タイトル: | 特許公報(B2)_ブロック化酵素プローブ複合体 |
出願番号: | 2006550753 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | G01N 33/535 |
青柳 克己 JP 3961559 特許公報(B2) 20070525 2006550753 20051226 ブロック化酵素プローブ複合体 株式会社先端生命科学研究所 399115851 川口 義雄 100062007 小野 誠 100114188 渡邉 千尋 100140523 金山 賢教 100119253 大崎 勝真 100103920 坪倉 道明 100124855 青柳 克己 JP 2004378906 20041228 20070822 G01N 33/535 20060101AFI20070802BHJP JPG01N33/535 G01N 33/535 特開2003−194821(JP,A) 特開2000−088850(JP,A) 特開2001−181299(JP,A) 特開2001−013145(JP,A) 11 JP2005023763 20051226 WO2006070732 20060706 16 20060811 竹中 靖典 本発明は、プローブを酵素標識する技術に関するものであり、作製されたブロック化酵素プローブ複合体は酵素免疫測定法や免疫組織化学などの免疫反応を利用する免疫測定に広く用いられる。 プローブを酵素によって標識した酵素標識プローブは、免疫学的な検出法あるいは測定法において広く、一般的に用いられてきた。例えば、プローブを西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリフォスファターゼ(ALP)、β−ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼなどの酵素で標識したものは、免疫組織化学や酵素免疫測定法などの検出の段階において使用可能である。 免疫組織化学法や酵素免疫測定法は生体内の自己の抗原あるいは外来抗原を検出する方法として、長い間汎用されてきた。これらの免疫反応を利用した検出法は特異性と感度が高いため、生体内に存在する微量な物質を単離することなく、検出することができる。しかし、生体内には通常の免疫組織化学法や酵素免疫測定法では検出できないような微量の物質も数多く存在するため、それらを検出することを目的として、測定方法の感度を上昇させる方法が検討されてきた。 例えば、癌マーカーである癌胎児性抗原(CEA)やα−フェトプロテインなどは正常人の血清中の濃度は5〜20ng/mlであるが、ヒトガストリン放出ペプチド前駆体(ProGRP) などは正常人の血清中の濃度は14pg/ml程度であり、ProGRPを測定するためには1000倍ほどの感度が必要である。また外来抗原においても、C型肝炎ウイルスは、血中に存在するウイルス量が非常に少ないため、高感度な抗原検出法が望まれていた。その抗原を検出するためには、100−1000コピーのウイルスRNAを検出する感度が必要で、蛋白質の濃度ではおよそ0.03−0.3pg/mlの感度が必要である。 このような生体内に存在する微量な抗原あるいは物質を検出するために、免疫測定法の高感度化が測られてきた。この酵素免疫測定法の高感度化の検討については石川らが詳しく解説している(非特許文献1参照)。酵素免疫測定法の測定感度に影響を与える因子としては、測定系の種類、標識の検出感度、標識法の種類、免疫反応の時間、抗原と抗体の親和性などが考えられる。また実際にサンドイッチ法で抗原を測定する場合に高感度化に影響する条件としては、抗体の固相化条件、抗原の反応効率、酵素標識抗体の反応効率、標識抗体の固相への非特異吸着の軽減、標識抗体の添加量、免疫反応の時間、免疫反応の温度、pH、イオン強度、緩衝液の種類、抗原決定基の立体的位置と数などがあると考えられる。 上記の検討に加えて、酵素免疫測定法の高感度化の方向として、検出段階における酵素と抗体の架橋に関する標識方法の改良が行われてきた。各種の標識抗体の調製法が知られており、特に石川らによって報告された標識抗体の調製法は、一般の診断薬に広く応用されている。これらに代表される方法は、主に抗体(IgGであれば、分子量約150,000、Fab’(分子量約46,000))であれば1分子に酵素を1〜数分子結合させるものであり、たとえば西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)(分子量:40,000)を3分子とIgGを1分子結合させた結合体の総分子量は、40,000×3+150,000=270,000となる。また、アルカリフォスファターゼ(ALP)(分子量:100,000)を3分子とIgGを1分子結合させた結合体の総分子量は、100,000×3+150,000=450,000となる。しかしながら、石川らは、最も高感度に測定するには抗体、特にFc部分を除去したFab’部分と酵素の1分子:1分子が望ましいことを述べ、抗体1分子に対して単一の酵素分子を共有結合させる方法が開発された(非特許文献2参照)。酵素と抗体の比率が1:1で結合した酵素抗体標識法の場合、たとえばHRPを1分子とFab’を1分子結合させた結合体の総分子量は、40,000+46,000=86,000となる。このように、一般的に酵素標識体は総分子量200,000以下のものが用いられていることが多い。 免疫測定法の高感度化の方向として、ステップ数を増加させてシグナルを上昇させる試みも各種行なわれてきた。たとえば、ビオチンとアビジンの高結合性を利用して、主に第二抗体にビオチンを数分子以上導入しておき、そのビオチン化第二抗体を被分析物と反応させた後、過剰量ビオチン化第二抗体を除去する。その後、アビジン化酵素を添加しビオチン化第二抗体−アビジン酵素のコンプレックスを形成させ、第二抗体に結合する酵素数を増加させて感度を高めるものである。