生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_5α−リダクターゼ阻害剤
出願番号:2006510188
年次:2012
IPC分類:A61K 31/575,A61P 43/00,A61K 36/07,A61P 13/08,A61P 5/28,A61P 35/00,A61P 17/14,A61P 17/10


特許情報キャッシュ

近藤 隆一郎 清水 邦義 劉 潔 隈本 正一郎 小西 史子 金子 周平 水海 吉太郎 JP 5008973 特許公報(B2) 20120608 2006510188 20050210 5α−リダクターゼ阻害剤 国立大学法人九州大学 504145342 特許業務法人SSINPAT 110001070 近藤 隆一郎 清水 邦義 劉 潔 隈本 正一郎 小西 史子 金子 周平 水海 吉太郎 JP 2004033283 20040210 20120822 A61K 31/575 20060101AFI20120802BHJP A61P 43/00 20060101ALI20120802BHJP A61K 36/07 20060101ALI20120802BHJP A61P 13/08 20060101ALI20120802BHJP A61P 5/28 20060101ALI20120802BHJP A61P 35/00 20060101ALI20120802BHJP A61P 17/14 20060101ALI20120802BHJP A61P 17/10 20060101ALI20120802BHJP JPA61K31/575A61P43/00 111A61K35/84 AA61P13/08A61P5/28A61P35/00A61P17/14A61P17/10 A61K 31/00-33/44 C07J 1/00-75/00 CA/REGISTRY(STN) 特開平11−246414(JP,A) 特開平11−246413(JP,A) 特開2000−169497(JP,A) 日本農芸化学会2003年度(平成15年度)大会講演要旨集,2003年,p.58, 講演番号 2A16p06 日本薬学会第123年会要旨集(要旨集−2),2003年,p.112, 講演番号27【P1】I-187 Pharma Medica,1988年,6(増刊号),p.110-126 Acta Pharmaceutica Sinica,1997年,Vol.32, No.6,p.447-450 J. Nat. Prod.,2002年,Vol.65, No.3,p.417-421 Chem. Pharm. Bull.,2003年,Vol.51, No.12,p.1441-1443 5 JP2005002013 20050210 WO2005079164 20050901 15 20080208 福井 悟 本発明は、5α−リダクターゼ阻害作用を有し、前立腺ガンや前立腺肥大症、男性型脱毛症等の予防や治療に有効な5α−リダクターゼ阻害剤に関する。 前立腺ガンや前立腺肥大症、男性型脱毛症、尋常性アクネ、脂漏等の疾患は、男性ホルモン刺激の増大に起因することが知られている。 これら男性ホルモンが関与する種々の疾患は、男性ホルモンの主体であるテストステロンが重要な役割を有している。5α−リダクターゼはこのテストステロンをジヒドロテストステロンに変換する酵素で、その阻害剤は上記疾患の予防や治療のために有効である。 このため、これらの疾患の徴候は、5α−リダクターゼの活性を阻害することにより低減あるいは防止することができると考えられ、5α−リダクターゼを特異的に阻害する様々な阻害剤が見出され、合成されてきた。 特に、前立腺肥大症は、泌尿器科領域における老人性疾患のうちで最も重要なものの一つであるが、未だ本症の解明は十分にはなされていない。その治療には外科的摘除術が最も有効であるといわれているが、本症の患者は高齢者であり、手術を拒んだり、手術すること自体が不可能な場合も多く、摘除までに至らない初期の症状に対しては、他の治療法が望まれる。また、排尿障害による腎障害や愁疎が除去されるならば、むしろ保存的療法の方が望ましい。 近年、高齢化社会の到来に伴い、より優れた前立腺肥大症の治療および予防剤の必要性が益々高まっている。 従来、前立腺肥大症に伴う排尿障害を改善する薬剤としては、L−グルタミン酸、L−アラニンおよびアミノ酢酸を配合したアミノ酸製剤、セルニチンポーレンエキスを含有する花粉製剤、オオウメガサソウ等の数種の植物エキスを含有する製剤等の経口剤が用いられている他、豚前立腺抽出物を含有する筋肉注射剤も汎用されている。 