タイトル: | 公開特許公報(A)_低変性脱脂米糠の製造方法 |
出願番号: | 2006173179 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | A23L 1/10,C12N 1/00,A61K 36/899,A61K 38/00,A61P 3/02,A61K 8/97,A61Q 19/00,A23K 1/00,C05F 5/00 |
築野 卓夫 加藤 浩司 東山 恵章 狩谷 哲也 JP 2007029090 公開特許公報(A) 20070208 2006173179 20060622 低変性脱脂米糠の製造方法 築野食品工業株式会社 591066362 岩谷 龍 100077012 築野 卓夫 加藤 浩司 東山 恵章 狩谷 哲也 JP 2005181878 20050622 A23L 1/10 20060101AFI20070112BHJP C12N 1/00 20060101ALI20070112BHJP A61K 36/899 20060101ALI20070112BHJP A61K 38/00 20060101ALI20070112BHJP A61P 3/02 20060101ALI20070112BHJP A61K 8/97 20060101ALI20070112BHJP A61Q 19/00 20060101ALI20070112BHJP A23K 1/00 20060101ALI20070112BHJP C05F 5/00 20060101ALI20070112BHJP JPA23L1/10 ZC12N1/00 FA61K35/78 UA61K37/02A61P3/02A61K8/97A61Q19/00A23K1/00 102A23K1/00 101C05F5/00 12 3 OL 17 2B150 4B023 4B065 4C083 4C084 4C088 4H061 2B150AB01 2B150AD01 2B150AE11 2B150BB01 2B150BC06 2B150BD01 2B150CA03 2B150CE12 4B023LE08 4B023LP20 4B023LQ02 4B065BB26 4B065CA42 4C083AA111 4C083AD411 4C083CC01 4C084AA01 4C084BA03 4C084CA14 4C084ZC222 4C088AB74 4C088AC04 4C088BA08 4C088CA03 4C088MA07 4C088ZC22 4H061AA01 4H061AA02 4H061CC42 4H061GG17 4H061GG21 4H061LL02 4H061LL03 4H061LL24 本発明は、脱脂米糠の製造方法、とりわけ低変性脱脂米糠の製造方法、該製造方法により得られる低変性脱脂米糠、および低変性脱脂米糠の用途に関する。 米糠は、脂質、タンパク質、食物繊維のほか、ビタミンやミネラルを豊富に含有する貴重な植物性資源である。わが国においては年間約90万tの米糠が発生しており、米糠を原料として生産されているこめ油は、日本国内における貴重な国産植物性油脂である。一般に、こめ油の抽出には溶剤抽出法と圧搾法の二通りの方法が取られているが、なかでも溶剤抽出法は抽出効率に優れており、大量処理も可能なために国内外においてこめ油の抽出法の主流を占めている。 米糠からこめ油を抽出した残渣が脱脂米糠である。この脱脂米糠中には、前述に挙げた米糠の有効成分のうち脂質以外のタンパク質、食物繊維、ビタミンおよびミネラルなどの成分が含まれている。この脱脂米糠は食品素材や培養基材として、あるいは食品添加物、医薬品、化粧品などの原料としての利用について古くから様々な試みがなされてきた。現在、脱脂米糠を原料としては、イノシトールやフィチン酸が医薬品や化粧品原料、食品添加物として、工業的に大量生産されているものの、脱脂米糠に含まれるタンパク質やビタミンBなどについては脱脂米糠を原料として製造されていない。また、脱脂米糠そのものも有効に利用しなければいけない素材であることは明白であるが、現時点では、大部分が飼料や肥料として低価格にて取引され、一部に至っては全く利用されずにとどまっているのが現状である。 前記のように脱脂米糠の有効利用を妨げている大きな要因としては、脱脂米糠が製造される過程において、脱脂米糠に含まれる種々の成分が熱変性を受けることが挙げられる。脱脂米糠の製造工程における熱変性を受ける工程としては、例えばクッキングなどの前処理工程、抽出工程、抽出溶剤除去などの乾燥工程が挙げられる。前記いずれかの製造工程における熱履歴、特に抽出溶剤除去を含む乾燥工程において、脱脂米糠の品温は100℃以上の高温に達する。 このようにして製造される脱脂米糠は、本来米糠に存在する各種成分が高温条件下に曝されるため、熱により変性する物質は熱変性するので、熱変性を受けた各種成分を含む。熱により変性する物質としては、脱脂米糠に含まれる酵素などのタンパク質や、より低分子のペプチド、ビタミン類などの成分が挙げられる。これらは加熱により変性または失活などの変化を受けやすく、脱脂前の米糠が有する機能が失われており、これらの成分、およびこれらの成分を含むエキスの抽出や生理作用、物理作用を期待した利用を図る際に非常な障害となっている。 低温で米糠を処理する方法としては、こめ油抽出工程を低温にて処理する試みが知られている(例えば、特許文献1参照)。しかし、該方法はこめ油を製造する観点から考案されたので、こめ油の品質改良には有効な方法ではあるが、脱脂後に行われる脱脂米糠の製造については従来通り加熱工程を経るため、脱脂後の米糠の加熱について改善されることはなかった。 こめ油の溶剤抽出法においては、一般的にヘキサンが抽出溶剤として用いられる。油脂の抽出残渣である脱脂米糠はヘキサンを多量に含んでおり、この溶剤を完全に除去することが好ましい。実験室レベルの小規模スケールにおいては、時間をかけて溶剤臭が薄れる程度に溶剤除去ができればよい。しかし、工業生産においては、溶剤除去が不十分で脱脂米糠中に溶剤が残留すれば、健康面での安全性の点、および爆発などの危険性をともなう点から、食品素材や抽出原料をはじめ、脱脂米糠の各種用途に用いることは困難である。