アビジン酵素の代わりにアビジン−ビオチン酵素のコンプレックスも使用することが可能である。また、Butlerらはペルオキシダーゼ−抗ペルオキシダーゼ抗体という抗体酵素複合体を記載している(非特許文献3参照)。Bobrowらは、ペルオキシダーゼ標識第二抗体を被分析物と反応させ過剰量のペルオキシダーゼ標識第二抗体を除去した後、ビオチン−Tyramideを添加し、ペルオキシダーゼ標識第二抗体周辺のブロッキング蛋白にラジカルとなったビオチン−Tyramideを結合させ洗浄後、ペルオキシダーゼ標識ストレプトアビジンを用いて酵素シグナルを増幅させている(非特許文献4参照)。しかしながら、これらの方法はステップ数が増加する、測定時間が長時間になるといった欠点を有する。 抗体に結合させる酵素の分子数を増加させるため、ある担体に酵素を結合させ、その上でその酵素の結合した担体上に抗体を結合させる方法が報告されており、この方法によればステップ数を最小限として高感度化を行なうことができる(特許文献1参照)。この方法はアミノ基をもつ担体にマレイミド基またはチオール(SH)基を導入し酵素を結合させ、残った担体の少なくとも1つのアミノ基にマレイミド基を導入して、抗体を担体に結合させる方法である。この方法は担体を介して抗体と酵素を結合させるために、抗体と酵素を直接結合させるよりも多数の酵素が結合するため感度を上昇させることができるように思われる。しかしながら、発明者らは担体の分子量を5,000〜500,000、好ましくは10,000〜300,000がよいと記載している。この場合、例えば西洋ワサビペルオキシダーゼを酵素とすると分子量は約40,000程度である。担体の分子量が500,000あるとしても、物理的にも空間的にも500,000の分子に結合できる40,000の分子の数は限られるのは当然であり、担体に結合可能な酵素の分子数にも限界がある。つまり、担体に酵素と抗体を結合させれば、担体中の官能基を酵素と抗体で分け合わなければならないため、酵素の数が少なくなりシグナルは低くなる。酵素を多く結合させれば抗体の結合空間が少なくなり、抗原との反応性が低下する。つまり、できるだけ抗体と酵素をたくさん同一担体上に結合させればよいのであるが、巨大分子の調製過程によっては凝集塊・沈殿などが生じ、測定時にバックグランドの上昇を引き起こし、結果として感度は低下することが多い。特開2000−88850超高感度酵素免疫測定法、石川榮治、1993年、学会出版センターImagawaほか、J.Appl.Biochem.4巻;400,1982Butler,(1981)Methods Enzymol.,73巻;482〜523Bobrow,(1989)J.Immunol.Methods,125,279−285 本発明者らは上記特許出願に記載された製造方法に従って酵素標識プローブを試験的に作製し、高感度が必要なProGRPの測定やHCV抗原の測定系に応用してみた。しかしながら、これらの生体内に存在する微量な物質を測定する系においては、従来のものより感度が高い酵素標識プローブを使用しても十分な感度が得られるわけではなかった。従って、本発明中の課題は高感度の測定系に使用できる、感度の高い酵素標識プローブを提供することである。 本発明者らは高感度な酵素標識プローブを得るために検討を行った。その結果、2分子以上の担体を酵素を介して結合させ、かつ担体に酵素が結合しているブロック体を形成させた。そしてそのブロック体にプローブを結合させることにより、目的の高感度なブロック化酵素プローブ複合体を得ることに成功した。 即ち、本発明は(1)分子量20,000〜4,000,000の2分子以上の担体が酵素を介して結合し、該担体に酵素が結合した複合体に、プローブ分子が結合したブロック化酵素プローブ複合体。(2)担体と酵素分子とが、担体上の官能基と酵素分子内の糖鎖を酸化して得られるアルデヒド基により結合している、(1)に記載のブロック化酵素プローブ複合体。(3)担体が、デキストラン、アミノデキストラン、フィコール、デキストリン、アガロース、プルラン、各種セルロース、キチン、キトサン、β−ガラクトシダーゼ、サイログロブリン、ヘモシアニン、ポリリジン、ポリペプチド及びDNAからなる群より選ばれる1種以上である、(1)または(2)に記載のブロック化酵素プローブ複合体。(4)酵素が、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼおよびルシフェラーゼからなる群より選ばれる1種以上である、(1)または(2)に記載のブロック化酵素プローブ複合体。(5)プローブが抗体分子もしくはその機能性断片、プロテインA、プロテインG、プロテインL、レクチン、レセプター、およびアビジン類からなる群より選ばれる1種以上である、(1)または(2)に記載のブロック化酵素プローブ複合体。(6)2種類以上のプローブを結合させた(1)〜(5)のいずれかに記載のブロック化酵素プローブ複合体。(7)抗体分子もしくはその機能性断片が抗HCVコア抗原抗体、抗ガストリン放出ペプチド前駆体抗体およびそれらの機能性断片からなる群より選ばれる1種以上である、(5)または(6)に記載のブロック化酵素プローブ複合体。(8)ブロック化酵素プローブ複合体の分子量が440,000以上である(1)〜(7)のいずれかに記載のブロック化酵素プローブ複合体。(9)(1)〜(8)のいずれかに記載のブロック化酵素プローブ複合体を含む免疫測定用キットまたは核酸検出試薬。(10)分子量20,000〜4,000,000の担体と酵素を結合させブロック体を形成するステップ、及びそのブロック体にプローブを結合させるステップからなる、(1)〜(8)に記載のブロック化プローブ複合体を製造する方法。(11)担体と酵素分子の重量比が担体:酵素=1:0.1〜1:20で反応させてブロック体を形成させる(10)に記載の方法。 