タイトル: | 特許公報(B2)_脂肪族ジカルボン酸化合物の製造方法 |
出願番号: | 2006511589 |
年次: | 2011 |
IPC分類: | C07C 51/275,C07C 55/02,C07C 55/10,C07C 55/12,C07C 55/14,C07C 55/16,C07C 55/20 |
松村 功啓 尾野村 治 岩崎 史哲 JP 4677402 特許公報(B2) 20110204 2006511589 20050323 脂肪族ジカルボン酸化合物の製造方法 株式会社トクヤマ 000003182 高畑 靖世 100083688 松村 功啓 尾野村 治 岩崎 史哲 JP 2004090983 20040326 20110427 C07C 51/275 20060101AFI20110407BHJP C07C 55/02 20060101ALI20110407BHJP C07C 55/10 20060101ALI20110407BHJP C07C 55/12 20060101ALI20110407BHJP C07C 55/14 20060101ALI20110407BHJP C07C 55/16 20060101ALI20110407BHJP C07C 55/20 20060101ALI20110407BHJP JPC07C51/275C07C55/02C07C55/10C07C55/12C07C55/14C07C55/16C07C55/20 C07C 51/275 C07C 55/02 C07C 55/10 C07C 55/12 C07C 55/14 C07C 55/16 C07C 55/20 CAplus(STN) REGISTRY(STN) 特開2001−213841(JP,A) 特開2002−226421(JP,A) Tetrahedron Letters,2004年,45, (44),p.8221-8224 6 JP2005005986 20050323 WO2005092827 20051006 10 20070911 福島 芳隆 本発明は、トリフルオロ酢酸の存在下、脂肪族環状二級アルコール化合物もしくは脂肪族環状ケトン化合物を亜硝酸塩もしくは硝酸塩で酸化する、脂肪族ジカルボン酸化合物の製造方法に関する。 カルボン酸化合物は、医農薬及び染料の原料として工業的に重要な化合物である。カルボン酸化合物の中でも、ジカルボン酸化合物は高分子化合物の製造原料用モノマーとして極めて重要な化合物である。 一方、硝酸或いは硝酸塩を用いる酸化反応は、有機合成上極めて重要な酸化反応の一つである。この硝酸或いは硝酸塩を用いる酸化方法は、脂肪族環状二級アルコール化合物を脂肪族ジカルボン酸誘導体に酸化する方法としては一般的な方法である。特に、シクロヘキサノールをバナジン酸アンモニウムの存在下、硝酸によって酸化する方法は硝酸酸化の最も一般的な方法として知られている(オーガニック・シンセシス 1巻 18−20頁 1932年)。 しかしながら、前記硝酸による酸化方法は、酸化反応が急激に進行する恐れがある。このため、バナジン酸アンモニウムを含む硝酸にシクロヘキサノールを添加する際には、極めて慎重に添加する必要があり、しかも温度管理を厳重に行う必要がある。さらに、酸化反応の途中に更なる炭素−炭素結合の開裂反応も進行するため、得られるアジピン酸の収率は58〜60%程度に留まってしまう。このため、この製造方法は十分満足のできる製造方法とは言えない。 他方、アルコール化合物をアルデヒド化合物或いはケトン化合物に酸化する方法として、濃度が90容量%(93.1質量%)のトルフルオロ酢酸の水溶液中で、亜硝酸ナトリウム或いは硝酸ナトリウムを酸化剤として用いてアルコール化合物をアルデヒド化合物或いはケトン化合物へ酸化する方法がある(ツァーナル・オルガニシェコイ・キミー 24巻 488〜495頁 1988年)。 この90容量%のトルフルオロ酢酸水溶液中で、亜硝酸塩或いは硝酸塩を用いて行う酸化反応は、室温下で反応が進行する極めて温和な酸化反応である。該方法により、脂肪族環状二級アルコール化合物を脂肪族環状ケトン化合物にほぼ定量的に酸化できる。しかしながら、この方法によっては、得られる脂肪族環状ケトン化合物を更に酸化して脂肪族ジカルボン酸にすることはできない。 かかる事実に鑑み、本発明者らは温和な条件で脂肪族ジカルボン酸を製造する方法について鋭意研究を行った。