生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_プレボテラ・インターメディア抑制剤
出願番号:2006284035
年次:2008
IPC分類:A61K 38/00,A61P 1/02,A61K 9/20


特許情報キャッシュ

近藤 一郎 小林 哲夫 吉江 弘正 若林 裕之 山内 恒治 高瀬 光徳 JP 2008100935 公開特許公報(A) 20080501 2006284035 20061018 プレボテラ・インターメディア抑制剤 森永乳業株式会社 000006127 志賀 正武 100064908 高橋 詔男 100108578 渡邊 隆 100089037 青山 正和 100101465 鈴木 三義 100094400 西 和哉 100107836 村山 靖彦 100108453 近藤 一郎 小林 哲夫 吉江 弘正 若林 裕之 山内 恒治 高瀬 光徳 A61K 38/00 20060101AFI20080404BHJP A61P 1/02 20060101ALI20080404BHJP A61K 9/20 20060101ALI20080404BHJP JPA61K37/02A61P1/02A61K9/20 3 OL 12 特許法第30条第1項適用申請有り 平成18年9月20日 http://www.jstage.jst.go.jp/article/amjsp/2006f/0/95/_pdf/−char/ja/ を通じて発表、平成18年9月20日 日本歯周病学会発行の「日本歯周病学会会誌 第48巻 秋季特別号 2006秋季学術大会(第49回) プログラムおよび講演抄録集」に発表 4C076 4C084 4C076AA36 4C076BB01 4C076CC09 4C076DD66T 4C076EE38H 4C076FF68 4C084AA02 4C084BA34 4C084CA17 4C084MA34 4C084MA52 4C084NA14 4C084ZA671 4C084ZB352 本発明は、プレボテラ・インターメディア(Prevotella intermedia)の増殖を抑制するためのプレボテラ・インターメディア抑制剤に関する。 歯周病は、う蝕(虫歯)とならんで歯科の二大疾患であり、地域、人種を問わず罹患率の高い疾患である。歯周病は、歯の周囲組織の疾患の総称であり、歯周組織の炎症性病変のことをいう。大別すると、炎症が歯肉に起きる歯肉炎と、歯槽骨や歯根膜にまで炎症が広がった歯周炎に分けられる(非特許文献1参照)。 歯周病の発生・進行のメカニズムは以下のように考えられている。すなわち、歯周病に罹患すると、歯と歯肉の間に歯周ポケットが形成され、該歯周ポケット内で、内毒素(エンドトキシン)を持つ歯周病原性細菌が激増し、プラークが作られる。歯周ポケット内の歯周病原性細菌の作る内毒素は、直接的および間接的にその周辺部の炎症を引き起こし、歯を支える歯槽骨を破壊する。さらに歯周病原性細菌の産生するタンパク質分解酵素は、歯周組織を傷害して歯周病を進行させ、口臭の原因となる硫化水素やメチルメルカプタンなどの揮発性硫黄化物を発生させる(非特許文献2参照)。 歯周ポケット内に存在する歯周病原性細菌としては、ポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)、プレボテラ・インターメディア(Prevotella intermedia)、プレボテラ・ニグレセンス(Prevotella nigrescens)、タネレラ・フォルシセンシス(Tannerella forsythensis)、アクチノバシラス・アクチノミセテムコミタンス(Actinobacillus actinomycetemcomitans)、フソバクテリウム・ヌクレアトゥム(Fusobacterium nucleatum)などのグラム陰性嫌気性桿菌が知られている(非特許文献2参照)。 歯周病の治療方法としては、スケーリング等により機械的にプラークや歯石を除去する方法や、抗生物質や消毒剤のような化学物質を用いる方法が一般的である。しかし、これらの方法はいずれもヒトに与える影響が大きく、たとえば抗生物質の使用では投与法、副作用、耐性菌、宿主に有益な微生物の死滅などの問題がある(非特許文献2参照)。 そのため、より安全性の高い歯周病の予防法および治療法が必要とされていた。 これまで、歯周病の治療・予防のためにさまざまな提案がなされている。たとえば特許文献1(歯周病の治療・予防用医薬組成物)、特許文献2(歯周病予防及び改善剤)、特許文献3(口腔用組成物)、特許文献4(口腔の疾患を治療する又は予防するための方法)、特許文献5(歯周病細菌の内毒素中和方法および付着抑制方法)等において、ラクトフェリンの歯周病に対する予防および治療効果に関する技術が開示されている。 ラクトフェリンは、ヒトを含む哺乳類の乳、唾液、涙液などの外分泌液や好中球に含まれる分子量約8万の鉄結合性の糖タンパク質である。たとえばヒトの唾液中には約5μg/mlのラクトフェリンが含まれているといわれている(非特許文献3参照)。 ラクトフェリンは、抗菌作用、抗ウイルス作用、抗酸化作用、免疫調節作用、抗炎症作用や、その他様々な細胞機能調節作用を有することが知られている(非特許文献4参照)。また、ラクトフェリンは病原菌に対しては抗菌活性を示す一方で、乳酸菌やビフィズス菌といった宿主に有益な細菌の増殖を促進する作用のあることが知られている(非特許文献5参照)。 ラクトフェリンの歯周病原性細菌に対する活性についても検討が行われている。たとえば非特許文献6においては、歯周病原性細菌であるポルフィロモナス・ジンジバリス、プレボテラ・インターメディア、プレボテラ・ニグレセンスに対するラクトフェリンの抗菌活性(試験管内)について、ヒト・ラクトフェリン2mg/mlの濃度を用いて調べられている。鉄を結合していないアポ・ラクトフェリンは、これら3菌種に対して殺菌的には作用しないこと、ポルフィロモナス・ジンジバリスの発育は抑制するが、プレボテラ・インターメディアを含む他の2菌種に対しては発育を抑制しないことが報告されている。さらに、鉄飽和ラクトフェリンは、これら3菌種に対して殺菌的にも発育抑制的にも、全く抗菌活性を示さないことが報告されている。つまり、ラクトフェリンは直接的にプレボテラ・インターメディアやプレボテラ・ニグレセンスの発育を抑制しないとされている。 非特許文献7においては、ウシ・ラクトフェリンのN末端側17−30残基、または19−37残基に相当するペプチドが、ポルフィロモナス・ジンジバリス、プレボテラ・インターメディア、フソバクテリウム・ヌクレアトゥムの発育を抑制するとの報告がなされている。 非特許文献8においては、ヒトおよびウシ・ラクトフェリンが、アクチノバシラス・アクチノミセテムコミタンスとプレボテラ・インターメディアの繊維芽細胞や上皮細胞への付着を抑制することが報告されている。特開平5−279266号公報特開平11−315014号公報特開2001−89339号公報特表2004−529950号公報特開2005−306890号公報エフ・エフ・アイ・ジャーナル(FFI Journal)、第210巻、2005年、p.331−339フード・スタイル21(Food Style 21)、第8巻、2004年、p.33−40バイオロジカル・トレイス・エレメント・リサーチ(Biological Trace Element Research)、アメリカ、第57巻、1997年、p.1−8アニュアル・レビュー・オブ・ニュートリション(Annual Review of Nutrition)、アメリカ、第15巻、1995年、p.93−110ジャーナル・オブ・メディカル・マイクロバイオロジー(Journal of Medical Microbiology)、イギリス、第48巻、1999年、p.541−549フェムス・イミュノロジー・アンド・メディカル・マイクロバイオロジー(FEMS Immunology and Medical Microbiology)、オランダ、第21巻、1998年、p.29−36フェムス・マイクロバイオロジー・レターズ(FEMS Microbiology Letters)、オランダ、第179巻、1999年、p.217−222エイ・ピー・エム・アイ・エス(APMIS)、デンマーク、第103巻、1995年、p.154−160 上記歯周病原性細菌のうち、プレボテラ・インターメディアは、健常者に比べて、歯周病患者、特に歯肉炎患者において高い頻度で検出されており、歯周病の進行にプレボテラ・インターメディアが大きく関与することが示唆される。 