タイトル: | 公開特許公報(A)_小動物の白血球分離方法 |
出願番号: | 2006254224 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | G01N 33/48,A61D 1/00,A61M 1/02 |
柳沢 佳子 落合 龍史 長谷 正 梅田 実香 藤井 明彦 JP 2008076156 公開特許公報(A) 20080403 2006254224 20060920 小動物の白血球分離方法 花王株式会社 000000918 特許業務法人アルガ特許事務所 110000084 有賀 三幸 100068700 高野 登志雄 100077562 中嶋 俊夫 100096736 村田 正樹 100117156 山本 博人 100111028 的場 ひろみ 100101317 守屋 嘉高 100121153 大野 詩木 100134935 松田 政広 100130683 野中 信宏 100140497 柳沢 佳子 落合 龍史 長谷 正 梅田 実香 藤井 明彦 G01N 33/48 20060101AFI20080307BHJP A61D 1/00 20060101ALI20080307BHJP A61M 1/02 20060101ALI20080307BHJP JPG01N33/48 CA61D1/00 ZA61M1/02 520 5 OL 8 2G045 4C077 2G045BB10 2G045CA11 2G045DB30 4C077AA30 4C077BB04 4C077GG10 4C077JJ03 4C077JJ18 4C077KK13 4C077NN02 4C077PP07 本発明は、実験用小動物の白血球分離方法及び白血球活性酸素の検出方法に関する。 白血球は、細菌やウイルスなどの有害外来因子に対して、活性酸素を産生して無害化する、各種生理活性物質を分泌して体内の免疫系を賦活化する、あるいは炎症反応を調整するなど生体防御における重要な役割を担っている。特に、白血球の活性酸素産生量は生体内で最大であり、且つ生体の応答を経時的に観察する重要な試料であるから、白血球が産生する活性酸素量を正確に測定することは極めて重要である。 活性酸素量の測定は、白血球を分離してから測定するが、活性酸素はその性質上、刺激に敏感に反応して産生量が変動してしまうため、従来、白血球の分離には、赤血球を溶血除去する溶血法ではなく、細胞への刺激が小さいフィコール溶液などを用いて比重を調整した分離液を使用する密度勾配遠心分離法が利用されてきた。ヒトの白血球分離用として、比重1.077及び1.119に調整した分離液が市販されており、これを重層することで効率良くヒト白血球各画分を得ることができる。 しかしながら、ラットやマウスなどの実験用小動物を用いた試験は、ヒトの臨床試験に先立って行われる頻度が高い試験であり、小動物の血液試料は実験材料として頻繁に使用されているにもかかわらず、小動物の白血球分離には、単核球(単球及びリンパ球混在)分離液(比重1.083)の及びリンパ球分離液(比重1.090)が市販されているのみで、多核球(好中球、好酸球、好塩基球)画分を分取するにはリンパ球以外の細胞成分が混在する画分をとり、画分中の赤血球を溶血除去する溶血法を採用しなければならなかった。 溶血法は白血球に対して刺激が大きく、細胞を損傷してしまうため、この方法で得た多核球の活性酸素産生量は安定せず再現性に欠ける、信頼性の低いものであった。そのため、活性酸素産生検出方法の改良が求められていたが、実験用小動物の白血球各粗画分の比重に関するデータは全く知られていないのが現状であった。 本発明は、白血球に対して刺激が小さく、細胞損傷の少ない、小動物の白血球分離方法及び該方法に使用する分離液を提供することに関する。 本発明者は、小動物の多核球分離用に新たな比重液を調製し、これを従来の比重液と併用すれば、細胞を傷つけることなく小動物の白血球を分離でき、単核球及び多核球を同時に分取できることを見出した。また、得られた白血球画分を用いて活性酸素産生を検出したところ、従来の方法に比較して極めて高感度で検出できることを見出した。 すなわち、本発明は、比重を調整した分離液を用いる密度勾配遠心分離法により小動物の白血球を分離する方法であって、比重が1.1242〜1.1390である分離液を用いることを特徴とする小動物の白血球分離方法を提供するものである。 また、本発明は、比重が1.1242〜1.1390である小動物の白血球分離液を提供するものである。 