵素を添加し、該原料乳中の乳タンパク質に作用させることにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下の通りである。 1.原料乳に、タンパク質脱アミド酵素を添加し、該原料乳中の乳タンパク質に作用させることを特徴とする乳製品の製造方法。 2.乳製品がチーズ又はヨーグルトであることを特徴とする前記1記載の方法。 3.タンパク質脱アミド酵素の添加量が、原料乳1Lに対して0.1〜500ユニットであることを特徴とする前記1又は2記載の方法。 4.前記1〜3のいずれかに記載の方法により得られたことを特徴とする乳製品。 本発明におけるタンパク質脱アミド酵素は、タンパク質のアミド基に直接作用してペプチド結合の切断及びタンパク質の架橋を伴わず脱アミドする作用を有する。当該作用を有する限りにおいてその種類は特に限定されるものではない。この様な酵素の例として、特開2000−50887号公報或いは特開2001−21850号公報に開示された酵素があるが、これらに特に限定されるものではない。タンパク質脱アミド酵素は、タンパク質脱アミド酵素を産生する微生物の培養液より調製したものを用いることができる。タンパク質脱アミド酵素の調製に用いられる微生物は特に限定されない。 微生物の培養液からのタンパク質脱アミド酵素の調製方法については、公知のタンパク質分離、精製方法(遠心分離、UF濃縮、塩析、イオン交換樹脂等を用いた各種クロマトグラフィー等)を用いることができる。例えば、培養液を遠心分離して菌体を除去し、その後塩析、クロマトグラフィー等を組み合わせて目的の酵素を得ることができる。菌体内から酵素を回収する場合には、例えば菌体を加圧処理、超音波処理などによって破砕した後、上記と同様に分離、精製を行うことにより目的の酵素を取得することができる。尚、ろ過、遠心処理などによって予め培養液から菌体を回収した後、上記一連の工程(菌体の破砕、分離、精製)を行ってもよい。酵素は凍結乾燥、減圧乾燥等の乾燥法により粉末化してもよいし、その際に適当な賦形剤、乾燥助剤を用いてもよい。 本発明のタンパク質脱アミド酵素の活性は、特開2000−50887号公報記載の方法を改良した方法、すなわち、下記の方法で測定する。(1)30mM Z−Gln−Glyを含む176mMリン酸バッファー(pH6.5)100μlにタンパク質脱アミド酵素を含む水溶液10μlを添加して、37℃で10分間インキュベートした後、12%TCA溶液100μlを加えて反応を停止させる。(2)このとき、酵素濃度が0.05mg/mlとなるように20mMリン酸バッファー(pH6.0)で適宜希釈し、遠心分離(12000rpm、4℃、5分間)後、上清についてF−kitアンモニア(Roche製)によるNH3の定量を行う。(3)試薬II液(F−kit付属品)100μlに上清10μlと0.1Mトリエタノールアミンバッファー(pH8.0)190μlを加え、室温で5分間放置後100μlを用いての340nmの吸光度を測定する。残りの200μlに、1.0μlの試薬III(F−kit付属、グルタメートデヒドロゲナーゼ)を加えた後、更に20分間室温に放置した後に残り200μlの340nmの吸光度を測定する。F−kitに付属のアンモニア標準液を用いて作成したアンモニア濃度と吸光度(340nm)の変化量の関係を表す検量線より、反応液中のアンモニア濃度を求める。(4)タンパク質濃度の測定は、プロテインアッセイCBB(クマシーブリリアントブルー)溶液(ナカライテスク製)を用い、検出波長595nmで測定する。Standardとして、BSA(Pierce)を用いる。(5)タンパク質脱アミド酵素の活性を以下の式により求める。比活性(U/mg)=(反応液中のアンモニア濃度(μmol/ml)×反応液量(ml)×酵素希釈率)÷(酵素量(ml)×タンパク質濃度(mg/ml)×反応時間(min)) 本発明における原料乳とは牛乳、水牛乳、山羊乳、羊乳、馬乳等喫食可能な乳を指す。また、殺菌された乳、乳脂肪分等成分調整した乳、希釈された乳、濃縮された乳、乾燥された乳、脱脂粉乳、脱脂粉乳溶液、加工乳もこれに含まれる。 本発明における乳製品とは、ナチュラルチーズ、プロセスチーズ、セットヨーグルト、スタードヨーグルト、ババロア、ミルクゼリー、プリン等乳を原料とした固形状、ゲル状食品を指す。 