タイトル: | 再公表特許(A1)_塩酸サプロプテリンの生体内吸収性を向上させた製剤 |
出願番号: | 2006325504 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | A61K 31/519,A61K 47/12,A61K 9/20,A61K 9/48,A61K 9/16,A61K 9/14,A61P 3/06,A61P 9/12,A61P 9/04,A61P 13/12,A61P 15/10 |
興津 光人 緒方 淳人 谷 吉弘 JP WO2007072911 20070628 JP2006325504 20061221 塩酸サプロプテリンの生体内吸収性を向上させた製剤 アスビオファーマ株式会社 503062312 草間 攻 100083301 興津 光人 緒方 淳人 谷 吉弘 JP 2005369136 20051222 A61K 31/519 20060101AFI20090508BHJP A61K 47/12 20060101ALI20090508BHJP A61K 9/20 20060101ALI20090508BHJP A61K 9/48 20060101ALI20090508BHJP A61K 9/16 20060101ALI20090508BHJP A61K 9/14 20060101ALI20090508BHJP A61P 3/06 20060101ALI20090508BHJP A61P 9/12 20060101ALI20090508BHJP A61P 9/04 20060101ALI20090508BHJP A61P 13/12 20060101ALI20090508BHJP A61P 15/10 20060101ALI20090508BHJP JPA61K31/519A61K47/12A61K9/20A61K9/48A61K9/16A61K9/14A61P3/06A61P9/12A61P9/04A61P13/12A61P15/10 AP(BW,GH,GM,KE,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,NL,PL,PT,RO,SE,SI,SK,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV,LY,MA,MD,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PG,PH,PL,PT,RO,RS,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,SV,SY,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,ZA,ZM,ZW 再公表特許(A1) 20090604 2007551150 21 4C076 4C086 4C076AA30 4C076AA31 4C076AA37 4C076AA53 4C076AA56 4C076BB01 4C076CC01 4C076CC17 4C076DD42 4C076DD43 4C086AA01 4C086AA02 4C086CB09 4C086MA02 4C086MA05 4C086MA35 4C086MA37 4C086MA41 4C086MA43 4C086MA52 4C086NA14 4C086ZA36 4C086ZA42 4C086ZA81 4C086ZC33 本発明は、異型高フェニルアラニン血症や、テトラヒドロビオプテリン反応性フェニルケトン尿症の治療薬として使用されている塩酸サプロプテリンの生体利用率(バイオアベイラビリティー)、特に消化管からの生体吸収性を向上させた製剤に関する。 次式(I):で示される天然型の(R)−テトラヒドロビオプテリン(一般名:サプロプテリン;化学名:(R)−2−アミノ−6−[{1R,2S}−1,2−ジヒドロプロピル]−5,6,7,8−テトラヒドロ−4(3H)−プテリジノン;以下、BH4)は、生体内水酸化反応やオキシゲナーゼ反応に必須の補酵素として機能する生体内化合物であることから、この二塩酸塩(塩酸サプロプテリン)は、我が国において、BH4欠損症の異型高フェニルアラニン血症に対する治療薬として開発され、1992年に承認を受け、ビオプテン(Biopten:登録商標)の商品名で販売されている化合物である。 ところで、サプロプテリン自体の特性の一つとして、経口投与された場合の生体利用率(バイオアベイラビリティー)が1〜2%程度と、極めて低いものであることが挙げられる。