また、本発明は、上記分離液と、比重1.077の分離液及び1.083の分離液とを含んで構成される小動物の白血球分離用キットを提供するものである。 さらに、本発明は、比重1.1242〜1.1390の分離液、比重1.077の分離液及び比重1.083の分離液を用いて密度勾配遠心分離することにより分離した白血球画分中の活性酸素を検出する活性酸素検出方法を提供するものである。 本発明によれば、細胞に損傷を与えることなく、簡便且つ迅速に小動物の白血球各画分を得ることができる。また、本発明の活性酸素検出方法は再現性があり、且つ検出感度が高いので、抗酸化剤の効果などをより明確に検証することができる。 本発明において用いる分離液は、室温(20〜25℃)における比重が1.1242〜1.1390の範囲であり、好ましくは1.1243〜1.1323の範囲、より好ましくは、1.1283〜1.1289の範囲である。 分離液は、細胞に悪影響を及ぼさず、刺激が小さい上記の比重を呈する液体であればその組成は特に限定されないが、例えばりん酸緩衝生理食塩水等の緩衝液に、細胞への刺激が小さい高分子化合物、例えば、ショ糖とエピクロロヒドリンの共重合体であるフィコール(商標、SIGMA社)、ポリエチレングリコール、デキストラン等を用いて、比重を上記範囲になるように調整した溶液を用いることができる。また、市販の血球分離液、例えばヒト用リンパ球比重分離液(比重1.119;Sigma-Aldrich社)を用いて、該分離液と高分子化合物を1mL:0.005g〜0.020g、好ましくは1mL:0.010g〜0.015g、より好ましくは1mL:0.0129g〜0.0130gの割合で正確に混合し、比重を上記範囲に調整することにより調製してもよい。 分離液の調製に用いられる高分子化合物としては、細胞への刺激が小さいものであれば特に限定されず、例えばフィコール、デキストランなどが挙げられ、特にフィコールが好ましく、フィコールを用いる場合は分子量40万のものが特に好ましい。また、分離液には、各種塩類、生理活性物質、抗酸化物などを適宜配合することができる。 上記の分離液と比重1.077の分離液及び比重1.083の分離液を用いて、密度勾配遠心分離することにより小動物の白血球を分離することができる。具体的には、遠心チューブに最下層から、本発明の分離液、比重1.077の分離液、比重1.083の分離液の順にそれぞれ重層し、血液を添加して遠心分離することにより行われる。そのため、本発明の分離液は、予め比重1.077の分離液と比重1.083の分離液とキット化しておくのが好ましい。 なお、比重1.077の分離液及び比重1.083の分離液は、それぞれヒト単核球分離液(Sigma-Aldrich社)及び小動物単核球分離液(Sigma-Aldrich社)として市販されており、これを購入して用いてもよいし、フィコール溶液、コンレイ液、蒸留水などを混合して調製してもよい。 上記白血球の分画に際しては、より正確な分離を可能にする観点から、本発明の比重1.1242〜1.1390の分離液1容量に対し、比重1.077の分離液及び比重1.083の分離液をそれぞれ0.5〜1.5容量ずつ重層するのが好ましく、特に0.75〜1.25容量ずつ重層するのが好ましく、さらにそれぞれ1容量ずつ重層するのが好ましい。 本発明において小動物から採取された血液は、1.5倍から4倍、好ましくは2倍から3倍、さらに好ましくは2倍に希釈することが望ましい。希釈に用いる溶液はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が好ましい。また希釈に用いる溶液は天然物、化合物、天然由来の生理活性物質などを含むことができる 活性酸素の測定結果は、中枢神経系の興奮や抑制によって大きく影響されるため、添加する血液は、採血終了とほぼ同時に麻酔から覚醒するようにセボフレンなどの導入が速やかで覚醒後の影響が少ない薬剤を使用して用いて浅く麻酔した小動物から迅速に頚静脈から採血した全血を用いるのが好ましい。 希釈全血はより正確な分離を可能にする観点から、本発明の比重1.1242〜1.1390の分離液1容量に対し、1<かつ≦4容量重層するのが好ましく、特に2〜3容量重層するのが好ましい。 本発明において、血液を遠心分離する方法は、2000〜2100r/min、17〜25℃で20〜40分、より好ましくは2020〜2050r/minで20〜40分行う。また、遠心チューブは、例えば市販のディスポーザブル遠沈管等を用いることができる。 