タイトル: | 公開特許公報(A)_プロスタグランジン水性点眼剤 |
出願番号: | 2006309334 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | A61K 31/5575,A61K 47/10,A61K 47/32,A61K 47/34,A61P 27/06 |
上竹 順久 末石 俊彦 田中 薫 JP 2008120764 公開特許公報(A) 20080529 2006309334 20061115 プロスタグランジン水性点眼剤 株式会社日本点眼薬研究所 391009523 飯田 昭夫 100076473 上竹 順久 末石 俊彦 田中 薫 A61K 31/5575 20060101AFI20080502BHJP A61K 47/10 20060101ALI20080502BHJP A61K 47/32 20060101ALI20080502BHJP A61K 47/34 20060101ALI20080502BHJP A61P 27/06 20060101ALI20080502BHJP JPA61K31/5575A61K47/10A61K47/32A61K47/34A61P27/06 13 OL 17 4C076 4C086 4C076AA12 4C076BB24 4C076CC10 4C076DD37E 4C076EE16Q 4C076EE23Q 4C086AA01 4C086DA02 4C086MA02 4C086MA05 4C086MA17 4C086MA58 4C086NA03 4C086ZA33 本発明は、プロスタグランジン類(プロスタグランジン類化合物及びそれらの誘導体を含む。)を有効成分(主剤)として含有する水性点眼剤に関する。 ここでは、プロスタグランジン類として、代表的なラタノプロスト及びイソプロピルウノプロストンを例に採り説明するが、これらに限定されるものではない。 なお、「ラタノプロスト」の化学名は、「イソプロピル-(Z)-7[(1R,2R,3R,5S)3,5-ジヒドロキシ-2-[(3R)-3-ヒドロキシ-5-フェニルペンチル]シクロペンチル]-5-ヘプタノエート」である。 「イソプロピルウノプロストン」の化学名は、「(+)-イソプロピル(Z)-7[(1R,2R,3R,5S)-3,5-ジヒドロキシ-2-(3-オキソデシル)シクロペンチル]ヘプタ-5-エノエート」である。 ラタノプロスト及びイソプロピルウノプロストンは、房水の流出を促進させることにより眼圧低化させる薬効を有するプロスタグランジン類化合物及びそれらの誘導体である緑内障治療薬である点において共通する。 プロスタグランジン系の緑内障治療薬は、低い水溶性を有し、そして一般に不安定(経時的に熱・光・酸化分解する。)であり、容器に吸着しやすい性質を有していることは公知である。 これらの問題を解決するために、種々の方法が提案されている。例えば、 1)特許文献1には、ポリエトキシ化ひまし油を可溶化剤として化学的安定性を改善する方法が、 2)特許文献2には、PEG−2〜PEG−200ヒマシ油;およびPEG−5〜PEG−200水素化ヒマシ油などの界面活性剤を用いて可溶化し、ポリプロピレン容器に充填する方法が、 3)特許文献3には、非イオン性界面活性剤と酸化防止剤を配合し、溶解性の向上と分解防止、容器への吸着を抑制する方法が、 4)特許文献4には、炭素数12の塩化ベンゼトニウムを含有し、界面活性剤及び/あるいは非イオン性等張化を用いる方法が、 5)特許文献5には、pHを5.0〜6.25あるいはε-アミノカプロン酸を添加することにより室温保存可能とする方法が、 それぞれ提案されている。 上記の如く、従来から、界面活性剤が可溶化剤あるいは容器への吸着防止を目的として配合されている。他方、一部の界面活性剤は角膜上皮障害の原因となることが公知である。 また、水性点眼剤は使用中の微生物(細菌)汚染を防止するという安全性の観点から、ほとんどの点眼剤には防腐剤が添加されている。他方、防腐剤は、界面活性剤と同様、角膜上皮障害の原因となることが公知である。 そして、緑内障治療は長期に渡り点眼服用する必要があり障害が現れやすいという問題点があった。 また、後述するように、通常、点眼液(点眼剤)は容器に収容され、滴下して使用するが、この際、滴下された体積分減少し、空気を吸い込み置換される。この空気の吸い込みにより、ラタノプロストやイソプロピルウノプロストンは酸化劣化され易くなる。この問題についての報告及び改善案については、本発明者ら寡聞にして知らない。 なお、本願出願人らは、無菌点眼容器である積層剥離容器を、特許文献6・7等で提案している。