タイトル: | 公開特許公報(A)_模擬便 |
出願番号: | 2006147323 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | G01N 33/50 |
川本 早高 田中 清隆 北村 仁史 JP 2007315973 公開特許公報(A) 20071206 2006147323 20060526 模擬便 松下電工株式会社 000005832 西澤 利夫 100093230 川本 早高 田中 清隆 北村 仁史 G01N 33/50 20060101AFI20071109BHJP JPG01N33/50 F 5 1 OL 7 2G045 2G045AA20 2G045BB14 2G045BB25 2G045CB04 2G045FB11 2G045GC12 2G045GC13 本願発明は、模擬便に関するものである。 大便器の開発では大便による大便器洗浄性の評価が伴う。大便器洗浄性は、大便の硬さ、粘度、形状や比重などの物理的性状の違いにより排泄時あるいは洗浄後の大便器への付着態様が異なり、その洗浄性も変わってくる。したがって、大便器洗浄性の評価の際にはその目的とする大便を準備する必要があるが、その都度準備することは困難である。また、使用する大便が評価毎に異なるため、再現性がなく結果の比較が十分にできないという問題もある。このため、大便器洗浄性の評価を再現性よく実現するためには、粘度や比重などを容易に調整できるようにした模擬便を用いることが必要である。 模擬便としては、従来より、釣魚用配合飼料と穀物と糖類から作製することが知られている(たとえば、特許文献1参照)。この模擬便は、人糞採取の訓練用教材として提案されたもので、採便棒をその模擬便に突き刺した際の感触を実際の大便に似せるようにしている。しかしながら、以上の模擬便の大便器への付着態様は大便と同程度ではなく、大便器の大便器洗浄性の評価用として用いるには、いまだ満足できるレベルではなかった。さらに、大便器洗浄性の評価に際して、別の重要な問題も有していた。すなわち、大便器洗浄性の評価は、洗浄後の大便の大便器への付着の程度から汚れ性を評価するものであるが、上記の模擬便については大便器への付着分が見えにくく、どの程度付着しているか判断できないため、汚れ性を評価することができなかった。特開平10−319022号公報 そこで、本願発明は、以上の通りの背景から、大便器への付着分を可視化して汚れ評価を容易にすることができ、かつ、大便と同様な汚れ性を再現できる模擬便を提供することを課題としている。 本願発明の模擬便は、前記の課題を解決するものとして、第1には、油脂分と水分と有機・無機分とを含む模擬便基質に、染料が配合されていることを特徴とする。 また、第2には、上記の模擬便において、染料として、油性染料および水性染料がそれぞれ少なくとも1種類以上配合されていることを特徴とする。 第3には、上記第2の模擬便において、油性染料と水性染料との発色域が異なることを特徴とする。 第4には、上記第3の模擬便において、油性染料がスダンIIであり、水性染料がメチレンブルーであることを特徴とする。 第5には、上記第2から第4のいずれかの模擬便において、油性染料および水性染料は、それぞれ油脂分および水分にあらかじめ溶解されて配合されていることを特徴とする。 上記第1の発明によれば、油脂分と水分と有機・無機分とを含む模擬便基質に、染料が配合されていることにより、大便器への付着分を可視化して汚れ評価を容易にすることができ、かつ、大便と同様な汚れ性を再現できる模擬便を得ることができる。 上記第2の発明によれば、染料として、油性染料および水性染料がそれぞれ少なくとも1種類以上配合されていることにより、油溶性および水溶性の汚れの双方が可視化でき、大便の汚れ性をより忠実に模擬便で再現することができる。 上記第3の発明によれば、油性染料と水性染料との発色域が異なることにより、大便器に付着した油脂分とそれ以外の成分とが区別され、より詳細な汚れ評価をおこなうことができる。 上記第4の発明によれば、油性染料がスダンIIであり、水性染料がメチレンブルーであることにより、大便器に付着した油脂分は赤色、それ以外の成分は青色にそれぞれ染色され、より詳細な汚れ評価をおこなうことができる。また、これらの染料は入手しやすく、扱いやすい。 上記第5の発明によれば、油性染料および水性染料は、それぞれ油脂分および水分にあらかじめ溶解されて配合されていることにより、油性染料および水性染料を容易に模擬便に混合することができ、さらには、大便器の汚れ性の評価に際して、大便器の付着分の成分をより効果的に判断することができる。 本願発明は上記のとおりの特徴をもつものであるが、以下に、その実施の形態について説明する。 本願の発明者らは、大便器洗浄性に関して汚れ評価をおこなうに際し、洗浄後の模擬便の大便器への付着分を可視化するとともに、大便と同様な汚れ性を再現するために、染料を模擬便に配合することを見出した。