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タイトル:特許公報(B2)_リポソーム及びこれを用いた細胞に対する物質注入方法
出願番号:2006542474
年次:2012
IPC分類:A61K 47/42,A61K 9/127,A61K 38/00


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森田 育男 秋吉 一成 野村 慎一郎 JP 5057362 特許公報(B2) 20120810 2006542474 20051102 リポソーム及びこれを用いた細胞に対する物質注入方法 国立大学法人 東京医科歯科大学 504179255 大日本印刷株式会社 000002897 平木 祐輔 100091096 石井 貞次 100096183 藤田 節 100118773 森田 育男 秋吉 一成 野村 慎一郎 JP 2004319685 20041102 20121024 A61K 47/42 20060101AFI20121004BHJP A61K 9/127 20060101ALI20121004BHJP A61K 38/00 20060101ALI20121004BHJP JPA61K47/42A61K9/127A61K37/02 A61K 47/00-47/48 A61K 9/00-9/72 CA/BIOSIS/MEDLINE/EMBASE/WPIDS(STN) 国際公開第2002/019966(WO,A1) Biochemical Journal,1999年,Vol.339, No.2,pages 247-253 The Journal of Biological Chemistry,1999年,Vol.274, No.9,pages 5581-5587 8 JP2005020486 20051102 WO2006049307 20060511 18 20081022 福井 悟 本発明は、いわゆるドラッグ・デリバリー・システムや生化学実験一般に使用されるリポソーム、及びこれを用いた細胞に対する物質注入方法に関する。 リポソームを用いたドラッグ・デリバリー・システム(以下、DDSと呼ぶ)の概説を、非特許文献1を参照して理解することができる。リポソームを用いたDDSにおける主要な問題点としては、リポソーム内に充填された薬剤の投与効率の低さを挙げることができる。これを解決する一つの手法としては、癌細胞等の標的細胞を標的とするような指向性をリポソームに付与する手法を挙げることができる。例えば、レクチン(糖鎖認識タンパク質)を特異的に認識する糖鎖を膜中に導入したリポソームを使用することによって、リポソームの標的指向性を制御するような手法が開発されている。 ところが、リポソームの標的指向性を向上させる手法は、リポソームと標的細胞との相互作用に着目したアプローチであるが、リポソーム内部に充填された薬剤が標的細胞へ移動する作用機序に着目したアプローチではない。したがって、従来の手法では、リポソーム内に充填された薬剤の投与効率の低さが依然として問題であった。 一方、リポソーム膜中にタンパク質を導入することを開示する文献として非特許文献2及び3を挙げることができる。これら非特許文献2及び3においては、細胞間の物質移動経路であるギャップジャンクションを構成するコネキシンを、導入対象のタンパク質としている。 非特許文献2には、無細胞系でコネキシン26を合成した後、コネキシン26をリポソームへ組み込んだことが開示されている。しかしながら、非特許文献2には、コネキシン26を組み込んだリポソームにおいては、ヘミチャンネルが形成され、内部に充填したアスコルビン酸がそのヘミチャンネルから外部へ漏れてしまうことが開示されている。故に、非特許文献2に開示されたリポソームは、内部に薬剤等を充填してDDSに使用することは不可能であると考えられる。 また、非特許文献3には、細胞内で生成されたコネキシン43を精製し、そのコネキシン43をリポソーム膜中に組み込んだことが開示されている。特に、非特許文献3では、コネキシン43をリポソームに組み込んだ後にCIP処理により脱リン酸化することで透過性が上昇することが開示されている。コネキシンのリン酸化部位は細胞内に存在すること及び分子量1500以上の酵素(CIP)による処理であることからすると、コネキシンは、本来、細胞内に存在する部位がリポソーム膜の外側に位置するように組み込まれていることとなる。 以上のように、リポソーム膜にコネキシンを導入する試みを例示することができるが、ギャップジャンクション機能を有する状態でコネクソンを組み込んだリポソームは何ら開示されていない。D.D.Lasicら“liposomes:from basic to applications”Elsevier Science Publishers、(1993年)Ahmad S,Evans WH.“Post−translational integration and oligomerization of connexin 26 in plasma membranes and evidence of formation of membrane pores:implications for the assembly of gap junctions.”(2002)Biochem.J.365:693−699.Doo Yeon Kim,et al.,“Gating Connexin 43 Channels Reconstituted in Lipid Vesicles by Mitogen−activated Protein Kinase Phosphorylation”(1999)J.Biol.Chem.274 No.9,pp.5581−5587 そこで、本発明は、上述した実状に鑑み、内部に充填した物質を標的の細胞に非常に効率よく注入することができるリポソーム、及びこのリポソームを用いた細胞に対する物質注入方法を提供することを目的としている。 上述した目的を達成するため、本発明者らが鋭意検討した結果、コネキシンをリポソーム存在下で合成することに成功し、驚くべきことに、このように合成されたコネキシンがギャップジャンクション機能を有するコネクソンとしてリポソーム膜に導入されることを見出し、本発明を完成するに至った。 すなわち、本発明は以下を包含する。 (1) インビトロ・タンパク質合成系により合成したコネキシンから構成されるコネクソンを、ギャップジャンクション機能を有した状態で組み込んでなるリポソーム。 (2) 上記コネキシンはコネキシン43であることを特徴とする(1)記載のリポソーム。 (3) 特定の細胞に対して結合能を有するタンパク質をさらに組み込んだことを特徴とする(1)記載のリポソーム。 (4) 内部に対象物質を含むことを特徴とする(1)〜(3)いずれかに記載のリポソーム。 (5) 上記対象物質は、生理活性成分であることを特徴とする(4)記載のリポソーム。 (6) 上記対象物質は分子量1500以下の成分を主体とすることを特徴とする(4)記載のリポソーム。 (7) (4)乃至(6)いずれかに記載のリポソームを、単離された細胞又は培養細胞に対して接触させ、上記単離された細胞又は培養細胞に上記対象物質を注入する、細胞に対する物質注入方法。 (8) (5)記載のリポソームを投与する工程を含む疾患治療方法。 本明細書は本願の優先権の基礎である日本国特許出願2004−319685号の明細書および/または図面に記載される内容を包含する。 図1は、コネクソンを膜中に組み込んだリポソームの作製方法を模式的に示す図である。 図2は、インビトロ・タンパク質合成で合成したEGFPを組み込んだリポソームを撮像した写真である。 図3は、膜中にコネキシン43を組み込んだリポソーム及び膜中にEGFPを組み込んだリポソームを用いて、コネキシン及びEGFPの存在している画分を検討した結果を示す電気泳動写真である。 図4は、膜中にコネキシン43を組み込んだリポソーム内のcalceinが細胞に注入された結果を示す写真である。 図5は、膜中にコネキシン43を組み込んだリポソーム内のcalceinが細胞に注入された結果を示す写真である。 図6は、NEMO結合ドメインによる遺伝子発現制御を模式的に示す図である。 図7A及びBは、NF−kBレポーター遺伝子アッセイの結果を示す特性図である。 図8は、COX−2のmRNAを検出した結果を示す特性図である。 図9は、膜中にコネキシン43を組み込んだリポソーム内のcalceinが細胞に注入された結果を示す透過光写真である。 図10は、膜中にコネキシン43を組み込んだリポソーム内のcalceinが細胞に注入された結果を示す蛍光写真である。 以下、本発明に係るリポソーム及び細胞に対する物質注入方法を、図面を参照して詳細に説明する。1.リポソーム 本発明に係るリポソームは、インビトロ・タンパク質合成系により合成したコネキシンから構成されるコネクソンを、ギャップジャンクション機能を有した状態で組み込んでなるものである。 リポソームとは、本来、膜状に集合した脂質及び内部の水相から構成される閉鎖小胞を意味する(D.D.Lasicら“liposomes:from basic to applications”Elsevier Science Publishers、p.1−171(1993年)参照。)。したがって、本発明に係るリポソームは、脂質を主成分とする膜内に、ギャップジャンクション機能を有するコネクソンを導入したものである。 ここで、リポソームにおける脂質としては、公知のグリセロ糖脂質、スフィンゴ糖脂質、コレステロール及びリン脂質を挙げることができる。 グリセロ糖脂質としては、例えば、スルホキシリボシルグリセリド、ジグリコシルジグリセリド、ジガラクトシルジグリセリド、ガラクトシルジグリセリド及びグリコシルジグリセリド等を挙げることができる。スフィンゴ糖脂質としては、例えばガラクトシルセレブロシド、ラクトシルセレブロシド、ガングリオシド等を挙げることができる。 リン脂質としては、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、リゾホスファチジルコリン、スフィンゴミエリン、卵黄レシチン、大豆レシチン及び水素添加リン脂質等の天然または合成のリン脂質を挙げることができる。 上記ホスファチジルコリンとしては、大豆ホスファチジルコリン、卵黄ホスファチジルコリン、ジラウロイルホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン及びジステアロイルホスファチジルコリン等を挙げることができる。上記ホスファチジルエタノールアミンとしては、ジオレオイルフォスファチジルエタノールアミン、ジラウロイルホスファチジルエタノールアミン、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン及びジステアロイルホスファチジルエタノールアミン等を挙げることができる。上記ホスファチジルセリンとしては、ジラウロイルホスファチジルセリン、ジミリストイルホスファチジルセリン、ジパルミトイルホスファチジルセリン及びジステアロイルホスファチジルセリン等を挙げることができる。上記ホスファチジルグリセロールとしては、ジラウロイルホスファチジルグリセロール、ジミリストイルホスファチジルグリセロール、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール及びジステアロイルホスファチジルグリセロール等を挙げることができる。上記ホスファチジルイノシトールとしては、ジラウロイルホスファチジルイノシトール、ジミリストイルホスファチジルイノシトール、ジパルミトイルホスファチジルイノシトール及びジステアロイルホスファチジルイノシトール等を挙げることができる。 本発明において用いられるリポソームは、特に限定されない。好ましいリポソームとしては、実際に生体膜を構成する分子からなり、かつ常温にて液晶相にあるものを挙げることができる。なお、脂質二分子膜は、純物質から形成した場合、温度によってかたいゲル相とやわらかい液晶相の二つの相を持ち、温度変化による相転移を示す。生細胞の膜は混合物であるが、液晶状態にあるとみなされている。 リポソームのサイズは、一般的には20nm〜100μmのものが使用でき、好ましくは200nm〜10μmであり、より好ましくは後述する遠心操作による分離が簡便に行えるGV(Giant Vesicle)が好ましい。ここで、GVとは、直径1μm以上のリン脂質二分子膜小胞を意味する。 リポソームは脂質人工膜で構成される粒子でリン脂質、グリセロ糖脂質、コレステロール等から脂質二重層としてつくられる。その調製には、界面活性剤除去法、水和法、超音波法、逆相蒸留法、凍結融解法、エタノール注入法、押し出し法、及び高圧乳化法等広く公知方法が適用される。リポソームの調製の詳細は特開平9−208599号公報等に詳しい。例えば、界面活性剤除去法としては、ゲル濾過、透析および限外濾過等が一般的に用いられる。 コネキシンとしては、特に限定されることなく、公知のコネキシンを広く使用することができる。なお、コネキシンは、細胞間のコミュニケーションに関与するギャップジャンクションを構成するタンパク質であり、コネキシンの6量体がコネクソンを構成する。