特表平11−500122号公報(要約等)特表2002−523068号公報(請求項1・5等)特開2002−161037号公報(要約等)特開2004−123729号公報(要約等)特開2004−182719号公報(要約等)特開2002−80055号公報(要約等)特開2004−262470号公報(要約等) 本発明は、上記にかんがみて、プロスタグランジン水性点眼剤において、界面活性剤を用いないで、プロスタグランジン類の水に対する溶解性を向上させること、水溶液中での分解を抑制することを課題とする。 本発明の他の課題は、充填後のプラスチック容器への吸着を抑制することができるプロスタグランジン水性点眼剤を提供することにある。 本発明のさらに他の課題は、防腐剤レスタイプとすることができるプロスタグランジン水性点眼剤を提供することにある。 本発明者らは種々の検討を行った結果、特定アルコール類を用いることにより実用上、有効成分であるプロスタグランジン類が、十分な溶解性並びに水溶液中における分解を抑制する作用・効果を知見して、さらには、界面活性剤レスタイプとすることによりプラスチック容器に対する主剤の吸着が抑制されることを知見して本発明の一つに想到した。 また、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールの群から非イオン性水溶性ポリマーから選択される1種又は2種以上を配合することによって、プラスチック容器に対する主剤の吸着を更に抑制できることを見出し、本発明の他の一つに想到した。 さらに、これらの水性点眼剤を、無菌状態を確保しうる無菌点眼容器に充填すれば、防腐剤レス化可能となることに着眼して、本発明のさらに他の一つに想到した。 上記一群の本発明の各構成は、下記の如くになる。 プロスタグランジン類化合物及びそれらの誘導体を有効成分(主剤)として含有する水性点眼剤であって、 主剤の溶解助剤兼安定剤(副剤)として、炭素数1〜4の1価アルコール類を含有することを特徴とする。 上記構成において、前記主剤を、ラタノプロスト又はイソプロピルウノプロストンとすることができる。 上記構成において、プラスチック容器に対する主剤の吸着抑制剤(副剤)として、さらに、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、固体ポリエチレングリコール(固体PEG)の群から選択される非イオン性水溶性ポリマーの1種又は2種以上を組み合わせて含有させることができる。 本発明の各構成を、組成的に表わすと、下記のようになる。 プロスタグランジン類化合物及びそれらの誘導体を有効成分(主剤)として含有する水性点眼剤であって、 前記有効成分の含有量が、0.0010〜0.20%(W/V)であり、 炭素数1〜4の1価アルコール類を、全体含有量:0.050〜10%(W/V)、かつ、前記有効成分1.0質量部に対する配合比:0.25〜10000質量部の組成で含有する構成となる。 前記有効成分が、ラタノプロスト又はイソプロピルウノプロストンとする。 また、副剤として、さらに、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、固体ポリエチレングリコール(固体PEG)の非イオン性水溶性ポリマーの群から選択される1種又は2種以上を、全体含有量:0.010〜2.5%(W/V)、前記有効成分1.0質量部に対する配合比0.050〜2500質量部の組成で含有する構成となる。 上記1価アルコール類としては、エタノール又はイソプロピルアルコールを使用でき、上記PVPとしては、K値(粘性特性値):12〜100の範囲にあるものを、上記PVAとしては、ケン化度:70〜98mol%の範囲にあるものを、上記固体PEGとしては、数平均分子量(Mn):900〜10000の範囲にあるものを、それぞれ使用できる。 さらに、上記各構成の水性点眼剤は、防腐剤又は界面活性剤の含有量を、0%(W/V)又は角膜上皮障害を発生させない量以下とすることができる。 また、上記各構成の水性点眼剤は、開栓後も薬液を無菌状態に確保しうる無菌点眼容器に充填したものとすることができ、当該無菌点眼容器としては、外層の内面に該外層から剥離可能な内層を積層形成してなる積層剥離容器と、該積層剥離容器の口部に取り付けられた栓体とを備え、前記外層には、内層と外層との間に外気を導入する為の通気孔が設けられ、前記内層の内部の収容された点眼液を吐出するための吐出路が設けられ、該吐出路にフィルターと逆止弁が設けられている構成のものとすることができる。 以下、本発明のプロスタグランジン水性点眼剤について、さらに詳細を説明する。以下の説明で、濃度を示す「%」は、特に断らない限り「%(W/V)」(質量(g)/容量(mL)百分率」を意味する。また、配合部数を示す「部」は質量部を意味する。 