また、プレボテラ・インターメディアは、抗生物質に対する耐性が高く、そのため抗生物質での治療で効かない可能性がある。たとえばポルフィロモナス・ジンジバリスの31株が、調べた18の抗生物質全てに感受性を示したのに対し、プレボテラ・インターメディアの99株のうち、β−ラクタム、エリスロマイシン、クリンダマイシン、テトラサイクリンに耐性を示したのは10%程度であり、それらの菌株は耐性遺伝子を有していた。 さらに、プレボテラ・インターメディアが産生するLPSはIL−8を誘導する等により炎症を引き起こす。また、プレボテラ・インターメディアの菌体成分は、感染防御において重要な細胞性免疫を担うリンパ球(B細胞、T細胞)の増殖を抑制する。そのため、プレボテラ・インターメディアは生体から排除されにくいと考えられる。 また、プレボテラ・インターメディアは、性ホルモン(エストロゲン、プロゲステロン、テストステロン)によって増加する傾向があり、思春期や妊娠期において歯周病の発生を引き起こす。特に妊娠中の歯周病は早産など妊娠障害の原因になる。 しかし、上述したように、従来、ウシ・ラクトフェリンの特定ペプチドが、プレボテラ・インターメディアの発育を抑制するという報告はあるものの、ラクトフェリンについては直接的にプレボテラ・インターメディアの発育を抑制しないとされている。 そして、これまで、ラクトフェリンによって、実際に、生体内、特に口腔内でのプレボテラ・インターメディアの増殖を、歯周病の発症に至らない程度に充分に抑制できるかどうかについては検討されておらず、当然、プレボテラ・インターメディア抑制のために効果的なラクトフェリンの投与経路、投与量および投与間隔についても検討はなされていない。 本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、口腔内でのプレボテラ・インターメディアの増殖を効果的に抑制できるプレボテラ・インターメディア抑制剤を提供することを目的とする。 本発明者らは、鋭意検討を行った結果、ラクトフェリンを、特定の投与量、特定投与間隔で経口投与することにより、口腔内のプレボテラ・インターメディアの増殖を効果的に抑制できることを見出し、本発明を完成させた。 すなわち、本発明は、ウシ由来のラクトフェリンを有効成分として含有し、前記ラクトフェリン量として、1日あたり10〜50mg/kg体重の量にて毎日3回経口投与されることを特徴とするプレボテラ・インターメディア抑制剤である。 本発明のプレボテラ・インターメディア抑制剤は、前記ラクトフェリンが、鉄飽和度が10〜30%のラクトフェリンであること、および/またはトローチ剤の形態であることをそれぞれ好ましい態様としている。 本発明のプレボテラ・インターメディア抑制剤によれば、口腔内でのプレボテラ・インターメディアの増殖を効果的に抑制できる。 次に、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の好ましい実施形態に限定されず、本発明の範囲内で自由に変更することができるものである。尚、本明細書において百分率は特に断りのない限り質量による表示である。 本発明のプレボテラ・インターメディア(Prevotella intermedia)抑制剤(以下、「本発明の抑制剤」と略記することがある。)は、プレボテラ・インターメディア、特に、口腔内歯周ポケットに存在するプレボテラ・インターメディアに対して顕著な抑制効果を有する。ここで、本発明におけるプレボテラ・インターメディアの「抑制」とは、その増殖を、歯周病の発症に至らない程度に抑えることができることを意味する。そのため、本発明の抑制剤は、歯周病の予防及び/又は治療に有効である。 本発明の抑制剤の有効成分として使用されるウシ・ラクトフェリンは、ウシ由来のものであれば特に制限はなく、市販品であってもよく、ウシの初乳、移行乳、常乳、末期乳等、これらの処理物である脱脂乳、ホエー等からイオン交換クロマトグラフィー等の常法により分離したラクトフェリンであってもよい。また、組換えDNA技術により得られる組換え乳牛(トランスジェニック・カウ)等により生産されるラクトフェリン等も、同様に本発明に使用することができる。 本発明においては、特に、プレボテラ・インターメディア抑制効果に優れることから、鉄飽和度が10〜30%のラクトフェリンが好ましい。 ここで、「鉄飽和度(%)」は、当該ラクトフェリンの「理論上の鉄結合能」に対する、「実際に含まれる鉄含有量」の割合(%)である。ラクトフェリンには、理論上、1分子当たり2分子の鉄(Fe:分子量=56)原子が結合可能であり、ラクトフェリンの鉄結合能は、次式によって計算される。 鉄結合能=56×2/ラクトフェリンの分子量 たとえばラクトフェリンの分子量を約8万ダルトンとすると、当該ラクトフェリン100g中には、理論上、最大で140mgの鉄が結合し得る。つまり、分子量約8万ダルトンのラクトフェリンの鉄結合能は約140mg/100gである。 本発明の抑制剤は、プレボテラ・インターメディアを効果的に抑制するためには、ラクトフェリン量として、1日あたり10〜50mg/kg体重の量にて毎日3回経口投与される必要がある。 投与量は、剤型、症状、患者の年齢、体重等によっても異なるが、ラクトフェリン量として、1日あたり20〜40mg/kg体重が好ましく、25〜35mg/kg体重がより好ましい。 本発明の抑制剤は、任意の添加剤を用いて所望の製剤の形態に製剤化された医薬組成物であることが好ましい。 製剤の具体例としては、錠剤(糖衣錠、腸溶性コーティング錠、バッカル錠を含む。)、散剤、カプセル剤(腸溶性カプセル、ソフトカプセルを含む。)、顆粒剤(コーティングしたものを含む。)、丸剤、トローチ剤、封入リポソーム剤、液剤、又はこれらの製剤学的に許容され得る徐放製剤等を例示することができる。 医薬組成物中のラクトフェリンの含有量は、剤形にもよるが、通常、当該医薬組成物の総固形分に対し、0.1〜50質量%が好ましく、1〜30質量%がより好ましく、10〜20質量%が特に好ましい。 製剤化にあたって使用できる添加剤としては、特に制限はなく、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、矯味矯臭剤、希釈剤、注射剤用溶剤等の一般的に医薬組成物に用いられている添加剤を使用できる。 賦形剤としては、乳糖、ブドウ糖、白糖、マンニトール、馬鈴薯澱粉、トウモロコシ澱粉、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、結晶セルロース、カンゾウ末、ゲンチアナ末など、結合剤としては例えば澱粉、ゼラチン、シロップ、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等を例示することができる。 崩壊剤としては、澱粉、寒天、ゼラチン末、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、結晶セルロース、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、及びアルギン酸ナトリウム等を、それぞれ例示することができる。 滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、水素添加植物油、及びマクロゴール等、着色剤としては医薬品に添加することが許容されている赤色2号、黄色4号、及び青色1号等を、それぞれ例示することができる。 製剤が錠剤または顆粒剤である場合、必要に応じ、該製剤を、白糖、ヒドロキシプロピルセルロース、精製セラック、ゼラチン、ソルビトール、グリセリン、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、フタル酸セルロースアセテート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メチルメタクリレート、及びメタアクリル酸重合体等により被膜することもできる。 本発明の抑制剤は、特に、口腔内で長時間、高濃度でラクトフェリンが存在でき、本発明の効果に優れることから、トローチ剤の形態であることが好ましい。 本発明の抑制剤がトローチ剤の形態である場合、ラクトフェリンが口腔内に40μg/ml以上の濃度で1時間以上残存するように製剤化することが好ましい。 