生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_肝障害予防又は抑制剤
出願番号:2006511784
年次:2012
IPC分類:A61K 35/20,A61P 1/16


特許情報キャッシュ

森山 芳則 坪井 誠二 増山 明弘 高野 俊明 中村 哲平 JP 4947636 特許公報(B2) 20120316 2006511784 20050331 肝障害予防又は抑制剤 カルピス株式会社 000104353 酒井 一 100081514 蔵合 正博 100082692 森山 芳則 坪井 誠二 増山 明弘 高野 俊明 中村 哲平 JP 2004106105 20040331 20120606 A61K 35/20 20060101AFI20120517BHJP A61P 1/16 20060101ALI20120517BHJP JPA61K35/20A61P1/16 A61K 35/00 A61P 1/00 CAPLUS/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) 特開平07−206402(JP,A) 特開平08−099888(JP,A) 特開平01−268641(JP,A) 特開平05−176713(JP,A) 特開平05−344864(JP,A) 特開平10−000086(JP,A) 特開平11−098978(JP,A) 特開2001−226289(JP,A) 特開2002−332242(JP,A) 特開2000−189105(JP,A) 特開2000−197469(JP,A) 特表2003−513621(JP,A) 国際公開第03/090546(WO,A1) 特許第4087249(JP,B2) 1 FERM BP-6060 JP2005006243 20050331 WO2005094848 20051013 6 20080225 田村 直寛 本発明は、肝障害予防又は抑制剤に関し、更に詳細には、肝細胞壊死に起因する血清中のGOT値やGPT値の上昇を抑制し、肝障害を予防及び/又は抑制するための肝障害予防又は抑制剤に関する。 肝臓は、代謝の中枢器官であり、胆汁産生、排泄、解毒等の多彩且つ重要な機能を有している。一方、予備力が強いため沈黙の臓器とも言われており、倦怠感や黄疸、浮腫、腹水等の症状が表れ難く、その障害の発見が遅れがちになり易い。一般には、GOT(グルタミン酸−オキザロ酢酸トランスアミラーゼ)やGPT(グルタミン酸−ピルビン酸トランスアミラーゼ)は、肝臓に多く存在することが知られており、血中のGOT値及びGPT値が肝臓細胞壊死の程度を鋭敏に反映することから、肝障害の簡易な測定法としてこれらの値による評価がなされることが多い。 近年、食生活の欧米化、栄養バランスの偏り、アルコール摂取や薬物による肝臓への負担が増加しており、脂肪肝の患者数も大幅に増加している。また慢性肝疾患は、肝細胞の年余にわたる破壊と再生の繰返しにより、肝組織の繊維化が進行し、肝硬変、肝細胞ガンへと進行する疾患であり、このような患者が増加している。 現在、肝疾患に対する特効薬はなく、食事療法や安静を中心とする治療が主流であるが、例えば、慢性肝疾患に対して、強力ネオミノファーゲンC(登録商標、ミノファーゲン社製)等のグリチルリチン製剤が使用されることがある。しかし、グリチルリチン製剤は、腸内で不活性化されるために、経口での効果は期待できず、主に注射剤として使用されている。従って、日常的な注射の苦痛が生じ、更には、副作用として高血圧や低カリウム血症等が生じることも報告されている。 一方、種々のアミノ酸製剤が、肝硬変、肝不全等の肝疾患に伴なう肝性脳症や低アルブミン血症の改善等を目的として使用されることがある。しかし、該アミノ酸製剤は、肝疾患を治療するというより、肝疾患による栄養障害の改善、即ち、血漿アミノ酸の不均衡是正による窒素代謝の改善や血中アンモニア値の低下等を期待して使用されているに過ぎない。 ところで、最近、ラクトパーオキシダーゼ及び/又はラクトフェリンを有効成分とする肝機能改善剤が提案されている(特許文献1参照)。該ラクトフェリンは、多くの哺乳動物の乳に含まれることが知られている。 しかし、ラクトフェリンは熱により変性し易く、通常の高温加熱殺菌処理等を行なうことで、容易に変性することが知られている(例えば、非特許文献1〜3参照)。このため、工業的な分離や利用には制限があり、コストや汎用性の点で問題がある。 近年、ホエーには、胃粘膜保護成分(α−ラクトアルブミン)等様々な生理機能成分を含有することが知られているが、通常の加熱殺菌処理された乳又はホエーにおいて、肝機能改善作用は報告されていない。