すなわち、本願発明の模擬便は、油脂分と水分と有機・無機分とを含む模擬便基質に、染料が配合されていることを特徴としている。 本願発明における染料は、たとえば、スダン系染料であるスダンI、スダンII、スダンIII、スダンIV、スダンブラック、スダンレッドや、ナイトブルー染色液、オイルレッドOなどの油性染料、メチレンブルー、エオシンメチレンブルー、エオシンなどの水性染料を例示することができる。以上の油性染料は、模擬便基質に含まれる油脂分が大便器に付着したときにその付着分を可視化するものであり、水性染料は、模擬便基質に含まれる油脂分以外の成分、具体的には水分、有機・無機分が大便器に付着した際にその付着分を可視化するものである。大便は、一般的に、油脂分、水分、有機・無機分で構成されているため、大便の汚れ性をより忠実に模擬便で再現するためには、染料として、水性染料と油性染料とをそれぞれ併用することが好ましい。なお、水性染料と油性染料は、それぞれ発色域が異なるものを使用することが考慮される。たとえば、同色の水性染料と油性染料を使用した場合には、大便器で観察された付着分が油脂分であるかどうかがわからず、模擬便のどの成分がどのような態様で付着しているかが不明である。したがって、より詳細な汚れ評価をおこなうには、大便器に付着した油脂分とそれ以外の成分とを区別する必要があり、水性染料と油性染料はそれぞれ異なる発色域のものを使用することが好適である。具体的には、後述の実施例で示したように、油性染料をスダンII、水性染料をメチレンブルーとすることが好ましい態様として例示することができる。 また、本願発明は、油性染料および水性染料が、それぞれ模擬便基質に含まれる油脂分および水分にあらかじめ溶解されて配合されていることが好ましい。すなわち、油性染料を油脂分に、水洗染料を水分にあらかじめ溶解しておき、これら油脂分と水分を用いて模擬便を製造するものである。これによって、油性染料および水性染料を容易に模擬便に混合することができる。さらに、油性染料および水性染料がそれぞれ油脂分および水分に確実に溶解しているため、大便器の汚れ性の評価に際し、大便器の付着分の成分をより効果的に判断することができる。 以上の染料の配合量については、大便器への付着分が観察できる程度であればよく、たとえば、油性染料であれば模擬便全体に対して0.01〜0.5重量%、水性染料であれば0.01〜1重量%程度が考慮される。染料の配合量が前記範囲よりも少ない場合には、大便器への付着分を十分に観察することができない場合があるので好ましくない。染料の配合量が前記範囲を超える場合には、可視化という点であまり効果がみられず、コスト面で不利になるため好ましくない。 本願発明における模擬便基質は、上述のように油脂分と水分と有機・無機分とを含むものであるが、油脂分としては、大便の付着度合いにより似せるために、たとえば、長鎖脂肪酸および中鎖脂肪酸のうちの少なくともいずれか一方であることが好ましく、両者を併用してもよい。具体的には、長鎖脂肪酸としてはオレイン酸、中鎖脂肪酸としてはオクタン酸を例示することができる。油脂分の配合割合としては、たとえば、模擬便全体に対して1〜10重量%であることが考慮される。実際の大便の成分分析の結果において脂質の比率が6重量%程度であることを考慮すると、模擬便全体に対して4〜8重量%であることが最適である。 有機分としては、たとえば、小麦粉、ピーナッツ粉、そば粉、山芋粉、大豆粉、みそなどの植物由来のもの、あるいは、これらに模擬便の粘度や硬さを調整する目的で無機分として、二酸化ケイ素(シリカ)を加えたものを例示することができる。有機・無機分の配合割合は、模擬便全体に対して10〜60重量%の割合で配合されることが考慮されるが、実際の大便の成分分析の結果において有機・無機分の比率が20重量%程度であることを考慮すると、好ましくは20〜30重量%、より好ましくは15〜25重量%である。 水分の配合割合については、たとえば模擬便全体に対して40〜90重量%であることが考慮される。実際の大便の成分分析の結果において水分の比率が75重量%程度であることを考慮すると、模擬便全体に対して70〜80重量%、より好ましくは72〜75重量%である。 次に、大便器洗浄性の汚れ評価を図1に基づいて説明する。 汚れ評価は、模擬便の大便器への付着度合いを実際の大便と同程度にする必要がある。そこで、まず、大便の硬さ、粘度などの物理的性状の違いに着目してその性状を分類すると、1.硬便、2.普通便、3.軟便、4.水様便の4つに分類することができる。ここで、1.硬便とは、便秘ぎみで硬くコロコロした便のことをいい、2.普通便とは、半練り状の便のことをいう。3.軟便とは、半練り状より柔らかい便のことをいい、4.水様便とは、ポタージュや水のような下痢便のことをいう。 図1に示したように、大便1の大便器2への付着態様は、A〜Dの4つの態様に分類できる。