最近、前立腺の増殖した肥大結節がアンドロゲン依存性を有していることが明らかにされるに至り、前立腺肥大を直接抑制する効果の期待できる抗アンドロゲン剤として、酢酸クロルマジノン等の経口剤、オキセドロンおよびカプロン酸ゲストノロン等の筋肉注射剤が開発され、市販に供されている。 しかしながら、従来の阻害剤はステロイド構造又はステロイド類似構造を有しており、ホルモン様作用等の副作用が問題となるケースが多く、安全性の点から実用性に乏しく、また、筋肉注射は患者に苦痛を与え、局所硬結の恐れもあり、治療には比較的長期間を要するために通院という制約が生じるという種々の問題があった。 一方、マンネンタケ(霊芝)には数々の薬効が伝承されており、特にガンに効くキノコとして知られているが、様々な生理作用を及ぼす物質が存在することが証明されている。そして、本発明者らは、マンネンタケ(霊芝)のアルコール類等によって抽出した抽出物が、5α−リダクターゼ活性阻害作用を有し、前立腺の肥大を抑制することを見出し、先に出願した。しかしながら、マンネンタケ(霊芝)抽出物中には多数の化合物が存在していることが知られ、種々同定されているが、それらのうちどのような化合物が5α−リダクターゼ活性阻害作用を有しているか、知られていなかった。菊地 徹,霊芝の生理活性成分の研究,Pharma Medica, 1988年,Vol. 6, 増刊号,pp. 110-125FS Wang, H Cai, JS Yang, YM Zhang, CY Hou, JQ Liu, MJ Zhao (1997), Syudies on the ganoderic acid, a new constituents from the fruiting body of Ganoderma lucidum (Fr) Karst, Acta Pharmceutica Sinica, 32(6): 447-450Antonio G. Gonzales et al., J. Nat. Prod., 62, 1700-1701 (1999)Jiyuan Ma et al., J. Nat. Prod., 65, 1700-1701 (2002) 従って、本発明の課題は、マンネンタケ(霊芝)抽出物中の種々の化合物を検索し、それらの化合物の中から、前立腺ガンや前立腺肥大症、男性型脱毛症、尋常性アクネ、脂漏等の男性ホルモンが関与する疾患の予防や治療のために有効な化合物を見出し、それらを5α−リダクターゼ阻害剤及び前立腺肥大症の予防・治療剤として提供することにある。 本発明者らは、上記課題を解決するため、α−リダクターゼ阻害活性を指標として、マンネンタケからの抽出物を検索した結果、マンネンタケから抽出される化合物の中に、極めて高い5α−リダクターゼ作用を阻害する物質が存在することを見出し、本発明を完成するに至った。 すなわち、本発明は、以下の[1]〜[7]に記載した事項により特定される。[1] ラノスタン型トリテルペン類を有効成分として含有する5α−リダクターゼ阻害剤。[2] ラノスタン型トリテルペン類がマンネンタケ由来のものである、[1]記載の5α−リダクターゼ阻害剤。[3] ラノスタン型トリテルペン類が、ガノデリックアシッドDM(ganoderic acid DM)、15α−ヒドロキシ−3−オキソラノスタ−7,9(11),24−トリエン−26−オイックアシッド(15a-hydroxy-3-oxolanosta-7,9(11),24-trien-26-oic acid)、5−ラノスタ−7,9(11),24−トリエン−15α,26−ジヒドロキシ−3−オン(5-lanosta-7,9(11),24-triene-15a,26-dihydroxy-3-one)又はチロミシック酸(tyromycic acid)である、[1]又は[2]記載の5α−リダクターゼ阻害剤。[4] 15α−ヒドロキシ−3−オキソラノスタ−7,9(11),24−トリエン−26−オイックアシッド(15a-hydroxy-3-oxolanosta-7,9(11),24-trien-26-oic acid)。[5] ラノスタン型トリテルペン類を有効成分として含有する前立腺肥大症の予防・治療剤。[6] ラノスタン型トリテルペン類がマンネンタケ由来のものである、[5]記載の前立腺肥大症の予防・治療剤。