タイトル: | 公開特許公報(A)_RNAの抽出方法 |
出願番号: | 2006272986 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | C12N 15/09,C12Q 1/68 |
鈴木 智博 JP 2008086283 公開特許公報(A) 20080417 2006272986 20061004 RNAの抽出方法 キヤノン株式会社 000001007 宮崎 昭夫 100123788 石橋 政幸 100106138 緒方 雅昭 100127454 鈴木 智博 C12N 15/09 20060101AFI20080324BHJP C12Q 1/68 20060101ALN20080324BHJP JPC12N15/00 AC12Q1/68 A 11 OL 9 4B024 4B063 4B024AA11 4B024AA20 4B024CA04 4B024CA09 4B024CA11 4B024HA12 4B024HA20 4B063QA18 4B063QQ52 4B063QR55 4B063QR62 4B063QS14 4B063QS25 4B063QS34 本発明は、細胞等からのRNAの抽出方法に関する。 近年、様々な解析技術の進歩により、生物の分子レベルの機能解明が進んでいる。なかでも疾病に関わる現象については、その解明による効果が大きいことから、積極的に取り組みがなされている。生物をつかさどる物質は様々であり、核酸、タンパク質、糖、ホルモンなど多岐にわたっているが、なかでもDNAやmRNAなどの核酸については研究が進み、様々な疾病との関連が解明されている。 たとえば重要な疾病の一つである「がん」についても様々な研究が行われており、特定の遺伝子のmRNAの発現量ががん細胞と正常細胞とで異なることを利用して、mRNAを定量することで微少量のがん細胞を検出する手法などが考案されている。 また、核酸の分析方法は近年進歩が著しく、Affymetrix社のGeneChipに代表されるように、微量のmRNAであっても厳密に分析できるようになっている。それにより、微量なmRNAの有無や量を知ることができることはもちろんのこと、これまで知られていなかった遺伝子の存在も知られるようになってきている。 mRNAの解析を行う上で重要なことは、提供される検体からのmRNAの抽出である。検体とは多くの場合、組織片や細胞浮遊液であるが、遠心分離、ホモジナイズ等により検体中のmRNA成分を抽出している。いずれの場合であっても、壁を有する細胞の状態で検体は提供されることが多いため、細胞中のRNA成分を抽出するためには、細胞壁を破砕し、細胞壁内に含有するRNAまたはmRNAを抽出する必要がある。 ところで、RNAはRNA分解酵素にさらされると急速に分解される。RNA分解酵素は実験環境においても比較的多くの場所に存在するため、RNAの抽出作業には注意を必要とする。RNaseフリーもしくは不活性化してある抽出キットもしくは専用の抽出試薬が様々なメーカーから供給されており、一般的にはそれらを利用してRNAの抽出および精製を行う。これらのキット類を使用することによって、微量のmRNAも収率を下げることなく高い収率で回収を行うことができる。 多くのRNA回収方法が知られている。AGPC法、シリカメンブレン法、陰イオン交換法、アフィニティ精製法などが一般によく知られている。AGPC法は、例えば非特許文献1に詳しい記載があるが、その概要は以下の通りである。(1)細胞等の生物材料に、グアニジンチオシアン酸塩、フェノール、クロロホルムを含む溶液を添加して細胞膜や細胞壁を破壊し、含有するタンパク質を変性させ、DNAを有機溶媒相へ抽出する。(2)遠心分離により、RNAが含まれる水相のみを回収する。(3)水相にエタノール又はイソプロパノールを添加することにより、RNAを析出させる(エタノール沈殿またはイソプロパノール沈殿)。(4)さらに遠心分離によってRNAのみを分離する。 シリカメンブレン法について技術の詳細は、例えば特許文献1に記載がある。