また本発明の(1)の分子量20,000〜4,000,000の2分子以上の担体の結合は、酵素を介さない結合も含まれる。例えば官能基を有するリンカーや、タンパク質でも可能である。さらに担体、酵素、プローブのそれぞれの結合は、官能基を有するリンカー分子を介しているブロック化酵素プローブ複合体を含む。 つまり本発明は、担体を酵素またはリンカーを介して結合させ、その分子に酵素およびプローブを結合させることにより、多くの酵素分子やプローブ分子を一分子中に有するブロック化酵素プローブ複合体である。 本発明のブロック化酵素プローブ複合体は、担体に酵素を結合させてブロック体を形成し、このブロック体にプローブ分子を結合させて製造することができる。また、本発明のブロック化酵素プローブ複合体は、担体に酵素とプローブを結合させて結合体を形成し、この結合体を互いに結合させてブロック化しても製造することができる。 本発明では、酵素により担体を結合させ、分子量を大きくすることにより、より多くの酵素またはプローブをそのブロック体に結合させることができる。また一方でブロック体の表面にプローブが結合しているため、立体障害がおこりにくく、プローブ分子サイズに関わらず作製可能である。また、ブロック化酵素プローブ複合体の最終的な産物としては、分子量440,000以上のブロック化酵素プローブ複合体の効果が高く、さらに668,000以上のものがより高感度となる。原則的にはブロック化酵素プローブ複合体の分子量の大きなものほど複合体一分子に結合している酵素の量が多くなり、感度が上昇する。本発明に記載された方法で分子量の大きなブロック化酵素プローブ複合体が作製できるが、さらに分子量の大きなブロック化酵素プローブ複合体を選択するためにはゲルろ過などの方法が利用できる。 このブロック化後の分子量は、使用する担体、酵素、プローブの種類によって多少変動はあるものの、いずれも液体中でブロック化酵素プローブ複合体が沈殿あるいは沈降しない分子量であればよく、特に上限は規定されるべきものではない。参考値としては、Dextranを担体として用いた場合には20,000,000でも何ら問題なく(後述の実施例1および6)、40,000,000〜100,000,000でも問題は生じない。 本発明は当初イムノアッセイ、免疫組織化学の分野において使用できる酵素プローブ複合体について検討する過程でなされたものであるが、他の分野に適用することに制限はない。 本発明の酵素標識抗体は生体内に微量にしか存在しない抗原、蛋白質を検出する際に従来の酵素標識抗体では検出不可能であったものを検出可能にするものである。この酵素標識抗体を用いれば従来測定不可能であった抗原や蛋白質が測定可能となる。 本発明でいう担体とは、分子量20,000〜4,000,000のものであれば特別な制限はない。しかしながら、感度をより向上させるためには、多数の酵素が結合できるものが望ましいため、ある程度の分子量をもったものが望ましい。担体の例としては、多糖類や高分子量蛋白質やペプチドポリマーが挙げられ、それらの分子量が20,000〜20,000,000、好ましくは20,000〜4,000,000、さらに好ましくは70,000〜2,000,000のものが適している。また、多糖類やペプチドポリマーを使用する場合、同じ分子量でも側鎖に富んだもののほうが、シグナルが高い傾向にある。 本発明における多糖類の担体としては、デキストラン、アミノデキストラン、フィコール、デキストリン、アガロース、プルラン、各種セルロース、キチン、キトサン、可溶性でんぷんなどが例示される。また、本発明における高分子量蛋白質の担体としては、β−ガラクトシダーゼ、サイログロブリン、ヘモシアニンなどが例示される。また、本発明におけるペプチドポリマーの担体としては、ポリリジンのほか各種ペプチドポリマーが使用できる。 本発明で使用されうる酵素には特別制限はないが、免疫測定法において一般的に使用されている西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリフォスファターゼ(ALP)、β−ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、ルシフェラーゼなどが適時使用される。酵素は2分子以上の担体又は担体とプローブ分子とに結合するため、2個以上の官能基、たとえば糖鎖とアミノ基、または2個以上のアミノ基、アミノ基とカルボキシル基、チオール基とアミノ基などをもつ酵素が望ましい。 担体と酵素の結合には、どのようなリンカーや結合様式を用いてもよいが、担体と酵素の結合後、そのブロック体にプローブを結合させる必要性があるため、酵素または担体に官能基を残して置く必要性がある。 たとえば、分子量20,000〜4,000,000の担体に存在するヒドラジン基、若しくは適当なリンカー分子を用いて担体に導入したヒドラジン基を介して酵素分子と結合させ、または適当なリンカー分子を用いて酵素分子に導入したヒドラジン基を介して該担体と結合させ、該酵素を介したブロックを作製できる。このブロック体中の担体又は担体に結合している酵素分子内の官能基を介してプローブ分子を結合させることによりブロック化酵素プローブ複合体を作製することができる。 また適当なリンカー分子を用いて分子量20,000〜4,000,000の担体に導入したヒドラジン基と酵素分子内の糖鎖を酸化して得られるアルデヒド基を結合させて担体と酵素分子を結合し、さらに該酵素分子を介してブロック化したブロック体中の担体又は担体に結合している酵素分子内の官能基に結合させたリンカー分子を介してプローブ分子を結合させることにより、同様にブロック化酵素プローブ複合体を作製可能である。 この場合、担体または酵素に導入するヒドラジン基をもつリンカー分子はヒドラジン基(−NHNH2)を有する硫酸ヒドラジンや塩酸ヒドラジンのようなヒドラジン塩類でもよいし、ヒドラジン基(−CO−NHNH2)を有するヒドラジド類あるいは官能基とヒドラジド基を有する物質でもよい。 