しかしながら、対象疾患となるBH4欠損症の異型高フェニルアラニン血症は、先天性代謝異常による疾患であり、その患者数は極めて少ないオーファン疾患であるものの、その症状が重篤な疾患であり、それに対する有効な薬物がこれまでなかったことから、サプロプテリンの経口吸収率が良くないにも拘わらず、医薬品として使用されているのが現状である。 したがって、塩酸サプロプテリンをBH4欠乏(ジヒドロビオプテリン合成酵素欠損及びジヒドロプテリジン還元酵素欠損)に基づく異型高フェニルアラニン血症の治療に用いる場合の投与量は、一日2〜5mg/kgとされている。この用量は、体重3kgの新生児であれば6〜15mg/日、体重60kgの成人であれば120mg〜300mg/日となり、単一製剤で投与したい用量は患者の症状により異なるため、他の薬剤に比べると非常に広い範囲となる。 加えて、近年欧米においては、高フェニルアラニン血症関連疾患である「BH4反応性フェニルケトン尿症」を適応症とした臨床開発が進められているが、その投与量は一日10mg/kgの高用量とされている(非特許文献1)。また、一方でサプロプテリンは生体内一酸化窒素(NO)合成酵素の補酵素としての機能も持つことから、高脂血症患者(非特許文献2、3)、高血圧症患者(非特許文献4)、心不全患者(非特許文献5)、慢性腎不全患者(非特許文献6)の内皮依存性血管拡張作用の改善効果等が報告されている。また、慢性喫煙患者における同様の作用(非特許文献7)や勃起不全改善効果(非特許文献8)等も報告されている。したがって、サプロプテリンは循環器領域の種々の疾患や、メタボリックシンドロームを治療する医薬品としての開発の可能性だけでなく、これらの疾患の発症や進展を抑制する特定保健用食品としての開発の可能性もある。 しかしながら、現在実施されているサプロプテリンの製造方法による本化合物の製造コストは安価なものとは言い難いことから(特許文献1、非特許文献9)、今後の新しい適応症をターゲットとした医薬品を開発する場合においては、製造コストの改善と共に、この化合物自体の生体利用率の改善が強く望まれている。 一般に、経口投与された塩酸サプロプテリンは、生体内において消化管、特に腸管から吸収されるが、その吸収の低さが、生体利用率の低下をもたらしている。 すなわち、塩酸サプロプテリンは酸化に対して極めて不安定であることから、それを含有する製剤には酸化防止剤として、アスコルビン酸やL−システイン等の酸化防止剤が添加されているのが一般的である。しかしながら、これらの酸化防止剤を添加することにより、酸化に対する安定性は確保されても、その経口投与時の生体利用率はわずかに1〜2%と低いものとなっており、その要因として、塩酸サプロプテリンの腸管からの吸収性の低さが考えられている。 ところで、生体内に投与された薬物の吸収経路は、生理解剖学的にみると、細胞実質を透過する細胞内経路(transcellular pathway)と、細胞間の接合部であるtight junction(TJ)から側方細胞間腔(lateral intercellular space)へと続く細胞間隙経路(paracellular pathway)との二つの経路に大別されている。一般的には、TJが薬物透過に対する大きなバリアーとなるために、細胞間隙経路による透過性は極めて低く、細胞実質を透過する細胞内経路が主なる薬物透過の経路となっている。 そのため、非イオン型であり、且つ脂溶性の大きい薬物の方が、腸管透過性は大きくなるというpH分配仮説が成立するはずである。しかしながら、実際にはイオン型として透過することを想定しなければ説明できない薬物の例もあり、全ての薬物の腸管吸収は、イオン仮説だけでは説明できない状況となっている(非特許文献10)。 したがって、仮に、何らかの方法でTJによる透過バリアー機能を低減させるか、あるいはTJを開口させることができれば、受動輸送によって、細胞間隙経路によるイオン型薬物の腸管透過性の向上を図ることができると考えられる。 すなわち、塩酸サプロプテリンは、水溶性の高い分子量314の低分子化合物にも拘わらず、通常の経口製剤にあっては極めて腸管吸収が低いことから、イオン型化合物に分類される。したがって、この化合物の経口投与にあたって、もし、何らかの方法によりTJを開口することができれば、当該化合物の腸管吸収が改善され、生体利用率が向上するものと考えられる。 