その結果、トリフルオロ酢酸の存在下で、亜硝酸塩或いは硝酸塩を用いる酸化反応において、反応系に存在する水分量が酸化反応の進行に大きな影響を与えていることを見出し、さらに検討を進めた結果、本発明を完成させるに至った。 従って、本発明の目的とするところは、選択性が高く、高収率で、しかも安全な操作で脂肪族ジカルボン酸化合物を製造する方法を提供することにある。 本発明を以下に記載する。 〔1〕 水酸基が結合する炭素原子又はカルボニル基を構成する炭素原子にメチレン基が少なくとも1個結合されている脂肪族環状二級アルコール化合物もしくは脂肪族環状ケトン化合物を、トリフルオロ酢酸の存在下、亜硝酸塩もしくは硝酸塩で酸化する脂肪族ジカルボン酸の製造方法であって、反応系中の水分量を、前記トリフルオロ酢酸と反応系中の水分量との合計量を100質量%として、1質量%以下に保って反応を行うことを特徴とする脂肪族ジカルボン酸化合物の製造方法。 〔2〕脂肪族環状二級アルコール化合物もしくは脂肪族環状ケトン化合物が、3〜12員環化合物である〔1〕に記載の脂肪族ジカルボン酸化合物の製造方法。 〔3〕 亜硝酸塩又は硝酸塩の配合量が、脂肪族環状二級アルコール化合物もしくは脂肪族環状ケトン化合物1モルに対し0.5〜10モルである〔1〕に記載の脂肪族ジカルボン酸化合物の製造方法。 〔4〕 脂肪族環状二級アルコール化合物もしくは脂肪族環状ケトン化合物のトリフルオロ酢酸中の濃度が0.05〜60質量%である〔1〕に記載の脂肪族ジカルボン酸化合物の製造方法。 〔5〕 脂肪族環状二級アルコール化合物がシクロヘキサノールである〔1〕に記載の脂肪族ジカルボン酸化合物の製造方法。 〔6〕 脂肪族環状ケトン化合物がシクロヘキサノンである〔1〕に記載の脂肪族ジカルボン酸化合物の製造方法。 本発明によれば、極めて温和な条件で、脂肪族環状二級アルコール或いは脂肪族環状ケトン化合物から、高収率で脂肪族ジカルボン酸化合物を製造することができる。従って、本発明は、工業的に極めて有用である。 本発明の製造方法においては、脂肪族環状二級アルコール化合物或いは脂肪族環状ケトン化合物をトリフルオロ酢酸存在下、亜硝酸塩もしくは硝酸塩で酸化して脂肪族ジカルボン酸化合物を製造する。 (脂肪族環状二級アルコール化合物、脂肪族環状ケトン化合物) 本発明の製造方法においては、出発原料として下記式(1)で示される脂肪族環状二級アルコール化合物、或いは下記式(2)で示される脂肪族環状ケトン化合物を用いる。上記脂肪族環状二級アルコール化合物(1)は、水酸基が結合している炭素原子にメチレン基が少なくとも1個結合している脂肪族環状アルコール化合物である。脂肪族環状ケトン化合物(2)は、カルボニル基を構成する炭素原子にメチレン基が少なくとも1個結合している脂肪族環状ケトン化合物である。なお、メチレン基は、前記酸素原子が結合している炭素原子、又はカルボニル基を構成する炭素原子の両側に2個結合していても良い。 上記式(1)、(2)において、Rは2価の脂肪族基である。Rは、好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数2〜4の2価の脂肪族基を示す。該脂肪族基Rは直鎖状でも分岐していても良い。該脂肪族基Rとしては、直鎖が好ましい。特に好ましい脂肪族基Rは、炭素数4の直鎖状脂肪族基である。脂肪族基Rが炭素数4の場合、得られるジカルボン酸はアジピン酸で、このものはナイロン原料として工業的に重要な化合物である。 又は、該脂肪族基Rが対称構造となる位置に分枝を有しているものが好ましい。該脂肪族基Rが対象構造となる位置に分岐を有する場合、本反応により得られるジカルボン酸は、高純度の単一化合物である。 脂肪族環状二級アルコール化合物(1)、或いは脂肪族環状ケトン化合物(2)は、製造目的である脂肪族ジカルボン酸化合物の化学構造に応じて、対応する化学構造のものを選択すれば良い。これら化合物(1)、(2)は試薬或いは工業原料として入手可能なものが何等制限なく使用できる。 本発明で使用できる脂肪族環状二級アルコール化合物としては、シクロプロパノール、シクロブタノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、シクロヘプタノール、シクロオクタノール、シクロノナノール、シクロデカノール、シクロウンデカノール、シクロドデカノール、2−メチルシクロヘキサノール、3−メチルシクロヘキサノール、2,5−ジメチルシクロヘキサノール、3,5−ジメチルシクロヘキサノール、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール、2−メチルシクロペンタノール、4−メチルシクロヘキサノール、4−tert−ブチルシクロヘキサノール等の3〜12員環化合物を挙げることができる。 