タイトル: | 公表特許公報(A)_リポソームにおける薬剤充填法 |
出願番号: | 2006539073 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | A61K 9/127,A61K 47/24,A61K 47/34,A61K 47/28,A61K 31/706,A61K 31/704,A61P 31/04,A61P 35/00,A61K 47/26 |
バレンホルズ, イェチェツケル ガビゾン, アルベルト エー. JP 2007511505 公表特許公報(A) 20070510 2006539073 20041114 リポソームにおける薬剤充填法 イッサム リサーチ ディベロプメント カンパニー オブ ザ ヘブリュー ユニバーシティ オブ エルサレム 504303573 山本 秀策 100078282 安村 高明 100062409 森下 夏樹 100113413 バレンホルズ, イェチェツケル ガビゾン, アルベルト エー. US 60/520,205 20031114 A61K 9/127 20060101AFI20070406BHJP A61K 47/24 20060101ALI20070406BHJP A61K 47/34 20060101ALI20070406BHJP A61K 47/28 20060101ALI20070406BHJP A61K 31/706 20060101ALI20070406BHJP A61K 31/704 20060101ALI20070406BHJP A61P 31/04 20060101ALI20070406BHJP A61P 35/00 20060101ALI20070406BHJP A61K 47/26 20060101ALI20070406BHJP JPA61K9/127A61K47/24A61K47/34A61K47/28A61K31/706A61K31/704A61P31/04A61P35/00A61K47/26 AP(BW,GH,GM,KE,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HU,IE,IS,IT,LU,MC,NL,PL,PT,RO,SE,SI,SK,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KP,KR,KZ,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV,MA,MD,MG,MK,MN,MW,MX,MZ,NA,NI,NO,NZ,OM,PG,PH,PL,PT,RO,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SY,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,YU,ZA,ZM,ZW IL2004001041 20041114 WO2005046643 20050526 27 20060710 4C076 4C086 4C076AA19 4C076CC27 4C076CC32 4C076DD63 4C076DD67Q 4C076DD70 4C076EE23 4C076FF16 4C076FF33 4C076GG50 4C086AA01 4C086AA02 4C086EA02 4C086EA10 4C086MA02 4C086MA05 4C086MA24 4C086NA20 4C086ZB26 本発明は、予め形成したリポソームに治療薬を充填し、特にグルクロン酸を平衡アニオンとして有するアンモニウムイオン勾配により、プロトン化可能な化合物を充填する方法及びそれにより得られる生成物に関する。 リポソーム組成物を介した治療薬の送達は、いくつかの薬剤の薬物動態及び生体内分布を大幅に変えた(Martin,F.M.、MEDICAL APPLICATIONS OF LIPOSOMES、Lasic,D.D.及びD.Papahadjopaulos編、635〜88頁、Elsevier、アムステルダム(1998))。例えば、その用量制限心臓毒性で知られるドキソルビシンは、リポソームに封入して投与した場合、充実性腫瘍患者においては明らかな(臨床的及び機能的)心臓毒性を示さない(ドキシル(登録商標)、アルザコーポレーション、カリフォルニア州マウンテンビュー、Uziely,B.ら、J.Clin.Onco.、13:1777〜1785(1995)、Working,P.K.ら、J.Pharmaco.Exp.Ther.、289:1128〜1133(1999))。大蓄積量のドキシル(登録商標)を服用中の後天性免疫不全症候群(AIDS)関連カポジ肉腫(KS)患者の心臓生検試験では、組織損傷は認められず、リポソーム製剤はドキソルビシンに対する心臓保護効果を有すると考えられることが示唆されている(Berry,G.ら、Ann.Oncol.、9:71〜76(1998))。心臓毒性がないことは、1つには、リポソーム(ステルス(登録商標)で知られるポリエチレングリコール被覆リポソーム、アルザコーポレーション、カリフォルニア州マウンテンビュー)の長い循環半減期、及びリポソーム封入形態では投与量のほとんどが組織に到達し、循環中にリポソームから漏出する薬剤は微量(<5%)にすぎず、遊離薬(Martin,F.M.(上記)、(1998)、Gobizon,A.ら、Cancer Res.、54:987〜92(1994))として組織に分布されるといった安定した薬物滞留性によるものである。 長期循環性リポソームは、微小血管透過性の高い組織に特異的に蓄積(10倍)することが知られており、活発な血管新生を伴うほとんどの腫瘍はこれに含まれる(Wu,N.Z.ら、Cancer Res.、53:3765〜3770(1993)、Yuan,F.ら、Cancer Res.、54:3352〜3356(1994))。長期循環性リポソームは、皮膚(Gabizon,A.ら、Adv.Drug Deliv.Rev.、24:337〜344(1997))や恐らく粘膜といった様々な健康な感受性組織にも蓄積する。曝露が長引くと、リポソーム封入ドキソルビシンの皮膚への蓄積は、手掌−足底紅斑異感覚の原因になると考えられる(PPE、手足症候群としても知られる。Lyassら、Cancer、89:1037〜1047(2000))。PPEの発症は、投与間隔の延長により防止されると考えられるが、しかし、投与量及び/又は投与計画の修正は、特定の腫瘍、例えば、乳癌など(Lyassら、上記、(2000)、Ranson,M.R.ら、J.Clin.Oncol.、15:3185〜3191(1997))に対する効果を減少させる可能性がある。 長期循環性リポソーム封入ドキソルビシン(ドキシル(登録商標))に関する現在の前臨床及び臨床データは、循環しているリポソームからごく微量(注入量の<5%)の薬剤放出が認められることを指摘している。リポソームが一度細胞外組織液に浸出されれば、薬剤放出の判定法はほとんどわからない。薬剤を保持するプロトン勾配の漸進的消失、リン脂質によるリポソーム脂質膜の酵素分解、及び/又はスカベンジャーマクロファージによるエンドサイトーシスが薬剤放出に寄与していると考えられる。市販のリポソーム型ドキシル(登録商標)に封入されたドキソルビシンは、2価の硫酸アニオンとの塩を形成する。この塩は、その低可溶性のため水性の内部リポソーム区画で沈降又はゲル化する。このゲル形成は、脂質小胞内の封入ドキソルビシンを安定化させ、その流出速度を低下させる。 ドキソルビシンのアニオン保持能を変更すると、薬剤放出速度に大きな影響を与えることができると考えられる。例えば、ドキシル(登録商標)リポソームからの薬剤放出速度を、その長期循環、腫瘍ホーミング特性を損ねることなく加速させることは、以下の理由、(1)腫瘍の薬剤への曝露時間がより集約されるため、腫瘍阻害活性が向上する可能性があること、及び(2)皮膚毒性は、主にこの毒性のクラスが皮膚組織の薬剤への曝露時間延長の関数であるため、減少する可能性があること、から重要であると考えられる。 したがって、封入化合物の放出を変えるリポソーム組成物、特に、リポソーム型のドキソルビシンが望ましい。治療化合物を予め形成したリポソームに封入する方法は、例えば有効性や安定性といった硫酸アンモニウム勾配の利点を保ち、さらに封入化合物を高速で放出させることができるものが望ましいと考えられる。 1つの態様では、本発明は小胞形成脂質を含み、グルクロン酸アニオンに関連して封入されたイオン化可能な治療薬を有するリポソーム組成物リポソームを提供する。