特開2001−226289号公報食品新素材有効利用技術シリーズ「ラクトフェリン」(平成12年3月発行、社団法人菓子総合技術センター)乳業技術Vol.51.2001「ミルクのラクトフェリン」Journal of Dairy Science Vol.74, No.1,p65-71, 1991 本発明の課題は、日常的に連用可能で、安全性に優れ、肝細胞壊死等の肝障害を有効に予防及び/又は抑制しうる肝障害予防又は抑制剤を提供することにある。 すなわち、本発明によれば、乳(初乳を除く)をラクトバチルス・ヘルベティカスを含む菌株により発酵させて得られる発酵ホエー又はその処理物を有効成分として含み、該ラクトバチルス・ヘルベティカスが、ラクトバチルス・ヘルベティカス CM4株(経済産業省産業技術総合研究所生命工学工業技術研究所 特許生物寄託センター寄託番号:FERM BP−6060)を含む肝障害予防又は抑制剤が提供される。 本発明の肝障害予防又は抑制剤は、食経験のある発酵ホエーを有効成分とするので、日常的に連用可能で、安全性に優れ、肝細胞壊死等の肝障害を有効に予防及び/又は抑制することができる。 以下、本発明につき更に詳細に説明する。 本発明の肝障害予防又は抑制剤は、有効成分として乳を特定のラクトバチルス・ヘルベティカスを含む菌株により発酵させて得られる発酵ホエー又はその処理物を含み、例えば、肝細胞壊死が主の要因とされる血中のGOT値及びGPT値の上昇を有効に予防及び/又は抑制することができる。 前記有効成分としての発酵ホエーは、乳から、カゼインタンパク質等を常法に従って全部若しくは大部分除去して得られる水分画分を含むものであって、ラクトバチルス・ヘルベティカスを含む菌株を利用して発酵により得られる発酵ホエーを含む。 前記発酵ホエーは、通常、乳を特定のラクトバチルス・ヘルベティカスを含む乳酸菌で発酵、または特定のラクトバチルス・ヘルベティカスを含む乳酸菌と酵母で共生発酵する方法等により得られる発酵ホエー等が挙げられる。原料の乳としては、例えば、牛乳、山羊乳、羊乳等の獣乳;豆乳等の植物乳;これらの加工乳である脱脂乳、還元乳、粉乳、コンデンスミルク等が挙げられる。使用に際しては混合物として用いることができる。 乳の固形分濃度は特に限定されないが、例えば、脱脂乳を用いる場合の無脂乳固形分濃度は、9質量%程度が最も良く用いられる。しかし、設備あたりの生産量を考慮した場合、無脂乳固形分濃度をある程度高くすることも可能である。発酵乳生産時に得られる発酵ホエーは、他の乳成分と分離して使用できる。 前記乳酸菌としては、ストレプトコッカス属、ラクトコッカス属、ラクトバチルス属、ビフィドバクテリウム属等に属する乳酸菌が挙げられるが、ラクトバチルス属が好ましい。具体的には、例えば、ラクトバチルス・ブルガリカス(Lactobacillus bulgaricus)、ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・アシドフィラス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)等が挙げられ、特に、ラクトバチルス・ヘルベティカスが好適に使用できる。更に具体的には、ラクトバチルス・ヘルベティカスATCC 15009、ラクトバチルス・ヘルベティカスATCC 521、ラクトバチルス・ヘルベティカスCM4株(経済産業省産業技術総合研究所生命工学工業技術研究所 特許生物寄託センター 寄託番号:FERM BP−6060,寄託日1997.8.15)(以下、CM4株と称す)が挙げられ、本発明では、CM4株を用いる。このCM4株は、特許手続上の微生物寄託の国際的承認に関するブタペスト条約に上記寄託番号で登録されており、この株が特許されることにより、第三者が入手できない制限が全て取り除かれる。 前記乳酸菌は、あらかじめ前培養しておいた十分に活性の高いスターターとして用いることが好ましい。初発菌数は、好ましくは105〜107個/ml程度である。 前記発酵時に酵母を併用することができる。酵母の菌種は特に限定されないが、例えば、サッカロマイセス・セレビシェ(Saccharomyces cerevisiae)等のサッカロマイセス属酵母等が好ましく挙げられる。酵母の含有割合は、その目的に応じて適宜選択することができる。 発酵方法としては、前記乳酸菌の1種もしくは2種以上を培地に培養するか、または前記乳酸菌の1種もしくは2種以上と前記酵母の1種もしくは2種以上とを混合して培地に培養することができる。