また担体または酵素分子とプローブ分子を結合させるリンカー分子はマレイミド基、スクシミジル基、カルボキシル基、チオール基などの官能基を持つものであれば使用可能である。 また、担体上のヒドラジン基などの官能基の数にもよるが、酵素を介したブロック化酵素を調製する際の担体の重量に対する酵素の重量は、0.2〜10倍が望ましく、さらには、0.3〜5倍が望ましい。 さらに一例として、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)の糖鎖を酸化させ、ヒドラジン基を導入した分子量20,000以上のDextranに結合させ、酵素を介してブロック化酵素を調製する。担体上の残存ヒドラジン基及びHRPの残存アミノ基にN−(6−Maleimidocaproyloxy)succinimide(EMCS)のようなリンカー分子を結合させ、ブロック化酵素表面にマレイミド基を導入させ、プローブ分子中またはプローブに導入したSH基を反応させ、ブロック化酵素プローブ複合体を調製する。このようにブロック化酵素プローブ複合体を作製するために酵素の糖鎖を利用し、プローブの結合に残存ヒドラジン基や残存アミノ基を利用するものである。 ブロック体とプローブの結合には、どのような架橋剤を用いてもよく、またどのような結合様式でもよい。好ましくは、水溶液中で安定性が高いヘテロ二官能性架橋剤もしくはホモ二官能性架橋剤が望ましい。 プローブとしては、抗体(モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体)およびその断片(F(ab’)2、Fab’、Fab、F(abc’)、Fabc’など)、各種レセプター、各種アビジン(アビジンD、ストレプトアビジンなど)、プロテインA、プロテインG、プロテインL、各種レクチン(コンカナバリンA、レンチルレクチン、インゲンマメレクチンなど)、各被分析核酸結合プローブなどが使用できる。 抗体は、目的とする抗原あるいは被分析物と結合するものであればよい。抗体はペプシンやパパインといったプロテアーゼを用いて、F(ab’)2やFabといった断片を得ることができる。一般的に抗体の重鎖(H鎖)は、S−S結合により重鎖同士が結合しており、その結合は還元剤にて切断される。還元剤としては、システアミンやメルカプトエタノールなどがあげられ、F(ab’)2もこのような還元剤でFab’に切断されチオール(SH)基が新たに生じる。本発明には、抗体のこれらの断片(F(ab’)2、Fab’、Fab、F(abc’)、Fabc’など)も使用することができる。 本発明をさらに詳しくかつ非限定的に説明するために、以下に酵素プローブ複合体の製造方法およびそれらの性能について実施例を挙げる。 担体としてDextran T2000を用いた酵素−抗HCVコア抗原モノクローナル抗体複合体の調製 Dextran T2000(平均分子量2,000,000;アマシャム)0.3gを秤量し、0.1M燐酸緩衝液(pH7.0)6mlに溶解する。過ヨウ素酸ナトリウム溶液を3ml添加混合し、室温で2時間静置反応させ、ゲルろ過(Sephadex G25、アマシャム)をおこないボイド画分を分取し、ヒドラジン塩酸塩(和光純薬)を添加して、デキストランにヒドラジンを導入した。理論的には分子量2,000,000のデキストランには最大で22,000のヒドラジンが導入される。ペルオキシダーゼ(HRP、東洋紡)100mgを秤量し、0.1M炭酸水素ナトリウム溶液3mlに混合溶解し、過ヨウ素酸ナトリウム溶液を1.5ml添加混合し、室温で2時間静置反応させた。ゲルろ過(Sephadex G25)により脱塩後、先に得られた約150mgのデキストランヒドラジドを添加混合して、室温で2時間反応させ、還元後、グリシンを0.1Mとなるよう添加し、4℃で4時間ずつ3回透析をおこない、ブロック化担体HRP結合物を得た。このとき結合しなかったHRPは10%以下であったことから、回収率も含めてDextran T2000(平均分子量2,000,000)1分子に約12−16個のHRPが結合したと考えられる。この結合物5mgに、ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解させたN−(6−Maleimidocaproyloxy)succinimide(EMCS,同仁化学)1mgを添加し室温で2時間反応させ、ゲルろ過(Sephadex G25)で過剰のEMCSを除去し、担体HRP結合物にマレイミドを導入させた。0.1Mリン酸緩衝液(pH6.0)中抗HCVコア抗原モノクローナル抗体3.5mg(c11−10F(ab’)2とc11−14F(ab’)2を等量混合)のF(ab’)2溶液に、0.1Mシステアミン塩酸塩を1/10容量添加し、37℃で90分間インキュベーションおこないFab’とした。ゲルろ過(Sephadex G25)を行い、ボイド画分を分取しFab’を得た。このFab’とマレイミド基を導入した担体HRP結合物を一晩4℃で反応させ、ゲルろ過(Superdex 200pg,1.6×60cm、アマシャム)をおこない遊離のFab’を除去する。このとき、本発明のHRP−Fab複合体はほぼボイド画分近傍に出現する。このとき遊離のFab’は、10%以下であったことから、回収率も含めてDextran T2000(平均分子量2,000,000)1分子あたり約6−10個のFab’が結合したと考えられる。この分取されたフラクションに牛血清アルブミン(BSA)を0.5%になるように添加し4℃で保存した。このようにして調製されたHRP−Fab複合体の403nmの吸光度を測定し、HRPの403nmの分子吸光係数から複合体のHRP濃度を求めた。 担体としてDextran T70を用いた酵素−抗HCVコア抗原モノクローナル抗体複合体の調製 Dextran T70(平均分子量70,000;アマシャム)0.3gを秤量し、実施例1と同様にHRP−Fab複合体を得、403nmの吸光度を測定し、HRPの403nmの分子吸光係数から複合体中のHRP濃度を求めた。 