タイトル: | 特許公報(B2)_FXR活性化を介したコレステロールホメオスタシス関連遺伝子転写活性調節剤 |
出願番号: | 2006511917 |
年次: | 2011 |
IPC分類: | A61K 31/192,A61P 3/06,A61P 43/00,A61P 1/16 |
川西 徹 鈴木 琢雄 最上 知子 井上 和秀 早川 堯夫 浅川 義範 橋本 敏弘 JP 4825977 特許公報(B2) 20110922 2006511917 20050303 FXR活性化を介したコレステロールホメオスタシス関連遺伝子転写活性調節剤 財団法人ヒューマンサイエンス振興財団 803000056 一色国際特許業務法人 110000176 川西 徹 鈴木 琢雄 最上 知子 井上 和秀 早川 堯夫 浅川 義範 橋本 敏弘 JP 2004109585 20040402 20111130 A61K 31/192 20060101AFI20111110BHJP A61P 3/06 20060101ALI20111110BHJP A61P 43/00 20060101ALI20111110BHJP A61P 1/16 20060101ALI20111110BHJP JPA61K31/192A61P3/06A61P43/00 111A61P1/16 A61K 31/00-31/327 A61P 1/16 A61P 3/06 A61P 43/00 CA/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) ZOU, L. et al,Life Science,2002年,Vol.71,p.1579-1589 LIU, Y. et al,J. Clin. Invest.,2003年,Vol.112, No.11,p.1678-1687 MALONEY, P. R. et al,J. Med. Chem.,2000年,Vol.43, No.16,p.2971-2974 KUBO, I. et al,J. Natural Products,1994年,Vol.157, No.1,p.9-17 吉川雅之,薬用植物に見る生理機能 イチョウ,食品と科学,2001年,Vol.7,p.37-39 8 JP2005003602 20050303 WO2005097097 20051020 8 20080220 伊藤 清子 本発明は、高脂血症治療剤及び肝内胆汁うっ滞症治療剤として有用なFXR(farnesoid X receptor)転写活性調節剤に関する。 高脂血症は、遺伝性、もしくは不適切な食事や運動不足が原因で、血中の脂質が過剰となり、動脈硬化を引き起こして虚血性心疾患などの様々な成人病をもたらす。 一方核内レセプターは、リガンドの結合により活性化され、標的遺伝子の発現を制御する転写因子であり、様々な生理現象に重要な役割を果たしている。1999年に、核内レセプターの一員であるFXRのリガンドが、ケノデオキシコール酸(CDCA)をはじめとする胆汁酸分子であり、CDCAによりFXRの転写活性が増強されることが示された(Makishima, M. et al., Science, 284, pp.1362-1365, 1999; Parks D. J. et al., Science, 284, pp.1365-1368, 1999; Wang,H. et al., Mol. Cell, 3, pp.543-553, 1999)。 胆汁酸はコレステロールより合成されるが、この転換は最終産物である胆汁酸により抑制される。胆汁酸により活性化されるFXRは律速酵素であるコレステロール7αヒドロキシラーゼ(CYP7A1)の遺伝子発現を抑制することにより、このフィードバック制御を担っている。FXRを欠損したマウスでは、血中コレステロール、胆汁酸、トリグリセリド等の上昇をきたすことが明らかとなった(Sinal et al., Cell 102, pp731-744, 2000)。胆汁酸は腸管からのコレステロール吸収を促進するため、FXR欠損マウスでは、コレステロールの胆汁酸への転換は促進されるものの、胆汁酸生合成量の増加により、腸管からのコレステロール吸収が促進されたためと考えられる。また、FXRの活性化が血清トリグリセリドの低下を引き起こすという報告もされている(Maloney et al., J. Med. Chem. 43, pp.2971-2974, 2000)。