生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_新規FabK阻害剤およびその製造法
出願番号:2006243953
年次:2009
IPC分類:C07D 417/12,A61K 31/427,A61P 31/00


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北川 英男 小澤 智宏 飯田 真依子 渡邊 尚志 山田 雅胤 JP 2009091252 公開特許公報(A) 20090430 2006243953 20060908 新規FabK阻害剤およびその製造法 明治製菓株式会社 000006091 北川 英男 小澤 智宏 飯田 真依子 渡邊 尚志 山田 雅胤 C07D 417/12 20060101AFI20090403BHJP A61K 31/427 20060101ALI20090403BHJP A61P 31/00 20060101ALN20090403BHJP JPC07D417/12A61K31/427A61P31/00 5 OL 17 4C063 4C086 4C063AA01 4C063BB09 4C063CC62 4C063DD25 4C063EE01 4C086AA01 4C086AA02 4C086AA03 4C086BC82 4C086GA07 4C086GA10 4C086MA01 4C086MA04 4C086ZB31 本発明は、脂肪酸シンターゼFabKを阻害し、細菌感染治療に有用で医薬上有望な化合物とその製法に関するものである。 細菌における脂肪酸の生合成はタイプIIの脂肪酸シンターゼ(FAS)系と呼ばれる一連の酵素群により行われている。一方、哺乳動物などの真核生物においてはタイプIのFAS系と呼ばれる、単一の多機能酵素により触媒されており、細菌の脂肪酸生合成系とは大きく異なるため、タイプIIのFAS系酵素を阻害する化合物は、選択的かつ新規な抗菌剤としての可能性が示唆される(非特許文献1参照)。 細菌の脂肪酸生合成系では4つの酵素反応が順次進行してサイクルを形成し、複数回のサイクルを経て、長鎖の飽和脂肪酸が生合成される。サイクルの第1工程はβ−ケトアシル−ACPシンターゼによる縮合反応で、はじめのサイクルではβ−ケトアシル−ACPシンターゼIII(FabH)がマロニル−ACPとアセチル−CoAを縮合する。2回目以降のサイクルではβ−ケトアシル−ACPシンターゼIまたはII(FabBまたはFabF)がマロニル−ACPとアシル−ACPを縮合する。第2工程ではNADPH−依存性β−ケトアシル−ACPレダクターゼ(FabG)による還元反応が起こる。第3工程でβ−ヒドロキシアシル−ACPデヒドラーゼ(FabAまたはFabZ)により脱水され、トランス−2−エノイル−ACPが得られる。第4工程において、エノイル−ACPレダクターゼ(FabIまたはFabKまたはFabL)により還元されて、アシル−ACPを生ずる。1サイクル当たり2個の炭素原子が付加され、最終的にパルミトイル−ACP(16C)が得られるが、このサイクルは主にパルミトイル−ACPによるエノイル―ACPレダクターゼのフィードバック阻害を介して停止する(非特許文献2、3参照)。すなわち、エノイル―ACPレダクターゼが細菌の脂肪酸合成経路の律速酵素であり、細菌における脂肪酸生合成全体の重要な調整ポイントである。 また、大腸菌(Escherichia coli)や黄色ブドウ球菌(Staphyrococcus aureus)などに存在するエノイル―ACPレダクターゼであるFabIは生育に必須な酵素であることが大腸菌のFabI温度感受性変異株の解析から明らかにされた(非特許文献4)。したがって、エノイル−ACPレダクターゼを阻害することにより抗菌作用が発現されると考えられるため、抗菌剤の標的として重要な蛋白質であるといえる。 ゲノム解析研究により、大腸菌や黄色ブドウ球菌などのほとんどの細菌はエノイル―ACPレダクターゼとしてFabIを有していることが知られているが、いくつかの菌種ではFabIのかわりにFabKが存在していることが明らかになっている。中でも臨床上重要な病原菌である肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)はエノイル―ACPレダクターゼとしてFabKのみを有しており、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、腸球菌(Enterococcus faecalis)ではFabIとFabKの両方を有していることが明らかになっている(非特許文献5参照)。そのため、より広範な抗菌活性を有する抗菌剤を創出するには、FabIだけでなくFabKを阻害する必要がある。 FabKは肺炎連鎖球菌において生育に必須であり、補酵素としてFMNを1:1のモル濃度比で有するフラビン蛋白質であることがわかっている(非特許文献6参照)。その他、FabKを弱いながらも阻害する化合物の報告はあるが、FabKを強く阻害する化合物の報告はない。(特許文献1、非特許文献7、8参照) それゆえFabKを阻害する薬剤は広範囲にわたり優れた抗菌スペクトラムを有する抗菌剤と期待されている。特表2003−511448号公報Prog. Lipid Res.(2001)、40、467−497Escherichia coli and Salmonella:Cellular and Molecular Biology(1996)、612−636、American Society for Microbiology、Washington D.C.J.Biol.Chem.(1996)、271、1833−836J.Biol.Chem.(1995)、270、26538−26542Nature (2000)、406、145−146Biochem.J(2003)、370、1055−1062J.Med.Chem.