タイトル: | 公開特許公報(A)_ESR装置 |
出願番号: | 2006340725 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | G01R 33/60,G01N 24/10 |
飯田聡 塚田剛 JP 2008151676 公開特許公報(A) 20080703 2006340725 20061219 ESR装置 日本電子株式会社 000004271 飯田聡 塚田剛 G01R 33/60 20060101AFI20080606BHJP G01N 24/10 20060101ALI20080606BHJP JPG01N24/10 520BG01N24/10 510G 2 2 OL 7 本発明は、ESR装置に用いられる磁場変調方式の改良に関する。 ESR装置は、静磁場中に置かれた被測定試料にマイクロ波を照射すると共に、照射したマイクロ波が被測定試料によって吸収される様子をスペクトルとして記録するようにした磁気共鳴装置の一種である。被測定試料中にフリーラジカルが存在すると、静磁場の掃引に伴ってマイクロ波の吸収が起こり、フリーラジカルの分子構造を反映した吸収スペクトルが記録計に記録される。この吸収スペクトルを解析することにより、フリーラジカルの分子構造に関する情報を得ることができる。 図1は、従来の反射型ESR装置の回路図である。図中1はマイクロ波発振器である。マイクロ波発振器1から発振されたマイクロ波は、方向性結合器2で2系統に分岐された後、一方のマイクロ波はサーキュレータ3を通って電磁石4の間隙に設置された空胴共振器5に送られる。空胴共振器5とサーキュレータ3の間には、図示しない結合度調整機構が設けられており、空胴共振器5とサーキュレータ3から延びるマイクロ波線路との間のマッチングを取ることによって、空胴共振器5からの反射波がないように調整される。 空胴共振器5の内部には測定試料6がセットされている。対向する電磁石4によって静磁場が掃引され、ESR現象が起きれば、マイクロ波が測定試料6に吸収されて空胴共振器5のQ値が変化し、マッチングのバランスが崩れて、空胴共振器5からの反射波を生じる。この反射波は、サーキュレータ3を介し、検波器7によりESR信号として検波される。 検波器7には、方向性結合器2により分岐されたもう一方のマイクロ波が移相器8を介して入力されている。これは検波器7を動作させるために、検波器7にバイアス電圧を与えるためのものである。 検波器7によって検波されたESR信号は、前置増幅器9により適当な信号強度に増幅された後、フィルター10でノイズをカットされ、さらに増幅器11により増幅されて位相検波器12に入力される。 このとき、ESR信号の検出感度を上げるために、発振器13を使って磁場変調コイル14から変調磁場を発生させ、これを電磁石4が作る静磁場上に重畳されるように構成している。図1の太線で囲んだ範囲がその磁場変調機構である。これによりESR信号は、磁場変調周波数による変調を受けた信号として観測することができるようになる。磁場変調幅は、変調幅設定増幅器15と磁場変調用電力増幅器16を組み合わせることにより、任意に可変させることができる。 発振器13の出力の一部は、移相器17を介して位相検波器12にも供給される。位相検波器12の働きにより、磁場変調周波数による変調を受けたESR信号は直流信号に変換される。その後、高調波を除くためのフィルター18を通した後、A/D変換器19でデジタル信号に変換され、コンピュータ20に取り込まれる。測定結果は、コンピュータ20から記録計21に出力される。 なお、ESR信号を測定するために必要な静磁場の掃引は、コンピュータ20から掃引信号が出され、それがD/A変換器22でアナログ信号に変換された後、磁場掃引回路23に入力されて、電磁石4を流れる電流が変化させられることにより行なわれる。 