口腔内におけるラクトフェリンの濃度40μg/ml以上での残存時間は、たとえば、トローチ剤の大きさ、質量、硬度等の物性や、ラクトフェリンの配合量、使用する添加剤の種類や配合量、打錠速度等の打錠条件などを調整することにより調整できる。具体的には、たとえばトローチ剤1錠あたりの質量を1〜3gにすることにより残存時間を長くできる。 トローチ剤中のラクトフェリンの含有量は、当該トローチ剤の総質量に対し、10〜30質量%が好ましく、15〜25質量%がより好ましい。 ラクトフェリンは、上述したように、直接的にはプレボテラ・インターメディアの発育を抑制しないことが知られているが、本発明の抑制剤によれば、歯周病原性細菌の1つとして知られるプレボテラ・インターメディアの抑制効果が得られる。かかる効果が得られる理由としては、定かではないが、特定量を特定間隔で経口摂取することにより、口腔内において、ラクトフェリンが高濃度の状態で維持されることとなり、これによって、歯肉粘膜の免疫系が活性化され、プレボテラ・インターメディアを歯周ポケットから排除する排除能が向上したためではないかと推測される。 また、本発明の抑制剤は、口腔内におけるプレボテラ・インターメディアの増殖を、歯周病が発症しない程度に抑制する効果を奏するため、歯周病の予防または治療に有用である。 また、本発明の抑制剤の有効成分であるラクトフェリンは、食品成分の一つであるため、安全性が高く、長期間連続的に投与しても副作用のおそれが少ない。そのため、本発明の抑制剤によれば、これまでの歯周病の治療法である抗生物質や消毒剤の投与による副作用、耐性菌、宿主に有益な微生物の死滅などの問題を回避することができる。 さらに、本発明の抑制剤は、副作用が殆ど無く、耐性菌が生じる心配が少ないことから、年齢や性別に関係なく、多くの歯周病患者等に適用することが可能である。また、本発明の抑制剤によれば、歯科医院での通院治療の負担を軽減することもできる。 本発明の抑制剤は、単独で使用してもよく、他の医薬組成物または飲食品と併用してもよい。該他の医薬組成物または飲食品としては、プレボテラ・インターメディアの抑制に効果を有するものが好ましい。かかる医薬組成物または飲食品との併用によって、プレボテラ・インターメディアの抑制効果をさらに高めることができる。 本発明の抑制剤と併用される医薬組成物または飲食品は、ラクトフェリンを含有するものであってもよく、含有しないものであってもよい。 前記他の医薬組成物または飲食品は、本発明の抑制剤とは別個の医薬組成物または飲食品等として、本発明の抑制剤と組み合わせて商品化してもよい。 本発明においては、本発明の抑制剤を飲食品に含有させて飲食品の形態で摂取させることも可能である。ラクトフェリンは食品成分として安全性の高い成分であるため、本発明の抑制剤を含有させた飲食品は、安全で、且つ健康維持及び健康増進に有用なものである。 本発明の抑制剤を含有する飲食品は、たとえば飲料又は食品素材にラクトフェリンを添加することにより製造できる。飲食品として好ましい形態は、例えば、錠菓、清涼飲料、乳製品、健康食品、菓子類等を例示することができる。 また、本発明においては、本発明の抑制剤の有効成分であるラクトフェリンを飲食品に添加して、プレボテラ・インターメディアの抑制効果を利用するような種々の用途をとった飲食品として利用することも可能である。その場合の飲食品は、プレボテラ・インターメディアを抑制するためとの用途が表示された飲食品、例えば「プレボテラ・インターメディアの抑制用と表示された、プレボテラ・インターメディアの抑制効果を有する飲食品」、「プレボテラ・インターメディアの抑制用と表示された、ラクトフェリンを含有する飲食品」等として販売することが好ましい。 なお、以上のような表示を行うために使用する文言は、「プレボテラ・インターメディアの抑制用」という文言のみに限られるわけではなく、それ以外の文言であっても、プレボテラ・インターメディアの抑制効果、若しくはプレボテラ・インターメディアが原因で引き起こされる疾患、例えば歯周病等の予防又は治療効果を表す文言であれば、本発明の範囲に包含されることはいうまでもない。そのような文言としては、例えば、需要者に対して、プレボテラ・インターメディアの抑制効果及び/又はプレボテラ・インターメディアが原因で引き起こされる疾患の予防又は治療効果を認識させるような種々の用途に基づく表示も可能である。 前記「表示」の行為(表示行為)には、需要者に対して上記用途を知らしめるための全ての行為が含まれ、上記用途を想起・類推させうるような表示であれば、表示の目的、表示の内容、表示する対象物・媒体等の如何に拘わらず、すべて本発明の「表示」の行為に該当する。しかしながら、需要者が上記用途を直接的に認識できるような表現により表示することが好ましい。具体的には、本発明の飲食品に係る商品又は商品の包装に上記用途を記載する行為を表示行為として挙げることができ、さらに商品又は商品の包装に上記用途を記載したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸入する行為、商品に関する広告、価格表若しくは取引書類に上記用途を記載して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に上記用途を記載して電磁気的(インターネット等)方法により提供する行為、等を例示できる。 一方、表示される内容(表示内容)としては、行政等によって認可された表示(例えば、行政が定める各種制度に基づいて認可を受け、そのような認可に基づいた態様で行う表示)であることが好ましく、そのような表示内容を、包装、容器、カタログ、パンフレット、POP等の販売現場における宣伝材、その他の書類等へ付することが好ましい。 また、例えば、健康食品、機能性食品、経腸栄養食品、特別用途食品、保健機能食品、特定保健用食品、栄養機能食品、医薬用部外品等としての表示を例示することができる。特に、厚生労働省によって認可される表示、例えば、特定保健用食品制度、これに類似する制度にて認可される表示を例示できる。後者の例としては、特定保健用食品としての表示、条件付き特定保健用食品としての表示、身体の構造や機能に影響を与える旨の表示、疾病リスク低減表示等を例示することができ、詳細にいえば、健康増進法施行規則(平成15年4月30日日本国厚生労働省令第86号)に定められた特定保健用食品としての表示(特に保健の用途の表示)、及びこれに類する表示が、典型的な例として列挙することが可能である。 次に実施例を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。[製造例1] ラクトフェリン(森永乳業社製、鉄飽和度15%)300g、還元麦芽糖水飴(東和化成社製)810g、粉あめ(昭和産業社製)172.5g、コーンスターチ(三栄源エフ・エフ・アイ社製)165g、ステビア甘味料(三栄源エフ・エフ・アイ社製)1.5g、ヨーグルト香料(長谷川香料社製)6g、およびグリセリン脂肪酸エステル(三栄源エフ・エフ・アイ社製)45gを均一に混合して混合粉末を得た。 この混合粉末を、打錠機(畑鉄鋼所社製)を使用して、1錠当り1.5g、12錠/分の打錠速度で連続的に打錠し、硬度7.3kgのトローチ剤900錠(約1350g)を製造した。得られたトローチ剤1錠中のラクトフェリンの含有量は約0.3gである。[製造例2] ラクトフェリン(森永乳業社製、鉄飽和度20%)250g、マルツデキストリン(松谷化学工業社製)635g、脱脂粉乳(森永乳業社製)85g、ステビア甘味料(三栄源エフ・エフ・アイ社製)1g、ヨーグルト・フレーバー(三栄源エフ・エフ・アイ社製)5g、およびグリセリン脂肪酸エステル(理研ビタミン社製)24gを均一に混合して混合粉末を得た。 この混合粉末を、打錠機(畑鉄鋼所社製)を使用して、1錠当り1.5g、12錠/分の打錠速度で連続的に打錠し、硬度8.5kgのトローチ剤600錠(約900g)を製造した。得られたトローチ剤1錠中のラクトフェリンの含有量は約0.3gである。[比較製造例1] デキストリン(松谷化学工業社製)300.75g、還元麦芽糖水飴(東和化成社製)450g、粉あめ(昭和産業社製)450g、コーンスターチ(三栄源エフ・エフ・アイ社製)225g、ヨーグルト香料(長谷川香料社製)6g、グリセリン脂肪酸エステル(三栄源エフ・エフ・アイ社製)30g、ショ糖脂肪酸エステル(三栄源エフ・エフ・アイ社製)30g、および着色料(三栄源エフ・エフ・アイ社製)8.25gを均一に混合して混合粉末を得た。 