TJの開口に関しては、TJの形成にはCa2+が必要であるとし、EDTAのようなキレート剤を用いることにより、このCa2+をトラップすることがTJの開口作用機構であるとする説があり、現在も根強く支持されている。しかし、近年、細胞間隙の接着分子の構造が明らかにされるにおよび、その開口が単純なキレート作用では説明し切れない知見も報告されている(例えば、非特許文献11、12)。 すなわち、細胞間隙におけるadhesion junctionやdesmosomeは、糖蛋白に富む接着分子でその間隙が埋められており、細胞骨格と言われる収縮性のmicrofilamentで補強されている。このfilamentの構成成分であるactin、myosinの本来的な作用は、細胞分裂時にみられる細胞膜を内側に引っ張る作用であると考えられている。また両者は膜裏打ち蛋白により緊密に連結されていることも明らかになっている。 このような細胞骨格系は腸管上皮においても高度に発達しており、actomyosin連関を司るsecond messengerの細胞内Ca2+、calmodulinさらにその両者からなる複合体の形成によって、myosin light chain kinase(MLCK)の活性化、あるいは蛋白のリン酸化の関与する protein kinase C(PKC)の活性化などが細胞骨格系を収縮させ、これによりTJが開口するという機構が提唱されている。 また最近、Hayashiらは、酒石酸やクエン酸等の有機カルボン酸類にも細胞間隙の開口作用があることを報告している(非特許文献13)。彼らは、そのメカニズムとして、これらの有機カルボン酸類は細胞質内ATPのレベルと酸性度を下げることから、この細胞質内のacidosisとそれに伴うATPレベルの低下が細胞内Ca2+レベルの上昇をもたらし、更に、細胞内Ca2+の上昇により細胞の収縮が惹起され、結果として、細胞間隙(TJ)が開口するというメカニズムを提唱している。アメリカ特許第4,713,453号Molecular Genetics and Metabolism, vol.77, 304(2002)J. Clin. Invest., vol.99, 41(1997)Heart, vol.87, 264(2002)American Journal of Hypertension, vol.15, 326(2002)J. Cardio. Pharmacol., vol.39, 363(2002)Nephrol Dial Transplant, vol.17, 1032(2002)J.A.C.C., vol.35, 71(2000)Asian J. Androl., vol.2, 159(2006)Hervetica. Chimica. Acta., vol.68, 1639(1985)薬物バイオアベイラビリティー評価と改善の科学(杉山雄一編集、現代医療社)Am. J. Physiol., 253, C171-C175(1987)Am. J. Physiol., 253, C854-C861(1987)J. Controlled Release, vol.62, 141(1999) 本発明者らは、薬物の吸収経路となる上記の腸管吸収の各点に注目し、塩酸サプロプテリンを有機カルボン酸と共に経口投与させた場合には、細胞間隙(TJ)が開口し、その結果、効率良く塩酸サプロプテリンが腸管吸収されるものと考え、有機カルボン酸のなかでも、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸等の複数のカルボキシル基を有する有機カルボン酸を添加して経口投与し、その生体吸収性を検討した。 その結果、従来の塩酸サプロプテリンの腸管吸収性が著しく向上し、その生体利用率が大幅に上昇することを確認し、本発明を完成させるに至った。 したがって本発明は、上記現状を鑑み、塩酸サプロプテリンの経口投与又は経口摂取時における生体利用率を大幅に改善する方法を提供することを課題とする。 また本発明は、塩酸サプロプテリンの生体内利用率を改善した経口投与製剤又は特定保健用食品の経口摂取製剤を提供することを課題とする。 かかる課題を解決するための本発明は、その一つの態様として、(1)塩酸サプロプテリンに、分子内に複数のカルボキシル基を有する有機カルボン酸を添加して経口投与又は経口摂取することを特徴とする塩酸サプロプテリンの生体利用率を改善させる方法;である。 