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タイトル:特許公報(B2)_標的タンパク質の発現量の温度による調節方法
出願番号:2006531848
年次:2011
IPC分類:C12N 1/21,G01N 33/15,G01N 33/50,C12N 15/09


特許情報キャッシュ

関水 和久 黒川 健児 松尾 美記 村上 和久 JP 4716376 特許公報(B2) 20110408 2006531848 20050818 標的タンパク質の発現量の温度による調節方法 塩野義製薬株式会社 000001926 株式会社ゲノム創薬研究所 501481492 杉田 健一 100113789 高山 裕貢 100103230 関水 和久 黒川 健児 松尾 美記 村上 和久 JP 2004238469 20040818 20110706 C12N 1/21 20060101AFI20110616BHJP G01N 33/15 20060101ALI20110616BHJP G01N 33/50 20060101ALI20110616BHJP C12N 15/09 20060101ALN20110616BHJP JPC12N1/21G01N33/15 ZG01N33/50 ZC12N15/00 A C12N15/00-15/90 PubMed JSTPlus(JDreamII) BIOSIS/WPI(DIALOG) Journal of Biotechnology,2003年,vol.101,p.173-180 13 JP2005015062 20050818 WO2006019132 20060223 20 20080512 山中 隆幸 本発明は、温度依存的にリードスルーの起きる頻度が変化するナンセンス変異を有する標的タンパク質の発現量の温度による調節方法に関する。また、本発明は、該タンパク質をコードする変異遺伝子と黄色ブドウ球菌に含まれるリードスルーに関与する因子を共に含有する細胞を容易に作製し、標的タンパク質の機能解析を行う方法に関する。その他、増殖必須タンパク質の同定を行う方法、及び、同定された増殖必須タンパク質をターゲットとした抗菌剤のスクリーニング方法に関する。 黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)は市中、及び病院内の各種感染症の主要病原菌として重要である。また、多くの食中毒発生において原因因子として同定されてきた。近年ではメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に代表されるように、各種抗菌薬に対して、耐性を獲得した株が増加してきている。これらの耐性菌による院内感染はしばしば重篤化するため、臨床上大きな問題となっている。 現在では黄色ブドウ球菌の全遺伝子の解読が終了し、塩基配列が一般公開されている(NCBI Accession No.NC-002745等)。これらの情報を基に、病気の診断及び治療を目的に、タンパク質の機能解析が進められている。黄色ブドウ球菌のゲノムDNAには二千数百のオープンリーディングフレーム(ORF)が存在し、それぞれが特定のタンパク質をコードしている。大部分の遺伝子は、黄色ブドウ球菌の置かれた環境の変化に対応するために機能するものであり、必ずしも必須ではない。事実、多くの遺伝子について、それを欠損させても細胞が増殖することが知られている。黄色ブドウ球菌の増殖に必須の役割を演じているタンパク質がどれであるかが分かれば、該タンパク質が、抗菌剤のターゲットの候補になるが、該タンパク質を決定することは、従来は困難であった。 黄色ブドウ球菌の増殖必須遺伝子を検索する方法の一つとして温度感受性突然変異株が利用されている(特許文献1参照)。「温度感受性突然変異株」とは、低温(例えば、25〜34℃)では増殖することができるが、高温(例えば、35〜45℃)では野生株と異なり増殖することができない突然変異株のことである。温度感受性突然変異株は、細胞内のいずれかの遺伝子に温度感受性の原因となる突然変異を持っている。変異した遺伝子の産物である特定のタンパク質又はRNAは菌の生育又は増殖に不可欠であり、該タンパク質が、ある温度以上で不安定となり、本来の機能を失うために、菌の表現型が温度感受性になると考えられている。従って、温度感受性相補性試験等の分子生物学的手法により、温度感受性突然変異株が持つ変異遺伝子を同定すれば、すなわちそれが増殖必須遺伝子を同定したことになる。増殖必須遺伝子の同定以外にも温度感受性突然変異株には様々な利用法がある。例えば、温度感受性突然変異株は培養温度のみを変えることにより特定の増殖必須タンパク質の機能を喪失させることができるので、それに伴う菌の表現型の変化を経時的に調べることができ、それによって遺伝子の機能解析が可能となる。又は抗菌活性を持つ化合物を作用させた時と高温で培養した時とで菌の生理状態の変化と比較することによって該化合物が該タンパク質を標的にしているか否かの判定が可能となる。このように温度感受性突然変異株を利用して、増殖必須タンパク質の機能を阻害する薬剤をスクリーニングすることにより、新規作用機序を持った抗菌剤を得ることが可能である。また、例えばMurC等のペプチドグリカン合成酵素が温度感受性となった変異株の一部では、高温培養によってUDP-N-アセチルムラミン酸等の合成中間体が蓄積するので、ペプチドグリカン合成酵素の基質の調製にも使用することができる(特許文献2参照)。 現時点で黄色ブドウ球菌の温度感受性突然変異株を分離する方法としては、低温では増殖するが高温では増殖しない変異株をレプリカ法で見つけ出す方法がある(特許文献1参照)。しかし、このようにして得られた温度感受性変異株において、どの遺伝子が変異しているかは偶然の賜物である。そのため、特定の遺伝子が変異した温度感受性変異株を分離するには、多数の温度感受性変異株を分離した上でそれらの株の中から特定の遺伝子が変異した株を見出すしか方法がない。この方法は、大変にタスクがかかる上、特定の遺伝子が変異した温度感受性変異株が分離できる保証はなく、非効率的である。 温度感受性変異株では増殖必須タンパク質の機能が温度による制御を受けるが、これに関連して、遺伝子の発現を温度で制御する方法として、温度感受性リプレッサーλcI857を用いる方法が知られている。例えば、λファージプロモータ(λPLプロモータ)を持つ発現ベクターにおいて、低温ではλPLプロモータの下流にクローニングした遺伝子の発現は温度感受性リプレッサーλcI857によって抑制されているが、高温ではリプレッサーが失活するため、遺伝子発現が誘導される(非特許文献1参照)。しかし、本方法では、遺伝子本来の発現制御下にはないため自然の状態とはかけ離れすぎており、使用目的も遺伝子を高温で高発現させることに重点が置かれている。一方、大腸菌変異株L1では、リボソームタンパクに変異が生じると、ストップコドンのリードスルーが温度感受性となることが示唆されている(非特許文献2参照)。しかし、リボソームに変異を生じた株でのみリードスルーが温度感受性となるだけであり、任意の株においてこの現象を利用することはできない。特開2001−309793号公報特願2004−186494号ジーン(Gene)、22巻、103−113頁(1983)ジャーナル オブ ビロロジー(J. Virol.)