原料乳へのタンパク質脱アミド酵素の添加方法は、原料乳に単独であるいは他の原料とともに添加すればよい。タンパク質脱アミド酵素の反応条件(酵素量、反応の時間、温度、反応溶液のpHなど)は、特に限定されないが、添加量は原料乳1Lに対して0.1〜500ユニットが好ましく、0.1〜100ユニットがより好ましい。尚、希釈された乳、濃縮された乳、乾燥された乳、脱脂粉乳等の加工乳を用いる場合は、加工前の原料乳の容量に換算する。例えば、生乳1Lから100g得られる脱脂粉乳の場合、原料乳1Lに相当する脱脂粉乳100g当り0.1〜500ユニットが好ましく、0.1〜100ユニットがより好ましい。好ましい反応温度は、5〜80℃、より好ましくは20〜60℃であり、好ましい反応溶液のpHは2〜10、より好ましくは4〜8である。好ましい反応時間は10秒〜48時間、より好ましくは10分〜24時間である。また、これらの条件は、使用する酵素の純度やタンパク質の種類、純度などに応じて適宜変更ないし調整することができる。酵素反応後、加温などにより酵素失活して乳製品を製造しても良いし、レンネットと同様に特別な失活工程を行わなくても良い。 原料乳へタンパク質脱アミド酵素の添加、作用させて得られる、脱アミド化により改質された脱脂粉乳等の乳製品を、チーズ、ヨーグルト等他の乳製品の製造工程において添加してもよい。例えば、脱脂粉乳100g当り0.1〜500ユニット、好ましくは20〜100ユニット添加して得られる改質脱脂粉乳を生乳に対し1〜5%添加して滑らかさの付与されたヨーグルトを製造することができる。 以下に実施例を挙げ、本発明をさらに詳しく説明する。本発明は、この実施例により何ら限定されない。 本実施例では、タンパク質脱アミド酵素として、Chryseobacterium由来のプロテイングルタミナーゼを使用した。Chryseobacterium proteolyticum株由来プロテイングルタミナーゼ(EC.3.5.1)遺伝子の配列はすでに決定されている[Eur.J.Biochem.268.1410−1421(2001)]。この配列を参考にして、Corynebacterium glutamicumにおいて使用頻度の高いコドンへの変換を行い配列番号1に示した遺伝子配列を構築した。この配列はプロテイングルタミナーゼのシグナル配列(プレ部分)とプロ部分および成熟型プロテイングルタミナーゼをコードする領域を含んでいる。この全遺伝子配列を合成により作製した。構築した配列番号1の遺伝子配列情報に基づいて、配列番号5(5’−CATGAAGAACCTTTTCCTGTC−3’)と配列番号6(5’−GTAAAAGGATCCATTAATTAAAATCC−3’)に示した配列のプライマーを合成した。配列番号5に示したプライマーはプロテイングルタミナーゼのシグナル配列のN末端配列を含んでおり、配列番号6に示したプライマーは成熟型プロテイングルタミナーゼのC末端とBamHIの認識配列を含んでいる。配列番号1に示した配列を有するDNAを鋳型として配列番号5と配列番号6に示した配列のプライマーを用いてPCRを行い、プロテイングルタミナーゼのプロ部分および成熟型プロテイングルタミナーゼをコードする領域を増幅した。このPCR断片を特開平9−070291号公報記載のpVC7のSmaI部位に挿入した後E.coli JM109のコンピテントセル(宝酒造社製)に導入した。プロテイングルタミナーゼ遺伝子がクローン化されたプラスミドを保持する菌株を取得し、プラスミドを回収した。このプラスミドにクローン化された断片の塩基配列を決定し、配列番号1に示した配列と一致することを確認した。 大腸菌に由来するTorAシグナルペプチドを含むTorA遺伝子の配列は既に決定されている(Mol.Microbiol.11:1169−1179(1994))。この配列を参考にして、配列番号7(5’−ATGAACAATAACGATCTCTTTCAGG−3’)と配列番号8(5’−CCGGATCCTGGTCATGATTTCACCTG−3’)に示したプライマーを合成し、常法(斉藤、三浦の方法[Biochim.Biophys.Acta,72,619(1963)])に従って調製した大腸菌W3110株の染色体DNAを鋳型として、TorAをコードする領域およびその上流にあるシグナル配列を含む領域をPCR法にて増幅した。