この混合粉末を、打錠機(畑鉄鋼所社製)を使用して、1錠当り1.5g、12錠/分の打錠速度で連続的に打錠し、硬度7.3kgの、ラクトフェリンを含まないトローチ剤1000錠(約1500g)を製造した。[試験例1] 本試験は、本発明の抑制剤による、口腔内歯周ポケットに存在するプレボテラ・インターメディアの抑制効果を調べるために行った。(1)試料の調製 製造例1で製造したトローチ剤を試験試料(ラクトフェリン群)とし、比較製造例1で製造したトローチ剤を対照試料(プラセボ群)とした。(2)試験方法 「a.試料の投与」 深さ4〜5mmの歯周ポケットを有するプレボテラ・インターメディア菌に感染した軽度慢性歯周炎患者6名を対象(被験者A〜F)とし、二重盲検法により試験を行った。具体的には、前記試験試料(ラクトフェリン群)を3名に、残りの3名に対照試料(プラセボ群)を、1日3回、1回あたり2錠、経口投与した。この際、各トローチ剤は、咬まずに口腔内で溶かすように摂取してもらった。トローチ剤の投与は、3ヶ月間継続した。 「b.測定サンプルの回収」 試験試料又は対照試料の投与前、投与開始から1ヶ月経過時および3ヶ月経過時に、プラークを除去し、その後、各被験者の2被験歯(前歯および小臼歯)について、その歯周ポケット最深部に滅菌ペーパーポイントを2枚挿入し、滲出液を採取し、滅菌バイアルに入れ冷蔵保存した。 「c.プレボテラ・インターメディア菌数の測定」 上記のようにして各群、計6被験歯から回収した滲出液に含まれるプレボテラ・インターメディアの菌数を、リアルタイムPCR法によって測定した。 リアルタイムPCR法としては、滅菌ペーパーポイントに付着した菌体からDNAを抽出し、当該DNAを鋳型として、プレボテラ・インターメディアDNAの特定領域を挟むように設計された特異的なプライマー・ペア((株)ビー・エム・エルにより設計されたものを使用。)と、TaqMan(登録商標:アプライドバイオシステムズ社)プローブ(当該プローブは、プレボテラ・インターメディアDNAの特定領域に結合可能なものを使用。)を用いてPCR反応を行った。 PCR反応は、PRISM7700SDS(アプライドバイオシステムズ社製)を用いて行い、PCRサイクルに伴って増加する蛍光強度をリアルタイムで測定し、当該装置によって対数増幅期と判断された一定の蛍光強度に達したPCRサイクル数を求めた。 これとは別に、前記プレボテラ・インターメディアDNAを鋳型として、前記の特異的なプライマーを用いて増幅したDNA断片を挿入したプラスミドについて、段階希釈したものを用いて上記と同様にリアルタイムPCRを行って検量線を作成し、先ほど求めたPCRサイクル数を換算することにより、プレボテラ・インターメディアDNAのコピー数(菌数)を算出した。(3)試験結果 プレボテラ・インターメディア菌数の測定結果を表1に示す。 試料投与開始前と3ヶ月経過時のプレボテラ・インターメディア菌数を比較すると、プラセボ群では5被験歯で増加した。これに対し、ラクトフェリン群では、3被験歯で減少し、残りの3被験歯は、投与前、投与後ともに0のままであり、プレボテラ・インターメディア菌数が増加した被験歯はないことが判明した。 また、試料投与開始から1ヶ月経過時においても、上記と同様、プラセボ群では菌数が増加し、ラクトフェリン群で菌数が減少する傾向が確認された。 従って、本発明の抑制剤の経口投与によって、口腔内歯周ポケットのプレボテラ・インターメディアの抑制効果が得られることが明らかとなった。 表1中、被験者Aの体重は50kgであり、1日あたりのラクトフェリンの投与量は36mg/kg体重であった。被験者Bの体重は40kgであり、1日あたりのラクトフェリンの投与量は45mg/kg体重であった。被験者Cの体重は75kgであり、1日あたりのラクトフェリンの投与量は24mg/kg体重であった。[参考試験] 本試験は、本発明の抑制剤を経口投与した際の、ウシ・ラクトフェリンの口腔内での残存効果を調べるために行った。(1)試料の調製 実施例1で製造したトローチ剤を試験試料とした。(2)試験方法 「a.試料の投与」 被験者3名(被験者G〜I)に前記試験試料を咬まずに舐めてもらい、約5分間かけて口腔内で溶かしてもらった。 「b.測定サンプルの回収とラクトフェリン濃度の測定」 試験試料摂取前、摂取(トローチ剤を口腔内に入れた時点から)5分後、30分後、60分後のそれぞれの時点で、被験者の唾液を測定サンプルとして採取し、該測定サンプル中のウシ・ラクトフェリン濃度を、ラテックス凝集法によって測定した。 ラテックスラテックス凝集法について、具体的には、唾液を3,000rpmで3分間遠心分離して上清を回収し、トリス塩酸緩衝液(pH7.5)にて10倍ごとに希釈して試験試料とした。次いで、抗ウシ・ラクトフェリン・ウサギIgGを結合させたポリスチレン・ラテックスビーズを試験試料とともに混合し、多目的分析器TMS−1024(東京貿易医学システム社製)を用いて、ウシ・ラクトフェリン量に応じて生じる濁度(OD:800nm)を2分間モニターし、1分あたりの濁度増加量を測定した。この値を、既知量のウシ・ラクトフェリン標準試料を用いて作成した検量線に対してプロットし、唾液中のウシ・ラクトフェリン量を算出した。(3)試験結果 本試験の結果を表2に示す。その結果、被験者3名の唾液中のウシ・ラクトフェリン濃度は、試験試料の摂取開始から摂取5分後にかけて急激に増加し、その後、次第に減少した。このウシ・ラクトフェリン濃度の減少は、摂取30分後以降は緩やかなものであり、摂取60分後において、摂取30分後の濃度の30〜60%程度の濃度が維持されていた。また、その濃度も40μg/ml以上であり、一般的なヒト唾液中のラクトフェリン濃度(約5μg/ml)に比べ、非常に高かった。 上記の結果から、本発明の抑制剤を経口投与、特にトローチ剤の形態で経口投与することによって、ラクトフェリンが長時間にわたって一定濃度以上に残存することが確認できた。 このように、プレボテラ・インターメディアの増殖抑制の有効成分であるラクトフェリンが長時間にわたって一定濃度以上に残存することから、本発明の抑制剤が、プレボテラ・インターメディアの増殖を効果的に抑制することが示唆される。 本発明の抑制剤によれば、歯周病原性細菌の1つとして知られるプレボテラ・インターメディアの抑制効果が得られる。そのため、本発明の抑制剤は、歯周病の予防または治療に有用である。 また、本発明の抑制剤は、食品成分の一つであるラクトフェリンを有効成分とするものであり、副作用や耐性菌、宿主に有益な微生物の死滅などの問題について回避することが可能である。また、ラクトフェリンは食品の一部として摂取することが可能であることから、本発明の抑制剤に留まらず、特定保健用食品等の健康食品として適用することも可能である。 ウシ由来のラクトフェリンを有効成分として含有し、前記ラクトフェリン量として、1日あたり10〜50mg/kg体重の量にて毎日3回経口投与されることを特徴とするプレボテラ・インターメディア抑制剤。 前記ラクトフェリンが、鉄飽和度が10〜30%のラクトフェリンである請求項1に記載のプレボテラ・インターメディア抑制剤。 トローチ剤の形態である請求項1又は2に記載のプレボテラ・インターメディア抑制剤。 【課題】口腔内でのプレボテラ・インターメディアの増殖を効果的に抑制できるプレボテラ・インターメディア抑制剤を提供する。【解決手段】ウシ由来のラクトフェリンを有効成分として含有し、前記ラクトフェリン量として、1日あたり10〜50mg/kg体重の量にて毎日3回経口投与されることを特徴とするプレボテラ・インターメディア抑制剤。前記ラクトフェリンは、鉄飽和度が10〜30%のラクトフェリンであることが好ましい。また、当該プレボテラ・インターメディア抑制剤は、トローチ剤の形態であることが好ましい。【選択図】なし


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特許公報(B2)_軽度慢性歯周炎患者におけるプレボテラ・インターメディアの増殖抑制剤

生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_軽度慢性歯周炎患者におけるプレボテラ・インターメディアの増殖抑制剤
出願番号:2006284035
年次:2012
IPC分類:A61K 38/00,A61P 1/02,A61K 9/20


特許情報キャッシュ