そのように充填された治療薬は、平衡アニオン、又は対アニオンとして硫酸を有するアンモニウム勾配により充填されたものより高い放出速度を有する。 1つの実施形態では、リポソームを形成する小胞形成脂質はリン脂質である。別の実施形態では、リポソームはさらに、ポリエチレングリコールなどの親水性ポリマーで誘導体化された約1〜20モルパーセントの小胞形成脂質を含む。 別の実施形態では、小胞形成脂質は、水素化大豆ホスファチジルコリン(HSPC)であり、親水性ポリマーで誘導体化された前記小胞形成脂質は、ポリエチレングリコールで誘導体化されたジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)である。さらに別の実施形態では、リポソームはさらにコレステロールを含む。典型的な組成物は、モル比が92.5:70:7.5の、HSPC、コレステロール、及びDSPE−PEGである。 別の実施形態では、治療薬はアントラサイクリン系抗生物質である。典型的なアントラサイクリン系抗生物質としては、ドキソルビシン、ダウノルビシン、及びエピルビシンがある。 上記の組成物は、別の態様では、患者の治療に用いられる。組成物は、別の態様では、患者における新生物の治療に用いられる。 別の態様では、本発明は、イオン化可能な封入治療薬を有するリポソームの改善された調製法であって、対イオンとして硫酸イオンを用いたアンモニウムイオン勾配に対して、予め形成したリポソームに治療薬が充填される調製法を含む。この改善は、対イオンとしてグルクロン酸イオンを有するアンモニウムイオン勾配により、イオン化可能な治療薬をリポソームへ充填するステップを含む。 この改善された方法では、充填ステップにはリポソーム懸濁液を調製するステップであって、各リポソームは1つの実施形態では、第1濃度でグルクロン酸アンモニウムを含有する少なくとも1つの内部水性区画を有する。 別の実施形態では、改善された方法は、第2濃度のグルクロン酸アンモニウムを有する外部バルク媒体に懸濁されたリポソームを調製するステップであって、第1濃度が第2濃度よりも高いため、リポソームの脂質2重層全体にわたるアンモニウムイオン濃度の勾配を確立するステップを含む。 別の実施形態では、改善された方法は、ある量の治療薬をリポソーム懸濁液に添加するステップを含む。 別の態様では、本発明は、内部区画及び2重層脂質膜を有するリポソームを形成するステップを含む、リポソーム調製法を含む。リポソームは、2重層脂質膜全体にわたるグルクロン酸アンモニウム濃度勾配を有する。リポソームは、イオン化可能な治療薬に接触させて、薬剤を内部区画に輸送する。 1つの実施形態では、本方法は、(i)リポソーム懸濁液を調製するステップであって、懸濁液中の各リポソームが第1濃度でグルクロン酸アンモニウムを含有する少なくとも1つの内部水性区画を有し、前記リポソームが第1濃度でグルクロン酸アンモニウムを含む外部バルク媒体に懸濁されているステップと、(ii)外部バルク媒体中のグルクロン酸アンモニウムの第1濃度を、グルクロン酸アンモニウムのより低い第2濃度に低下させることで、リポソームの脂質2重層全体にわたるアンモニウムイオン濃度勾配を確立するステップを含む。 様々な実施形態では、低下ステップは、希釈、透析、ダイアフィルトレーション、又はイオン交換により実現される。 さらに別の態様では、本発明は、プロトン化可能な化合物を予め形成されたリポソームに充填するための方法であって、リポソームの外部よりも高いリポソーム内部のグルクロン酸アンモニウム濃度を有するリポソーム懸濁液を調製することで、リポソームの内部から外部へのアンモニウムイオン濃度勾配を確立するステップを含む方法を含む。この勾配は、前記プロトン化可能な化合物をリポソーム内部へ活発に輸送することができる。この方法はまた、ある量のプロトン化可能な化合物を懸濁液に添加するステップと、前記プロトン化可能な化合物を前記リポソームに輸送し、リポソーム内部にリポソーム外部のそれよりも多い含有量のプロトン化可能な化合物を実現するステップとを含む。 1つの実施形態では、本方法は、第1濃度を有するグルクロン酸アンモニウム溶液の存在下でリポソームを形成するステップと、前記リポソーム内部に、前記第1濃度の前記グルクロン酸アンモニウム溶液を封入すること、リポソーム外部の前記グルクロン酸アンモニウム溶液の前記第1濃度を、前記第1濃度よりも少ない第2濃度へ低下させることとを含む。 本発明の方法は、高い充填効率を有する。1つの実施形態では、懸濁液に添加されたプロトン化可能な化合物の50%を超える量がリポソーム内部へ輸送される。別の実施形態では、懸濁液に添加されたプロトン化可能な化合物量の約90%がリポソーム内部へ輸送される。特定の実施形態では、ドキソルビシンの充填効率は、90%を超えており、リン脂質に対するドキソルビシンの比は、約100〜150μg/μmolの範囲内にある。 これら及びその他の本発明の目的と特徴は、以下の本発明の詳細な記載を添付図面と合わせて読んだ場合に、一層十分に理解されるであろう。 本発明は、イオン化可能な治療薬が、1価のグルクロン酸アニオンを伴うイオン性塩の形態で、内部のリポソーム区画に封入されたリポソーム組成物を提供するものである。以下に示すように、この封入治療薬は、2価の硫酸アニオンを伴うイオン性塩の形態でリポソームに封入された薬剤の放出速度に比べて、リポソームからの放出速度が速い。本発明はまた、グルクロン酸アンモニウム勾配に対して、予め形成したリポソームに治療薬を充填するための遠隔充填手順も提供する。リポソームからの治療薬の放出速度が速まると、治療薬の生物学的有効性を損ねることなく、投与計画を調整する柔軟性が得られる。したがって、本発明の方法は、硫酸アンモニウムによる充填に対する有益な代替法を提供する。 従来の硫酸アンモニウム勾配法と同様に、グルクロン酸アンモニウム遠隔充填法では、リポソームが、酸性pHで調製される必要も、リポソーム外水性媒体をアルカリ化する必要もない。このアプローチは、立体的安定化リポソーム、免疫リポソーム、及び立体的安定化免疫リポソームをはじめとする、様々なタイプ、サイズ、組成物からなる広範囲のリポソームに、治療薬を充填することもできる。本明細書で使われる「封入」とは、リポソームの水性区画内に、又は脂質2重層内に封入された薬剤のことである。 放出速度の向上は、グルクロン酸を平衡アニオンに用いた結果である。理論に縛られたくはないが、1価で、6員環に数個のヒドロキシル官能基を含有するグルクロン酸は、硫酸イオンと比べて、治療薬がリポソーム内部に輸送された後の治療薬の凝集及び沈降を誘発するには効果が低いと仮定される。本発明では、250mMのグルクロン酸アンモニウム(AG)溶液では、250mMの硫酸アンモニウム(AS)溶液より、ドキソルビシンの可溶性は約100倍高いことを観察している。さらに、硫酸イオンの存在下では、ドキソルビシンは2mMより低い濃度で沈降する一方、グルクロン酸イオンの存在下で沈降が起こるには、はるかに高い濃度のドキソルビシンが必要となる。したがって、グルクロン酸が平衡アニオンである場合、より多くの治療薬が水溶性となるため、リポソームからの放出により利用される。さらに、リポソーム膜を通じたグルクロン酸の透過性はきわめて低く、これはそのpKaの低さ、かさ高性及び/又は極性が原因であると考えられるが、治療薬の充填のためアンモニウムイオン勾配を維持するにはきわめて有効となる。 本発明の方法は、治療薬が適切な水性媒体に溶解している場合、プロトン化可能な(プラスに帯電した状態で存在することができる)本質的にいずれの治療薬でも遠隔充填させるために用いることができる。薬剤は、脂質小胞膜に分割されるように比較的親油性にすることが好ましい。また、充填治療化合物は、弱塩基性又は弱酸性部分を有する化合物である、弱両新媒性化合物であることが好ましい。本発明の方によりリポソームに充填することができる治療薬の実施例には、ドキソルビシン、マイトマイシン、ブレオマイシン、ダウノルビシン、ストレプトゾシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、メクロレタミン、塩酸塩、メルファラン、シクロホスファミド、トリエチレンチオホスホラミド、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、フルオルラシル、ヒドロキシウレア、チオグアニン、シタラビン、フロクスウリジン、デカルバジン、シスプラチン、プロカルバジン、シプロフロキサシン、エピルビシン、カルキノマイシン、N−アセチルアドリアマイシン、ルビダゾン、5−イミドダウノマイシン、N−アセチルダウノマイシン、あらゆるアントラサイリン系薬剤、ダウノリリン、プロプラノール、ペンタミンジン、ジブカイン、テトラカイン、プロカイン、クロルプロマジン、ピロカルピン、フィゾスチグミン、ネオスチグミン、クロロキン、アモジアキン、クロログアニド、プリマキン、メフロキン、キニーネ、プリジノール、プロジピン、ベンズトロピン、メシレート、塩酸トリヘキフェニジル、プロプラノロル、チモロール、ピンドロール、キナクリン、ベナドリル、プロメタジン、ドーパミン、セロトニン、エピネフリン、コデイン、メペリジン、メタドン、モルヒネ、アトロピン、デシクロミン、メチキセン、プロパンテリン、イミプラミン、アミトリプチリン、ドクサピン、デシプラミン、キニジン、プロプラノロル、リドカイン、クロルプロマジン、プロメタジン、ペルフェナジン、アクリジンオレンジ、プロスタグランジン、フルオレセイン、カルボキシフルオレセイン、及び上記のこれらに類似のその他の分子が挙げられる。 