なお、図1では、磁場変調コイル14が空胴共振器5の外部に置かれているが、このような方式を外部磁場変調方式と呼び、磁場変調周波数としては80Hzが賞用されている。一方、磁場変調コイル14が空胴共振器5の内部に置かれている場合、そのような方式を内部磁場変調方式と呼び、磁場変調周波数としては100kHzが賞用されている。 ESRの検出感度としては、100kHzを用いた内部磁場変調方式の方が80Hzを用いた外部磁場変調方式よりも約1桁優れている。ただし、空胴共振器内に磁場変調コイルを設置できない場合には、感度的に劣るものの、磁場変調に外部磁場変調方式を用いる場合もある。外部磁場変調方式の方が低い周波数を用いている理由は、金属の空胴共振器壁を変調磁場が効率良く透過するためには、周波数の低い方が有利なためである。山内淳著「磁気共鳴-ESR ―電子スピンの分光学―」、平成十八年(2006)サイエンス社刊、266〜271頁。大矢博昭、山内淳著「電子スピン共鳴―素材のミクロキャラクタリゼーション―」、平成元年(1989)講談社サイエンティフィク刊、25〜33頁。 ところで、前述のようなESR装置を用いてESR信号を測定する場合、信号強度は磁場変調幅に比例することが知られている。磁場変調幅は、変調幅設定増幅器15と磁場変調用電力増幅器16を組み合わせることにより、任意に可変させることができるが、温度変化や経年変化により、電圧・電流がずれて、磁場変調幅が名目設定値からずれ、ESR信号の測定値に定量誤差を生じるという問題があった。 また、ESR測定では、アプリケーションの違いに応じて複数種類の共振器があり、共振器ごとに磁場変調コイル14のインピーダンスが異なるため、共振器を交換すると、磁場変調幅が名目設定値からずれ、ESR信号の測定値に定量誤差を生じるという問題があった。 本発明の目的は、上述した点に鑑み、磁場変調幅を常に名目設定値に一致させ、正確な信号強度のESR信号を得ることのできるESR装置を提供することにある。 この目的を達成するため、本発明にかかるESR装置は、静磁場中に置かれ内部に試料が設置された共振器にマイクロ波を入射させ、静磁場強度を掃引させながら該共振器から反射されてくるマイクロ波を検出することによりESR信号を測定するESR装置において、前記ESR装置は、静磁場強度を掃引させる際に所定の周波数で強度を変調させる変調手段と、変調の結果生じる反射マイクロ波中の変調成分を取り出して復調させる手段を備え、前記変調手段は、名目磁場変調幅を設定する磁場変調幅設定手段と、設定された磁場変調幅の値に基づいて試料に変調磁場を印加する変調磁場印加手段と、前記共振器の内側または外側に置かれて実際に試料に印加される実効磁場変調幅を検出する実効磁場変調幅検出手段と、検出された前記実効磁場変調幅を設定されている前記名目磁場変調幅と比較する磁場変調幅比較手段と、該比較結果に基づいて、前記実効磁場変調幅が前記名目磁場変調幅と一致するように前記磁場変調幅印加手段をフィードバック制御する磁場変調幅制御手段とを備えていることを特徴としている。 また、前記実効磁場変調幅検出手段は、ピックアップコイルまたは磁気センサーであることを特徴としている。 本発明のESR装置によれば、静磁場中に置かれ内部に試料が設置された共振器にマイクロ波を入射させ、静磁場強度を掃引させながら該共振器から反射されてくるマイクロ波を検出することによりESR信号を測定するESR装置において、前記ESR装置は、静磁場強度を掃引させる際に所定の周波数で強度を変調させる変調手段と、変調の結果生じる反射マイクロ波中の変調成分を取り出して復調させる手段を備え、前記変調手段は、名目磁場変調幅を設定する磁場変調幅設定手段と、設定された磁場変調幅の値に基づいて試料に変調磁場を印加する変調磁場印加手段と、前記共振器の内側または外側に置かれて実際に試料に印加される実効磁場変調幅を検出する実効磁場変調幅検出手段と、検出された前記実効磁場変調幅を設定されている前記名目磁場変調幅と比較する磁場変調幅比較手段と、該比較結果に基づいて、前記実効磁場変調幅が前記名目磁場変調幅と一致するように前記磁場変調幅印加手段をフィードバック制御する磁場変調幅制御手段とを備えているので、磁場変調幅を常に名目設定値に一致させ、正確な信号強度のESR信号を得ることのできるESR装置を提供することが可能になった。 