[7] ラノスタン型トリテルペン類が、ガノデリックアシッドDM(ganoderic acid DM)、15α−ヒドロキシ−3−オキソラノスタ−7,9(11),24−トリエン−26−オイックアシッド(15a-hydroxy-3-oxolanosta-7,9(11),24-trien-26-oic acid)、5−ラノスタ−7,9(11),24−トリエン−15α,26−ジヒドロキシ−3−オン(5-lanosta-7,9(11),24-triene-15a,26-dihydroxy-3-one)又はチロミシック酸(tyromycic acid)である[5]又は[6]記載の前立腺肥大症の予防・治療剤。 本発明の5α−リダクターゼ阻害剤は、前立腺ガンや前立腺肥大症、男性型脱毛症、尋常性アクネ、脂漏等の男性ホルモンが関与する疾患の予防や治療のために有効であるとともに、合成ステロイド化合物ではなく、天然物であるため安全性に優れる。また、15α−ヒドロキシ−3−オキソラノスタ−7,9(11),24−トリエン−26−オイックアシッド(15a-hydroxy-3-oxolanosta-7,9(11),24-trien-26-oic acid)は、新規化合物であり、特に優れた5α−リダクターゼ阻害活性を有する。ガノデリックアシッドDMのUV−VIS吸収スペクトルである。ガノデリックアシッドDMによる5α−リダクターゼ阻害活性(inhibition activity)の濃度依存曲線である。分画前のマンネンタケ抽出物による5α−リダクターゼ阻害活性(inhibition activity)の濃度依存曲線である。実施例3で行ったマンネンタケ抽出物の分画スキームである。実施例3で得られた、エタノール抽出物の分画物Fr.G−5のHPLCクロマトグラムである。実施例3で得られた、エタノール抽出物の分画物Fr.G−5中のHPLC分析における保持時間19.8分と20.5分の成分のそれぞれのUV−VIS吸収スペクトルである。実施例4で得た新規化合物の、HMBCスペクトルから得た相関図である。15−(R)−(+)−MTPAエステル(a)と15−(S)−(−)−MTPAエステル(b)の1H−NMRのケミカルシフトの差を示す図である。 以下、本発明を詳細に説明する。 本発明の5α−リダクターゼ阻害剤及び前立腺肥大症の予防・治療剤は、ラノスタン型トリテルペン類を有効成分として含有する。本発明に係るラノスタン型トリテルペン類は、ラノスタン骨格を有し、ガノデリックアシッドDMのようなガノデリックアシッド類のみならず、24−トリエン−15α,26−ジヒドロキシ−3−オン(5-lanosta-7,9(11),24-triene-15a,26-dihydroxy-3-one)のような他のアルコール類をも包含する。なかでも、ガノデリックアシッドDM(ganoderic acid DM)、15α−ヒドロキシ−3−オキソラノスタ−7,9(11),24−トリエン−26−オイックアシッド(15a-hydroxy-3-oxolanosta-7,9(11),24-trien-26-oic acid)、5−ラノスタ−7,9(11),24−トリエン−15α,26−ジヒドロキシ−3−オン(5-lanosta-7,9(11),24-triene-15a,26-dihydroxy-3-one)及びチロミシック酸(tyromycic acid)が、高い5α−リダクターゼ阻害活性と前立腺肥大症の予防・治療効果を示す。 本発明におけるラノスタン型トリテルペン類は、種々の菌類から得られるが、一般的に霊芝と言われるマンネンタケ(万年茸)(Ganoderma lucidum)より得られた抽出物から得られる。 本発明に用いるマンネンタケ(万年茸)(Ganoderma lucidum)は、ヒダナシタケ目サルノコシカケ科に属する担子菌であり、古来中国では霊芝又は芝草と呼ばれ、日本ではレイシ、サイワイタケと呼ばれている、マンネンタケ目(Ganodermatales)に属するマンネンタケ科(Ganodermataceae)中のマンネンタケ属(Ganoderma)のキノコである。 本発明に用いるマンネンタケの抽出については、メタノール、n−ヘキサン、エタノール、エーテル、酢酸エチル等の有機溶媒や水が用いられ、これらに含浸させ放置することにより抽出する、有機溶媒抽出法ならびにソックスレー抽出器を用いた加熱還流によるソックスレー抽出法が適用可能であるが、これらの方法に限定されるものではない。 例えば、メタノール抽出法については、霊芝(マンネンタケ)子実体5.0gを粉砕し、メタノール60mlを加え、室温で一日放置し、抽出液を取り出し、残渣にさらにメタノールを加えて抽出する方法である。この操作を計3回行い、得られた抽出液を合わせて濃縮・乾固させることにより、抽出物を調製する。 