コネキシンとしては、例えば、コネキシン46、コネキシン43,コネキシン37、コネキシン40、コネキシン50、コネキシン32、コネキシン26、コネキシン31、コネキシン31.1、コネキシン45、コネキシン30、コネキシン36、コネキシン62、コネキシン31.9及びコネキシン40.1を挙げることができる。 本発明においては上記列挙したコネキシンのなかで、特に、細胞間のギャップジャンクションにおいて主要な役割を果たしているコネキシン43を使用することが好ましい。コネキシン43の塩基配列及びアミノ酸配列をそれぞれ配列番号1及び2に示す。なお、配列番号1及び2に示す塩基配列及びアミノ酸配列はヒト由来のコネキシン43であるが、本発明においては、マウスやラット由来のコネキシン43も同様に使用することができる。 また、本発明に係るリポソームは、脂質及びコネキシン以外の成分として、必要に応じて、コレステロール等のステロール類、コレステロールエステル、グリセリン脂肪酸エステル(例、トリオレイン,トリオクタノイン等)、ポリグリセリン脂肪酸エステル、遊離脂肪酸等からなる膜安定化剤、トコフェロール等からなる抗酸化剤、ステアリルアミン、ジセチルホスフェート及びガングリオシド等の荷電物質を含有していてもよい。これら添加物の配合量は、特に限定されないが、好ましくはリポソームを形成する総脂質に対して、約0.1〜20%(w/w)であることが好ましい。 さらに、本発明に係るリポソームは、生体内に投与した時に網内系への取り込みを回避することを目的として、被覆されていてもよい。ここで、被覆とは、リポソーム自体への被覆のみならず、リポソームの原料脂質中に適当な置換基を有する脂質誘導体を被覆剤として混入させることによって、該置換基をリポソームの外層に位置させて、あたかもリポソーム全体が被覆されたような状態も含む。被覆剤としては、例えば、エフイービーエス・レターズ,第268巻,第235頁,1990年〔FEBS Lett.268、235(1990)〕記載のポリエチレングリコール脂質誘導体、特表平3−507024記載のポリオキシエチレン誘導体、及びバイオケミカル・バイオフィジカル・アクタ、Biochim.Biphys.Acta、1126、1992記載のグルクロン酸脂質誘導体等が挙げられる。被覆剤の使用量は、リポソームの脂質二重層膜構造が維持できる量から適宜選択できるが、例えばリポソームを形成する総脂質に対して約1〜10%(w/w)であることが好ましい。また、被覆の方法は自体公知の方法で行うことができる。 さらにまた、本発明に係るリポソームは、特定の細胞に特異的に物質を注入することを目的として、当該特定の細胞(標的細胞)への指向性を向上させるような物質を含有していても良い。標的細胞への指向性を向上させる物質としては、特に限定されないが、例えば、抗体;抗体フラグメント;グルコース、ガラクトース、マンノース並びにフコース等の細胞表層の糖鎖レセプターに対するリガンドとしての糖鎖;シアル酸並びにその誘導体;細胞表層のペプチド受容体に対するリガンドとしてトランスフェリン並びにその誘導体;葉酸レセプターに対する葉酸誘導体等を挙げることができる。 本発明に係るリポソームは、内部に対象物質を含んでいる。ここで、対象物質とは、細胞に注入する対象となる化合物を意味する。対象物質としては、何ら限定されるものではないが、例えば、薬剤の有効成分として機能既知の化合物、有機化合物、核酸、ペプチド、機能未知の化合物を挙げることができる。また、対象物質は、リポソーム膜中に組み込んだコネクソンを介して細胞内に注入されるため、コネクソン内を通過できる程度の分子量、例えば1500以下であることが好ましい。 このような物質としては、動物、好ましくはヒトに投与できる任意の化合物又は物質組成物であれば、特に限定されない。例えば、物質としては、体内で生理活性を発揮し、疾患の予防または治療に有効な化合物または組成物、例えば造影剤等の診断に用いる化合物または組成物、さらに遺伝子治療に有用な遺伝子等も含まれる。前記生理活性成分としては、例えば、カルシウム剤、活性型ビタミンD3(例、1α−ヒドロキシビタミンD3、1α−2,5−ジヒドロキシビタミンD3、フロカルシトリオール、セカルシフェロール等)、カルシトニンおよびその誘導体、ペプチド類、β−アラニル−3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン、キサンチン誘導体、トロンボモデュリン、17β−エストラジオール、ノルエチンドロン等のステロイド系ホルモン、ポリフェノール化合物、プロスタグランジン類、インターフェロン等の公知の骨疾患または関節疾患の予防・治療剤を挙げることができる。また、物質としては、モルフィン、コデイン及びペンタゾシン等の中枢性鎮痛剤、プレドニゾロン、デキサメタゾン及びベタメタゾン等のステロイド剤、アスピリン、インドメタシン、ロキソプロフェン及びジクロフェナクナトリウム等の非ステロイド性抗炎症剤、並びに、ブロメルシン、リゾチーム及びプロクターゼ等の消炎酵素剤等の消炎鎮痛剤を挙げることができる。さらに、物質としては、金チオリンゴ酸ナトリウム、オーラノフィン、D−ペニシラミン、ブシラミン、ロベンザリット、アクタリット、サラゾスルファピリジン等の抗リウマチ薬を挙げることができる。さらにまた、物質としては、メトトレキサート、サイクロフォスファミド、アザチオプリン及びミゾリビン等の免疫抑制剤、アシクロビル、ジドブディン(zidovudin)及びインターフェロン類等の抗ウイルス剤、アミノグリコシド、セファロスポリン及びテトラサイクリン等の抗菌剤、ポリエン系抗生物質、並びに、イミダゾール及びトリアゾール等の抗真菌剤を挙げることができる。また、物質としては、その他にも、コレステロール等のステロールや、例えば糖やデンプン等の炭水化物、細胞受容体蛋白質、免疫グロブリン、酵素、ホルモン、神経伝達物質、糖蛋白質、ペプチド、蛋白質、色素、放射性同位体及び放射性同位体標識化合物等の放射線標識、放射線不透過性化合物、蛍光性化合物、気管支拡張剤、局所麻酔薬等を挙げることができる。 本発明に係るリポソームは、中でも抗腫瘍剤を含むことが好ましい。抗腫瘍剤としては、特に限定されないが、例えば、アルキル化剤、各種代謝拮抗剤、抗腫瘍性抗生物質、その他抗腫瘍剤、抗腫瘍性植物成分、BRM(生物学的応答性制御物質)、血管新生阻害剤、細胞接着阻害剤、マトリックス・メタロプロテアーゼ阻害剤またはホルモン等が挙げられる。 