、21巻、1−6頁(1977) 本発明は、黄色ブドウ球菌に含まれるリードスルーに関与する因子を含有する細胞においてコードする標的タンパク質の発現が温度感受性を示す遺伝子を容易に作製し、該標的タンパク質の発現量を一定の条件下で調節する方法を提供する。同時に、該方法を含む、標的タンパク質の機能解析を行う方法を提供する。その他、増殖必須タンパク質の同定を行う方法、及び、同定された増殖必須タンパク質をターゲットとし、作製された温度感受性変異株を利用した抗菌剤のスクリーニング方法を提供する。本発明は、かかるスクリーニング方法により、簡便かつ迅速に、作用機序が既存の抗菌薬等とは異なる薬剤を見出すことを1つの目的とする。 本発明者らは、黄色ブドウ球菌の温度感受性致死変異株を解析し、遺伝子中のアミノ酸をコードするコドンが終止コドン、特にオパール(UGA)へ変異している株が多数存在することを見出した。グラム陽性菌である枯草菌や黄色ブドウ球菌において、UGAは終止コドンとして機能するが、高い頻度(約6%)でリードスルーが起ることが知られている(Journal of bacteriology, 1991, Vol.173, No.5, p.1810-1812)。その場合、UGAはトリプトファンとしてリードスルーされる。このことから、本研究者らは、遺伝子中のアミノ酸をコードするコドンが終止コドンへ変異することにより、該遺伝子において、低温でリードスルーが起こり、高温ではリードスルーが起らないことを仮定し、鋭意研究を行った。その結果、標的タンパク質をコードする遺伝子中の、アミノ酸をコードするコドンの内、少なくとも1つをストップコドンに置換することによって、標的タンパク質をコードする変異遺伝子を作製し、該変異遺伝子を黄色ブドウ球菌に導入することによって、温度感受性変異株を作製することができることを見出した。該温度感受性変異株を用いることによって、標的タンパク質の発現量の調節、タンパク質の機能解析、増殖必須タンパク質の同定等を容易に行うことが可能である。また、同定された増殖必須タンパク質をターゲットとした抗菌剤のスクリーニングを行うことができる。 標的タンパク質をコードする遺伝子中の、アミノ酸をコードするコドンをストップコドンへ置換した場合、大腸菌においてリードスルーは検出されず、枯草菌においてリードスルーは検出されたが、温度感受性は示さなかった。従って、ストップコドンのリードスルーが温度感受性を示すという現象は、黄色ブドウ球菌に特有の現象であり、黄色ブドウ球菌に含まれるリードスルーに関与する因子が関連している可能性がある。 すなわち、本発明は、(1)標的タンパク質をコードする遺伝子中の、アミノ酸をコードするコドンの内、少なくとも1つをストップコドンに置換した標的タンパク質をコードする変異遺伝子及び黄色ブドウ球菌に含まれるリードスルーに関与する因子を含有する細胞を培養することを特徴とする、より低温で培養した時に比べて該標的タンパク質の発現量を減少させる方法、(2)該細胞が、黄色ブドウ球菌である、(1)記載の標的タンパク質の発現量を減少させる方法、(3)ストップコドンへの置換が、アルギニン、トリプトファン、システイン、グリシン、セリン若しくはロイシンをコードするコドンからオパールへの置換、又はトリプトファン、チロシン、ロイシン、セリン、グルタミン、リジン若しくはグルタミン酸をコードするコドンからオーカー若しくはアンバーへの置換である、(1)又は(2)記載の標的タンパク質の発現量を減少させる方法、(4)ストップコドンへの置換が、トリプトファンをコードするコドンからオパール又はアンバーへの置換、アルギニンをコードするコドンからオパールへの置換、又はグルタミンをコードするコドンからオーカー又はアンバーへの置換である、(3)記載の標的タンパク質の発現量を減少させる方法、(5)ストップコドンへの置換が、トリプトファンをコードするTGGからTGA又はTAGへの置換、アルギニンをコードするCGAからTGAへの置換、グルタミンをコードするCAGをTAGに置換する工程、又はグルタミンをコードするCAAをTAAへの置換である、(4)記載の標的タンパク質の発現量を減少させる方法、(6)ストップコドンへの置換が、トリプトファンをコードするTGGからTGAへの置換である、(5)記載の標的タンパク質の発現量を減少させる方法、(7)標的タンパク質が黄色ブドウ球菌のタンパク質である、(1)〜(6)いずれかに記載の標的タンパク質の発現量を減少させる方法、(8)(1)〜(7)いずれかに記載の標的タンパク質の発現量を減少させる方法を含む、標的タンパク質の機能の解析方法、(9)(1)〜(7)いずれかに記載の標的タンパク質の発現量を減少させる方法を含む、該標的タンパク質を増殖必須タンパク質と同定する方法、(10)(9)に記載の標的タンパク質を増殖必須タンパク質と同定する方法を含む、該増殖必須タンパク質をターゲットとした抗菌剤のスクリーニング方法、(11)黄色ブドウ球菌の増殖必須タンパク質をコードする遺伝子中の、アミノ酸をコードするコドンの内、少なくとも1つをストップコドンに置換する工程を含む、黄色ブドウ球菌の温度感受性致死変異株の作製方法、(12)標的タンパク質をコードする遺伝子中の、アミノ酸をコードするコドンの内、少なくとも1つをストップコドンに置換した標的タンパク質をコードする変異遺伝子及び黄色ブドウ球菌に含まれるリードスルーに関与する因子を含有する細胞、(13)該細胞が、黄色ブドウ球菌である、(12)記載の細胞、に関する。 本発明は、黄色ブドウ球菌に含まれるリードスルーに関与する因子と共存している、標的タンパク質をコードする遺伝子中の、アミノ酸をコードするコドンの内、少なくとも1つをストップコドンに置換した標的タンパク質をコードする変異遺伝子を提供する。該変異遺伝子はタンパク質発現に関して温度感受性を示す。 また、本発明は、標的タンパク質をコードする遺伝子中の、アミノ酸をコードするコドンの内、少なくとも1つをストップコドンに置換した標的タンパク質をコードする変異遺伝子及び黄色ブドウ球菌に含まれるリードスルーに関与する因子を含有する細胞を提供する。該細胞は変異遺伝子のタンパク質発現に関して温度感受性を示す。 さらに、本発明は、上記細胞を利用して、タンパク質の発現調節方法、機能解析方法、増殖必須タンパク質の同定方法等を提供する。細菌の温度感受性変異株を作製し、利用することによって、同定された増殖必須タンパク質をターゲットとした新規作用メカニズムを持つ抗菌剤をスクリーニングすることができる。また、作用メカニズムが不明であった既存の薬剤の作用機序を解明することもできる。オパール変異が挿入されたpbp2温度感受性(TS)変異株におけるPBP2タンパク質のウェスタンブロッティングによる検出プラスミドpHY300Cm-trpT176及びプラスミドpTet18-trpT176の構築 標的タンパク質をコードする遺伝子中の、アミノ酸をコードするコドンの内、少なくとも1つをストップコドンに置換した標的タンパク質をコードする変異遺伝子を以下において、「本発明の変異遺伝子」と称する事もある。該遺伝子は、黄色ブドウ球菌に含まれるリードスルーに関与する因子と共存することによって、温度依存的にリードスルーの起きる頻度が変化する。特に、温度を上昇させるとリードスルーが起こりにくくなるという特徴を持つ。 