近藤 一郎 小林 哲夫 吉江 弘正 若林 裕之 山内 恒治 高瀬 光徳 JP 5031321 特許公報(B2) 20120706 2006284035 20061018 軽度慢性歯周炎患者におけるプレボテラ・インターメディアの増殖抑制剤 森永乳業株式会社 000006127 志賀 正武 100064908 高橋 詔男 100108578 渡邊 隆 100089037 青山 正和 100101465 鈴木 三義 100094400 西 和哉 100107836 村山 靖彦 100108453 近藤 一郎 小林 哲夫 吉江 弘正 若林 裕之 山内 恒治 高瀬 光徳 20120919 A61K 38/00 20060101AFI20120830BHJP A61P 1/02 20060101ALI20120830BHJP A61K 9/20 20060101ALI20120830BHJP JPA61K37/02A61P1/02A61K9/20 A61K 38/00 A61K 9/00−20 A61P 1/00−02 CA/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) 特開平11−315014(JP,A) 特開平05−279266(JP,A) 特開平11−286452(JP,A) 特開平11−292788(JP,A) 特開平10−059865(JP,A) ALUGUPALLI, K.R., et al.,Inhibitory effect of lactoerrin on the adhesion of Actinobacillus actinomycetemcomitans and Prevotella intermedia to fibroblasts and epithelial cells,APMIS,1995年,Vol.103,p.154-160 AGUILERA, O., et al.,Evaluation of the antimicrobial effect of lactoferrin on Porphyromonas gingivalis, Prevotella intermedia and Prevotella nigrescens,FEMS Immunology and Medical Microbiology,1998年,Vol.21,p.29-36 歯周病を全身の関係 Part3,日本歯科医師会雑誌,日本,2001年10月10日,Vol.54, No.7, 付録,p.6-9 GROENINK, J., et al.,Cationic amphipathic peptides, derived from bovine and human lactoferrins, with antimicrobial activity against oral pathogens,FEMS Microbiology Letters,1999年,Vol.179,p.217-222 2 2008100935 20080501 11 20080528 特許法第30条第1項適用 平成18年9月20日 http://www.jstage.jst.go.jp/article/amjsp/2006f/0/95/_pdf/−char/ja/ を通じて発表、平成18年9月20日 日本歯周病学会発行の「日本歯周病学会会誌 第48巻 秋季特別号 2006秋季学術大会(第49回) プログラムおよび講演抄録集」に発表 横井 宏理 本発明は、プレボテラ・インターメディア(Prevotella intermedia)の増殖を抑制するためのプレボテラ・インターメディア抑制剤に関する。 歯周病は、う蝕(虫歯)とならんで歯科の二大疾患であり、地域、人種を問わず罹患率の高い疾患である。歯周病は、歯の周囲組織の疾患の総称であり、歯周組織の炎症性病変のことをいう。大別すると、炎症が歯肉に起きる歯肉炎と、歯槽骨や歯根膜にまで炎症が広がった歯周炎に分けられる(非特許文献1参照)。 歯周病の発生・進行のメカニズムは以下のように考えられている。すなわち、歯周病に罹患すると、歯と歯肉の間に歯周ポケットが形成され、該歯周ポケット内で、内毒素(エンドトキシン)を持つ歯周病原性細菌が激増し、プラークが作られる。歯周ポケット内の歯周病原性細菌の作る内毒素は、直接的および間接的にその周辺部の炎症を引き起こし、歯を支える歯槽骨を破壊する。さらに歯周病原性細菌の産生するタンパク質分解酵素は、歯周組織を傷害して歯周病を進行させ、口臭の原因となる硫化水素やメチルメルカプタンなどの揮発性硫黄化物を発生させる(非特許文献2参照)。 歯周ポケット内に存在する歯周病原性細菌としては、ポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)、プレボテラ・インターメディア(Prevotella intermedia)、プレボテラ・ニグレセンス(Prevotella nigrescens)、タネレラ・フォルシセンシス(Tannerella forsythensis)、アクチノバシラス・アクチノミセテムコミタンス(Actinobacillus actinomycetemcomitans)、フソバクテリウム・ヌクレアトゥム(Fusobacterium nucleatum)などのグラム陰性嫌気性桿菌が知られている(非特許文献2参照)。 歯周病の治療方法としては、スケーリング等により機械的にプラークや歯石を除去する方法や、抗生物質や消毒剤のような化学物質を用いる方法が一般的である。しかし、これらの方法はいずれもヒトに与える影響が大きく、たとえば抗生物質の使用では投与法、副作用、耐性菌、宿主に有益な微生物の死滅などの問題がある(非特許文献2参照)。 そのため、より安全性の高い歯周病の予防法および治療法が必要とされていた。 これまで、歯周病の治療・予防のためにさまざまな提案がなされている。たとえば特許文献1(歯周病の治療・予防用医薬組成物)、特許文献2(歯周病予防及び改善剤)、特許文献3(口腔用組成物)、特許文献4(口腔の疾患を治療する又は予防するための方法)、特許文献5(歯周病細菌の内毒素中和方法および付着抑制方法)等において、ラクトフェリンの歯周病に対する予防および治療効果に関する技術が開示されている。 ラクトフェリンは、ヒトを含む哺乳類の乳、唾液、涙液などの外分泌液や好中球に含まれる分子量約8万の鉄結合性の糖タンパク質である。たとえばヒトの唾液中には約5μg/mlのラクトフェリンが含まれているといわれている(非特許文献3参照)。 ラクトフェリンは、抗菌作用、抗ウイルス作用、抗酸化作用、免疫調節作用、抗炎症作用や、その他様々な細胞機能調節作用を有することが知られている(非特許文献4参照)。また、ラクトフェリンは病原菌に対しては抗菌活性を示す一方で、乳酸菌やビフィズス菌といった宿主に有益な細菌の増殖を促進する作用のあることが知られている(非特許文献5参照)。 ラクトフェリンの歯周病原性細菌に対する活性についても検討が行われている。たとえば非特許文献6においては、歯周病原性細菌であるポルフィロモナス・ジンジバリス、プレボテラ・インターメディア、プレボテラ・ニグレセンスに対するラクトフェリンの抗菌活性(試験管内)について、ヒト・ラクトフェリン2mg/mlの濃度を用いて調べられている。鉄を結合していないアポ・ラクトフェリンは、これら3菌種に対して殺菌的には作用しないこと、ポルフィロモナス・ジンジバリスの発育は抑制するが、プレボテラ・インターメディアを含む他の2菌種に対しては発育を抑制しないことが報告されている。さらに、鉄飽和ラクトフェリンは、これら3菌種に対して殺菌的にも発育抑制的にも、全く抗菌活性を示さないことが報告されている。つまり、ラクトフェリンは直接的にプレボテラ・インターメディアやプレボテラ・ニグレセンスの発育を抑制しないとされている。 非特許文献7においては、ウシ・ラクトフェリンのN末端側17−30残基、または19−37残基に相当するペプチドが、ポルフィロモナス・ジンジバリス、プレボテラ・インターメディア、フソバクテリウム・ヌクレアトゥムの発育を抑制するとの報告がなされている。 非特許文献8においては、ヒトおよびウシ・ラクトフェリンが、アクチノバシラス・アクチノミセテムコミタンスとプレボテラ・インターメディアの繊維芽細胞や上皮細胞への付着を抑制することが報告されている。