担体としてDextran T500を用い、担体と酵素の量比を変えた酵素−抗HCVコア抗原モノクローナル抗体複合体の調製 Dextran T500(平均分子量500,000;アマシャム)0.3gを秤量し、実施例1と同様の担体(150mg):酵素(100mg)の重量比(0.66)、担体100mgに対して酵素量を3倍量(300mg)の重量比(2.00)および5倍量(500mg)の重量比(3.33)で担体−酵素結合物を調製し、その後実施例1と同様に抗HCVコア抗原モノクローナル抗体を結合させた。403nmの吸光度を測定し、HRPの403nmの分子吸光係数から複合体中のHRP濃度を求めた。 担体としてDextran T500を用いた酵素−抗ProGRP抗体複合体の調製 Dextran T500(平均分子量500,000;アマシャム)0.3gを秤量し、実施例1と同様に担体HRP結合物を得た。この結合物5mgに、DMFに溶解させたEMCS 1mgを添加し室温で2時間反応させた。ゲルろ過(Sephadex G25)で過剰のEMCSを除去し、担体HRP結合物にマレイミドを導入させた。0.1Mリン酸緩衝液(pH6.0)中抗ProGRPモノクローナル抗体(2B10)のF(ab’)2溶液に、0.1Mシステアミン塩酸塩を1/10容量添加し、37℃で90分間インキュベーションをおこないFab’とした。ゲルろ過(Sephadex G25)を行い、ボイド画分を分取しFab’を得た。このFab’とマレイミドを導入した担体HRP結合物を一晩4℃で反応させ、ゲルろ過(Superdex 200pg,1.6×60cm)をおこないボイド近傍の画分を分取し、牛血清アルブミン(BSA)を0.5%になるように添加し4℃で保存した。このようにして調製されたHRP−Fab複合体の403nmの吸光度を測定し、HRPの403nmの分子吸光係数から複合体中のHRP濃度を求めた。 <比較例1> 従来法を用いた酵素抗HCVコア抗原モノクローナル抗体の調製 石川らによって報告された標識抗体の調製法は、一般の診断薬に広く応用されている。この方法(超高感度酵素免疫測定法、石川榮治、1993年、学会出版センター)を従来法として用いた。HRP 4mgを秤量し、0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)0.6mlに溶解した。DMFに溶解させたEMCS 1mgを添加し室温で2時間反応させた。ゲルろ過(Sephadex G25)で過剰のEMCSを除去し、HRPのアミノ基にマレイミドを導入させた。0.1Mリン酸緩衝液(pH6.0)中抗HCVコア抗原モノクローナル抗体(c11−10およびc11−14)の各々のF(ab’)2溶液に、0.1Mシステアミン塩酸塩を1/10容量添加し、37℃で90分間インキュベーションおこないFab’とした。ゲルろ過(Sephadex G25)を行い、ボイド画分を分取しFab’を得た。このFab’とマレイミドを導入したHRP結合物を一晩4℃で反応させ、ゲルろ過(Superdex 200pg,1.6×60cm)をおこないHRP−Fabの画分を分取し、BSAを0.5%になるように添加し4℃で保存した。このようにして調製されたHRP−Fab結合物の403nmの吸光度を測定し、HRPの403nmの分子吸光係数から結合物中のHRP濃度を求めた。 <比較例2> 従来法を用いた酵素抗ProGRPモノクローナル抗体の調製 比較例1と同様に、HRPのアミノ基にマレイミドを導入させた。0.1Mリン酸緩衝液(pH6.0)中抗ProGRPモノクローナル抗体(2B10)のF(ab’)2溶液に、0.1Mシステアミン塩酸塩を1/10容量添加し、37℃で90分間インキュベーションおこないFab’とした。ゲルろ過(Sephadex G25)にてボイド画分を分取し、Fab’を得た。このFab’とマレイミドを導入したHRP結合物を一晩4℃で反応させ、ゲルろ過(Superdex 200pg,1.6x60cm)をおこないHRP−Fabの画分を分取し、BSAを0.5%になるように添加し4℃で保存した。このようにして調製されたHRP−Fab結合物の403nmの吸光度を測定し、HRPの403nmの分子吸光係数から結合物中のHRP濃度を求めた。 実施例1で調製した酵素抗HCVコア抗原モノクローナル抗体複合体のゲルろ過による分子量解析 実施例1で調製した酵素抗HCVコア抗原モノクローナル抗体複合体をSephacryl S−500 Superfine(アマシャム)(1.6×60)カラムを用いてゲルろ過をおこなった。このSephacryl S−500 Superfineカラムは、主に大分子量の分子やsmall particleを分離するために使用される。ファルマシアGel filtration theory and practiceによれば、このカラム分画範囲は、多糖類で4×104〜2×107である。キャリアにはPBSを用い、1ml/minの流速でゲルろ過を行なった。4ml/2minずつ各フラクションを分取し、403nmの吸光度を測定しHRPの分子吸光係数よりHRP濃度(μg/ml)を求め、その後、各フラクションの反応性をHRP濃度換算で1μg/mlに希釈し検討した。検定方法は以下のとおりである。 96穴マイクロプレートに抗HCVコア抗原モノクローナル抗体(c11−3&c11−7等量混合)を4μg/mlの濃度で200μlを加え、4℃で一晩インキュベートした。10mMリン酸緩衝液(pH7.3)で洗浄後、0.5%カゼインを350μl加え2時間インキュベートした。組換え体HCVコア抗原(c11)を0fmol/L、1200fmol/Lの濃度に調整したものをサンプルとして添加して、攪拌しながら室温で60分間インキュベートした。