「標的タンパク質」とは、本発明において標的とするタンパク質であり、本発明により、温度依存的に発現量を調節することができるタンパク質を意味する。すなわち、本発明により、より低温で培養した時に比べて発現量が減少するタンパク質を意味する。例えば、標的タンパク質として、遺伝子配列が公知の全てのタンパク質等を使用することができるが、特に限定されない。具体的には、黄色ブドウ球菌に含まれるリードスルーに関与する因子と共存し、該因子によるリードスルーが起こり得る遺伝子配列を持ったタンパク質である。好ましくは、細菌のタンパク質、さらに好ましくは、黄色ブドウ球菌のタンパク質が挙げられる。また、プラスミドDNAの複製タンパク質、ファージDNAの複製タンパク質、トランスポゾンのトランスポゼース等も挙げられる。 「コドン」とは、核酸の塩基配列が、タンパク質を構成するアミノ酸配列へと生体内で翻訳される際に、各アミノ酸に対応する核酸の塩基配列(遺伝子コード)のことである。DNAの配列において、ヌクレオチド3個の塩基の組み合わせが、1個のアミノ酸を指定する対応関係が存在する。 「アミノ酸をコードするコドン」とは、ストップコドン以外の全てのコドンを意味し、20種の異なるタンパク質をコードしている。 「少なくとも一つ」とは、標的タンパク質をコードする遺伝子中の、アミノ酸をコードするコドンが1〜10個、ストップコドンに置換することを意味する。特に、1〜2個がストップコドンに置換したものや、1個がストップコドンに置換したものが好ましい。 「ストップコドン」とは、遺伝コードを構成するコドンの内、対応するアミノ酸及びtRNAがなく、最終産物であるタンパク質の生合成を停止させるために使われているコドンである。ストップコドンには、オパール(TGA;Opal)、オーカー(TAA;Ocher)、アンバー(TAG;Amber)があるが、本発明の変異遺伝子の作製において、いずれのストップコドンも利用できる。 本発明は、標的タンパク質中のアミノ酸をコードするコドンをストップコドンに置換することにより行うことができるが、標的タンパク質中のアミノ酸をコードするコドンとしては、特に制限はない。 例えば、1塩基置換により標的タンパク質中のアミノ酸をコードするコドンをストップコドンに置換する場合、アルギニン、トリプトファン、システイン、グリシン、セリン又はロイシンからオパールへの置換、トリプトファン、チロシン、ロイシン、セリン、グルタミン、リジン、グルタミン酸からオーカー又はアンバーへの置換が利用できる。 2塩基置換により標的タンパク質中のアミノ酸をコードするコドンをストップコドンに置換する場合は、さらに利用できるアミノ酸は増え、3塩基置換の場合は全てのコドンが利用可能である。 特に、1塩基置換により標的タンパク質中のアミノ酸をコードするコドンをストップコドンに置換する場合が好ましく、上記の中でも特に、トリプトファン、アルギニン又はグルタミンをコードする遺伝子をストップコドンに置換する場合が好ましい。特に、トリプトファンをコードする遺伝子をストップコドンに置換する場合が好ましい。 具体的には、トリプトファンをオパール又はアンバーに置換する場合、アルギニンをオパールに置換する場合、又はグルタミンをオーカー又はアンバーに置換する場合が好ましい。具体的には、トリプトファンをコードするTGGをTGA又はTAGに置換する場合、アルギニンをコードするCGAをTGAに置換する場合、グルタミンをコードするCAGをTAGに置換する工程、又はグルタミンをコードするCAAをTAAに置換する場合等が挙げられる。特に、トリプトファンをコードするTGGをTGAに置換する場合が好ましい。 「黄色ブドウ球菌株」としては、例えば、RN4220、Cowan、V8、Newman、L12、Reynolds、JL022、N315、RN8846、SRM551、SRM563、SR1587、FDA 209P JC−1、ATCC25923、SMITH、NCTC8325、RN2677、RN451、RN2906、MW2、COL、252、476等が挙げられる。 「リードスルー」とは、mRNAの翻訳中の作業がストップコドンで終了せず、さらに下流部分まで翻訳してしまうことを意味する。通常、サプレッサーtRNA(他の遺伝子に起きた突然変異による翻訳過程の誤りを抑圧するtRNA。mRNA上の特定のコドンの読み方が変わる。)又はリボソームに生じた突然変異等によって引き起こされる。 「黄色ブドウ球菌に含まれるリードスルーに関与する因子」とは、ストップコドンをアミノ酸コドンとして認識する際に関与する因子を意味する。例えば、tRNA(例えば、トリプトファンtRNA等)、リボソーム、PrfB(オパールを認識して翻訳を終結させるタンパク質)、EF-Tu等が挙げられる。特に好ましくは、ストップコドンをアミノ酸コドンとして認識するtRNA、さらに好ましくはオパールをトリプトファンコドンとして認識するtRNAである。 本発明の変異遺伝子と黄色ブドウ球菌に含まれるリードスルーに関与する因子を共に含有する「細胞」(以下、「本発明の変異細胞」と称することもある。)としては、原核細胞、酵母、動物細胞、植物細胞、昆虫細胞等、標的タンパク質をコードする遺伝子を発現できるものであればいずれも用いることができる。黄色ブドウ球菌には限定されない。 本発明の変異遺伝子と黄色ブドウ球菌に含まれるリードスルーに関与する因子を共に含有する「細胞」を使用して本発明を行うことができる。黄色ブドウ球菌に含まれるリードスルーに関与する因子は、当然のことながら黄色ブドウ球菌に含まれる因子であるので、本発明は以下の態様も包含する。すなわち、本発明の変異遺伝子を含有する黄色ブドウ球菌を培養することによって本発明を行うことができる。 「黄色ブドウ球菌のタンパク質」とは、該タンパク質をコードする遺伝子として、bir A、gcaD、llm、menE、pbp2、SA0013、SA0674、SA1511、tagA、pgm、dnaA、dnaJ、hemA、SA1575、murA等が挙げられる。ここで、遺伝子名は、NCBIのS. aureus N315 ゲノムデータベースに登録されているものを用いた。 黄色ブドウ球菌の遺伝子は染色体上とプラスミド上に存在する。「プラスミド」は宿主染色体とは物理的に独立して自律複製し、安定に遺伝することのできる染色体外遺伝因子である。その大きさは2〜3kbから数百kbに及ぶものまである。染色体上の遺伝子のコピー数は常に1コピーであるが、プラスミド上の遺伝子のコピー数は細胞当たり1〜2コピーのものから、100コピー程度のものまで知られている。また、外来のプラスミドを、特定の遺伝子をクローニングし、発現させるための遺伝子操作において利用することもある。そのため、本発明の変異遺伝子に関しては染色体上に存在する場合とプラスミド上に存在する場合がある。例えば、細胞の増殖や生存に必須のタンパク質をコードしているほとんどの遺伝子は染色体上に存在するので、菌株を温度感受性化させる変異遺伝子は染色体上にある。一方、プラスミド上の遺伝子は通常、細胞の生存にとって必ずしも必須なものではないので、本発明の変異遺伝子がプラスミド上に存在する場合には、菌株は温度感受性化しない。しかし、そのような場合でも、該遺伝子の発現を温度によって調節することができる。