特開平5−279266号公報特開平11−315014号公報特開2001−89339号公報特表2004−529950号公報特開2005−306890号公報エフ・エフ・アイ・ジャーナル(FFI Journal)、第210巻、2005年、p.331−339フード・スタイル21(Food Style 21)、第8巻、2004年、p.33−40バイオロジカル・トレイス・エレメント・リサーチ(Biological Trace Element Research)、アメリカ、第57巻、1997年、p.1−8アニュアル・レビュー・オブ・ニュートリション(Annual Review of Nutrition)、アメリカ、第15巻、1995年、p.93−110ジャーナル・オブ・メディカル・マイクロバイオロジー(Journal of Medical Microbiology)、イギリス、第48巻、1999年、p.541−549フェムス・イミュノロジー・アンド・メディカル・マイクロバイオロジー(FEMS Immunology and Medical Microbiology)、オランダ、第21巻、1998年、p.29−36フェムス・マイクロバイオロジー・レターズ(FEMS Microbiology Letters)、オランダ、第179巻、1999年、p.217−222エイ・ピー・エム・アイ・エス(APMIS)、デンマーク、第103巻、1995年、p.154−160 上記歯周病原性細菌のうち、プレボテラ・インターメディアは、健常者に比べて、歯周病患者、特に歯肉炎患者において高い頻度で検出されており、歯周病の進行にプレボテラ・インターメディアが大きく関与することが示唆される。 また、プレボテラ・インターメディアは、抗生物質に対する耐性が高く、そのため抗生物質での治療で効かない可能性がある。たとえばポルフィロモナス・ジンジバリスの31株が、調べた18の抗生物質全てに感受性を示したのに対し、プレボテラ・インターメディアの99株のうち、β−ラクタム、エリスロマイシン、クリンダマイシン、テトラサイクリンに耐性を示したのは10%程度であり、それらの菌株は耐性遺伝子を有していた。 さらに、プレボテラ・インターメディアが産生するLPSはIL−8を誘導する等により炎症を引き起こす。また、プレボテラ・インターメディアの菌体成分は、感染防御において重要な細胞性免疫を担うリンパ球(B細胞、T細胞)の増殖を抑制する。そのため、プレボテラ・インターメディアは生体から排除されにくいと考えられる。 また、プレボテラ・インターメディアは、性ホルモン(エストロゲン、プロゲステロン、テストステロン)によって増加する傾向があり、思春期や妊娠期において歯周病の発生を引き起こす。特に妊娠中の歯周病は早産など妊娠障害の原因になる。 しかし、上述したように、従来、ウシ・ラクトフェリンの特定ペプチドが、プレボテラ・インターメディアの発育を抑制するという報告はあるものの、ラクトフェリンについては直接的にプレボテラ・インターメディアの発育を抑制しないとされている。 そして、これまで、ラクトフェリンによって、実際に、生体内、特に口腔内でのプレボテラ・インターメディアの増殖を、歯周病の発症に至らない程度に充分に抑制できるかどうかについては検討されておらず、当然、プレボテラ・インターメディア抑制のために効果的なラクトフェリンの投与経路、投与量および投与間隔についても検討はなされていない。 本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、口腔内でのプレボテラ・インターメディアの増殖を効果的に抑制できるプレボテラ・インターメディア抑制剤を提供することを目的とする。 本発明者らは、鋭意検討を行った結果、ラクトフェリンを、特定の投与量、特定投与間隔で経口投与することにより、口腔内のプレボテラ・インターメディアの増殖を効果的に抑制できることを見出し、本発明を完成させた。 すなわち、本発明は、鉄飽和度が10〜30%のウシ由来のラクトフェリンを有効成分として含有し、前記ラクトフェリン量として、1日あたり10〜50mg/kg体重の量にて深さ4〜5mmの歯周ポケットを有するプレボテラ・インターメディア菌に感染した軽度慢性歯周炎患者に毎日3回経口投与されることを特徴とする軽度慢性歯周炎患者におけるプレボテラ・インターメディアの増殖抑制剤である。 本発明の軽度慢性歯周炎患者におけるプレボテラ・インターメディアの増殖抑制剤は、トローチ剤の形態であることを好ましい態様としている。 本発明のプレボテラ・インターメディア抑制剤によれば、口腔内でのプレボテラ・インターメディアの増殖を効果的に抑制できる。 次に、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の好ましい実施形態に限定されず、本発明の範囲内で自由に変更することができるものである。尚、本明細書において百分率は特に断りのない限り質量による表示である。 本発明のプレボテラ・インターメディア(Prevotella intermedia)抑制剤(以下、「本発明の抑制剤」と略記することがある。)は、プレボテラ・インターメディア、特に、口腔内歯周ポケットに存在するプレボテラ・インターメディアに対して顕著な抑制効果を有する。ここで、本発明におけるプレボテラ・インターメディアの「抑制」とは、その増殖を、歯周病の発症に至らない程度に抑えることができることを意味する。そのため、本発明の抑制剤は、歯周病の予防及び/又は治療に有効である。 本発明の抑制剤の有効成分として使用されるウシ・ラクトフェリンは、ウシ由来のものであれば特に制限はなく、市販品であってもよく、ウシの初乳、移行乳、常乳、末期乳等、これらの処理物である脱脂乳、ホエー等からイオン交換クロマトグラフィー等の常法により分離したラクトフェリンであってもよい。また、組換えDNA技術により得られる組換え乳牛(トランスジェニック・カウ)等により生産されるラクトフェリン等も、同様に本発明に使用することができる。 本発明においては、特に、プレボテラ・インターメディア抑制効果に優れることから、鉄飽和度が10〜30%のラクトフェリンが好ましい。 ここで、「鉄飽和度(%)」は、当該ラクトフェリンの「理論上の鉄結合能」に対する、「実際に含まれる鉄含有量」の割合(%)である。ラクトフェリンには、理論上、1分子当たり2分子の鉄(Fe:分子量=56)原子が結合可能であり、ラクトフェリンの鉄結合能は、次式によって計算される。 鉄結合能=56×2/ラクトフェリンの分子量 たとえばラクトフェリンの分子量を約8万ダルトンとすると、当該ラクトフェリン100g中には、理論上、最大で140mgの鉄が結合し得る。つまり、分子量約8万ダルトンのラクトフェリンの鉄結合能は約140mg/100gである。 本発明の抑制剤は、プレボテラ・インターメディアを効果的に抑制するためには、ラクトフェリン量として、1日あたり10〜50mg/kg体重の量にて毎日3回経口投与される必要がある。 投与量は、剤型、症状、患者の年齢、体重等によっても異なるが、ラクトフェリン量として、1日あたり20〜40mg/kg体重が好ましく、25〜35mg/kg体重がより好ましい。 本発明の抑制剤は、任意の添加剤を用いて所望の製剤の形態に製剤化された医薬組成物であることが好ましい。 製剤の具体例としては、錠剤(糖衣錠、腸溶性コーティング錠、バッカル錠を含む。)、散剤、カプセル剤(腸溶性カプセル、ソフトカプセルを含む。)、顆粒剤(コーティングしたものを含む。)、丸剤、トローチ剤、封入リポソーム剤、液剤、又はこれらの製剤学的に許容され得る徐放製剤等を例示することができる。 医薬組成物中のラクトフェリンの含有量は、剤形にもよるが、通常、当該医薬組成物の総固形分に対し、0.1〜50質量%が好ましく、1〜30質量%がより好ましく、10〜20質量%が特に好ましい。 製剤化にあたって使用できる添加剤としては、特に制限はなく、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、矯味矯臭剤、希釈剤、注射剤用溶剤等の一般的に医薬組成物に用いられている添加剤を使用できる。 賦形剤としては、乳糖、ブドウ糖、白糖、マンニトール、馬鈴薯澱粉、トウモロコシ澱粉、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、結晶セルロース、カンゾウ末、ゲンチアナ末など、結合剤としては例えば澱粉、ゼラチン、シロップ、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等を例示することができる。 崩壊剤としては、澱粉、寒天、ゼラチン末、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、結晶セルロース、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、及びアルギン酸ナトリウム等を、それぞれ例示することができる。 滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、水素添加植物油、及びマクロゴール等、着色剤としては医薬品に添加することが許容されている赤色2号、黄色4号、及び青色1号等を、それぞれ例示することができる。 製剤が錠剤または顆粒剤である場合、必要に応じ、該製剤を、白糖、ヒドロキシプロピルセルロース、精製セラック、ゼラチン、ソルビトール、グリセリン、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、フタル酸セルロースアセテート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メチルメタクリレート、及びメタアクリル酸重合体等により被膜することもできる。 本発明の抑制剤は、特に、口腔内で長時間、高濃度でラクトフェリンが存在でき、本発明の効果に優れることから、トローチ剤の形態であることが好ましい。 本発明の抑制剤がトローチ剤の形態である場合、ラクトフェリンが口腔内に40μg/ml以上の濃度で1時間以上残存するように製剤化することが好ましい。 口腔内におけるラクトフェリンの濃度40μg/ml以上での残存時間は、たとえば、トローチ剤の大きさ、質量、硬度等の物性や、ラクトフェリンの配合量、使用する添加剤の種類や配合量、打錠速度等の打錠条件などを調整することにより調整できる。具体的には、たとえばトローチ剤1錠あたりの質量を1〜3gにすることにより残存時間を長くできる。 トローチ剤中のラクトフェリンの含有量は、当該トローチ剤の総質量に対し、10〜30質量%が好ましく、15〜25質量%がより好ましい。 ラクトフェリンは、上述したように、直接的にはプレボテラ・インターメディアの発育を抑制しないことが知られているが、本発明の抑制剤によれば、歯周病原性細菌の1つとして知られるプレボテラ・インターメディアの抑制効果が得られる。かかる効果が得られる理由としては、定かではないが、特定量を特定間隔で経口摂取することにより、口腔内において、ラクトフェリンが高濃度の状態で維持されることとなり、これによって、歯肉粘膜の免疫系が活性化され、プレボテラ・インターメディアを歯周ポケットから排除する排除能が向上したためではないかと推測される。 また、本発明の抑制剤は、口腔内におけるプレボテラ・インターメディアの増殖を、歯周病が発症しない程度に抑制する効果を奏するため、歯周病の予防または治療に有用である。 また、本発明の抑制剤の有効成分であるラクトフェリンは、食品成分の一つであるため、安全性が高く、長期間連続的に投与しても副作用のおそれが少ない。そのため、本発明の抑制剤によれば、これまでの歯周病の治療法である抗生物質や消毒剤の投与による副作用、耐性菌、宿主に有益な微生物の死滅などの問題を回避することができる。 さらに、本発明の抑制剤は、副作用が殆ど無く、耐性菌が生じる心配が少ないことから、年齢や性別に関係なく、多くの歯周病患者等に適用することが可能である。また、本発明の抑制剤によれば、歯科医院での通院治療の負担を軽減することもできる。 本発明の抑制剤は、単独で使用してもよく、他の医薬組成物または飲食品と併用してもよい。該他の医薬組成物または飲食品としては、プレボテラ・インターメディアの抑制に効果を有するものが好ましい。かかる医薬組成物または飲食品との併用によって、プレボテラ・インターメディアの抑制効果をさらに高めることができる。 本発明の抑制剤と併用される医薬組成物または飲食品は、ラクトフェリンを含有するものであってもよく、含有しないものであってもよい。 前記他の医薬組成物または飲食品は、本発明の抑制剤とは別個の医薬組成物または飲食品等として、本発明の抑制剤と組み合わせて商品化してもよい。 本発明においては、本発明の抑制剤を飲食品に含有させて飲食品の形態で摂取させることも可能である。ラクトフェリンは食品成分として安全性の高い成分であるため、本発明の抑制剤を含有させた飲食品は、安全で、且つ健康維持及び健康増進に有用なものである。 本発明の抑制剤を含有する飲食品は、たとえば飲料又は食品素材にラクトフェリンを添加することにより製造できる。飲食品として好ましい形態は、例えば、錠菓、清涼飲料、乳製品、健康食品、菓子類等を例示することができる。 また、本発明の抑制剤を飲食品に添加して、プレボテラ・インターメディアの抑制効果を利用するような種々の用途をとった飲食品として利用することも可能である。その場合の飲食品は、プレボテラ・インターメディアを抑制するためとの用途が表示された飲食品、例えば「プレボテラ・インターメディアの抑制用と表示された、プレボテラ・インターメディアの抑制効果を有する飲食品」、「プレボテラ・インターメディアの抑制用と表示された、ラクトフェリンを含有する飲食品」等として販売することが好ましい。 なお、以上のような表示を行うために使用する文言は、「プレボテラ・インターメディアの抑制用」という文言のみに限られるわけではなく、それ以外の文言であっても、プレボテラ・インターメディアの抑制効果、若しくはプレボテラ・インターメディアが原因で引き起こされる疾患、例えば歯周病等の予防又は治療効果を表す文言であれば、本発明の範囲に包含されることはいうまでもない。そのような文言としては、例えば、需要者に対して、プレボテラ・インターメディアの抑制効果及び/又はプレボテラ・インターメディアが原因で引き起こされる疾患の予防又は治療効果を認識させるような種々の用途に基づく表示も可能である。 前記「表示」の行為(表示行為)には、需要者に対して上記用途を知らしめるための全ての行為が含まれ、上記用途を想起・類推させうるような表示であれば、表示の目的、表示の内容、表示する対象物・媒体等の如何に拘わらず、すべて本発明の「表示」の行為に該当する。しかしながら、需要者が上記用途を直接的に認識できるような表現により表示することが好ましい。具体的には、本発明の飲食品に係る商品又は商品の包装に上記用途を記載する行為を表示行為として挙げることができ、さらに商品又は商品の包装に上記用途を記載したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸入する行為、商品に関する広告、価格表若しくは取引書類に上記用途を記載して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に上記用途を記載して電磁気的(インターネット等)方法により提供する行為、等を例示できる。 一方、表示される内容(表示内容)としては、行政等によって認可された表示(例えば、行政が定める各種制度に基づいて認可を受け、そのような認可に基づいた態様で行う表示)であることが好ましく、そのような表示内容を、包装、容器、カタログ、パンフレット、POP等の販売現場における宣伝材、その他の書類等へ付することが好ましい。 また、例えば、健康食品、機能性食品、経腸栄養食品、特別用途食品、保健機能食品、特定保健用食品、栄養機能食品、医薬用部外品等としての表示を例示することができる。特に、厚生労働省によって認可される表示、例えば、特定保健用食品制度、これに類似する制度にて認可される表示を例示できる。後者の例としては、特定保健用食品としての表示、条件付き特定保健用食品としての表示、身体の構造や機能に影響を与える旨の表示、疾病リスク低減表示等を例示することができ、詳細にいえば、健康増進法施行規則(平成15年4月30日日本国厚生労働省令第86号)に定められた特定保健用食品としての表示(特に保健の用途の表示)、及びこれに類する表示が、典型的な例として列挙することが可能である。 次に実施例を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。[製造例1] ラクトフェリン(森永乳業社製、鉄飽和度15%)300g、還元麦芽糖水飴(東和化成社製)810g、粉あめ(昭和産業社製)172.5g、コーンスターチ(三栄源エフ・エフ・アイ社製)165g、ステビア甘味料(三栄源エフ・エフ・アイ社製)1.5g、ヨーグルト香料(長谷川香料社製)6g、およびグリセリン脂肪酸エステル(三栄源エフ・エフ・アイ社製)45gを均一に混合して混合粉末を得た。 この混合粉末を、打錠機(畑鉄鋼所社製)を使用して、1錠当り1.5g、12錠/分の打錠速度で連続的に打錠し、硬度7.3kgのトローチ剤900錠(約1350g)を製造した。得られたトローチ剤1錠中のラクトフェリンの含有量は約0.3gである。