PCR反応はPyrobest DNA polymerase(宝酒造社製)を用い、反応条件は業者の推奨するプロトコルに従って行った。なお、配列番号8の配列は制限酵素BamHIの認識配列を含んでいる。TorAのシグナル配列をコードするDNA配列を配列番号3に示す。 国際公開パンフレットWO01/23591記載のプラスミドpPKSPTG1を鋳型としてプロモーターおよびシグナルペプチドをコードする領域を、配列番号9(5’−AAATTCCTGTGAATTAGCTGATTTAG−3’)、配列番号10(5’−AAGAGATCGTTATTGTTCATAGAGGCGAAGGCTCCTTGAATAG−3’)に示す配列を有するプライマーを用いてPCRを行うことにより増幅した。配列番号10の配列は、TorAシグナルペプチドをコードする遺伝子の5’末端の配列を含んでいる。次にこのPCR産物、並びに、配列番号7と配列番号8に示す配列を有するプライマーにより増幅されたTorAをコードする遺伝子配列およびその上流にあるシグナル配列を含む領域を含むPCR産物とを1:1で混合し、これらを鋳型とし、配列番号8と配列番号9に示した配列を有するプライマーによりクロスオーバーPCRを実施した。これによりPS2プロモーター領域を含む配列、TorAシグナル配列、およびTorAをコードする配列を含む融合遺伝子が増幅された。このクロスオーバーPCR産物を制限酵素ScaIおよびBamHIにて消化した後、アガロースゲル電気泳動により約3.1kbpのDNA断片を検出した。このDNA断片をアガロースゲルより切り出し、EasyTrapVer.2(宝酒造社製)を用いて回収し、特開平9−322774号公報記載のプラスミドpPK4のScaI−BamHI部位に挿入してプラスミドpPKT−TorAを得た。このプラスミドに挿入された遺伝子配列の塩基配列を決定した結果、予想される融合遺伝子が構築されていることが確認された。このプラスミドを鋳型とし、配列番号9と配列番号11(5’−GATTTCCTGGTTGCCGTTGGAATCCGCAGTCGCACGTCGCGGCG−3’)に示す配列を有すプライマーを用いて、PS2のプロモーター領域およびTorAシグナルペプチドをコードする領域を含む部分をPCRにより増幅した。なお、配列番号11に示した配列は、プロ構造つきタンパク質脱アミド酵素をコードする領域の5’末端の配列を持っている。次に、タンパク質脱アミド酵素がクローン化されているプラスミドを鋳型として、配列番号6と配列番号12(5’−GATTCCAACGGCAACCAGGA−3’)に示す配列を有するプライマーを用いたPCRにより、プロ構造付きプロテイングルタミナーゼをコードする領域を増幅した。更に、これらのPCR産物を1:1で混合し、それらを鋳型とし、配列番号6と配列番号9に示す配列を有するプライマーを用いてクロスオーバーPCRを実施することにより、PS2プロモーター領域およびTorAシグナル配列とプロ構造つきプロテイングルタミナーゼをコードする遺伝子との融合遺伝子を増幅した。このPCR産物を制限酵素ScaIおよびBamHIにて消化した後、アガロースゲル電気泳動を実施し、約3.1kbpのDNA断片を検出した。このDNA断片をアガロースゲルより切り出し、EasyTrapVer.2(宝酒造社製)を用いて回収し、特開平9−322774号公報記載のプラスミドpPK4のScaI−BamHI部位に挿入してプラスミドpPKT−PPGを得た。プラスミド中の挿入配列の塩基配列を決定し、予想される融合遺伝子ができていることが確認された。なお、プロ構造付きのプロテイングルタミナーゼのアミノ酸配列を配列番号2に、TorAシグナルペプチドのアミノ酸配列を配列番号4に示す。しかしながら、天然型プロテイングルタミナーゼのアミノ酸配列のままで、市販プロテアーゼによる成熟化を行った場合に、プロ配列が正しく切断されないことが予想された。そこで、天然型プロテイングルタミナーゼのN末端配列と同じ配列にもつようにプロ配列の切断が行われるよう、プロ配列のC末端配列”QTNK”を”FGPK”に変更した。”