特に、該変異遺伝子がプラスミドDNAの複製に必須の遺伝子である場合には、プラスミドはその複製が温度感受性となり、遺伝子操作の様々な場面で利用することができる。 以下、本発明を詳細に説明する。なお、本明細書において、特に指示のない限り、遺伝子組換え技術、細胞での組換えタンパク質の生産技術、発現タンパク質の分離精製法、分析法、分子生物学的手法及び免疫学的手法等は公知の方法が採用される。 本発明は、標的タンパク質をコードする遺伝子中の、アミノ酸をコードするコドンの内、少なくとも1つをストップコドンに置換した標的タンパク質をコードする変異遺伝子及び黄色ブドウ球菌に含まれるリードスルーに関与する因子を含有する細胞を培養することを特徴とする、該標的タンパク質の発現量を調節する方法である。 「アミノ酸をコードするコドンをストップコドンに置換する」方法は、正確に変異を導入する方法であれば使用可能であり、例えば、cDNAライブラリーを利用した部位特異的突然変異導入方法が挙げられる。部位特異的突然変異導入方法は、例えば、タンパク質の構造と機能における特定のアミノ酸残基の重要性を評価するための突然変異体を作製する上で、強力なツールとして使用されている。この部位特異的突然変異導入方法としては、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR法)を用いた様々なプロトコールが確立されている。 PCR法に基づくプロトコールのうち、PCRとDpnIを用いた2段階法(Biotechniques.;23(4): 588-592. (1997))は簡便で効率がよいため、現在頻用されている部位特異的変異導入の方法である。この方法を用いて部位特異的変異を導入し、大腸菌に形質転換した後、変異プラスミドを抽出精製し、該発現ベクターに適合した宿主細胞に導入する。必要な場合には、さらに組換えを利用して、染色体上の野生型遺伝子をプラスミド上のストップコドンを持つ変異遺伝子と置換する。 該変異遺伝子と黄色ブドウ球菌に含まれるリードスルーに関与する因子を共に含有する「細胞」を得る方法としては、細胞にDNAを導入する方法であればいずれの方法も用いることができ、例えば、エレクトロポレーション法〔Nucleic Acids Res. 16: 6127 (1988)、FEMS Microbiol. Lett. 94: 133 (1992)、Cytotechnology, 3, 133 (1990)〕、カルシウム法(J. Bacteriol. 115: 139 (1973)、リン酸カルシウム法(特開平2-227075)、リポフェクション法〔Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 84, 7413 (1987)〕、Virology, 52, 456 (1973)に記載の方法等の方法をあげることができる。細胞に導入する際の発現ベクターとしては、上記宿主細胞において自立複製が可能、又は染色体中への組込みが可能なもの、場合によっては本発明の変異遺伝子の転写に適した位置にプロモーターを含有しているものが用いられる。 「細胞を培養する」条件としては、該細胞を培養することのできる条件であれば、公知の条件を用いることができる。例えば、黄色ブドウ球菌の細胞培養条件は、温度等の特記事項を除いて、「図解微生物実験マニュアル(技報堂、1992年)」等に記載されている野生株を培養するための通常の培養条件を使用することができる。通常pH6〜8で、1〜3日間培養する。また培養中必要に応じて、クロラムフェニコール、テトラサイクリン、ペニシリン、カナマイシン、ストレプトマイシン等の抗生物質を培地に添加してもよい。培地は、一般に使用されているLB培地〔組成:1重量% バクトトリプトン、0.5重量% 酵母エキス、1重量% 塩化ナトリウム(pH7.0)〕、スタフィロコッカス培地110(酵母エキス:0.25%、ペプトン:1%,ゼラチン:3%、乳糖:0.2%、マンニット:1%、塩化ナトリウム:7.5%、リン酸水素二カリウム:0.5%、脱脂カンテン:1.5% pH7.0)、トリプトソイ寒天培地(トリプトン:1.5%、ソイペプトン:0.5%、塩化ナトリウム:0.5%、カンテン:1.5% pH7.3)、ミュラーヒントン培地(牛肉抽出液:30%、カゼイン水解物:1.75%、可溶性デンプン:0.15%、カンテン:1.7% pH7.3)等が用いられる。 温度条件は、標的タンパク質によって異なる。本発明の変異遺伝子は、タンパク質発現が高温感受性であり、ある温度条件下ではリードスルーが起こるが、温度を上昇させると、温度の影響を受け、リードスルーが起こりにくくなることにより、標的タンパク質が発現しなくなる。その結果、本発明の変異細胞は、温度を徐々に調節することにより、野生型から変異型へ、変異型から野生型への表現型の変化を経時的に調べることができる。そのため、該細胞の使用方法によって、温度条件は適切な温度に調節し、培養することが必要である。 温度条件において「ある温度条件下」とは、野生型遺伝子も本発明の変異遺伝子も共にタンパク質を発現する温度をいう。特に、該遺伝子が増殖必須遺伝子の場合には、野生型細胞も本発明の変異細胞も増殖できる温度をいう。例えば、黄色ブドウ球菌の場合、20〜37℃であるが、好ましくは25〜34℃であり、特に好ましくは30℃である。それに対して「温度を上昇させる」ということは、野生型遺伝子のタンパク質の発現量に比較し、本発明の変異遺伝子では温度上昇の前後で菌の生理状態が著しく変化する程度までタンパク質の発現量が低下する温度まで上昇させることをいう。特に、該遺伝子が増殖必須遺伝子の場合には、野生型細胞は増殖できるが本発明の変異細胞は増殖できない、又は増殖速度が著しく遅い温度まで上昇させることをいう。例えば、標的タンパク質が黄色ブドウ球菌のタンパク質である場合、35〜45℃まで上昇させることであるが、好ましくは40〜45℃であり、特に好ましくは43℃まで上昇させることである。 本発明においては、より低温で培養した時に比べて標的タンパク質の発現量が減少することが特徴である。標的タンパク質の発現量は、例えば、抗体を用いた該タンパク量の測定、酵素活性値の測定等により、測定することができる。 また、本発明の標的タンパク質の発現量を減少させる方法を用いて、標的タンパク質の機能を解析することができる。すなわち、温度を上昇させて、標的タンパク質の発現を減少させた上で、本発明の変異細胞に生じた生理的変化を調べれば、その標的タンパク質の機能を知ることができる。例えば、黄色ブドウ球菌の場合、高温(例えば、35〜45℃)下で温度感受性変異株を培養し、代謝産物の蓄積又は合成前駆体の菌体成分への取り込み量の減少といった生理的変化等を調べればよい。例えば、ペプチドグリカン合成前駆体の蓄積や3H−N−アセチルグルコサミンのペプチドグリカンへの取り込みの減少という生理的変化が現れる場合、その標的タンパク質は、ペプチドグリカン合成機能を有すると言える。また、3H−チミジンのDNAへの取り込みの減少が認められれば、その標的タンパク質はDNA合成機能を持つと推測できる。また、特定の抗菌薬に耐性の本発明の変異細胞を高温(例えば、35〜45℃)下で培養した時、耐性度が低下すれば、その標的タンパク質は該抗菌薬に対して菌を耐性化する機能を有すると言える。これらの生理的変化の内、ペプチドグリカン前駆体の蓄積は、菌の粗抽出液を分子量1万以上の物質をカットするフィルターで濾過し、HPLCで濾過液に含まれる成分を分析すれば検出できる。