より具体的には、アルキル化剤として、例えば、ナイトロジェンマスタード、ナイトロジェンマスタードN−オキシド、イホスファミド、メルファラン及びシクロホスファミド、クロラムブシル等のクロロエチルアミン系アルキル化剤、カルボコン及びチオテパ等のアジリジン系アルキル化剤、ディブロモマンニトール及びディブロモダルシトール等のエポキシド系アルキル化剤、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、ニムスチンハイドロクロライド、クロロゾトシン及びラニムスチン等のニトロソウレア系アルキル化剤、ブスルファン、トシル酸インプロスルファン及びピポスルファン等のスルホン酸エステル類、ダカルバジン、並びに、プロカルバジン等を挙げることができる。 各種代謝拮抗剤としては、例えば、6−メルカプトプリン、アザチオプリン、6−チオグアニン及びチオイノシン等のプリン代謝拮抗剤、フルオロウラシル、テガフール、テガフール・ウラシル、カルモフール、ドキシフルリジン、ブロクスウリジン、シタラビン及びエノシタビン等のピリミジン代謝拮抗剤、メトトレキサート及びトリメトレキサート等の葉酸代謝拮抗剤等、並びに、その塩もしくは複合体を挙げることができる。 抗腫瘍性抗生物質としては、例えば、ダウノルビシン、アクラルビシン、ドキソルビシン、ピラルビシン及びエピルビシン等のアントラサイクリン系、アクチノマイシンD等のアクチノマイシン系、クロモマイシンA3等のクロモマイシン系、マイトマイシンC等のマイトマイシン系、ブレオマイシン及びペプロマイシン等のブレオマイシン系等、並びに、それらの塩もしくは複合体を挙げることができる。その他の抗腫瘍剤としては、例えば、シスプラチン、カルボプラチン、タモキシフェン、L−アスパラギナーゼ、アセブラトン、シゾフィラン、ピシバニール、ウベニメクス及びクレスチン等、並びに、それらの塩もしくは複合体を挙げることができる。 抗腫瘍性植物成分としては、例えば、カンプトテシン、ビンデシン、ビンクリスチン及びビンブラスチン等の植物アルカロイド類、エトポシド及びテニポシド等のエピポドフィロトキシン類、並びに、その塩もしくは複合体を挙げることができる。また、ピポブロマン、ネオカルチノスタチン及びヒドロキシウレア等も使用することができる。BRMとしては、例えば、腫瘍壊死因子及びインドメタシン等、並びに、その塩もしくは複合体を挙げることができる。血管新生阻害剤としては、例えば、フマギロール誘導体、及び、その塩もしくは複合体を挙げることができる。細胞接着阻害剤としては、例えば、RGD配列を有する物質、及び、その塩もしくは複合体を挙げることができる。マトリックス・メタロプロテアーゼ阻害剤としては、例えば、マリマスタット、バチマスタット等、及び、その塩もしくは複合体を挙げることができる。ホルモンとしては、例えば、ヒドロコルチゾン、デキサメタゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、プラステロン、ベタメタゾン、トリアムシノロン、オキシメトロン、ナンドロロン、メテノロン、ホスフェストロール、エチニルエストラジオール、クロルマジノン及びメドロキシプロゲステロン等、並びに、その塩もしくは複合体を挙げることができる。 上述した本発明に係るリポソームの製造方法は、コネキシンを合成するためのインビトロ・タンパク質合成系とリポソームを形成するためのリポソーム再構成系とを同時に進行させる方法を挙げることができる。ここで、インビトロ・タンパク質合成系とは、無細胞タンパク質合成系とも呼ばれ、転写反応と翻訳反応とを一つのチューブ内で共役させ、タンパク質を合成する系を意味する。例えば、エッペンドルフチューブなどで、細胞抽出液、タンパク質合成に必要な基質類(ヌクレオチドやアミノ酸)、緩衝液や塩類、コネキシンをコードするDNA及びRNAポリメラーゼを混合し、適切な温度に加温すると、転写・翻訳反応がおこり、鋳型にコードされたタンパク質が合成される。細胞抽出液としては、ウサギ網状赤血球、コムギ胚芽の細胞抽出液を使用することができる。また、リポソーム再構成系とは、例えば、脂質をジエチルエーテル、イソプロピルエーテル又はクロロホルムなどの有機溶媒に溶解した後、有機溶媒を減圧下で蒸発除去して薄膜とした後に、有効成分水溶液を加えて、相転移温度よりやや高め温度で混合することでリポソームを構築する系である。 本発明に係るリポソームの製造方法では、上述したリポソーム再構成系において、有効成分水溶液にインビトロ・タンパク質合成に必要な成分を加えるとともに、リポソーム内部に充填する対象物質を加える。これによって、再構成されたリポソーム内部に、インビトロ・タンパク質合成系に必要な成分及び対象物質を充填することができる。すなわち、本発明に係るリポソームの製造方法では、リポソームの存在下においてインビトロ・タンパク質合成によりコネキシンを合成する。そして、リポソーム内部に存在するインビトロ・タンパク質合成系によってコネキシンが合成されると、合成されたコネキシンは6量体を形成して、コネキシン6量体であるコネクソンがリポソーム膜中に存在することとなる。 すなわち、詳細には、先ず、脂質として卵黄ホスファチジルコリン(ナカライ社製)を5mMになるよう有機溶媒(クロロホルムとメタノールを体積比でそれぞれ2対1に調整した溶媒)に溶解させたものを50μLとり、丸底試験管に入れてアルゴン気流下で溶媒を蒸発させる。この操作により試験管底部に形成された構造を乾燥脂質フィルムと呼ぶ。次に、インビトロ・タンパク質合成をおこなわせるためのウサギ網状赤血球の細胞抽出液(TNT Quick Coupled transcription/translation Systems、プロメガ社)を50μL調整する。この溶液に対して対象物質を混合しておく。これに、例えば、コネキシン43の遺伝子をコードしたプラスミドを加え、静かに攪拌した後、直ちに乾燥脂質フィルムに加える。このとき、最終的な脂質の濃度が5mMとなるように調整する。この試験管を密封し、直ちに37℃のインキュベータに入れ、90分間静置した後、4℃に冷却する。この操作により,リポソームの形成及びコネキシンのリポソーム膜への組み込み、さらに対象物質のリポソーム内への封入が生じ、リポソーム懸濁液が得られる。 なお、本発明に係るリポソームの製造方法としては、上述した方法に限定されず、公知の方法を使用することができる。例えば、脂質をジエチルエーテル、イソプロピルエーテル又はクロロホルムなどの有機溶媒に溶解した後、有効成分水溶液を加えて乳化し、W/O型エマルジョンを得て、適度の温度下の減圧下で有機溶媒を蒸発除去してリバース・フェイズ・エバポレーションベシクル(REV)を得ることができる。さらに、リポソームの他の製造方法としては、ステイブル・プリメラー・ベシクル(SPLV)法〔特表昭59−500952号公報(WO83/03383号公報)〕や、デハイドレイション・レハイドレイション・ベシクル法〔シー・クルビー(C.Kriby)ら、バイオテクノロジー(Biotechnology)、11月号、979(1984)〕が挙げられる。