より具体的には、本発明は、(2)分子内に複数のカルボキシル基を有する有機カルボン酸が、ジカルボン酸又はトリカルボン酸である上記1に記載の塩酸サプロプテリンの生体利用率を改善させる方法;(3)分子内に複数のカルボキシル基を有する有機カルボン酸を単独又は2種以上の混合物として添加することを特徴とする上記1に記載の塩酸サプロプテリンの生体利用率を改善させる方法;(4)分子内に複数のカルボキシル基を有する有機カルボン酸類の添加量が、塩酸サプロプテリンに対して0.1〜100倍重量添加することを特徴とする上記1、2又は3に記載の塩酸サプロプテリンの生体利用率を改善させる方法;(5)分子内に複数のカルボキシル基を有する有機カルボン酸が、酒石酸、クエン酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、アジピン酸、リンゴ酸、及びその光学活性体、ラセミ体、無水物、水和物、又はそれらの混合物から選択されるものである上記1、2、3又は4に記載の塩酸サプロプテリンの生体利用率を改善させる方法;(6)分子内に複数のカルボキシル基を有する有機カルボン酸が、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、及びその光学活性体、ラセミ体、無水物、水和物、又はそれらの混合物から選択されるものである上記1、2、3又は4に記載の塩酸サプロプテリンの生体利用率を改善させる方法;である。 また本発明は、別の態様として、(7)塩酸サプロプテリンの経口投与又は経口摂取による生体利用率を向上させるための分子内に複数のカルボキシル基を有する有機カルボン酸からなる吸収促進剤;であり、具体的には、(8)分子内に複数のカルボキシル基を有する有機カルボン酸が、ジカルボン酸又はトリカルボン酸である上記7に記載の吸収促進剤;(9)分子内に複数のカルボキシル基を有する有機カルボン酸が、酒石酸、クエン酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、アジピン酸、リンゴ酸、及びその光学活性体、ラセミ体、無水物、水和物、又はそれらの混合物から選択されるものである上記7又は8に記載の吸収促進剤;(10)分子内に複数のカルボキシル基を有する有機カルボン酸が、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、及びその光学活性体、ラセミ体、無水物、水和物、又はそれらの混合物から選択されるものである上記7又は8に記載の吸収促進剤;である。 さらに本発明は、また別の態様として、(11)塩酸サプロプテリンと、分子内に複数のカルボキシル基を有する有機カルボン酸からなる吸収促進剤とを含有することを特徴とする、塩酸サプロプテリンの生体利用率を改善させた製剤;であり、より具体的には、(12)分子内に複数のカルボキシル基を有する有機カルボン酸類の添加量が、塩酸サプロプテリンに対して0.1〜100倍重量であることを特徴とする上記11に記載の塩酸サプロプテリンの生体利用率を改善させた製剤;(13)分子内に複数のカルボキシル基を有する有機カルボン酸が、酒石酸、クエン酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、アジピン酸、リンゴ酸、及びその光学活性体、ラセミ体、無水物、水和物、又はそれらの混合物から選択されるものである上記11又は12に記載の塩酸サプロプテリンの生体利用率を改善させた製剤;(14)分子内に複数のカルボキシル基を有する有機カルボン酸が、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、及びその光学活性体、ラセミ体、無水物、水和物、又はそれらの混合物から選択されるものである上記11又は12に記載の塩酸サプロプテリンの生体利用率を改善させた製剤;(15)剤型が錠剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤またはソフトカプセル剤である上記11ないし14のいずれかに記載の製剤;である。 すなわち、本発明はこれまで経口投与された場合であっても、その生体利用率が僅かに1〜2%程度でしかなかった塩酸サプロプテリンについて、分子内に複数のカルボキシル基を有する有機カルボン酸からなる吸収促進剤を添加することにより、その腸管吸収性を向上させ、その結果、生体利用率を著しく増大させるものであり、塩酸サプロプテリンと分子内に複数のカルボキシル基を有する有機カルボン酸を添加する点に一つの特徴を有するものである。 