(2003)、46、1627−1635Antimicrob. Agents. Chem., 46, 3118, (2002) 臨床上重要な病原菌である肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)はエノイル―ACPレダクターゼとしてFabKのみを有している。緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)と腸球菌(Enterococcus faecalis)ではFabIとFabKの両方を有している。このことから、本発明は、FabK阻害剤を提供することを目的としている。 本発明は、FabKを阻害し、細菌感染の治療に有用である式(I)で表される化合物に関するものである。また、本発明は式(I)の化合物および医薬上許容される担体を含む医薬組成物を含み、さらにFabKを阻害することにより細菌感染を治療する方法を含む。 本発明は、下記式(I)で表される化合物、または、その医薬上許容される塩に関するものである。 [式中、Xはハロゲン原子を表し、R1は、C2−6アルキニル基、C2−6アルケニル基、C2−6アルケニルチオ基、C2−6アルキニルチオ基、C4−6アルケニルスルホニル基、C2−6アルキニルスルホニル基、C2−6アルケニルスルフィニル基、C2−6アルキニルスルフィニル基を表し、これらは置換基を有していてもよい。] さらに、Xがハロゲン原子を表し、R1が、C2−6アルキニル基、C2−6アルケニルチオ基を表す一般式(I)で表される化合物、または、その医薬上許容される塩である。 また、別の態様によれば、上記式中、Xが臭素原子を表し、R1が、エチニル基、4−ペンテニル基を表す一般式(I)で表される化合物、または、その医薬上許容される塩である。 また、別の態様によれば、一般式(I)の化合物を含んでなる医薬組成物である。 また、一般式(I)の化合物を含んでなるFabK阻害剤である。 本発明の代表的な化合物は以下に示される。1)1−((4−(4−ブロモフェニル)−1H−イミダゾール−2−イル)メチル)−3−(5−エチニルチアゾール−2−イル)ウレア2)1−((5−(4−ブロモフェニル)−1H−イミダゾール−2−イル)メチル)−3−(5−(4−ペンテニルチオ)チアゾール−2−イル)ウレア 従来、FabKを弱いながらも阻害する化合物の報告はあるが、本発明は、それらよりも非常に強いFabK阻害活性を有する。これによりFabKのみを有している臨床上重要な病原菌である肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)に有効であり、またFabIとFabKの両方を有している緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)と腸球菌(Enterococcus faecalis)においても有効である。 本明細書において置換基または置換基の一部である「ハロゲン原子」とは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、フッ素原子を表す。 本明細書において置換基または置換基の一部である「C1−6アルキル基」とは、炭素数1〜6の直鎖、分岐状または環状のアルキル基を意味する。例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロペンチル基等をあげることができる。 本明細書において「C2−6アルケニル基」とは、炭素数2〜6の直鎖、分岐状または環状のアルケニル基を示し、例えばビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、イソプロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、3−メチル−1−プロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基、3−メチル−2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基、シクロペンテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、3−ヘキセニル基、4−ヘキセニル基、5−ヘキセニル基、シクロヘキセニル基などを意味する。好ましくは、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、イソプロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、3−メチル−1−プロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基、3−メチル−2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基などである。 本明細書において「C2−6アルケニルチオ基」とは、炭素数2〜6の直鎖、分岐状または環状のアルケニルチオ基を示し、ビニルチオ基、1−プロペニルチオ基、2−プロペニルチオ基、イソプロペニルチオ基、2−メチル−1−プロペニルチオ基、3−メチル−1−プロペニルチオ基、2−メチル−2−プロペニルチオ基、3−メチル−2−プロペニルチオ基、1−ブテニルチオ基、2−ブテニルチオ基、3−ブテニルチオ基、1−ペンテニルチオ基、2−ペンテニルチオ基、3−ペンテニルチオ基、4−ペンテニルチオ基、シクロペンテニルチオ基、1−ヘキセニルチオ基、2−ヘキセニルチオ基、3−ヘキセニルチオ基、4−ヘキセニルチオ基、5−ヘキセニルチオ基、シクロヘキセニルチオ基などを意味する。好ましくは、ビニルチオ基、1−プロペニルチオ基、2−プロペニルチオ基、イソプロペニルチオ基、2−メチル−1−プロペニルチオ基、3−メチル−1−プロペニルチオ基、2−メチル−2−プロペニルチオ基、3−メチル−2−プロペニルチオ基、1−ブテニルチオ基、2−ブテニルチオ基、3−ブテニルチオ基などである。 