本発明におけるラノスタン型トリテルペン類の単離および精製は、実施例に記載する方法による、5α−リダクターゼ阻害活性を指標として、各種クロマトグラフィー(シリカゲルカラムクロマトグラフィー、逆相分取液体クロマトグラフィー等)によって分画操作を繰り返すことにより達成できるが、これらの方法に限定されるものではない。このようにして分画、単離、精製することにより、5α−リダクターゼ活性を有する、ガノデリックアシッドDM(ganoderic acid DM)、ガノデレニックアシッド(ganoderenic acid)、等のガノデリックアシッド類、15α−ヒドロキシ−3−オキソラノスタ−7,9(11),24−トリエン−26−オイックアシッド(15a-hydroxy-3-oxolanosta-7,9(11),24-trien-26-oic acid)、チロミシック酸(tyromycic acid)等の酸類、5−ラノスタ−7,9(11),24−トリエン−15α,26−ジヒドロキシ−3−オン(5-lanosta-7,9(11),24-triene-15a,26-dihydroxy-3-one)、ガノデルマジオール(ganodermadiol)、ルシデュモルB(lucidumol B)、ガノデルマノノトリオール(ganodermanontriol)等のアルコール類を含む、種々のラノスタン型トリテルペン類が得られる。 特に、ガノデリックアシッドDM(ganoderic acid DM)、15α−ヒドロキシ−3−オキソラノスタ−7,9(11),24−トリエン−26−オイックアシッド(15a-hydroxy-3-oxolanosta-7,9(11),24-trien-26-oic acid)、5−ラノスタ−7,9(11),24−トリエン−15α,26−ジヒドロキシ−3−オン(5-lanosta-7,9(11),24-triene-15a,26-dihydroxy-3-one)及びチロミシック酸(tyromycic acid)が、極めて高い5α−リダクターゼ阻害活性を示し、それらのIC50は、それぞれ10.6μM、8.5μM、41.9μM、251μMである。ちなみに、ガノデリックアシッドDMは、その原料であるエタノール抽出物と比較して、その1/19の濃度で同等の5α−リダクターゼ阻害活性を示す。 なお、それらの化合物のうち、15α−ヒドロキシ−3−オキソラノスタ−7,9(11),24−トリエン−26−オイックアシッド(15a-hydroxy-3-oxolanosta-7,9(11),24-trien-26-oic acid)は、文献に記載のない新規化合物である。 本発明の5α−リダクターゼ阻害剤中におけるラノスタン型トリテルペン類の含有量は、必要に応じて適宜選択すれば良いが、例えば単位投薬量形状あたり1μg〜100mgとすることができる。 本発明に係る5α−リダクターゼ阻害剤は、製薬的に許容される担体等の添加剤を含有し得る。具体的には、製剤素材として慣用の各種有機あるいは無機担体物質が用いられ、固形製剤における賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、増粘剤;液状製剤における溶剤、分散剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、無痛化剤等として配合される。また必要に応じて、防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤等の添加物を用いることもできる。賦形剤の好適な例としては、例えば乳糖、白糖、D−マンニトール、デンプン、結晶セルロース、軽質無水ケイ酸等が挙げられる。滑沢剤の好適な例としては、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、コロイドシリカ等が挙げられる。結合剤の好適な例としては、例えば結晶セルロース、白糖、D−マンニトール、デキストリン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。崩壊剤の好適な例としては、例えばデンプン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム等が挙げられる。増粘剤の好適な例としては、例えば天然ガム類、セルロース誘導体、アクリル酸重合体等が挙げられる。溶剤の好適な例としては、例えば注射用水、アルコール、プロピレングリコール、マルクゴール、ゴマ油、トウモロコシ油等が挙げられる。分散剤の好適な例としては、例えば、ツイーン(Tween)80、HCO60、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。