タイトル: | 公開特許公報(A)_Chlamydophilacaviae(C.caviae)由来のDNAの増幅および検出法 |
出願番号: | 2006232423 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | C12N 15/09,C12Q 1/68 |
公文 裕巳 松本 明 門田 晃一 和田 耕一郎 前田 博史 JP 2008054525 公開特許公報(A) 20080313 2006232423 20060829 Chlamydophilacaviae(C.caviae)由来のDNAの増幅および検出法 国立大学法人 岡山大学 504147243 平木 祐輔 100091096 石井 貞次 100096183 藤田 節 100118773 田中 夏夫 100111741 公文 裕巳 松本 明 門田 晃一 和田 耕一郎 前田 博史 C12N 15/09 20060101AFI20080215BHJP C12Q 1/68 20060101ALI20080215BHJP JPC12N15/00 AC12Q1/68 A 10 OL 13 4B024 4B063 4B024AA13 4B024CA09 4B024HA12 4B063QA19 4B063QQ06 4B063QQ43 4B063QR08 4B063QR32 4B063QR42 4B063QR55 4B063QR62 4B063QS25 4B063QS34 4B063QX02 本発明は、臨床検体からC.caviae由来DNAを増幅し検出する技術に関する。 今日、性風俗の多様化や若者を中心とする日本人の性行動様式の変化にともない性感染症としてのクラミジア感染症の増加は著しい。高感度の遺伝子診断や抗原検査法の普及とともに、技術と時間を要するクラミジア・トラコマティス(Chlamydia trachomatis)の臨床検体からの分離・培養は、診断・治療の目的ではもはやいずれの施設でも実施されなくなった。 性器クラミジア感染症の原因菌はクラミジア・トラコマティス(C.trachomatis)であり、主に男性では尿道炎、女性では子宮頚管炎を発症する。特に女性では、容易に腹腔内に浸透し、卵管妊娠や卵管性不妊の原因となる。さらに、上腹部へ広がると劇症の肝臓周囲炎(Fitz-Hugh Curtis症候群)を発症し、臨床的にも問題の多い疾患である。男性尿道炎は大きく淋菌性と非淋菌性に分類され、非淋菌性は尿道炎全体の60〜70%を占め、その約半数からC.trachometisが検出される。つまり、尿道炎患者の約30%では通常の検査方法では原因菌が検出されない非淋菌性非クラミジア性尿道炎となる(非特許文献1及び2を参照)。現在、これらの原因菌としてMycoplasma genitaliumやUreaplasma urealyticum(biobar 2)などが有力な候補として挙げられているが(非特許文献2及び3を参照)、その病原性については不明な点が多い。 一方、Chlamydophila caviaeは、1999まではChlamidya psittaci、GPIC isolateとして取り扱われていたが、近年のゲノム解析にもとづいたChlamidia属の分類再編成に伴い独立した種となった。Chlamidyaceae familyのなかで全ゲノムの解析が完了した4番目の種として(Nucleic Acid Reserch, 31:2134,2003)、特にヒトに広く感染するChlamydia peumoniaeとの比較解析が進められている。Chlamydophila caviaeはモルモットの封入体結膜炎(GPIC)の原因菌であり、クラミジア感染症全般の狭い宿主域や病原性を規定する遺伝子(niche-specific genes)の解析モデル系として、全ゲノムの塩基配列決定と共に注目されている。しかし、ヒトでの病原性は今日まで確認さていない。 従来C.caviaeの検出法は蛍光染色法とnested PCR法(従来のPCR法)が主であった。蛍光染色法はC.caviaeの宿主となるMcCoy細胞に検体を接種培養してクラミジア科特異抗体(デンカ生検)で処理して観察するもので、検出に約3日の時間を要し感度・特異度も低いものであった。