更に、溶剤回収効率が低下してコスト高になってしまう。このため、脱脂米糠から溶剤を完全に除去する方法が求められている。しかし、脱脂米糠の組織構造が溶剤を吸収しやすい性質でもあるため、ヘキサンの大気圧における沸点である69℃での加熱で、脱溶剤を行うことは非常に困難である。従って、従来の方法による脱脂米糠の脱溶剤処理工程では、間接加熱および水蒸気による直接加熱などにより、高温下で溶剤除去が行われる。溶剤回収の効率やコスト面を考えた場合、大気圧および高温で脱溶剤処理を行う従来の方法が適当であり、技術的にも容易である。このため、これまでは脱溶剤処理工程における脱脂米糠に含まれる成分の熱変性について問題とされることはなかった。しかし、従来の方法では脱脂米糠の品温は高温に達し、通常その温度は100℃以上となる。 一方圧搾法は、抽出効率が悪く、少しでも多くのこめ油を抽出する為に、高圧での圧搾処理が行われる。その結果、いわゆる低温圧搾と呼ばれる比較的低温での圧搾においても、抽出残渣である脱脂米糠の品温は100℃以上に達する。(例えば、特許文献2参照) このように、従来法により得られた脱脂米糠は、いずれの製法においても品温が100℃以上の高温に達しており、米糠に含まれ、熱により変性する成分は変質(熱変性)してしまっている。この熱変性によって、米糠に含まれる種々の成分の喪失、含量の低下および抽出効率の低下などが生じる。これまで脱脂米糠を利用した様々な利用方法が考案されながら、その多くは工業化が実現されていないのは、この熱変性によるところが大きい。その結果、大部分の脱脂米糠は利用価値の低い用途にのみ利用されているのが現状である。特願昭54−500249号公報特開2003−180275号公報 本発明は、米糠に含まれる成分の変性を抑制した低変性脱脂米糠の製造方法、および該製造方法で製造される低変性脱脂米糠を提供することを目的とする。 前記課題を克服する為に、本発明者らは、鋭意努力を重ねた結果、例えば溶剤抽出法であれ、圧搾法であれ、脱脂米糠の製造工程を通じて100℃未満にて米糠を処理することにより、米糠中に含まれる熱により変性する成分、例えば酵素などのタンパク質やペプチド、ビタミン、多糖類などの有用成分が、未変性または低変性状態に保たれた脱脂米糠を、安価で大量に製造することに成功した。特に溶剤抽出法における米糠の脱溶剤処理工程で、減圧下、低温にて脱溶剤処理を行い、さらには必要に応じて低温低圧力の水蒸気、あるいは窒素などの気体によるガス置換を施すことで、有用成分は未変性あるいは低変性のまま、溶剤が完全に除去された低変性脱脂米糠を提供することが可能となった。また、圧搾法により得られた抽出残渣の乾燥においても、本製造方法を利用することで、米糠に含まれる成分の変性が抑制された脱脂米糠を得ることができる。 本発明により得られる低変性脱脂米糠は、米糠中に含まれる熱により変性する成分、例えば酵素などのタンパク質やペプチド、ビタミン、多糖類などが未変性または低変性状態に保たれた状態で存在することを見出した。 さらに、本発明により得られる低変性脱脂米糠を原料として、一般的な抽出方法、例えば水溶液あるいは有機溶剤を用いた抽出操作を行うことで、食品素材や化粧品、医薬品素材、化成品、培養基材、発酵物の原料などに利用できる組成物や化合物を高収率で生産できることを知見した。 特に、本発明の製造方法により製造される低変性脱脂米糠を原料として、未変性米糠タンパク質を高収率で生産することができることを見出した。 抽出方法としては一般的にタンパク質の抽出に用いる方法により容易に抽出することが可能であり、このようにして得られる未変性米糠タンパク質は抽出物そのままでも利用可能であるが、必要に応じて後述の精製手法を用いることで、更に利用価値を高めることが可能であることを見出した。本発明者らはさらに研究を重ね、本発明を完成するに至った。 すなわち、本発明は、[1] 米糠をアセトン、へキサンおよびエタノールから選択される少なくとも1種類の抽出溶剤で抽出し、抽出残渣から90kPa以下の減圧下、温度100℃未満で抽出残渣に含まれる抽出溶剤を除去することを特徴とする低変性脱脂米糠の製造方法、[2] 温度が20〜80℃である前記[1]に記載の製造方法、[3] 前記[1]または[2]に記載の製造方法で得られることを特徴とする低変性脱脂米糠、[4] 脱脂米糠に含まれる可溶性タンパク質が3.5〜15質量%であることを特徴とする前記[3]に記載の低変性脱脂米糠、[5] 前記[3]または[4]に記載の低変性脱脂米糠またはその水もしくは有機溶剤抽出物を含有することを特徴とする食品、[6] 前記[3]または[4]に記載の低変性脱脂米糠またはその水もしくは有機溶剤抽出物を含有することを特徴とする医薬品、[7] 前記[3]または[4]に記載の低変性脱脂米糠またはその水もしくは有機溶剤抽出物を含有することを特徴とする化粧品、[8] 前記[3]または[4]に記載の低変性脱脂米糠またはその水もしくは有機溶剤抽出物を含有することを特徴とする化成品、[9] 前記[3]または[4]に記載の低変性脱脂米糠またはその水もしくは有機溶剤抽出物を含有することを特徴とする培養基材、[10] 前記[3]または[4]に記載の低変性脱脂米糠またはその水もしくは有機溶剤抽出物を発酵させて得られる発酵物、[11] 前記[3]または[4]に記載の低変性脱脂米糠またはその水もしくは有機溶剤抽出物を含有することを特徴とする飼料、および[12] 前記[3]または[4]に記載の低変性脱脂米糠またはその水もしくは有機溶剤抽出物を含有することを特徴とする肥料、に関する。 本発明の製造方法は、脱脂前の米糠に含まれる種々の成分の変性を抑制することができる。このため本発明の製造方法で得られる脱脂米糠は、脱脂前の米糠に存在する熱により変性する成分、例えば酵素などのタンパク質やペプチド、ビタミンなどの成分を、未変性、あるいはそれに近い状態の低変性状態で含有し得る。 本発明の製造方法により製造される低変性脱脂米糠は、従来法にて生産された脱脂米糠と比べて、色調が白色に近く、風味に優れており、流動性も良い。