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タイトル:特許公報(B2)_金属アルコキシド化合物、薄膜形成用原料及び薄膜の製造方法
出願番号:2006251575
年次:2013
IPC分類:C07C 33/03,C23C 16/40,C07F 7/00,C07F 7/28,H01L 21/316


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和田 仙二 阿部 徹司 桜井 淳 東野 貴志 藤本 竜作 清水 雅子 JP 5121196 特許公報(B2) 20121102 2006251575 20060915 金属アルコキシド化合物、薄膜形成用原料及び薄膜の製造方法 株式会社ADEKA 000000387 羽鳥 修 100076532 和田 仙二 阿部 徹司 桜井 淳 東野 貴志 藤本 竜作 清水 雅子 20130116 C07C 33/03 20060101AFI20121220BHJP C23C 16/40 20060101ALI20121220BHJP C07F 7/00 20060101ALI20121220BHJP C07F 7/28 20060101ALI20121220BHJP H01L 21/316 20060101ALI20121220BHJP JPC07C33/03C23C16/40C07F7/00 AC07F7/28 BC07F7/00 ZH01L21/316 C C07C 33/00 C07F 7/00 C23C 16/00 H01L 21/00 CA/REGISTRY(STN) 国際公開第2005/063685(WO,A1) 国際公開第2005/085175(WO,A1) 特開平01−179239(JP,A) 特開昭60−258132(JP,A) 特開平01−172390(JP,A) 英国特許第00860353(GB,B) Zeitschrift fuer Anorganische und Allgemeine Chemie ,1978年,447,253-6 4 2008069135 20080327 15 20090727 前田 憲彦 本発明は、新規な特定の構造を有する金属アルコキシド化合物、該化合物を含有してなる薄膜形成用原料及び該原料を用いた薄膜の製造方法に関する。 チタニウム、ジルコニウム又はハフニウムを含有する薄膜は、高誘電体キャパシタ、強誘電体キャパシタ、ゲート絶縁膜、バリア膜等の電子部品の電子部材や光導波路、光スイッチ、光増幅器等の光通信用デバイスの光学部材として用いられている。 上記の薄膜の製造法としては、火焔堆積法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、塗布熱分解法やゾルゲル法等のMOD法、化学気相成長法等が挙げられるが、組成制御性、段差被覆性に優れること、量産化に適すること、ハイブリッド集積が可能である等多くの長所を有しているので、ALD(Atomic Layer Deposition)法を含む化学気相成長(以下、単にCVDと記載することもある)法が最適な製造プロセスである。 CVD法においては、薄膜に金属原子を供給するプレカーサとして有機配位子を用いた金属化合物が使用されている。CVD法に用いる原料に適する化合物(プレカーサ)に求められる性質は、気化及び輸送時においては、液体の状態で輸送が可能であること、蒸気圧が大きく気化させやすいこと、熱に対して安定であることである。また、薄膜堆積時においては、熱及び/又は化学反応による分解が容易に進行することである。チタニウム、ジルコニウム、ハフニウムのプレカーサとしては、テトラキスジアルキルアミド化合物、テトラキスアルコキシド化合物が検討されている。 特許文献1〜4には、テトラキスアミド化合物が開示されており、特許文献5〜7には、テトラキスアルコキシド化合物が開示されており、特許文献8には、テトラキスアミド化合物、テトラキスアルコキシド化合物等が開示されている。また、特許文献9の請求項1には、M(OR’)4(R’は、炭素数2〜12の分枝してもよいアルキル基、アルケニル基を示し、Mは、ジルコニウム、ハフニウム、チタンを示す)で表される金属アルコキシドが開示されているが、アルケニル基について、具体的な構造を示す開示はない。