細胞などの生物材料から核酸を一段階で抽出することが可能なうえ、溶出液として水またはTEバッファーなど低濃度の緩衝液を使用する。従ってエタノール沈殿法などの脱塩、濃縮のための操作を経ることなく、抽出した核酸を直ちに後の解析に直接使用することができる特徴を有している。特開平2−289596号公報Analytical Biochemistry 162,156−159(1987) すでに述べたように、発現解析をはじめとした核酸解析技術の進歩は著しく、例えば癌細胞のメカニズム解明などにおいても多くのことがわかってきた。特に、これまではその存在量の少なさのために注目されていなかった遺伝子でも、癌のキャラクタリゼーションや正常細胞との区別をするために重要な遺伝子であることがわかってきている。 通常、mRNAを測定するためには、酵素による逆転写反応等を行い、一本鎖DNAを合成したのち、その配列や含有量を定量PCRなどの分子生物学の技法を用いて測定することが多い。RNAはRNA分解酵素により速やかに分解されてしまうことや、PCRあるいはcRNA合成を行う上でも、逆転写を経る方が良いというのが、その理由である。 微少量のmRNAを測定対象とする場合、細胞に由来するDNAの混入は絶対に避けなければならない。なぜなら、mRNAはDNAからの転写により合成されており、mRNAの各部分配列はDNA中に少なくとも1コピーは存在するからである。 背景技術に記載したRNA抽出法もDNAの混入を防ぐための工夫はされている。AGPC法では有機相と水相の液量比やpH値の制御を厳密におこなっている。シリカメンブレン法でもカラム洗浄を繰り返すなどの工夫がされている。しかし、これらの手法を用いても物性が類似しているDNAを完全に除去することは困難である。混入したDNAを除去するためにDNA分解酵素(DNase)などによる処理を追加することもあるが、操作が煩雑な上、RNAの回収率を低下させることにもなりかねない。また、DNA分解酵素自体の精製度が低く、RNA分解酵素が含まれていることもあるため、特に微少量のmRNAの抽出には不向きである。 したがって、細胞由来のDNAを含まない、精度の高いRNAの抽出方法の開発が望まれていた。 上記課題を解決するために研究を重ねた結果、細胞からの抽出過程において、細胞に由来しないDNA含有物を添加することにより、細胞由来のDNA成分の混入を大幅に低減できることを見出した。 RNAとDNAの混合物からRNAを精製(抽出)する工程においては、DNAとRNAの物理的性質の差を利用し、溶液中や担体表面にRNAだけが残るような条件を設定する。しかしながら、DNAを排除する(DNAが存在しない)ような条件であっても、DNAを完全に排除できるわけではなく、ごく微量ではあるが、一定量のDNAの溶解または吸着は避けられない。 そこで、無害なDNAを添加することにより全DNAの絶対量を増やし、相対的に細胞由来のDNAの比率を下げ、「一定量」中の細胞由来DNAの絶対量を低減させるというのが本発明である。即ち、わずかながら混入してしまうDNAを、無害なDNA(細胞由来ではないDNA)とするために、細胞由来ではない全く異なるDNAで置換してしまうというのが本発明のメカニズムである。 したがって、本発明によるRNAの抽出方法は、細胞由来のDNAおよびその他の夾雑物を含む混合物からのRNAの抽出方法であり、抽出対象であるRNAの精製時に、DNAを主成分とする核酸混合物を添加することを特徴とするRNAの抽出方法である。 本発明のRNAの抽出方法は細胞由来のDNAおよびその他の夾雑物を含む混合物からのRNAの抽出方法であり、RNA抽出後に行う逆転写反応において用いる基質またはプライマーDNAを、RNA抽出工程において添加することを特徴とするRNAの抽出方法である。 本発明により、組織片や細胞からのRNA抽出時に、細胞由来DNA成分の混入を限りなくゼロにすることができるRNAの抽出方法を提供することができた。本発明によるRNAの精製方法は、測定対象のサンプルに含まれるDNAの混入を防ぐことができるため、わずかなDNAの混入が大きく定量性を損なう微少量のmRNAを測定対象とすることができる。