さらに、脱脂前の米糠に含まれるタンパク質や糖質が未変性で含有されているため、他の原料と配合後に加熱することで熱変性を生じさせ得る。これによって、弾性の向上や膨化の保持などといった新たな物性が付与され得るため、食品加工特性に優れている。これらは、従来法により製造された脱脂米糠には認められない物性であり、本発明品が食品素材として非常に優れた素材であることを示す。また米糠に含まれるタンパク質やペプチド、ビタミンなどは、玄米に含まれる栄養素そのものであり、栄養源という観点からの食品素材としてはもちろん、発酵素材やタンパク源、アミノ酸源、ビタミン源などの機能性素材として食品以外にも様々な用途に利用できる。 さらにこの低変性脱脂米糠を原料とすることで、酵素などのタンパク質やペプチド、ビタミン、食物繊維などの成分が、脱脂前の米糠の機能性を有した状態で抽出され得るうえ、抽出効率も大幅に向上され得る。このため、低変性脱脂米糠はこれら成分の抽出原料として利用することができる。 本発明の製造方法により製造される低変性脱脂米糠は、前述のように米糠に含まれる酵素などのタンパク質やペプチドなどが未変性、低変性で保たれているために、タンパク質の抽出原料として利用することができる。低変性脱脂米糠から抽出され得るタンパク質としては、リパーゼやアミラーゼ、プロテアーゼ、フィターゼなどの酵素類に加えて、栄養機能に優れたレクチンやプロラミンなどの糖タンパクや単純タンパク質など、米糠に含まれるタンパク質全てが挙げられる。また抽出され得るタンパク質には、低分子のアミラーゼインヒビターなどの酵素阻害タンパクや、その他生理活性ペプチドなども含まれる。 本発明の製造方法により製造される低変性脱脂米糠から得られる米糠タンパク質の抽出物やその精製物は、米糠に含まれる酵素あるいはその他の生理活性タンパク質やペプチドを、その機能を保持したまま含有する。従って、この低変性脱脂米糠から抽出されるタンパク質は、酵素剤としての利用に加え、低変性脱脂米糠自体と同じく、タンパク質素材として食品加工特性に優れている。具体的には、脂肪分離防止(乳化、抱脂)、離水性防止(吸水、保水)、型くずれ防止(結着性)、食感改良・かみごたえ、焼き縮み防止などの目的で例えば食品などに前記抽出物やその精製物を添加することが好ましい。また、これら抽出物やその精製物は栄養学的にも優れているため、機能性食品素材としても利用できる。 また、低変性脱脂米糠から抽出されるタンパク質は従来ある大豆や小麦由来のタンパク質とはアミノ酸組成、タンパク質の構成が異なるため、食品加工特性、栄養機能的にも大豆、小麦由来のものとは異なる独自の性質を有し得る。 さらに、低変性脱脂米糠から抽出されるタンパク質が効率よく抽出される結果、抽出残渣は食物繊維含量が相対的に高まり、食物繊維素材として利用することができる。さらには抽出残渣を酵素処理などによって低分子化することで、オリゴ糖などの糖質類としても有効利用できる。また、食物繊維と同様に、抽出残渣中に含まれるフィチン含量も相対的に高まるので、フィチン酸やイノシトールの抽出原料としても前記抽出残渣を利用できる。 次に、本発明の好ましい実施形態について説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で自由に変更することができるものである。 本発明における「低変性脱脂米糠」としては、脱脂前の米糠に存在する熱により変性する成分、例えば酵素などのタンパク質やペプチド、ビタミンなどの成分を、未変性あるいはそれに近い状態で含む脱脂米糠が挙げられる。 本発明に係る低変性脱脂米糠の製造方法の好ましい工程としては、例えば、以下の工程が挙げられる。(a)米糠をアセトン、へキサンおよびエタノールから選択される少なくとも1種類の抽出溶剤で抽出する工程。(b)上記(a)における抽出後の抽出溶剤と抽出残渣を分離する工程。(c)(b)で分離された抽出残渣に含まれる抽出溶剤を約90kPa以下の減圧下、温度約100℃未満で抽出残渣から除去する工程。 上記(a)において、米糠としては、玄米を精米する過程で得られる、例えば玄米表皮や胚芽などを含む米糠が挙げられる。米糠は米糠の原料となる米の種類に特に限定はない。米の種類としては、例えばジャポニカ種、インディカ種、ジャワニカ種、もち米、うるち米、赤米または紫黒米などが挙げられるが、これらに限定されない。米糠は、抽出溶剤で抽出される前に、例えばエクストルーダーなどの押し出し機などを用いて押し出されることが好ましい。該押し出し機などを用いることにより、米糠に含まれる例えば玄米表皮や胚芽などの組織や細胞などが破壊され得るので、例えば米糠に含まれる油脂などの抽出溶剤で抽出され得る物質の抽出効率を高めることができる。抽出溶剤としては、アセトン、へキサンおよびエタノールから選択される少なくとも1種類が挙げられる。前記抽出溶剤は、1種単独または2種以上を混合して用いることができる。抽出溶剤としてはヘキサンが好ましい。抽出溶剤の量は、米糠約1kgに対し、抽出溶剤約1〜20L程度、好ましくは約1〜10L程度、さらに好ましくは約1.5〜5L程度である。抽出方法としては、例えば攪拌抽出や、連続向流抽出などが挙げられる。攪拌は、公知の方法で実施でき、例えば攪拌機などにより行うことができる。連続向流抽出は、例えばロートセルタイプ(回転円形セル式)の連続向流抽出機または単段もしくは多段向流抽出装置などにより行うことができる。抽出は、加温しながら行ってもよい。抽出温度としては例えば約15〜60℃が挙げられる。 上記(b)において、抽出溶剤と抽出残渣の分離は、例えばろ紙、布もしくはろ過スクリーンなどによるろ過または遠心分離などにより実施できる。また、上記連続向流抽出機などで米糠の抽出を行った場合、抽出が終わった米糠は、脱液された後、自動的かつ連続的に排出され得るので、該排出された米糠をそのまま抽出残渣とすることができる。 上記(c)において、(b)で分離された抽出残渣に含まれる抽出溶剤を、約90kPa以下、好ましくは約70kPa以下、より好ましく約0.1〜70kPa、さらに好ましくは約20〜70kPaの減圧下、温度約100℃未満、好ましくは約20〜100℃、さらに好ましくは約20〜80℃、とりわけ好ましくは約40〜80℃の条件下に置くことによって抽出溶剤が除去され得る。