脂肪族環状ケトン化合物としては、シクロプロパノン、シクロブタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、シクロノナノン、シクロデカノン、シクロウンデカノン、シクロドデカノン、2−メチルシクロヘキサノン、3−メチルシクロヘキサノン、2,6−ジメチルシクロヘキサノン、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノン、2−エチルシクロヘキサノン、4−エチルシクロヘキサノン、2−メチルシクロペンタノン、4−メチルシクロヘキサノン、4−tert−ブチルシクロヘキサノン等の3〜12員環化合物を挙げることができる。 これらの脂肪族環状二級アルコール化合物及び脂肪族環状ケトン化合物の中でも、分子構造が対称構造をとるシクロプロパノール、シクロブタノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、シクロヘプタノール、シクロオクタノール、シクロノナノール、シクロデカノール、シクロウンデカノール、シクロドデカノール、4−メチルシクロヘキサノール、4−tert−ブチルシクロヘキサノール等の脂肪族環状二級アルコール化合物及びシクロプロパノン、シクロブタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、シクロノナノン、シクロデカノン、シクロウンデカノン、シクロドデカノン、4−メチルシクロヘキサノン、4−エチルシクロヘキサノン、4−tert−ブチルシクロヘキサノン等の脂肪族環状ケトン化合物が本製造方法において好適に用いられる。これらの化合物を原料化合物として使用することにより、反応生成物が単一化合物となる。 (亜硝酸塩、硝酸塩) 本発明において使用する亜硝酸塩及び硝酸塩としては、工業的或いは試薬として入手容易な化合物が何等制限なく使用できる。 これらの化合物を具体的に例示すると、亜硝酸塩としては、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸リチウム、亜硝酸銀等を挙げることができる。 硝酸塩としては、硝酸アンモニウム、硝酸アンモニウムセリウム、硝酸リチウム、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸セシウム、硝酸ニッケル、硝酸サマリウム、硝酸ストロンチウム、硝酸銀、硝酸亜鉛、硝酸銅、硝酸鉛等を挙げることができる。 これらの亜硝酸塩及び硝酸塩の中でも、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸リチウム、亜硝酸銀等の亜硝酸塩が特に好ましい。これらの化合物は、反応系中に高い酸化力を持つ一酸化窒素カチオンを生成するので、目的の脂肪族ジカルボン酸化合物を高い反応収率で製造できる。 亜硝酸塩または硝酸塩の配合量は、反応の雰囲気によって異なるため一概には決定できない。しかし、配合量が少ないと酸化反応が進行し難くなる。他方、過度に配合量が多いと後処理操作が煩雑となる。このため、通常反応原料として用いる脂肪族環状二級アルコール或いは脂肪族環状ケトン化合物1モルに対して亜硝酸塩又は硝酸塩を通常0.5〜10モル、特に0.7〜7モルを配合することが好ましい。 (トリフルオロ酢酸) 本発明において使用するトリフルオロ酢酸は、反応触媒と溶媒との役割を兼ねる。トリフルオロ酢酸の使用量は特に制限がないが、使用量が少ないと酸化反応の収率の低下を招く。一方、過度に使用量が多いと後処理操作が煩雑となる。従って、通常脂肪族環状二級アルコール化合物或いは脂肪族環状ケトン化合物の濃度が0.05〜60質量量%、好ましくは0.1〜30質量%となるように、トリフロロ酢酸を使用することが好ましい。 本発明における最大の特徴は、上記トリフルオロ酢酸の存在下、亜硝酸塩もしくは硝酸塩により脂肪族環状二級アルコール或いは脂肪族環状ケトンを酸化するに際し、該反応系の水分量を、前記トリフルオロ酢酸と水との合計量に対して5質量%以下(トリフルオロ酢酸+水が100質量%)に保つ点にある。 反応系中の水分量がこれよりも多いと、酸化反応は、ケトンまで進行するが、この段階で反応は停止し、収率良く脂肪族ジカルボン酸化合物を得ることができない。