タイトル: | 公開特許公報(A)_発毛剤 |
出願番号: | 2006138751 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | A61K 31/22,A61P 17/14,A61K 8/37,A61Q 7/00 |
岡田 裕実春 JP 2007001971 公開特許公報(A) 20070111 2006138751 20060518 発毛剤 ヤマハ発動機株式会社 000010076 南條 博道 100104673 岡田 裕実春 JP 2005155452 20050527 A61K 31/22 20060101AFI20061208BHJP A61P 17/14 20060101ALI20061208BHJP A61K 8/37 20060101ALI20061208BHJP A61Q 7/00 20060101ALI20061208BHJP JPA61K31/22A61P17/14A61K8/37A61Q7/00 1 OL 7 4C083 4C206 4C083AC351 4C083CC37 4C083EE22 4C206AA01 4C206AA02 4C206DB06 4C206DB56 4C206MA01 4C206MA04 4C206ZA92 本発明は、安全性の高い発毛剤に関する。 脱毛、薄毛、抜毛、白髪、あるいは枝毛などの毛髪に関する異常については、毛髪の発生、成長などについての詳細なメカニズムが判明していない。例えば、遺伝説、ホルモンなどのアンバランス説、脂漏説、頭皮緊張説、ストレス説、皮脂腺説など各種の成因が挙げられている。そのため、それぞれに対応しての治療的または予防的方法(薬剤など)が存在している。 育毛剤は、広義には、発毛剤、育毛促進剤、脱毛予防剤、およびふけ防止剤に大きく分類される。このうち、発毛剤とは、成長期、退行期、および休止期を繰り返すヘアサイクルにおいて、例えば、休止期の毛母細胞に作用して、毛髪を休止期から成長期へ誘導する効果が高い薬剤をいう。そのため、発毛剤については、発毛効果があることを明記して、一般的な育毛剤と区別されている。一方、育毛促進剤は、成長期の毛母細胞に作用して、成長期から休止期への移行を遅延させ、例えば、毛髪を太くする。一般的に育毛剤と称されるものは、この育毛促進剤である。脱毛予防剤は、休止期にある毛髪を減少させて抜け毛を少なくし、そしてふけ防止剤は、頭皮の炎症を抑制する。 発毛剤の有効成分としては、ステロイド骨格を有するフィナステリド、ピリミジン−ピペリジン誘導体であるミノキシジルなどの限られた化合物しか知られていない。一方、育毛促進剤の有効成分としては、種々の生薬、アデノシン、フラバン誘導体、脂肪酸誘導体などの多様な物質が知られている。これらの発毛剤と育毛促進剤との間には、化学構造や他の生理活性などの共通点は見出されていない。 発毛剤として世界的に広く用いられているミノキシジルは、血管拡張剤として開発されたものであり、その副作用として発毛作用が確認されて、発毛剤として適用されるようになった。そのため、心臓血管系に異常がある人への使用が制限されている。また、フィナステリドは、男性ホルモンを阻害する発毛剤であるため、女性での使用は厳禁である。 育毛剤などの毛髪用化粧料には、育毛効果が期待される各種の薬効成分が配合されている。薬効成分としては、例えば、ビタミンEなどのビタミン類、セリン、メチオニンなどのアミノ酸類、アセチルコリン誘導体などの血管拡張剤、紫根エキスなどの抗炎症剤、エストラジオールなどの女性ホルモン剤、セファランチンなどの皮膚機能亢進剤、パントテン酸銅などのメラニン合成触媒剤、サリチル酸などの角質溶解剤などが配合され、脱毛症の予防および治療に用いられている。製品の物性を改善する目的で、オリーブ油、ヒマシ油などの天然植物油あるいはステアリン酸を配合した例がある。また、毛髪用化粧料には、一般に、高級アルコールまたはその誘導体が配合されている。 カロテノイド(カロチノイド)は、動物、植物、および微生物に広く分布し、その数約600種におよぶ黄〜橙〜赤色を呈する脂溶性生体色素である。その一種であるアスタキサンチンは、オキアミ、エビ、カニなどの甲殻類、サケ・マスの筋肉・卵(イクラなど)、タイ・コイ・金魚などの体表などに含有されている。アスタキサンチンは、プロビタミンAとなり得ることや顕著な抗酸化作用を有することだけでなく、抗炎症作用を有することも知られている(例えば、特許文献1および2)。その作用機作については、炎症性サイトカインおよびケモカインの発現の阻害(特許文献3)、ヒスタミンの放出抑制(特許文献4)などによることが報告されている。 アスタキサンチンを含有する化粧料が開示されており、ここでは、アスタキサンチンは、主として、その抗酸化作用によって、化粧料中の高度不飽和脂肪酸を安定化する目的で配合されている(特許文献5)。また、アスタキサンチンの薬理効果が期待できることも記載されており、過酸化脂質の生成を防止することによる、生体細胞の炎症の回復、遅延、防止、および薬品の副作用軽減が開示されている。さらに、アスタキサンチンが、抗脱毛、育毛(すなわち、毛髪強化、毛髪特性の改善、および毛髪の伸長刺激)、ならびに白髪予防に用いられることが開示されているが(特許文献6)、休止期から成長期への誘導という発毛効果に関しては記載されていない。