生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_タンパク質の溶解性改善方法および組成物
出願番号:2006329466
年次:2008
IPC分類:C07K 1/02,C07K 14/47,C07K 14/415,C07K 14/78,C07K 14/435,A61K 38/00,A61K 47/42,A61K 38/17,A61K 9/08,C12P 21/02,G01N 33/48


特許情報キャッシュ

西矢 芳昭 佐々木 真宏 山田 英幸 JP 2008143790 公開特許公報(A) 20080626 2006329466 20061206 タンパク質の溶解性改善方法および組成物 東洋紡績株式会社 000003160 セーレン株式会社 000107907 田中 光雄 100081422 山崎 宏 100084146 元山 忠行 100116311 冨田 憲史 100122301 西矢 芳昭 佐々木 真宏 山田 英幸 C07K 1/02 20060101AFI20080530BHJP C07K 14/47 20060101ALI20080530BHJP C07K 14/415 20060101ALI20080530BHJP C07K 14/78 20060101ALI20080530BHJP C07K 14/435 20060101ALI20080530BHJP A61K 38/00 20060101ALI20080530BHJP A61K 47/42 20060101ALI20080530BHJP A61K 38/17 20060101ALI20080530BHJP A61K 9/08 20060101ALI20080530BHJP C12P 21/02 20060101ALN20080530BHJP G01N 33/48 20060101ALN20080530BHJP JPC07K1/02C07K14/47C07K14/415C07K14/78C07K14/435A61K37/02A61K47/42A61K37/12A61K9/08C12P21/02 CG01N33/48 A 12 OL 9 2G045 4B064 4C076 4C084 4H045 2G045BB02 2G045DA36 2G045FA11 2G045GC10 4B064AG01 4B064CA19 4B064CC24 4B064DA01 4B064DA10 4B064DA20 4C076AA12 4C076BB01 4C076EE41E 4C084AA01 4C084DA40 4C084NA03 4H045AA20 4H045AA30 4H045BA10 4H045CA30 4H045CA43 4H045CA51 4H045EA01 4H045EA20 4H045FA71 4H045FA72 4H045FA74 4H045GA01 本発明は、新規なタンパク質の溶解性改善方法および組成物に関する。 タンパク質を実用化するに際し、その水に対する溶解性の低さが欠点となるケースが少なからず見受けられる。タンパク質を構成するアミノ酸には、トリプトファンやフェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、バリンなどの疎水性アミノ酸が含まれており、タンパク質の分子表面にこれらのアミノ酸が存在すると、タンパク質自身の疎水性を高めることとなり、水溶性が低下する。水溶性が極めて低い実用的タンパク質の例としては、乳タンパク質であるカゼイン、植物貯蔵タンパク質である小麦グルテン及びその成分であるグリアジン、硬タンパク質であるコラーゲンなどがある。これらのタンパク質の利用のため、水溶性を高める方法が種々試みられてきた(例えば、特許文献1、2、3、4、5参照)。 しかしながら、これまで行われてきた方法は、目的タンパク質を酸やアルカリでの処理、熱処理、或いは酵素的または化学的に加水分解することによる低分子量化などに供するものであり、タンパク質本来の構造を維持するのが困難な条件を伴っていた。また、糖やコハク酸などの化合物によりタンパク質表面を化学的、物理的に修飾し、水溶性を高める方法も試みられており、成果をあげている。しかし、修飾を伴う方法は目的タンパク質の表面状態を変えるため、該タンパク質の特性を変化させることになる。更に、修飾処理を伴う方法も、熱処理や酸・アルカリ処理ほどではないにしても目的タンパク質が変性する危険を伴う。