本発明の水性点眼剤は、プロスタグランジン類化合物及びそれらの誘導体を有効成分(主剤)とすることを前提とする。 ここでは、有効成分が、ラタノプロスト又はイソプロピルウノプロストンである。 該有効成分(ラタノプロスト又はイソプロピルウノプロストン)の濃度は、例えば、約0.0010〜0.20%とし、特に臨床用量である約0.0050〜0.12%が好ましい。 (1)本発明の水性点眼剤は、副剤(溶解助剤兼化学安定剤)として、炭素数1〜4の1価アルコール類を含有することを一の特徴的構成とする。 炭素数1〜4の1価アルコール類としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等が例示できる。これらの内で、眼刺激性が相対的に低いエタノール、イソプロパノールが好ましい。 1価アルコール類の含有量(配合量)は、有効成分(ラタノプロスト又はイソプロピルウノプロストン)を安定溶解させる作用を奏する量であり、具体的含有量は、有効成分の種類・濃度により若干変動する。 例えば、有効成分の含有量が約0.0010〜0.20%の場合、1価アルコール類を、全体含有量:約0.050〜10.0%、前記有効成分1.0部に対する配合比約0.25〜10000部の組成で含有させることが好ましい。 有効成分の含有量が好ましい約0.0050〜0.12%の場合、1価アルコール類を、全体含有量:約0.20〜1.0%、かつ、前記有効成分1.0部に対する配合比約1.7〜200部の組成で含有させることが好ましい。 1価アルコール類が、過少では、プロスタグランジン類を溶解し難く、過多では、溶解作用の増大がそれ以上望めないとともに、眼刺激が発生し易くなる。 (2)本発明の水性点眼剤は、さらに、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、固体ポリエチレングリコール(固体PEG)の群から選択される非イオン性水溶性ポリマーを、プラスチック容器に対する主剤の吸着抑制剤として、含有させることを他の特徴的構成とする。 非イオン性水溶性ポリマーとしての分子量は、水溶性ポリマーの種類により異なる。 たとえば、PVPの場合、市販されているK値(粘性特性値):約12〜100、さらには、約25〜90の範囲から適宜選定することが好ましい。具体的には、PVPK−15、PVPK−17、PVPK−25、PVPK−30、PVPK−60、PVPK−90のグレード(等級)で各社から上市されているものを使用できる。 ここで「K値」とは、分子量と相関する粘性特性値で、毛管粘度計により相対粘度値(25℃)を下記Fikentscherの式に適用して計算されるものである。 PVAの場合、ケン化度:約70〜98mol%、更には約78〜96mol%の範囲にあるものから適宜選定することが好ましい。 固体PEGの場合、数平均分子量(Mn)約900〜10000、さらには、約2600〜9300の範囲にあるもののうちから適宜選定することが好ましい。具体的には、「PEG1000、PEG1540、PEG4000、PEG6000」のグレードで各社から上市されているものを使用可能である。 ここで、吸着抑制剤をプラスチック容器に対するものとするのは、後述の少なくとも内容器収縮型の積層剥離容器とするためには内容器を可撓性プラスチックで成形する必要があるためである。 これら水溶性ポリマーの含有量は、有効成分の種類・濃度により変動し、プラスチック容器に対する吸着抑止作用を奏する最低量とする。 例えば、有効成分の含有量が約0.0010〜0.20%の場合、前記水溶性ポリマーを、全体含有量:約0.010〜2.5%、かつ、有効成分1.0部に対する配合比約0.050〜2500部の組成で含有させることが好ましい。 有効成分の含有量が好ましい約0.0050〜0.12%の場合、水溶性ポリマーを全体含有量:約0.10〜2.0%、かつ、有効成分1.0部に対する配合比約0.83〜400部の組成で含有させることが好ましい。 ここで、上記水溶性ポリマーの含有量が過少では、プラスチック容器に対する吸着抑制効果は認められず、過多では高粘度となり、点眼液(点眼剤)の滴下性等において実用使用が困難となる。 本発明の水性点眼剤は、上記のような構成とすることで、十分な溶解性及び化学安定性(熱・光・酸化劣化に対する。)を確保でき、さらには、プラスチック容器への吸着を抑制することができる。 点眼薬の場合、眼刺激性を抑えるために浸透圧、pH調整剤等を配合するが、本発明では公知の製剤学上の技術を用いて調製することができる。 例えば、浸透圧調整剤としては、プロピレングリコール、グリセリン、アミノエチルスルホン酸、ソルビトール、マンニトール、クレアチニン、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウムなどを挙げることができる。 