本明細書において「C2−6アルキニル基」とは、炭素数2〜6の直鎖、または分岐状のアルキニル基、例えばエチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、3−メチル−1−プロピニル基、1−メチル−3−プロピニル基、1−ペンチニル基、2−ペンチニル基、3−ペンチニル基、4−ペンチニル基、1−ヘキシニル基、2−ヘキシニル基、3−ヘキシニル基、4−ヘキシニル基、5−ヘキシニル基などを表す。好ましくは、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基などである。 本明細書において「C2−6アルキニルチオ基」とは、炭素数2〜6の直鎖、または分岐状のアルキニルチオ基を示し、1−エチニルチオ基、1−プロピニルチオ基、2−プロピニルチオ基、1−ブチニルチオ基、2−ブチニルチオ基、3−ブチニルチオ基、3−メチル−1−プロピニルチオ基、1−メチル−3−プロピニルチオ基、1−ペンチニルチオ基、2−ペンチニルチオ基、3−ペンチニルチオ基、4−ペンチニルチオ基、1−ヘキシニルチオ基、2−ヘキシニルチオ基、3−ヘキシニルチオ基、4−ヘキシニルチオ基、5−ヘキシニルチオ基などを意味する。好ましくは、1−エチニルチオ基、1−プロピニルチオ基、2−プロピニルチオ基、1−ブチニルチオ基、2−ブチニルチオ基、3−ブチニルチオ基などである。 「C4−6アルケニルスルホニル基」とは、炭素数4〜6の直鎖、分岐状または環状のアルケニルスルホニル基を示し、2−メチル−1−プロペニルスルホニル基、3−メチル−1−プロペニルスルホニル基、2−メチル−2−プロペニルスルホニル基、3−メチル−2−プロペニルスルホニル基、1−ブテニルスルホニル基、2−ブテニルスルホニル基、3−ブテニルスルホニル基、1−ペンテニルスルホニル基、2−ペンテニルスルホニル基、3−ペンテニルスルホニル基、4−ペンテニルスルホニル基、シクロペンテニルスルホニル基、1−ヘキセニルスルホニル基、2−ヘキセニルスルホニル基、3−ヘキセニルスルホニル基、4−ヘキセニルスルホニル基、5−ヘキセニルスルホニル基、シクロヘキセニルスルホニル基などを意味する。好ましくは、2−メチル−1−プロペニルスルホニル基、3−メチル−1−プロペニルスルホニル基、2−メチル−2−プロペニルスルホニル基、3−メチル−2−プロペニルスルホニル基、1−ブテニルスルホニル基、2−ブテニルスルホニル基、3−ブテニルスルホニル基、1−ペンテニルスルホニル基、2−ペンテニルスルホニル基、3−ペンテニルスルホニル基、4−ペンテニルスルホニル基などである。 「C2−6アルキニルスルホニル基」とは、炭素数2〜6の直鎖、または分岐状のアルキニルスルホニル基を示し、1−エチニルスルホニル基、1−プロピニルスルホニル基、2−プロピニルスルホニル基、1−ブチニルスルホニル基、2−ブチニルスルホニル基、3−ブチニルスルホニル基、3−メチル−1−プロピニルスルホニル基、1−メチル−3−プロピニルスルホニル基、1−ペンチニルスルホニル基、2−ペンチニルスルホニル基、3−ペンチニルスルホニル基、4−ペンチニルスルホニル基、1−ヘキシニルスルホニル基、2−ヘキシニルスルホニル基、3−ヘキシニルスルホニル基、4−ヘキシニルスルホニル基、5−ヘキシニルスルホニル基などを意味する。好ましくは、1−エチニルスルホニル基、1−プロピニルスルホニル基などである。 「C2−6アルケニルスルフィニル基」とは、炭素数2〜6の直鎖、分岐状または環状のアルケニルスルフィニル基を示し、ビニルスルフィニル基、1−プロペニルスルフィニル基、2−プロペニルスルフィニル基、イソプロペニルスルフィニル基、2−メチル−1−プロペニルスルフィニル基、3−メチル−1−プロペニルスルフィニル基、2−メチル−2−プロペニルスルフィニル基、3−メチル−2−プロペニルスルフィニル基、1−ブテニルスルフィニル基、2−ブテニルスルフィニル基、3−ブテニルスルフィニル基、1−ペンテニルスルフィニル基、2−ペンテニルスルフィニル基、3−ペンテニルスルフィニル基、4−ペンテニルスルフィニル基、シクロペンテニルスルフィニル基、1−ヘキセニルスルフィニル基、2−ヘキセニルスルフィニル基、3−ヘキセニルスルフィニル基、4−ヘキセニルスルフィニル基、5−ヘキセニルスルフィニル基、シクロヘキセニルスルフィニル基などを意味する。好ましくは、ビニルスルフィニル基、1−プロペニルスルフィニル基、2−プロペニルスルフィニル基、イソプロペニルスルフィニル基、1−ブテニルスルフィニル基、2−ブテニルスルフィニル基、3−ブテニルスルフィニル基、1−ペンテニルスルフィニル基、2−ペンテニルスルフィニル基、3−ペンテニルスルフィニル基、4−ペンテニルスルフィニル基などである。 「C2−6アルキニルスルフィニル基」とは、炭素数2〜6の直鎖、または分岐状のアルキニルスルフィニル基を示し、1−エチニルスルフィニル基、1−プロピニルスルフィニル基、2−プロピニルスルフィニル基、1−ブチニルスルフィニル基、2−ブチニルスルフィニル基、3−ブチニルスルフィニル基、3−メチル−1−プロピニルスルフィニル基、1−メチル−3−プロピニルスルフィニル基、1−ペンチニルスルフィニル基、2−ペンチニルスルフィニル基、3−ペンチニルスルフィニル基、4−ペンチニルスルフィニル基、1−ヘキシニルスルフィニル基、2−ヘキシニルスルフィニル基、3−ヘキシニルスルフィニル基、4−ヘキシニルスルフィニル基、5−ヘキシニルスルフィニル基などを意味する。好ましくは、1−エチニルスルフィニル基、1−プロピニルスルフィニル基などである。 本明細書中、「置換されていてもよい」の置換基とは、1−6個、好ましくは1−3個の置換基を有していてもよく、「置換基」とは、水酸基、ハロゲン原子、アミノ基、モノ置換アミノ基、ジ置換アミノ基、アジド基、C1−6アルキル基、C3−7環状アルキル基、C1−6アルコキシ基、C3−7環状アルコキシ基、ヒドロキシC1−6アルキル基、アミド基、N−置換アミド基、N,N−ジ置換アミド基、アミノカルボニル基、カルボキシル基、C1−6アルキルオキシカルボニル基、フェニル基、フェニルオキシ基、置換フェニル基、ベンジル基、置換ベンジル基、ベンゾイル基、C1−6アルキルカルボニル基、置換C1−6アルキルカルボニル基、カルボニル基、複素環等である。 