抽出溶剤の除去は、連続式あるいは回分式いずれにおいても行うことができる。回分式は、抽出溶剤除去1回分の抽出残渣を上記条件下で抽出溶剤除去処理を行い、抽出溶剤除去終了後その全てを排出し、改めて次の1回分の抽出残渣から抽出溶剤を除去させる方式のことで、例えばロータリーエバポレータまたは真空攪拌乾燥機などにより実施できる。連続式は、例えば連続式伝導撹拌乾燥機などの装置を用いることにより実施し得る。また、抽出方法としては、抽出溶剤の除去中に抽出残渣が静止している静置式と抽出残渣が循環または攪拌されている循環式が挙げられるが循環式が好ましい。加熱方法は特に制限されないが、間接加熱が好ましい。具体的には、例えば連続式伝導伝熱乾燥機で抽出溶剤除去を行う場合、多管式加熱管内に熱媒体(例えば、スチームまたは温水など)を流し、これを回転させて、加熱管束と抽出残渣を接触させて加熱する方法などが好ましい例として挙げられる。 抽出処理後の抽出残渣に抽出溶剤が多く含まれる場合には、上記(c)の工程の前に抽出残渣を、例えば大気圧、約70℃未満、好ましくは約40℃以上70℃未満の温度下で脱溶剤処理(以下、予備的脱溶剤処理という。)を行ってもよい。予備的脱溶剤処理を行うことにより上記(c)の工程における温度を速やかに均一にできる。連続式伝導撹拌乾燥機は、予備的脱溶剤処理と、上記(C)として記載した約90kPa以下の減圧下、温度約100℃未満における抽出溶剤の除去、並びに抽出溶剤が除去された脱脂米糠の排出を連続的に行うことができるので、本発明に使用される抽出溶剤除去装置として特に好ましい。 また、抽出溶剤の除去は、減圧状態のもとで、少量の低圧の水蒸気や空気パージ、または窒素などの不活性ガスパージを行いながら実施できる。前記パージにより、抽出溶剤の除去を加速させることができる。また、抽出溶剤の除去後、約90kPa以下の減圧下を大気圧に戻すことを目的として、低圧の水蒸気や空気、または窒素などの不活性ガスを抽出溶剤除去装置に導入することが好ましい。連続式伝導撹拌乾燥機においては、装置内の抽出残渣から抽出溶剤の除去が行われる減圧区域から抽出溶剤の除去された抽出残渣が排出される部分(以下、排出区域という。)において前記導入を行うのが好ましい。前記導入により、連続式伝導撹拌乾燥機の排出区域内が大気圧に戻ると同時に排出区域に排出された抽出残渣に含まれる残余の抽出溶剤を前記水蒸気や空気、あるいは不活性ガスで置換できる。また、抽出溶剤の除去は、攪拌されながら行われることが好ましい。 このようにして得られた低変性脱脂米糠は、抽出溶剤が除去されており安全である。また、本発明の製造方法により製造された低変性脱脂米糠は、脱脂前の米糠に存在する熱により変性する成分、例えばタンパク質やペプチド、ビタミンなどの変性を防止または抑制された状態で含む。例えば本発明の製造方法で得られる低変性脱脂米糠は、少なくとも脱脂米糠中に可溶性タンパク質を約3.5〜15質量%含有し得る。前記可溶性タンパク質は、例えばケルダール法により測定できる。可溶性タンパク質は、例えば本発明の製造方法で得られる低変性脱脂米糠に約10倍量のpH約4〜10の水溶液を加えて室温(約5〜40℃)で、約30分間攪拌して可溶性タンパク質を抽出し、遠心分離(約3000rpm、約5分間)して上清を分離することにより得ることができる。分離された弱酸性〜中性(pH約4〜6.9)水溶液に抽出された可溶性タンパク質は低変性脱脂米糠に対し少なくとも約3.5〜4質量%含まれ、中性〜弱アルカリ性(pH約7〜10)水溶液に抽出された可溶性タンパク質は低変性脱脂米糠に対し少なくとも約4〜15質量%含まれる。弱酸性水溶液のpHは、例えば塩酸、硫酸、酢酸またはリン酸などの酸性物質により調整できる。弱アルカリ性水溶液のpHは、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、酢酸アンモニウム、リン酸水素2ナトリウム等の塩基性物質で調整できる。 さらに、本発明の製造方法で得られる低変性脱脂米糠は、好ましい理化学的性質として以下の(1)乃至(3)を含む。(1)脱脂米糠に約10倍量の蒸留水(pH約6.8)を加えて約1時間攪拌した後遠心分離して、分離した上清をSDS−PAGE(ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動)に付し、得られる電気泳動分離パターンが図4に示されるものである。(2)脱脂米糠中に水溶性食物繊維を約0.3〜2質量%、不溶性食物繊維を約20〜30質量%含有する。(3)脱脂米糠中にフィチン酸を約5〜10質量%含有する。 水溶性食物繊維および不溶性食物繊維は、例えばプロスキー変法などにより測定できる。フィチン酸は、例えば全リン量および無機リン量をモリブデン酸ブルー法や、市販の例えばホスファC−テストワコー(和光純薬工業株式会社製)などにより測定し、得られる全リン量および無機リン量から換算できる。 本発明の製造方法で得られる低変性脱脂米糠は、米糠に含まれる各種酵素などの酵素活性などの機能性を有しており、酵素剤またはタンパク質として、あるいはその他品質改良などそれぞれの目的に応じた用途に利用できる。また低変性脱脂米糠の抽出物または抽出精製物については、栄養的にも食品加工特性においても優れた食品素材として利用できる。また新規なタンパク質素材として、化粧品、医薬品、化成品、培養基材、発酵物の原料、飼料または肥料などに利用することが可能である。 本発明の製造方法で得られる低変性脱脂米糠は、そのままで、またはその水抽出物もしくは有機溶剤抽出物を食品、医薬品、化粧品、化成品、培養基材、発酵物の原料、飼料または肥料などに製造できる。水抽出物は、低変性脱脂米糠1質量部に対し、例えば水、望ましくは中性〜アルカリ性(pH約6.5〜10)の水溶液を約2〜10質量部加え、加熱または非加熱下で、好ましくは攪拌しながら、約10分〜12時間抽出し、ろ過または遠心分離により得られるろ液または上清を分離することにより得ることができる。この水抽出物は酵素などのタンパク質や水溶性ビタミン類などを含む。水抽出物は、所望により、好ましくは減圧下において、濃縮、濃縮乾固または凍結乾燥してもよい。