また、nested PCR法は感度が比較的低い為に一定量までクラミジアを培養してからDNAを抽出してPCRを行う必要があり、同様に検出までに約3日必要で特異度も満足のいくものではなかった。出口隆 他 Urology View 3:47-50,2005Maeda S et al. Int J Urol.11:750-754,2004.Deguchi T et al. J Urol. 167:1210-1217,2002. 本発明は、C.caviaeをLAMP法を用いて検出するためのプライマー、及び該プライマーを用いたC.caviaeのLAMP法による検出方法の提供を目的とする。 これまで、本発明者等は、性感染症(尿道炎・子宮頚管炎)患者の検体(患部擦過物)について、臨床現場における遺伝子診断に加えて、研究的観点から培養法による分離、同定を実施してきた。2000年以降に女性子宮頚管炎患者3例、2003年以降に男性尿道炎4症例からC.caviaeを検出・分離した。なお、男性尿道炎においては、非淋菌性尿道炎患者12症例の検体の分離、同定を実施した。したがって、検査対象となった尿道炎患者の実に33.3%(4/12)からC.caviaeが検出されたことになる。これまでC.caviaeは主にモルモットに寄生し、ヒトに対しては病原性を発揮することはないとされており、この結果から新たなる病原微生物がヒトの性感染症の原因菌として蔓延しつつあることが示唆された。 分離した7株のクラミジア株は、C.trachomatisと同様に増殖速度が異常に速くC.trachomatisに特徴的な封入体グリコーゲンを欠失したクラミジア株であった。この株の精製基本粒子(EB)のompA遺伝子(外膜蛋白Aの遺伝子)の塩基配列解析の結果、これらの株がCPIC株と極めて近縁のC.caviaeであることが判明した。 従来尿道炎および子宮頚管炎の病原菌としてChlamydia trachomatisのみが確認されており、ヒトかC.caviaeが分離されることはなかった。本発明者等は、その後の研究で11例のC.caviae類似クラミジアを男性尿道および子宮頚管より検出した。引き続き大量の臨床検体からC.caviae類似クラミジアを検出していくにあたり、多大な時間と煩雑な操作を要求されることは非常に負担になる。そこで10〜15コピー/μLという非常に高い検出限界を示すLAMP法に着目し、LAMP法に用いるプライマーを独自に開発することで短時間かつ簡便にC.caviaeを検出し、染色法やnested PCRより高い感度・特異度を実現することができた。培養の行程を省略して臨床検体から直接検出できることが確認されれば、材料の採取から検出までに約3時間で可能であり非常に有用かつ臨床的に不可欠な検出法となることが期待される。 nested PCR法は2種のプライマーで反応が進行するが、LAMP法では6領域4種のプライマーが必要となる。これまでC.caviaeを検出するためのLAMP法用プライマーは存在しなかった。本発明者等はC.caviaeに特異的な道伝子領域を選出し、これらの遺伝子塩基配列を基にPrimer Explorer version 2(富士通社)を用いてLAMP-PCR用のプライマーを独自に設計した。C.caviaeに特異的な遺伝子の領域であるCCA00797、CCA00799、CCA00795、KynU、TrpD、TrpCの6領域について検討したところKynUからのみプライマーの作成が可能であった(KynUは、トリプトファン代謝酵素であるキヌレニナーゼをコードする遺伝子。)。作成したプライマーを用いて検証したところ、nested PCRに比し約100倍の感度であることを確認した。またC.caviae、Chlamydia trachomatis D、Chlamydia trachomatis serovar L2、Chlamydia pneumoniae、Chlamydia psittasiに加えて臨床検体より分離したC.caviae類似クラミジア(SC 10-6)の6株を用いて特異性を検討したところ、C.caviaeとSC 10-6のみ陽性を示して他は陰性であり、高い特異性が証明され、本発明を完成させるに至った。 すなわち、本発明は以下の通りである。