本明細書において、「複素環」とは、窒素原子、酸素原子、および、硫黄原子から選ばれた1種または2種、1ないし4個のヘテロ原子を含む5〜14員の単環式ないし三環性複素環等が挙げられ、好ましくは、窒素原子、酸素原子、あるいは、硫黄原子を1〜4個含む、5〜10員の単環または二環性複素環が挙げられる。さらに好ましくは、テトラヒドロフラン、フラン、ピロリジン、ピペリジン、ピラゾリジン、イミダゾリジン、ピペラジン、モルホリン、チオモルホリン、ピロール、チオフェン、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアゾール、テトラゾール、チアジアゾール、アゼチジン、チアゾリン、キヌクリジン、トリアジン、イソベンゾフラン、インドール、インドリジン、クロメン、キノリン、イソキノリン、シンノリン、キナゾリン、キノキサリン、フタラジン、プリン、プテリジン等を表す。 以下に、本発明化合物の一般的製造法について述べる。本発明化合物は例えば以下の反応式で示される方法、または、これに準じた方法などにより得られる。本発明化合物は下記製造法に限定されものではなく、また塩や試薬などは便宜上例示したものであって、それに限定されるものではない。 下記反応式中の各記号は前記と同義を示す。PGは、保護基を表し、製造工程中に保護基の脱着は必要に応じて行う。保護基としては、Protective groups in organic synthesis, 2nd ed., (John Wiley & Sons Inc., 1991)記載の保護基、および、記載の方法に準じて利用する。また必要に応じて側鎖、側鎖上の置換基を置換してもよく、その方法は公知の方法、実験化学講座(日本化学会編、丸善)などを適用できる。 市販品として入手可能、もしくはJ. Macromol. Sci. Chem.., (1977), A11, (3), 507記載の方法により得ることができる一般式(III)で示されるアセトフェノン類を、適当なハロゲン化剤(例えば、J. Am. Chem. Soc.,(1964), 29, 3459、J. Het. Chem., (1988), 25, 337、J. Am. Chem. Soc., (1980), 102, 2838、Biorg. Med. Chem. Lett., (1996), 6(3), 253、J. Med. Chem., (1988), 31(10), 1910、J. Am. Chem. Soc., (1999),121, 248、J. Macromol. Sci. Chem.., (1977), A11,(3), 507、Synthesis, (1985), 406)を用い、適当な溶媒下(例えば、アセトン、アセトニトリル、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、ヘキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、トルエン、ベンゼン、メタノール、エタノール、ヘキサメチルリン酸トリアミド等、またはこれらの混合溶媒、好ましくは酢酸エチル又はジクロロメタンが挙げられる。)中反応させることにより、一般式(IV)で示されるα−ハロゲン化ケトンに変換する。反応温度は−10〜100℃が好ましく、さらに好ましくは0〜30℃である。反応時間は0.5〜24時間が好ましい。さらに好ましくは1〜6時間である。 また、市販品として入手可能なアミノアセトニトリル(VII)を、酸塩である場合には適当な塩基(例えば、有機塩基としては、ジイソプロピルエチルアミン、ジアザビシクロ[2,2,2]ウンデセン、2,6−ルチジン等、無機塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム等、好ましくは炭酸水素ナトリウムなどが挙げられる。)を用いて中和した後、アミノ基に保護基(PG)を導入し(例えば、Protective groups in organic synthesis, 2nd ed., (John Wiley & Sons Inc., 1991)を参照できる。)、一般式(VIII)で示される化合物に変換する。一般式(VIII)で示される化合物のニトリル基を適当な塩基(例えば、有機塩基としては、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジアザビシクロ[2,2,2]ウンデセン、2,6−ルチジン等、無機塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム等、好ましくはナトリウムメトキシドなどが挙げられる。)を用いてイミデートまで導き、アンモニウム塩(例えば、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウム、臭化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウムなどが挙げられ、好ましくは塩化アンモニウム、臭化アンモニウムなどが挙げられる)と作用させ一般式(V)で示されるアミジン類に変換させる。反応温度は−10〜100℃が好ましく、さらに好ましくは0〜30℃である。反応時間は0.5〜24時間が好ましい。さらに好ましくは0.5〜4時間である。 得られたアミジン(V)と、一般式(IV)を適当な塩基(例えば有機塩基としては、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジアザビシクロ[2,2,2]ウンデセン、2,6−ルチジン等、無機塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム等が挙げられ、好ましくは炭酸カルシウムなどが挙げられる。)