溶解補助剤の好適な例としては、例えばポリエチレングリコール、プロピレングリコール、D−マンニトール、安息香酸ベンジル、エタノール、トリスアミノメタン、コレステロール、トリエタノールアミン、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム等が挙げられる。懸濁化剤の好適な例としては、例えばステアリルトリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸、レシチン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、モノステアリン酸クセリセリン等の界面活性剤;例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の親水性高分子等が挙げられる。等張化剤の好適な例としては、例えば塩化ナトリウム、グリセリン、D−マンニトール等が挙げられる。緩衝剤の好適な例としては、例えばリン酸塩、酢酸塩、炭酸塩、クエン酸塩等の緩衝液等が挙げられる。無痛化剤の好適な例としては、例えばベンジルアルコール等が挙げられる。防腐剤の好適な例としては、例えばパラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、デヒドロ酢酸、ソルビン酸等が挙げられる。抗酸化剤の好適な例としては、例えば亜流酸塩、アスコルビン酸等が挙げられる。 本発明の5α−リダクターゼ阻害剤は、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、ドリンク剤等の経口投与の他、静脈内点滴もしくは注射等の全身経路による投与、あるいは筋肉内注射等の非経口投与、経腸投与、局所投与し得る。医薬製剤の具体例を以下に示す。(1)錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤:本発明の医薬組成物に、例えば賦形剤、崩壊剤、結合剤または滑沢剤等を添加して圧縮成型し、次いで必要により、味のマスキング、腸溶性あるいは持続性の目的のためのコーティングを行うことにより製造することができる。(2)注射剤:本発明の阻害剤を、例えば分散剤、保存剤、等張化剤等と共に水性注射剤として、あるいはオリーブ油、ゴマ油、綿実油、コーン油等の植物油、プロピレングリコール等に溶解、懸濁あるいは乳化して油性注射剤として成型することにより製造することができる。(3)外用剤:本発明の阻害剤を固状、半固状または液状の組成物とすることにより製造される。例えば、上記固状の組成物は、該阻害剤をそのまま、あるいは賦形剤、増粘剤などを添加、混合して粉状とすることにより製造される。 上記液状の組成物は、注射剤の場合とほとんど同様で、油性あるいは水性懸濁剤とすることにより製造される。半固状の組成物は、水性または油性のゲル剤、あるいは軟膏状のものがよい。また、これらの組成物は、いずれも緩衝剤、防腐剤などを含んでいてもよい。(4)座剤:本発明の阻害剤を油性または水性の固状、半固状あるいは液状の組成物とすることにより製造される。このような組成物に用いる油性基剤としては、例えば、高級脂肪酸のグリセリド(例えば、カカオ脂、ウイテプゾル類等)、中級脂肪酸(例えば、ミグリオール類等)、あるいは植物油(例えば、ゴマ油、大豆油、綿実油等)等が挙げられる。水性ゲル基剤としては、例えば天然ガム類、セルロース誘導体、ビニール重合体、アクリル酸重合体等が挙げられる。 本発明の5α−リダクターゼ阻害剤は、当該技術分野において従来から用いられている公知の抗腫瘍剤を含む他の治療薬と組み合わせて使用してもよい。かかる従来から用いられている抗腫瘍剤の好適な例としては、アドリアマイシン、シスプラチン、コルヒチン、CCNU(Lomastine)、BCNU(Carmustine) 、アクチノマイシンD、5−フルオロウラシル、チオテパ、サイトシンアラビノシド、シクロホスファミド、マイトマイシンC等の一種又は二種以上の混合物が挙げられる。 本発明の5α−リダクターゼ阻害剤は、一般に体重1kg当たり1.0μg〜100mgの1日当たり投与量で、1乃至数回に分けて投与されるが、薬学的な有効量及び投与方法又は投与手段、治療期間は対象患者や動物の病理状態に左右される。 本発明のガノデリックアシッド類は、5α−リダクターゼ阻害作用を有するので、哺乳動物、特にヒトにおける5α−リダクターゼによるジヒドロテストステロンの産生過剰に起因する疾患、例えば、前立腺ガンや前立腺肥大症、男性型脱毛症、尋常性アクネ、脂漏等の予防、治療に好適に用いることができる。