癌細胞などの検出や解析においては、わずかなmRNAの有無により検出や解析(診断)が行われることがあるが、細胞中に含まれる微少量のmRNAを精度よく検出することで、質の高い診断や分析が可能となる。 本発明を利用してRNA抽出することができる生物試料としては、RNAを含むものであればいずれの生物試料も用いることが可能である。すなわち、ヒトを含む動物から採取した組織切片、細胞が浮遊する細胞浮遊液やそれらを凝集したペレット、人工的に培養した細胞などを挙げることができ、それらは液状、固体状いずれの形態でもよい。また、細菌、植物、ウィルスなど動物組織以外の生物試料からのRNA抽出においても適用することができる。また、RNA抽出対象の生物試料以外の夾雑物が混入していても、何ら障害なく本発明のRNA抽出方法が適用可能である。例えば、白血球や赤血球を含む、全血や血清、唾液、尿、精液なども適用可能である。 細胞などからのRNAの抽出は、通常、DNAやタンパク質、脂質などの混入があるため、各種のRNA抽出方法が採用されている。代表的な手法としては、pHのコントロールにより有機溶媒にDNAを抽出するAGPC法、シリカゲルなどの担体にRNAを吸着させ、細胞由来DNAを含む不要な成分を除去するシリカメンブレン法などである。 AGPC法は、細胞壁などの破砕とRNA分解酵素の失活のため、グアニジンチオシアネートの溶液を加えた後、2Mの酢酸ナトリウム、水飽和した平衡酸性フェノール、クロロホルムを加え遠心分離する。その結果、中間相を除いて2相に分かれた液体の水相にRNA、有機相にDNAを抽出する。 本発明のDNA含有物は水溶液の状態で添加するのが好ましく、RNA抽出工程のいずれの段階においても添加することが可能である。水相中に含まれる細胞由来のDNAを置換する効率が大きい方が、本発明による細胞由来DNAの除去効果は大きいので、できるだけ早い工程においてDNAを添加することが好ましく、グアニジンチオシアネートの溶液を加える前にサンプルに直接添加することが好ましい。 添加するDNA溶液の量および濃度は特に制限はないが、予め抽出試薬等を準備している場合には、その抽出精度に影響を与えない範囲で液量を調整することが望ましい。一般的に抽出試薬はRNAが純度良く抽出できるように最適化されているため、添加する核酸含有液の液量、すなわち水の持込量をできるだけ少なくした方が、影響が少ない。 添加するDNAとしては、抽出したRNAの利用(測定、定量、解析)において影響の少ない配列であればいかなるDNAでも利用可能である。合成されたDNAであっても、また天然、非天然のDNAであってもよい。例えば、アデニンのポリマーであるPoly−AやチミンのポリマーであるPoly−Tは本発明に用いる核酸として利用可能である。また、抽出しようとするRNAの生物種とは異なる生物種を利用することも可能であり、その場合、抽出したRNAの用途に応じて障害となるDNAが含まれない核酸含有物であれば用いることができる。 また、発現解析などを目的としてmRNAを抽出する場合には、抽出したRNAから逆転写反応によりcDNAを合成したり、あるいはプロモーター配列を有するcDNAを合成し、cDNAをテンプレートとしたcRNA合成を行ったりすることもある。このような場合には、逆転写反応の工程において、反応に必要なDNAを使用するが、そこで用いるDNAを本発明の核酸含有物の一部もしくは全部として用いることも可能である。例えば、インビトロジェン社が市販しているSuperscriptシリーズの逆転写酵素などでは、逆転写用のプライマーとして、12から18merのオリゴdTや、5merから9merのランダムプライマーの使用が推奨されている。この場合、それらのDNAを本発明のRNA抽出時の添加DNAとして使用することが可能である。また、cRNA合成を行う場合には合成するcDNAにプロモーター配列が必要となるため、逆転写反応時にプロモーター配列を有するプライマーを用いることが多い。