なにより、修飾を伴う方法は操作が煩雑で、手間がかかる。 一方、不溶性タンパク質の可溶化技術は、研究分野においても重要な要素技術のひとつである。特に、遺伝子操作技術によるタンパク質の生産では、宿主生物が本来生産しないタンパク質、すなわち異種タンパク質を発現させると、本来のコンフォメーションをとれずに疎水性の高いタンパク質として凝集、不溶化し、いわゆるインクルージョンボディとなる。このインクルージョンボディを正常なタンパク質とするには、まず可溶化する必要があり、尿素や塩酸グアニジンなどのタンパク質変性剤を用いて一旦変性させ、その後で正常なタンパク質に再構成させるという煩雑な操作が必要となる。変性を伴わない温和な可溶化方法が確立できれば、異種タンパク質の高生産技術が大きく飛躍すると考えられる。 このような状況から、水溶性が低いタンパク質の溶解性を改善する方法として、目的タンパク質の構造変化や変性を伴わない温和な条件で実施可能であり、且つ、従来よりも簡便な方法が強く望まれていた。特開平11−18687号公報特開平6−73089号公報特開2004−113182号公報特開2003−250460号公報特開平7−258292号公報 目的タンパク質の溶解性を改善する方法として、従来法である該タンパク質の酸・アルカリ処理、熱処理、或いは加水分解での低分子量化、タンパク質変性剤の使用などは、タンパク質本来の構造を維持できないという問題がある。また、タンパク質表面の化学的・物理的修飾による溶解性改善方法は、該タンパク質の特性を変化させてしまう、該タンパク質が変性する危険を伴う、操作が煩雑で手間がかかるという課題が考えられる。 本発明が解決しようとする課題は、水溶性が低いタンパク質の溶解性を改善する方法であって、従来法と異なり目的タンパク質の構造変化や変性を伴わない温和な条件で実施可能であり、且つ、従来よりも簡便な方法と、それによって溶解性が改善された組成物を提供することにある。 本発明者らは、上記目的を達成する為に種々検討した結果、セリシン加水分解物を目的タンパク質と水溶液中に共存させることにより、目的タンパク質の水溶性を効果的に改善できることを見出し、本発明を完成させるに至った。 すなわち、本発明は以下のようなものである。 [1]目的のタンパク質の水溶性を高めるため、該タンパク質を、セリシンおよび/またはその加水分解物もしくはその同等物の存在下で水性溶媒に溶解して水溶液を調製する工程を含むことを特徴とする溶解性改善方法。 [2]セリシンおよび/またはその加水分解物もしくはその同等物を、水溶液中に終濃度1〜20%含有させることを特徴とする、[1]記載の溶解性改善方法。 [3]セリシンおよび/またはその加水分解物が繭糸又は生糸から抽出した天然セリシンに由来するものである、[1]または[2]記載の溶解性改善方法。 [4]セリシン同等物が遺伝子工学的手法により得られたものである、[1]または[2]記載の溶解性改善方法。 [5]目的のタンパク質が、乳タンパク質、植物貯蔵タンパク質、硬タンパク質から選ばれたものである、[1]〜[4]のいずれかに記載の溶解性改善方法。 [6]目的のタンパク質に加え、セリシンおよび/またはその加水分解物もしくはその同等物が水溶液中に共存した溶解性改善組成物。 [7]セリシンおよび/またはその加水分解物もしくはその同等物が、水溶液中に終濃度1〜20%含有することを特徴とする、[6]記載の溶解性改善組成物。 [8]セリシンおよび/またはその加水分解物が、繭糸又は生糸から抽出した天然セリシンに由来するものである、[6]または[7]記載の溶解性改善組成物。 [9]セリシン同等物が遺伝子工学的手法により得られたものである、[6]6または[7]記載の溶解性改善組成物。 [10]目的のタンパク質が、乳タンパク質、植物貯蔵タンパク質、硬タンパク質から選ばれたものである、[6]〜[9]のいずれかに記載の溶解性改善組成物。 [11][6]〜[9]のいずれかに記載の溶解性改善組成物を含む診断用キット。 [12][6]〜[9]のいずれかに記載の溶解性改善組成物を含むバイオセンサー。 本発明によれば、セリシンやセリシン加水分解物またはその同等物を用いることにより、目的タンパク質の水溶性を向上させ、これらタンパク質、およびタンパク質を用いた組成物の用途を拡大させることが可能となる。 以下に本発明を詳細に説明する。 