アルカリ性水溶液のpHは、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、酢酸アンモニウム、リン酸水素2ナトリウム等の塩基物質で調整できる。 有機溶剤抽出物に使用される有機溶剤としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノールもしくはブタノールなどのアルコール類、アセトン、酢酸エチルまたはエーテルなどが挙げられる。有機溶剤抽出物は、低変性脱脂米糠1質量部に対し有機溶剤あるいはこれらの有機溶剤と水の混合液[約1:0.01〜99(有機溶剤/水(V/V))]を約2〜10質量部加え、加熱または非加熱下で、好ましくは攪拌しながら、約10分〜12時間抽出し、ろ過または遠心分離し、得られるろ液または上清に含まれる有機溶剤を、例えば減圧濃縮などで除去することにより得ることができる。さらに低変性脱脂米糠の水または有機溶剤抽出物は、所望により、酸沈殿、アルコール沈殿、塩析、膜分離またはクロマト分離などの各手法を用いることで、より高度に精製することが可能であり、目的に応じて利用することができる。 本発明の製造方法で得られる低変性脱脂米糠またはその水もしくは有機溶剤抽出物は、食品、医薬品、化粧品、化成品、培養基材、発酵物の原料、飼料または肥料などに使用できる。 食品として使用する場合、通常食品衛生上許容される種々の添加剤を配合し、公知の方法で粉末、錠剤、顆粒剤、カプセル剤または液剤などの形態に製剤化してもよい。錠剤や顆粒剤には、糖衣を施してもよい。添加剤としては、例えば栄養強化剤(例えば、ローヤルゼリー、ビタミン、プロテイン、レシチン、ミネラル、アミノ酸など)、賦形剤(例えば、セルロース、乳糖、デン粉、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビトール、アルギン酸など)、結合剤(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、デン粉など)、増粘剤(例えば、ペクチン、グアーガム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸ナトリウムなど)、乳化剤(例えば、グリセリン脂肪酸エステル、レシチンなど)、着色料(例えば、ルテイン脂肪酸エステル、ウコン色素、カラメル、カロテンなど)、香料(例えば、バニラ香料、カニ香料など)、調味料(例えば、L−グルタミン酸ナトリウム、グリシン、5’−リボヌクレオチド二ナトリウム、乳清ミネラルなど)、保存剤(例えば、ソルビン酸など)または酸化防止剤(例えば、アスコルビン酸、フェルラ酸、オリザノールなど)などが挙げられるが、これらに限定されない。 また、低変性脱脂米糠またはその水もしくは有機溶剤抽出物は、食品素材としての栄養価が高く、消化も良い。また、気泡性や膨化性などの食品加工特性に優れることから、種々の食品に配合することができる。該食品としては、特に制限はなく、例えばビスケット、クッキー、ケーキ、キャンデー、チョコレート、チューインガム、和菓子などの菓子類;パン、麺類、ごはん、豆腐もしくはその加工品;発酵食品;発泡酒、焼酎、清酒、薬用酒などのアルコール飲料;みりん、食酢、醤油、味噌、ドレッシングなどの調味料;ヨーグルト、ハム、ベーコン、ソーセージ、マヨネーズなどの畜農食品;かまぼこ、揚げ天、はんぺんなどの水産食品;スープや味噌汁などの汁物類;果汁飲料、清涼飲料、スポーツ飲料、茶、コーヒー、ミルク、ココアなどの飲料などが挙げられる。 医薬品として使用する場合、製薬上許容される添加剤と共に種々の製剤形態に製造し得る。組成物の製剤形態としては、粉末、顆粒、錠剤、カプセル剤、坐剤などの固形剤、またはシロップ剤、注射剤などの液剤などが挙げられる。顆粒または錠剤として製造する場合には、例えば賦形剤(例えば、乳糖、白糖、ブドウ糖、デンプン、結晶セルロースなど)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウムなど)、崩壊剤(例えば、デンプン、カルメロースナトリウム、炭酸カルシウムなど)または結合剤(例えば、デンプン糊液、ヒドロキシプロピルセルロース液、カルメロース液、アラビアゴム液、ゼラチン液、アルギン酸ナトリウム液など)などを用いることにより任意の剤形を製造することができる。また、顆粒剤または錠剤には、適当なコーティング剤(例えば、ゼラチン、白糖、アラビアゴム、カルナバロウなど)または腸溶性コーティング剤(例えば、酢酸フタル酸セルロース、メタアクリル酸コポリマー、ヒドロキシプロピルセルロースフタレート、カルボキシメチルエチルセルロースなど)などで剤皮を施してもよい。 カプセル剤として製造する場合には、適当な賦形剤、例えば流動性と滑沢性を向上させるためのステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルクまたは軽質無水ケイ酸など、また加圧流動性のための結晶セルロースや乳糖などの他、上記崩壊剤などを適宜添加したものを均一に混和または粒状もしくは粒状としたものに適当なコーティング剤で剤皮を施したものを充填するか、適当なカプセル基剤(例えば、ゼラチンなど)にグリセリンまたはソルビトールなど加えて塑性を増したカプセル基剤で被包成形することもできる。これらカプセル剤には必要に応じて、着色剤、保存剤[例えば、二酸化イオウ、パラベン類(例えば、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル)]などを加えることができる。カプセル剤は通常のカプセルの他、腸溶性コーティングカプセル、胃内抵抗性カプセルまたは放出制御カプセルとすることもできる。腸溶性カプセルとする場合、腸溶性コーティング剤でコーティングした化合物または化合物に上記の適当な賦形剤を添加したものを通常のカプセルに充填または、カプセル自身を腸溶性コーティング剤でコーティング、もしくは腸溶性高分子を基剤として成形することができる。 坐剤として製造する場合には坐剤基剤(例えば、カカオ脂、マクロゴールなど)を適宜選択して使用することができる。 