N−アセチルグルコサミンやチミジンの取り込みは、菌抽出液にトリクロル酢酸を加えて沈殿を生じさせ、沈殿中の放射能を測定すれば検出できる。抗菌薬に対する耐性度は、該抗菌薬存在下での菌の増殖の有無で判定できる。この際、培養条件としては、上記記載の培養条件及び温度条件が挙げられる。また、温度を調節することにより、タンパク質の機能を解析し、該機能に必要なタンパク質量を測定することができる。 従来から行われているタンパク質の機能解析方法として、温度条件に関わらず、遺伝子を欠損させた変異株と野生株の比較から、黄色ブドウ球菌のタンパク質の機能を調べる方法も存在する。但し、この従来法では、遺伝子が全く発現しない変異株と通常通りに遺伝子が発現している野生株との比較であるため、タンパク質の発現量の違いによる生理的変化を調べることができない。また、増殖必須タンパク質の場合に適応できない。一般的に、タンパク質によって、機能を果たすための必要量が異なると考えられており、本発明であれば、徐々に温度を上昇又は下降させることにより、タンパク質の発現量を調節することができ、遺伝子の機能の量的な解析も可能である。さらに増殖必須タンパク質にも適応できる。 また、キシロースのような低分子量化合物で誘導制御されるプロモータを持つプラスミドを用い、該プロモータの下流に特定の遺伝子をクローニングして菌に導入し、該低分子化合物を該菌株が増殖している培地に添加することによって該遺伝子の発現を誘導することは従来から行われていた。しかし、この方法では遺伝子の発現を止めるときには培地から該低分子化合物を除かなくてはならず、煩雑な操作が必要であった。本発明であれば、培地の温度を上昇させるだけで遺伝子の発現を止めることができ、操作を簡便化することが可能である。 本発明の標的タンパク質の発現量を減少させる方法を用いて、細胞の増殖必須タンパク質の同定を行うことができる。細胞の増殖に必須か否かを調べるには、必須性を調べようとするタンパク質(標的タンパク質)をコードする遺伝子にストップコドンを導入する。このようにして作製した本発明の変異細胞が、温度を上昇させた際に生育できるか否かを調べればよい温度を上昇させた際に該変異細胞が生育できなければ、該標的タンパク質は増殖必須タンパク質として同定される。例えば、本発明の変異遺伝子を含有する黄色ブドウ球菌をLB培地上で生育させ、温度を上昇させた場合、LB培地上に黄色ブドウ球菌がコロニーを形成しなければ、該標的タンパク質は黄色ブドウ球菌の増殖必須タンパク質であるとわかる。 さらに、同様の手法を使えば、特殊な環境下でのみ菌の生存、増殖に必須な遺伝子の探索ができる。調べようとする非必須タンパク質(標的タンパク質)をコードする遺伝子にストップコドンを導入し、種々の環境下に菌を置いて温度感受性を調べる。菌が特定の環境下で温度感受性となっていれば、該標的タンパク質はその環境下では菌の生存増殖に必須と言える。また、このことによって該標的タンパク質の機能を推定することが可能となる。 上記方法で同定された増殖必須タンパク質をターゲットとした抗菌剤のスクリーニングを行うことができる。具体的には、本発明の変異細胞と野生型細胞に被検物質を接触させ、許容温度下にて、標的タンパク質をコードする遺伝子を介して生じる事象や標的タンパク質の動態を比較評価し、アンタゴニスト又はインヒビターを選別することができる。また、野生型細胞に当該被検物質を接触した場合に現れる生理的変化と、温度を上昇させた場合に本発明の変異細胞に現れる生理的変化を比較すればよい。すなわち、同じ生理的変化が現れていれば、当該被検物質は、標的タンパク質に作用していると言える。本利用形態は、作用機序が不明の既存の薬剤の作用機序を解明する上でも有用である。つまり、既存の薬剤を接触させた細胞と同様の生理的変化を、温度を上昇させた時に現す本発明の変異細胞を探索することによって、既存の薬剤の作用機序を解明することができる。また、抗菌薬の二次評価系を組み立てる際に、標的となる遺伝子産物を失活させた時の菌の生理的変化を調べるのに有益である。 「被験物質」は、特に限定されない。例えば、化学的に合成された化合物のみならず、生物(例えば、植物、動物、微生物)等の細胞抽出物や単離精製された化合物、微生物の発酵液、タンパク質、ペプチド、ペプチドミメティックス、アミノ酸、核酸等を使用することができる。 「標的タンパク質をコードする遺伝子を介して生じる事象や標的タンパク質の動態」としては、細胞増殖の遅延、阻害、細胞死、細胞の形態の変化、指標遺伝子以外の遺伝子の転写の促進、細胞の代謝活性の変化等が挙げられる。細胞増殖阻害は、例えば、DNAへの3H−チミジンの取り込み、DNAへのBrdUの取り込み、培養中における培養物の吸光度の変化、生菌数カウント、菌集落の有無等を指標として、評価することができる。また、細胞死は、DNAへの3H−チミジンの取り込み、DNAへのBrdUの取り込み、細胞の形態、生菌数カウント、コロニー形成能等を指標として、評価することができる。 スクリーニングに使用される培地としては、LB培地〔組成:1重量% バクトトリプトン、0.5重量% 酵母エキス、1重量% 塩化ナトリウム(pH7.0)〕、L−broth(トリプトン:1%、酵母エキス:0.5%、塩化ナトリウム:0.5% pH7.0)、スタフィロコッカス培地110 (酵母エキス:0.25%、ペプトン:1%,ゼラチン:3%、乳糖:0.2%、マンニット:1%、塩化ナトリウム:7.5%、リン酸水素二カリウム:0.5%、脱脂カンテン:1.5% pH7.0)、トリプトソイ寒天培地(トリプトン:1.5%、ソイペプトン:0.5%、塩化ナトリウム:0.5%、カンテン:1.5% pH7.3)、乳糖ブイヨン(肉エキス:0.3%、ペプトン:0.5%、乳糖:0.5% pH6.9)、臨床用チオグリコレート培地(トリプトン:1.7%、ソイペプトン:0.3%、ブドウ糖:0.6%、塩化ナトリウム:0.25%、チオグリコル酸ナトリウム:0.05%、L−シスチン:0.025%、亜硫酸ナトリウム:0.01%、寒天:0.07% pH7.0)、ミュラーヒントン培地(牛肉抽出液:30%、カゼイン水解物:1.75%、可溶性デンプン:0.15%、カンテン:1.7% pH7.3)、テトラチオネート液体培地(ペプトン:0.25%、カゼインペプトン:0.25%、デソキシコール酸ナトリウム:0.1%、チオ硫酸ナトリウム:3%、炭酸カルシウム:1% pH8.4)、マンニット食塩培地(肉エキス:0.25%、ペプトン:1%、マンニット:1%、塩化ナトリウム:7.5%、フェノールレッド:0.0025%、カンテン:1.5% pH7.4)、PEAアザイド培地(肉エキス:0.5%、トリプトン:1.5%、塩化ナトリウム:0.5%、フェニルエタノール:0.15%、窒化ナトリウム:0.01%、カンテン:1.5% pH7.4)、YCC液体培地(酵母エキス:0.5%、ペプトン:1.5%、ブドウ糖:0.45%、リン酸二カリウム:0.2%、亜硫酸ナトリウム:0.02% pH7.2)、トリプトソイブイヨン培地(トリプトン:1.7%、ソイペプトン:0.3%、ブドウ糖:0.25%、塩化ナトリウム:0.5%、リン酸二カリウム:0.25% pH7.3)等を使用することができる。 