したがって、FXRの活性化剤には血清トリグリセリド、コレステロール低下作用が期待され、高脂血症の予防治療薬の有力な候補となる。 また、FXR活性化剤は肝内胆汁うっ滞症の治療薬としても有用である(Liu et al., J. Clin. Invest, pp.1678-1687, 2003)。肝内胆汁うっ滞症は肝臓内で胆汁の流れが滞り、肝細胞が壊れていく病気である。FXRは、胆汁酸の胆汁中への排泄を担い腸肝循環に重要な遺伝子であるbile salt export pump遺伝子(BSEP)の発現を促進することから、FXRの活性化剤は肝内からの胆汁酸の排出を促し、肝内胆汁うっ滞を改善すると考えられる。 強力なFXRの生理的リガンドとして知られるケノデオキシコール酸(CDCA)は毒性をもつリトコール酸に代謝されるため、医薬品としての活用は困難である。しかし、胆汁酸とは異なる構造を持つ化合物は,毒性物質へ代謝されない高脂血症予防治療薬として期待される。 コレステロール低下剤としては、HMG−CoA還元酵素阻害剤が臨床上高い評価を受けている。しかしながら、高い血清コレステロール値を持つ家族性高コレステロール血症の患者、あるいは冠動脈疾患をもつ患者に対し、目標とする低レベルの血清コレステロール値まで下げるには十分な効果を有しておらず、このような患者にも有効な、より強力な高脂血症治療剤が望まれている。 HMG−CoA還元酵素阻害剤の主な作用メカニズムは間接的なLDL受容体の発現増強作用にあると考えられている。しかしながら、その作用には限界があり、血清コレステロールの濃度に下げ止まりがあることも事実である。そこでHMG−CoA還元酵素阻害剤とは異なる作用メカニズムの医薬品を開発する事により、単独またはHMG−CoA還元酵素阻害剤との併用により強力な血清コレステロール低下作用を示すことが期待できる。FXRの活性化剤はHMG−CoAとは異なる作用メカニズムを持つため有用なコレステロール低下薬となりうる。さらにFXRの活性化剤には血清トリグリセリドを低下させる働きがあることからも、高脂血症予防治療薬として期待が持たれる。 本発明はレポータージーンアッセイを用いギンコール酸がFXR活性化作用をもつことを発見する事により完成に至った。すなわち本発明は下記の式(1)に示した化合物(1)がFXR活性化作用をもつことに基づくものである。式中、R1は水素原子、アシル基、アルキル基、アリール基から選ばれる官能基、R2は水素原子、アルキル基、アリール基から選ばれる官能基を示し、R3はアルキル基、アルキニル基、アルケニル基から選ばれる官能基を示す。本化合物は、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム等の薬学的に許容される塩である場合を含む。各被験化合物の濃度依存的FXR活性化効果を示したレポータージーンアッセイの結果を示す。HepG2細胞を用い、各被験化合物のFXRにより転写制御を受ける遺伝子発現への影響を示した図である。遺伝子としてCYP7A1及びSHPのmRNAの測定を行った。 化学式で表される化合物およびその塩は、これを医薬として用いるにあたり経口的または非経口的に投与することができる。すなわち通常用いられる投与形態、例えば錠剤、カプセル剤、シロップ剤、懸濁液等の形で経口的に投与することができ、あるいはその溶液、乳剤、懸濁液等の液剤の形にしたものを注射の形で非経口投与することができる。坐剤の形で直腸投与することもできる。また、前記の適当な投与剤形は許容される通常の担体、賦形剤、結合剤、安定剤などに活性化合物を配合することにより製造することができる。また、注射剤として用いる場合には許容される緩衝剤、溶解補助剤、等張剤等を添加することもできる。また、本発明の化合物の投与量は、通常1〜50mg/体重kgであり、好ましくは5〜30mg/体重kgである。投与対象は、哺乳動物であり、通常ヒトである。レポータージーンアッセイによるFXR活性化化合物の評価 FXRはリガンドと結合しFXR結合配列(FXRE)に結合することにより下流の遺伝子の転写促進を行う。