以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。 図2は、本発明にかかる反射型ESR装置の回路図である。図2では、発明の主要部のみを表記しているので、省かれている部分を、図1を援用して説明する。 図1の1はマイクロ波発振器である。マイクロ波発振器1から発振されたマイクロ波は、方向性結合器2で2系統に分岐された後、一方のマイクロ波はサーキュレータ3を通って電磁石4の間隙に設置された空胴共振器5に送られる。空胴共振器5とサーキュレータ3の間には、図示しない結合度調整機構が設けられており、空胴共振器5とサーキュレータ3から延びるマイクロ波線路との間のマッチングを取ることによって、空胴共振器5からの反射波がないように調整される。 空胴共振器5の内部には測定試料6がセットされている。対向する電磁石4によって静磁場が掃引され、ESR現象が起きれば、マイクロ波が測定試料6に吸収されて空胴共振器5のQ値が変化し、マッチングのバランスが崩れて、空胴共振器5からの反射波を生じる。この反射波は、サーキュレータ3を介し、検波器7によりESR信号として検波される。 検波器7には、方向性結合器2により分岐されたもう一方のマイクロ波が移相器8を介して入力されている。これは検波器7を動作させるために、検波器7にバイアス電圧を与えるためのものである。 検波器7によって検波されたESR信号は、前置増幅器9により適当な信号強度に増幅された後、フィルター10でノイズをカットされ、さらに増幅器11により増幅されて位相検波器12に入力される。 このとき、ESR信号の検出感度を上げるために、発振器13を使って磁場変調コイル14から変調磁場を発生させ、これを電磁石4が作る静磁場上に重畳されるように構成している。図1の太線で囲んだ範囲がその磁場変調機構である。これによりESR信号は、磁場変調周波数による変調を受けた信号として観測することができるようになる。磁場変調幅は、変調幅設定増幅器15と磁場変調用電力増幅器16を組み合わせることにより、任意に可変させることができる。 発振器13の出力の一部は、位相器17を介して位相検波器12にも供給される。位相検波器12の働きにより、磁場変調周波数による変調を受けたESR信号は直流信号に変換される。その後、高調波を除くためのフィルター18を通した後、A/D変換器19でデジタル信号に変換され、コンピュータ20に取り込まれる。測定結果は、コンピュータ20から記録計21に出力される。 なお、ESR信号を測定するために必要な静磁場の掃引は、コンピュータ20から掃引信号が出され、それがD/A変換器22でアナログ信号に変換された後、磁場掃引回路23に入力されて、電磁石4を流れる電流が変化させられることにより行なわれる。 なお、図1では、磁場変調コイル14が空胴共振器5の外部に置かれているが、このような方式を外部磁場変調方式と呼び、磁場変調周波数としては80Hzが賞用されている。一方、磁場変調コイル14が空胴共振器5の内部に置かれている場合、そのような方式を内部磁場変調方式と呼び、磁場変調周波数としては100kHzが賞用されている。 ESRの検出感度としては、100kHzを用いた内部磁場変調方式の方が80Hzを用いた外部磁場変調方式よりも1桁優れている。ただし、空胴共振器内に磁場変調コイルを設置できない場合には、感度的に劣るものの、磁場変調に外部磁場変調方式を用いる場合もある。外部磁場変調方式の方が低い周波数を用いている理由は、金属の空胴共振器壁を変調磁場が効率良く透過するためには、周波数の低い方が有利なためである。 このような構成において、図1の磁場変調機構の周辺部を拡大したのが本発明の内容を示す図2である。