単独治療薬の充填に加えて、本方法は、複数の治療薬を同時に又は連続して充填するために用いることができる。また、プロトン化可能な治療薬が充填されるリポソーム自体に、他の医薬品又は従来型のカプセル化法により(例えば、リポソームを調製する緩衝液中に薬剤を組み込むことにより)薬剤を予め充填することができる。本発明の方法はしたがって、治療目的で「薬剤カクテル」をカプセル封入したリポソームの調製に、大きな柔軟性を提供する。当然のことながら、所望であれば、上記に挙げた1種又は複数種のプロトン化可能な薬剤を予め充填し、次に同じ又は異なる薬剤を本発明のグルクロン酸アンモニウム勾配によりリポソームに添加することができる。 本方法は、ドキソルビシンのような弱両親媒性薬剤の充填に特に適している。グルクロン酸アンモニウム勾配(本明細書では「lipo−dox−AG」と呼ぶ)により、親水性ポリマー鎖の外部表面被覆を有するリポソームに充填されたドキソルビシンは、硫酸アンモニウム勾配(本明細書では「lipo−dox−AS」と呼ぶ。商品名ドキシル(登録商標)として知られる)により、親水性ポリマー鎖の外部表面被覆を有するリポソームに充填されたドキソルビシンより速い放出速度を示し、且つ同様の生物学的有効性を有する。薬剤のより速い放出速度は、薬剤がグルクロン酸アンモニウム勾配に対してリポソームに充填された場合、薬剤の血中時間を減少させ、ドキソルビシンが皮膚に蓄積して手掌−足底紅斑異感覚(PPE、手足症候群としても知られる)の原因となる機会を低下させることが意図されている。手掌−足底紅斑異感覚は、リポソーム封入ドキソルビシンを投与した際に観察される副作用である。 本発明の裏づけに行った複数の試験では、硫酸アンモニウム勾配に対して又はグルクロン酸アンモニウム勾配に対して、ドキソルビシンを予め形成したリポソームに遠隔的に充填し、封入ドキソルビシンを含有するリポソームを調製した。以下のセクションIでは、リポソーム組成物及び遠隔充填手続きを記載する。これらのリポソームは、セクションIに記載された通り、その細胞毒性、細胞の薬剤取り込み、及び血漿漏出速度を判定するためインビトロでの特性付けが行われた。セクションII、及びIIIでは、リポソーム封入ドキソルビシンのインビボでの血漿クリアランス速度及び治療活性を考察する。 I.リポソームの成分及び調製 A.リポソームの成分 本発明の組成物に用いるのに適したリポソームには、主に小胞形成脂質を含むものが挙げられる。リン脂質などの小胞形成脂質は、生理的pH及び温度で水中の2重層小胞に自然発生的に形成される。リポソームには、脂質2重層に組み込まれ、2重層膜内部の疎水領域に接触する疎水性部分、及び2重層膜外部の極性表面へと向かう頭部基部分を備えた他の脂質も含めることができる。 小胞形成脂質は好ましくは、典型的にはアシル鎖である2つの炭化水素鎖と、極性又は非極性である頭部基を有するものである。様々なジアシル合成小胞形成脂質、及びリン脂質、ジグリセリド、2脂肪族糖脂質のような自然発生的な小胞形成脂質、スフィンゴミエリン及びスフィンゴ糖脂質、コレステロール及びその誘導体、単独若しくは併用、及び/又はリポソーム膜硬化剤の有る無しのような単一脂質が挙げられる。本明細書に規定した通り、「リン脂質」には、2つの炭化水素鎖が典型的には約14〜22炭素原子長であり、様々な不飽和度を有するホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジン酸(PA)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジルセリン(PS)、スフィンゴミエリン、プラズマロゲン、及びホスファチジルコリン脂質誘導体が挙げられる。上記のアシル鎖が様々な飽和度を有する脂質及びリン脂質は、市販のもの又は公開された方法により調製したものを得ることができる。 カチオン性脂質も、本発明のリポソームに用いるのに適しており、カチオン性脂質は脂質組成物の微量成分として、又は主要成分若しくは単一成分として含めることができる。そうしたカチオン性脂質は、典型的には、ステロール鎖、アシル鎖又はジアシル鎖のような親油性部分を有し、脂質が全体的に正味の正電荷を有している。好ましくは、脂質の頭部基は、正電荷を帯びている。典型的なカチオン性脂質には、1,2−ジオレイロキシ−3−(トリメチルアミノ)プロパン(DOTAP)、N−[1−(2,3−ジテトラデシロキシ)プロピル]−NN−ジメチル−N−ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DMRIE)、N−[1−(2,3,−ジオレイロキシ)プロピル]−NN−ジメチル−N−ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DORIE)、N−[1−(2,3,−ジオレイロキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロライド(DOTMA)、30[N−(N’,N’−ジメチルアミノエタン)カルバモイル]コレステロール(DC−Chol)、及びジメチルジオクタデシルアンモニウム(DDAB)が挙げられる。 カチオン性小胞形成脂質は、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)のような中性脂質、又はリン脂質のような、ポリリシン若しくはその他のポリアミン脂質などのカチオン性脂質で誘導体化された、両新媒性脂質であってもよい。例えば、中性脂質(DOPE)は、ポリリシンに誘導体化されカチオン性脂質を形成することができる。 小胞形成脂質は、規定程度の流動性又は剛性を実現するため、血清中リポソームの安定性を制御するため、及びリポソーム封入薬剤の放出速度を制御するために選択することができる。より硬い脂質2重層、又は液晶2重層を有するリポソームは、例えば、比較的高い相転移温度、例えば、室温より高い温度、より好ましくは体温より高く最高80℃の相転移温度を有する脂質など比較的硬い脂質を組み込むことにより実現される。硬い脂質、即ち飽和した脂質は、脂質2重層の膜の剛性を高めることに寄与する。コレステロールのような他の脂質成分は、脂質2重層構造の膜の剛性にも寄与することが知られている。 脂質流動性は、比較的流動的な脂質、典型的には、液晶相転移温度に対して比較的低い液体、例えば、室温又はそれより低い温度、より好ましくは体温又はそれより低い温度を伴う脂質相を有するものを組み込むことで実現される。 リポソームには、例えば、米国特許番号第5,013,556号及びWO98/07409に記載されている通り、場合により親水性ポリマーで誘導体化された小胞形成脂質を含めることができる。これらの特許は、参照により本明細書に組み込まれる。親水性ポリマー−脂質複合体のリポソーム2重層ポリマーへの組み込みは、リポソーム脂質2重層膜内外の両表面に親水性ポリマー鎖の表面被覆を提供する。親水性ポリマー鎖の最外表面被覆は、ポリマー鎖被覆のないリポソームに比較して、インビボでの血中循環時間を延長するのに有効である。親水性ポリマー鎖の内部コーティングは、リポソームの水性区画、即ち脂質2重層の間、及び中心区画にまで達し、いかなる封入薬にも接触している。親水性ポリマーによる誘導体化に適した小胞形成脂質には、上記に挙げた脂質のいずれか、及び、特にジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)などのリン脂質を含めることができる。 小胞形成脂質による誘導体化に適した親水性ポリマーには、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリメチルオキサゾリン、ポリエチルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミド、ポリメタクリルアイニド、ポリジルネチルアクリルアミド、ポリヒドロキシプロピフネタクリレート、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレングリコール、及びポリアスパルタミドが挙げられる。