まず、大便1が水没しない部位に付着する場合(A,B)と、水没する部位に付着する場合(C,D)に分け、Aは排泄時に大便1が傾斜面に落下し、その傾斜面に付着する態様、Bは排泄時やおしり洗浄時に飛び散った大便1が傾斜面に付着する態様とした。Cは浮遊した大便1が排出時(大便器洗浄時)に旋回し、こすれて付着する態様とし、Dは沈んだ大便1が排出時(大便器洗浄時にこすれて付着する態様とした。 本願の発明者らの検討の結果、各物理的性状の大便1の大便器2への付着態様は、1.硬便の場合には主にDの態様となり、2.普通便の場合には主にA,CおよびDの態様となることがわかった。また、3.軟便および4.水様便の場合には主にA,BおよびDの態様となることがわかった。このような大便の大便器への各種の付着態様を再現することは、大便器洗浄性に関する汚れ評価をおこなうにあたり重要である。すなわち、以上のような大便の大便器への付着態様を模擬便で再現することができれば、模擬便の大便器における当該箇所の付着度合いを観察することで、汚れを評価することができるのである。したがって、模擬便の作製の際には、大便器への付着度合いを大便と同程度とすることが望ましく、そのためには、目的とする大便の物理的性状にあわせた模擬便とすることが考慮される。本願発明では、上述したようにシリカを適宜量配合し、硬さや粘度を調整した模擬便を得ている。 本願発明では、以上のように大便器に付着した付着分を可視化してより容易に観察することができるため、より正確な汚れ評価をおこなうことができる。また、着色された面積やその濃さを基に、汚れの度合いを定量的に評価することもできるようになる。 以下に実施例を示し、さらに詳しく説明する。もちろん以下の例によって本願発明が限定されることはない。<実施例1〜7> 表1に示す材料比でみそを所定の容器に入れ、ついで、オクタン酸を入れてよくかき混ぜた。ついで、所定量の純水を上記容器に入れ、塊がなくなるまでよく攪拌し、その後約30分以上放置して模擬便基質を得た。模擬便基質の材料比は、あらかじめ大便(人糞)と模擬便基質の各材料の成分を調査しておき、模擬便と大便の成分比が同程度になるようにした。なお、純水にはメチレンブルーを純水100gに対して0.05gの割合であらかじめ溶解しておき、オクタン酸にはスダンIIをオクタン酸の全重量の50%に相当するオクタン酸10gに対して0.3gの割合であらかじめ溶解しておいた。 次に、得られた模擬便基質に対し、表2に示す配合量でシリカ(二酸化ケイ素)を混合した後、むらなく攪拌し、大便の物理的性状に似せた模擬便を得た。なお、表2に示したシリカの配合量は模擬便基質100g当たりに添加する量である。また、用いた材料の詳細は以下のとおりである。 みそ:米みそ シリカ:アエロジル200(日本アエロジル(株)) 得られた模擬便をその種類に応じた図1に示したA〜Dの態様で大便器に付着させて、その付着度合いを大便(人糞)と比較して観察した。いずれの場合も、大便器への付着分を良好に観察することができ、かつ、油脂分とそれ以外の成分とを区別して観察できた。また、大便と同様な汚れ評価となることも確認された。<実施例8> 実施例3において、メチレンブルーの代わりにエオシンエチレンブルーを使用し、汚れ評価をおこなった。この結果、大便器への付着分について、その成分を区別して観察することはやや困難であったものの、付着分そのものは良好に観察することができ、大便と同様な汚れ評価となることも確認された。<比較例> 表3に示す材料比でみそを所定の容器に入れ、ついで、オレイン酸、オクタン酸を入れてよくかき混ぜた。ついで、所定量の墨汁、純水を上記容器に入れ、塊がなくなるまでよく攪拌し、その後約30分以上放置して模擬便基質を得た。次に、得られた模擬便基質100gに対し、シリカ(二酸化ケイ素)を2gの割合で混合した後、むらなく攪拌して模擬便を得た。 上記の模擬便で汚れ評価をおこなったところ、繰り返しテストによって汚れが蓄積されてしまい、大便汚れを再現することができなかった。大便の物理的性状の違いによる大便器への付着態様を説明するための模式図である。符号の説明1 大便2 大便器 油脂分と水分と有機・無機分とを含む模擬便基質に、染料が配合されていることを特徴とする模擬便。 染料として、油性染料および水性染料がそれぞれ少なくとも1種類以上配合されていることを特徴とする請求項1に記載の模擬便。 油性染料と水性染料との発色域が異なることを特徴とする請求項2に記載の模擬便。 油性染料がスダンIIであり、水性染料がメチレンブルーであることを特徴とする請求項3に記載の模擬便。 油性染料および水性染料は、それぞれ油脂分および水分にあらかじめ溶解されて配合されていることを特徴とする請求項2から4のいずれかに記載の模擬便。 【課題】大便器への付着分を可視化して汚れ評価を容易にすることができ、かつ、大便と同様な汚れ性を再現できる模擬便を提供する。【解決手段】油脂分と水分と有機・無機分とを含む模擬便基質に、染料が配合されていることとする。【選択図】図1