本発明では、空胴共振器5の内側または外側に、変調磁場強度を検出するための磁場検出手段30として、ピックアップコイルまたは磁気センサー(たとえばホール素子など)を置き、実際に試料に印加されている実効磁場変調強度を電圧信号に変換してモニターする手段を設けている。 この電圧信号は、増幅器31により適切な電圧値に増幅された後、移相器32で位相を調節されて、変調幅設定増幅器15と磁場変調用電力増幅器16の間に挿入された誤差増幅器33に入力される。誤差増幅器33は、変調幅設定増幅器15に設定された磁場変調幅を示す基準電圧と磁場検出手段30によって検出された実効磁場変調幅を示す入力電圧を比較し、両者の誤差を増幅して磁場変調用電力増幅器16にフィードバックさせ、両者が常に一致するように制御させる。 これにより、試料に印加される実効磁場変調幅とESR装置に設定された名目磁場変調幅を、常に一致させることができる。その結果、試料に印加される実効磁場変調幅の値が正確になったので、ESR装置の定量精度が向上し、また、共振器を異なるタイプのものと交換しても、磁場変調コイルのインピーダンスの違いに由来する磁場変調幅の誤差の補正など、わずらわしい手続きが不要になった。 ESR装置の磁場変調方式に広く利用できる。従来のESR装置の一例を示す図である。本発明にかかるESR装置の一実施例を示す図である。符号の説明1:マイクロ波発振器、2:方向性結合器、3:サーキュレータ、4:電磁石、5:空胴共振器、6:測定試料、7:検波器、8:移相器、9:前置増幅器、10:フィルター、11:増幅器、12:位相検波器、13:発振器、14:磁場変調コイル、15:変調幅設定増幅器、16:磁場変調用電力増幅器、17:移相器、18:フィルター、19:A/D変換器、20:コンピュータ、21:記録計、22:D/A変換器、23:磁場掃引回路、30:磁場検出手段、31:増幅器、32:移相器、33:誤差増幅器静磁場中に置かれ内部に試料が設置された共振器にマイクロ波を入射させ、静磁場強度を掃引させながら該共振器から反射されてくるマイクロ波を検出することによりESR信号を測定するESR装置において、前記ESR装置は、静磁場強度を掃引させる際に所定の周波数で強度を変調させる変調手段と、変調の結果生じる反射マイクロ波中の変調成分を取り出して復調させる手段を備え、前記変調手段は、名目磁場変調幅を設定する磁場変調幅設定手段と、設定された磁場変調幅の値に基づいて試料に変調磁場を印加する変調磁場印加手段と、前記共振器の内側または外側に置かれて実際に試料に印加される実効磁場変調幅を検出する実効磁場変調幅検出手段と、検出された前記実効磁場変調幅を設定されている前記名目磁場変調幅と比較する磁場変調幅比較手段と、該比較結果に基づいて、前記実効磁場変調幅が前記名目磁場変調幅と一致するように前記磁場変調幅印加手段をフィードバック制御する磁場変調幅制御手段とを備えていることを特徴とするESR装置。前記実効磁場変調幅検出手段は、ピックアップコイルまたは磁気センサーであることを特徴とする請求項1記載のESR装置。 【課題】磁場変調幅を常に名目設定値に一致させ、正確な信号強度のESR信号を得ることのできるESR装置を提供する。【解決手段】静磁場中に置かれ内部に試料が設置された共振器にマイクロ波を入射させ、静磁場強度を掃引させながら該共振器から反射されてくるマイクロ波を検出することによりESR信号を測定するESR装置において、前記ESR装置は、静磁場強度を掃引させる際に所定の周波数で強度を変調させ、その結果生じる反射マイクロ波中の変調成分を取り出して復調させることにより高感度測定を行なう変調復調手段を備え、前記静磁場強度の実効変調幅は、前記共振器の内側または外側に置かれた磁場検出手段により検出されて磁場変調幅を制御している制御手段にフィードバックされることにより、設定された名目磁場変調幅と一致するように構成されている。【選択図】図2