0.05%Tween20を含む10mMリン酸緩衝液(pH7.3)(洗浄液)で6回洗浄を行なった後、2次抗体として、各フラクションをHRP濃度換算で1μg/mlに希釈したものと、従来法で調製した酵素抗体をHRP濃度で1μg/mlで200μlを加え、30分間インキュベートした。さらに洗浄液で6回洗浄し、基質溶液(オルトフェニレンジアミン、過酸化水素)200μlを加え30分間インキュベートした。5N硫酸50μlを加えて酵素反応を停止させ、マイクロプレートリーダー(コロナMTP32)で492nm(リファレンス波長630nm)の吸光度を測定した。各々のゲルろ過フラクションのHRP濃度と上述した検定結果(コア抗原1200fmol/Lの吸光度と0fmol/Lの吸光度の差)を表1および図1に示した。3種類の分子量マーカーの分子量は、Thyroglobulin;668,000、Ferritin;440,000、BSA;68,000である。また、同時に測定した従来法で調製した酵素抗体1μg/mlにおけるコア抗原0fmol/L、1200fmol/Lの時の吸光度は、それぞれ0.000、0.050であった。よって、従来法によるコア抗原1200fmol/Lの吸光度と0fmol/Lの吸光度の差は0.050となった。図1より、分子量が大きくなるにつれコア抗原1200fmol/Lでの吸光度が上昇傾向にあることが確認された。フラクション19以降では、従来法と比較してシグナルの上昇は3倍以下であったが、フラクション2〜18ではシグナルの上昇は3倍以上であった。Thyroglobulin(分子量668,000)はフラクション17近傍に、Ferritin(分子量440,000)はフラクション18にピークを示したことから、分子量約440,000以上で従来法よりも約5.9倍以上の優れた効果が確認され、分子量668,000以上で従来法よりも約7.7倍以上の優れた効果が確認された。 本実施例における担体Dextran T2000の平均分子量は2,000,000であり、この担体に分子量40,000のHRPが14分子結合し、さらにこのブロック化担体−酵素に分子量46,000の Fab’が8分子結合した酵素プローブ複合体の分子量は約2,900,000になる。これが、本実施例における酵素プローブ複合体の基本単位であると解される。 一方、本実施例でのゲル濾過に用いたSephacryl S−500 Superfineカラムの分画範囲は4×104〜2×107であるが、表1から明らかなように、ボイド画分を含む最初のフラクションも高い活性を示している。このボイド画分を含む最初のフラクションは、少なくとも2×107あるいはそれ以上の分子量を有する酵素プローブ複合体を含んでおり、本実施例における酵素プローブ複合体の基本単位の分子量は2,900,000であるから、ボイド画分を含む最初のフラクションに存する酵素プローブ複合体は、少なくとも2個以上の最小単位である酵素プローブ複合体が更に共有結合で結合してより分子量の大きい酵素プローブ複合体、すなわちブロック化酵素プローブ複合体を形成していると理解され得る。 また、本実施例で用いた担体Dextran T2000にはその平均分子量2,000,000を下回る分子量のDextranや、それらの分解物も存在している。これらも本発明の酵素プローブ複合体あるいはブロック化酵素プローブ複合体の形成に関与するのは明らかであり、従って本実施例には、酵素プローブ複合体の基本単位の平均分子量である2,900,000以下の分子量を有する酵素プローブ複合体も含まれており、これらもまた本発明に他ならない。 担体と酵素の量比を変えた場合の酵素抗HCVコア抗原モノクローナル抗体複合体の反応性 実施例3で調製した酵素抗HCVコア抗原モノクローナル抗体複合体を用いて、それらの反応性を酵素濃度換算で2μg/mlに希釈し検討した。検定方法は以下のとおりである。 96穴マイクロプレートに抗HCVコア抗原モノクローナル抗体(c11−3&c11−7等量混合)を4μg/mlの濃度で200μlを加え、4℃で一晩インキュベートした。10mMリン酸緩衝液(pH7.3)で洗浄後、0.5%カゼインを350μl加え2時間インキュベートした。組換え体HCVコア抗原(c11)を0fmol/L、25.9fmol/L、77.8fmol/L、233.3fmol/L、700fmol/Lの濃度に調整したものをサンプルとして添加して、攪拌しながら室温で60分間インキュベートした。0.05%Tween20を含む10mMリン酸緩衝液(pH7.3)で6回洗浄を行なった後、各酵素抗HCVコア抗原モノクローナル抗体複合体を酵素濃度換算で2μg/mlに希釈したものを加え、30分間インキュベートした。さらに洗浄液で6回洗浄し、基質溶液(オルトフェニレンジアミン、過酸化水素)200μlを加え30分間インキュベートした。5N硫酸50μlを加えて酵素反応を停止させ、マイクロプレートリーダー(コロナMTP32)で492nm(リファレンス波長630nm)の吸光度を測定した。 担体:酵素の重量比0.66、2.00および3.33で調製した担体−酵素結合物を用いて作製した抗HCVコア抗原モノクローナル抗体複合体の反応性は、担体:酵素の重量比0.66と比較して、重量比2.00のものが77.6%、重量比3.33のものが70.5%であり、酵素量が多いほど反応性の低下が認められた。担体:酵素の重量比が2.00、3.33あるいはそれ以上のものでも従来のものより十分に高感度の複合体が得られる。しかし、酵素が担体量よりも過剰量存在すると、一つの担体分子に酵素がたくさん結合するため最小単位である酵素−担体が多くできるが、担体−酵素−担体−酵素−担体−酵素といった最小単位体同士が酵素を介して結合しているものが少なくなることが推測される。すなわち、実施例5のゲルろ過解析でも述べたように、本発明の酵素プローブ複合体は、少なくとも2個以上の最小単位である酵素プローブ複合体が更に共有結合で結合してより分子量の大きい酵素プローブ複合体、すなわちブロック化酵素プローブ複合体を形成することにより、反応性が高くなったと理解され得る。 