日本公開特許2002−93803号公報日本公開特許2002−93804号公報大韓民国特許156980号公報日本公開特許2006−182709号公報日本公開特許平5−239650号公報日本公告特許平6−60406号公報日本公開特許2002−69641号公報日本公開特許2005−340405号公報日本公開特許昭60−258132号公報 テトラキスジアルキルアミド化合物は、熱安定性に問題があり、安定的な薄膜の製造に問題を有している。また、テトラキスアルコキシド化合物は、薄膜堆積時の分解性が不充分であり、生産性に問題を有している。 本発明が解決しようとする課題は、気化工程を有する薄膜の製造方法において、薄膜にチタニウム、ジルコニウム及びハフニウムを供給するプレカーサに対して、薄膜形成用原料、特にCVD用原料として合致する熱及び/又は酸化による分解特性、熱安定性、蒸気圧等の性質を付与することである。 本発明者等は、検討を重ねた結果、特定の構造を有する金属アルコキシド化合物が上記課題を解決し得ることを知見し、本発明に到達した。 即ち、本発明は、下記化学式(1)−2又は(1)−8で表される金属アルコキシド化合物を提供することにより上記目的を達成したものである。 また、本発明は、下記化学式(1)−2又は(1)−8で表される金属アルコキシド化合物を含有してなる薄膜形成用原料を提供することにより上記目的を達成したものである。 また、本発明は、上記薄膜形成用原料を気化させて得た金属アルコキシド化合物を含有する蒸気を基体上に導入し、これを分解及び/又は化学反応させて基体上に薄膜を形成する薄膜の製造方法を提供することにより上記目的を達成したものである。 本発明の金属アルコキシド化合物によれば、気化工程を有する薄膜製造方法において、薄膜にチタニウム、ジルコニウム、ハフニウムを供給するプレカーサに対して、薄膜形成用原料、特にCVD用原料として合致する熱及び/又は酸化による分解特性、熱安定性、蒸気圧等の性質を付与することができる。 本発明の金属アルコキシド化合物は、上記一般式(1)で表されるものであり、テトラキスジアルキルアミド化合物より熱安定性が良好であり、テトラキスアルコキシド化合物より薄膜堆積時の酸化分解性が良好である。 従って、上記金属化合物は、ALD法を含むCVD法等の気化工程を有する薄膜製造方法のプレカーサとして特に好適なものである。 本発明の上記一般式(1)で表される金属アルコキシド化合物の具体例としては、下記化合物No.1〜No.18が挙げられる。尚、化合物No.8〜No.18がそれぞれ化学式(1)−1〜(1)−11に対応している。 本発明の金属アルコキシド化合物は、上記一般式(1)において、R1〜R8の全てがメチル基あるもの(例えば、上記化合物No.3、No.9、No.15)が、熱的な安定性が良好であり、蒸気圧が大きい上に、室温で液体であり、CVDやALDに使用するプレカーサとして特に好ましい。 本発明の上記一般式(1)で表される金属アルコキシド化合物は、その製造方法により特に制限されることはなく、例えば、a)四塩化チタニウム、四塩化ジルコニウム、四塩化ハフニウム等の金属ハライドとアルコール化合物とを、ナトリウム、ナトリウムアミド、ジエチルアミン等の塩基の存在で反応させる方法、b)金属ハライドと本発明の金属アルコキシドを構成するアルコールのアルカリ金属とのアルコキシドとを反応させる方法、c)メトキシド、エトキシド、イソプロポキシド等の金属アルコキシドを原料にしたアルコール交換反応により製造する方法等、周知の金属アルコキシドの合成方法を応用することで得ることができる。 本発明の薄膜形成用原料は、上記一般式(1)で表される金属アルコキシド化合物を薄膜のプレカーサとして含有するものであり、その形態は、該薄膜形成用原料が適用されるプロセス(例えば、塗布熱分解法やゾルゲル法等のMOD法、ALD法を含むCVD法)によって、適宜選択される。本発明の薄膜形成用原料は、上記一般式(1)で表される金属アルコキシド化合物の物性からプレカーサを気化させる工程を有するCVD用原料として有用であり、気化させたプレカーサーと酸素及び/又はオゾンを含有する反応性ガスとを反応させて得られる金属酸化物を含有する薄膜の製造に特に有用である。 本発明の薄膜形成用原料が化学気相成長(CVD)用原料である場合、その形態は使用されるCVD法の輸送供給方法等の手法により適宜選択されるものである。 上記の輸送供給方法としては、CVD用原料を原料容器中で加熱及び/又は減圧することにより気化させ、必要に応じて用いられるアルゴン、窒素、ヘリウム等のキャリアガスと共に堆積反応部へと導入する気体輸送法、CVD用原料を液体又は溶液の状態で気化室まで輸送し、気化室で加熱及び/又は減圧することにより気化させて、堆積反応部へと導入する液体輸送法がある。 