本発明のタンパク質溶解性改善方法に用いるセリシンは、繭糸や生糸から抽出される天然状態のものを用いても良いし、その加水分解物を用いても良く、その同等物であっても良い。本発明の実施例においては、セリシン加水分解物を用いている。 セリシンは、国際公開第2002/086133号パンフレットに開示されるアミノ酸配列を有するタンパク質であり、38アミノ酸からなる機能性ペプチドの繰り返し配列で構成されており、加水分解物とは、該機能性ペプチドを含む天然物由来セリシンの酸やアルカリによる加水分解されたものなどをいう。また、同等物とは、少なくとも1以上の機能性ペプチドを含むように化学合成されたものや、遺伝子工学的手法により、微生物などで製造されるものをいう。さらに、これらにおいては、本発明の安定化作用を損なわない範囲内で、あるいはその特性を改善する目的で、天然型アミノ酸配列に対して、アミノ酸残基の欠失、置換、挿入、付加されたものであっても良い。 本発明の方法は、タンパク質(ペプチドを含む)の溶解性改善を、同じくタンパク質であるセリシンやその加水分解物、その同等物を用いて行うという簡易な手法である。セリシン加水分解物を保湿剤、抗酸化剤として利用したり、界面活性剤として脂質の乳化安定性改善に利用する研究については既に報告が存在するが(特開平11−276876号公報)、本発明は、タンパク質をタンパク質で溶かすという従来には無い発想に基づいている。 本発明に用いるセリシンやその加水分解物、その同等物は、国際公開第2002/086133号パンフレットに開示される公知の方法に従って得ることができる。 本発明の溶解性改善方法の対象となるタンパク質は特に限定されるものではないが、例えば、食品に利用されるタンパク質、医薬品として利用されるタンパク質、酵素、抗体、抗原など、またはそれらを含有する組成物などが挙げられる。 タンパク質の種類も特に限定されるものではないが、一部例を挙げると、カゼインなどの乳タンパク質、小麦グルテンや大豆蛋白などの植物貯蔵タンパク質、コラーゲンなどの硬タンパク質などが挙げられる。 これらのタンパク質は、他の物質と混合された液状組成物などであってもよい。このような組成物は、適当な容器に入れられたり、適当なデバイスに搭載されて、例えば、分子生物学用途の分析試薬、生化学用途の分析試薬、体外診断薬、液状体外診断薬、チップ状またはスリット状に加工した体外診断薬、酵素センサーや酵素電極、医薬品、食品および飲料など、種々の形態をとることができる。従って、本発明により、上記組成物を含む診断用キットおよび上記組成物を含むバイオセンサーが提供される。 本発明において水溶液とは、水性溶媒中にタンパク質を含有する溶液をいう。水性溶媒としては水を使用することができるが、本発明においては、水溶液のpH緩衝作用、タンパク質の安定化などの目的で、さらに他の物質を混合しても良い。例えば水溶液は、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、クエン酸緩衝液、トリス緩衝液、PIPES、MES、TES、MOPS、HEPESなどのGood緩衝液の状態であって良く、この様な水溶液中に硫安、燐安、食塩、塩化カリウムなどの塩類を含んでいても良い。また、エタノールやメタノール、プロパノールなどのアルコール類、グリセロールやエチレングリコールなどのポリオール類、アルキルグルコシド、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、脂肪酸アルコールエステルなどの界面活性剤を添加しても良い。必要に応じて、ペニシリン系、セフェム系、アミノ配糖体系、マイクロライド系、テトラサイクリン系、ニュー・キノロン系等の抗生物質、アジ化物、1,1‘−Methylen−bis[3−(1−hydroxymethyl−2,4−dioximidazolidin−5−yl)−urea]、2−Methyl−3(2H)−isothiazolone−hydrochloride、5−Bromo−5−nitro−1,3−dioxane、2−Hydroxypyridine−N−oxide、2−Chloroacetamideなどの防腐剤を添加しても良い。 本発明のタンパク質溶解性改善方法に用いるセリシンやセリシン加水分解物またはその同等物の、水溶液中における濃度は、特に限定されないが、好ましくは終濃度1〜20%含有させると良い。さらに好ましくは、終濃度1〜10%含有させると良い。 