また、対象物質が脂溶性であって水への溶解度が低い場合は、当該対象物質を上記脂質有機溶媒に溶かすことによって、リポソーム内に当該対象物質を含有させることができる。このようにして得られたリポソームは、強制篩過等を行うことにより好ましい粒子サイズに調整することができる。このようにして得られるリポソームはそのまま使用してもよいが、例えば、遠心分離、ゲル濾過あるいは透析等によってリポソーム中に含有されない遊離の有効成分を分離除去した後に使用することが好ましい。 より具体的なリポソームの製造方法としては、例えば、予め、インビトロ・タンパク質合成系に必要な成分と対象物質と脂質とをクロロホルムに溶解させた後、バンガム(Bangham)らの方法〔ジャーナル・オブ・モレキュラ・バイオロジー 第13、238頁、1965年(J.Mol.Biol.13,238,1965)〕にしたがって、ガラス壁に脂質フィルムを形成させ、そこに水を加えて水和させマルチラメラベシクル(MLV)を作製し、得られたマルチラメラベシクル(MLV)をさらに一定の大きさのポアサイズのフィルターにより強制篩過することにより一定の粒度分布を持ったリポソーム分散液を得ることができる。強制篩過を行う場合のフィルターのポアサイズは、求めるリポソームの粒子経によって適宜調節される。例えば約20〜100,000nm、好ましくは約50〜10,000nm、さらに好ましくは約50〜5,000nm、より好ましくは約100〜500nmである。 得られたリポソーム分散液は、そのまま用いてもよく、あるいは糖類、多価アルコール、水溶性高分子、非イオン界面活性剤、抗酸化剤、pH調節剤、水和促進剤などの添加物を添加してもよい。また、前記添加物を添加したリポソーム製剤分散液を乾燥(例、凍結乾燥、噴霧乾燥等)することにより、乾燥リポソームとしてもよい。これらの乾燥リポソームも本発明のリポソームに含まれる。リポソーム分散液の乾燥の方法として、例えば、特開昭64−3115号公報記載のリポソーム分散液に糖を加え凍結乾燥する方法があげられる。該凍結乾燥条件は、製剤の凍結乾燥に用いられる一般的な条件が用いられる。糖以外の添加物を添加する場合も特開昭64−3115号公報記載の方法に従って行うことができる。該乾燥の結果、上記添加物は粉末媒体として乾燥リポソーム中に分散する。乾燥リポソーム製剤における粉末媒体の含量は、リポソーム100重量部に対して、好ましくは約1〜1000重量部、より好ましくは約50〜500重量部である。該乾燥リポソームは、水、生理食塩水、りん酸緩衝液,クエン緩衝液,酢酸緩衝液などの緩衝液(好ましくは、水)を水性媒体として加えてリポソーム分散液とすることにより、注射剤として用いることができる。該水性媒体には、前記添加物を予め添加して用いてもよい。こうして、得られたリポソーム分散液は、そのまま用いてもよく、あるいは前記添加物を添加して用いてもよい。リポソーム分散液中の前記添加物は、生理的浸透圧を基準にして、前記水性媒体のリポソーム内相の浸透圧に対する相対的浸透圧が約0.8〜10倍になる濃度に調整されるように添加されることが好ましい。例えば、糖類の場合、リポソーム分散液中に、例えば約0.1〜100%(W/W)、好ましくは約1〜20%(W/W)添加される。 前記添加物における糖類としては、例えば、単糖類(例、マンニトール、グルコース,グルコサミン,ソルビトール等)、二糖類(例、トレハロース,ラクトース,シュークロース等)、三糖以上の多糖類(例、グルコサミングリカン,ヒアルロン酸,デキストラン,デキストラン硫酸,コンドロイチン,コンドロイチン硫酸等)等が挙げられる。前記添加物における多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、ポリエチレングルコール等が挙げられる。前記添加物における水溶性高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)等が挙げられる。前記添加物における非イオン界面活性剤としては、例えば、プルロニック、HCO−50、HCO−60、Tween20、Tween80等が挙げられる。前記添加物における抗酸化剤としては、例えば、アスコルビン酸等が挙げられる。前記添加物におけるpH調整剤としては、例えば、グリシン、酢酸アンモニウム、クエン酸、塩酸、水酸化ナトリウム等が挙げられる。前記添加物における水和促進剤としては、例えば、自己架橋形成型ポリアクリル酸、水溶性セルロール誘導体等の、増粘性でかつ吸水性を有する化合物が挙げられる。前記添加物のうち、好ましくは糖類、より好ましくは単糖類(さらに好ましくはマンニトール)または二糖類(さらに好ましくはトレハロース)が用いられる。2.リポソームを用いた物質注入方法 上記1で説明した本発明に係るリポソームは、細胞膜にコネクソンを有する細胞に対して対象物質を注入することを目的とする生化学実験一般に使用することができる。細胞としては、特に限定されず、通常当該分野で使用されている動物細胞、昆虫細胞、植物細胞等を使用することができる。例えば、動物細胞としては、インビトロで培養された動物細胞及び/又は動物組織を挙げることができ、より具体的には、COS細胞やCHO細胞、あるいは、抗体を産生するマウス−ヒト、マウス−マウス、マウス−ラット等のハイブリドーマに代表される融合細胞、BHK細胞、HeLa細胞等を挙げることができる。 上述したリポソームを含む溶液を、単離された細胞又は培養細胞に対して接触させる。リポソームを含む溶液としては、上述したようなリポソームの製造方法において調製した溶液を使用することができる。すなわち、RNAポリメラーゼ、原料となるアミノ酸、RNase阻害剤などを含むウサギ網状赤血球のライゼートの混合液(キット製品でマスターミックスになっているもの)にCx43をコードするT7プロモーター付きのプラスミドを50μLのインビトロ溶液に対して1μg添加した溶液に、リポソームの原料となる脂質を最終濃度5mMとなるように調整した溶液でリポソームの製造した後の溶液を使用することができる。用いるリポソームは、好ましくは実際に生体膜を構成する分子からなるものがよく、例えば、卵黄レシチンを用いる。リポソームのサイズは、より好ましくは後述する遠心操作による分離が簡便に行える直径1μm以上のGV(Giant Vesicle)が好ましい。なお、全ての調整反応はクリーンベンチ内にて氷上で行うことが望ましい。その他の条件設定については、インビトロ発現キットのプロトコールに従うことができる。また、後述する実施例において使用したcalceinおよびNBDペプチドは滅菌済みの精製水にて希釈したものを用いた。 