存在下、反応させることで2−アミノメチルイミダゾール化合物を得ることができる。反応温度は0〜100℃が好ましく、さらに好ましくは20〜70℃である。反応時間は0.5〜24時間が好ましい。さらに好ましくは1〜3時間である。この保護基を除去した後、必要に応じて酸塩(例えば無機酸としては塩酸、硫酸、硝酸、燐酸等、有機酸としては酢酸、シュウ酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸等が挙げられる)とし一般式(VI)を得ることができる。 市販品として入手可能もしくは以下に記載の方法J. Med. Chem. (1999), 42, 2829、J. Med. Chem. (1999), 42, 2887、J. Med. Chem. (2001), 44, 749、Chem. Pharm. Bull. (1962), 10, 376、J. Org. Chem. (1984), 49, 569、J. Org. Chem. (2000), 65, 1102、J. Org. Chem. (2004), 69, 2381、Biorg. Med. Chem. Lett. (1998), 8, 3153、Biorg. Med. Chem. Lett. (1999), 9, 957、特表平10−504542号、特表2001−517667号、EP518,731、EP611,766)、により合成した一般式(IX)で示される2−アミノチアゾール化合物を適当な溶媒中(アセトン、アセトニトリル、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、ヘキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、トルエン、ベンゼン、ヘキサメチルリン酸トリアミド等、またはこれらの混合溶媒、好ましくはテトラヒドロフランなどが挙げられる)、CDI(1,1’-カルボニルジイミダゾール)と反応させることにより一般式(II)で示される化合物へと変換した後、一般式(VI)と反応させる。反応温度は0〜100℃が好ましく、さらに好ましくは10〜40℃である。反応時間は0.5〜24時間が好ましい。さらに好ましくは1〜12時間である。 一般式(II)と(VI)との反応は、適当な塩基存在下(例えば有機塩基としては、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジアザビシクロ[2,2,2]ウンデセン、2,6−ルチジン等が、無機塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム等が挙げられ、好ましくはジイソプロピルエチルアミンなどである。)、適当な溶媒中(例えばアセトン、アセトニトリル、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、ヘキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、トルエン、ベンゼン、ヘキサメチルリン酸トリアミド等、またはこれらの混合溶媒、好ましくはテトラヒドロフランなどが挙げられる。)反応させることにより一般式(I)で示される化合物を得た。反応温度は0〜100℃が好ましく、さらに好ましくは10〜40℃である。反応時間は0.5〜24時間が好ましい。さらに好ましくは1〜12時間である。 また上記Scheme以外にもトリホスゲンなど一般式(IX)または(VI)をイソシアネート化合物とし、一般式(IX)のイソシアネート体の場合には一般式(VI)を、一般式(VI)のイソシアネート体の場合には一般式(IX)を反応させると一般式(I)を得ることが出来る。 一般式(I)の塩とは、医薬的に許容される塩であって、例えばアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、有機塩基等が挙げられ、好ましくは、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アンモニウム、エタノールアミン、トリエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン等が挙げられる。 また、酸付加塩の例としては、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、樟脳酸塩、カンファースルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバリン酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩およびウンデカン酸塩等がある。 化合物(I)は、水和物または非水和物であってもよい。これらの化合物またはその塩は、分子内に不斉炭素、幾何異性を有することもある。それら各々、またはそれらの混合物のいずれも本発明に含まれる。 さらに、本発明には、上記化合物、およびそれらの塩の「水和物」および「溶媒和物」も含まれる。溶媒和物の溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、酢酸エチル、クロロホルム等が挙げられる。 本発明により提供される医薬は、一般式(I)で表される化合物および生理学的に許容されるその塩、並びにそれらの水和物またはそれらの溶媒和物からなる群から選ばれる物質を有効成分として含有することを特徴としている。本発明の医薬は経口的または非経口的に投与することができる。非経口投与としては鼻腔内、点眼、点耳、経皮、気道内、直腸内、泌尿器内、皮下、筋肉内、および静脈内等の投与経路を挙げることができる。本発明の医薬としては、有効成分である上記の物質をそのまま投与してもよいが、一般的には、1または2以上の製剤用添加物(担体)を用いて医薬組成物を製造して投与することが望ましい。