以下、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、本発明は実施例により特に限定されるものではない。(実施例1) カゼイン(メルク製:Hammerstein Grade)を、1〜10%のセリシン加水分解物(東洋紡績製:NPS−301)を含有する水溶液で1%または0.1%となるよう懸濁し、溶解性を目視確認した。(比較例1) 実施例1においてセリシン加水分解物を添加しない蒸留水、又はセリシン加水分解物の替わりに牛血清アルブミン(シグマ製FractionV)1〜5%を含有する水溶液を調製し、実施例1と同様の条件でカゼインを1%または0.1%となるよう懸濁し、溶解性を目視確認した。 溶解性の目視確認結果を、図1および図2に示す。このように、カゼインの溶解性がセリシンにより向上することが示された。(実施例2) カゼインを、1%のセリシン加水分解物を含有する水溶液で0.1%または1%となるよう懸濁し、懸濁液の濁度(OD600nm)を測定し、溶解性の指標とした。(比較例2) 実施例2においてセリシン加水分解物を添加しない蒸留水、又はセリシン加水分解物の替わりに牛血清アルブミン1%を含有する水溶液を調製し、実施例2と同様の条件でカゼインを0.1%または1%となるよう懸濁し、懸濁液の濁度(OD600nm)を測定した。 表1に示す通り、濁度の減少からカゼインの溶解性がセリシンにより向上することが示された。(実施例3) カゼインを、5%のセリシン加水分解物を含有する水溶液で1%または3%となるよう懸濁し、懸濁液の濁度(OD660nm)を測定し、溶解性の指標とした。さらに、懸濁液を25℃で1日間保存後、懸濁液の濁度(OD660nm)を測定し、溶解性の指標とした。(比較例3) 実施例3においてセリシン加水分解物を添加しない蒸留水で、実施例3と同様の条件でカゼインを1%または3%となるよう懸濁し、懸濁液の濁度(OD660nm)を測定した。さらに、懸濁液を25℃で1日間保存後、懸濁液の濁度(OD660nm)を測定した。 表2に示す通り、濁度の減少からカゼインの溶解性がセリシンにより向上することが示された。保存により、溶解性はさらに向上した。(実施例4) 実施例2のカゼインの替わりに小麦グリアジン(和光純薬製)を用いた以外は、同様の実験を実施した。(比較例4) 比較例2のカゼインの替わりに小麦グリアジンを用いた以外は、同様の実験を実施した。 表3に示す通り、小麦グリアジンの溶解性がセリシンにより向上することが示された。 本発明によれば、産業上有用なタンパク質の水溶性を向上させ、これらタンパク質を用いた組成物の用途を拡大することが可能となる。食品分野、医薬品分野など産業界に寄与することが大である。各種水溶液中の1%カゼインの溶解性を示す。各種水溶液中の0.1%カゼインの溶解性を示す。 目的のタンパク質の水溶性を高めるため、該タンパク質を、セリシンおよび/またはその加水分解物もしくはその同等物の存在下で水性溶媒に溶解して水溶液を調製する工程を含むことを特徴とする溶解性改善方法。 セリシンおよび/またはその加水分解物もしくはその同等物を、水溶液中に終濃度1〜20%含有させることを特徴とする、請求項1記載の溶解性改善方法。 セリシンおよび/またはその加水分解物が繭糸又は生糸から抽出した天然セリシンに由来するものである、請求項1または2記載の溶解性改善方法。 セリシン同等物が遺伝子工学的手法により得られたものである、請求項1または2記載の溶解性改善方法。 目的のタンパク質が、乳タンパク質、植物貯蔵タンパク質、硬タンパク質から選ばれたものである、請求項1〜4のいずれか1項記載の溶解性改善方法。 目的のタンパク質に加え、セリシンおよび/またはその加水分解物もしくはその同等物が水溶液中に共存した溶解性改善組成物。 セリシンおよび/またはその加水分解物もしくはその同等物が、水溶液中に終濃度1〜20%含有することを特徴とする、請求項6記載の溶解性改善組成物。 セリシンおよび/またはその加水分解物が、繭糸又は生糸から抽出した天然セリシンに由来するものである、請求項6または7記載の溶解性改善組成物。 セリシン同等物が遺伝子工学的手法により得られたものである、請求項6または7記載の溶解性改善組成物。 目的のタンパク質が、乳タンパク質、植物貯蔵タンパク質、硬タンパク質から選ばれたものである、請求項6〜9のいずれか1項記載の溶解性改善組成物。 請求項6〜9のいずれか1項記載の溶解性改善組成物を含む診断用キット。 請求項6〜9のいずれか1項記載の溶解性改善組成物を含むバイオセンサー。 【課題】本発明はタンパク質の溶解性改善方法および組成物に関する。【解決手段】目的のタンパク質の水溶性を高めるため、該タンパク質に加え、セリシンおよび/またはその加水分解物もしくはその同等物を水溶液中に共存させることを特徴とする溶解性改善方法。目的のタンパク質に加え、セリシンおよび/またはその加水分解物もしくはその同等物が水溶液中に共存した溶解性改善組成物。【選択図】なし


