タイトル: | 公開特許公報(A)_口臭の判定方法 |
出願番号: | 2006302413 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | G01N 33/497 |
矢吹 雅之 田添 由起 JP 2008116418 公開特許公報(A) 20080522 2006302413 20061108 口臭の判定方法 花王株式会社 000000918 特許業務法人アルガ特許事務所 110000084 有賀 三幸 100068700 高野 登志雄 100077562 中嶋 俊夫 100096736 村田 正樹 100117156 山本 博人 100111028 的場 ひろみ 100101317 守屋 嘉高 100121153 大野 詩木 100134935 松田 政広 100130683 野中 信宏 100140497 矢吹 雅之 田添 由起 G01N 33/497 20060101AFI20080425BHJP JPG01N33/497 B 3 OL 9 2G045 2G045CB06 2G045CB07 2G045FB06 2G045GC12 本発明は、口臭の判定方法に関する。 近年、エチケット意識の高まりに伴い、体臭を気にする人が増えている。体臭は全身の様々な部位から発生しているが、それらの中でも口臭はそばに居る人に感知されやすいため、自己あるいは他人の口臭を気にする人が特に増えている。一方、口臭は自分では判別しくにいため、自己の口臭がどの程度あるのかということは重要な関心事である。 従来、口臭の程度を知る方法としては、例えば、呼気を官能評価する方法がある。しかしながら、官能評価による方法は、嗅覚の疲労等による評価値のバラツキがあり、またコンディションをまったく同一にして評価することが困難であるため、客観的な評価とは言いにくい。また悪臭を連続して嗅ぐ作業は評価者にとって精神的な苦痛を伴う。従って、口臭の程度を正確に知りたい場面において、客観的かつ正確な評価を簡易に得ることができる手法の開発が望まれていた。 口臭の原因物質としては、スカトール、インドール等の含窒素化合物、硫化水素、メチルメルカプタン等の含硫黄化合物、フェノール化合物等が知られており、それらの量が多くなると口臭が強くなることがわかっている。そして、スカトール等の物質を指標物質として口臭、口腔衛生状態を判定することが提案されている(特許文献1,2参照)。 そこで、前記悪臭物質を分析機器等で定量することで口臭の程度を評価する方法がある。このような評価方法では、定量値が得られるため、客観的な評価が可能であるが、口臭の原因となる上記の悪臭物質の唾液中における濃度は低く、現状では検出が困難な場合が多い。また呼気のサンプリングを再現性良く行うことは困難であることが多い。更に上記の悪臭物質の呼気中の濃度はコンディションによって変化しやすいため、普段の口臭の程度を正確に測定できない場合も多い。従って、容易かつ再現性良くサンプリングでき、客観的かつ容易に口臭を評価できる手法の開発が望まれていた。 一方、インドール-3-酢酸は植物の成長ホルモンとして知られているが、ヒトの口臭を判定するための指標物質として好適であることはこれまで知られていなかった。特開2004-205496号公報特開2005-185236号公報 本発明は、口腔内に存在し、口臭の指標となり得る物質を検出することで、口臭の強さを簡易に判定し、客観的かつ定量的な評価を行うことができ、また口臭抑制剤の探索にも利用可能な方法を提供することを目的とする。 本発明者らはヒトの口腔内におけるインドール-3-酢酸の存在量は口臭の強さと関連が高く、当該物質が口臭の指標物質となり得ることを見出した。また、口腔内のインドール-3-酢酸は、容易かつ再現性良くサンプリングでき、客観的かつ容易に口臭を定量評価するための指標物質となり得ることを見出した。 本発明は、式(1)で表されるインドール-3-酢酸の口臭指標物質としての使用を提供するものである。 また本発明は、インドール-3-酢酸を指標物質とする口臭の判定方法を提供するものである。 更に本発明は、インドール-3-酢酸を指標物質とする口臭抑制剤のスクリーニング方法を提供するものである。 