気体輸送法の場合は、上記一般式(1)で表される金属アルコキシド化合物そのものがCVD用原料となり、液体輸送法の場合は、上記一般式(1)で表される金属アルコキシド化合物そのもの又は該金属アルコキシド化合物を有機溶剤に溶かした溶液がCVD用原料となる。 また、多成分系薄膜を製造する場合の多成分系CVD法においては、CVD用原料を各成分独立で気化、供給する方法(以下、シングルソース法と記載することもある)と、多成分原料を予め所望の組成で混合した混合原料を気化、供給する方法(以下、カクテルソース法と記載することもある)とがある。カクテルソース法の場合、上記一般式(1)で表される金属化合物のみによる混合物或いはこれら混合物に有機溶剤媒を加えた混合溶液、上記一般式(1)で表される金属化合物と他のプレカーサとの混合物或いはこれら混合物に有機溶剤を加えた混合溶液がCVD用原料である。 上記のCVD用原料に使用する有機溶剤としては、特に制限を受けることはなく周知一般の有機溶剤を用いることが出来る。該有機溶剤としては、例えば;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸メトキシエチル等の酢酸エステル類;テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、モルホリン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジブチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類;メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルブチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等のケトン類;ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン等の炭化水素類;1−シアノプロパン、1−シアノブタン、1−シアノヘキサン、シアノシクロヘキサン、シアノベンゼン、1,3−ジシアノプロパン、1,4−ジシアノブタン、1,6−ジシアノヘキサン、1,4−ジシアノシクロヘキサン、1,4−ジシアノベンゼン等のシアノ基を有する炭化水素類;ピリジン、ルチジンが挙げられ、これらは、溶質の溶解性、使用温度と沸点、引火点の関係等により、単独又は二種類以上の混合溶媒として用いられる。これらの有機溶剤を使用する場合、該有機溶剤中におけるプレカーサ成分の合計量が0.01〜2.0モル/リットル、特に0.05〜1.0モル/リットルとなるようにするのが好ましい。 また、シングルソース法又はカクテルソース法を用いた多成分系のCVD法において、本発明の上記一般式(1)で表される金属アルコキシド化合物と共に用いられる他のプレカーサとしては、特に制限を受けず、CVD用原料に用いられている周知一般のプレカーサを用いることができる。 上記の他のプレカーサとしては、アルコール化合物、グリコール化合物、β−ジケトン化合物、シクロペンタジエン化合物及び有機アミン化合物等の有機配位子として用いられる化合物からなる群から選択される一種類又は二種類以上と、珪素、ホウ素、リン又は金属との有機配位化合物が挙げられる。金属種としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等の1族元素、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等の2族元素、スカンジウム、イットリウム、ランタノイド元素(ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム)、アクチノイド元素等の3族元素、チタニウム、ジルコニウム、ハフニウムの4族元素、バナジウム、ニオブ、タンタルの5族元素、クロム、モリブデン、タングステンの6族元素、マンガン、テクネチウム、レニウムの7族元素、鉄、ルテニウム、オスミウムの8族元素、コバルト、ロジウム、イリジウムの9族元素、ニッケル、パラジウム、白金の10族元素、銅、銀、金の11族元素、亜鉛、カドミウム、水銀の12族元素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウムの13族元素、ゲルマニウム、錫、鉛の14族元素、砒素、アンチモン、ビスマスの15族元素、ポロニウムの16族元素が挙げられる。 