ポリマーは、ホモポリマー又はブロックコポリマー若しくはランダムコポリマーとして使用することができる。 好ましい親水性ポリマー鎖は、ポリエチレングリコール(PEG)であり、好ましくは、約500ダルトン及び約10,000ダルトンの間、より好ましくは約500ダルトン及び約5,000ダルトンの間、最も好ましくは約1,000ダルトン及び約2,000ダルトンの間の分子量を有するPEG鎖である。メトキシ又はエトキシでキャップされたPEG類似体も好ましい親水性ポリマーであり、例えば、120〜20,000ダルトンの様々なポリマーサイズで市販されている。 親水性ポリマーで誘導体化された小胞形成脂質の調製は、例えば、米国特許第5,395,619号に記載されている。そのような誘導体化脂質を含むリポソームの調製も記載されているが、そのような誘導体化脂質の1〜20モルパーセントが典型的に、リポソーム製剤に含まれる。当然のことながら、親水性ポリマーは、例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,043,094号に記載されているように、脂質に安定して結合することも、又は、被覆リポソームは血中を循環する若しくは刺激に対して循環することから、被覆リポソームによるポリマー鎖被覆の脱落を可能にする不安定な結合を通じて結合することもできる。 B.リポソーム製剤 遠隔充填に使用するため、リポソーム2重層全体にわたるイオン勾配(「膜貫通勾配」ともいう)を有するリポソームを含むリポソーム懸濁液は、Szoka,F.,Jr.ら、Ann Rev Biophys Bioeng 9:467、(1980)に詳しく記載されているものなど、様々な技術により調製することができる。多重膜小胞(MLV)は、簡単な脂質膜水和法により形成することができる。この処置では、上記に記載したタイプのリポソーム形成脂質の混合を適当な有機溶媒で溶解し、この溶媒を後で気化して薄膜を残す。次にこの膜を、例えば、グルクロン酸アンモニウムなどの溶質種を含有する水性媒体で被覆する。グルクロン酸アンモニウムは、リポソームの内部空間及びリポソーム外の懸濁液にも水相を形成する。脂質膜は水和して、典型的には約0.1〜10ミクロンのサイズのMLVを形成する。 本発明のリポソームを形成するのに用いる脂質は、好ましくはモル比約70〜100モルパーセントの小胞形成脂質、場合により親水性ポリマー鎖により誘導体化された1〜20モルパーセントの脂質で存在する。1つの典型的な製剤は、80〜90モルパーセントのホスファチジルエタノールアミン、1〜20モルパーセントのPEG−DSPEを含む。コレステロールを、約1〜50モルパーセントで製剤に含めてもよい。好ましい実施形態では、脂質成分はモル比92.5:70:7.5の、水素化大豆ホスファチジルコリン(HSPC)、コレステロール(Chol)及びメトキシでキャップされたポリエチレングリコール誘導体化ジステアリルホスファチジルエタノールアミン(mPEG(2000)−DSPE)である。 グルクロン酸アンモニウムを有するリポソームを調製するため、水和媒体はグルクロン酸アンモニウムを含有する。グルクロン酸アンモニウム濃度は、充填する治療薬の量に依存するであろう。典型的には、濃度は、グルクロン酸アンモニウム100〜300mMの間になる。1つの好ましい実施形態では、水和媒体は250mMのグルクロン酸アンモニウムを含有する。 公知の方法によれば、薄膜法により形成された小胞は、選択された範囲内の粒度分布を実現する大きさにすることができる。好ましくは、リポソームは、0.04〜0.25μmの粒度範囲の均一な大きさである。典型的には0.04〜0.08μmの範囲である小単層小胞(SUV)は、形成後の超音波処理又はホモジナイズにより調製することができる。約0.08〜0.4μmの選択範囲のサイズを有する均一な大きさのリポソームは、例えば、ポリカーボネート膜、又は0.03〜0.5μm、典型的には0.05、0.08、0.1、若しくは0.2μmの範囲の選択された均一な細孔径を有するその他の規定した細孔膜を通じた押し出しにより作成することができる。膜の細孔径は、特に製剤が同じ膜を通じて2回以上押し出される場合には、その膜を通じた押し出しにより作成されるリポソームの最大径にほぼ一致する。定寸は好ましくは最初の脂質水和緩衝液中で行うが、これはリポソーム内部空間が、最初のリポソーム処理ステップを通じてこの媒体を保持するようにするためである。典型的なリポソーム製剤の調製は、実施例1に記載されている。 一般に、治療薬は定寸後にリポソームへ充填される。「遠隔」又は「能動的」充填処理は、リポソームが懸濁されている外部媒体又はバルク媒体中で、治療薬が内部のリポソーム区画中のアンモニウムイオンと交換される結果である。充填効率は、少なくともある部分では、アンモニウムイオン勾配に依存する。アンモニウムイオン勾配では、リポソーム内部のアンモニウムイオン濃度が、外部のバルク懸濁媒体中のアンモニウムイオン濃度よりも高い。大方の場合、この勾配度がカプセル化のレベルを決定する。即ち、勾配が大きいほど一般にカプセル化は高まる。 リポソーム脂質2重層全体にわたるグルクロン酸アンモニウム勾配は、アンモニウムイオン濃度が外部懸濁媒体中よりもリポソーム内部で高く(即ち、内高/外低のアンモニウムイオン勾配)、様々な方法で形成することができる。例えば、(i)外部媒体の制御希釈、(ii)所望の最終媒体に対する透析、(iii)所望の媒体に対する、例えば、セファデックスG−50などを用いた分子篩クロマトグラフィー、又は(iv)高速遠心分離又は所望の最終媒体中でのペレット化したリポソームの再懸濁などにより形成することができる。選択された最終外部媒体は、勾配形成機構及び所望の外部イオン濃度に依存するであろう。勾配は、内部グルクロン酸アンモニウムのリポソーム外部のそれに対する比で測定する。一般に勾配は、内部/外部が1000〜10の範囲にある。好ましくは勾配は、500〜50の範囲にある。 電解質も含有する外部媒体中のグルクロン酸アンモニウム濃度は、例えば、コーニング250pH/イオン分析器(Corning Science Products、ニューヨーク州コーニング)などの、コーニング476130アンモニア電極及び自動温度修正(ATC)ステンレス鋼プローブを備えたイオン分析器により、pH13〜14のアンモニア濃度として測定することができる(Bolotin,E.M.ら、Journal of Liposome Research 4(l):455〜479(1994))。最終外部媒体に電解質が存在しなければ、グルクロン酸アンモニウム勾配は、例えば、CDA100型マニュアル温度補償器付きCDC304浸漬電極を備えたCDM3型伝導率計(Radiometer、デンマーク、コペンハーゲン)などの伝導率計を用いた伝導度測定により確認することができる。 1つのアプローチでは、アンモニウムイオン勾配は制御希釈により作られる。この方法は、希釈したリポソーム製剤を提供する。定寸後、リポソーム懸濁液は、リポソーム内部及び外部バルク媒体中に選択された第1濃度のグルクロン酸アンモニウムを有する。外部バルク媒体は、グルクロン酸アンモニウムを含有しない第2媒体で希釈する。典型的な第2媒体には、電解質を含有する水性溶液(塩酸ナトリウム若しくは塩酸カリウム)又は非電解質(グルコース若しくはスクロース)を含有する水性溶液が挙げられる。内部及び外部の媒体は、例えば、緩衝液、塩、又はスクロースのような低分子量の濃度の適切な調整により、ほぼ同じ浸透圧を含有するために選択されることが好ましい。好ましい第2媒体は、約pH7で5%デキストロースを含有する15mMのHEPES緩衝液である。 別のアプローチでは、脂質2重層全体にわたるプロトン勾配は、透析により作られる。透析では、外部バルク媒体が、例えば、同様の緩衝液ではあるがグルクロン酸アンモニウムが、NaCl若しくはKClなどの塩、又はリポソーム内外で同じ浸透圧を提供する糖により置換された緩衝液など、アンモニウムイオンが存在しないものと交換される。少量調製では、勾配は、25容量の透析緩衝液に対し4連続透析交換により作ることができる。大量調製では、勾配は、例えば、「300K」ポリスルホン膜を備えたミニタン限外濾過装置(Millipore Corp.、マサチューセッツ州ベッドフォード)などを用いて、3段階式接線流透析により調製することができる。