本発明によれば、口腔内に存在するインドール-3-酢酸の存在量を基にして、口臭の強さを客観的かつ定量的に評価することができる。 インドール-3-酢酸には下記(イ)〜(ハ)の特徴がある。(イ)インドール-3-酢酸は、ヒトの口腔内に存在し、通常、ヒトの唾液中に含まれる物質である。(ロ)口腔中のインドール-3-酢酸の存在量は、分析機器等で検出するために必要な濃度レベルより高く、分析機器による定量が容易である。(ハ)唾液中のインドール-3-酢酸の濃度は、口臭の強い人ほど高くなる傾向がある。 本発明に係る口臭の判定方法は、まず化学的、物理的、生物学的等の様々な分析手法によってインドール-3-酢酸の口腔内における存在量を解析し、その結果に基づいて口臭の強さを判定することにより実施される。例えば、口腔から採取した試料を機器分析に供してこれに含まれるインドール-3-酢酸を定量し、その量や濃度を元に口臭の強さを判定することができる。 本発明に係る口臭抑制剤のスクリーニング方法は、インドール酢酸を指標として口臭抑制剤の有効性を評価する方法である。例えば、口臭抑制作用が期待される薬剤を含む歯磨き剤や洗口剤を使用する前後における口腔内のインドール酢酸量の変化を比較することで口臭抑制剤としての有効性を評価することができる。 インドール-3-酢酸の定量に供される口腔から採取される試料としては、唾液、舌苔等が挙げられる。口腔内から試料を採取する方法としては、水を口にふくみ、ゆすいだ後、水を吐き出すことで、唾液や舌苔を含んだ洗口液として採取する方法、脱脂綿等を口に入れ、脱脂綿に唾液や舌苔を含ませて採取する方法等が挙げられ、これらの方法は1つ又は2つ以上を組み合わせて適用することもできる。 本発明においては、インドール-3-酢酸を定量し易くするために、インドール-3-酢酸と、それ以外の物質との化学的諸性質の違い等を利用して、口腔内から採取した試料に対して様々な精製・濃縮手段を講じることもできる。 また、本発明におけるインドール-3-酢酸を指標物質とする口臭の強さの評価は、インドール-3-酢酸そのものを定量することによって実施可能であるほか、当該物質の誘導体を定量することによっても実施できる。また、インドール-3-酢酸そのものとその誘導体の両方を定量することによっても実施できる。 本発明においては、市販のインドール-3-酢酸や別途合成した標準品を標準物質(スタンダード)として利用することもできる。口腔内から採取した試料中のインドール-3-酢酸の量を定性的及び/又は定量的に分析する方法は特に限定されないが、例えば、クロマトグラフィー法による分離分析と質量分析計や可視又は紫外線分光光度計等の組み合わせを利用する方法が挙げられる。 クロマトグラフィー法による分離分析装置を利用して口腔内から採取した試料中にインドール-3-酢酸が含まれているかどうかを定性的に解析する場合、並びに、それらの存在量を定量的に解析する場合には、分析における選択性及び検出感度の向上を目的として、インドール-3-酢酸に対して、特に官能基の部分に化学修飾を施し、化学修飾体として定量することもできる。また、インドール-3-酢酸とその化学修飾体との両方を定量することもできる。 インドール-3-酢酸を液体クロマトグラフィーにおいて定量する際には、例えば、口腔内から採取した試料に化学修飾を施すための試薬(化学修飾試薬)を添加して反応させ、インドール-3-酢酸に化学修飾を施した後、これをクロマトグラフィー法により分離し、可視/紫外線分光光度計にて定量することもできる(プレカラム修飾法)。また口腔内から採取した試料に含まれるインドール-3-酢酸をクロマトグラフィー法により分離した後、化学修飾試薬を添加し、化学修飾されたインドール-3-酢酸を定量することもできる(ポストカラム修飾法)。更に、プレカラム修飾法とポストカラム修飾法とを組み合わせて適用することもできる。 インドール-3-酢酸に化学修飾を施す方法としては、特に限定されないが、例えば、液体クロマトグラフィー法においては、インドール-3-酢酸に含まれる官能基に対して、検出感度を向上させる発色団(可視・紫外吸収領域に吸収を持つ化合物や蛍光を発する形質を有する化合物など)を導入する方法、化学発光、電気化学活性などを利用する方法等を挙げることができる。