シロップ剤として製造する場合、例えば安定剤(例えば、エデト酸ナトリウムなど)、懸濁化剤(例えば、アラビアゴム、カルメロースなど)、矯味剤(例えば、単シロップ、ブドウ糖など)または芳香剤などを適宜選択して使用することができる。 注射剤として製造する場合、医薬上許容される添加物、例えば等張化剤(例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、グリセリン、マンニトール、ソルビトール、ホウ酸、ホウ砂、ブドウ糖、プロピレングリコールなど)、緩衝剤(例えば、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、炭酸緩衝液、クエン酸緩衝液、トリス緩衝液、グルタミン酸緩衝液、イプシロンアミノカプロン酸緩衝液など)、保存剤(例えば、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、クロロブタノール、ベンジルアルコール、塩化ベンザルコニウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム、ホウ酸、ホウ砂など)、増粘剤(例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールなど)、安定化剤(例えば、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、アスコルビン酸、ジブチルヒドロキシトルエンなど)またはpH調整剤(例えば、塩酸、水酸化ナトリウム、リン酸、酢酸など)などを適宜添加した溶液に溶解または分散することによって製造することができる。 上記シロップ剤または注射剤における添加剤の添加量は、添加する添加剤の種類、用途などによって異なるが、添加剤の目的を達成し得る濃度を添加すればよく、等張化剤は、通常、浸透圧が約229〜343mOsmとなるよう、約0.5〜5.0質量%を添加することが好ましい。また、緩衝剤は約0.01〜2.0質量%程度、増粘剤は約0.01〜1.0質量%程度、安定化剤は約0.001〜1.0質量%程度添加することが好ましい。pH調整剤は、適宜添加し、通常pH約3〜9、好ましくは約4〜8になるように添加することが好ましい。 化粧品として使用する場合、化粧品基剤などと共に、例えば化粧水、クリーム、乳液、ローション、ファウンデーションまたはパックなどの種々の形態に製造し得る。また、シャンプーや石鹸、入浴剤とすることもできる。化粧品基剤としては、例えばスクワラン、ホホバ油、米胚芽油などの油脂、ミツロウ、セチルアルコールなどの高級アルコール、界面活性剤、グリセリン、1,3−ブチレングリコール等の保湿剤などが挙げられる。 培養基材として使用する場合、例えばグルコース、酵母抽出エキス、ビタミン類などと共に酵母や乳酸菌などの培地成分を製造し得る。低変性脱脂米糠またはその水もしくは有機溶剤抽出物は、培養基材としてもすぐれており、従来法により製造される脱脂米糠と比べて乳酸菌や酵母の発酵を旺盛にすることができる。また、低変性脱脂米糠またはその水もしくは有機溶剤抽出物は、脱脂米糠の発酵物(例えば、米糠発酵エキスなど)を生産する際にも優れた原料となりうる。 また、低変性脱脂米糠を原料として生産される成分について説明する。 低変性脱脂米糠は米糠に含まれる熱により変性する成分、例えば酵素などのタンパク質やビタミンを未変性、低変性のままで含有しているために、それら成分を抽出、精製することが容易である。 特に、低変性脱脂米糠中のタンパク質は抽出方法により高い収率で得られ、なおかつ酵素などはその活性を保持したままで採取(取得)することができる。抽出方法としては一般的なタンパク質の抽出方法により行うことが可能であり、たとえば水溶液、有機溶剤を用いることによってタンパク質の抽出物を高収率で得ることができる。特に水溶液、更に望ましくは中性〜アルカリ性の水溶液を用いて抽出することで、前述の酵素類やその他のタンパク質の粗抽出物が得られる。この粗抽出物は各種酵素活性などの機能性を有しており、酵素剤またはタンパク質として、あるいはその他品質改良などそれぞれの目的に応じた用途に利用できる。さらにこの粗抽出物は、所望により、酸沈殿、アルコール沈殿、塩析、膜分離またはクロマト分離などの各手法を用いることで、より高度に精製することが可能であり、目的に応じて利用することができる。これらの粗抽出物または精製物については、栄養的にも食品加工特性においても優れた食品素材として利用できる。またタンパク質素材として、化粧品、医薬品、化成品、培養基材、発酵物の原料、飼料または肥料などに利用することが可能である。 また、低変性脱脂米糠は食物繊維やフィチンなどを含有するので、これら食物繊維(好ましくは水溶性食物繊維)やフィチン酸の製造原料としても有用である。 飼料として使用する場合、例えば低変性脱脂米糠をそのまま使用してもよく、またとうもろこし、マイロ、小麦、フスマ、コーングルテンフィード、魚粉、ホエー、脱脂粉乳、大豆カス、炭酸カルシウムまたはプレミックスなどの飼料原料などと配合してもよい。本発明の製造方法で得られる低変性脱脂米糠またはその水もしくは有機溶剤抽出物を含有する飼料は、家畜や家禽類に安全に使用できる。 肥料として使用する場合、例えば低変性脱脂米糠をそのまま使用してもよく、またビール粕、ビール酵母、菜種粕、綿実粕、落花生殻、綿実殻、大豆殻または牧草類などの有機肥料原料や硫安、塩安、硝安、尿素、硝酸カリウム、過リン酸石灰、塩化カリウムなどの無機肥料原料などと配合してもよい。発明の製造方法で得られる低変性脱脂米糠またはその水もしくは有機溶剤抽出物を含有する肥料は、野菜や穀物などの栽培に安全に使用できる。 以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限られるものではない。なお、以下の実施例において%は特に明記しない場合、質量%を示す。 米糠1tを、抽出効率を高める為に押出し機にて細胞組織を破壊した後、ヘキサン1,650Lを抽出溶剤に用いてロートセルタイプの連続向流抽出機によって、連続脱脂した。