さらに本発明は、分子内に複数のカルボキシル基を有する有機カルボン酸として、これまで医薬品添加物及び食品添加物として既に承認されている安全性の高い有機カルボン酸を、塩酸サプロプテリンの吸収促進剤として使用する点にまた、別の特徴を有するものである。 本発明により、これまで経口投与又は経口摂取された場合には、僅かに1〜2%程度の生体利用率しかなかった塩酸サプロプテリンについて、腸管吸収性を改善し、その生体利用率を大幅に増大させることができる。 したがって、塩酸サプロプテリンについてその有効血中濃度を確保できる投与量又は経口摂取量を、ほぼ半減することが可能になる。異型高フェニルアラニン血症患者に対する投与量の軽減は、長期薬物投与に対する安全性の面で極めて有効なものである。 さらに、製剤における塩酸サプロプテリンの含有量を軽減できる点は、原薬の製造コストが高い現状の中で、より低薬価での薬剤の製造が期待され、その結果、循環器領域等の種々の新らたな適応症への拡大又は特定保健食品としての開発が容易となる。 本発明で有効成分として投与される又は摂取する式(I)の二塩酸塩である塩酸サプロプテリンは、既に、BH4欠損症の異型高フェニルアラニン血症に対する経口治療薬として開発され、1992年に承認を受け、ビオプテン(Biopten:登録商標)の商品名で販売されている化合物である。 この塩酸サプロプテリンは、上記したように、経口投与された場合には、腸管からの吸収性が低く、その生体利用率は僅かに1〜2%程度でしかなかった。 本発明にあっては、この低い腸管吸収性を、分子内に複数のカルボキシル基を有する有機カルボン酸を添加することにより、解消させるものである。 本発明における塩酸サプロプテリンに添加する、分子内に複数のカルボキシル基を有する有機カルボン酸としては、例えばジカルボン酸或いはトリカルボン酸を挙げることができ、より具体的には、例えば、酒石酸、クエン酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、アジピン酸、リンゴ酸、又はそれらの混合物等をあげることができる。これらの有機カルボン酸には、その光学活性体、ラセミ体、無水物、水和物をも包含する。 これらのなかでも、特に酒石酸、クエン酸、リンゴ酸が好ましく、またこれらの光学活性体、ラセミ体、無水物、水和物も好ましい。 この好ましく使用される酒石酸、クエン酸及びリンゴ酸は、いずれも医薬品添加物及び食品添加物として既に承認されている安全性の高い化合物である。また、これらの有機カルボン酸類は、医薬品組成物として、例えば安定化剤、緩衝剤、矯味剤、pH調整剤、等張化剤、発泡剤、崩壊剤、賦形剤、分散剤、溶解補助剤、抗酸化剤、防腐剤等のさまざまな用途で、広く使用されている化合物であるが、塩酸サプロプテリンと共に併用して経口投与又は経口摂取した場合における塩酸サプロプテリンの腸管吸収性を改善することは、一切知られていないものである。 したがって、本発明者等の検討によれば、これらの分子内に複数のカルボキシル基を有する有機カルボン酸は、経口投与及び経口摂取による有効成分である塩酸サプロプテリンの生体利用率を向上させるために添加する吸収促進剤となる。 この場合における吸収促進剤である有機カルボン酸の添加量は、有効成分として含有する塩酸サプロプテリンに対して0.1〜100倍重量とするのがよい。 この配合量が0.1倍重量未満では、添加による塩酸サプロプテリンの生体利用率を向上させることができず、また100倍重量以上としても、それ以上の塩酸サプロプテリンの生体利用率を向上が認められず、かえって無駄となる。 したがって、例えばBH4欠損症に基づく異型高フェニルアラニン血症の治療にあたっては、投与する塩酸サプロプテリンの投与量は、従来では一日2〜5mg/kgとされている。本発明にあっては、その生体利用率が著しく向上する点を考慮し、有効な血中濃度を維持し得る塩酸サプロプテリンの投与量又は経口摂取量、及び添加する吸収促進剤としての有機カルボン酸の配合量が決定される。 また、他の循環器領域等、種々の新らたな適応症への適用にあたっては、目的とする疾患の治療に有効な血中濃度の維持を考慮し、塩酸サプロプテリンの投与量又は経口摂取量、及び添加する吸収促進剤としての有機カルボン酸の配合量を決定することができる。 本発明が提供する塩酸サプロプテリンを含有し、さらに吸収促進剤である有機カルボン酸を配合した製剤の剤型としては、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、ソフトカプセル剤又はドライシロップ剤をあげることができる。 