ガスクロマトグラフィー法においては、与えられた温度内で気化可能な化合物に誘導する方法等を挙げることもできる。 例えば、インドール-3-酢酸のカルボキシル基に発色団(可視及び/又は紫外吸収)を導入するために利用可能な試薬としては、p-ブロモフェナシルブロミド、フェナシルブロミド、ナフタシルブロミド、p-ニトロフェナシルブロミド、1-(4-ヒドロキシフェニル)-2-ブロモエタノン(4-HBE)、N-クロロメチルフタルイミド(CIMPI)、N-クロロメチル-4-ニトロフタルイミド(CIMNPI)、N-クロロメチルイサチン(CIMIS)、O-p-ニトロベンジル-N,N'-ジイソプロピルイソ尿素(p-NBDI)、2-ニトロフェニルヒドラジン、o-フェニレンジアミン、二クロム酸ピリジニウム、2-メチルキノキサノール誘導体、イミダゾール等を例示することができる。 また、カルボキシル基に発色団(蛍光)を導入するために利用可能な試薬としては、4-ブロモメチル-7-メトキシクマリン(Br-Mmc)、4-ブロモメチル-6,7-ジメトキシクマリン(Br-Mdmc)、4-ブロモメチル-7-アセトキシクマリン(Br-Mac)、4-ジアゾメチル-7-メトキシクマリン、N,N'-ジシクロヘキシル-O-(7-メトキシクマリン-4-イル)メチルイソ尿素、N,N'-ジイソプロピル-O-(7-メトキシクマリン-4-イル)メチルイソ尿素、9-ブロモメチルアクリジン、3-ブロモメチル-6,7-ジメトキシ-1-メチル-2(1H)-キノキサリン、ナフタシルブロミド(2-ブロモアセトナフトン)、p-(アントロイルオキシ)フェナシルブロミド(パナシルブロミド)、1-ブロモアセチルピレン、9-クロロメチルアントラセン、9-アントリルジアゾメタン(ADAM)等を例示することができる。 更にインドール-3-酢酸のカルボキシル基を塩化オキサリル、N-エチル-N'-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、N,N'-カルボニルジイミダゾール、2-ブロモ-1-メチルピリジニウムヨージド等の試薬によって活性化した後、アルコールやアミンと反応させて蛍光ラベル化する方法等を挙げることもできる。 例えば、インドール-3-酢酸に塩化オキサリルを作用して酸クロリドとし、これにトリエチルアミンの存在下、9-アミノフェナントレン、又は1-ナフチルアミンと反応させると、強い蛍光を発するアミド化合物に誘導することができる。活性化したカルボン酸の蛍光ラベル化に適当なアルコールとしては、9-ヒドロキシメチルアントラセン、2-ダンシルアミノエタノール、4-ヒドロキシメチル-7-メトキシクマリン(HO-Mmc)等が例示でき、蛍光性のエステル化合物に誘導することができる。 インドール-3-酢酸をガスクロマトグラフィー(GC)及び/又はガスクロマトグラフィー−質量分析計(GC/MS)を用いて定量する際には、主に揮発性の付与、検出感度の向上、分解能の向上等を目的として、インドール-3-酢酸の官能基に対して、様々な化学反応を基づく化学修飾を施し、この化学修飾体を定量することもできる。 例えば、カルボキシル基をトリメチルシリル化し、揮発性の誘導体であるN-トリメチルシリル体にすることで、揮発性を付与することもできる。 本発明においては、以上例示したような様々な方法によってインドール-3-酢酸を定量することができる。発色団として可視領域に吸収のある原子団を有する試薬(以下、呈色試薬ともいう)を利用する場合には、発現された色を可視・紫外分光光度計で定量してもよく、或いは肉眼で検出してもよい。 インドール-3-酢酸を肉眼で検出する場合には、標識化合物の濃度−発色標準サンプルを調製し、口腔内から採取した試料を同じ試薬で発色させたものと比較して、目視で試料の口臭強度を評価することも可能である。例えば、酸性条件下でインドール環と反応し呈色するp-ジメチルアミノベンズアルデヒドなどの呈色試薬等と反応させた当該物質を含有するものを用いて、水溶液を充填した比色管や或いは標準物質(スタンダード)を含浸させたろ紙の形で様々な濃度の呈色比較サンプルを作製し、口腔内から採取した試料を呈色試薬と反応させて得られる色の変化を呈色比較サンプルと比べることによって、試料の口臭強度を評価することもできる。