プロモーターの種類としては様々なものが知られているが、主なプロモーターとしてSP6、T7、T3などが挙げられる。なかでもT7プロモーターは広く利用されており、この為のプライマーとして下記のプライマーが逆転写反応に使用される。5'GGCCAGTGAATTGTAATACGACTCACTATAGGGAGGCGGTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTT3'(配列番号:1) 本発明によるRNAの抽出においても、上記配列番号1のDNAを使用することが可能である。 また、遺伝子特異的なプライマーにより逆転写を行う場合には、それらのプライマーを添加するDNAとして用いることもできる。 RNA抽出後に逆転写反応を行い、その際、蛍光色素や放射線同位体などで直接標識する場合には、添加するDNAにそれらの標識をしておくことも可能である。 AGPC法及び同じ原理による抽出は広く利用されており、関連する試薬やキットも多く市販されている。ニッポンジーン社から市販されているISOGENは広く利用されているキットである。同キットを使用する場合においても、本発明のRNA抽出法を適用することは可能であり、細胞や組織片に対してISOGENを添加する際に、本発明のDNA溶液を予め添加しておく事が好ましい。この場合、ISOGENの液組成を著しく変えないようなるべく少量の液量でDNAを添加することが好ましい。 また、より精製度の高いRNAの抽出を行う場合には、1回目の抽出で得られたRNAをサンプルとして、複数回のRNA抽出を施すこともあるが、本発明のRNA抽出は、いずれの状況でも適用することが可能である。 AGPC法以外のRNA抽出においても本発明によるRNA抽出は適用可能である。シリカメンブレン法は、キアゲン社やアジレント社などから同法を利用したキットが市販されている。シリカメンブレン法はイオン条件制御下でのシリカゲルメンブレンへの選択的な吸着メカニズムを利用したRNAの抽出方法である。塩濃度の違いによりDNAとRNAの選択を行うため、厳密には抽出RNAへの細胞由来DNA由来の混入が避けられない。本発明によるRNA抽出方法は、細胞由来ゲノムを含む夾雑物に対し、障害とならないDNAを添加することによりゲノム由来のDNAの混入を防ぐ事ができる。 シリカメンブレン法において本発明のRNA抽出法を用いる場合には、サンプルをアプライする前のシリカメンブレンに対し、事前にDNAを添加する方法も効果的である。すなわち、事前にシリカメンブレンにDNAをアプライすることにより、物理的な吸着や結合を添加したDNAにより飽和させることができるためである。 AGPC法、シリカメンブレン法以外に、陰イオン交換法、アフィニティ精製法などにも本発明によるRNAの抽出方法が利用できる。いずれの抽出方法も、対象とする検体に対し本発明で適用可能なDNAを添加することにより、細胞由来DNAの混入を大幅に低減することが可能である。また、シリカメンブレン法と同様に、抽出精製用の担体が存在する場合には、事前に担体にDNAをアプライしておくほうがより効果的であり、RNAの利用において障害となる細胞由来のDNAの混入を避けることができる。 シリカメンブレン法、陰イオン交換法、アフィニティ精製法などAGPC法以外のRNA抽出法においても、添加するDNAの種類はAGPC法と同様に各種のDNAの選択が可能である。また、標識されたDNA、逆転写反応用プライマーなども好適に用いることができる。 以下具体的な実施例を示し、本発明を更に詳細に説明する。 <実施例1> (1)細胞からのtotal RNA回収とcDNAの調製 (1−1)ISOGEN(AGPC法)によるtotal RNAの回収 ヒト胃より採取された胃がん由来細胞株(セルライン) KATO IIIを入手して、定法に従って培養を行い、約1×105個の培養細胞を得た。得られた培養細胞は遠心分離を行い、ペレット状にし、上ずみを除去して細胞を回収した。 続いて、下記の塩基配列を有するDNAを合成した。通常の方法に従って合成し、HPLC精製した後、最終濃度が100μMの濃度となるように水に溶解した。