上記の他のプレカーサは、シングルソース法の場合は、熱及び/又は化学反応による分解挙動が類似している化合物が好ましく、カクテルソース法の場合は、熱及び/又は化学反応による分解挙動が類似していることに加え、混合時に化学反応による変質を起こさないものが好ましい。 また、本発明のCVD用原料には、必要に応じて、本発明の金属アルコキシド化合物及び他のプレカーサの安定性を付与するため、求核性試薬を含有してもよい。該求核試薬としては、グライム、ジグライム、トリグライム、テトラグライム等のエチレングリコールエーテル類、18−クラウン−6、ジシクロヘキシル−18−クラウン−6、24−クラウン−8、ジシクロヘキシル−24−クラウン−8、ジベンゾ−24−クラウン−8等のクラウンエーテル類、エチレンジアミン、N,N’−テトラメチルエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、1,1,4,7,7−ペンタメチルジエチレントリアミン、1,1,4,7,10,10−ヘキサメチルトリエチレンテトラミン、トリエトキシトリエチレンアミン等のポリアミン類、サイクラム、サイクレン等の環状ポリアミン類、ピリジン、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、N−メチルピロリジン、N−メチルピペリジン、N−メチルモルホリン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,4−ジオキサン、オキサゾール、チアゾール、オキサチオラン等の複素環化合物類、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸−2−メトキシエチル等のβ−ケトエステル類又はアセチルアセトン、2,4−ヘキサンジオン、2,4−ヘプタンジオン、3,5−ヘプタンジオン、ジピバロイルメタン等のβ−ジケトン類が挙げられ、これら安定剤の使用量は、プレカーサ1モルに対して0.1モル〜10モルの範囲で使用され、好ましくは1〜4モルの範囲で使用される。 本発明の薄膜形成用原料は、これを構成する成分以外の不純物金属元素分、不純物塩素等の不純物ハロゲン分、不純物有機分を極力含まないようにする。不純物金属元素分は元素毎では100ppb以下が好ましく、10ppb以下がより好ましい。総量では1ppm以下が好ましく、100ppb以下がより好ましい。LSIのゲート絶縁膜として用いる場合は、得られる電薄膜の電気的特性に影響のあるアルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素及び同族元素(チタニウム、ジルコニウム、ハフニウム)の含有量を少なくすることが必要である。不純物ハロゲン分は100ppm以下が好ましく、10ppm以下がより好ましく、1ppm以下が更に好ましい。不純物有機分は総量で500ppm以下が好ましく、50ppm以下が好ましく、10ppm以下がより好ましい。また、水分はCVD原料中のパーティクルやCVD法によるパーティクル発生の原因となるので、本発明で使用される金属化合物、有機溶剤及び求核試薬については、それぞれの水分の低減のために使用の際には予めできる限り水分を取り除いたほうがよい。水分量は10ppm以下が好ましく、1ppm以下がより好ましい。 また、本発明の薄膜形成用原料は、製造される薄膜のパーティクル汚染を低減又は防止するために、液相での光散乱式液中粒子検出器によるパーティクル測定において、0.3μmより大きい粒子の数が液相1ml中に100個以下であることが好ましく、0.2μmより大きい粒子の数が液相1ml中に1000個以下であることがより好ましく、0.2μmより大きい粒子の数が液相1ml中に100個以下であることが更に好ましい。 本発明の薄膜の製造方法とは、本発明の上記一般式(1)で表される金属アルコキシド化合物及び必要に応じて用いられる他のプレカーサを気化させた蒸気、並びに必要に応じて用いられる反応性ガスを基板上に導入し、次いで、プレカーサを基板上で分解及び/又は化学反応させて薄膜を基板上に成長、堆積させるCVD法によるものである。原料の輸送供給方法、堆積方法、製造条件、製造装置等については、特に制限を受けるものではなく、周知一般の条件、方法を用いることができる。 