また、その他の医薬品、医薬外品、化粧品等への応用も可能であり、例えば、育毛料、養毛料等にも利用できる。 以下、実施例をもって本発明を更に詳細に説明する。実施例1エタノールによる抽出 15kgのマンネンタケ(霊芝)子実体を、126LのEtOH(95%)に浸漬し、16時間撹拌した。撹拌終了後、advantec東洋製濾紙No.2を用いて濾過し、濾過液をロータリーエバポレーターを用いて減圧下で濃縮した。濃縮液1Lに5倍量の純水を加え、凍結乾燥した。固体の抽出物として571.1gを得た。5α−リダクターゼ阻害活性の測定 SD系雌ラット肝臓をホモジナイズしたものからミクロソーム画分を調製し、−80℃で凍結保存しているものを5α−リダクターゼ粗酵素液とした。 反応系は全量300μlの系とした。[4−14C]−テストステロン(8nCi、0.7μM、全テストステロン中の0.5%程度が放射活性をもつ基質)およびコールドのテストステロンを含む4.5mMエタノール溶液10μl(反応系の最終濃度が0.15mM)、1mMジチオトレイトールを含む20mMリン酸buffer(pH6.5)220μl、サンプルのDMSO溶液10μlを添加し、37℃、10分間インキュベートした。コントロールとしては、DMSOのみを加えた。 インキュベート後、1mM−NADPH−buffer溶液50μlと、先に調製した5α−リダクターゼ粗酵素液10μlを添加して反応をスタートした。37℃、10分間インキュベート後、3M−NaOH水溶液を10μl添加して反応を止めた。エーテル900μlを反応系に加えてボルテックスで攪拌することによってステロイド類を抽出し、このうち200μlをTLC板上にアプライした。展開溶媒として酢酸エチル:n−ヘキサン(7:3)の混合溶媒で2度展開し、このTLC板上の放射活性をイメージングアナライザー(FRA−5000RF、Fuji Film Co. Ltd.)で計測した。 なおここで、mM、Mとの記載は、mmol/L、mol/Lを表す。 コントロール(阻害剤なし)の活性を酵素活性100%として、下記式(1)及び式(2)のように計算し、またIC50を求めた。5α−リダクターゼ活性(%)=(ジヒドロテストステロンのスポットの放射活性/アプライした位置から溶媒を展開させた上限までのTLC板全体の放射活性)×100 (1)5α−リダクターゼ阻害活性(inhibition activity)(%)={(コントロールの活性−サンプルの活性)/コントロールの活性}×100 (2)マンネンタケ抽出物の分画 上記で得られたマンネンタケのエタノール抽出物(571.1g)をシリカゲルカラム(100×10cm)で分画した。溶離液としてヘキサン−酢酸エチルグラジエント系で行った。さらに、5α−リダクターゼ阻害活性を指標に、ヘキサン−酢酸エチルグラジエント系で、シリカゲルカラムクロマトを繰り返すことにより分画し、5α−リダクターゼ活性成分(170mg)を単離した。この成分をシリカゲルTLC板上にn−ヘキサン:酢酸エチル=70:30で展開したときのRf値が0.14であった(ヨウ素で発色)。 この成分のIR、NMR、融点を以下に示す。融点:203−205℃IR:3402(OH)、1711、1679、1660(C=O)、1587cm−11Hおよび13CNMRデータ(δ(ppm)、溶媒:CDCl3)を表1に示す。 以上の分析値を文献1)の値と比較し、本成分をのガノデリックアシッドDM(ganoderic acid)と同定した。1)FS Wang, H Cai, JS Yang, YM Zhang, CY Hou, JQ Liu, MJ Zhao (1997), Studies on the ganoderic acid, a new constituents from the fruiting body of Ganoderma lucidum (Fr.) Karst, Acta Pharmaceutica Sinica, 32 (6): 447-450 また、以下の条件で測定したHPLCクロマトグラフ分析において、ガノデリックアシッドDMは、20.7分の保持時間を有した。また、そのUV−VISスペクトルを図1に示す。ガノデリックアシッドDMは、218及び254nmに極大吸収波長を有した。HPLC測定条件カラム:IntersilODS3(4.6mm×150mm)流動相:メタノール:水(80:20)流速:1ml/min検出器:PDA(フォトダイオードアレイ)検出器ガノデリックアシッドDMとエタノール抽出物の5α−リダクターゼ阻害活性(inhibitionactivity) 各種濃度のガノデリックアシッドDMとを用いて、5α−リダクターゼ阻害活性(inhibition activity)を測定し、濃度依存曲線を作成した。