また、リポソームを含む溶液を細胞に対して接触させる条件としては、培養液1mLに対してリポソーム溶液10〜20μLをゆっくり添加する。5%CO2、37℃の通常の培養条件下にてインキュベートする。インビトロ溶液の添加によるpH、塩濃度および発現溶液含有成分などの影響については詳しい検討を行ってはいないが、添加48時間以上培養しても細胞の形態に変化が見られないこと等から判断すると毒性はないと考えられる。 本発明に係るリポソームを用いた場合、細胞に対して非常に効率よく対象物質を注入することができる。特に、本発明に係るリポソーム膜中のコネクソンは、インビトロ・タンパク質合成系で合成されているため、リン酸化されていない。一般に、細胞中のコネクソンは、リン酸化によって物質の透過性が抑制され、脱リン酸化によって透過性が上昇することが知られている。しかしながら、本発明に係るリポソームにおいては、コネクソンがリン酸化されていないにも拘わらす、内部の対象物質を外部に透過させることなく保持することができる。そして、本発明に係るリポソーム膜中のコネクソンが対象細胞の細胞膜に存在するコネクソンとギャップジャンクションを形成することによって、初めてリポソーム内部の対象物質が対象細胞中へ移行することとなる。このように、本発明に係るリポソームは、ギャップジャンクション機能を有するコネクソンが膜中に組み込まれた、従来にない全く新規なリポソームである。3.リポソームの治療剤としての利用、リポソームを用いた治療方法 本発明に係るリポソームは、上述したように、内部に薬剤の有効成分を含有することによってリポソーム製剤として使用することもできる。言い換えると、本発明に係るリポソームは、疾患の治療に使用することができ、新たな治療方法に使用することができる。 本発明に係るリポソームを含む医薬組成物は、対象物質として生理活性成分を含有しているリポソーム分散液をそのまま用いてもよく、あるいは糖類、多価アルコール、水溶性高分子、非イオン界面活性剤、抗酸化剤、pH調節剤、水和促進剤などの添加物を添加してもよい。また、リポソーム分散液又は前記添加物を添加したリポソーム分散液を乾燥(例、凍結乾燥、噴霧乾燥等)することにより、乾燥リポソーム製剤としてもよい。これらの乾燥リポソーム製剤も本発明に係るリポソームを含む医薬組成物に含まれる。リポソーム分散液の乾燥の方法として、例えば、リポソーム分散液に糖等を加え、通常の製剤の凍結乾燥に用いられる一般的な条件で凍結乾燥する方法があげられる。乾燥リポソーム製剤は、水、生理食塩水、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、酢酸緩衝液などの緩衝液を加えてリポソーム分散液とすることにより、注射剤等の液剤として用いることができる。こうして、得られたリポソーム分散液は、そのまま用いてもよく、あるいは前記添加剤や薬理学的に許容される賦形剤を添加して用いてもよい。リポソーム分散液中の添加物は、生理的浸透圧になる濃度に調整されるように添加されることが好ましい。また。乾燥リポソーム製剤はそのまま、あるいは薬理学的に許容される賦形剤と共に顆粒剤、錠剤などの固形剤として使用してもよい。 本発明に係るリポソームを含む医薬組成物は、通常、該リポソームと薬理学的に許容される賦形剤とを公知の方法[製剤技術分野において慣用の方法、例えば日本薬局方(例えば第13改正)に記載の方法等]にしたがって混合することによって製造される。薬学的に許容される賦形剤としては、製剤素材として慣用の各種有機あるいは無機賦形剤物質が用いられ、固形製剤における滑沢剤、結合剤、崩壊剤;液状製剤における溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、無痛化剤等が挙げられる。また必要に応じて、界面活性剤、発泡剤、色素、酸味剤、防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤、矯味剤等の製剤添加物を用いることもできる。 薬学的に許容される賦形剤として、より具体的には、クエン酸カルシウム、リン酸カルシウム等の無機塩の賦形剤;例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、軽質無水ケイ酸、含水二酸化珪素等の滑沢剤;ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、α化デンプン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アラビアゴム末、ゼラチンまたはプルラン等の結合剤;低置換度ヒドロキシプロピルセルロースや結晶セルロース等のセルロース類、トウモロコシデンプン、部分アルファ化デンプンやヒドロキシプロピルスターチ等の各種デンプンもしくはデンプン誘導体、クロスポビドンまたはベントナイト等の崩壊剤等が挙げられる。 また、塩溶液、ブドウ糖溶液または塩溶液とブドウ糖溶液の混合物等の溶剤;例えば、デキストラン、ポリビニルピロリドン、安息香酸ナトリウム、エチレンジアミン、サリチル酸アミド、ニコチン酸アミド、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体等の溶解補助剤;例えば、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、酒石酸緩衝剤、酢酸緩衝剤等の緩衝剤;例えばアルブミン、グリセリン、プロピレングリコール等の多価アルコール、リドカイン塩酸塩、ベンジルアルコール等の無痛化剤等が挙げられる。 さらに、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、リン脂質、グリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ショ糖脂肪酸エステル等の界面活性剤;例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム等の発泡剤;例えばクエン酸、酒石酸、リンゴ酸等の酸味剤;例えば、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄、タール系色素等の色素;例えば、レモン、レモンライム、オレンジ、パイン、ミント、メントール等の香料;例えば、サッカリンナトリウム、グリチルリチン二カリウム、アスパルテーム、ステビア、ソーマチン等の甘味剤;例えば、クエン酸、クエン酸ナトリウム、コハク酸、酒石酸、フマル酸、グルタミン酸等の矯味剤等が挙げられる。 さらにまた、安定化剤としては、例えば糖類や亜硫酸ナトリウム等が挙げられる。