上記の必要に応じて用いられる反応性ガスとしては、例えば、酸化性のものとしては酸素、オゾン、二酸化窒素、一酸化窒素、水蒸気、過酸化水素、ギ酸、酢酸、無水酢酸等が挙げられ、還元性のものとしては水素が挙げられ、また、窒化物を製造するものとしては、モノアルキルアミン、ジアルキルアミン、トリアルキルアミン、アルキレンジアミン等の有機アミン化合物、ヒドラジン、アンモニア、窒素等が挙げられる。 特に、本発明の金属アルコキシド化合物に由来する金属酸化物を含有する薄膜を製造する場合には、反応性ガスとして、上記の酸化性のもの、特に酸素及び/又はオゾンを含む反応性ガスが好ましく用いられる。 また、上記の輸送供給方法としては、前記に記載の気体輸送法、液体輸送法、シングルソース法、カクテルソース法等が挙げられる。 また、上記の堆積方法としては、原料ガス又は原料ガスと反応性ガスを熱のみにより反応させ薄膜を堆積させる熱CVD,熱とプラズマを使用するプラズマCVD、熱と光を使用する光CVD、熱、光及びプラズマを使用する光プラズマCVD、CVDの堆積反応を素過程に分け、分子レベルで段階的に堆積を行うALD(Atomic Layer Deposition)が挙げられる。 また、上記の製造条件としては、反応温度(基板温度)、反応圧力、堆積速度等が挙げられる。反応温度については、本発明に係る前記の金属アルコキシド化合物が充分に反応する温度である180℃以上が好ましく250℃〜800℃がより好ましい。また、反応圧力は、熱CVD、光CVDの場合、大気圧〜10Paが好ましく、プラズマを使用する場合は、2000Pa〜10Paが好ましい。また、堆積速度は、原料の供給条件(気化温度、気化圧力)、反応温度、反応圧力によりコントロールすることが出来る。堆積速度は、大きいと得られる薄膜の特性が悪化する場合があり、小さいと生産性に問題を生じる場合があるので、0.5〜5000nm/分が好ましく、1〜1000nm/分がより好ましい。また、ALDの場合は、所望の膜厚が得られるようにサイクルの回数でコントロールされる。 また、本発明の薄膜の製造方法においては、薄膜堆積の後に、より良好な電気特性を得るために不活性雰囲気下、酸化性雰囲気下又は還元性雰囲気下でアニール処理を行ってもよく、段差埋め込みが必要な場合には、リフロー工程を設けてもよい。この場合の温度は、400〜1200℃であり、500〜800℃が好ましい。 本発明の薄膜形成用原料を用いた本発明の薄膜の製造方法により製造される薄膜は、他の成分のプレカーサ、反応性ガス及び製造条件を適宜選択することにより、金属、合金、酸化物セラミックス、窒化物セラミックス、炭化物、ガラス等の所望の種類の薄膜とすることができる。製造される薄膜の組成としては、例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム等の4族元素の酸化物、珪素−4族元素複合酸化物、4族元素−アルミニウム複合酸化物、4族元素−希土類元素複合酸化物、珪素−4族元素−アルミニウム複合酸化物、珪素−4族元素−希土類元素複合酸化物、窒化チタン、窒化ジルコニウム、窒化ハフニウム、珪素−4族元素の窒化酸化物(HfSiON)が挙げられ、これらの薄膜の用途としては、高誘電キャパシタ膜、ゲート絶縁膜、ゲート膜、強誘電キャパシタ膜、コンデンサ膜、バリア膜等の電子部品部材;光ファイバ、光導波路、光増幅器、光スイッチ等の光学ガラス部材が挙げられる。 以下、実施例、評価例及び比較例をもって本発明を更に詳細に説明する。しかしながら、本発明は、以下の実施例等によって、何ら制限を受けるものではない。[実施例1]化合物No.9の製造 乾燥アルゴンガス雰囲気下で、反応フラスコに四塩化ジルコニウム0.272モル、乾燥ヘキサン200mlを仕込み、液温が−10℃を超えないように冷却しながらジエチルアミン1.20モルを乾燥ヘキサン150mlに溶解した溶液を滴下し、−10℃で、3時間攪拌した。これに2−メチル−3−ブテン−2−オール125mlと乾燥ヘキサン100mlの混合物を液温が−10℃を超えないように冷却しながら滴下し、室温で18時間攪拌し、さらに50℃で5時間攪拌した。得られた反応液から固相を濾別して得た濾液を濃縮し、減圧蒸留を行った。0.17〜0.18torr、蒸気温度83〜95℃のフラクションから無色透明液体を得た。得られた無色透明液体は、目的物である化合物No.9(収率54.6%)と同定された。化合物No.9の同定は、元素分析及び1H−NMRにより行った。