[1] 被検体中のChalamydophila caviaeを検出するための、Chlamydophila caviaeのkynU遺伝子の塩基配列またはそれらの相補鎖から選ばれた、kynU遺伝子中の標的領域の核酸配列を増幅するためのプライマーセットであって、KynU遺伝子について3’側に向かってF1c領域、F2c領域、及びF3c領域、5’側に向かってB1領域、B2領域、及びB3領域を規定し、KynU遺伝子のF2c領域と相補的なF2領域を3’末端側に有し、5’末端側にKynU遺伝子のF1c領域と同一の配列を有するプライマーFIP、KynU遺伝子のB2c領域と相補的なB2領域を3’末端側に有し、5’末端側にKynU遺伝子のB1c領域と同一の配列を有するプライマーBIP、KynU遺伝子のF3c領域と相補的なF3領域を含むF3プライマー、並びにKynU遺伝子のB3c領域と相補的なB3領域を含むB3プライマーの少なくとも4種類のプライマーを含むプライマーセット。[2] kynU遺伝子のF3領域、F2領域及びF1c領域の塩基配列が、それぞれ配列番号2、3及び4で表され、kynU遺伝子のB3領域、B2領域及びB1c領域の塩基配列が、それぞれ配列番号5、6及び7で表される[1]のプライマーセット。[3] FIP、BIP、F3及びB3の各プライマーの塩基配列が、それぞれ配列番号8〜11に表す塩基配列である[1]又は[2]のプライマーセット。[4] さらに、B1領域とB2領域の間の領域に相補的な配列を持つループプライマー及び/又はF1領域とF2領域の間の領域に相補的な配列を持つループプライマーを含む[1]〜[3]のいずれかのプライマーセット。[5] ループプライマーの塩基配列が、配列番号12に表す塩基配列である[4]のプライマーセット。[6] 被検体中に存在するChlamydophila caviaeの検出方法であって、Chlamydophila caviaeのkynU遺伝子の特定領域を標的とし、[1]〜[5]のいずれかのプライマーセットを用いてkynU遺伝子の特定領域を選択的に、LAMP法により増幅させ、増幅産物の有無を測定することを含む、Chlamydophila caviaeの検出方法。[7] 検体中に存在するChlamydophila caviaeを他のクラミジア科細菌と識別する方法であって、Chlamydophila caviaeのkynU遺伝子の特定領域を標的とし、[1]〜[5]のいずれかのプライマーセットを用いてkynU遺伝子の特定領域を選択的に、LAMP法により増幅させ、増幅産物の有無を測定することを含む、Chlamydophila caviaeの識別方法。[8] 他のクラミジア科細菌がChlamydia trachomatis D、Chlamydia trachomatis serovar L2、Chlamydia pneumoniae及びChlamydia psittasiである[7]のChlamydophila caviaeの識別方法。[9] [1]〜[5]のいずれかのプライマーセット、鎖置換型DNAポリメラーゼ、dNTPs、反応緩衝液を含む、Chlamydophila caviae検出用キット。[10] [1]〜[5]のいずれかのプライマーセット、鎖置換型DNAポリメラーゼ、dNTPs、反応緩衝液を含む、Chlamydophila caviaeの識別用キット。 我々が独自に開発したC.caviae由来DNAに対する特異的プライマーを用いてLAMP法を施行することで、従来の検出法より検出時間を約3日短縮し、操作も非常に簡素化することができた。さらにnested PCR法に比し約100倍という高い感度と、ヒトに感染性をもつ他のクラミジアでは反応しないという高い特異度も実現することができた。今後、C.caviaeによる尿道炎や子宮頚管炎の疫学的研究・検討が必要であることが予想される中で、本発明はさらなる発展やキット開発の根本となるべき発明であり様々な分野への応用かつ需要拡大が期待される。 本発明のChlamydophila caviaeの検出法はLAMP(Loop-mediated isothermal amplification)法により行われる。また、本発明のChlamydophila caviaeの検出のためのプライマーはLAMP法で用いられる。LAMP法は、プライマーとして少なくとも4種類のオリゴヌクレオチドを用いる核酸増幅法であり、2本鎖DNA、6つの領域を認識する4つのプライマー、鎖置換型DNA polymerase、基質等を同一容器に入れ、一定温度(65℃付近)で保温することにより、検出までを1ステップの工程で行う。