5'GGCCAGTGAATTGTAATACGACTCACTATAGGGAGGCGGTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTT3'(配列番号:1) 得られたDNA溶液の50μlを、ペレット状に回収した細胞に添加した。 続いてニッポンジーン社製RNA抽出キット「ISOGEN」を用い、ISOGEN 500μlを加えてペレットを懸濁させた。攪拌装置等を用いて充分懸濁させた後、室温にて5分間放置した。 次に、100μlのクロロホルムを加え再びよく攪拌した後、数分間室温で静置した。 4℃に設定した微量高速遠心器を用いて、12000gで15分間遠心し、上部にたまった水相成分を回収した。回収は、フェノール相と水相の中間部分を取らないよう注意して行った。 回収された水相成分を別のチューブに移し、そのチューブにイソプロパノール500μlを添加した。イソプロパノールにて軽くペレットをリンスしたのち、約10分間室温で静置し、4℃に設定した微量高速遠心器を用いて12000gで10分間遠心した。 チューブ底部に沈殿したペレット成分を吸引しないよう注意して、上部のイソプロパノールを吸引除去し、70%の濃度に調製したエタノールを500μl添加した。イソプロパノールと同様、エタノール溶液にて軽くペレットをリンスし、4℃に設定した微量高速遠心器を用いて7500gで5分間遠心した。チューブ底部に沈殿したペレット成分を吸引しないよう注意して、上部のエタノールを除去し、軽く風乾した。 (1−2)cDNAの合成 得られたtotal RNAのうち0.2μgを、インビトロジェン社製SuperScript Choice System for cDNA Synthesisを用いて、T7プロモーター配列を有するプライマー(配列番号1の核酸と同じ)による逆転写を行った。具体的には下記の方法で行った。なお、反応は最終液量が20μlとなるように調製した。 11μlの液量としたtotal RNA 0.2μgにT7プロモーター配列を有するプライマー(100μM)1μlを加え、70℃で10分間熱変性させた。急冷後、キットに添付の5×バッファー4μl、0.1MのDTT 2μl、10mMのdNTP Mix 1μlを加えたのち、逆転写酵素Superscript II RTを1μl加え、42℃で1時間インキュベートした。1時間後、急冷し1st strand溶液約20μlを回収した。 (1−3)逆転写(2nd strandの合成) 得られた1st strand溶液約20μl全量を、精製せずにSuperScript Choice System for cDNA Synthesisのマニュアルに従って2nd strand合成した。具体的には、5×バッファー 30μl、10mMのdNTP Mix 3μl、DNAリガーゼ 1μl(10ユニット)、DNAポリメラーゼI 4μl(40ユニット)、RNaseH 1μl(2ユニット)を加えたのち、16℃で2時間反応させた。これにより得られた二本鎖cDNAは、末端が平滑化されていないため、T4 DNA ポリメラーゼ 2μl(10ユニット)により平滑化処理した。 得られた二本鎖cDNAは、フェノール/クロロホルム/イソアミルアルコールを用いて抽出精製し、フェーズロックゲルにて核酸成分を精製した。得られたcDNAは適当量の水に溶解し、吸光度測定により純度と収量を測定した。 (2)定量PCRによる発現量定量 得られた二本鎖cDNAを用いて、定量PCRにより含まれる遺伝子の発現量を測定した。測定対象はCEAとCCL5の各遺伝子とした。 定量PCRのシステムは、アプライドバイオシステム社から提供されている7500RealTime PCR Systemを利用した。 各遺伝子を定量するために、TaqMan Gene Expression Assayを利用した。測定用のプローブはアプライド社から提供されている調製済みのプローブを使用した。具体的には、CEA測定用としてHs00237075、CCL5用としてHs00174575を用いた。 PCRは20ngのテンプレートを用い、液量は50μlのスケールで行った。