また、得られた化合物No.9について以下の蒸気圧測定を行った。それらの結果を以下に示す。(1)元素分析(金属分析:ICP−AES)Zr;20.8質量%(理論値21.13質量%)(2)1H−NMR(溶媒:重ベンゼン)図1にチャートを示す。(3)蒸気圧測定 系を一定の圧力に固定して液面付近の蒸気温度を測定する方法により行った。系の圧力を変えて蒸気温度を4点測定し、クラジウス―クラペイロンプロットにより、蒸気圧の式を得た。LogP(Torr)=6.01−2308/T(K)[実施例2]化合物No.15の製造 乾燥アルゴンガス雰囲気下で、反応フラスコに四塩化ハフニウム0.136モル、乾燥ヘキサン455mlを仕込み、液温が−10℃を超えないように冷却しながらジエチルアミン0.60モルを乾燥ヘキサン150mlに溶解した溶液を滴下し、−10℃で、3時間攪拌した。これに2−メチル−3−ブテン−2−オール62.5mlと乾燥ヘキサン50mlの混合物を液温が−10℃を超えないように冷却しながら滴下し、室温で12時間攪拌し、さらに50℃で5時間攪拌した。得られた反応液から固相を濾別して得た濾液を濃縮し、減圧蒸留を行った。0.11〜0.12torr、蒸気温度80〜79℃のフラクションから無色透明液体を得た。得られた無色透明液体は、目的物である化合物No.15(収率35.4%)と同定された。化合物No.15の同定は、元素分析及び1H−NMRにより行った。また、得られた化合物No.15について以下の蒸気圧測定を行った。それらの結果を以下に示す。(1)元素分析(金属分析:ICP−AES)Hf;33.9質量%(理論値34.39%)(2)1H−NMR(溶媒:重ベンゼン)図2にチャートを示す。(3)蒸気圧測定 系を一定の圧力に固定して液面付近の蒸気温度を測定する方法により行った。系の圧力を変えて蒸気温度を5点測定し、クラジウス―クラペイロンプロットにより、蒸気圧の式を得た。LogP(Torr)=6.83−2641/T(K)[評価例1]熱安定性の評価上記実施例1で得られた化合物No.9、上記実施例2で得られた化合物No.15、及び比較化合物として、テトラキス(エチルメチルアミノ)ジルコニウム、テトラキス(第3ブトキシ)ジルコニウム、テトラキス(エチルメチルアミノ)ハフニウム、テトラキス(第3ブトキシ)ハフニウムについて、熱安定性の評価を行った。評価は、それぞれの化合物をアルゴン封止して160℃、180℃、200℃で1時間保管した後、30℃から10℃/分の昇温速度、乾燥アルゴン(100ml/分)気流下の測定条件による示差熱分析(TG)を行い、400℃の残渣の質量%の比較により行った。測定結果を下記表1及び表2に示す。[評価例2]酸化分解性の評価 上記実施例で得られた化合物No.9及び化合物No.15、比較化合物として、テトラキス(エチルメチルアミノ)ジルコニウム、テトラキス(第3ブトキシ)ジルコニウム、テトラキス(エチルメチルアミノ)ハフニウム及びテトラキス(第3ブトキシ)ハフニウムについて、熱酸化分解性の評価を行った。熱酸化分解性の評価は、30℃から、10℃/分の昇温速度、乾燥酸素(100ml/分)気流下の測定条件による示差熱分析(DTA)を行った。分析結果を図3及び図4に示す。 上記の評価例1及び評価例2より、本発明の化合物No.9及びNo.15は、アルゴン中では、160℃、180℃では熱分解せずに200℃でわずかに分解することが観察された。また、酸素中で化合物No.9は、215℃〜270℃において酸化分解による発熱が観察され、化合物No.15は、220〜270℃において酸化分解による発熱が観察された。比較化合物の(エチルメチルアミノ)ジルコニウム及びテトラキス(エチルメチルアミノ)ハフニウムは、アルゴン中では、160℃でわずかに分解し、180℃で分解することが観察された。また、酸素中では、ほぼ室温から酸化分解が始まり、130℃〜170℃及び295℃〜395℃に発熱反応が観察された。比較化合物のテトラキス(第3ブトキシ)ジルコニウム及びテトラキス(第3ブトキシ)ハフニウムは、アルゴン中では、200℃では、熱分解は観察できなかった。さらには、240℃、1時間の評価においても分解は観察されなかった。また酸素中では、分解による発熱を観察することはできなかった。 上記評価例1、2の結果から、テトラキスジアルキルアミド化合物である、テトラキス(エチルメチルアミノ)ジルコニウム及びテトラキス(エチルメチルアミノ)ハフニウムは、熱的に不安定であり、酸素に対して過度にセンシティブであり、酸化反応をコントロールするのが困難であることが示唆された。 