透析緩衝液は、電解質(例えば、塩酸ナトリウム若しくは塩酸カリウム)又は非電解質(グルコース若しくはスクロース)を含有している。1つの好ましい実施形態では、透析緩衝液は、約pH7で5%デキストロースを含有する15mMのHEPES緩衝液である。いずれかの透析アプローチ(大量又は少量規模)を用いた、水和媒体が60〜250mMのグルクロン酸アンモニウムである条件下では、リポソーム分散希釈を行うことなく1,000以上の勾配を得ることができる。 イオン化可能な薬剤をアンモニウムイオン勾配に対してリポソームに充填する場合に生じるイオン化事象は、当技術分野で記載されている(米国特許第5,192,549号を参照されたい)。簡単には、リポソーム形成後、及びリポソーム2重層全体にわたる勾配の確立後、リポソーム内部のアンモニウムイオンは解離してアンモニア及びプロトンと平衡状態になる。アンモニアガスは、透過係数約1.3×10−1cm/秒で脂質2重層に透過性であり、リポソーム2重層に浸透することができる。アンモニアの流出は、リポソーム内の平衡をプロトン産生の方へシフトさせ、その結果、リポソーム内濃度がリポソーム外媒体のそれよりも高い、[H+]勾配をもたらす。非プロトン化薬剤はリポソーム2重層を横断し、リポソーム内部でプロトン化され、リポソームの内部水性区画に存在するアニオンにより安定化される。薬剤グルクロン酸塩の形成は、リポソーム内pHを上昇させ、リポソーム内部にNH3の形成を誘発する。この反復周期は、基本的にすべてのアンモニウムイオンがリポソーム内部区画からNH3として流出するまで繰り返す。例えば、ドキソルビシンなどの治療薬は、リポソーム膜全体にわたるアンモニウムイオン勾配を有するリポソーム懸濁液に薬剤溶液を添加することでリポソームに充填することができる。懸濁液は、外部媒体からリポソームへの化合物の通過を可能にするのに有効な条件下で処置される。薬剤の充填に適した培養条件は、(i)非電荷形態である化合物のリポソームへの拡散を可能にするもの、及び(ii)好ましくは、例えば、5〜500mMカプセル化薬剤、より好ましくは20〜300mM、最も好ましくは50〜200mMなどの高い薬剤充填濃度に至るもの、である。 充填は、好ましくはリポソーム脂質の相転移温度を上回る温度で行う。したがって、ほとんどが飽和リン脂質で形成されたリポソームに対しては、充填温度は60℃以上の高温であってよい。充填期間は、典型的には15〜120分であるが、薬剤のリポソーム2重層膜への浸透性、温度、及びリポソーム脂質と薬剤の相対濃度に依存する。1つの好ましい実施形態では、充填は60℃で60分間行われる。 したがって、リポソーム濃度、添加化合物の外部濃度、及びイオン勾配の適切な選択により、本質的にはすべての添加化合物をリポソームへ充填することができる。例えば、約1000のアンモニウムイオン勾配により、ドキソルビシンのカプセル化は90%を超えることが可能である。算出された内部リポソーム容積、及び充填薬剤の最大濃度がわかれば、次に外部媒体中の薬剤量を選択することができ、リポソームへの充填は実質的に完了することになる。 薬剤充填が、遊離薬の外部媒体を実質的に失わせるのに有効でなければ、薬剤充填後にリポソーム懸濁液を処置して非カプセル化薬剤を除去してもよい。遊離薬は、例えば、イオン交換クロマトグラフィー、分子篩クロマトグラフィー、透析、又は遠心分離により除去することができる。1つの実施形態では、非封入薬は、ダウエックス50WX−4(ダウケミカル、MI)を用いて除去される。例えば、遊離ドキソルビシン(ただし、リポソーム型ドキソルビシンではない)は、カチオン交換樹脂に結合する(Storm,G.ら、Biochim Biophys Acta、818:343(1985))。 II.インビトロ特性 A.インビトロ細胞毒性 硫酸アンモニウム勾配(lipo−dox−AS)に対して、又はグルクロン酸アンモニウム勾配(lipo−dox−AG)に対して充填されたリポソーム封入ドキソルビシンである、遊離ドキソルビシン(free−DOX)のインビトロ細胞毒性を、2種類のマウス細胞系(M109−S、M109−R)及び3種類のヒト腫瘍細胞系(C−26、KB、及びKB−V)に対して試験した。M109−R及びKB−V細胞系はそれぞれ、M109−S及びKBのドキソルビシン耐性の亜系である。この細胞を、Horowitzら、Biochimica et Biophysica Acta、1109:203〜209(1992)、及び実施例2にも記載されている実験の詳細に従って、72時間薬物製剤に継続的に曝露させた。 表1は、遊離ドキソルビシン(F−DOX)、lipo−dox−AG、及びlipo−dox−ASについて、細胞増殖の50%を阻止するために必要なドキソルビシン濃度(IC50値)を示している。遊離型のドキソルビシンは、2種類のリポソーム型ドキソルビシン製剤のいずれよりも細胞毒性がある。グルクロン酸アンモニウム勾配に対してリポソームに充填するドキソルビシンは、硫酸アンモニウム勾配に対してリポソームに充填する場合よりも細胞毒性があり、グルクロン酸塩由来の薬剤は硫酸塩由来の薬剤よりも生物学的に利用可能であることを示唆している。 lipo−dox−AGはlipo−dox−ASよりも細胞毒性があることは、さらに図1A〜図1Eの阻止曲線により明らかである。図1A〜図1Eは、細胞の増殖速度を、成長培地に添加したドキソルビシン量に対する、薬剤による治療を行わない細胞(対照群)の割合として示している。図1A〜図1Eは、マウス細胞系であるM109−S(図1A)、M109−R(図1B)及びヒト細胞系であるC−26(図1C)、KB(図1D)、及びKB−V(図1E)の阻止曲線である。異なる製剤のドキソルビシン濃度nmは、遊離ドキソルビシン(丸)、lipo−dox−AG(四角)、及びlipo−dox−AS(三角)で表されている。ドキソルビシン濃度が102〜106の薬物製剤はすべて、試験した各腫瘍細胞系に対する細胞毒性がみられた。増殖速度の阻害は様々であるものの、すべてのケースで、lipo−dox−AGはlipo−dox−ASよりも細胞毒性があり、これは、リポソームのグルクロン酸アンモニウムプラットフォーム由来の薬剤は、リポソームの硫酸アンモニウムプラットフォーム由来の薬剤よりも容易に生物学的に利用可能であることを示すものであった。 B.インビトロでの腫瘍細胞による薬剤取り込み マウス腫瘍細胞におけるインビトロでのドキソルビシン蓄積は、実施例2に記載の通り、KB、KB−V、及びM109−R細胞を遊離ドキソルビシン、lipo−dox−AS、又はlipo−dox−AGに1、5、及び24時間曝露させることにより試験した。表2はその試験結果を示している。lipo−dox−AGで治療した細胞における薬剤蓄積は、lipo−dox−ASで治療したものよりも大きかった。これは、lipo−dox−AGはlipo−dox−ASよりも細胞毒性があったことを示す、上記に記載したインビトロでの細胞毒性結果(図1A〜図1E)と一致している。 C.インビトロでの血漿漏出 インビトロでの血漿中のリポソーム封入薬剤漏出を判定するために、lipo−dox−AS及びlipo−dox−AGを、ダウエックスカチオン交換樹脂ビーズを含有する培養フラスコで継続振盪することにより、37℃の90%ヒト血漿中で培養した。このカチオン交換樹脂ビーズは、遊離していようとタンパク結合であろうと放出された薬剤に結合する。予め計画した間隔で、酸性アルコール抽出のため、及びリポソームに付随して残留している(即ち、樹脂ビーズに捕捉されていない)薬剤断片の蛍光光度測定のため、試料を取り出した。その結果は図2に示されており、lipo−dox−AG由来のドキソルビシンは、lipo−dox−AS由来の薬剤よりもリポソームを速く形成することを示している。2種類の製剤の違いは、培養24時間後に現れはじめる。培養の最後(96時間)には、lipo−dox−AGはlipo−dox−ASの約2倍のドキソルビシンを放出していた(〜80%対40%)。 III.インビボ特性 A.血漿クリアランス グルクロン酸アンモニウム勾配に対して充填によりリポソームに封入されたドキソルビシンの薬物動態は、3カ月齢のBALB/c雌ラットで評価した。実施例3Aに記載の通り、硫酸アンモニウム又はグルクロン酸アンモニウムに対して充填した封入ドキソルビシンを伴うリポソームを、マウスに静注した。血液試料は選択された間隔で取り出し、ドキソルビシン濃度を分析した。図3は、lipo−dox−AG(斜線の棒)又はlipo−dox−AS(点状の棒)で治療したマウスの血漿ドキソルビシン濃度を示している。lipo−dox−AGプラットフォームから投与した場合のドキソルビシンの半減期は、約16時間であり、lipo−dox−ASプラットフォームから投与した場合のドキソルビシンの半減期は、約24時間である。