LAMP法は、増幅効率が高く、DNAを15分〜1時間程度で109〜1010倍に増幅することができ、その極めて高い特異性から、増幅産物の有無で目的とするDNA配列の有無を判定することができる(国際特許公開WO 00/28082号パンフレット;ウイルス第54巻、第1号、pp.107-112, 2004)。 本発明のChlamydophila caviaeの検出において用いられる被検体として初尿、尿道スワブ、頚管スワブ等が挙げられる。これら被検体をLAMP法の試料に用いるには、検体中に存在する菌の濃縮、分離や、菌体から核酸を遊離や濃縮などの操作を前処理として行なってもよい。その方法としては酵素、界面活性剤、アルカリ、熱による処理などが知られていて、その中から適宜選択できる。本発明において標的配列とは、増幅すべきポリヌクレオチドの塩基配列を意味する。 LAMP法で用いるプライマーは、標的遺伝子に対して3’側に向かってF1c、F2c、F3c、5’側に向かってB1、B2、B3という領域を規定し(図1A)、この6領域に対して、プライマーを設計する。プライマーはインナープライマーとアウタープライマーを用い、インナープライマーとして、FIP(forward inner primer)及びBIP(back inner primer)があり、アウタープライマーとして、F3プライマーとB3プライマーがあり、全部で4種類を用いる。FIPは、標的遺伝子のF2c領域と相補的なF2領域を3’末端側に有し、5’末端側に標的遺伝子のF1c領域と同一の配列を含む。F3プライマーは、標的遺伝子のF3c領域と相補的なF3領域を含む。BIPは、標的遺伝子のB2c領域と相補的なB2領域を3’末端側に有し、5’末端側に標的遺伝子のB1c領域と同一の配列を含む。B3プライマーは、標的遺伝子のB3c領域と相補的なB3領域を含む。 プライマーは、Primer Explorer version2(富士通社製)等の市販のソフトウェアを用いて設計することができる。 FIPプライマー及びBIPプライマーは、30塩基以上、望ましくは35塩基以上の長さのオリゴヌクレオチドであり、化学合成によって作製することができる。FIPは、標的遺伝子配列のF2領域とF1c領域の間には0から50塩基よりなる任意のオリゴヌクレオチドを含んでいてもよい。また、BIPは、標的遺伝子配列のB2領域とB1c領域の間に0から50塩基よりなる任意の塩基配列を含んでいてもよい。また、プライマーは蛍光物質等により標識されていても良い。 F3プライマー及びB3プライマーは、10塩基以上、望ましくは15塩基以上の塩基長のオリゴヌクレオチドクレオチドであり、化学合成によって作製することができる。 また、F2領域の外側〜B2領域の外側までの長さは120〜180塩基が好ましく、F2とF3領域間、B2とB3領域間は0〜20塩基が好ましい。また、F2領域の5'末端〜F1領域の5'末端まで、及びB2の5'末端〜B1の5'末端のループを形成する部分の塩基長は40〜60塩基が好ましい。 本発明のChlamydophila caviaeの検出において用いられるプライマーは、Chlamydophila caviaeに特異的な遺伝子領域の遺伝子配列に基づいて設計することができる。Chlamydophila caviaeに特異的な遺伝子領域とは、他のクラミジア属の微生物が有しておらず、Chlamydophila caviaeにのみ存在する遺伝子領域をいう。Chlamydophila caviaeに特異的な遺伝子領域としては、トリプトファン代謝酵素であるキヌレニナーゼをコードするkynU遺伝子領域が挙げられる。kynU遺伝子の塩基配列を配列番号1に示す。kynU遺伝子は、Chalamydophila caviae の前ゲノム配列の652528〜653805番の塩基配列に相当する。 kynU遺伝子配列より、以下のようにF3、F2、F1c、B3、B2及びB1c領域を規定した。以下の番号は、配列番号1に表すkynU遺伝子の塩基配列の塩基番号である。