結果を図2に示す。濃度依存曲線から、IC50は10.6μM(5ppm)であった。比較するために、分画前のマンネンタケ抽出物の5α−リダクターゼ阻害活性(inhibition activity)の濃度依存曲線を図3に示す。マンネンタケ抽出物のIC50は93.6ppmであった。マンネンタケ抽出物のIC50は、ガノデリックアシッドDMのIC50より19倍大きい値を示した。実施例2前立腺肥大モデル動物へのガノデリックアシッドDMの投与による抑制効果 in vitro実験において高い5α−リダクターゼ阻害活性を示すガノデリックアシッドDMが、in vivoで前立腺肥大を抑制するかを検証するために、前立腺肥大モデルラットを用い実験を行った。 3週齢SDラット雄(日本チャールズリバー(株))を1週間予備飼育した後、精巣を除去しその4日後より連日7日間テストステロンを100μg/a/0.2ml皮下投与した(前立腺肥大コントロール群)。実験群はテストステロン投与と同時に、ガノデリックアシッドDMを0.5%メチルセルロース溶液に懸濁させゾンデにて強制経口投与を行った。 ここで、ラットは室温23.0+0.5℃、湿度55+5%で午前7時より午後7時までの12時間を明期とした明暗サイクル下で飼育、餌および水は自由に与えた。 18時間絶食後、ペントバルビタール麻酔下で採血後、前立腺を摘出した。前立腺重量を測定し、体重比で表した。 その結果を表2に示す。 表2よりガノデリックシッドDMは0.001および0.01mg/kg投与で有意に前立腺肥大を抑制した。 in vitroでの強い5α−リダクターゼ阻害活性を示すガノデリックシッドDMは、in vivoで前立腺肥大抑制効果を示した。実施例3 実施例1で得たエタノール抽出物(571.1g)をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(100×10cm)で分画した。各分画物はTLC(n−ヘキサン:酢酸エチル=70:30、ヨウ素発色)によってグル−ピングし、Fr.A(脂肪酸画分)、Fr.B(α−リダクターゼ阻害活性あり:ガノデリックアシッド類含有画分)とFr.C(活性なし)画分を得た。Fr.Bには、5α−リダクターゼ阻害活性、前立腺肥大症抑制効果がともに観察された。Fr.Bをさらに図4に従って、溶出溶媒として酢酸エチルならびにヘキサンを用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィー にて分画して、Fr.G(4.1g)を得た。Fr.G−5は、200ppmの濃度で49%の5α−リダクターゼ阻害活性を示した。なお、実施例1のガノデリックアシッドDMは、Fr.H−5(2.7g)に含まれていた。 Fr.G−5を実施例1に記載の条件でHPLC分析したクロマトグラムを図5に示す。Fr.G−5には、ガノデリックアシッドDMの保持時間類似の保持時間19.8分と20.5分に2つの成分を含んでいた。このそれぞれの成分のUV−VIS吸収スペクトルを図6に示す。いずれの成分もガノデリックアシッドDMに特徴的なUV−VIS吸収スペクトルを示し、218及び254nmに極大吸収波長を有していた。実施例4 Fr.G−5を更に分画することにより、3種類の化合物を単離した。NMR及びFABMS分析の結果、そのうちの2化合物は、それらのデータが文献値と同一であったので、それぞれ、5−ラノスタ−7,9(11),24−トリエン−15α,26−ジヒドロキシ−3−オン(5-lanosta-7,9(11),24-triene-15a,26-dihydroxy-3-one)(Gonzalez, Antonio G. et al., J. Nat. Prod., 65(3), 417-421 (2002))及びチロミシック酸(tyromycic acid)(Quang, Dang Ngoc et al., Chem. & Pharmaceutical Bull. 51(12) (2003))と同定した。また、実施例1と同様にして測定したこれらの化合物の5α−リダクターゼ阻害活性のIC50は、それぞれ、41.9μM、251μMであった。 他の白色結晶化合物について、UV、1D及び2DNMR、FABMS、旋光度、新Mosher法の各分析を行った。その結果、FABMSデータから分子量は468であり、253nmにα,β−不飽和カルボニルに特徴的な吸収を持っていた。