つぎに、連続式伝導撹拌乾燥機タイプの予備的脱溶剤のための設備を用いて、脱脂された米糠を大気圧、55℃にて連続処理することで、予備的脱溶剤を行った。続いて、連続式伝導撹拌乾燥機タイプの低温脱溶剤設備を用いて予備的脱溶剤処理された米糠から抽出溶剤(ヘキサン)を除去するための連続処理を施した。連続処理は、58kPa、70℃、装置滞留時間(処理時間)60分間の条件で行い、排出される脱脂米糠を低変性脱脂米糠とした。これにより、低変性脱脂米糠810kgを得た。 押出し機にて細胞組織を破壊した米糠100kgを、1m3容タンクに移した後、ヘキサン500Lを加えて30分間撹拌し、300メッシュのスクリーンを通して脱脂残渣を回収した。つぎにその残渣を撹拌槽に移した後、40kPa、60℃の条件下でタンク下部より少量の窒素ガスを注入し、窒素パージを行いながら90分間撹拌することによって溶剤除去を行い、低変性脱脂米糠83kgを得た。[比較例1] 米糠1tを、抽出効率を高める為に押出し機にて細胞組織を破壊した後、ヘキサン1,650Lを抽出溶剤に用いてロートセルタイプの連続向流抽出機によって、連続脱脂した。つぎに、連続式伝導撹拌乾燥機タイプの一次脱溶剤設備を用いて、脱脂された米糠を大気圧、70℃にて連続処理することで、予備的脱溶剤を行った。続いて、5段の連続縦型撹拌乾燥機タイプの脱溶剤設備を用いて予備的脱溶剤処理された米糠から抽出溶剤(ヘキサン)を除去するための脱溶剤処理を行った。ジャケットの加熱には0.3〜0.5MPaの水蒸気を用いて間接加熱を行い、乾燥機内部の1段目には水蒸気(0.1MPa,100℃)を吹込み直接加熱および溶剤留去を行った。これにより、従来法による通常の脱脂米糠812kgを得た。以下、比較例1で得られた脱脂米糠を従来の脱脂米糠をいう。 実施例1で得られた低変性脱脂米糠と、従来の脱脂米糠の可溶性窒素をケルダール法にて測定した。具体的には、各脱脂米糠10gに対して100gの水を加えて30分間撹拌し、遠心分離(3,000rpm×5分間)によって得た上清中の窒素含量を測定した。その結果、従来の脱脂米糠の可溶性窒素が0.40%であるのに対し、本発明の製造方法により製造された低変性脱脂米糠の可溶性窒素は0.74%と、1.9倍も多いことが確認された。これは、従来の脱脂米糠は熱変性により不溶化しているのに対し、低変性脱脂米糠中のタンパク質が未変性であることを示す。この結果から、本発明の製造方法により製造された低変性脱脂米糠をタンパク質の抽出原料とすることで、未変性の米糠タンパク質が生産できるのに加えて、米糠タンパク質の抽出効率も約2倍に向上できることが確認された。従って、低変性脱脂米糠がタンパク質の抽出原料として非常に優れている事が確認された。 実施例1で得られた低変性脱脂米糠5gに水30mL、グルコース0.3gを加えて30分間撹拌した後、遠心分離(8,000rpm×10分間)によって回収した上清を孔径0.45μmの除菌フィルターでろ過し、試験用培地を調製した。従来の脱脂米糠5gを用いて同様に試験用培地を調製した。各試験用培地に濁度(660nm)が0.3になるように滅菌水で懸濁した酵母(S.cerevisiae)を植菌し、振盪培養した。時間毎に濁度を測定し、酵母の生育度合いを測定した。その結果、図1に示すように、従来の脱脂米糠に比較して低変性脱脂米糠の方が酵母の増殖が旺盛であり、特に増殖初期において顕著に優れていた。このことは、酵母に対して本発明品である低変性脱脂米糠が、従来の脱脂米糠と比べて非常にすぐれた培養基材となることを示している。 実施例1で得られた低変性脱脂米糠5gに水30mL、グルコース0.3gを加えて30分間撹拌した後、遠心分離(8,000rpm×10分間)によって回収した上清を孔径0.45μmの除菌フィルターでろ過し、試験用培地を調製した。従来の脱脂米糠5gを用いて同様に試験用培地を調製した。各試験用培地に濁度(660nm)が0.1になるように滅菌水で懸濁した乳酸菌(L.casei)を植菌し、振盪培養した。時間毎に濁度を測定し、乳酸菌の生育度合いを測定した。その結果、図2に示すように、従来の脱脂米糠に比較して低変性脱脂米糠の方が乳酸菌の増殖が顕著に優れていた。このことは、乳酸菌に対して本発明品である低変性脱脂米糠が、従来法による脱脂米糠と比べて非常にすぐれた培養基材となることを示している。 実施例1で得られた低変性脱脂米糠1gを0.05M酢酸緩衝液(pH2.5)10mLに懸濁し、プロテアーゼであるオリエンターゼ20A(エイチビィアイ株式会社製)を5mg加え、55℃で24時間反応させた。反応後、遠心分離(8,000rpm×10分間)にて得られた上清中のアミノ酸度を滴定法により測定した。従来の脱脂米糠についても同様にプロテアーゼ処理を行い、アミノ酸度を測定した。その結果、従来の脱脂米糠ではアミノ酸度が1.7g/100mLであったのに対し、低変性脱脂米糠では2.4g/100mLであり、プロテアーゼによる分解率が顕著に優れていることを確認した。つまり、低変性脱脂米糠はプロテアーゼによる消化性に優れているので、ペプチドやアミノ酸原料としての利用性も高いことを示す結果である。 実施例1で得られた低変性脱脂米糠1gを0.05Mリン酸緩衝液(pH6.0)10mLに懸濁し、ペプチダーゼR(天野エンザイム株式会社製)を5mg加え、55℃で24時間反応させた。反応後、遠心分離(8,000rpm×10分間)にて得られた上清中のアミノ酸度を滴定法により測定した。従来の脱脂米糠についても同様にペプチダーゼR処理を行い、アミノ酸度を測定した。その結果、従来の脱脂米糠ではアミノ酸度が1.1g/100mLであったのに対し、低変性脱脂米糠では2.7g/100mLであり、ペプチダーゼRによる分解率が顕著に優れていた。このことからも、低変性脱脂米糠はペプチダーゼRによる消化性に優れているので、ペプチドやアミノ酸原料としての利用性も高いことが確認された。 実施例1で得られた低変性脱脂米糠10gに対し100mLの水を加え、25%水酸化ナトリウム水溶液または9M硫酸を用いて抽出pHを3.0から9.5の範囲の各pHに調整し、室温で1時間撹拌した。遠心分離(1,500rpm×30秒間)によって抽出液と抽出残渣に分離し、抽出液はフリーズドライ法にて乾燥させ、抽出残渣を50℃にて乾燥させた。