[製造例2] ラクトフェリン(森永乳業社製、鉄飽和度20%)250g、マルツデキストリン(松谷化学工業社製)635g、脱脂粉乳(森永乳業社製)85g、ステビア甘味料(三栄源エフ・エフ・アイ社製)1g、ヨーグルト・フレーバー(三栄源エフ・エフ・アイ社製)5g、およびグリセリン脂肪酸エステル(理研ビタミン社製)24gを均一に混合して混合粉末を得た。 この混合粉末を、打錠機(畑鉄鋼所社製)を使用して、1錠当り1.5g、12錠/分の打錠速度で連続的に打錠し、硬度8.5kgのトローチ剤600錠(約900g)を製造した。得られたトローチ剤1錠中のラクトフェリンの含有量は約0.3gである。[比較製造例1] デキストリン(松谷化学工業社製)300.75g、還元麦芽糖水飴(東和化成社製)450g、粉あめ(昭和産業社製)450g、コーンスターチ(三栄源エフ・エフ・アイ社製)225g、ヨーグルト香料(長谷川香料社製)6g、グリセリン脂肪酸エステル(三栄源エフ・エフ・アイ社製)30g、ショ糖脂肪酸エステル(三栄源エフ・エフ・アイ社製)30g、および着色料(三栄源エフ・エフ・アイ社製)8.25gを均一に混合して混合粉末を得た。 この混合粉末を、打錠機(畑鉄鋼所社製)を使用して、1錠当り1.5g、12錠/分の打錠速度で連続的に打錠し、硬度7.3kgの、ラクトフェリンを含まないトローチ剤1000錠(約1500g)を製造した。[試験例1] 本試験は、本発明の抑制剤による、口腔内歯周ポケットに存在するプレボテラ・インターメディアの抑制効果を調べるために行った。(1)試料の調製 製造例1で製造したトローチ剤を試験試料(ラクトフェリン群)とし、比較製造例1で製造したトローチ剤を対照試料(プラセボ群)とした。(2)試験方法 「a.試料の投与」 深さ4〜5mmの歯周ポケットを有するプレボテラ・インターメディア菌に感染した軽度慢性歯周炎患者6名を対象(被験者A〜F)とし、二重盲検法により試験を行った。具体的には、前記試験試料(ラクトフェリン群)を3名に、残りの3名に対照試料(プラセボ群)を、1日3回、1回あたり2錠、経口投与した。この際、各トローチ剤は、咬まずに口腔内で溶かすように摂取してもらった。トローチ剤の投与は、3ヶ月間継続した。 「b.測定サンプルの回収」 試験試料又は対照試料の投与前、投与開始から1ヶ月経過時および3ヶ月経過時に、プラークを除去し、その後、各被験者の2被験歯(前歯および小臼歯)について、その歯周ポケット最深部に滅菌ペーパーポイントを2枚挿入し、滲出液を採取し、滅菌バイアルに入れ冷蔵保存した。 「c.プレボテラ・インターメディア菌数の測定」 上記のようにして各群、計6被験歯から回収した滲出液に含まれるプレボテラ・インターメディアの菌数を、リアルタイムPCR法によって測定した。 リアルタイムPCR法としては、滅菌ペーパーポイントに付着した菌体からDNAを抽出し、当該DNAを鋳型として、プレボテラ・インターメディアDNAの特定領域を挟むように設計された特異的なプライマー・ペア((株)ビー・エム・エルにより設計されたものを使用。)と、TaqMan(登録商標:アプライドバイオシステムズ社)プローブ(当該プローブは、プレボテラ・インターメディアDNAの特定領域に結合可能なものを使用。)を用いてPCR反応を行った。 PCR反応は、PRISM7700SDS(アプライドバイオシステムズ社製)を用いて行い、PCRサイクルに伴って増加する蛍光強度をリアルタイムで測定し、当該装置によって対数増幅期と判断された一定の蛍光強度に達したPCRサイクル数を求めた。 これとは別に、前記プレボテラ・インターメディアDNAを鋳型として、前記の特異的なプライマーを用いて増幅したDNA断片を挿入したプラスミドについて、段階希釈したものを用いて上記と同様にリアルタイムPCRを行って検量線を作成し、先ほど求めたPCRサイクル数を換算することにより、プレボテラ・インターメディアDNAのコピー数(菌数)を算出した。(3)試験結果 プレボテラ・インターメディア菌数の測定結果を表1に示す。 試料投与開始前と3ヶ月経過時のプレボテラ・インターメディア菌数を比較すると、プラセボ群では5被験歯で増加した。これに対し、ラクトフェリン群では、3被験歯で減少し、残りの3被験歯は、投与前、投与後ともに0のままであり、プレボテラ・インターメディア菌数が増加した被験歯はないことが判明した。 また、試料投与開始から1ヶ月経過時においても、上記と同様、プラセボ群では菌数が増加し、ラクトフェリン群で菌数が減少する傾向が確認された。 従って、本発明の抑制剤の経口投与によって、口腔内歯周ポケットのプレボテラ・インターメディアの抑制効果が得られることが明らかとなった。 表1中、被験者Aの体重は50kgであり、1日あたりのラクトフェリンの投与量は36mg/kg体重であった。被験者Bの体重は40kgであり、1日あたりのラクトフェリンの投与量は45mg/kg体重であった。被験者Cの体重は75kgであり、1日あたりのラクトフェリンの投与量は24mg/kg体重であった。[参考試験] 本試験は、本発明の抑制剤を経口投与した際の、ウシ・ラクトフェリンの口腔内での残存効果を調べるために行った。(1)試料の調製 実施例1で製造したトローチ剤を試験試料とした。(2)試験方法 「a.試料の投与」 被験者3名(被験者G〜I)に前記試験試料を咬まずに舐めてもらい、約5分間かけて口腔内で溶かしてもらった。 「b.測定サンプルの回収とラクトフェリン濃度の測定」 試験試料摂取前、摂取(トローチ剤を口腔内に入れた時点から)5分後、30分後、60分後のそれぞれの時点で、被験者の唾液を測定サンプルとして採取し、該測定サンプル中のウシ・ラクトフェリン濃度を、ラテックス凝集法によって測定した。 ラテックスラテックス凝集法について、具体的には、唾液を3,000rpmで3分間遠心分離して上清を回収し、トリス塩酸緩衝液(pH7.5)にて10倍ごとに希釈して試験試料とした。次いで、抗ウシ・ラクトフェリン・ウサギIgGを結合させたポリスチレン・ラテックスビーズを試験試料とともに混合し、多目的分析器TMS−1024(東京貿易医学システム社製)を用いて、ウシ・ラクトフェリン量に応じて生じる濁度(OD:800nm)を2分間モニターし、1分あたりの濁度増加量を測定した。この値を、既知量のウシ・ラクトフェリン標準試料を用いて作成した検量線に対してプロットし、唾液中のウシ・ラクトフェリン量を算出した。(3)試験結果 本試験の結果を表2に示す。その結果、被験者3名の唾液中のウシ・ラクトフェリン濃度は、試験試料の摂取開始から摂取5分後にかけて急激に増加し、その後、次第に減少した。このウシ・ラクトフェリン濃度の減少は、摂取30分後以降は緩やかなものであり、摂取60分後において、摂取30分後の濃度の30〜60%程度の濃度が維持されていた。また、その濃度も40μg/ml以上であり、一般的なヒト唾液中のラクトフェリン濃度(約5μg/ml)に比べ、非常に高かった。 上記の結果から、本発明の抑制剤を経口投与、特にトローチ剤の形態で経口投与することによって、ラクトフェリンが長時間にわたって一定濃度以上に残存することが確認できた。 このように、プレボテラ・インターメディアの増殖抑制の有効成分であるラクトフェリンが長時間にわたって一定濃度以上に残存することから、本発明の抑制剤が、プレボテラ・インターメディアの増殖を効果的に抑制することが示唆される。 本発明の抑制剤によれば、歯周病原性細菌の1つとして知られるプレボテラ・インターメディアの抑制効果が得られる。そのため、本発明の抑制剤は、歯周病の予防または治療に有用である。 また、本発明の抑制剤は、食品成分の一つであるラクトフェリンを有効成分とするものであり、副作用や耐性菌、宿主に有益な微生物の死滅などの問題について回避することが可能である。また、ラクトフェリンは食品の一部として摂取することが可能であることから、本発明の抑制剤に留まらず、特定保健用食品等の健康食品として適用することも可能である。 鉄飽和度が10〜30%のウシ由来のラクトフェリンを有効成分として含有し、前記ラクトフェリン量として、1日あたり10〜50mg/kg体重の量にて深さ4〜5mmの歯周ポケットを有するプレボテラ・インターメディア菌に感染した軽度慢性歯周炎患者に毎日3回経口投与されることを特徴とする軽度慢性歯周炎患者におけるプレボテラ・インターメディアの増殖抑制剤。 トローチ剤の形態である請求項1に記載の軽度慢性歯周炎患者におけるプレボテラ・インターメディアの増殖抑制剤。


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