lipo−dox−AGは、lipo−dox−ASより速く除去されることも明らかである。lipo−dox−AGの血中濃度は、静注後4時間で約25%低下し、24時間で33%低下し、静注後48時間ではほぼ50%低下していた。リポソームの組成物及びサイズは同じであるため、網膜内皮系(RES)による取り込み速度は類似するはずである。したがって、より速いクリアランスは恐らく、lipo−dox−AG製剤からのインビボでのより速いドキソルビシン放出速度の結果であり、インビボ実験と一致している。 B.インビボでの治療活性 ドキソルビシン−グルクロン酸塩を含有するリポソームから投与された場合、ドキソルビシンのより速いクリアランスは、治療効果に影響を与えるかどうかを判定するため、リポソーム製剤を担癌マウスに投与した。 実施例3Bにも記載の通り、マウスにM109S腫瘍細胞(106細胞)を接種し、腫瘍接種後に遊離ドキソルビシン、lipo−dox−AS、又はlipo−dox−AGいずれかのドキソルビシン10mg/kgの単回投与により治療した。図4は、ドキソルビシン治療後の日数に対する、平均的な(n=10)足蹠の厚さをmmで示している。どちらのリポソーム製剤も、遊離薬(丸)よりも腫瘍増殖の抑制に効果があった。マウスをlipo−dox−AG(四角)で治療した場合、lipo−dox−AS(三角)に比べて効果にわずかではあるが非有意な改善がみられた。 実施例3Bにも記載されている別の試験では、マウスにM109R細胞(106細胞)を接種した。接種後10日目に、用量8mg/kgの遊離ドキソルビシン、lipo−dox−AS、又はlipo−dox−AGのいずれかによりマウスを治療した。同じ用量を1週間後及び3週間後に再び投与した。図5は、腫瘍接種後の日数の関数として、平均的な(n=10)足蹠の厚さをmmで示している。どちらのリポソーム製剤(三角、塗りつぶしなしの四角)も、すべての試験群で腫瘍増殖が進行したものの、遊離薬(丸)よりも腫瘍増殖抑制に効果があった。腫瘍増殖の進行は恐らく、この腫瘍の性質が耐性を有することが原因である。 実施例3Bにも記載されている別の試験では、腫瘍を誘発するためC−26細胞(106細胞)をマウスに接種し、腫瘍接種後5日目に、ドキソルビシン用量10mg/kgの遊離ドキソルビシン、lipo−dox−AS、又はlipo−dox−AGのいずれかにより治療した。図6は、腫瘍接種後の日数の関数として、生存しているマウス数を示している。未治療(対照群)のマウスは早々に死亡し、中央生存期間は13日間であった(図示せず)。遊離ドキソルビシン(丸)で治療したマウスは、平均生存期間(対照群より4日多い17日間)のごくわずかな増加を示した。どちらのリポソーム製剤(四角、三角)も、遊離ドキソルビシンよりも担癌マウスの生存期間延長に効果があった。 上記のモデルはすべて上皮性悪性腫瘍型の腫瘍である。追試モデル(結果は図示せず)は、BALB/cマウスのJ6456リンパ腫であり、実験デザインは、C−26モデル(腹腔内の106腫瘍細胞、腫瘍接種後5日目に用量10mg/kgによる静脈内療法)と類似していた。リポソーム製剤は遊離薬よりも効果があったが、lipo−dox−AS又はlipo−dox−AG治療後のマウスの生存期間の間に有意差は認められなかった。 上記のことから、本発明の様々な目的及び特徴をいかに満足するかを見ることができる。グルクロン酸塩の形態で封入された薬剤を有するリポソームは、薬剤が硫酸塩の形態で封入された同様のリポソームより高い薬剤の放出速度を提供するが、薬効に対する有意な効果はみられない。リポソーム封入ドキソルビシン(ドキシル(登録商標))による臨床データは、ドキシル(登録商標)の循環半減期の短縮に伴い、PPEの発生率及び重篤度が減少し、lipo−dox−AG形態のドキソルビシンの循環が短縮すればするほど、ドキソルビシン送達の優れた代替法を提供することを示している。ドキソルビシンに特化したこの所見が、本明細書に列挙されているようなアンモニウムイオン勾配に対して遠隔充填が可能な他の薬剤にまで及ぶことを理解されたい。 以下の実施例は、本明細書に記載された本発明をさらに説明するものであり、本発明の範囲を限定するものではまったくない。(実施例1) リポソームの調製及び充填 A.リポソームの調製 水性区画にグルクロン酸アンモニウムを含有するリポソームは、以下のように調製される。脂質成分である、モル比92.5:70:7.5の水素化大豆ホスファチジルコリン(HSPC)、コレステロール及びメトキシでキャップされたポリエチレングリコール誘導体化ジステアリルホスファチジルエタノールアミン(mPEG(200)−DSPE)をクロロフォルムで溶解した。前記溶剤を、減圧下でロータリーエバポレーターを用いて気化し、乾燥脂質薄膜を残した。前期乾燥脂質薄膜を、内部水性区画にグルクロン酸アンモニウムを含有するリポソームを形成しながら250mMの水性グルクロン酸アンモニウム緩衝溶液(pH5.5)で水和し、グルクロン酸アンモニウム外部バルク媒体に懸濁させた。リポソームを次に0.5μmの細孔膜を通じた押し出しにより大きさを整えた。 押し出し後、外部グルクロン酸アンモニウム緩衝液を、デキストロース5%とpH7のHepes 15mMを含有する透析緩衝液に対して透析により交換した。 内部水性区画に硫酸アンモニウム250mMを含有する比較リポソーム製剤を、水和緩衝液として硫酸アンモニウム250μmを用いて同様に調製した。得られたバッチは、小胞サイズ、薬剤充填効率、及び薬剤対リン脂質の比がグルクロン酸アンモニウム製剤に類似していた。 B.遠隔充填 ドキソルビシンを、60℃で1時間、ドキソルビシン溶液を上記Aに記載の通りに調製したリポソームを培養して、グルクロン酸アンモニウム(lipo−dox−AG)含有リポソーム及び硫酸アンモニウム(lipo−dox−AS)含有リポソームに充填した。ドキソルビシンの封入は、充填効率が>90%になるまで続行した。最終的な薬剤対リン脂質の比は、100〜150μg/μmolであった。 外部バルク媒体中の遊離ドキソルビシン(即ち、リポソームに封入されていないドキソルビシン)を、脱気デキストロース−Hepes緩衝液にて溶出したセファデックスG−50カラム上でクロマトグラフィーにより除去した。(実施例2) インビトロ特性 A.インビトロ細胞毒性 上記の実施例1に記載の通りに調製した遊離ドキソルビシン及びドキソルビシンリポソーム製剤を、5種類のマウス及びヒトの腫瘍細胞系(M109−S、M109−R、C−26、KB、KB−V)に対して試験した。 各系統の細胞を、72時間薬剤に継続して曝露させた。その他実験の詳細については、Horowitzら、Biochem Biophys Acta、1109(2):203(1992)に記載されている通りであった。簡単には、200μLアリコートで指数関数的に増殖する培養物の5×103細胞を、96ウェル平底マイクロタイタープレート上で培養した。培養20時間後に、その間に細胞は付着し増殖を再開したが、試験する薬物製剤(遊離ドキソルビシン、lipo−dox−AS、lipo−dox−AG)20μLを各ウェルに添加した。薬剤濃度がそれぞれ10倍に増加したものについて、6種類の薬剤濃度を試験した。各試験は、3重ウェル及び2つの平行プレートにて行った。細胞は72時間継続処置した。培養物は、50μLの2.5%グルタルアルデヒドを各ウェルに10分間添加することにより固着させた。プレートを純水にて3回、0.1Mホウ酸緩衝液(pH8.5)にて1回洗浄し、次に100μLのメチレンブルー(0.1Mホウ酸緩衝液の1%、pH8.5)にて室温で60分間染色した。プレートを5つの純水槽にてすすぎ、非細胞結合色素を除去した後、乾燥させた。色素は、200μLの0.1HClにて37℃で60分間抽出し、マイクロプレート分光光度計を用いて至適濃度を判定した。 増殖率は、薬剤で治療した細胞の倍増時間を対照細胞の倍増時間で除して計算した。対照細胞の増殖率を50%阻止する薬剤濃度(IC50)は、増殖阻止曲線の2つの最も近い値を補間することにより計算した。 表1は、各細胞系に対する遊離ドキソルビシン、lipo−dox−AS、及びlipo−dox−AGのIC50値を示し、対応する増殖阻止曲線は図1A−図1Eに示されている。 B.インビトロでの薬物取り込み ドキソルビシンの細胞蓄積は、Chambers,S.K.ら、Cancer Res.、49:6275−6279(1989)に記載されたものと類似の方法により分析した。KB、KB−V、及びM109−R細胞(35mmプレートで約106細胞を指数関数的に増殖培養)の単層を、遊離ドキソルビシン、lipo−dox−AS、及びlipo−dox−AGにより1、5、及び24時間培養した。