F3:693-712 (配列番号2)CCATGAATGGGGAGTGGATTF2:713-732 (配列番号3)TTGCCTTGGGATGTTCCTACF1c:753-773 (配列番号4)AGGTGGGCCAGGTATTGCTTTB2:848-867 (配列番号5)TCCAAATGCAACTACAGCCAB1c:796-817 (配列番号6)GAACAACTTCCGCGTTTCAGCGB3:877-894 (配列番号7)CCTTACAGCGGCGCTTAT 上記各領域の配列に基づいて以下のプライマーを設計した。FIP(5' → 3'):AAAGCAATACCTGGCCCACCTTTGCCTTGGGATGTTCCTAC (配列番号8)F3(5' → 3') :CCATGAATGGGGAGTGGATT (配列番号9)BIP(5' → 3'):GAACAACTTCCGCGTTTCAGCGTGGCTGTAGTTGCATTTGGA (配列番号10)B3(5' → 3') :ATAAGCGCCGCTGTAAGG (配列番号11) また、LAMP法の過程中でできたF1c領域とF1領域及びB1領域とB1c領域のハイブリダイズにより形成されたダンベル構造型のDNA鎖において、ループの1本鎖部分であるB1領域とB2領域の間、又はF1領域とF2領域の間の領域に相補的な配列を持つループプライマー(ループプライマーB又はループプライマーF)を用いてもよい。該ループプライマーを用いることにより、DNA合成の起点を増やすことが可能になる。ループプライマーを加えることにより反応立ち上がり時間(増幅が確認できるまでの最短時間)が20分に短縮され、感度も2倍になる。ループプライマーはダンベル構造型の増幅産物の配列に基づいて設計することができる(図1B)。例えば、ループプライマーLPとしては、以下の配列のものを用いることができる。LP(5' → 3'):GGTGGGGAAATGATCCTGAAAC (配列番号12) 本発明は、上記のFIP、F3、BIP及びB3の各プライマーを包含し、またFIP、F3、BIP及びB3の4種類のプライマーからなるプライマーセットを包含する。さらに、前記プライマーセットにループプライマーを含むプライマーセットをも包含する。 LAMP法に用いる酵素としては、Bst DNAポリメラーゼ(ラージフラグメント)、Bca(exo-)DNAポリメラーゼ、大腸菌DNAポリメラーゼIのクレノウフラグメント、Vent(Exo-)DNAポリメラーゼ(Vent DNAポリメラーゼからエクソヌクレアーゼ活性を除いたもの)、DeepVent(Exo-)DNAポリメラーゼ(DeepVent DNAポリメラーゼからエクソヌクレアーゼ活性を除いたもの)、KOD DNAポリメラーゼ等の鎖置換型DNAポリメラーゼが挙げられる。好ましくはBst DNAポリメラーゼ(ラージフラグメント)が用いられ、当酵素を用いる場合、当酵素の反応至適温度である65℃付近で反応を行うのが望ましい。 LAMP法は、設計したプライマー、DNAポリメラーゼ及び増幅しようとする標的遺伝子を含むサンプルをdNTPs及びMgSO4等を含むバッファー中で混合し、一定温度でインキュベーションを行うことにより、遺伝子増幅反応が進行し、増幅産物を得ることができる。 LAMP法で得られた増幅産物の検出は、例えば増幅された遺伝子配列を特異的に認識する標識オリゴヌクレオチドを用いて行うことができ、さらに増幅反応終了後の反応液をそのままアガロース電気泳動で分析してもよい。また、反応液中にあらかじめ二本鎖核酸の分子内に特異的に取り込まれるインターカレーターであるエチジウムブロマイドやSYBR Green(Molecular Probes 社製)等を添加することによっても増幅を検出することが可能である(特開2001-242169)。また、市販の蛍光光度計を用いて、経時的に蛍光強度を測定してもよい。また、伸長反応の際、副産物としてピロリン酸が生成され、反応液中のマグネシウムイオンと結合し、ピロリン酸マグネシウムの白濁・沈殿が生じるので、これを指標に肉眼又は吸光度計で検出することもできる。さらに、増幅された遺伝子配列を、該配列に特異的にハイブリダイズするヌクレオチドを固相化したDNAマイクロアレイやDNAチップを用いて検出することもできる。 本発明のプライマーを用いた方法によれば、3時間以内の短時間でC.caviaeを検出することが可能である。 