また、水溶液の色を肉眼で直接判定する評価、試験紙に含浸させたものを肉眼で直接判定する評価を行ってもよい。(1)洗口唾液の準備 イオン交換水6mLを口に含み、30秒間唾液と共に口をゆすぎ、吐き出してもらった。これを洗口唾液試料とした。日本人男性14名から採取した。(2)インドール-3-酢酸の分析 市販のインドール-3-酢酸(和光純薬工業)をLC-MS/MSに供して、ノーマルイオンスキャン測定(ネガティブモード)した結果、保持時間3.5分に分子量関連イオンとしてプロトン脱離分子(M-H)- が観測された(m/z 174イオン)。また同時にm/z 130イオンも観測された(図1)。<分析条件> HPLCシステム: LC-10ADvp(島津製作所) 分析カラム:Inertsil ODS-3(5μm, 2.1mmID×150mm) カラム温度:40℃ 移動相:1%酢酸水溶液:1%酢酸メタノール溶液=40:60(v/v) 流速:0.2mL/min 試料温度:4℃ 注入量:10μL 質量分析装置(MS/MS):API2000(Applied Biosystems / MDS Sciex)(3)洗口唾液中のインドール-3-酢酸の分析 前述の日本人男性14名から採取した洗口唾液試料の中で、官能的にもっとも強い口臭が認められた試料をLC-MS/MSに供してノーマルイオンスキャン測定(ネガティブモード)した結果、保持時間3.5分前後にm/z 174イオン及びm/z 130イオンが観測された(図2)。保持時間及びマススペクトルが一致したことから、洗口唾液中に簡易に定量可能なレベルでインドール-3-酢酸が存在していることがわかった。(4)口臭との関連性の検証 洗口唾液中のインドール-3-酢酸濃度を定量した。洗口唾液をLC-MS/MSに供して、マルチプルモニタリングイオンスキャン(Q1:m/z 174; Q3:m/z 130)測定を行い、市販のインドール-3-酢酸を標準品として定量した。また洗口唾液試料の口臭強度を官能的に評価した。口臭強度と洗口唾液中のインドール-3-酢酸濃度との関係を求めたところ、相関性が高いことがわかった(図3)。口臭スコアの高い洗口唾液には多量のインドール-3-酢酸が含まれており(図4)、口臭スコアの低い洗口唾液には、少量ではあるが、分析が容易なレベルのインドール-3-酢酸が含まれていることがわかった(図5)。 以上の結果より、インドール-3-酢酸の含有量を比較することで、口臭強度を判定することができ、インドール-3-酢酸は口臭の強さを判定するための指標物質として有用であることがわかった。インドール-3-酢酸(市販品)をLC-MS/MSに供し、ノーマルイオンスキャン測定した際のトータルイオンクロマトグラム(上段)と保持時間3.5分のマススペクトル(下段)である。洗口唾液をLC-MS/MSに供し、ノーマルイオンスキャン測定した際のトータルイオンクロマトグラム(上段)と保持時間3.5分のマススペクトル(下段)である。洗口唾液中のインドール-3-酢酸濃度とスカトール濃度との関係を示す図である。口臭スコアの高い洗口唾液をLC-MS/MSに供し、マルチプルモニタリングイオンスキャン(Q1:m/z 174; Q3:m/z 130)測定を行った際のトータルイオンクロマトグラムである。口臭スコアの低い洗口唾液をLC-MS/MSに供し、マルチプルモニタリングイオンスキャン(Q1:m/z 174; Q3:m/z 130)測定を行った際のトータルイオンクロマトグラムである。 式(1)で表されるインドール-3-酢酸の口臭指標物質としての使用。 式(1)で表されるインドール-3-酢酸を指標物質とする口臭の判定方法。 式(1)で表されるインドール-3-酢酸を指標物質とする口臭抑制剤のスクリーニング方法。 【課題】口腔内に存在し、口臭の指標となり得る物質を検出することで、口臭の強さを簡易に判定し、客観的かつ定量的な評価を行う方法の提供。【解決手段】式(1)で表されるインドール-3-酢酸の口臭指標物質としての使用、並びに当該物質を指標物質とする口臭の判定方法及び口臭抑制剤のスクリーニング方法。【選択図】なし