培養の最後に、細胞をPBSにて3回すすぎ、1mL酸性イソプロパノール(90%イソプロパノールに0.075MのHC1)により、薬剤を4℃で20時間にわたり細胞から抽出した。ドキソルビシン濃度は、470nmの励起波長及び590nmの発光波長を用いてマイクロプレート分光光度計により判定した。放出された発光強度は、未治療の背景細胞の測定値を除いた後、ドキソルビシン標準曲線を基にドキソルビシン同等物に翻訳した。 遊離ドキソルビシン、lipo−dox−AS、及びlipo−dox−AGに対する1、5、及び24時間曝露後のKB、KB−V、及びM109−R細胞による薬物取り込みの結果を表2に示す。 C.インビトロでの血漿漏出 材料 lipo−dox−AS及びlipo−dox−AGは、>500μgのドキソルビシン/mLの濃度で実施例1に記載の通りに調製した。 2mLの50%ダウエックス(登録商標)カチオン交換樹脂ビーズ(シグマ、50W−水素、生理食塩水にて50%を予め洗浄)を、15mLのプラスチック製組織培養丸底試験管に添加した。試験管を2,000rpm(850g)で10分間遠心分離し、液体を静かに移した。リポソーム製剤は、ヒト血漿にて、90%ヒト血漿に対し約5μgのドキソルビシン/mLまで希釈した。各リポソーム製剤ごとに試験管を複製して調製し、ダウエックス樹脂ビーズの存在しないリポソーム製剤を含有する試験管を調製した。 酸性イソプロパノール溶液は、90%イソプロパノールに対し0.75Nの10%HCl(v/v%)から調製した。試薬は、シグマより入手可能な試薬用化薬品であった。 試験に用いた材料はすべて滅菌されており、すべての実験は滅菌状態で行われた。 分析 ダウエックス(登録商標)カチオン交換樹脂ビーズは、薬剤が遊離していようとタンパク結合であろうとヒト血漿中のドキソルビシンに結合する。この分析では、lipo−dox−AG及びlipo−dox−ASを、樹脂ビーズ及びヒト血漿(上記に記載の通り)を含有する試験管中でロータリーシェーカーを用いた継続振盪により37℃で培養し、樹脂ビーズの沈降を防いだ。予め計画した間隔で、酸性アルコール抽出のため、及びリポソームに付随して残留している(即ち、樹脂ビーズに捕捉されていない)薬剤断片の蛍光光度測定のため、試料を取り出した。その後の段階的な分析プロトコルを以下に示す。 1.ヒト血漿30mLを50mL試験管に添加する。 2.生理食塩水中の50%滅菌ダウエックス(登録商標)樹脂ビーズ2mLを遠心分離用試験管(15mL、プラスチック製丸底型)に添加し、2,000rpm(850g)で10分間遠心分離する。遠心分離用試験管から上澄みを静かに移す。 3.実施例1に記載の通りに調製したリポソーム製剤を用いて、ある量のリポソーム懸濁液をヒト血漿30mLを含有する50mL試験管に添加し、5μg/mLドキソルビシンの最終濃度を有する原液を得る。 4.5μg/mLドキソルビシンのリポソーム懸濁液の原液9mLを、樹脂ビーズを含有する遠心分離用試験管(試験管番号A、B)ごとに添加し、リポソーム原液10mLをいずれの樹脂ビーズも存在しない試験管(試験管番号C)に添加する。混合する。 5.各試験管(A、B,C)から1mLアリコートを取り除き、14,000rpmで3分間遠心分離する。タイムゼロ測定用に上澄みを200μL取り除き、分析まで−20℃で試料を凍結する。 6.試験管を把持し、緩やかな速度ながら樹脂ビーズの沈降を防ぐには十分な速度で360℃回転するロータリーシェーカーでの継続振盪により、試験管を37℃で培養する。 7.1、4、24、48、72、及び96時間目に、各試験管から1mLアリコートを取り除く。各アリコートを14,000rpmで3分間遠心分離し、透明な上澄み200μLアリコートを取り除く。このアリコートを、約−20℃で分析まで凍結する。 8.試料の分析には、酸性イソプロパノール1.8mLを、前記200μLの試料に添加し、リポソームからドキソルビシンを抽出した。この試料を4℃で1晩培養し、次に遠心分離して沈降物を除去した(2,000rpmで10分間)。透明な上澄みを、高い波長の光電子倍増管と、470nmの励起波長及び590nmの発光波長を備えた蛍光分光計で調べた。ドキソルビシン濃度は、得られた濃度がリポソーム内に保持されたドキソルビシン量を表す標準較正曲線を基に判定した。 その結果を図2に示す。(実施例3) インビボ特性 A.インビボでの血漿クリアランス率 3カ月齢のBALB/c雌ラットに、実施例1に記載の通りに調製した10mg/kgのlipo−dox−AS又はlipo−dox−AGのいずれかを静注した。血漿ドキソルビシン値の分析のため、静注後4、24、48時間に血液試料を採取した。その結果を図3に示す。 B.インビボでの治療活性 マウス30匹の足蹠に、M109−S細胞(106細胞)を接種した。7日後、足蹠の厚さは標準値の約1.5mmから平均2.0〜2.5mmまで増加しており、マウスを10匹ずつ3群に分け、このマウス群にドキソルビシン用量10mg/kgの遊離ドキソルビシン、lipo−dox−AS、又はlipo−dox−AGのいずれかを静注した。その後、アリパーにより足蹠の厚さを週2回測定し、腫瘍の増殖と治療効果を追跡した。その結果を図4に示す。 別の試験では、マウス30匹の足蹠に、ドキソルビシン耐性腫瘍細胞系であるM109細胞(106細胞)を接種した。10日後、足蹠の厚さは標準値の約1.5mmから平均2.0〜2.5mmまで増加しており、ドキソルビシン用量8mg/kgの遊離ドキソルビシン、lipo−dox−AS、又はlipo−dox−AGにより静注治療するため、マウスを3群に分けた。1週間後と3週間後に同じ用量でさらに2回の注射を行った。キャリパーにより足蹠の厚さを週2回測定した。その結果を図5に示す。 別の試験では、マウスの腹腔内にC−26細胞(106細胞)を接種した。5日後、マウスを10匹ずつ3群に分け、各マウス群に用量10mg/kgの遊離ドキソルビシン、lipo−dox−AS、又はlipo−dox−AGのいずれかを静注した。これらのマウスの生存を追跡し、生存曲線を図6に示す。 本発明は、特定の実施形態に関して記載しているが、本発明から逸脱することなく様々な変更や修正が可能であることは、当業者には明白であろう。マウスの細胞系M109STの、遊離ドキソルビシン(丸)、リポソーム封入ドキソルビシンで治療した後のドキソルビシン濃度(nm)に対する増殖率を、未治療の対照細胞に対する割合で表した増殖阻止曲線である。リポソーム封入ドキソルビシンでは、ドキソルビシンは、硫酸アンモニウム勾配(三角、「lipo−dox−AS」)に対して、又はグルクロン酸アンモニウム勾配(四角、「lipo−dox−AG」)に対してリポソームに遠隔充填された。マウスの細胞系M109Rの、遊離ドキソルビシン(丸)、リポソーム封入ドキソルビシンで治療した後のドキソルビシン濃度(nm)に対する増殖率を、未治療の対照細胞に対する割合で表した増殖阻止曲線である。リポソーム封入ドキソルビシンでは、ドキソルビシンは、硫酸アンモニウム勾配(三角、「lipo−dox−AS」)に対して、又はグルクロン酸アンモニウム勾配(四角、「lipo−dox−AG」)に対してリポソームに遠隔充填された。ヒト細胞系C−26の、遊離ドキソルビシン(丸)、リポソーム封入ドキソルビシンで治療した後のドキソルビシン濃度(nm)に対する増殖率を、未治療の対照細胞に対する割合で表した増殖阻止曲線である。リポソーム封入ドキソルビシンでは、ドキソルビシンは、硫酸アンモニウム勾配(三角、「lipo−dox−AS」)に対して、又はグルクロン酸アンモニウム勾配(四角、「lipo−dox−AG」)に対してリポソームに遠隔充填された。ヒト細胞系KBの、遊離ドキソルビシン(丸)、リポソーム封入ドキソルビシンで治療した後のドキソルビシン濃度(nm)に対する増殖率を、未治療の対照細胞に対する割合で表した増殖阻止曲線である。リポソーム封入ドキソルビシンでは、ドキソルビシンは、硫酸アンモニウム勾配(三角、「lipo−dox−AS」)に対して、又はグルクロン酸アンモニウム勾配(四角、「lipo−dox−AG」)に対してリポソームに遠隔充填された。ヒト細胞系KB−Vの、遊離ドキソルビシン(丸)、リポソーム封入ドキソルビシンで治療した後のドキソルビシン濃度(nm)に対する増殖率を、未治療の対照細胞に対する割合で表した増殖阻止曲線である。リポソーム封入ドキソルビシンでは、ドキソルビシンは、硫酸アンモニウム勾配(三角、「lipo−dox−AS」)に対して、又はグルクロン酸アンモニウム勾配(四角、「lipo−dox−AG」)に対してリポソームに遠隔充填された。