本発明のプライマーを用いることにより、C.caviaeをクラミジア感染症の原因となるクラミジア科に属する他の菌と識別して検出することができる。クラミジア科に属する他の菌としてクラミジア属のChlamydia trachomatis D、Chlamydia trachomatis serovar L2、Chlamydia pneumoniae及びChlamydia psittasiが挙げられる。また、クラミジア属のChlamydia muridarum、Chlamydia suis、Chlamydophila属のChlamydophila pneumoniae、Chlamydophila psittaci、Chlamydophila pecorum、Chlamydophila abortus、Chlamydophila felisと識別して検出することもできる。なお、Chalamydophila cavieには変異株が知られており、例えばChlamydophila caviaeに比べてDNAの変異が3箇所、欠失が5箇所有するSC 10-6がある。本発明において、Chlamydophila caviaeはあらゆる変異株をも含む。また、これらの変異株をC.caviae類似クラミジアと呼ぶこともある。 本発明のC.caviaeを検出することより、C.caviaeによる性器クラミジア感染症の検出・診断を行うことができる。性器クラミジア感染症の症状として、男子尿道炎、子宮頚管炎、精巣上体炎、慢性前立腺炎、卵管炎、女子骨盤内感染症(PID)等が挙げられる。特に性感染症に感染していると疑われる被検体や妊婦を対象として検出・診断を行うことが好ましい。 本発明を以下の実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。 LAMP-PCR法は従来のPCR法と比して簡易で増幅効率が高く、感度・特異度とも高いとされている。LAMP-PCR法には6領域を含む4個のプライマーが必要であり、増幅反応はすべて等温で連続的に進行する。増幅産物は同一鎖上で相補的な配列を持つ繰り返し構造となる。その感度は、10〜15コピー/μLつまり20〜30コピー/サンプルとされている。 本実施例において、C.caviaeに特異的な遺伝子領域を標的としたループプライマーを作成し、その感度および特異度を検証した。プライマーの設計 C.caviaeに特異的な遺伝子領域を選出し、これらの遺伝子塩基配列を基にLAMP-PCR用のプライマーを設計した。設計にはPrimer Explorer version 2を使用した。この際、C.caviaeに特異的な遺伝子領域:CCA00797、CCA007999、CCA00795、KynU、TrpD、TrpCを選択し、これらの領域を対象としてプライマー配列の設計を試みた。対象とした6つの遺伝子領域について検討したところ、KynU(トリプトファン代謝酵素であるキヌレニナーゼをコードする遺伝子)からのみプライマーの作成が可能であった。以下にプライマー配列を示す。FIP(5' → 3'):AAAGCAATACCTGGCCCACCTTTGCCTTGGGATGTTCCTAC(配列番号8)F3(5' → 3') :CCATGAATGGGGAGTGGATT(配列番号9)BIP(5' → 3'):GAACAACTTCCGCGTTTCAGCGTGGCTGTAGTTGCATTTGGA(配列番号10)B3(5' → 3') :ATAAGCGCCGCTGTAAGG(配列番号11)LP(5' → 3'):GGTGGGGAAATGATCCTGAAAC(配列番号12)LAMP-PCR法による遺伝子増幅 作成したプライマーを用いてLAMP-PCR法を行い、感度と特異性を検証した。 LAMP-PCR法の手順は以下の通りであった。1.2×反応混合液、プライマー、Bst DNA ポリメラーゼ、DDWを混合しマスター混合液を調整する。 2×反応混合液及びマスター混合液の組成は、それぞれ表1及び表2の通りである。2.反応チューブに23μlの混合液を入れ、サンプルDNAを2μlずつ加える。3.よく混合した後、65℃で60分インキュベートする。4.80度で2分問インキュベートする。5.1.2%アガロースにマウントして100Vで電気泳動し、増幅産物の有無を検出する。 LAMP-PCR法の感度 C.caviae由来のDNAを用いて検出限界を測定した場合、コピー数を測定するのは困難である。