経口投与に適する製剤の例としては、例えば、錠剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、シロップ剤、溶液剤、カプセル剤、チュアブル剤、または懸濁剤等を挙げることができ、非経口投与に適する製剤の例としては、例えば、注射剤、点滴剤、吸入剤、噴霧剤、坐剤、膣座剤、経皮吸収剤、経粘膜吸収剤、点眼剤、点耳剤、点鼻剤、または貼付剤等を挙げることができる。注射剤や点滴剤等の液体製剤を、例えば凍結乾燥形態の粉末状医薬組成物として提供し、用時に水または他の適当な媒体(例えば生理食塩水、ブドウ糖輸液、緩衝液等)に溶解または懸濁させて用いてもよい。 製剤用添加物は医薬組成物の形態に応じて適宜選択可能であり、その種類は特に限定されないが、例えば、安定化剤、界面活性剤、可塑剤、滑沢剤、可溶化剤、緩衝剤、甘味剤、基剤、吸着剤、矯味剤、結合剤、懸濁化剤、光沢化剤、コーティング剤、着香剤・香料、湿潤剤、湿潤調節剤、充填剤、消泡剤、咀嚼剤、清涼化剤、着色剤、糖衣剤、等張化剤、pH調節剤、軟化剤、乳化剤、粘着剤、粘着増強剤、粘稠剤、粘稠化剤、発泡剤、賦形剤、分散剤、噴射剤、崩壊剤、崩壊補助剤、芳香剤、防湿剤、防腐剤、保存剤、無痛化剤、溶剤、溶解剤、溶解補助剤、流動化剤等を挙げることができ、これらを2種以上組み合わせて用いてもよい。これらの製剤用添加物の具体例は、例えば、医薬品添加物事典(日本医薬品添加剤協会編集、薬事日報社発行)に説明されているので、当業者は医薬組成物の形態に応じて適宜の製剤用添加物を選択し、当業界で汎用の方法に従って所望の形態の医薬組成物を製造することができる。一般的には、上記の医薬組成物は有効成分である上記の物質を1.0〜1 00%(W/W)、好ましくは1.0〜60% (W/W)となるように調製することができる。 より具体的には、ゼラチン、乳糖、白糖、酸化チタン、デンプン、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、トウモロコシデンプン、マイクロクリスタルワックス、白色ワセリン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、無水リン酸カルシウム、クエン酸、クエン酸三ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ソルビトール、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリイソベート、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリビニルピロリドン、ステアリン酸マグネシウム、軽質無水ケイ酸、タルク、植物油、ベンジルアルコール、アラビアゴム、プロピレングリコール、ポリアルキレングリコール、シクロデキストリンまたはヒドロキシプロピルシクロデキストリン等の製剤用添加物を用いることができるが、これらに限定されることはない。 本明細書記載の化合物はFabK阻害剤であり、細菌性感染症の治療に有用である。例えば、これらの化合物は上気道感染症(例えば、中耳炎、細菌性気管炎、急性咽頭蓋炎、甲状腺炎)、下気道感染症(例えば、蓄膿症、肺膿瘍)、心臓感染症(例えば、感染症心内膜炎)、胃腸感染症(例えば、分泌性下痢、脾臓膿瘍、腹膜後膿瘍)、CNS感染症(例えば、大脳膿瘍)、眼感染症(例えば、結膜炎、角膜炎、眼内炎、前中隔、眼瞼炎および眼窩蜂巣炎、涙嚢炎)、腎および尿管感染症(例えば、副睾丸炎、腎内および腎周囲膿瘍、トキシックショック症候群)、皮膚感染症(例えば、膿痂疹、毛嚢炎、皮膚膿瘍、蜂巣炎、創傷感染、細菌性筋炎)、ならびに骨および関節感染症(例えば、敗血症性関節炎、骨髄炎)などの細菌性感染症の治療に有効である。また本発明の化合物は抗真菌剤としても有用であり、該化合物は既知の抗生物質と組み合わせて用いることも出来る。 本発明の医薬の投与量および投与回数は特に限定されないが、治療または予防の目的、疾患の種類、患者の年齢、体重、症状等の種々の条件に応じて、適宜の投与量および投与回数を決定することができる。経口投与の場合には、成人1日あたり有効成分量として0.1〜1000 mg/kgとなるように、一日あたり一回または数回投与することができ、非経口投与の場合は、0.001〜500 mg/kgを一日あたり一回または数回に分けて投与するのが好ましい。 以下に本発明の化合物に関する、FabKの精製、アッセイ、ならびに抗菌活性の測定方法ついて述べる。<<肺炎連鎖球菌R6株由来のゲノムDNAの単離>> 肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)R6株(ATCC49619)を血液寒天基礎培地(ベクトン・ディッキンソン社製)で二酸化炭素5%、37℃の条件下で18時間培養し、低速遠心によって集菌した。得られた菌体からDNeasy Tissue Kit(QIAGEN社製)を用い、添付の説明書記載の方法に従って、ゲノムDNAを調製した。<<肺炎連鎖球菌R6株由来FabK発現ベクターの構築>> FabKをコードするDNAを単離するため以下のプライマーを設計した。FabK−F.P.:5’−GGAATTCCATATGAAAACGCGTATTACAGAA−3’ His−FabK−R.P.:5’−CCGCTCGAGGTCATTTCTTACAACTCCTGT−3’ 単離したゲノムDNAを鋳型に、上記プライマーを用いて、Pyrobest DNAPolymerase(タカラバイオ社製)でポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を添付の説明書に従い実施した。増幅したDNA断片はNdeIおよびXhoIで消化した。この断片を予めNdeIおよびXhoIで切断したベクターpET−21b(+)(Novagen社製)にDNA Ligation Kit ver.2(TAKARA社製)を添付の説明書の方法に従い用い、サブクローニングした。得られた組換えプラスミドを大腸菌COMPETENT high DH5α(TOYOBO社製)に添付の説明書の方法に従い導入し、形質転換体を得た。