本発明の標的タンパク質の発現量を減少させる方法は、以下のように利用することもできる。黄色ブドウ球菌に含まれるリードスルーに関与する因子を含有する細胞(例えば、黄色ブドウ球菌)中で複製することのできるプラスミド、該細胞中で感染増殖できるファージのDNAのRepタンパク質又は複製開始タンパク質をコードする遺伝子、該細胞中で転移できるトランスポゾン又はinsertion sequence (ISエレメント) のトランスポゼースをコードする遺伝子に、ストップコドンを導入する。こうして得られた変異プラスミドを該細胞に導入すると、該プラスミドは温度感受性となり、温度を上昇させることによって容易に脱落させることが可能となる。変異ファージを該細胞に感染させると、細胞内での該ファージの増殖を温度によって調節することが可能となる。変異トランスポゾン若しくは変異ISを、プラスミドに組み込んだ形で該細胞に導入する又は該細胞の染色体上に導入すると、該プラスミドから染色体への転移又は染色体上での転移は温度感受性となり、高温にすることによって転移を阻止することが可能となる。このようにして上記の変異プラスミド、変異ファージ、変異トランスポゾン、変異ISはいずれも分子生物学的手法の有用なツールとなる。 また、本発明の標的タンパク質の発現量を減少させる方法は、変異遺伝子が代謝経路の酵素をコードしている場合、該酵素、又は代謝経路の中で該酵素より上流に位置する酵素の基質調製にも使用することができる。該酵素としては、例えば、UDP-N-アセチルムラミン酸等のペプチドグリカン合成酵素を挙げることができる(特願2004−186494)。例えば、本発明の変異遺伝子を含有する黄色ブドウ球菌の温度感受性致死変異株を利用する場合、非許容温度で培養した場合に目的とする基質を蓄積する温度感受性株を許容温度で培養して菌数を増加させた後、非許容温度で培養することによりその基質を蓄積させ、基質の調製をすることが可能である。 上記のように、本発明の標的タンパク質の発現量を減少させる方法を利用して、一部の標的タンパク質についてはその基質を大量に生産することもできる。この大量生産された基質を用いることにより、増殖必須タンパク質に対して阻害作用を持つ薬剤をスクリーニングすることが可能になる。つまり、非許容温度で培養した場合に目的とする基質を蓄積する温度感受性変異株を作製し、許容温度で培養して菌数を増やす工程、該温度感受性変異株を、非許容温度で培養して該基質を菌体内に蓄積させる工程、及び菌体内から該基質を抽出する工程を含む、目的とする基質の調製方法も存在する。 既知の増殖必須タンパク質をコードする遺伝子中の、アミノ酸をコードするコドンの内、少なくとも1つをストップコドンに置換することにより、又は上記方法で黄色ブドウ球菌の必須タンパク質を同定する過程で黄色ブドウ球菌の温度感受性致死変異株を作成することができる。 また、本発明には、黄色ブドウ球菌に含まれるリードスルーに関与する因子と共存している、標的タンパク質をコードする遺伝子中の、アミノ酸をコードするコドンの内、少なくとも1つをストップコドンに置換した標的タンパク質をコードする変異遺伝子も含まれる。該遺伝子は、温度依存的にリードスルーの起きる頻度が変化する遺伝子であり、温度を上昇させるとリードスルーが起こりにくくなる遺伝子である。これらの変異遺伝子及び黄色ブドウ球菌に含まれるリードスルーに関与する因子を含有する細胞、例えば、これらの変異遺伝子を含有する黄色ブドウ球菌も、本発明に包含される。温度感受性変異株の分離 黄色ブドウ球菌RN4220株を、0.4% エチルメタンサルフェート を含むLB液体培地〔組成:1重量% バクトトリプトン、0.5重量% 酵母エキス、1重量% 塩化ナトリウム(pH7.0)〕中で一晩培養して変異処理し、LB寒天培地〔組成:1重量% バクトトリプトン、0.5重量% 酵母エキス、1重量% 塩化ナトリウム、 1.5重量% 寒天 (pH7.0)〕に塗布し、30℃で培養した。ついで、生じたコロニーを、前記LB寒天培地にレプリカ法で播種し、2枚のレプリカプレートを作製した。 前記レプリカプレートの一方を30℃で一夜インキュベートし、他方を43℃で一夜インキュベートした。 その結果、43℃でのインキュベーションでは、生育せず、30℃でのインキュベーションで生育したコロニーを、温度感受性変異株として得た。温度感受性遺伝子の解析 黄色ブドウ球菌RN4220株から、慣用の方法で、ゲノムDNAを単離した。 得られたゲノムDNAを、各種制限酵素又はデオキシリボヌクレアーゼIで消化し、ついで、得られた消化DNA断片を、シャトルベクターpSR515に組込み、エレクトロポレーション法で大腸菌DH10B株に導入した。その大腸菌を寒天培地上で一晩培養し、生じた形質転換体のコロニーを全て掻き取ってプールした。そこから慣用の方法でプラスミドを調製し、ゲノムDNAプラスミドライブラリーとして使用した。 得られたゲノムDNAプラスミドライブラリーを、エレクトロポレーション法で、前記実施例1で得られた変異株に導入した。得られた菌液を、10%スクロースを含むブレインハートインフュージョン培地で30℃にて1時間培養後、クロラムフェニコール含有LB寒天培地〔組成:1重量% バクトトリプトン、0.5重量% 酵母エキス、1重量% 塩化ナトリウム、1.5重量% 寒天 (pH7.0)〕に塗布し、43℃で1〜2日培養した。 前記平板培地上、43℃で形成されたコロニーからプラスミドDNAを抽出した。その後、ゲノムDNAに由来する挿入断片の解析を行なった。 ゲノムDNAに由来する挿入断片の両端の塩基配列を決定した。ついで、決定された塩基配列と相同な配列を、すでにゲノムプロジェクトにより全ゲノムDNAの塩基配列が決定されている黄色ブドウ球菌N315株の塩基配列中で探索した。前記N315株のゲノムDNAの塩基配列は、前記RN4220株のゲノムDNAの塩基配列とほぼ相同であると考えられている。そこで、前記探索の結果に基づき、RN4220株のゲノムDNA由来の挿入断片の全塩基配列を推定した。 解析することにより複数の挿入断片中に共通して見出された遺伝子は、前記変異株の温度感受性を相補する遺伝子であると考えられる。 なお、挿入断片中に2種以上の遺伝子が共通して見出された場合、RN4220株のゲノムDNAをテンプレートにしてそれぞれの遺伝子をPCR法により増幅し、得られた各断片をそれぞれ別のプラスミドに組込み、単一の遺伝子を含有した組換えプラスミドを構築し、前記実施例1で得られた温度感受性変異株に該組換えプラスミドを導入して、43℃における増殖能の相補を評価することにより、相補性試験を行なった。 前記相補性試験の方法は段落番号(0054)記載の方法に準じた。ただし、菌液は形質転換体を選択する二枚のLB寒天培地に塗布し、一方を30℃、他方を43℃にインキュベートした。 このようにして見出された温度感受性を相補する遺伝子の配列と、該当する温度感受性株の遺伝子の配列を比較し、温度感受性を相補する遺伝子中にストップコドンが生じるナンセンス変異により温度感受性を獲得している株を見出した。結果を表1に示す。 以上のことから、bir A(配列番号:1)、gcaD(配列番号:2)及びllm(配列番号:3)が、黄色ブドウ球菌の増殖のための必須遺伝子であることがわかった。なお、前記遺伝子によりコードされるポリペプチドのアミノ酸配列を、それぞれ、配列番号:4、5及び6に示す。