それはLAMP-PCR法で増幅されたDNAはループを形成して様々な大きさの断片として存在し、リアルタイムPCRを用いるとしてもコントロールとなるDNAがないためである。そこで本実施例においては、LAMP-PCR法で用いるDNA領域(203bp)をプラスミドに組み込んだ形で人工的に作成し(SYN877-14プラスミド)、そのプラスミド(2重鎖)を用いたLAMP-PCR法の感度を測定した(図2)。 まず、10倍希釈したSYN877-14プラスミドの濃度を4回測定したところ、6.70ng/μL、6.11ng/μL、6.78ng/μL、5.90ng/μLという結果を得、相加平均して6.37ng/microLとした。その検体をさらに10倍ずつ希釈し、最初の検体から1010までのサンプルを作成した。それぞれに対してLAMP-PCR法を行ったところ、108が最終的に陽性となった(図3)。そこで108倍に希釈した検体をさらに2倍、4倍、6倍及び8倍に希釈し、同様にLAMP-PCR法を施行した。3回の実験で検出限界は6×108倍、8×108倍、1.0×109倍という結果が得られた(図4)。 SYN877-14(2重鎖)の分子量は近似式により1757310.6≒1.76×106、アボガドロ定数を6.02×1023とすると検出限界におけるプラスミド分子数は3回の実験でそれぞれ22、27、及び36コピー/μLという結果が得られた。それによりLAMP-PCR法によるC.caviae DNAの検出は1μL中に20から40コピーあれば可能であることが示唆された。C.trachomatis AMPLICORE(登録商標)は2コピー/アッセイ、1アッセイに必要な検体量は500μLである。LAMP-PCR法の特異性 対象株としてGPIC(C.caviae)、SC 10-6(C.caviae様株)、C.trachomatis D、C.trachomatis serovar L2、C.pneumoniae、C.psittasiを用い、これらの株より抽出したDNAに対してLAMP-PCR法を施行した。DNAの抽出には、QIAamp(登録商標)DNA Mini Kit(キアゲン)を用いた。その結果、GPIC、SC 10-6においてのみバンド形成を認め、他のChlamydia属ではバンド形成を認めなかった(図5)。この結果より、C.caviaeに特異性の高いプライマーの作成に成功したことが検証できた。 本実施例が示すように、C.caviea検出のための適切なプライマーが作成できた。また、LAMP-PCR法の特異性が高いことが証明できた。また、20〜30コピー/サンプル、つまり2μL(1サンプル)中に40〜60コピー存在すれば、検出可能というこれまでの報告に適合した結果が得られた。同一の検体を用いた通常のPCR法ではGPIC、SC 10-6ともに陰性で、LAMP-PCR法の方が通常のPCRに比較して感度が高いことも示唆された。LAMP法のプライマー設計方法の概要を示す図である。SYN877-14プラスミドの製造法を示す図である。LAMP-PCR法の感度を示す図である。図3中、レーン2、3、4、5、6及び7は、それぞれ106、107、108、109、1010希釈のサンプルを示し、レーン7はスケールを示す。レーン1及び8は空白である。108希釈までが陽性である。LAMP-PCR法の感度を示す図である。図4中、レーン2、3、4、5、6、7及び8はそれぞれ1.0×108、2.0×108、4.0×108、6.0×108、8.0×108、1.0×109、2.0×109希釈のサンプルを示し、レーン1は空白である。8.0×108までが陽性である。LAMP-PCR法の特異性を示す図である。図5中、レーン2、3、4、5、6及び7は、それぞれ、GPIC(C.caviae)、C.trachomatis D、C.trachomatis serovarL2、C.pneumoniae、C.psittasi及びSC 10-6(C.caviae様株)を示す。レーン1はスケールである。