形質転換体を、50μg/mLのアンピシリンを含むLB agarプレート上にて、37℃で一晩培養し、アンピシリン耐性コロニーを取得した。取得したコロニーから組換えプラスミド(His−FabK/pET−21b(+))を調製しDNA配列を確認し、SWISSPROT Accession番号Q8DR17に登録されている肺炎連鎖球菌R6株由来FabKをコードすることを確認した。 <<肺炎連鎖球菌R6株由来FabKの大腸菌発現系構築>> 得られたHis−FabK/pET−21b(+)の組み換えプラスミドを大腸菌BL21(DE3)(Novagen社製)に形質転換し、得られた形質転換体を100μg/mlのアンピシリンを含むSB培地(1.2%(w/v)Bacto Tryptone、2.4%(w/v)Yeast Extract、0.5%(v/v)グリセロール、0.072M リン酸水素二カリウム、0.028M リン酸二水素カリウム)5L中で600nmにおけるO.D.が0.6−1.0に達するまで増殖させた。終濃度1mMのイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)で3時間誘導後、遠心分離機によって集菌し、菌体をリン酸緩衝食塩水(PBS)200mLに懸濁した後、再度、遠心分離機によって集菌し、−20℃で凍結保存した。保存した菌体を菌体破砕バッファー(50mM リン酸ナトリウム緩衝液 pH 8.0、300mM 塩化ナトリウム、5mM イミダゾール、1mM フッ化フェニルメチルスルホニル、1mM ベンズアミジン、1mM β―メルカプトエタノール、0.1mg/mL リゾチーム)に懸濁し、氷上で30分インキュベートした。次に1分間の超音波処理を5−7回施し、細胞を破砕した。遠心分離(30分間、15000rpm)とそれに続く0.22μmのフィルターによって超音波処理の残渣を除去し、細胞抽出液を得た。 <<His−tag付きFabK(His−FabK)の精製>> 以下の精製操作はすべて4℃で行った。His−FabK/pET−21b(+)の組み換え大腸菌から得られた細胞抽出液をアフィニティークロマトグラフィーで精製した。アフィニティークロマトグラフィーカラムは、Ni−NTA Agarose(QIAGEN社製)を担体として用い、マニュアル記載の方法でカラム容量30mlのカラムを作製した。平衡化バッファー(50mM リン酸ナトリウム緩衝液 pH 8.0、300mM 塩化ナトリウム、5mM イミダゾール、1mM フッ化フェニルメチルスルホニル、1mM ベンズアミジン、1mM β―メルカプトエタノール)で平衡化した後、細胞抽出液を流速1mL/minでアプライし、3カラム容量の洗浄バッファー(50mM リン酸ナトリウム緩衝液 pH 8.0、300mM 塩化ナトリウム、20mM イミダゾール、1mM フッ化フェニルメチルスルホニル、1mM ベンズアミジン、1mM β―メルカプトエタノール)で洗浄した後、溶出バッファー(50mM リン酸ナトリウム緩衝液 pH 8.0、300mM 塩化ナトリウム、200mM イミダゾール、1mM フッ化フェニルメチルスルホニル、1mM ベンズアミジン、1mM β―メルカプトエタノール)で溶出した。SDS−PAGEにより溶出画分を確認し、His−FabKの主要なフラクションをまとめて回収した。得られたHis−FabK溶液を透析バッファー(50mM トリス塩酸緩衝液 pH 7.5、50mM 塩化アンモニウム、1mM フッ化フェニルメチルスルホニル、1mM ベンズアミジン、1mM ジチオスレイトール)で2時間透析し、酵素アッセイに使用した。<FabK酵素アッセイ> FabK酵素アッセイは96穴ハーフエリアプレートを用いて最終100 μLの容量で実施した。FabK酵素活性は反応溶液中のNADHの減少を指標とし、340nmの吸光度(OD340)を測定した。基質crotonoyl−CoA(最終0.05 mM)、補酵素NADH(最終0.1 mM)及び阻害物質を酵素反応液(最終100 mM 2−(N−morpholino)ethanesulfonic acid (pH 7.0)−100 mM NH4Cl−1 μg/mL FabK)に加え、室温で5−10分インキュベートし、反応前後のOD340値より差(△OD)を求めた。陽性コントロールと比べて△OD値が50%となる阻害物質の濃度をIC50値として表した。<抗菌活性測定> 最小発育阻止濃度(MIC)はNCCLS(National Committee for Clinical Laboratory Standards)の勧告に準じた微量液体希釈法により測定した。MIC測定には当研究所保存の以下の菌株を使用した:Streptococcus pnemoniae 197。2%ウマ溶血液添加Cation−adjusted Mueller−Hinton培地に、試験菌株を約5×105CFU/mLとなるように接種し、35℃で20−24時間培養後、発育を抑制する最小薬剤濃度をMICと判定した。 以下、本発明化合物を実施例により説明する。ただし、本発明は下記実施例により制限されるものではない。 [実施例1]1−((4−(4−ブロモフェニル)−1H−イミダゾール−2−イル)メチル)−3−(5−エチニルチアゾール−2−イル)ウレア[実施例1−1]2−アミノ−5−エチニルチアゾール 2−アミノ−5−ブロモチアゾール臭化水素酸塩2.5g(9.6mmol)を炭酸カリウム水溶液で中和、酢酸エチルで抽出した。有機層を減圧濃縮し、2−アミノ−5−ブロモチアゾールをクルードで1.6g得た。このうち、1.5gをキシレン30mlに溶解し、エチニルトリブチルチン2.9ml(10mmol)、塩化トリフェニルホスフィンパラジウム590mg(0.84mmol)を加え、110℃にて1時間攪拌した。混合溶液を減圧濃縮後、残渣をシリカゲルクロマトグラフィーにて精製し、標記化合物を得た(38mg、3.7%)。 