生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_糖化ヘモグロビンの分離定量法
出願番号:2006156618
年次:2007
IPC分類:G01N 30/88


特許情報キャッシュ

桑原 直幸 JP 2007304076 公開特許公報(A) 20071122 2006156618 20060508 糖化ヘモグロビンの分離定量法 桑原 直幸 506191183 桑原 直幸 G01N 30/88 20060101AFI20071026BHJP JPG01N30/88 QG01N30/88 201GG01N30/88 201X 3 書面 4 本発明は、高速液体クロマトグラフイーによる糖化ヘモグロビンの分離定量法に関するものである。 近年、血液中の糖化ヘモグロビンが長期にわたる平均的な血糖値を正確に反映する指標として認められ、糖尿病の診断法として糖化ヘモグロビンの測定が臨床診断や臨床検査の現場で広く行なわれている。 糖化ヘモグロビン(以下、GHbと記す)は血液中の糖(グルコース)とヘモグロビンA0(以下、HbA0と記す)が結合したものの総称であり、人の場合にはHbA1a1、HbA1a2、HbA1b及びHbA1cなどが知られている。 これらは一括して通常HbA1と呼ばれている。HbA1の中で最も量が多いのがHbA1cであり、HbA0にグルコースが非酵素的に結合して生成される。 HbA1cの濃度は通常赤血球寿命の半減期に相当する1〜2ヶ月間の血液中の平均的血糖値をほぼ定量的に反映し、糖尿病患者では健常者より有意に高い値を示すことが認められている。 以上のような理由により、GHbの測定は糖尿病の一次スクリーニングや長期血糖値管理の指標として従来の血糖値の測定に比べて信頼性が高く優れていると言われている。 現在、GHbの測定には高速液体クロマトグラフイーによる方法が多く使用されているが、高速液体クロマトグラフイーの中でもカチオン交換体を充填剤に用いたイオン交換クロマトグラフイーが最も多く使用されている。 カチオン交換体としては、カルボキシルメチル基やスルホプロピル基などのカチオン交換基が導入された全多孔性型カチオン交換体が主に使用されていたが、この種の充填剤は分離能が低く、分析時間も長いという問題があった。 最近、この問題は細孔のない非多孔性型カチオン交換体を用いることによって解決され、短時間で高分離能が得られるようなったが、非多孔性型充填剤では多孔性型充填剤に比べて試料負荷量が小さいことが指摘されている。 特許公報第2929456号 現在、GHbの測定は前述したようにカチオン交換体を充填剤に用いた高速液体クロマトグラフイーによって行なわれているが、その装置はほとんどGHb測定用に自動化された専用装置が使用されている。 また、これらの装置に用いられるカラムの充填剤には従来からの全多孔性型カチオン交換体やこれらの欠点を改良した非多孔性型カチオン交換体が広く使用されている。 しかしながら、前述したようにどちらの充填剤も一長一短があり、分離能、分析時間及び試料負荷量などすべてを満足するGHbの測定法は開発されていない。 課題を解決しようとするための手段 本発明者は以上のような現状にかんがみ課題を解決するためのGHbの測定法について研究を重ねた結果、疎水性又は親水性ポリマーあるいはシリカゲルの非多孔性微小コアー粒子の表面にカチオン交換性ポリマー鎖を導入することにより多孔性を発現させた表層多孔性型カチオン交換体を用いることにより現状の課題を解決することを見出し本発明に到達した。 本発明に使用される表層多孔性型カチオン交換体の具体例としては、例えば、SepaxTechnolgies社より市販されている表層多孔性型イオン交換体ProteomixSAX−NPやDionex社より市販されているProPacSCX−10などが挙げられる。 これらはいずれも直径が3〜10ミクロンの中性の高親水性薄膜を結合させた硬質球状高架橋型ポリスチレンジビニルベンゼンのコアー粒子にカチオン交換性ポリマー鎖が導入された表層多孔性型カチオン交換体である。 これらの充填剤は従来の全多孔性型充填剤とは異なり表層のみが多孔性型のため試料の拡散距離が短かく高速で高分離能が得られるうえに試料負荷量は非多孔性型充填剤に比べて大きい。 発明の効果 上述したような特徴を有する表層多孔性型カチオン交換体を用いることにより、従来の充填剤で欠点とされた高速高分離能(分析時間)あるいは試料負荷量を改良したイオン交換クロマトグラフイーを行なうことができ、従来より優れた糖化ヘモグロビンの分離定量法が可能になった。 以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。 表層多孔性型充填剤を用いて実際にGHb測定を実施した。