FGPK”への変更は、配列番号13(5’−CTT GGG GCC GAA GCC CTT GAC TTC TTT GGT CAG−3’)と配列番号14(5’−TTC GGC CCC AAG TTG GCG TCC GTC ATT CCA GAT−3’)に示す配列を有するプライマーを用いた。配列番号13の配列は、プロ配列部分を増幅するためのプライマー、配列番号14の配列は、成熟体部分を増幅するためのプライマーである。pPKT−PPGを鋳型として、配列番号12と配列番号13に示す配列を有するプライマーを用いてプロテイングルタミナーゼのプロ配列部分を、配列番号14と配列番号6に示す配列を有するプライマーを用いてプロテイングルタミナーゼの成熟体部分をそれぞれ増幅した。さらに、これらのPCR産物を1:1で混合し、これらを鋳型として配列番号6と配列番号12に示す配列を有するプライマーを用いてクロスオーバーPCRを実施することにより、プロ配列C末端がFGPKに変更されたプロ構造付きプロテイングルタミナーゼ遺伝子を増幅した。このクロスオーバーPCR産物をpUC18のSmaIサイトにクローニングし(pUCPPG(FGPK))、塩基配列の確認を行ったところ、pro配列が変更されていた。次に、pPKT−PPGのAatII−BstPI断片(大)とpUCPPG(FGPK)のAatII−BstPI断片(小)を連結して、pPKT−PPG(FGPK)を構築した。 構築したプラスミドpPKT−PPG(FGPK)を用いて、C.glutamicum ATCC13869を形質転換し、25mg/lのカナマイシンを含むCM2G寒天培地で生育した菌株を選択した。選択した菌株を25mg/lのカナマイシンを含むMM液体培地において30℃で48時間培養した。C.glutamicum培養液の遠心上清をフィルター(0.45μm)濾過し、その濾液を限外濾過膜(分子量1万以下排除)を用いて濃縮した。50mMリン酸バッファー(pH7.5)によりバッファー交換を行い、トリプシンによりタンパク質脱アミド酵素のプロ構造部を切断し、成熟化を行った。その後、再び濃縮、バッファー交換(20mM酢酸バッファー、pH5.0)を行い、その濃縮サンプルを陽イオン交換クロマトグラフィーに供し、タンパク質脱アミド酵素の活性画分を回収し、酵素精製品とした。前述の方法に従い、酵素精製品のタンパク質あたりの活性を測定したところ約100〜140U/mgであった。 脂肪分無調製牛乳をホモジナイズ(60℃に予備加熱、30kgf/cm2)、殺菌(72℃、15秒)後、31℃まで冷却した原料乳25Lを寸胴鍋に分注し、乳酸菌スターター(CHN−01:4種混合)添加(対乳1%)し、前記のタンパク質脱アミド酵素精製品(100ユニット/mg)を原料乳1L当り2,10,50ユニット添加した。さらにCaCl2を0.01%、レンネットを0.003%添加し、カッティングを行った(カッティング時pH6.2)。熱水を入れながら軽く攪拌し加温(32℃)、静置し、pH5.8に下がったところでホエーを排除した。さらに、マッティング(設定温度34℃、pH5.2まで)、モールディング(30分毎に反転2、3回)を行い、20℃で1晩放置した(pH5.2)。その後、125g/個にカットし、加塩(飽和食塩水;3分浸漬)、乾燥(3日間、5℃)、真空包装し、13℃で熟成した。モールディングし一晩放置後のカード重量を測定することにより、カード収率を算出した。また、1週間後のフレッシュチーズを官能評価した。これらの結果を表1に示す。表1に示したように、原料乳にタンパク質脱アミド酵素を添加することにより、カード収率が向上し、食感が滑らかで、酸味の抑制されたチーズを製造することができることが明らかになった。 市販低温殺菌牛乳800mLをジョッキに入れ、湯浴中で攪拌しながら、90℃達温後、48℃まで冷却した。スターター(「ダノン」ヨーグルト)を80ml添加し100mlづつ分注した。実施例1記載の方法で調製したタンパク質脱アミド酵素精製品(100ユニット/mg)を牛乳1L当り1,5,10,50,100ユニット添加し、よく攪拌後、冷めないうちに約20mLずつ容器に分注した。それらを48℃に設定したインキュベーターにいれ、3〜4時間後、ヨーグルトのpHが4.4−4.5の幅に入った時点で、冷蔵庫に入れ発酵を終了した。