配列番号8〜12:プライマー 被検体中のChalamydophila caviaeを検出するための、Chlamydophila caviaeのkynU遺伝子の塩基配列またはそれらの相補鎖から選ばれた、kynU遺伝子中の標的領域の核酸配列を増幅するためのプライマーセットであって、KynU遺伝子について3’側に向かってF1c領域、F2c領域、及びF3c領域、5’側に向かってB1領域、B2領域、及びB3領域を規定し、KynU遺伝子のF2c領域と相補的なF2領域を3’末端側に有し、5’末端側にKynU遺伝子のF1c領域と同一の配列を有するプライマーFIP、KynU遺伝子のB2c領域と相補的なB2領域を3’末端側に有し、5’末端側にKynU遺伝子のB1c領域と同一の配列を有するプライマーBIP、KynU遺伝子のF3c領域と相補的なF3領域を含むF3プライマー、並びにKynU遺伝子のB3c領域と相補的なB3領域を含むB3プライマーの少なくとも4種類のプライマーを含むプライマーセット。 kynU遺伝子のF3領域、F2領域及びF1c領域の塩基配列が、それぞれ配列番号2、3及び4で表され、kynU遺伝子のB3領域、B2領域及びB1c領域の塩基配列が、それぞれ配列番号5、6及び7で表される請求項1記載のプライマーセット。 FIP、BIP、F3及びB3の各プライマーの塩基配列が、それぞれ配列番号8〜11に表す塩基配列である請求項1又は2に記載のプライマーセット。 さらに、B1領域とB2領域の間の領域に相補的な配列を持つループプライマー及び/又はF1領域とF2領域の間の領域に相補的な配列を持つループプライマーを含む請求項1〜3のいずれか1項に記載のプライマーセット。 ループプライマーの塩基配列が、配列番号12に表す塩基配列である請求項4記載のプライマーセット。 被検体中に存在するChlamydophila caviaeの検出方法であって、Chlamydophila caviaeのkynU遺伝子の特定領域を標的とし、請求項1〜5のいずれか1項に記載のプライマーセットを用いてkynU遺伝子の特定領域を選択的に、LAMP法により増幅させ、増幅産物の有無を測定することを含む、Chlamydophila caviaeの検出方法。 検体中に存在するChlamydophila caviaeを他のクラミジア科細菌と識別する方法であって、Chlamydophila caviaeのkynU遺伝子の特定領域を標的とし、請求項1〜5のいずれか1項に記載のプライマーセットを用いてkynU遺伝子の特定領域を選択的に、LAMP法により増幅させ、増幅産物の有無を測定することを含む、Chlamydophila caviaeの識別方法。 他のクラミジア科細菌がChlamydia trachomatis D、Chlamydia trachomatis serovar L2、Chlamydia pneumoniae及びChlamydia psittasiである請求項7記載のChlamydophila caviaeの識別方法。 請求項1〜5のいずれか1項に記載のプライマーセット、鎖置換型DNAポリメラーゼ、dNTPs、反応緩衝液を含む、Chlamydophila caviae検出用キット。 請求項1〜5のいずれか1項に記載のプライマーセット、鎖置換型DNAポリメラーゼ、dNTPs、反応緩衝液を含む、Chlamydophila caviaeの識別用キット。 【課題】C.caviaeをLAMP法を用いて検出するためのプライマー、及び該プライマーを用いたC.caviaeのLAMP法による検出方法の提供。【解決手段】被検体中のChalamydophila caviaeを検出するための、Chlamydophila caviaeのkynU遺伝子の塩基配列またはそれらの相補鎖から選ばれた、kynU遺伝子中の標的領域の核酸配列を増幅するためのプライマーセットであって、KynU遺伝子について3’側に向かってF1c領域、F2c領域、及びF3c領域、5’側に向かってB1領域、B2領域、及びB3領域を規定し、KynU遺伝子のF2c領域と相補的なF2領域を3’末端側に有し、5’末端側にKynU遺伝子のF1c領域と同一の配列を有するプライマーFIP、KynU遺伝子のB2c領域と相補的なB2領域を3’末端側に有し、5’末端側にKynU遺伝子のB1c領域と同一の配列を有するプライマーBIP、KynU遺伝子のF3c領域と相補的なF3領域を含むF3プライマー、並びにKynU遺伝子のB3c領域と相補的なB3領域を含むB3プライマーの少なくとも4種類のプライマーを含むプライマーセット。【選択図】なし配列表