ドキソルビシンが、硫酸アンモニウム勾配(三角、「lipo−dox−AS」)に対して、又はグルクロン酸アンモニウム勾配(四角、「lipo−dox−AG」)に対して遠隔充填されたリポソームからのインビトロでのドキソルビシン漏出速度を示した図である。ドキソルビシンが、硫酸アンモニウム勾配(斜線の棒)に対して、又はグルクロン酸アンモニウム勾配(点状の棒)に対して遠隔充填された、ドキソルビシン含有リポソームを注射した後の様々な時間における、マウス血漿中のドキソルビシン濃度(μg/mL)を示す棒グラフである。M109−S細胞を接種されたマウスの平均的な足蹠の厚さmmを、生理食塩水(塗りつぶされた四角)、遊離ドキソルビシン(丸)、又はリポソーム封入ドキソルビシンで治療した後の日数の関数としてプロットした図である。リポソーム封入ドキソルビシンでは、ドキソルビシンは、硫酸アンモニウム勾配(三角、「lipo−dox−AS」)に対して、又はグルクロン酸アンモニウム勾配(塗りつぶしなしの四角、「lipo−dox−AG」)に対してリポソームに遠隔充填された。M109R細胞を接種されたマウスの平均的な足蹠の厚さmmを、生理食塩水(塗りつぶされた四角)、遊離ドキソルビシン(丸)、又はリポソーム封入ドキソルビシンで治療した後の日数の関数としてプロットした図である。リポソーム封入ドキソルビシンでは、ドキソルビシンは、硫酸アンモニウム勾配(三角、「lipo−dox−AS」)に対して、又はグルクロン酸アンモニウム勾配(塗りつぶしなしの四角、「lipo−dox−AG」)に対してリポソームに遠隔充填された。生存マウス数を、C−26腫瘍細胞を接種し、遊離ドキソルビシン(丸)又はリポソーム封入ドキソルビシンで治療した後の日数の関数としてプロットした図である。リポソーム封入ドキソルビシンでは、ドキソルビシンは、硫酸アンモニウム勾配(三角、「lipo−dox−AS」)に対して、又はグルクロン酸アンモニウム勾配(四角、「lipo−dox−AG」)に対してリポソームに遠隔充填された。 小胞形成脂質を含み、グルクロン酸アニオンに関連してイオン化可能な封入治療薬を有するリポソームを含むリポソーム組成物。 前記小胞形成脂質がリン脂質である、請求項1に記載の組成物。 前記リポソームが、親水性ポリマーで誘導体化された約1から20モルパーセントの小胞形成脂質をさらに含む、請求項1に記載の組成物。 前記親水性ポリマーがポリエチレングリコールである、請求項3に記載の組成物。 前記小胞形成脂質が水素化大豆ホスファチジルコリン(HSPC)であり、親水性ポリマーで誘導体化された前記小胞形成脂質が、ポリエチレングリコールで誘導体化されたジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)である、請求項3に記載の組成物。 前記リポソームがコレステロールをさらに含む、請求項5に記載の組成物。 前記リポソームが、HSPC、コレステロール、及びDSPE−PEGを92.5:70:7.5のモル比で含む、請求項5に記載の組成物。 前記治療薬がアントラサイクリン系抗生物質である、請求項1、3、又は5に記載の組成物。 前記抗生物質がドキソルビシン、ダウノルビシン、及びエピルビシンより選択される、請求項8に記載の組成物。 患者の治療に用いるための、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。 患者の新生物治療に用いるための、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。 対イオンとして硫酸イオンを用いたアンモニウムイオン勾配に対して予め形成したリポソームに充填されるイオン化可能な封入治療薬を有するリポソーム組成物の調製法の改善であって、 対イオンとしてグルクロン酸イオンを有するアンモニウムイオン勾配により、イオン化可能な治療薬をリポソームに充填するステップを含む改善。 前記充填が、リポソーム懸濁液を調製するステップを含み、各リポソームが第1濃度のグルクロン酸アンモニウムを含有する少なくとも1つの内部水性区画を有する、請求項12に記載の改善された方法。 前記リポソーム懸濁液を調製するステップが、第2濃度のグルクロン酸アンモニウムを有する外部バルク媒体で懸濁されたリポソームを調製するステップを含み、第1濃度が第2濃度より高く、それにより、リポソームの脂質2重層全体にわたってアンモニウムイオン濃度勾配を確立する、請求項13に記載の改善された方法。 ある量の治療薬をリポソーム懸濁液に添加するステップをさらに含む、請求項14に記載の改善された方法。 前記添加ステップが、アントラサイクリン系抗生物質を添加するステップを含む、請求項15に記載の改善された方法。 内部区画及び2重層脂質膜を有するリポソームを形成するステップであって、前記リポソームが2重層脂質膜全体にわたるグルクロン酸アンモニウム濃度勾配を有するステップと、 リポソームをイオン化可能な治療薬に接触させて、薬剤を内部区画に輸送するステップとを含む、リポソームの調製法。 前記接触ステップが、リポソームをイオン化可能なアントラサイクリン系治療薬に接触させることを含む、請求項17に記載の方法。 前記接触ステップが、ドキソルビシン、ダウノルビシン、及びエピルビシンより選択されるイオン化可能なアントラサイクリン系治療薬にリポソームを接触させるステップを含む、請求項18に記載の方法。 前記リポソームを形成するステップが、(i)リポソーム懸濁液を調製するステップであって、懸濁液中の各リポソームが第1濃度でグルクロン酸アンモニウムを含有する少なくとも1つの内部水性区画を有し、前記リポソームが第1濃度でグルクロン酸アンモニウムを含む外部バルク媒体に懸濁されているステップと、(ii)外部バルク媒体中のグルクロン酸アンモニウムの第1濃度を、グルクロン酸アンモニウムのより低い第2濃度に低下させることで、リポソームの脂質2重層全体にわたるアンモニウムイオン勾配を確立するステップとを含む、請求項17に記載の方法。 前記低下ステップが、希釈、透析、ダイアフィルトレーション、又はイオン交換により得られる、請求項20に記載の方法。 プロトン化可能な化合物を予め形成されたリポソームに充填するための方法であって、 リポソームの外部よりも高いリポソーム内部のグルクロン酸アンモニウム濃度を有するリポソーム懸濁液を調製することで、リポソームの内部から外部へのアンモニウムイオン濃度勾配を確立するステップであって、前記勾配が前記プロトン化可能な化合物をリポソーム内部へ活発に輸送するステップと、 ある量のプロトン化可能な化合物を懸濁液に添加するステップと、 前記プロトン化可能な化合物を前記リポソームに輸送し、リポソーム内部にリポソーム外部のそれよりも多い含有量の前記プロトン化可能な化合物を得られるようにするステップとを含む方法。 前記調製ステップが、 第1濃度を有するグルクロン酸アンモニウム溶液の存在下でリポソームを形成するステップと、 前記リポソーム内部に、前記第1濃度の前記グルクロン酸アンモニウム溶液を封入するステップと、 リポソーム外部の前記グルクロン酸アンモニウム溶液の前記第1濃度を、前記第1濃度よりも少ない第2濃度へ低下させるステップとを含む、請求項22に記載の方法。 前記プロトン化可能な化合物がアントラサイクリン系抗生物質である、請求項23に記載の方法。 前記アントラサイクリン系抗生物質が、ドキソルビシン又はダウノルビシンである、請求項24に記載の方法。 グルクロン酸アニオンとの塩の形態で封入されたプロトン化可能な治療薬を有するリポソーム組成物を開示する。また、対イオンとしてグルクロン酸イオンを有するアンモニウムイオン膜貫通勾配を用いた本組成物の調製法も開示する。プロトン化可能な薬剤がドキソルビシンである1つの実施形態では、本発明の方法は、対イオンとして硫酸イオンを有するアンモニウムイオン勾配を用いた充填に比べて、治療有効性を損なうことなく、同等の充填効率、より迅速な放出速度を有する。 20050919A1633000423 グルクロン酸アンモニウム勾配を有するリポソームを調製するため、水和媒体はグルクロン酸アンモニウムを含有する。グルクロン酸アンモニウム濃度は、充填する治療薬の量に依存するであろう。典型的には、濃度は、グルクロン酸アンモニウム100〜300mMの間になる。1つの好ましい実施形態では、水和媒体は250mMのグルクロン酸アンモニウムを含有する。A16330図33【図3】ドキソルビシンが、硫酸アンモニウム勾配(点状の棒)に対して、又はグルクロン酸アンモニウム勾配(斜線の棒)に対して遠隔充填された、ドキソルビシン含有リポソームを注射した後の様々な時間における、マウス血漿中のドキソルビシン濃度(μg/mL)を示す棒グラフである。