一晩、4℃で冷蔵し、翌日にテクスチャーアナライザーによる物性測定及び官能評価を行った。結果を表2に示す。 表2に示したように原料乳にタンパク質脱アミド酵素を添加することにより、食感が滑らかで、酸味の抑制されたヨーグルトを製造することができることが明らかになった。同様に、原料乳にタンパク質脱アミド酵素を50℃90分作用させた後、90℃で5分加熱失活させ、その後、スターターを加え、38℃でpH4.5まで発酵する方法においても、食感が滑らかな、特に食べ終わりに感じられる滑らかさが良好なヨーグルトが得られた。 脱脂粉乳(low heat;全酪連製)40gを800mlの蒸留水に懸濁し、実施例1記載の方法で調製したタンパク質脱アミド酵素精製品(100ユニット/mg)を脱脂粉乳1g当り0.2,1ユニット(原料乳1L当りに換算すると20ユニット、100ユニット)添加し、40℃で2.5時間反応させた後、加熱失活処理(65℃、30min;昇温に1hr)、凍結乾燥を行い、改質脱脂粉乳を調製した。この改質脱脂粉乳を生乳に対し、1〜5%添加し、実施例2と同様の方法でヨーグルトを調製した。0.2U/gは脱脂粉乳中のGlnが僅かに脱アミド化される条件、1U/gは脱アミド化され得るGlnの約50%が脱アミド化される条件である。コントロールとして改質処理していない脱脂粉乳を用いた。 各試料について官能評価を行ったところ、酵素処理をしていない脱脂粉乳添加により、ヨーグルトの固形分が上昇するため、脱脂粉乳無添加と比較して食感が改善され、高級感が付与された。一方、0.2U/gのタンパク質脱アミド化酵素で処理した脱脂粉乳を添加すると、1%から滑らかさが付与され、3%以上の添加で明確な効果として判断できた。1U/gの酵素処理脱脂粉乳の場合は1%添加から顕著な滑らかさの付与が確認され、ヨーグルトの硬さも維持され、好ましさが明らかに上昇していた。 脂肪分無調製牛乳をホモジナイズ(60℃に予備加熱、30kgf/cm2)、殺菌(75℃、15秒)後、31℃まで冷却した原料乳25Lを寸胴鍋に分注し、乳酸菌スターター(CHN−01:4種混合)添加し(対乳1.4%)、前記のタンパク質脱アミド酵素精製品(100ユニット/mg)を原料乳1L当り2,10ユニット添加し1時間放置した。さらにCaCl2を0.01%、レンネットを0.009%添加し、1時間後に凝乳を確認しカッティングを行った(カッティング時酸度0.130、温度31℃)。カッティング後、1/3量のホエーを排除し、熱水を入れながら軽く攪拌し加温(35℃)、静置し(約20分)、更に1/3量のホエーを排除した。徐々に熱水を添加し38℃に達したら、温度を維持し1hr緩やかに攪拌した。その後、約30分間、38℃でバット内圧搾し、モールディング、チーズカード反転した。30分間の予備圧搾(3kg/cm2)後、反転して本圧搾した(5kg/cm2)。その後、水中にモールドのまま沈めて冷却(10℃、一晩)し、加塩(飽和食塩水;4時間浸漬)、乾燥(10日間、12℃)、真空包装し、12℃で熟成して硬質チーズを製造した。チーズの評価はカード作成時と熟成後に実施した。チーズカード製造時の評価を表3に、6か月熟成後の官能評価を表4に記した。 表4に示したように、原料乳にタンパク質脱アミド酵素を添加することにより、食感が滑らかで、酸味、苦味の抑制された熟成チーズを製造することができることが明らかになった 本発明によれば、食感が滑らかで酸味、苦味の抑制された乳製品を製造することができ、またチーズの製造においてはカード収率を向上させることができるので、本発明は食品分野において極めて有用である。[配列表] 原料乳に、タンパク質のアミド基に直接作用してペプチド結合の切断及びタンパク質の架橋を伴わず脱アミドする作用を有するタンパク質脱アミド酵素を添加し、該原料乳中の乳タンパク質に作用させることを特徴とする乳製品の製造方法。 乳製品がチーズ又はヨーグルトであることを特徴とする請求項1記載の方法。 タンパク質脱アミド酵素がChryseobacterium由来のプロテイングルタミナーゼであり、タンパク質脱アミド酵素の添加量が、原料乳1Lに対して0.1〜500ユニットであることを特徴とする請求項1又は2記載の方法。 請求項1〜3のいずれかに記載の方法により得られたことを特徴とする乳製品。