従来の脱脂米糠を用いて同様に各抽出pHにおける抽出液と抽出残渣の乾燥物を調製した。(1)タンパク質量 得られた抽出液乾燥物(以下、抽出物という。)重量と、抽出物中のタンパク質量をケルダール法により測定した。その結果、図3に示すように、抽出物重量、タンパク質量ともに低変性脱脂米糠の方が従来の脱脂米糠のそれらの量より高い結果となった。特に抽出pHが中性〜アルカリ性(約7〜9.5)において、従来の脱脂米糠と比較して低変性脱脂米糠のタンパク質量は顕著に高く、タンパク質原料として優れていることが確認された。(2)リン含量 また、抽出残渣のリン含量を測定した。すなわち、試料約1.0gを精密に秤量し、ケルダールに入れ、更に分解助剤(K2SO4:CuSO4=9:1)を5g添加し、硫酸を20mL加え、加熱分解した。分解後、放冷してから200mLメスフラスコに全量移し、メスアップした。無機リン測定用ホスファC−テストワコー(和光純薬工業株式会社製)を用いて、750nmにおける吸光度が0.5前後になるように適宜希釈したものをサンプルとして吸光度を測定し、全リン含量を測定した。その結果、抽出前の低変性脱脂米糠のリン含量が2.8%であったのに対し、抽出pHが中性〜アルカリ性における抽出残渣のリン含量は3.3%前後であった。 実施例1で得られた低変性脱脂米糠30gに水300mLを加え、25%水酸化ナトリウム水溶液にてpH8.5に調整しながら室温で1時間撹拌した。その後、遠心分離(1,500rpm×30秒間)で抽出液と残渣に分離し、抽出液に60%硫酸または36%塩酸を加えてpH3.0に調整し、室温にて1時間撹拌した。その後、遠心分離(3,000rpm×1分間)にて沈澱を分離し、酸沈澱(分離)タンパク質を回収し、フリーズドライ法にて乾燥した。硫酸、塩酸のいずれを用いた場合においても、酸沈殿タンパク質の収量は2.3gで、収率は7.7%であった。ケルダール法によるタンパク質含量は63%であり、高濃度の酸沈澱タンパク質を回収した。さらに沈澱を洗浄後、乾燥することで、タンパク質含量を89%まで高めることができた。 このようにして得られた酸沈澱タンパク質の乳化性能を以下の方法で試験した。 酸沈殿タンパク質の乳化性能: 本発明品の酸沈殿タンパク質を用いて、5%水溶液を調製し、0.1M水酸化ナトリウム水溶液でpH7.0に調整した。大豆油1gにpH調整したタンパク質水溶液20mLを加えて、ローター・ステーター式の乳化機(日音医理科、ヒスコトロンNS−50)を用いて10,000rpm、2分の条件で乳化を行った。乳化後、25℃にて22時間静置し、乳化された乳化物の外観について観察した。その結果を表1に示した。本発明品から得られた酸沈殿タンパク質は高い乳化性能と乳化安定化能のあることが確認された。このことは、本発明の製造方法で製造される低変性脱脂米糠は、乳化安定剤として利用し得ることを示し、食品加工特性に優れていることが確認できた。 実施例1で得られた低変性脱脂米糠10gに蒸留水100gを加えて1時間撹拌し、遠心分離(3,000rpm×10分)により沈殿を除去し、低変性脱脂米糠抽出液を得た。従来の脱脂米糠を用いて同様に、従来の脱脂米糠抽出液を得た。 得られた抽出液について、アプライ量を変えてSDS−PAGEにより分析した結果を図4に示す。 いずれの脱脂米糠においても、55kDa、26kDa付近に明確なバンドが確認された。一方で低変性脱脂米糠抽出液からは、38kDa、27kDa、21kDa付近に従来の脱脂米糠にはない、特徴的なバンドを確認した。 本発明の製造方法により製造される低変性脱脂米糠は、食品、医薬品、化粧品、化成品、培養基材、発酵物の原料、飼料または肥料の原料として利用しうる。実施例1で得られた低変性脱脂米糠と、従来の脱脂米糠をそれぞれ含む培地における酵母の生育度を示すグラフである。実施例1で得られた低変性脱脂米糠と、従来の脱脂米糠をそれぞれ含む培地における乳酸菌の生育度を示すグラフである。実施例1で得られた低変性脱脂米糠と、従来の脱脂米糠から得られる水溶性抽出物とタンパク質の質量(収率)を比較するグラフである。実施例1で得られた低変性脱脂米糠と、従来の脱脂米糠から得られる水溶性抽出物のSDS−PAGEの結果を示す図である。 米糠をアセトン、へキサンおよびエタノールから選択される少なくとも1種類の抽出溶剤で抽出し、抽出残渣から90kPa以下の減圧下、温度100℃未満で抽出残渣に含まれる抽出溶剤を除去することを特徴とする低変性脱脂米糠の製造方法。 温度が20〜80℃である請求項1に記載の製造方法。 請求項1または2に記載の製造方法で得られることを特徴とする低変性脱脂米糠。 脱脂米糠に含まれる可溶性タンパク質が3.5〜15質量%であることを特徴とする請求項3に記載の低変性脱脂米糠。 請求項3または4に記載の低変性脱脂米糠またはその水もしくは有機溶剤抽出物を含有することを特徴とする食品。 請求項3または4に記載の低変性脱脂米糠またはその水もしくは有機溶剤抽出物を含有することを特徴とする医薬品。 請求項3または4に記載の低変性脱脂米糠またはその水もしくは有機溶剤抽出物を含有することを特徴とする化粧品。 請求項3または4に記載の低変性脱脂米糠またはその水もしくは有機溶剤抽出物を含有することを特徴とする化成品。 請求項3または4に記載の低変性脱脂米糠またはその水もしくは有機溶剤抽出物を含有することを特徴とする培養基材。 請求項3または4に記載の低変性脱脂米糠またはその水もしくは有機溶剤抽出物を発酵させて得られる発酵物。 請求項3または4に記載の低変性脱脂米糠またはその水もしくは有機溶剤抽出物を含有することを特徴とする飼料。 請求項3または4に記載の低変性脱脂米糠またはその水もしくは有機溶剤抽出物を含有することを特徴とする肥料。 【課題】米糠に含まれる成分の変性を抑制した低変性脱脂米糠の製造方法、および該製造方法で製造される低変性脱脂米糠を提供。【解決手段】米糠をアセトン、へキサンおよびエタノールから選択される少なくとも1種類の抽出溶剤で抽出し、抽出残渣を90kPa以下の減圧下、温度100℃未満で抽出残渣に含まれる抽出溶剤を除去することを特徴とする低変性脱脂米糠の製造方法。【選択図】図3