FXR結合配列(FXRE)下にCMV promoterの3’側201 bpと enhanced yellow fluorescent protein (EYFP)遺伝子をつないだプラスミド (レポータープラスミド)とSV40 promoter下にenhanced cyan fluorescent protein (ECFP)遺伝子をつないだプラスミド(内部標準測定用プラスミド)、核内受容体発現用プラスミドとしてRXR遺伝子を有するプラスミド及びFXR遺伝子を有するプラスミドの4種をCOS7細胞に導入した。この細胞の培養液中に被験化合物を添加し、約40時間後に培地を除きPBSでwashした後EYFPとECFPの蛍光を測定した。細胞内へのプラスミドの導入効率等の補正を行うために、内部標準として測定したECFPの蛍光値でEYFPの蛍光値の補正を行った。すなわちFXRの転写活性は(EYFPの蛍光値) / (ECFPの蛍光値)の値により評価を行った。 式(1)中、R1=H、R2=8-pentadecenylであるギンコール酸15:1(式(2)の化合物)、及び、式(1)中、R1=H、R2=10-heptadecenylであるギンコール酸17:1(式(3)の化合物)処理により、FXR転写活性の促進が引き起こされた(図1)。これらの活性化は同濃度のCDCAと同等もしくは高い率であった。なお、これらの化合物はRXRの活性化は引き起こさずFXRを活性化する事により、レポータージーンの発現を上昇させた。定量的RT−PCR CYP7A1 mRNAの発現量抑制及びsmall heterodimer partner(SHP) mRNAの発現量増加を定量的PCRで測定した。SHP遺伝子はFXRの活性化により転写促進されることが明らかとなっており、CYP7A1と同様にFXR活性化の指標として使用できる。肝癌由来培養細胞であるHepG2を10% FCSを含むDMEM培地で培養した。培地を10%活性炭処理FCSを含むフェノールレッド不含DMEMに交換後、さらに6時間後に被験物質及び10%活性炭処理FCSを含むフェノールレッド不含DMEMに置換し培養を行った。24時間後細胞を回収し、RNeasy kit (QIAGEN)を用いてRNAの抽出を行った。得られたRNAを用い、TaqMan PCR法によりCYP7A1及びSHP mRNAの定量を行った。各試料は18s rRNAを用いてRNA濃度の補正を行った。 コントロールとして使用したDMSO 0.1%処理との比較の結果、ギンコール酸は30υμMでCYP7A1 mRNAの発現を約70%抑制し、SHP mRNAの発現を約2倍に上昇させた。これより、これら化合物がFXRの活性化を引き起こし下流の遺伝子の発現量を調整することが明らかとなった。 上記化合物は、FXRの転写活性調節を行うことにより血清トリグリセリド、コレステロール低下作用が期待される。また、これら化合物は胆汁酸とは異なる構造をもつ化合物であり、毒性を持つリトコール酸に代謝されることが無い。従って、効果的な高脂血症予防治療薬として期待できる。また、FXRの活性化はBSEPの転写を促進し肝内胆汁うっ滞症の予防治療薬としても有効である。 下記の式(1)で示されるギンコール酸又はその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有するFXRの活性化剤。式中R1は水素、R2は水素を示し、R3はアルキル基又はアルケニル基を示す。 ギンコール酸が、下記の式(2)若しくは式(3)で示される化合物である請求項1に記載のFXRの活性化剤。 下記の式(1)で示されるギンコール酸又はその薬学的に許容される塩を有効成分として含有するコレステロール低下薬。式中R1は水素、R2は水素を示し、R3はアルキル基又はアルケニル基を示す。 ギンコール酸が、下記の式(2)若しくは式(3)で示される化合物である請求項3に記載のコレステロール低下薬。 下記の式(1)で示されるギンコール酸又はその薬学的に許容される塩を有効成分として含有する高脂血症予防治療薬。式中R1は水素、R2は水素を示し、R3はアルキル基又はアルケニル基を示す。 ギンコール酸が、下記の式(2)若しくは式(3)で示される化合物である請求項5に記載の高脂血症予防治療薬。 下記の式(1)で示されるギンコール酸又はその薬学的に許容される塩を有効成分として含有する肝内胆汁うっ滞症予防治療薬。式中R1は水素、R2は水素を示し、R3はアルキル基又はアルケニル基を示す。 ギンコール酸が、下記の式(2)若しくは式(3)で示される化合物である請求項7に記載の肝内胆汁うっ滞症予防治療薬。