糖類としては、グルコース、フルクトース、キシリトール、フコース、ガラクトース等の単糖類;マルトース、シュークロース、ラクトース、ラクツトース、メリビオース等の二糖類;フルクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、ラクトオリゴ糖等のオリゴ糖類;デキストラン等の多糖類等が挙げられる。保存剤としては、例えば、パラオキシ安息香酸エステル、ベンジルアルコール、クロロクレゾール、フェネチルアルコール、塩化ベンゼトニウム等が挙げられる。キレート剤としては、例えば、エデト酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム等が挙げられる。抗酸化剤としては、例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム等が挙げられる。 本発明に係る医薬の剤形としては、例えば錠剤、カプセル剤(ソフトカプセル、マイクロカプセル、腸溶性カプセルを含む)、散剤、顆粒剤、シロップ剤等の経口剤;および注射剤(例、皮下注射剤、静脈内注射剤、筋肉内注射剤、腹腔内注射剤等)、外用剤(例、経鼻投与製剤、経皮製剤、軟膏剤等)、坐剤(例、直腸坐剤、膣坐剤等)、ペレット、点滴剤、徐放性製剤(例、徐放性マイクロカプセル等)等の非経口剤が挙げられる。本発明に係る医薬は、注射剤の剤形を有していることが特に好ましい。 本発明に係るリポソーム製剤の投与量は、リポソームが有する生理活性物質(対象物質)の種類、医薬の剤型、治療すべき病態の種類、症状および疾患の重篤度、患者の年齢、性別もしくは体重、投与方法等により異なるので、一概には言えないが、医師が上記の状況を総合的に判断して決定することができる。 本発明に係るリポソーム製剤の投与経路は、特に限定されず、上述のような本発明にかかる医薬の形態により、経口投与してもよいし、非経口投与してもよい。本発明の好ましい実施態様は非経口投与である。例えば、本発明にかかる医薬が注射剤の場合、例えば、関節内注射、静脈内注射、皮下注射、皮内注射、筋肉内注射あるいは腹腔内注射のような医療上適当な投与形態が例示できる。 以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は以下の実施例に限定されるものではない。 先ず、実施例1では、リポソーム存在下におけるインビトロ・タンパク質合成により、コネキシン43(以下、Cx43)からなるコネクソンを有するリポソームを構築した(図1参照)。具体的には、先ず、卵黄由来のホスファチジルコリンの有機溶媒(クロロホルム:メタノール/2:1)溶液を試験管に入れ、真空乾燥により溶媒を蒸発させた。これにより、試験管の内面に脂質のフィルムを形成することができた。 次に、内面に脂質フィルムを有する試験管内に、インビトロ・タンパク合成溶液及びCx43遺伝子をコードするプラスミドを添加し、30℃で90分間静置した。インビトロ・タンパク合成溶液は、RNAポリメラーゼ、原料となるアミノ酸、RNase阻害剤などを含むウサギ網状赤血球のライゼートの混合液(キット製品でマスターミックスになっているもの)にCx43をコードするT7プロモーター付きのプラスミドを50μLのインビトロ溶液に対して1μg添加した溶液に、リポソームの原料となる脂質を最終濃度5mMとなるように調整した溶液である。なお、本例では、上記プラスミドとして、Cx43コード領域にEGFPをコードする配列を融合させたものを使用した。 この処理によって、試験管内でリポソームの形成とCx43タンパク質の発現とが起こり、Cx43からなるコネクソンを有するリポソームを試験管内で構築することができた。構築したリポソームをオリンパス社製倒立型顕微鏡IX−70で観察(励起波長:488nm、蛍光波長:505〜530nmにて観察)した結果を図2に示した。図2から判るように、本例によれば、脂質膜内にEGFPの蛍光を観察することができた。 次に、Cx43およびEGFPを含むリポソーム溶液をそれぞれ53000rpm、4℃、30分間で超遠心し、脂質膜画分と可溶性の画分とに分離した。これらの成分をウェスタンブロット法により検討した結果を図3に示した。図3から判るように、水溶性タンパク質であるEGFPは可溶性の画分において多く検出されたのに対し、Cx43は脂質膜画分においてより多くのタンパク質(80−90%)が検出された。このことより、Cx43は自発的に脂質膜に移行することが示唆された。 実施例2では、コネクソンを有するリポソームと細胞との間における、物質の移行を検討した。 先ず、細胞内の物質を、コネクソンを有するリポソーム内部に移行させることを検討した。細胞としては、Cx43を恒常的に発現させた骨肉腫細胞であるU20Sをcalcein−AM(無色、モレキュラープローブス社製)で前処理したものを準備した。リポソームとしては、EGFPをコードする配列を有さず、Cx43コード領域を有するプラスミドを使用した以外は、実施例1と同様にして調製したものを準備した。 上記の前処理から1時間後にCx43を発現させたリポソームを培養液に添加した。添加2時間後、細胞内において加水分解されたcalcein(緑色の蛍光)がリポソーム内にも移行していることがレーザー共焦点顕微鏡により観察された(図4「Cx43(+)」)。一方、Cx43を発現させていないリポソームではcalceinのリポソームへの伝播は認められなかった(図4「No gene」)。なお、レーザー共焦点顕微鏡としては、ツアイス社製のLSM510METAを使用し、calceinの励起波長を488nmとし、蛍光波長を505−530nmとして観察した。また、脂質膜成分に含まれるTexasRedは励起波長を543nmとし、蛍光波長560nmにて観察した。 次に、本実施例では、コネクソンを有するリポソーム内部の物質を、細胞内に移行させることを検討した。本実施例においてリポソームは、10mMのcalcein(モレキュラープローブス社製)を含む溶液を用いた以外は実施例1と同様にして構築したものを使用した。本実施例で使用したリポソームは、Cx43からなるコネクソンを有するとともに内部にcalceinを有している。このように構築したリポソームを、Cx43を発現しているU20Sの培養液に添加してから2時間後のU20S細胞を撮像した結果を図5に示した(図5「Cx−U20S/Cx−Lipo」)。また、比較例として、Cx43を発現させていないリポソームを用いて同様の実験を行ったところ、細胞へのcalceinの移行は認められなかった(図5「Cx−U20S/noGENE−Lipo」)。 