そのなかでも、塩酸サプロプテリンを、新生児から成人にまで広範囲にわたって、一つの製剤として投与し得る剤形としては顆粒剤、細粒剤などの散剤、あるいはドライシロップ剤などが好ましい。 すなわち、錠剤、カプセル剤などの剤形の場合には、嚥下不能な乳幼児や嚥下困難な高齢者などの患者には投与できないが、顆粒剤、細粒剤などの散剤、あるいはドライシロップ剤であれば、そのままでも服用又は経口摂取することができ、あるいは用時溶解し溶液として投与することも可能となる。 なお、成人等の体重の大きい患者、又は他の疾患への適用の場合には、錠剤、カプセル剤を含めた剤型を選択しうることはいうまでもない。 その製剤化にあたっては、一般的に製剤分野で汎用されている製剤技術がそのまま適用でき、また、他の添加剤、例えば日本薬局方に記載されている一般的に使用が許容されている各種安定化剤、緩衝剤、矯味剤、pH調整剤、等張化剤、発泡剤、崩壊剤、賦形剤、分散剤、溶解補助剤、抗酸化剤、防腐剤、着色剤等をさらに含有することができる。 以下に本発明の具体的内容を、試験例、実施例により、より詳細に説明していく。試験例1:複数のカルボキシル基を有する有機カルボン酸を添加した、塩酸サプロプテリンの経口投与による血中濃度の検討(その1) 複数のカルボキシル基を有する有機カルボン酸として、L−酒石酸及びクエン酸を選択し、塩酸サプロプテリンに添加することによるサプロプテリンの血中濃度の改善効果を、ラット動物モデルで検討した。[方法] SD系雄性ラット(年齢:7週齢;体重:229〜267g;一群5匹)を使用し、塩酸サプロプテリンを30mg/kg経口投与時に、L−酒石酸については、375mg/kg(0.5モル溶液を5mL/kg、塩酸サプロプテリンに対して12.5倍重量相当)または75mg/kg(0.1モル溶液を5mL/kg、塩酸サプロプテリンに対して2.5倍重量相当)を添加した。 また同様に、クエン酸については、480mg/kg(0.5モル溶液を5mL/kg、塩酸サプロプテリンに対して16.0倍重量相当)または96mg/kg(0.1モル溶液を5mL/kg、塩酸サプロプテリンに対して3.2倍重量相当)を添加した。 対照コントロール群として、有機カルボン酸を添加しないで塩酸サプロプテリンと共に生理食塩水を添加した塩酸サプロプテリン単独投与群を置いた。 投与後から0.5、1、2及び4時間毎にラットより血液サンプルを採取し、遊離塩基であるサプロプテリンの血中濃度を測定した。[血中濃度測定方法] サプロプテリンの血中濃度の測定は、Taniら(J. Chromatography, 617, 249-255 (1993))の方法に準じて、蛍光検出器付高速液体クロマトグラフィーシステムを用いて実施した。 すなわち、高速液体クロマトグラフィーシステムは、ポンプ(LC-6A、島津製作所社製)2台、システムコントローラー(SCL-6B、島津製作所社製)、オートインジェクター(SIL-6B、島津製作所社製)、逆相系カラム(Cosmosil 5C18, 250 x 4.6 mm, ナカライテスク社製)、カラムオーブン(CTO-6A、島津製作所社製)2台、反応コイルおよび蛍光検出器(RF-550、島津製作所社製)にて構成されている。 蛍光検出器の励起波長は350nmに、蛍光波長は440nmに固定した。分析用カラム及び反応コイルの温度は、それぞれ40℃及び80℃に保温した。サプロプテリン濃度は、インテグレーター(C-R4AX、島津製作所社製)を用いて既知標準物質の標準ピークを描出し、チャート上に得られた面積値と濃度から分析用ファイルを作成した後に測定した(外部標準法)。 移動層には、5%(v/v)methanol、3mM sodium octylsulphate、0.1mM disodium EDTA、0.1mM ascorbic acidを含む0.1mM sodium phosphate buffer(pH3.0)を用い、流速は1.0mL/分とした。なお、本測定方法では、逆相系カラムを用いて各種pterin類を分離した後に、蛍光を示さない還元型のpterin類(BH4など)は反応コイル中にてNaNO2(5mM、流速1.0mL/分)を用いて蛍光を示す酸化型のpterin類に変換した後に蛍光検出器を用いて測定した。[結果] その結果を図1に示した。 図中に示した結果からも判明するように、塩酸サプロプテリンと共にL−酒石酸あるいはクエン酸を添加した群では、対照である塩酸サプロプテリン単独投与群と比較して、サプロプテリンの血中濃度が向上しているのが確認された。