また、同じ酸化反応の効率を得るためには、水分量が多いほど、亜硝酸塩もしくは硝酸塩の量が多く必要になる傾向がある。他方、完全に反応系を無水にすることは手間がかかる。従って、酸化反応の効率と、反応系からの水分の除去の手間を考慮すると、本発明の製造方法においては、上記水分量が0.001〜3質量%であることが好ましく、0.01〜1質量%であることがより好ましい。 なお、本発明の製造方法に於て、原料となる環状二級アルコールや環状ケトン、或は酸化剤となる亜硝酸塩や硝酸塩は、含水量の低減が容易であり、試薬或いは工業原料として入手できるものの含水量は極めて少ない。そのため、これらに由来する水が反応系の水分量に与える影響は僅かである。また、トリフルオロ酢酸も試薬或は工業原料として入手できるものの含水量は通常3質量%未満、多くは1質量%未満である。 従って、本発明の製造方法においては、通常の方法で入手可能な試薬或は工業原料をそのまま使用することが、最も実際的な方法である。むろん、必要に応じて公知の方法で更なる脱水を行っても良い。 (反応条件) 反応温度は特に制限はないが、温度が高いと酸化反応が暴走し反応系が危険な状態になりやすい。反応温度が低いと反応時間が著しく長くなる。このため通常、トリフルオロ酢酸の融点以上〜60℃、特に0〜40℃が好ましい。 反応時間は、用いる脂肪族環状二級アルコール化合物或いは脂肪族環状ケトン化合物の種類によって異なり、用いる亜硝酸塩もしくは硝酸塩の種類と量によっても異なるが、通常0.1〜30時間である。 反応は、常圧、減圧、加圧のいずれの状態でも実施可能である。反応は、酸素、大気等の酸素存在下だけでなく、窒素、アルゴン、二酸化炭素等の不活性気体存在下でも実施可能である。しかし、酸素存在下で反応を行う方が、亜硝酸塩もしくは硝酸塩の使用量を節約でき、反応時間も短縮できる傾向にある。通常は大気或いは酸素雰囲気下で実施する。 この製造方法においては、原料である脂肪族環状二級アルコール又は脂肪族環状ケトンは、下記反応式に従って脂肪族ジカルボン酸化合物へと酸化される。 前述のように、上記反応式において、Rは2価の脂肪族基である。該Rは、直鎖の、又は環が対称構造となる位置に分枝を有する炭素数1〜10の2価の脂肪族基が好ましい。 このようにして得られる反応生成物から脂肪族ジカルボン酸化合物を単離、精製する方法としては特に制限が無く、公知の方法が採用され得る。 例えば、反応終了後、反応溶媒であるトリフルオロ酢酸を室温下減圧留去する。次いで、得られた残渣に5%の炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて水溶液を塩基性にした後、塩化メチレンで有機溶媒溶解成分を抽出して除く。得られた水溶液に10%の塩酸を加えて水溶液を酸性にした後、水を減圧留去する。その後、得られる残渣に酢酸エチル水溶液を加えて残渣を溶解する。不溶成分を濾別し、濾液を減圧留去することにより、目的物である脂肪族ジカルボン酸化合物を得ることができる。 分子構造が対称構造の脂肪族環状二級アルコール化合物或いは脂肪族環状ケトン化合物を原料として用いる場合、得られる脂肪族ジカルボン酸は単一化合物である。これに対し、従来から知られている硝酸酸化法の場合は複数の異なる脂肪族ジカルボン酸を生成する。本製造方法による場合は、複数の異なる脂肪族ジカルボン酸をほとんど生成しない点が本発明方法の最大の特徴である。 なお、本発明の製造方法は、脂肪族環状二級アルコール化合物或いは脂肪族環状ケトン化合物を用いて脂肪族ジカルボン酸化合物を製造する酸化反応のみに使用できる方法ではなく、一級アルコール化合物或いはアルデヒド化合物を用いてカルボン酸化合物を製造する酸化反応にも応用できる。 以下、実施例を掲げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって何等制限されるものではない。 実施例1 50mlの茄子型フラスコに脂肪族環状二級アルコール化合物としてシクロヘキサノール(和光純薬試薬特級、含水量100ppm以下)100mg(1mmol)を入れ、溶媒としてトリフルオロ酢酸(和光純薬試薬特級;純度98%以上、含水量0.1質量%)5mlを加えて、シクロヘキサノールを溶解させた。 氷冷下、15分間乾燥空気をシクロヘキサノールを溶解したトリフルオロ酢酸溶液にバブリングした後、亜硝酸塩として亜硝酸ナトリウム(和光純薬特級)138mg(2mmol)を加えた。