PCR用のMaster Mixとして、TaqMan 2× Universal Master Mix NO AmpErase UNGを使用した。PCRのサイクルは下記表1の2段階 PCRサイクルで行った。 解析は上記定量PCRシステムに付属する解析ソフトにより行い、PCR産物の量に応じて高くなるソフト上の数値であるDelta Rnの値が、0.1を上回った時のサイクル数をCt値として定義し、各遺伝子の定量を行った。CEAおよびCCL5のCt値を下記表2に示す。 この結果から、本実施例でサンプルとしたKATOIIIは、CEAが一定の発現を示すことがわかり、CCL5の発現が全く無いこと(測定感度以下)がわかった。各種報告されているデータベースから、KATOIIIではCCLの発現はほぼゼロであることが知られている。したがって、この結果から、RNA由来ではなく細胞が有するDNA由来のノイズが出ていないこと、すなわちDNAの混入がゼロであることが示された。 <比較例1> 実施例1と同様の実験を、T7プライマーの添加をすることなく行った。すなわち、ISOGEN処理を行う前のT7プライマーの添加を行わず、通常通りの処理方法に従ってRNA抽出を行った。 T7プライマーを添加しない以外は、total RNAの抽出、二本鎖cDNAの合成までは実施例1と同様に行った。また、定量PCRについてもアプライドバイオシステム社の同様のシステムにより行った。測定されたCt値を下記表3に示す。 この結果から、T7プライマー処理を施さないRNA抽出物はCCL5の発現が示された。既に述べたとおり、KATOIIIではCCLの発現はほぼゼロであることが知られている。従って本比較例1で示されたCCL5の発現はDNA由来のシグナルである可能性が高いと考えられる。 DNAを含む細胞からRNAを抽出する方法であって、RNAの抽出過程において、DNAを含む核酸含有物を添加することを特徴とする、RNAの抽出方法。 前記核酸含有物が、RNA抽出後に行う逆転写反応の基質となるDNAを含むことを特徴とする、請求項1に記載のRNAの抽出方法。 前記基質となるDNAが、RNA抽出後に行う逆転写反応のプライマーであることを特徴とする、請求項2に記載のRNAの抽出方法。 前記逆転写反応のプライマーが、鎖長5から9の範囲のランダムプライマーであることを特徴とする請求項3に記載のRNAの抽出方法。 前記逆転写反応のプライマーが、下記配列を有するプライマーを含むことを特徴とする請求項3に記載のRNAの抽出方法。5'GGCCAGTGAATTGTAATACGACTCACTATAGGGAGGCGGTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTT3'(配列番号:1) 前記逆転写反応のプライマーが、遺伝子特異的プライマーを含むことを特徴とする請求項3に記載のRNAの抽出方法。 添加するDNAが、放射性同位体または蛍光物質により標識されていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のRNAの抽出方法。 前記RNAの抽出方法がAGPC法であることを特徴とする、請求項1から7のいずれかに記載のRNAの抽出方法。 前記RNAの抽出方法がシリカメンブレン法であることを特徴とする、請求項1から7のいずれかに記載のRNAの抽出方法。 前記RNAの抽出方法が陰イオン交換法であることを特徴とする、請求項1から7のいずれかに記載のRNAの抽出方法。 前記RNAの抽出方法がアフィニティ精製法であることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のRNAの抽出方法。 【課題】DNAを含む細胞からRNAを抽出する際に、細胞由来のDNAを含まない、精度の高いRNAの抽出方法を提供する。【解決手段】DNAを含む細胞からRNAを抽出する方法であって、RNAの抽出過程において、DNAを含む核酸含有物を添加することを特徴とする、RNAの抽出方法を提供する。【選択図】なし配列表