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特許公報(B2)_タンパク質の溶解性改善方法および組成物

生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_タンパク質の溶解性改善方法および組成物
出願番号:2006329466
年次:2012
IPC分類:C07K 1/02,C07K 14/47,C07K 14/415,C07K 14/78,C07K 14/435,A61K 38/00,A61K 38/17,A61K 47/42,A61K 9/08,C12P 21/02


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西矢 芳昭 佐々木 真宏 山田 英幸 JP 4890219 特許公報(B2) 20111222 2006329466 20061206 タンパク質の溶解性改善方法および組成物 東洋紡績株式会社 000003160 セーレン株式会社 000107907 田中 光雄 100081422 山崎 宏 100084146 元山 忠行 100116311 冨田 憲史 100122301 西矢 芳昭 佐々木 真宏 山田 英幸 20120307 C07K 1/02 20060101AFI20120216BHJP C07K 14/47 20060101ALI20120216BHJP C07K 14/415 20060101ALI20120216BHJP C07K 14/78 20060101ALI20120216BHJP C07K 14/435 20060101ALI20120216BHJP A61K 38/00 20060101ALI20120216BHJP A61K 38/17 20060101ALI20120216BHJP A61K 47/42 20060101ALI20120216BHJP A61K 9/08 20060101ALI20120216BHJP C12P 21/02 20060101ALN20120216BHJP JPC07K1/02C07K14/47C07K14/415C07K14/78C07K14/435A61K37/02A61K37/12A61K37/18A61K47/42A61K9/08C12P21/02 C C07K 1/00−14/825 A61K 9/00−9/66 A61K 38/00−38/58 JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) GenBank/GeneSeq BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN) J.Biochem.,2001年,Vol.129,p.979-986 日本シルク学会誌,2006年12月 1日,Vol.15,p.96-97 6 2008143790 20080626 8 20091029 水落 登希子 本発明は、新規なタンパク質の溶解性改善方法および組成物に関する。 タンパク質を実用化するに際し、その水に対する溶解性の低さが欠点となるケースが少なからず見受けられる。タンパク質を構成するアミノ酸には、トリプトファンやフェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、バリンなどの疎水性アミノ酸が含まれており、タンパク質の分子表面にこれらのアミノ酸が存在すると、タンパク質自身の疎水性を高めることとなり、水溶性が低下する。水溶性が極めて低い実用的タンパク質の例としては、乳タンパク質であるカゼイン、植物貯蔵タンパク質である小麦グルテン及びその成分であるグリアジン、硬タンパク質であるコラーゲンなどがある。これらのタンパク質の利用のため、水溶性を高める方法が種々試みられてきた(例えば、特許文献1、2、3、4、5参照)。 