MS(ES+):125(M++1)[実施例1−2]N−(5−エチニルチアゾール−2−イル)−1H−イミダゾール−1−カルボキシアミド 2−アミノ−5−エチニルチアゾール38mg(0.31mmol)をテトラヒドロフラン1.2mlに溶解し、1、1’−カルボニルジイミダゾール230mg(1.4mmol)を加え、室温で終夜攪拌した。反応液をろ取し、標記化合物をクルードで15mg得た。[実施例1−3]1−((4−(4−ブロモフェニル)−1H−イミダゾール−2−イル)メチル)−3−(5−エチニルチアゾール−2−イル)ウレア 実施例1−2で得たクルード化合物15mg(0.070mmol)をテトラヒドロフラン0.5mlに溶解し、(4−(4−ブロモフェニル)−1H−イミダゾール−2−イル)メチルアミン塩酸塩27mg(0.084mmol)、N,N’−ジイソプロピルアミン31μl(0.18mmol)を加え、室温で終夜攪拌した。混合溶液にメタールを加え、減圧濃縮後、残渣をP−TLC(クロロホルム/メタノール=10/1)にて精製し、標記化合物を得た(9.2mg、33%)。 1H−NMR(CDCl3/CD3OD):δ7.72−7.46(6H,m)、4.49(2H,s)、3.51(1H,s) 、MS(FAB+):402(M++1)[実施例2]1−((4−(4−ブロモフェニル)−1H−イミダゾール−2−イル)メチル)−3−(5−(4−ペンテニルチオ)チアゾール−2−イル)ウレア[実施例2−1]2−(ペントー4−エニル)イソチオウレア 市販、97%純度の5−ブロモ−1−ペンテン2.01g(13.1mmol)を脱水エチルアルコール13mLに溶解し、チオウレア995.8mg(13.1mmol)を加え、加熱還流下、1.5時間攪拌した。反応溶液を室温に戻し、減圧濃縮を行い、標記化合物を黄色オイル状のクルードで得た。[実施例2−2]2−アミノ−5−(4−ペンテニルチオ)チアゾール実施例2−1で得たクルードの内2.9gを取り、水酸化ナトリウム4.72g(13.1mmol)、水25mL、トルエン25mLを加え攪拌し、さらにテトラ−n−ブチルアンモニウム硫酸水素塩75.6mg(0.22mmol)、2−アミノ−5−ブロモチアゾール臭化水素酸塩3.4g(13.1mmol)を加え室温で終夜攪拌した。混合溶液に水、酢酸エチルを加え反応を停止し、酢酸エチルにて2回抽出し、有機層を無水硫酸マグネシウムにて乾燥、減圧濃縮し標記化合物をクルードで得た。[実施例2−3]N−(5−(4−ペンテニルチオ)チアゾール−2−イル)−1H−イミダゾール−1−カルボキシアミド 実施例2−2で得たクルードの内2.08gを脱水テトラヒドロフラン20mLに溶かし、1,1’−カルボニルビス−1H−イミダゾール3.37g(20.8mmol)を加え室温で約3時間攪拌した。混合溶液に水、酢酸エチルを加え反応を停止し、酢酸エチルにて2回抽出、減圧濃縮し、標記化合物をクルードで得た。[実施例2−4]1−((4−(4−ブロモフェニル)−1H−イミダゾール−2−イル)メチル)−3−(5−(4−ペンテニルチオ)チアゾール−2−イル)ウレア 実施例2−3で得たクルードの内56.8mgをテトラヒドロフラン3mlに溶解し、(4−(4−ブロモフェニル)−1H−イミダゾール−2−イル)メチルアミン塩酸塩82.6mg(0.25mmol)、N,N’−ジイソプロピルアミン86.5μl(0.51mmol)を加え、室温で終夜攪拌した。混合溶液に水、酢酸エチルを加え反応を停止し、酢酸エチルにて2回抽出後、有機層を減圧濃縮し、残渣をP−TLC(クロロホルム/メタノール=10/1)にて精製し、標記化合物を得た(33mg、33%)。 1H−NMR(CDCl3/CD3OD):δ7.58(2H,m)、7.48(2H,m)、7.33(1H,s)、7.27(1H,s)、5.76(1H,m)、5.05−4.94(2H,m)、4.53(2H,s)、2.69(2H,t, J=7.1Hz)、2.16(2H,m)、1.67(2H,m)、MS(ES+):478(M++1) 以下の表は、本発明化合物のFabK阻害活性(IC50(μM))を示す。 以下の表は、本発明化合物のStreptococcus pneumoniae 197に対する抗菌活性を示す。 本発明は、非常に強いFabK阻害活性を有する。このことから、FabKのみを有している臨床上重要な病原菌である肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)に有効であり、またFabIとFabKの両方を有している緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)と腸球菌(Enterococcus faecalis)においても有効な抗菌剤である。下記式(I)で表される化合物、または、その医薬上許容される塩。[式中、Xはハロゲン原子を表し、R1は、C2−6アルキニル基、C2−6アルケニル基、C2−6アルケニルチオ基、C2−6アルキニルチオ基、C4−6アルケニルスルホニル基、C2−6アルキニルスルホニル基、C2−6アルケニルスルフィニル基、C2−6アルキニルスルフィニル基を表し、これらは置換基を有していてもよい。] Xがハロゲン原子を表し、R1が、C2−6アルキニル基、C2−6アルケニルチオ基を表す請求項1に記載の化合物、または、その医薬上許容される塩。 Xが臭素原子を表し、R1が、エチニル基、4−ペンテニル基を表す請求項1または2に記載の化合物、または、その医薬上許容される塩。 請求項1に記載の一般式(I)で表される化合物を含んでなる医薬組成物。 請求項1に記載の一般式(I)で表される化合物を含んでなるFabK阻害剤。 【課題】FabKを阻害することにより抗菌活性を示すFabK阻害剤を提供する。【解決手段】下記一般式(I)で表されるFabK阻害剤。 [式中、Xはハロゲン原子を表し、R1は、アルキニル基、アルケニル基等、アルケニルチオ基を表す。] 【選択図】なし20061219A16330配列表1配列表


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