特に、L−酒石酸の375mg/kg、75mg/kg添加群、及びクエン酸の480mg/kg添加群ではその効果は著しいものであり、投与4時間後でもプロプテリンの血中濃度の改善効果が維持されていた。試験例2:複数のカルボキシル基を有する有機カルボン酸を添加した、塩酸サプロプテリンの経口投与による血中濃度の検討(その2) 上記試験例1の結果から、塩酸サプロプテリンに添加した場合の経口吸収改善効果は、L−酒石酸添加群が顕著なものであった。 そこで、塩酸サプロプテリンの投与量として、BH4反応性フェニルケトン尿症において臨床用量として検討されている10mg/kgとし、これにL−酒石酸を塩酸サプロプテリンに対して12.5倍重量相当(125mg/kg)を添加し、試験例1と同様にSD系雄性ラット(年齢:7週齢;体重:229〜267g;一群8匹)を使用し、サプロプテリンの経口投与による生体内吸収性の改善効果を検討した。 なお、対照コントロール群として、試験例1と同様に有機カルボン酸を添加しないで塩酸サプロプテリンと共に生理食塩水を添加した塩酸サプロプテリン単独投与群を置いた。 その結果をその図2及び図3に示した。 図2は、投与後0.5、1、2及び4時間におけるサプロプテリンの血中濃度の推移を示したものであるが、血中サプロプテリン濃度の推移は、コントロール群に比較して高濃度に維持されていた。 図3は、その時のAUC(area of under concentration)を示した図であるが、L−酒石酸との添加群は、コントロール群に比較してAUCは約2倍であり、明らかに、L−酒石酸の添加による生体利用率の改善効果が確認されていた。 以下に、上記試験例に基づいて、具体的な製剤例を説明するが、本発明はこれらの製剤例に限定されるものではない。製剤例1: 顆粒剤:常法により、次の組成からなる顆粒剤を調製した。 塩酸サプロプテリン 1部 D−マンニトール 8部 ポビドン 0.1部 低置換度ヒドロキシプロピルセルロース 0.5部 アスコルビン酸 0.05部 L−システイン塩酸塩 0.02部 L−酒石酸無水物 0.5〜2.5部 リボフラビン(着色剤) 微量製剤例2: 錠剤:常法により、次の組成からなる錠剤を調製した。 塩酸サプロプテリン 1部 乳糖 80部 コーンスターチ 20部 カルボキシプロピルセルロース 3部 アスコルビン酸 0.05部 L−システイン塩酸塩 0.02部 ステアリン酸マグネシウム 1部 L−酒石酸無水物 0.5〜2.5部 リボフラビン(着色剤) 微量製剤例3: カプセル剤:常法により、次の組成からなるカプセル剤を調製した。 塩酸サプロプテリン 1部 アビセル 5部 アスコルビン酸 0.05部 L−システイン塩酸塩 0.02部 ステアリン酸マグネシウム 0.05部 L−酒石酸無水物 0.5〜2.5部 リボフラビン(着色剤) 微量 以上記載したように、本発明は、医薬品添加物として承認されている複数のカルボキシル基を有する有機カルボン酸を添加することによって、サプロプテリンの生体利用率を大幅に改善した、安全の高い、塩酸サプロプテリン含有経口製剤が提供される。 本製剤を使用によって、経口投与時における、1〜2%と極めて悪い塩酸サプロプテリンの生体利用率を改善することができ、これまでの有効血中濃度を確保できる経口投与量を、ほぼ半減することが可能になった。 したがって、塩酸サプロプテリンについてその有効血中濃度を確保できる投与量を、ほぼ半減することが可能になることは、異型高フェニルアラニン血症患者における長期投与に対する安全性の面で極めて有効なものである。 また、サプロプテリン原薬の製造コストが高い現状の中で、より低薬価での薬剤の製造が期待され、その結果、循環器領域等の種々の新らたな適応症への開発や特定保健用食品としての開発が容易になり、その医療上及び健康維持上の貢献度は多大なものである。試験例1における、サプロプテリンの血中濃度の推移を示す図である。試験例2における、サプロプテリンの血中濃度の推移を示す図である。試験例2における、AUC(area of under concentration)を示した図である。 塩酸サプロプテリンに、分子内に複数のカルボキシル基を有する有機カルボン酸を添加して経口投与又は経口摂取することを特徴とする、塩酸サプロプテリンの生体利用率を改善させる方法。 分子内に複数のカルボキシル基を有する有機カルボン酸が、ジカルボン酸又はトリカルボン酸である請求項1に記載の塩酸サプロプテリンの生体利用率を改善させる方法。 