pH調整剤としては、塩酸、硫酸、酢酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、リン酸、ホウ酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、モノエタノールアミン、トロメタモール(tris(hydroxymethyl)aminomethane)、ジエチルアミン、アンモニア及びこれらの塩類などを挙げることができる。 そして、本発明のプロスタグランジン水性点眼剤は、上記アルコール類を含有させる構成により、下記化学安定剤・防腐剤・界面活性剤の含有量を実質的に含ませない処方(含有量:0%)とすることが可能となる。しかし、下記化学安定剤・防腐剤・界面活性剤を適宜、少量併用してもよい。このとき、防腐剤及び界面活性剤の含有量は、角膜上皮障害を発生させない量以下とする必要がある。 1)安定剤:エデト酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ジブチルヒドロキシトルエン、トコフェロールなどを挙げることができる。 2)防腐剤として、パラオキシ安息香酸エステル、クロロブタノール、フェニルエチルアルコール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、アルキルポリアミノエチルグリシン類、ソルビン酸、など。 3)界面活性剤:塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム等の第4級アミン系界面活性剤やポリオキシエチレン高級アルコールエーテル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、グリセリン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸ポリエチレングリコール、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等の非イオン性界面活性剤類、など。 本発明の上記構成のプロスタグランジン水性点眼剤は、開栓後も薬液を無菌状態に確保しうる無菌点眼容器に充填した容器充填点眼剤として使用することが好ましい。 当該構成とすることにより、通常、配合されている角膜上皮障害性の防腐剤を含有させない処方(製剤)が可能となる。角膜上皮障害性の防腐剤とは、患者の使用時に点眼容器のノズルが眼球や涙液に接触して、細菌や真菌が点眼容器内の薬液を汚染することを防止することを目的として配合されものである、例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコールやパラオキシ安息香酸エステル類を挙げることができる。 上記無菌点眼容器としては、本願出願人らが先に提案した前記特許文献6・7に示されたような記載の構造を備えたものが好ましい。 一例として、特許文献6に示され無菌点眼容器を図1に示す。 当該無菌点眼容器は、外層11の内面に該外層11から剥離可能な内層13を積層形成してなる積層剥離容器(容器本体)15と、該容器本体15の口部に取り付けられた栓体17とを備え、前記外層11には、内層13と外層11との間に外気を導入する為の通気孔19が設けられ、前記内層13の内部の収容された点眼液を吐出するための吐出路21が設けられ、該吐出路21にフィルター23と逆止弁25が設けられている。なお、27はねじ式保護キャップである。 ここでフィルター23は、細菌(菌の幅:0.2〜10μm)が通過できない細孔(例えば、0.2μm以下)を有するものを使用することが好ましい。 さらに、この容器の特徴として、点眼時、内容液を吐出すると、容器内に残存する内容液の容積はその吐出容積だけ小さくなり、積層剥離容器の剥離可能な内層が外層より剥離し、容積変化に合わせて縮小するため、吐出路からの内容液に接する空気の吸い込みがない。この結果、酸化劣化が発生せず、本発明の点眼剤に対して積層剥離容器の使用が、大きく有効成分の化学的安定性を改善される。 本発明の効果を確認するために行った実施例及び比較例について説明する。 本発明の技術的範囲は、以下の実施例に限定されるものでなく、各請求項の記載の範囲内で種々の態様に及ぶものである。 <溶解度測定試験> 表1の処方で各成分を量りとり、精製水を加え全量100mLとして水溶液を調製した。 そして、25℃で3日間放置したのち、遠心分離機を用いて3000rpm 5分間遠心し、水相中の有効成分(主剤)の濃度をHPLC(高速液体クロマトグラフィー:high precission liquid chromatography)にて測定し、溶解度を算出した。