実施例1および2で調製した酵素抗HCVコア抗原モノクローナル抗体複合体と従来法の酵素抗体を用いてのコア抗原の検出感度比較 96穴マイクロプレートに抗HCVコア抗原モノクローナル抗体(c11−3&c11−7等量混合)を4μg/mlの濃度で200μlを加え、4℃で一晩インキュベートした。10mMリン酸緩衝液pH7.3(PBS)で洗浄後、0.5%カゼインを350μl加え2時間インキュベートした。吸引して0.5%カゼインを除去後、組換え体HCVコア抗原(c11)を21870fmol/Lから3倍ずつの希釈系列を調製しサンプルとして添加し、攪拌しながら室温で60分間インキュベートした。洗浄液で6回洗浄を行ない、2次抗体として、実施例1および2で調製した酵素−抗HCVコア抗原モノクローナル抗体複合体あるいは従来法で調製した酵素抗体をいずれもHRP濃度で換算して、2.5μg/mlの濃度で200μlを加え30分間インキュベートした。さらに洗浄液で6回洗浄し、基質溶液(10mgオルトフェニレンジアミン、過酸化水素)200μlを加え30分間インキュベートした。5N硫酸を50μlを加えて酵素反応を停止させ、マイクロプレートリーダー(コロナMTP32)で492nm(リファレンス波長630nm)の吸光度を測定した。図2にその結果を示した。0fmol/LとOD0.030の差を検出限界と仮定すると、従来法の酵素抗体では約263fmol/L、実施例2の酵素抗体複合体では約75fmol/L、そして実施例1の酵素抗体複合体では約10fmol/L(0.2pg/ml)が検出可能となった。つまり従来法と比較して3.5〜26.3倍感度が上昇した。感度上昇によって、さらにHCV感染の有無の判断やウイルス定量の幅がひろがり、有用性が高くなった。 2種類のモノクローナル抗体を一緒に結合させた酵素抗HCVコア抗原モノクローナル抗体複合体と別々に結合させた酵素抗HCVコア抗原モノクローナル抗体複合体を用いてのコア抗原の検出感度比較 実施例1または2では、2種類の抗HCVコア抗原モノクローナル抗体{c11−10F(ab’)2とc11−14F(ab’)2}を一緒にブロック化担体酵素と反応させた。また、これら2種類のモノクローナル抗体を別々にブロック化担体酵素と反応させ、酵素抗HCVコア抗原モノクローナル抗体複合体を調製した。2種類のモノクローナル抗体を一緒に結合させたものと、c11−10およびc11−14モノクローナル抗体単独で結合させたものは1μg/mlの濃度で、またc11−10およびc11−14モノクローナル抗体単独で結合させたものを各々0.5μg/mlずつ混合したもの(計1μg/ml)の反応性を検討した(図3)。 96穴マイクロプレートに抗HCVコア抗原モノクローナル抗体(c11−3&c11−7等量混合)を4μg/mlの濃度で200μlを加え、4℃で一晩インキュベートした。10mMリン酸緩衝液pH7.3(PBS)で洗浄後、0.5%カゼインを350μl加え2時間インキュベートした。吸引して0.5%カゼインを除去後、組換え体HCVコア抗原(c11)を21870fmol/Lから3倍ずつの希釈系列を調製しサンプルとして添加し、攪拌しながら室温で60分間インキュベートした。洗浄液で6回洗浄を行ない、2次抗体として、2種類のモノクローナル抗体を一緒に結合させたもの、c11−10およびc11−14モノクローナル抗体単独で結合させたもの、そしてc11−10およびc11−14モノクローナル抗体単独で結合させたものを各々同量混合したものを、いずれもHRP濃度で換算して計1μg/mlの濃度で200μlを加え20分間インキュベートした。さらに洗浄液で6回洗浄し、基質溶液(10mgオルトフェニレンジアミン、過酸化水素)200μlを加え30分間インキュベートした。5N硫酸を50μlを加えて酵素反応を停止させ、マイクロプレートリーダー(コロナMTP32)で492nm(リファレンス波長630nm)の吸光度を測定した。 c11−10およびc11−14モノクローナル抗体単独で結合させたものよりも、それらを各々0.5μg/mlずつ混合したものの反応性が若干向上(約1.2倍)したが、その混合したものよりも、2種類の抗体を一緒に結合させたものは約2−2.5倍反応性が向上した。よって、2種類以上のモノクローナル抗体およびその断片などのプローブを、ブロック化担体酵素と結合させることもより効果的である。 モノクローナル抗体をブロック化担体酵素上の担体に特異的に結合させた酵素抗HCVコア抗原モノクローナル抗体複合体の反応性 HRPのアミノ基は非常に少なく、石川らがHRPにアミノ基を利用してマレイミド基を導入するために検討した結果、1個からせいぜい3個以内である〔石川栄治 著;生物化学実験法27、酵素標識法、学会出版センター〕。そのHRPの少ないアミノ基を2−methylmaleic anhydrideを用いてブロックした後、実施例3との同様な方法で、担体としてDextran T500を用い担体:酵素の重量比0.66で担体−酵素結合物を調製した後、抗HCVコア抗原モノクローナル抗体を結合させた。403nmの吸光度を測定し、HRPの403nmの分子吸光係数から複合体中のHRP濃度を求めた。 96穴マイクロプレートに抗HCVコア抗原モノクローナル抗体(c11−3&c11−7等量混合)を4μg/mlの濃度で200μlを加え、4℃で一晩インキュベートした。10mMリン酸緩衝液pH7.3(PBS)で洗浄後、0.5%カゼイン350μlを加え2時間インキュベートした。吸引して0.5%カゼインを除去後、組換え体HCVコア抗原(c11)を21870fmol/Lから3倍ずつの希釈系列を調製しサンプルとして添加し、攪拌しながら室温で60分間インキュベートした。洗浄液で6回洗浄を行ない、標識抗体をHRP濃度で換算して計2μg/mlの濃度で200μlを加え20分間インキュベートした。さらに洗浄液で6回洗浄し、基質溶液(10mgオルトフェニレンジアミン、過酸化水素)200μlを加え30分間インキュベートした。