温度感受性変異株の作製 実施例2で得られた知見より、特定の遺伝子にストップコドンを導入することにより、温度感受性が獲得されると考え、特定の遺伝子にストップコドンを導入した株(以下の表2に示す)を得て、その菌株の温度感受性を調べた。温度感受性の確認は、実施例1と同様の培地を用い、30℃でのインキュベーションでは生育するが、43℃でのインキュベーションでは生育しないこと、又は生育が著しく遅いことを基準とした。生育状態は、各温度条件下においてLB寒天培地上で24時間培養した際に、コロニーを形成するか否か又は生じたコロニーの大きさで判断することが可能である。その結果、表2に示す株が温度感受性を獲得していることを確認した。 以上のことから、menE(配列番号:7)、pbp2(配列番号:8)、SA0013(配列番号:9)、SA0674(配列番号:10)、SA1511(配列番号:11)、tagA(配列番号:12)、pgm(配列番号:13)、dnaJ(配列番号:14)及びhemA(配列番号:15)が、黄色ブドウ球菌の増殖必須遺伝子であることがわかった。なお、前記遺伝子によりコードされるポリペプチドのアミノ酸配列を、それぞれ、配列番号:16、17、18、19、20、21、22、23及び24に示す。温度感受性変異遺伝子の発現ウエスタンブロット法により、opal変異が導入されたpbp2高温感受性変異株におけるPBP2タンパク質の発現を測定した。高温感受性pbp2変異株TS0059は、培地へのNaCl(6%)の添加により増殖の高温感受性が抑圧される。本実験では、LB培地を用いて30℃で一晩培養した培養液を、LB60(6%NaCl添加LB)培地5mlに40μl接種して、30℃と43℃でlog phaseになるまで培養した培養液を用いた。細胞破砕によるサンプル調製方法、及びウェスタンブロッティング法は主にMurakamiらの方法(FEMS Microbiol Lett., 117, page 131-136.)に従った。培養液を遠心により集菌し、PBSで洗浄した後、リゾスタフィン(200U)及びDNase(40U)を含むPBSを添加し37℃で40分間インキュベーションした。サンプルバッファー(6%SDS、15%mercaptoethanol、0.01%BPB、30%g lycerol in 50mMTris-HCl(pH6.8))を添加後5分間ボイルしたものを、ウェスタンブロッティングのためのSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動用のサンプルとした。各レーンのサンプル量は、細胞の濁度(OD値)を合わせて調整した。ウェスタンブロット解析には、ラット抗PBP2抗体(抗血清)をプローブとして用いた。RN4220PBP2に対する本抗血清の特異性は、吸収抗体とラット抗SRM710膜画分抗体(抗血清)により確認した。ただし、抗SRM710膜画分抗体(抗血清)とは、SRM710株(PBP2欠失株)(Antimicrob Agents Chemother., 31, page 1423-1425.)の膜画分を抗原にして産生した抗血清のことであり、吸収抗体とは、抗PBP2抗体をSRM710株膜画分と混ぜ、遠心した後の上清のことである。抗PBP2抗体(抗血清)を用いたウエスタンブロットにより、低温(30℃)培養時のTS0059細胞破砕液ではPBP2タンパク質が検出された。一方、高温(43℃)培養時のTS0059細胞のPBP2タンパク質量は、30℃のそれに比べて著しく減少していた。RN4220株では高温と低温とでPBP2タンパク質量に大きな差はなかった。抗SRM710(PBP2欠失株)膜画分抗体を用いると、抗PBP2抗体を用いて検出されていた図1に示したバンドは、激減した。従って、図1で示したバンドはPBP2タンパク質を検出していると判断される。非特異的に検出されるタンパク質のバンドの発光強度をみると、各レーンで大差なかった。従って、PBP2タンパク質量の差はトータルタンパク質量の差すなわち、各レーンのサンプル量の差ではない。以上の結果は、「低温ではopal終止コドンがリードスルーされているが、高温ではリードスルーされない」ことを示している。大腸菌のサプレッサーtRNAによるopalの高温感受性変異株の温度感受性の抑圧 大腸菌ではtRNAtrpのアンチコドンに塩基置換が生じたopal(UGA)のサプレッサー変異(trpT176)が分離されている。TS0059株はpbp2遺伝子の59番目のトリプトファンがopalに置換される変異をもつ高温感受性変異株である。この株の温度感受性がopal変異に基づくのであれば、その温度感受性はtrpT176により抑圧されることが予想される。そこで、TS0059の温度感受性に対するtrpT176の影響を調べた。 trpT176がクローンニングされているプラスミドpISM3000を用いた。ベクターはシャトルベクターpHY300Cmを用いた。pHY300CmのEcoRIサイトにtrpT176を含むDNA断片(pISM3000のEcoRI切断により生じる0.3kbpの断片)を組込み、大腸菌に形質転換し、Amp耐性の形質転換体を得た。得られた形質転換体からプラスミドを抽出し、プラスミドp HY300Cm-trpT176を得た(図2)。pHY300CmのEcoRIサイトを挟むように設計したプライマーを用いて、pHY300Cm-trpT176にtrpT176が挿入されていることを確認している。 同様の方法でpTet18(pHY300CmのTc遺伝子に変異(W18opal)をもつ)のEcoRIサイトにtrpT176を組み込んだプラスミドpTet18-trpT176を構築した(図2)。 大腸菌でtrpT176の影響を調べる場合には、pTet18-trpT176を塩化カルシウム法により形質転換しTc平板培地でのコロニー形成能を調べた。 TS0059株に対するtrpT176の影響を調べる場合には、エレクトロポレーション法によりpHY300Cm-trpT176を導入し、Tc平板培地でのコロニー形成能を調べた。pTet18はこのプラスミド上のTc遺伝子にopal 変異が導入された変異Tc遺伝子をもつプラスミドで、pTet18を導入した大腸菌はTc平板培地で増殖できない。そこで、まず、trpT176がopalサプレッサーtRNAとして機能することを確認するため、pTet18を導入した大腸菌のTc感受性に対する影響を調べた。その結果、pTet18導入大腸菌株のTc感受性は、trpT176により抑圧された。この結果は、trpT176がopalサプレッサーtRNAとして機能することを示している。TS0059株にtrpT176を導入すると、TS0059の温度感受性は抑圧された。結果を表4に示す。 この結果は、TS0059の温度感受性がopal変異に基づくことを示唆しており、黄色ブドウ球菌においては、「低温ではopalがリードスルーされ、高温では終止コドンとして機能する」ことを示している。 また、同様の方法により、TS3820(birA:W177opal)、TS9218(menE :W205opal)、TS7238(SA1511:W130opal)、TS20010(SA0013:R382opal)とTS20412(pgm:W195opal)の高温感受性の抑圧が確認された。結果を表5に示す。