そのまま、30分間攪拌した後室温で4時間30分間攪拌した。反応終了後、室温下でトリフルオロ酢酸を30mmHgの減圧下、その大部分を留去した。その後、得られた残渣に濃度5質量%の炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて残渣を溶解し、塩基性水溶液を得た。この塩基性水溶液から、未反応物を塩化メチレン(15ml×3)で抽出した。塩化メチレンを硫酸マグネシウムで乾燥した後、塩化メチレンを留去してシクロヘキサノンの有無を調べた。しかし、シクロヘキサノンは検出されなかった。 残った水溶液に10%の塩酸を加えて酸性にした後、水を減圧下留去した。得られた残渣に酢酸エチルを30ml加えて溶解し、得られた酢酸エチル溶液に硫酸マグネシウムを加えて乾燥した。硫酸マグネシウムを濾過によって除去した後、酢酸エチルを減圧留去し、1,4−ブタンジカルボン酸146mg(収率100%)を取得した。 実施例2〜7 亜硝酸ナトリウムに代えて表1に示した亜硝酸塩もしくは硝酸塩を用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。その結果を表1示した。 実施例8〜23 シクロヘキサノールに代えて表2に示した脂肪族環状二級アルコール化合物或いは脂肪族環状ケトン化合物(原料化合物)を用いた以外は実施例2と同様の操作を行った。その結果を表2に示した。 実施例24 50mlの茄子型フラスコに脂肪族環状二級アルコール化合物としてシクロヘキサノール(和光純薬試薬特級)100mg(1mmol)を入れ、これに溶媒としてトリフルオロ酢酸(和光純薬試薬特級;純度98%以上)5mlを加えてシクロヘキサノールを溶解させた。氷冷下、トリフルオロ酢酸を15分間酸素でバブリングした後、亜硝酸塩として亜硝酸ナトリウム(和光純薬特級)69mg(1mmol)を加えた。フラスコに酸素バルーンを取り付け、30分間攪拌した後、室温に戻して4時間30分攪拌した。 反応終了後、室温、30mmHgの減圧下で、トリフルオロ酢酸の大部分を留去した。その後、留去した残渣に濃度5質量%の炭酸水素ナトリウム水溶液を加えた。この塩基性水溶液に塩化メチレン(15ml×3)を加えて未反応化合物を抽出した。集めた塩化メチレンを硫酸マグネシウムで乾燥した後、塩化メチレンを留去し、シクロヘキサンの有無を調べた。その結果、シクロヘキサノンは検出されなかった。残った水溶液に濃度10%の塩酸を加えて水溶液を酸性にした後、水を減圧下に留去した。残渣に酢酸エチルを30ml加えて残渣を溶解した後、これに硫酸マグネシウムを加えて乾燥させた。硫酸マグネシウムを濾過によって除去した後、酢酸エチルを減圧下で留去したところ、1,4−ブタンジカルボン酸145mg(収率99%)を取得した。 比較例1 水分量0.1質量%のトリフルオロ酢酸に代えて、93.1質量%(90容量%)のトリフルオロ酢酸の水溶液を用い、反応原料としてシクロヘキサノンを用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。その結果、目的物であるアジピン酸は全く得られず、原料のシクロヘキサノンが定量的に回収された。 水酸基が結合する炭素原子又はカルボニル基を構成する炭素原子にメチレン基が少なくとも1個結合されている脂肪族環状二級アルコール化合物もしくは脂肪族環状ケトン化合物を、トリフルオロ酢酸の存在下、亜硝酸塩もしくは硝酸塩で酸化する脂肪族ジカルボン酸の製造方法であって、反応系中の水分量を、前記トリフルオロ酢酸と反応系中の水分量との合計量を100質量%として、1質量%以下に保って反応を行うことを特徴とする脂肪族ジカルボン酸化合物の製造方法。 脂肪族環状二級アルコール化合物もしくは脂肪族環状ケトン化合物が、3〜12員環化合物である請求項1に記載の脂肪族ジカルボン酸化合物の製造方法。 亜硝酸塩又は硝酸塩の配合量が、脂肪族環状二級アルコール化合物もしくは脂肪族環状ケトン化合物1モルに対し0.5〜10モルである請求項1に記載の脂肪族ジカルボン酸化合物の製造方法。 脂肪族環状二級アルコール化合物もしくは脂肪族環状ケトン化合物のトリフルオロ酢酸中の濃度が0.05〜60質量%である請求項1に記載の脂肪族ジカルボン酸化合物の製造方法。 脂肪族環状二級アルコール化合物がシクロヘキサノールである請求項1に記載の脂肪族ジカルボン酸化合物の製造方法。 脂肪族環状ケトン化合物がシクロヘキサノンである請求項1に記載の脂肪族ジカルボン酸化合物の製造方法。