充填剤としてはSepax社製の表層多孔性型カチオン交換体Proteomix−NP(粒子径;3ミクロン、カラムサイズ;4.6mmI.D.x3.5cm)を用いた。 比較として、従来の多孔性型充填剤には東ソー社製のGHb分析用カラムGlycoHSカラム(カラムサイズ;4.6mmI.D.x3.5cm)、非多孔性型充填剤には同様に東ソー社製のGHb分析用カラムGlycoHSiカラム(カラムサイズ;4.6mmI.D.x3.5cm)を使用した。 溶出は2液のグラジエント方式による塩濃度勾配溶出法で行い、検出波長は415nmを用いた。試料には糖尿病患者血液2μlに0.1%TritonX−100を1ml加えて溶血した溶血液10μlを使用した。 溶離液には(1)液に20mM MES緩衝液+20mM NaCl(pH5.6)、(2)液に20mMMES緩衝液+400mM NaCl(pH5.6)を用い、流速1.5ml/minで(1)液から(2)液への3分間リニアーグラジエントでのGHb分析を行った。 その結果、分離時間約3分で不安定型HbA1c、安定型HbA1c、HbF及びHbA0を分離することができた。 また、これらのカラムでの不安定型HbA1cと安定型HbA1cの分離能(以下、Rsと記す)の比較を行ったところ、表層多孔性型充填剤ProteomixSCX−NPでは、Rs1.51、非多孔性型充填剤GlycoHSiでは、Rs1.48であったが、多孔性型充填剤Glyco−HSでは十分な分離が得られずRsは算出できなかった。 実施例1で、従来の多孔性型充填剤よりも表層多孔性型充填剤及び非多孔性型充填剤の方が高速での高分離分析に優れていることがわかった。ここでは、表層多孔性型充填剤と非多孔性型充填剤を用いて分離能への試料負荷量の影響を調べた。 表層多孔性型充填剤としてはDionex社のProPacSCX−10(粒子径;10ミクロン、カラムサイズ;4.6mmI.D.x3.5cm)を用いた。非多孔性型充填剤としては実施例1と同様に東ソー社製のGHb分析用カラムGlycoHSiカラム(カラムサイズ;4.6mmI.D.x3.5cm)を使用した。 測定条件は試料負荷量を除いて実施例1と同じにして、溶血液の注入量を5μlから75μlまで変化させると、非多孔性型充填剤GlycoHSiでは注入量が10μlを越えると分離能が低下した。この時の注入量はヘモグロビン量約5μgに相当する。 一方、表層多孔性型充填剤ProPacSCX−10では注入量が40μlまでは同じ分離能が得られた。このときのヘモグロビン量は約20μgに相当し、非多孔性型充填剤の約4倍の試料負荷量まで同じ分離が得られた。 試料負荷量を大きくできると室温の変化や複数の溶離液を用いた測定時の溶離液切り替えによるベースラインの変動を小さくすることができるため、GHbの測定精度や再現性の向上を図ることができる。 ちなみに、n=10における変動係数(以下、C.V.値と記す)は、表層多孔性型充填剤では不安定型HbA1c及び安定型HbA1cのピーク面積値に対しそれぞれ1.01%、0.81%であった。一方、非多孔性型充填剤ではそれぞれ1.75%、1.52%であった。 以上の説明から明らかなように、液体クロマトグラフイーによるGHbの測定において表層多孔性型充填剤を用いることにより短時間での高分離能の達成に加えて、現在、GHb測定に用いられている充填剤よりも分離能を低下することなく試料負荷量を大きくすることができるため、前述のごとく従来よりも高い分析精度や再現性を有したGHbの分離定量法を提供できる。 表層多孔性型カチオン交換体を用いることを特徴とする糖化ヘモグロビンの分離定量法。 表層多孔性型カチオン交換体の基材粒子(以下、コアー粒子と記す)の直径が1〜15ミクロンの範囲である事を特徴とする請求項第1項に記載の方法。 表層多孔性型カチオン交換体の表層部位がカチオン交換性ポリマー鎖の導入により多孔性を発現することを特徴とする請求項第1及び2項に記載の方法。 【課題】 糖化ヘモグロビンの測定において、短時間で精密にかつ再現性良く、HbA1a1、HbA1a2、HbA1b、HbA1c及び、HbA0を分離定量できる方法を提供する。更に、試料負荷量を改良した測定を行うことができ、従来のものより優れた糖化ヘモグロビンの分離定量法を提供する。【解決手段】 疎水性又は親水性ポリマーあるいはシリカゲルの非多孔性微小コアー粒子の表面にカチオン交換性ポリマーを導入することにより多孔性を発現させた表層多孔性型カチオン交換体を用いることを特徴とする当該糖化ヘモグロビンの測定法。これにより、現状の問題点を解決した短時間で分析精度および再現性の高い糖化ヘモグロビンの分離定量をおこなうことができる。


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る