培地としては、前記乳成分の1種もしくは2種以上のみからなる培地、またはこれらに副次的成分として酵母エキス、アスコルビン酸等のビタミン類、システイン等のアミノ酸、塩化ナトリウム等の塩類、グルコース、シュークロース、ラフィノース、スタキオース等の糖類、ゼラチン等の安定剤、フレーバー等を適宜添加した培地を用いることができる。 発酵は、通常静置若しくは撹拌培養により、例えば、発酵温度20〜50℃、好ましくは30〜45℃、発酵初発pH6.0〜7.0の条件等で行い、菌数が107個/ml以上、pH5.0以下になった時点で培養を停止する方法等により行なうことができる。また、発酵前の乳は、高温加熱殺菌等が施されていても良い。 得られる発酵ホエーは、通常の分離操作によりカードから分離して得ることができる。 本発明の肝障害予防又は抑制剤の有効成分としての発酵ホエーの投与量は、投与の継続性等により適宜選択でき特に限定されないが、通常、凍結乾燥粉末として0.001g/体重kg/日以上、好ましくは0.01g/体重kg/日以上である。また、本発明の肝障害予防又は抑制剤には、必要により発酵ホエー以外の肝障害予防又は抑制作用を有する他の成分を含有させることも可能である。 本発明の肝障害予防又は抑制剤の形態は、発酵ホエーそのまま、若しくはその処理物として、例えば、発酵ホエーを減圧濃縮等で濃縮した濃縮物として、また、発酵ホエーを凍結乾燥、噴霧乾燥等の乾燥処理を行なって、乾燥した粉末の形態とすることもできる。 本発明の肝障害予防又は抑制剤の投与は、通常、経口投与で行なうことができ、例えば、肝障害が生じる前に継続的若しくは断続的に、更には、肝障害が生じた後に、継続的又は断続的に摂取することができる。 以下実施例により、更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。 実施例1及び参考例1 市販の脱脂粉乳を固形率9質量%となるように蒸留水で溶解し、オートクレーブで105℃、10分間、高温加熱殺菌した後、室温まで冷却し、ラクトバチルス・ヘルベティカスCM4株のスターターを3質量%接種し、37℃、24時間培養を行って発酵乳を得た。この発酵乳を12000G、20分間遠心分離して固形分を除去し発酵ホエーを調製した。 また、市販の脱脂粉乳を固形率9質量%となるように蒸留水で溶解し、オートクレーブで105℃、10分間、高温加熱殺菌した後、室温まで冷却し、乳酸を酸度が2.2%となるように加えた。次いで、12000G、20分間遠心分離して固形分を除去することによりカゼインホエーを調製した。 得られた発酵ホエー(実施例1)又はカゼインホエー(参考例1)を蒸留水で10質量%になるよう希釈し、飲水として以下の動物試験に供した。また、コントロールとしてホエーを含まない蒸留水の対照区についても試験を行なった。 3週齢のICR系雄性マウスを3群(10匹/1群)に分け、固型飼料(商品名「MF」、オリエンタル酵母工業(株)製)と、蒸留水、上記で調製した10質量%発酵ホエー、又は上記で調製した10質量%カゼインホエーをそれぞれ1ケ月間自由摂取させた。次いで、18時間絶食させた後、各群をさらに5匹づつに分け、生理食塩水又はアセトアミノフェン溶液(700mg/kg)を腹腔内投与した。このアセトアミノフェンは、解熱鎮痛剤として一般の医薬品にも使用されているが、大量に摂取すると肝臓で処理できず、劇症肝炎様の肝障害を引き起こすことが知られており、肝障害の実験における評価によく使用されている。 投与後、2時間目と4時間目に、トランスアミラーゼCIIテストキット(ワコー社製)を使用して血清中のGOT値及びGPT値を測定することで、肝障害予防又は抑制作用を評価した。結果を表1に示す。 表1の結果より、コントロールの蒸留水投与群は、血清中のGOT値及びGPT値がアセトアミノフェン投与により顕著に上昇するが、発酵ホエー投与群及びカゼインホエー投与群ではこのような上昇が抑制され、優れた肝障害予防又は抑制作用を示すことが判った。特に、発酵ホエー投与群では、カゼインホエー投与群に対してもアセトアミノフェン投与によるGOT値及びGPT値の上昇が抑制されることがわかった。 乳(初乳を除く)をラクトバチルス・ヘルベティカスを含む菌株により発酵させて得られる発酵ホエー又はその処理物を有効成分として含み、該ラクトバチルス・ヘルベティカスが、ラクトバチルス・ヘルベティカス CM4株(経済産業省産業技術総合研究所生命工学工業技術研究所 特許生物寄託センター寄託番号:FERM BP−6060)を含む肝障害予防又は抑制剤。


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