HPLCは、市販のODSカラム(固定相:シリカゲルにC18を結合させた化学結合充填剤)を使用した。 溶解度測定結果を表2に示す。 比較例1・2の場合、精製水に対する溶解度は約0.0001%前後以下でほとんど溶解しないが、アルコールを配合した実施例1〜4は約100倍以上の溶解性を示した。また、アルコールの配合量が多くなるほど溶解性を増大し、第4級カチオン性界面活性剤や非イオン性界面活性剤を実質的に必要としない溶解性であることが判明した。<温度安定性試験1> 表3の処方で各成分を量りとり精製水で全量100mLとして調製し、ガラス製バイアルに充填した。 そして60℃で4週間保存し、残存量を、HPLCを用いて測定した。 残存率は次式を用いて算出した。 残存率(%)=測定値/初期値×100 温度安定性(残存率)の試験結果を図2及び表4に示す。 実施例5〜7は、4週間後においても約80%以上の残存率であった。一方比較例5・6は大きく残存率が低下した。このことから、第4級カチオン性界面活性剤や非イオン性界面活性剤を用いた場合に比して、エタノール(1価アルコール)の配合によって化学的に安定化されていることが判明した。なお配合量が多いほど安定化に寄与することが示された。<温度安定性試験2> 表5の処方で各成分を量りとり、1N塩酸を加えpHを6.5に調製した後、精製水を加え全量100mLとして水溶液を調製しガラス製バイアル(vial)に充填した。 そして、60℃で4週間保存し、残存量を、HPLCを用いて測定した。 残存率は次式を用いて算出した。 残存率(%)=測定値/初期値×100 温度安定性(残存率)の試験結果を図3及び表6に示す。 各実施例は、何れも、エタノール(1価アルコール)の濃度に依存して化学的安定性が改善された。比較例は、何れも、残存率が低く、また、塩化ベンザルコニウムの濃度を増やしても安定性に変化なかった。<吸着試験1> 表7の処方で各成分を量りとり、精製水を加え全量100mL(pH6.5)として水溶液を調製しラタノプロストあるいはイソプロピルウノプロストン濃度をHPLCを用いて測定した。この液をポリプロピレン製、ポリエチレン製、PET製、ガラスアンプルの4種類の容器に充填し密封した。 各容器に充填後、蓋をして密閉し40℃の温度条件下14日後、各溶液中のラタノプロストあるいはイソプロピルウノプロストン量を測定し、以下の式に従い吸着率を求めた。 吸着率(%)=(調整直後の主剤濃度−14日保存後の薬物濃度濃度)/調整直後の薬物濃度×100 これらの吸着試験の結果を表8に示す。 ガラス容器を用いた場合約1%程度の吸着であり、各実施例、比較例ともに差は認められなかったが、プラスチック容器に対する吸着率について、実施例と比較例で差が認められた。比較例では約10〜13%の吸着率であったが、本実施例では約4〜6%と吸着率を1/2に抑制することができた。このことから、エタノールは、界面活性剤レスにする処方となり、プラスチックに対する吸着抑制にも働くことが判った。<吸着試験2> 表9の処方で各成分を量りとり、精製水を加え全量100mL(pH6.5)として水溶液を調製しラタノプロスト濃度をHPLCを用いて測定した。この液をポリプロピレン製、ポリエチレン製、PET製、ガラスアンプルの4種類の容器に充填し密封した。 各容器に充填後、蓋をして密閉し40℃の温度条件下14日後、各溶液中のラタノプロスト量を測定し、以下の式に従い吸着率を求めた。 吸着率(%)=(調製直後の主剤濃度−14日保存後の薬物濃度濃度)/調製直後の薬物濃度×100 これらの吸着試験の結果を表10に示す。 実施例15〜18におけるプラスチック容器への吸着率は、約1%以下となり、先の実施例12〜14の結果(吸着率約4〜6%)と比較して更に約1/2の吸着抑制効果を示した。<無菌容器を用いた安定性試験> 表11の処方で各成分を量りとり、1N塩酸を加えpHを6.5に調製した後、精製水を加え全量100mLとして水溶液を調製した。 実施例20は、当該無菌容器に充填した。比較例13はポリプロピレン製点眼容器に充填した。充填直後のラタノプロスト濃度を測定し初期値とした。その後室温にて保存し、1週間に1回1滴滴下したのちキャップを閉め再度保存した。8週間後の残存液中のラタノプロスト濃度を、HPLCを用いて測定した。 残存率は次式を用いて算出した。 残存率(%)=測定値/初期値×100 試験結果を表12に示す。 実施例20で用いた当該無菌容器は空気の吸い込みがないため主剤の分解が抑えられたが、比較例13で用いた一般的な点眼容器は、液を滴下すると空気の流入(混入)が起きるため安定性が低下したものと考えられる。