分子内に複数のカルボキシル基を有する有機カルボン酸を単独又は2種以上の混合物として添加することを特徴とする請求項1に記載の塩酸サプロプテリンの生体利用率を改善させる方法。 分子内に複数のカルボキシル基を有する有機カルボン酸の添加量が、塩酸サプロプテリンに対して0.1〜100倍重量添加することを特徴とする請求項1、2又は3に記載の塩酸サプロプテリンの生体利用率を改善させる方法。 分子内に複数のカルボキシル基を有する有機カルボン酸が、酒石酸、クエン酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、アジピン酸、リンゴ酸、及びその光学活性体、ラセミ体、無水物、水和物、又はそれらの混合物から選択されるものである請求項1、2、3又は4に記載の塩酸サプロプテリンの生体利用率を改善させる方法。 分子内に複数のカルボキシル基を有する有機カルボン酸が、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、及びその光学活性体、ラセミ体、無水物、水和物、又はそれらの混合物から選択されるものである請求項1、2、3又は4に記載の塩酸サプロプテリンの生体利用率を改善させる方法。 塩酸サプロプテリンの経口投与又は経口摂取による生体利用率を向上させるための分子内に複数のカルボキシル基を有する有機カルボン酸からなる吸収促進剤。 分子内に複数のカルボキシル基を有する有機カルボン酸が、ジカルボン酸又はトリカルボン酸である請求項7に記載の吸収促進剤。 分子内に複数のカルボキシル基を有する有機カルボン酸が、酒石酸、クエン酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、アジピン酸、リンゴ酸、及びその光学活性体、ラセミ体、無水物、水和物、又はそれらの混合物から選択されるものである請求項7又は8に記載の吸収促進剤。 分子内に複数のカルボキシル基を有する有機カルボン酸が、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、及びその光学活性体、ラセミ体、無水物、水和物、又はそれらの混合物から選択されるものである請求項7又は8に記載の吸収促進剤。 塩酸サプロプテリンと、分子内に複数のカルボキシル基を有する有機カルボン酸からなる吸収促進剤とを含有することを特徴とする、塩酸サプロプテリンの生体利用率を改善させた製剤。 分子内に複数のカルボキシル基を有する有機カルボン酸の添加量が、塩酸サプロプテリンに対して0.1〜100倍重量であることを特徴とする請求項11に記載の塩酸サプロプテリンの生体利用率を改善させた製剤。 分子内に複数のカルボキシル基を有する有機カルボン酸が、酒石酸、クエン酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、アジピン酸、リンゴ酸、及びその光学活性体、ラセミ体、無水物、水和物、又はそれらの混合物から選択されるものである請求項11又は12に記載の塩酸サプロプテリンの生体利用率を改善させた製剤。 分子内に複数のカルボキシル基を有する有機カルボン酸が、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、及びその光学活性体、ラセミ体、無水物、水和物、又はそれらの混合物から選択されるものである請求項11又は12に記載の塩酸サプロプテリンの生体利用率を改善させた製剤。 剤型が錠剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤又はソフトカプセル剤である請求項11ないし14のいずれかに記載の製剤。 BH4反応性高フェニルアラニン血症の治療薬として使用されている塩酸サプロプテリンの経口投与時における生体利用率を大幅に改善する方法、及び生体内利用率を改善した経口投与製剤又は経口摂取製剤を提供することであり、塩酸サプロプテリンと、分子内に複数のカルボキシル基を有する有機カルボン酸からなる吸収促進剤とを含有することを特徴とする、塩酸サプロプテリンの生体利用率を改善させた製剤であり、分子内に複数のカルボキシル基を有する有機カルボン酸が酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、及びその光学活性体、ラセミ体、無水物、水和物、又はそれらの混合物から選択されるものであり、その添加量が、塩酸サプロプテリンに対して0.1〜100倍重量である塩酸サプロプテリンの生体利用率を改善させた製剤である。