後記実施例で示すとおり、本発明の分離方法を用いれば、小動物の血液は遠心分離により赤血球画分、多核球画分、単核球画分及び血漿にそれぞれ分離する。このうち多核球画分及び単核球画分を分取して活性酸素の検出に用いることができる。 ここで、活性酸素とは、スーパーオキシドアニオンラジカルやヒドロキシラジカル等のラジカル、過酸化水素、一重項酸素、一酸化窒素、二酸化窒素、オゾン、過酸化脂質(LOOH又はLOO・のラジカル等)、ハロゲン化酸素などが挙げられる。 活性酸素の検出は、従来知られている方法が用いられ、例えば蛍光試薬を添加してフローサイトメトリーにて測定する方法、化学発光試薬を用いてルミノメーターにて測定する方法などが挙げられる。 本発明において小動物とは、ヒト以外の小型哺乳類であれば特に限定されず、例えばマウス、ラット、ハムスター、モルモットなどのげっ歯類を例示できる。1)実験材料及び方法(a)白血球分離液の調整 フィコール400(type400−DL、SIGMA社)約1.25から1.35gを正確に測り取り、比重1.119の血球分離液(Sigma-Aldrich社)100mLに加えて静かに室温(25℃)で溶解した。このときの室温における比重は約1.1242から1.1390であった。 また、同様にフィコール400(type400−DL、SIGMA社)1.2gを正確に測り取り、比重1.119の血球分離液(Sigma-Aldrich社)100mLに加えて、比重1.1240〜1.1323(1.181)の分離液を調製した。なお、比重は電子天秤(Mettler AG−285)で測定した。(b)ラット全血試料の準備 12週齢のSHR 雄性ラット(n=3)をセボフレンを用いて浅く麻酔した。血液試料は浅い麻酔下のラットを解剖台に固定し、採血終了とほぼ同時に麻酔から覚醒するように迅速に頸静脈から採取した。採取した血液試料はヘパリン加燐酸緩衝生理食塩水(5〜50U/ml)で3倍容量に希釈した。(c)遠心分離方法 下記表1に示すように、各比重の分離液を遠心チューブ(Falcon社)に下層から、最下層(a)、(b)、(c)の順序でそれぞれ1容ずつ静かに重層し、さらに最上層(d)に希釈全血を2〜3容静かに重層した。2040rpmで30分、21℃で遠心分離した。 結果を表1に示す。<分離状態の評価> ○:各分画分離 △:一部分離不十分 ×:分離せず2)結果 本発明の分離液、比重1.077の分離液及び比重1.083の分離液を用いて遠心分離操作を行った場合は、希釈全血は、遠心チューブの下層から比重の重い赤血球画分、多核球画分、単核球画分、血漿の順にそれぞれ分離し、白血球各画分を分取することができた。3)活性酸素の検出 上記(1)、(2)で分離した試料4、5及び6の各画分から単核球画分及び多核球画分をパスツールピペットで分取した。回収した単核球画分及び多核球画分に蛍光試薬H2−DCFDA(Molecular Probes社)10μMをそれぞれ添加し、室温で30分間反応させた後、白血球中の活性酸素量をフローサイトメトリー(日本ベクトンディッキンソン社)にて測定した。 結果を図1に示す。図1から明らかなように、本発明による活性酸素の検出ピーク強度は103〜104であり、従来法の検出ピーク強度102と比べて約100倍の感度で検出できることが確認された。図1は、従来法と本発明の方法による活性酸素の検出結果を示したものである。X軸は蛍光強度、Y軸はその蛍光強度を示す細胞の数を示す。 比重を調整した分離液を用いる密度勾配遠心分離法により小動物の白血球を分離する方法であって、比重が1.1242〜1.1390である分離液を用いることを特徴とする小動物の白血球分離方法。 比重1.077の分離液及び比重1.083の分離液と併用する請求項1記載の白血球分離方法。 比重が1.1242〜1.1390である小動物の白血球分離液。 請求項3記載の分離液と、比重1.077の分離液及び1.083の分離液とを含んで構成される小動物の白血球分離用キット。 比重1.1242〜1.1390の分離液、比重1.077の分離液及び比重1.083の分離液を用いて密度勾配遠心分離することにより分離した白血球画分中の活性酸素を検出する活性酸素検出方法。 【課題】白血球に対して刺激が小さく、細胞損傷の少ない、小動物の白血球分離方法及び該方法に使用する分離液の提供。【解決手段】比重を調整した分離液を用いる密度勾配遠心分離法により小動物の白血球を分離する方法であって、比重が1.1242〜1.1390である分離液を用いることを特徴とする小動物の白血球分離方法。【選択図】なし