<眼刺激性試験> 表13の処方で各成分を量りとり、1N塩酸を加えpHを6.5に調製した後、精製水を加え全量100mLとして水溶液(水性点眼剤)を調製した。 健常人(パネラー)20名を対象に眼刺激性試験を実施した。方法は、被験者の片眼に上記で調製した各実施例試料及び対照比較例試料の試験液を1滴づつ点眼し、そのときの刺激性と結膜の充血による発赤を下記4段階で評価し、スコア化し、平均値で比較した。 刺激性なし :0点 弱い刺激性あり:1点 刺激性あり :2点 強い刺激性あり:3点 それらの結果を表12示す。 各実施例試料は極めて刺激係数及び充血の度合いが低いことがわかる。無菌点眼容器の一例を示す断面図である。温度安定性試験1における有効成分残存率の経時変化を示すグラフ図である。温度安定性試験2における有効成分残存率の経時変化を示すグラフ図である。符号の説明 11 積層剥離容器の外層 13 積層剥離容器の内層 15 積層剥離容器(容器本体) 17 栓体 27 保護キャップ プロスタグランジン類化合物及びそれらの誘導体を有効成分(主剤)として含有する水性点眼剤であって、 前記有効成分の溶解助剤兼化学安定化剤(副剤)として、炭素数1〜4の1価アルコール類を含有することを特徴とするプロスタグランジン水性点眼剤。 前記有効成分がラタノプロスト又はイソプロピルウノプロストンであることを特徴とする請求項1記載のプロスタグランジン水性点眼剤。 プラスチック容器に対する有効成分の吸着抑制剤(副剤)として、さらに、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、固体ポリエチレングリコール(固体PEG)の群から選択される非イオン性水溶性ポリマーの1種又は2種以上を組み合わせて含有してなることを特徴とする請求項1又は2記載のプロスタグランジン水性点眼剤。 プロスタグランジン類化合物及びそれらの誘導体を有効成分(主剤)として含有する水性点眼剤であって、 前記有効成分の含有量が、0.0010〜0.20%(W/V)であり、 炭素数1〜4の1価アルコール類を、全体含有量:0.050〜10%(W/V)、かつ、前記有効成分1.0質量部に対する配合比:0.25〜10000質量部の組成で含有することを特徴とするプロスタグランジン水性点眼剤。 前記有効成分が、ラタノプロスト又はイソプロピルウノプロストンであることを特徴とする請求項4記載のプロスタグランジン水性点眼剤。 さらに、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、固体ポリエチレングリコール(固体PEG)の群から選択される非イオン性水溶性ポリマーの1種又は2種以上を、全体含有量:0.010〜2.5%(W/V)、かつ、前記主剤1.0質量部に対する配合比0.050〜2500質量部の組成で含有することを特徴とする請求項5記載のプロスタグランジン水性点眼剤。 前記1価アルコール類がエタノール又はイソプロピルアルコールである請求項1〜6のいずれかに記載のプロスタグランジン水性点眼剤。 前記PVPが、K値(粘性特性値):12〜100の範囲にあることを特徴とする請求項3又は6記載のプロスタグランジン水性点眼剤。 前記PVAが、ケン化度:70〜98mol%の範囲にあることを特徴とする請求項3又は6記載のプロスタグランジン水性点眼剤。 前記固体PEGが、数平均分子量(Mn):900〜10000の範囲にあることを特徴とする請求項3又は6記載のプロスタグランジン水性点眼剤。 防腐剤又は界面活性剤の含有量が、0%(W/V)又は角膜上皮障害を発生させない量以下であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のプロスタグランジン水性点眼剤。 開栓後も薬液を無菌状態に確保しうる無菌点眼容器に充填されていることを特徴とする請求項11記載のプロスタグランジン水性点眼剤。 前記無菌点眼容器が、外層の内面に該外層から剥離可能な内層を積層形成してなる積層剥離容器と、該積層剥離容器の口部に取り付けられた栓体とを備え、前記外層には、内層と外層との間に外気を導入するための通気孔が設けられ、前記内層の内部の収容された点眼剤を吐出するための吐出路が設けられ、該吐出路にフィルターと逆止弁が設けられている構成であることを特徴とする請求項12記載のプロスタグランジン水性点眼剤。 【課題】プロスタグランジン水性点眼剤において、界面活性剤を用いないで、ラタノプロスト、イソプロピルウノプロストン等のプロスタグランジン類の水に対する溶解性を向上させること。【解決手段】プロスタグランジン類化合物及びそれらの誘導体を有効成分として含有する水性点眼剤。有効成分の溶解助剤兼化学的安定化剤として、炭素数が1〜4の1価アルコール類を含有する。【選択図】なし