しかしながら、これまで行われてきた方法は、目的タンパク質を酸やアルカリでの処理、熱処理、或いは酵素的または化学的に加水分解することによる低分子量化などに供するものであり、タンパク質本来の構造を維持するのが困難な条件を伴っていた。また、糖やコハク酸などの化合物によりタンパク質表面を化学的、物理的に修飾し、水溶性を高める方法も試みられており、成果をあげている。しかし、修飾を伴う方法は目的タンパク質の表面状態を変えるため、該タンパク質の特性を変化させることになる。更に、修飾処理を伴う方法も、熱処理や酸・アルカリ処理ほどではないにしても目的タンパク質が変性する危険を伴う。なにより、修飾を伴う方法は操作が煩雑で、手間がかかる。 一方、不溶性タンパク質の可溶化技術は、研究分野においても重要な要素技術のひとつである。特に、遺伝子操作技術によるタンパク質の生産では、宿主生物が本来生産しないタンパク質、すなわち異種タンパク質を発現させると、本来のコンフォメーションをとれずに疎水性の高いタンパク質として凝集、不溶化し、いわゆるインクルージョンボディとなる。このインクルージョンボディを正常なタンパク質とするには、まず可溶化する必要があり、尿素や塩酸グアニジンなどのタンパク質変性剤を用いて一旦変性させ、その後で正常なタンパク質に再構成させるという煩雑な操作が必要となる。変性を伴わない温和な可溶化方法が確立できれば、異種タンパク質の高生産技術が大きく飛躍すると考えられる。 このような状況から、水溶性が低いタンパク質の溶解性を改善する方法として、目的タンパク質の構造変化や変性を伴わない温和な条件で実施可能であり、且つ、従来よりも簡便な方法が強く望まれていた。特開平11−18687号公報特開平6−73089号公報特開2004−113182号公報特開2003−250460号公報特開平7−258292号公報 目的タンパク質の溶解性を改善する方法として、従来法である該タンパク質の酸・アルカリ処理、熱処理、或いは加水分解での低分子量化、タンパク質変性剤の使用などは、タンパク質本来の構造を維持できないという問題がある。また、タンパク質表面の化学的・物理的修飾による溶解性改善方法は、該タンパク質の特性を変化させてしまう、該タンパク質が変性する危険を伴う、操作が煩雑で手間がかかるという課題が考えられる。 本発明が解決しようとする課題は、水溶性が低いタンパク質の溶解性を改善する方法であって、従来法と異なり目的タンパク質の構造変化や変性を伴わない温和な条件で実施可能であり、且つ、従来よりも簡便な方法と、それによって溶解性が改善された組成物を提供することにある。 本発明者らは、上記目的を達成する為に種々検討した結果、セリシン加水分解物を目的タンパク質と水溶液中に共存させることにより、目的タンパク質の水溶性を効果的に改善できることを見出し、本発明を完成させるに至った。 すなわち、本発明は以下のようなものである。 [1]目的のタンパク質の水溶性を高めるため、該タンパク質を、セリシンおよび/またはその加水分解物もしくはその同等物の存在下で水性溶媒に溶解して水溶液を調製する工程を含むことを特徴とする溶解性改善方法。 [2]セリシンおよび/またはその加水分解物もしくはその同等物を、水溶液中に終濃度1〜20%含有させることを特徴とする、[1]記載の溶解性改善方法。 [3]セリシンおよび/またはその加水分解物が繭糸又は生糸から抽出した天然セリシンに由来するものである、[1]または[2]記載の溶解性改善方法。 [4]セリシン同等物が遺伝子工学的手法により得られたものである、[1]または[2]記載の溶解性改善方法。 [5]目的のタンパク質が、乳タンパク質、植物貯蔵タンパク質、硬タンパク質から選ばれたものである、[1]〜[4]のいずれかに記載の溶解性改善方法。 [6]目的のタンパク質に加え、セリシンおよび/またはその加水分解物もしくはその同等物が水溶液中に共存した溶解性改善組成物。 [7]セリシンおよび/またはその加水分解物もしくはその同等物が、水溶液中に終濃度1〜20%含有することを特徴とする、[6]記載の溶解性改善組成物。 [8]セリシンおよび/またはその加水分解物が、繭糸又は生糸から抽出した天然セリシンに由来するものである、[6]または[7]記載の溶解性改善組成物。 [9]セリシン同等物が遺伝子工学的手法により得られたものである、[6]6または[7]記載の溶解性改善組成物。 [10]目的のタンパク質が、乳タンパク質、植物貯蔵タンパク質、硬タンパク質から選ばれたものである、[6]〜[9]のいずれかに記載の溶解性改善組成物。 [11][6]〜[9]のいずれかに記載の溶解性改善組成物を含む診断用キット。 [12][6]〜[9]のいずれかに記載の溶解性改善組成物を含むバイオセンサー。 本発明によれば、セリシンやセリシン加水分解物またはその同等物を用いることにより、目的タンパク質の水溶性を向上させ、これらタンパク質、およびタンパク質を用いた組成物の用途を拡大させることが可能となる。 以下に本発明を詳細に説明する。 本発明のタンパク質溶解性改善方法に用いるセリシンは、繭糸や生糸から抽出される天然状態のものを用いても良いし、その加水分解物を用いても良く、その同等物であっても良い。本発明の実施例においては、セリシン加水分解物を用いている。 セリシンは、国際公開第2002/086133号パンフレットに開示されるアミノ酸配列を有するタンパク質であり、38アミノ酸からなる機能性ペプチドの繰り返し配列で構成されており、加水分解物とは、該機能性ペプチドを含む天然物由来セリシンの酸やアルカリによる加水分解されたものなどをいう。また、同等物とは、少なくとも1以上の機能性ペプチドを含むように化学合成されたものや、遺伝子工学的手法により、微生物などで製造されるものをいう。さらに、これらにおいては、本発明の安定化作用を損なわない範囲内で、あるいはその特性を改善する目的で、天然型アミノ酸配列に対して、アミノ酸残基の欠失、置換、挿入、付加されたものであっても良い。 本発明の方法は、タンパク質(ペプチドを含む)の溶解性改善を、同じくタンパク質であるセリシンやその加水分解物、その同等物を用いて行うという簡易な手法である。セリシン加水分解物を保湿剤、抗酸化剤として利用したり、界面活性剤として脂質の乳化安定性改善に利用する研究については既に報告が存在するが(特開平11−276876号公報)、本発明は、タンパク質をタンパク質で溶かすという従来には無い発想に基づいている。 本発明に用いるセリシンやその加水分解物、その同等物は、国際公開第2002/086133号パンフレットに開示される公知の方法に従って得ることができる。 本発明の溶解性改善方法の対象となるタンパク質は特に限定されるものではないが、例えば、食品に利用されるタンパク質、医薬品として利用されるタンパク質、酵素、抗体、抗原など、またはそれらを含有する組成物などが挙げられる。 タンパク質の種類も特に限定されるものではないが、一部例を挙げると、カゼインなどの乳タンパク質、小麦グルテンや大豆蛋白などの植物貯蔵タンパク質、コラーゲンなどの硬タンパク質などが挙げられる。 これらのタンパク質は、他の物質と混合された液状組成物などであってもよい。このような組成物は、適当な容器に入れられたり、適当なデバイスに搭載されて、例えば、分子生物学用途の分析試薬、生化学用途の分析試薬、体外診断薬、液状体外診断薬、チップ状またはスリット状に加工した体外診断薬、酵素センサーや酵素電極、医薬品、食品および飲料など、種々の形態をとることができる。従って、本発明により、上記組成物を含む診断用キットおよび上記組成物を含むバイオセンサーが提供される。 本発明において水溶液とは、水性溶媒中にタンパク質を含有する溶液をいう。水性溶媒としては水を使用することができるが、本発明においては、水溶液のpH緩衝作用、タンパク質の安定化などの目的で、さらに他の物質を混合しても良い。例えば水溶液は、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、クエン酸緩衝液、トリス緩衝液、PIPES、MES、TES、MOPS、HEPESなどのGood緩衝液の状態であって良く、この様な水溶液中に硫安、燐安、食塩、塩化カリウムなどの塩類を含んでいても良い。また、エタノールやメタノール、プロパノールなどのアルコール類、グリセロールやエチレングリコールなどのポリオール類、アルキルグルコシド、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、脂肪酸アルコールエステルなどの界面活性剤を添加しても良い。