5N硫酸を50μlを加えて酵素反応を停止させ、マイクロプレートリーダー(コロナMTP32)で492nm(リファレンス波長630nm)の吸光度を測定した。比較として、実施例3と同様に、担体:酵素の重量比0.66で担体−酵素結合物を調製した後、抗HCVコア抗原モノクローナル抗体を結合させたものを用いた。〔図4〕。 図4より、アミノ基をブロックした酵素抗体複合体の反応性はブロックしていないものと比較してその約88.1%の活性を示し、担体にのみ抗体が結合しても十分な反応性を示すことが確認された。本発明のブロック化酵素抗体複合体は、大過剰量の酵素を使用していないため、担体上・酵素上のいずれにも抗体が結合することが可能であるが、担体上にのみプローブである抗体が結合しても十分な反応性を示すと思われる。 実施例4で調製した酵素抗ProGRPモノクローナル抗体複合体と従来法の酵素抗体を用いてのProGRPの検出感度比較 96穴マイクロプレートに抗ProGRPモノクローナル抗体(2B10)を5μg/mlの濃度で200μlを加え、4℃で一晩インキュベートした。10mMリン酸緩衝液pH7.3(PBS)で2回洗浄後、0.5%カゼインを350μl加え2時間インキュベートした。吸引によって0.5%カゼインを除去後、組換え体ProGRP(31−98)を8000pg/mlから3倍ずつの希釈系列を調製しサンプルとして添加し、37℃で60分間インキュベートした。洗浄液で5回洗浄を行ない、2次抗体として、実施例4で調製した酵素−抗ProGRPモノクローナル抗体複合体あるいは従来法で調製した酵素抗体をいずれもHRP濃度で換算して、1.5μg/mlの濃度で200μlを加え30分間インキュベートした。さらに洗浄液で6回洗浄し、基質溶液(10mgオルトフェニレンジアミン、過酸化水素)200μlを加え30分間インキュベートした。5N硫酸を50μlを加えて酵素反応を停止させ、マイクロプレートリーダー(コロナMTP32)で492nm(リファレンス波長630nm)の吸光度を測定した。図5にその結果を示した。横軸はProGRPの濃度、縦軸は492nmの吸光度を示すものである。実施例4で調製した酵素抗体複合体が従来法で調製した酵素標識抗体と比較して著しくシグナルが高いことがわかった。0pg/mlとOD0.020の差を検出限界と仮定すると、従来法の酵素抗体では約115pg/ml、実施例3の酵素抗体複合体では約7pg/mlが検出可能で、つまり従来法と比較して16.4倍感度が上昇した。健常人血清中ProGRP濃度は約14pg/ml、カットオフ値は50pg/ml前後である(Jpn.J.Cancer Res.1995 86,698−705)ことから、従来法では健常人検体や、肺小細胞がん患者検体の一部でProGRPを検出できないこととなる。本発明により、このように従来法では検出できなかった患者や健常人の検体中のProGRPも検出が可能となり、その有用性が確認された。本発明の酵素抗HCVコア抗原モノクローナル抗体複合体のゲルろ過による分子量解析の結果を示す。酵素抗HCVコア抗原モノクローナル抗体複合体と従来法の酵素抗体を用いてのコア抗原の検出感度比較の結果を示す。モノクローナル抗体1種類を担体−酵素複合体と結合させた場合と、モノクローナル抗体2種を担体−酵素複合体と結合させた場合の反応性を示す。酵素のアミノ基をブロックしてプローブを結合させたものとアミノ基をブロックせずにプローブを結合させたものの反応性を示す。酵素抗ProGRP抗原モノクローナル抗体複合体と従来法の酵素抗体を用いてのProGRPの検出感度比較の結果を示す。 分子量20,000〜4,000,000の2分子以上の担体が酵素を介して結合し、該担体に酵素が結合した複合体に、プローブ分子が結合したブロック化酵素プローブ複合体。 担体と酵素分子とが、担体上の官能基と酵素分子内の糖鎖を酸化して得られるアルデヒド基により結合している、請求項1に記載のブロック化酵素プローブ複合体。 担体が、デキストラン、アミノデキストラン、フィコール、デキストリン、アガロース、プルラン、各種セルロース、キチン、キトサン、β−ガラクトシダーゼ、サイログロブリン、ヘモシアニン、ポリリジン、ポリペプチド及びDNAからなる群より選ばれる1種以上である、請求項1または2のいずれか1項に記載のブロック化酵素プローブ複合体。 酵素が、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼおよびルシフェラーゼからなる群より選ばれる1種以上である、請求項1または2のいずれか1項に記載のブロック化酵素プローブ複合体。 プローブが抗体分子もしくはその機能性断片、プロテインA、プロテインG、プロテインL、レクチン、レセプター、およびアビジン類からなる群より選ばれる1種以上である、請求項1または2のいずれか1項に記載の酵素プローブ複合体。 2種類以上のプローブを結合させた請求項1から5のいずれか1項に記載のブロック化酵素プローブ複合体。 抗体分子もしくはその機能性断片が抗HCVコア抗原抗体、抗ガストリン放出ペプチド前駆体抗体およびそれらの機能性断片からなる群より選ばれる1種以上である、請求項5または6に記載のブロック化酵素プローブ複合体。 ブロック化酵素プローブ複合体の分子量が440,000以上である請求項1から7のいずれか1項に記載のブロック化酵素プローブ複合体。 請求項1から8のいずれかに1項に記載のブロック化酵素プローブ複合体を含む免疫測定用キットまたは核酸検出試薬。 分子量20,000〜4,000,000の担体と酵素を結合させブロック体を形成するステップ、及びそのブロック体にプローブを結合させるステップからなる、請求項1から8のいずれか1項に記載のブロック化プローブ複合体を製造する方法。 担体と酵素分子の重量比が担体:酵素=1:0.1〜1:20で反応させてブロック体を形成させる請求項10に記載の方法。