また、テトラキスアルコキシド化合物である、テトラキス(第3ブトキシ)ジルコニウム及びテトラキス(第3ブトキシ)ハフニウムは、熱的に安定であるが、酸化分解に対しても安定であり、金属酸化物を含有する薄膜のプレカーサとしては、生産性に劣ることが示唆された。 本発明の金属アルコキシド化合物である化合物No.9及び化合物No.15は、熱的には、少なくとも180℃までは安定であり、酸化分解も215℃から始まるので金属酸化物の薄膜製造をコントロールすることが容易で生産性にも優れることが示唆された。[実施例3]気体輸送法による酸化ジルコニウム薄膜の製造 上記実施例1で得られた化合物No.9を用いて〔図5〕に示すCVD装置により、以下の条件及び工程でシリコンウエハ上に酸化ジルコニウム薄膜を製造した。得られた薄膜について、蛍光X線により膜厚測定、薄膜組成の確認を行ったところ、膜厚は10nmであり、膜組成は酸化ジルコニウムであった。(条件)反応温度(基板温度);280℃、反応性ガス;オゾン(工程) 下記(1)〜(4)からなる一連の工程を1サイクルとして、7サイクル繰り返し、最後に600℃で3分間アニール処理を行った。(1)気化室温度:170℃、気化室圧力700〜800Paの条件で気化 させた化合物No.9の蒸気を導入し、系圧700 〜800Paで1 秒間堆積させる。(2)2秒間のアルゴンパージにより、未反応原料を除去する。(3)反応性ガスを導入し、系圧力700〜800Paで1秒間反応させる。(4)2秒間のアルゴンパージにより、未反応原料を除去する。[実施例4]液体輸送法による酸化ジルコニウム薄膜の製造 水分量を1ppm未満に脱水したエチルシクロヘキサンを用いて、化合物No.9の0.2モル/リットルの溶液からなるCVD用原料を得た。図5に示すCVD装置を用いて、シリコンウエハ上に以下の条件で、酸化ジルコニウム薄膜を製造した。得られた薄膜について、蛍光X線により膜厚測定、薄膜組成の確認を行ったところ、膜厚は10nmであり、膜組成は酸化ジルコニウムであった。(条件)原料:化合物No.9のエチルシクロヘキサン溶液(0.2モル/リットル);原料流量2.0 sccm、気化室温度:170℃、反応生ガス:酸素 200sccm、反応圧力:700 〜800Pa、反応温度(基板温度):300℃、成膜時間:2分、アニール:酸素雰囲気下600℃、3分。 実施例3及び4の結果から、本発明の薄膜形成用原料を用いると、成膜速度や薄膜組成制御が安定した薄膜製造が可能であることが確認できた。 本発明の新規な金属アルコキシド化合物は、気化工程を有する薄膜形成用原料として用いられる他、塗布熱分解法やゾルゲル法等のMOD法による薄膜形成用原料、有機合成触媒、高分子化合物合成触媒等に用いることができる。図1は、実施例1において得られた本発明の金属化合物(化合物No.9)の1H−NMRチャートを示す。図2は、実施例2において得られた本発明の金属化合物(化合物No.15)の1H−NMRチャートを示す。図3は、本発明の金属化合物(化合物No.9)、並びに比較化合物であるテトラキス(エチルメチルアミノ)ジルコニウム及びテトラキス(第3ブチル)ジルコニウムについて、示差熱分析(DTA)による測定結果を示す。図4は、本発明の金属化合物(化合物No.15)、並びに比較化合物であるテトラキス(エチルメチルアミノ)ハフニウム及びテトラキス(第3ブチル)ハフニウムについて、示差熱分析(DTA)による測定結果を示す。図5は、実施例において用いた、本発明の薄膜の製造方法に用いられるCVD装置の一例を示す概要図である。 下記化学式(1)−2又は(1)−8で表される金属アルコキシド化合物。 下記化学式(1)−2又は(1)−8で表される金属アルコキシド化合物を含有してなる薄膜形成用原料。 請求項2に記載の薄膜形成用原料を気化させて得た金属アルコキシド化合物を含有する蒸気を基体上に導入し、これを分解及び/又は化学反応させて基体上に薄膜を形成する薄膜の製造方法。 請求項2に記載の薄膜形成用原料を気化させて得た金属アルコキシド化合物を含有する蒸気を基体上に導入し、これを酸素及び/又はオゾンを含む反応性ガスの存在下で酸化分解及び/又は化学反応させて、基体上に金属アルコキシド化合物由来の金属酸化物を含有する薄膜を形成する薄膜の製造方法。


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