以上、図4及び図5に示したように、コネクソンを有するリポソームを使用することによって、当該リポソームと細胞との間における物質の移行を非常に高効率で行えることが実証された。 実施例3では、コネクソンを有するリポソームを用いて、細胞内に特定のペプチドを導入することを試みると同時に、当該ペプチドの作用により細胞内における生理活性を調節することを検討した。 図6に模式的に示すように、IKK複合体はIL−1βなどの刺激により活性化され、IκBをリン酸化する。リン酸化されたIκBはさらにポリュビキチン化され、プロテアソーム系の経路により分解される。これに伴い、IκBのNFκB(p50+p65)に対する抑制効果が消失し、核内に移行したNFκBが目的遺伝子の転写活性を上昇させる。NEMO Binding Domain(以下、NBD)はIKK複合体の一つであるIKKβのC末端に存在する配列で、IKKγ(NEMO)との結合に必須であることが知られている。可溶化されたNBDオリゴペプチドは本来のIKKβとNEMOとの結合を競合的に阻害し、正常なIKKの機能を抑制することにより、NFκBの核内移行および目的遺伝子の転写が抑制される。このペプチドは単独では細胞内を透過することができず作用しない。そこで、本例ではCx43からなるコネクソンを有するリポソームを用い、ギャップ結合を介してNBDペプチドを細胞内に投与することを試みた。 具体的には、先ず、実施例2で使用したU20S細胞を10cmの培養ディッシュにて80〜90%の密度になるまで培養し、NBDペプチドを含むリポソームを12時間作用させた。本例において、リポソームは、50μLのNBDペプチドを含む溶液を用いた以外は実施例1と同様にして構築したものを使用した。 その後、IL−1βを24時間作用させた後、細胞内のルシフェラーゼ活性を測定した(図7A及びB)。Cx43を発現している細胞において、Cx43発現リポソームを用いてNBDペプチドを投与することにより、IL−1β刺激によるNFκB活性の上昇を抑制した(図7A)。この抑制効果はリポソームを用いなかった場合やCx43を発現させていないリポソームで投与した場合、また、NBDの配列に変異を加えたペプチドを投与した場合では認められなかった(図7B)。また、ギャップ結合のインヒビターである18β−glycyrrhetinic acid(GA)を前処理することにより、NBDの効果は抑制された。さらに、Cx43を発現しないU20Sを用いて同様の実験を行った所、Cx43発現リポソームを用いてNBDを投与してもNFκB活性は抑制されなかった。 同様に、NBDペプチド投与による、COX−2の発現をRT−PCR法で検討した結果を図8に示す。なお、図8において、「Cx−U20S」はコネクソンを有するリポソームを用いた結果を示し、「U20S」はコネクソンを有しないリポソームを用いた結果を示している。図8から判るように、Cx43発現リポソームを用いてNBDを投与することにより、IL−1β刺激によるCOX−2の発現上昇が抑制された。この抑制効果はNBDペプチドの濃度依存的であった。また、NBD単独投与、Cx43を発現させていないリポソームでのNBD投与、GAによる前処理および変異体NBDの投与ではCOX−2発現抑制は認められなかった。さらに、Cx43を発現していないU20Sに対してはNBDの効果は認められなかった。 以上、図7及び図8に示した結果から、本発明に係るリポソームを用いることによって、所望の物質を細胞内に効率よく導入することができ、その結果、細胞内における遺伝子発現等を制御できることが明らかとなった。また、これらの知見から、本発明に係るリポソームによれば、内部に医薬組成物等を含むことにより、様々な疾患に対する効果的な治療方法が提供できることが明らかとなった。 実施例4では、骨肉腫細胞U20Sの代わりにマウスの骨芽細胞MC3T3−E1を用いたこと以外は実施例2と同様の実験によって、コネクソンを有するリポソームと細胞の間における物質(本例ではcalcein)移行を検討した。なお、本例で使用したMC3T3−E1細胞は、恒常的にCx43を発現している細胞である。 本例において、コネクソンを有するリポソームとしては、卵黄ホスファチジルコリン(EPC)、ジオレオイルフォスファチジルエタノールアミン(DOPE)及びコレステロール(Chol)が、EPC:DOPE:Chol=6:1:3となるように調整した有機溶液を用いて実施例1と同様にして作製したものを使用した。このように構築したリポソームを、MC3T3−E1の培養液に添加してから2時間後、透過光を撮像した結果を図9に示した。また、蛍光を撮像した結果を図10に示した。図9及び10から判るように、恒常的にCx43を発現しているMC3T3−E1細胞を用いた本実施例においても、calceinの細胞内への移行を確認することができた。これに対して、比較例として、Cx43を発現させていないリポソームを用いて同様の実験を行ったところ、細胞へのcalceinの移行は認められなかった(図示せず)。 本発明によれば、ギャップジャンクション機能を有するコネクソンをリポソーム膜に導入することができるため、いわゆるドラッグ・デリバリー・システムや生化学実験一般に使用される、物質注入効率に非常に優れたリポソームを提供することができる。また、本発明によれば、物質注入効率に非常に優れた細胞に対する物質注入方法を提供することができる。本発明は、ドラッグ・デリバリー・システムを利用した各種疾患の治療に大いに貢献するものである。 本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。 インビトロ・タンパク質合成系により合成したコネキシンから構成されるコネクソンを、ギャップジャンクション機能を有した状態で組み込んでなるリポソーム。 上記コネキシンは、リポソーム内でインビトロ・タンパク質合成系により合成されたコネキシン43であることを特徴とする請求項1記載のリポソーム。 特定の細胞に対して結合能を有するタンパク質をさらに組み込んだことを特徴とする請求項1記載のリポソーム。 内部に対象物質を含むことを特徴とする請求項1〜3いずれか一項記載のリポソーム。 上記対象物質は、生理活性成分であることを特徴とする請求項4記載のリポソーム。 上記対象物質は分子量が1500以下であることを特徴とする請求項4記載のリポソーム。 請求項4〜6いずれか一項記載のリポソームを、単離された細胞又は培養細胞に対して接触させ、 上記単離された細胞又は培養細胞に上記対象物質を注入する、細胞に対する物質注入方法。 請求項5記載のリポソームを含む医薬組成物。配列表


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