以上の結果もまた、これら変異株の温度感受性がopal変異に基づくことを示唆している。リードスルーの頻度 CAT(chloramphenicol acetyltransferase )活性の測定から、黄色ブドウ球菌におけるopalのリードスルーの頻度を推定した。 活性測定には、11番目のトリプトファンがopalに変異したCm耐性遺伝子を含むpCAT11-Tcプラスミドと野生型Cm耐性遺伝子を含むpSR515-TcをRN4220に導入した株及び、プラスミドを持たないRN4220株を用いた。 培地は、プラスミドを導入した株にはテトラサイクリン(5μg/ml)を添加したLB培地を、プラスミドを導入してないRN4220株はLB培地を使用した。 30℃と43℃で一晩培養した培養液をそれぞれ1/200に希釈し、30℃と43℃でOD値が0.5になるまで培養した。菌液を遠心により集菌し、PBSで洗浄した後、リゾスタフィンを添加し凍結解凍して細胞抽出液を調製し、活性測定用サンプルとした。 CATアッセイはSeedらの方法に従い(Gene, 67, page 271)、14CでラベルしたCmと補酵素n-Butyryl CoAを用いて37℃で1時間反応させた後、反応産物をキシレンで抽出し、液体シンチレーションカウントにより反応産物の放射活性を測定した。結果を表3に示す。 Cmにopal変異を持つpCAT11-Tcプラスミドを導入した黄色ブドウ球菌RN4220株での CATの比活性は30℃で2.8 pmol/min/μg of proteinと算出された。これは野生型Cmr遺伝子を持つRN4220/pSR515-Tc株の比活性の約10%に相当した。この値は、opalのリードスルーが報告されている黄色ブドウ球菌RN450株に野生型CAT-86遺伝子を持つ株に対する、opal変異導入CAT-86遺伝子を持つ株のCATの比活性の比率(4%)(J. Bacteriol., 173, page 1810-1812)と大差なかった。 一方、43℃でのRN4220/pCAT11-Tc株の比活性はバックグランドの数値以下であった。以上の結果は、黄色ブドウ球菌において、低温ではopalがリードスルーされ、高温ではopalとして認識されることを示している。 opalが翻訳されるアミノ酸の決定 CATの11番目のトリプトファンにopal変異を導入したCAT11にFLAGタグ(配列番号:25)を付加したFLAG-CAT11タンパクを黄色ブドウ球菌で30℃で発現させ、Anti-FLAG affinity gelを用いて精製した。その精製画分をSDS-ポリアクリルゲル電気泳動後PVDF膜に転写し、CBB染色すると、FLAG-CAT(FLAGタグを付加した野生型CAT)の分子量に相当する27Kdaとほぼ一致するタンパク質が検出がされた。このタンパク質のバンドを切り出し、アミノ酸シークエンサーにより分析した。 解析したタンパク質の18番目までのアミノ酸配列は塩基配列から予想されるFLAG-CAT11タンパク質のアミノ酸配列と一致していた。さらに、20番目以降の配列もまたFLAG-CAT11タンパク質のアミノ酸配列と一致していた。この解析結果から、目的のFLAG-CAT11タンパク質のアミノ酸配列が解析できていると判断された。この時、opalを導入した部位に相当する19番目のアミノ酸はトリプトファンであった。 この結果は、黄色ブドウ球菌では、低温ではopalがトリプトファンに翻訳されるが、高温では翻訳されず終止コドンとして機能することを示している。つまり、この高温感受性のopalリードスルーの機構には、tRNAtrpが関与することを示唆している。抗菌剤のスクリーニング方法 llm温度感受性変異株TS2408と親株RN4220をそれぞれLB液体培地で30℃で一晩培養し、同培地で5×106CFU/mLになるように希釈した。一方、被験試料として、化合物ライブラリーの化合物あるいは微生物の発酵液を96穴プレート上で2倍系列希釈した。96穴プレートの各穴にミュラーヒントン液体培地を80μL、被験試料の2倍系列希釈液を10μL、5×106CFU/mLの菌液を10μL加えてよく混ぜ、約20時間35℃でインキュベートした。 培養後、培養液の吸光度によって菌の発育阻止を判定し、被験化合物のMIC、あるいは被験発酵液の最大発育阻止希釈倍率を測定した。 その結果、親株RN4220よりも温度感受性変異株TS2408に対してより強い抗菌力を示した該被験試料をllm阻害剤の候補として選別した。 本発明の標的タンパク質の発現量を減少させる方法により、標的タンパク質の発現量を容易に調節することができ、標的タンパク質の機能解析等に応用できる。また、増殖必須タンパク質の同定が可能であり、同定された増殖必須たんぱく質をターゲットとした抗菌剤のスクリーニング方法を提供する。さらに、標的タンパク質が増殖必須遺伝子の場合は、産生した菌株は温度感受性となり、抗菌剤のスクリーニングに利用できる。 標的タンパク質をコードする遺伝子中の、アミノ酸をコードするコドンの内、少なくとも1つをオパールに置換した標的タンパク質をコードする変異遺伝子及び黄色ブドウ球菌に含まれるリードスルーに関与する因子を含有する細胞を培養することを特徴とする、より低温で培養した時に比べて該標的タンパク質の発現量を減少させる方法。 該細胞が、黄色ブドウ球菌である、請求項1記載の標的タンパク質の発現量を減少させる方法。 オパールへの置換が、アルギニン、トリプトファン、システイン、グリシン、セリン又はロイシンをコードするコドンからオパールへの置換である、請求項1又は2記載の標的タンパク質の発現量を減少させる方法。 オパールへの置換が、トリプトファン又はアルギニンをコードするコドンからオパールへの置換である、請求項3記載の標的タンパク質の発現量を減少させる方法。 オパールへの置換が、トリプトファンをコードするTGGからTGAへの置換、アルギニンをコードするCGAからTGAへの置換である、請求項4記載の標的タンパク質の発現量を減少させる方法。 オパールへの置換が、トリプトファンをコードするTGGからTGAへの置換である、請求項5記載の標的タンパク質の発現量を減少させる方法。 標的タンパク質が黄色ブドウ球菌のタンパク質である、請求項1〜6いずれかに記載の標的タンパク質の発現量を減少させる方法。 請求項1〜7いずれかに記載の標的タンパク質の発現量を減少させる方法を含む、標的タンパク質の機能の解析方法。 請求項1〜7いずれかに記載の標的タンパク質の発現量を減少させる方法を含む、該標的タンパク質を増殖必須タンパク質と同定する方法。 請求項9に記載の標的タンパク質を増殖必須タンパク質と同定する方法を含む、該増殖必須タンパク質をターゲットとした抗菌剤のスクリーニング方法。 黄色ブドウ球菌の増殖必須タンパク質をコードする遺伝子中の、アミノ酸をコードするコドンの内、少なくとも1つをオパールに置換する工程を含む、黄色ブドウ球菌の温度感受性致死変異株の作製方法。 標的タンパク質をコードする遺伝子中の、アミノ酸をコードするコドンの内、少なくとも1つをオパールに置換した標的タンパク質をコードする変異遺伝子及び黄色ブドウ球菌に含まれるリードスルーに関与する因子を含有する細胞。 該細胞が、黄色ブドウ球菌である、請求項12記載の細胞。配列表


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