NMRのデータ(表3に示す)から、7個のメチル基、1個の水酸基とdiene構造が観察された。 HMBCのスペクトルからC15とC26の相関を図7に示した。C15位の水酸基の絶対配置は、以下のとおり、新Mosher法を用いて測定した(図8)。この化合物と(R)−(+)−MTPA及び(S)−(−)−MTPAの試薬を6時間反応させ、分取TLCで生成して、15−(R)−(+)−MTPAエステル(a)と15−(S)−(−)−MTPAエステル(b)を得た。1H−NMRで(S)−(−)−MTPAエステルのH−16、H−17プロトンシグナルは、(R)−(+)−MTPAエステルより高磁場で観察されるに対して、(S)−(−)−MTPAエステルのH−14及びH−6は、(R)−(+)−MTPAエステルより低磁場で観察された(図8)。よって、15位の水酸基はαであった。 以上の結果より、 この化合物の構造は、15α−ヒドロキシ−3−オキソラノスタ−7,9(11),24−トリエン−26−オイックアシッド(15a-hydroxy-3-oxolanosta-7,9(11),24-trien-26-oic acid)と決定した。 実施例1と同様にして測定したこの化合物の5α−リダクターゼ阻害活性のIC50は、8.5μMであった。実施例5前立腺肥大モデル動物へのFr.G−5画分投与による抑制効果 実施例3と同様にテストステロン投与と同時に、Fr.G−5をゾンデにて強制経口投与を行い、実施例3と同様にラットを飼育し、餌および水は自由に与えた。 18時間絶食後、ペントバルビタール麻酔下で採血後、前立腺を摘出した。前立腺重量を測定した。 結果を表3に示す。 表4よりFr.G−5画分0.01mg/kg投与で有意に前立腺肥大を抑制した。 in vitroで5α−リダクターゼ阻害活性を示すr.G−5画分は、in vivoで前立腺肥大抑制効果を示した。 ガノデリックアシッドDM(ganoderic acid DM)、15α−ヒドロキシ−3−オキソラノスタ−7,9(11),24−トリエン−26−オイックアシッド(15a-hydroxy-3-oxolanosta-7,9(11),24-trien-26-oic acid)又は5−ラノスタ−7,9(11),24−トリエン−15α,26−ジヒドロキシ−3−オン(5-lanosta-7,9(11),24-triene-15a,26-dihydroxy-3-one)を有効成分として含有する5α−リダクターゼ阻害剤。 ガノデリックアシッドDM(ganoderic acid DM)、15α−ヒドロキシ−3−オキソラノスタ−7,9(11),24−トリエン−26−オイックアシッド(15a-hydroxy-3-oxolanosta-7,9(11),24-trien-26-oic acid)及び5−ラノスタ−7,9(11),24−トリエン−15α,26−ジヒドロキシ−3−オン(5-lanosta-7,9(11),24-triene-15a,26-dihydroxy-3-one)がマンネンタケ由来のものである、請求項1に記載の5α−リダクターゼ阻害剤。 15α−ヒドロキシ−3−オキソラノスタ−7,9(11),24−トリエン−26−オイックアシッド(15a-hydroxy-3-oxolanosta-7,9(11),24-trien-26-oic acid)。 ガノデリックアシッドDM(ganoderic acid DM)、15α−ヒドロキシ−3−オキソラノスタ−7,9(11),24−トリエン−26−オイックアシッド(15a-hydroxy-3-oxolanosta-7,9(11),24-trien-26-oic acid)又は5−ラノスタ−7,9(11),24−トリエン−15α,26−ジヒドロキシ−3−オン(5-lanosta-7,9(11),24-triene-15a,26-dihydroxy-3-one)を有効成分として含有する前立腺肥大症の予防・治療剤。 ガノデリックアシッドDM(ganoderic acid DM)、15α−ヒドロキシ−3−オキソラノスタ−7,9(11),24−トリエン−26−オイックアシッド(15a-hydroxy-3-oxolanosta-7,9(11),24-trien-26-oic acid)及び5−ラノスタ−7,9(11),24−トリエン−15α,26−ジヒドロキシ−3−オン(5-lanosta-7,9(11),24-triene-15a,26-dihydroxy-3-one)がマンネンタケ由来のものである、請求項4に記載の前立腺肥大症の予防・治療剤。


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