必要に応じて、ペニシリン系、セフェム系、アミノ配糖体系、マイクロライド系、テトラサイクリン系、ニュー・キノロン系等の抗生物質、アジ化物、1,1‘−Methylen−bis[3−(1−hydroxymethyl−2,4−dioximidazolidin−5−yl)−urea]、2−Methyl−3(2H)−isothiazolone−hydrochloride、5−Bromo−5−nitro−1,3−dioxane、2−Hydroxypyridine−N−oxide、2−Chloroacetamideなどの防腐剤を添加しても良い。 本発明のタンパク質溶解性改善方法に用いるセリシンやセリシン加水分解物またはその同等物の、水溶液中における濃度は、特に限定されないが、好ましくは終濃度1〜20%含有させると良い。さらに好ましくは、終濃度1〜10%含有させると良い。 以下、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、本発明は実施例により特に限定されるものではない。(実施例1) カゼイン(メルク製:Hammerstein Grade)を、1〜10%のセリシン加水分解物(東洋紡績製:NPS−301)を含有する水溶液で1%または0.1%となるよう懸濁し、溶解性を目視確認した。(比較例1) 実施例1においてセリシン加水分解物を添加しない蒸留水、又はセリシン加水分解物の替わりに牛血清アルブミン(シグマ製FractionV)1〜5%を含有する水溶液を調製し、実施例1と同様の条件でカゼインを1%または0.1%となるよう懸濁し、溶解性を目視確認した。 溶解性の目視確認結果を、図1および図2に示す。このように、カゼインの溶解性がセリシンにより向上することが示された。(実施例2) カゼインを、1%のセリシン加水分解物を含有する水溶液で0.1%または1%となるよう懸濁し、懸濁液の濁度(OD600nm)を測定し、溶解性の指標とした。(比較例2) 実施例2においてセリシン加水分解物を添加しない蒸留水、又はセリシン加水分解物の替わりに牛血清アルブミン1%を含有する水溶液を調製し、実施例2と同様の条件でカゼインを0.1%または1%となるよう懸濁し、懸濁液の濁度(OD600nm)を測定した。 表1に示す通り、濁度の減少からカゼインの溶解性がセリシンにより向上することが示された。(実施例3) カゼインを、5%のセリシン加水分解物を含有する水溶液で1%または3%となるよう懸濁し、懸濁液の濁度(OD660nm)を測定し、溶解性の指標とした。さらに、懸濁液を25℃で1日間保存後、懸濁液の濁度(OD660nm)を測定し、溶解性の指標とした。(比較例3) 実施例3においてセリシン加水分解物を添加しない蒸留水で、実施例3と同様の条件でカゼインを1%または3%となるよう懸濁し、懸濁液の濁度(OD660nm)を測定した。さらに、懸濁液を25℃で1日間保存後、懸濁液の濁度(OD660nm)を測定した。 表2に示す通り、濁度の減少からカゼインの溶解性がセリシンにより向上することが示された。保存により、溶解性はさらに向上した。(実施例4) 実施例2のカゼインの替わりに小麦グリアジン(和光純薬製)を用いた以外は、同様の実験を実施した。(比較例4) 比較例2のカゼインの替わりに小麦グリアジンを用いた以外は、同様の実験を実施した。 表3に示す通り、小麦グリアジンの溶解性がセリシンにより向上することが示された。 本発明によれば、産業上有用なタンパク質の水溶性を向上させ、これらタンパク質を用いた組成物の用途を拡大することが可能となる。食品分野、医薬品分野など産業界に寄与することが大である。各種水溶液中の1%カゼインの溶解性を示す。各種水溶液中の0.1%カゼインの溶解性を示す。 目的のタンパク質の水溶性を高めるため、該タンパク質を、終濃度1〜10%のセリシン加水分解物の存在下で水性溶媒に溶解して水溶液を調製する工程を含むことを特徴とする溶解性改善方法。 セリシン加水分解物が繭糸又は生糸から抽出した天然セリシンに由来するものである、請求項1記載の溶解性改善方法。 目的のタンパク質が、乳タンパク質、植物貯蔵タンパク質、硬タンパク質から選ばれたものである、請求項1または2記載の溶解性改善方法。 目的のタンパク質に加え、終濃度1〜10%のセリシン加水分解物が水溶液中に共存した溶解性改善組成物。 セリシン加水分解物が、繭糸又は生糸から抽出した天然セリシンに由来するものである、請求項4記載の溶解性改善組成物。 目的のタンパク質が、乳タンパク質、植物貯蔵タンパク質、硬タンパク質から選ばれたものである、請求項4または5のいずれか1項記載の溶解性改善組成物。


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