特開平7−300421号公報特開2004−331512号公報特表2003−528139号公報米国特許第5886053号明細書特開平8−245335号公報国際公開第03/105791号パンフレット 本発明は、新たな安全性の高い発毛剤を提供することを目的とする。 本発明は、アスタキサンチンおよび/またはそのエステルを含有する、発毛剤を提供する。好適には、上記アスタキサンチンおよび/またはそのエステルは、有効成分として含まれる。 本発明によれば、新たな発毛剤が提供される。本発明の発毛剤は、非常に毒性が低いため、安全性が高い。 本発明の発毛剤に含まれるアスタキサンチンおよび/またはそのエステルは、以下の式:(ここで、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素原子または脂肪酸残基である)で示されるカロテノイドの一種である。アスタキサンチンのエステルとしては、特に限定されないが、例えば、パルミチン酸、ステアリン酸などの飽和脂肪酸、あるいはオレイン酸、リノール酸、α−リノレン酸、γ−リノレン酸、ビスホモ−γ−リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸などの不飽和脂肪酸のモノエステルまたはジエステルが挙げられる。これらは単独でまたは適宜組み合わせて用いることができる。アスタキサンチンは、β−カロチンの骨格の両端にオキソ基とヒドロキシ基とを余分に有する構造であるため、β−カロチンとは異なり、分子の安定性が低い。これに対し、両端のヒドロキシ基が不飽和脂肪酸などでエステル化されたエステル体(例えば、オキアミ抽出物)はより安定である。 本発明に用いられるアスタキサンチンおよび/またはそのエステルは、化学的に合成されたものであっても、あるいは天然物由来のもののいずれであってもよい。後者の天然物としては、アスタキサンチンおよび/またはそのエステルを含有する赤色酵母;ティグリオパス(赤ミジンコ)、オキアミなどの甲殻類の殻;緑藻類などの微細藻類などが挙げられる。本発明においては、アスタキサンチンおよび/またはそのエステルの特性を利用できるものであれば、どのような方法で生産されたアスタキサンチンおよび/またはそのエステルを含有する抽出物をも使用することができる。一般的には、これらの天然物からの抽出物が用いられ、抽出エキスの状態であっても、また必要により適宜精製したものであってもよい。本発明においては、このようなアスタキサンチンおよび/またはそのエステルを含有する粗抽出物や破砕粉体物、あるいは必要により適宜精製されたもの、化学合成されたものを、単独でまたは適宜組み合わせて用いることができる。化学的安定性を考慮すると、好ましくはエステル体が用いられる。 本発明の発毛剤は、毛髪や頭皮を滑らかにする点で、高級脂肪酸および/または高級アルコールを含有することが好ましい。このような高級脂肪酸および/または高級アルコールとしては、例えば、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール、ラウリン酸、ミリスチル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸などが挙げられる。高級脂肪酸および/または高級アルコールは、単独でまたは適宜組み合わせて用いることができる。その含有量は、特に制限されないが、発毛剤総量に対して、0.5〜10(v/v)%が好ましく、1〜8(v/v)%がさらに好ましい。 本発明の発毛剤は、毛髪や皮膚にさらに柔軟性を付与する点で、界面活性剤を含有することが好ましい。このような界面活性剤としては、例えば、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、ジステアロイルエチルヒドロキシエチルアンモニウムメトサルフェート、ジココイルエチルヒドロキシエチルアンモニウムメトサルフェート、N−[3−アルキル(12,14)オキシ−2−ヒドロキシプロピル]−L−アルギニン塩酸塩、酢酸ラウリン酸アミドブチルグアニジン、N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−アルギニンエチル・DL−ピロリドンカルボン酸塩、ステアリン酸ジメチルアミノエチルアミド、ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミドなどが挙げられる。これらの界面活性剤は、単独でまたは適宜組み合わせて用いることができる。その含有量は特に制限されないが、発毛剤総量に対して、0.1〜5(v/v)%が好ましく、0.3〜3(v/v)%がさらに好ましい。 本発明の発毛剤は、上記成分の他に、血行促進剤、局所刺激剤などを含んでいてもよい。具体的には、ビタミンEおよびその誘導体、センブリエキス、ニンニクエキス、セファランチン、塩化カルプロニウム、アセチルコリンなどの血行促進剤;トウガラシチンキ、カンタリスチンキ、ショウキョウチンキ、ノニル酸バニルアミドなどの局所刺激剤;サリチル酸、レゾルシン、乳酸などの角質溶解剤;プラセンタエキス、ペンタデカン酸グリセリド、パントテニルエチルエーテル、ビオチン、ヒノキチオール、アラントインなどの代謝賦活剤;グリチルリチン酸、グリチルレチン酸などの消炎剤;イソプロピルメチルフェノール、トリクロサン、ジンクピリチオン、ヒノキチオールなどの殺菌剤;メントール、カンフルなどの清涼剤;女性ホルモンなどが挙げられる。これらの成分を適宜組み合わせて用いられ得る。また、本発明では、上記以外に、本発明の発毛剤の効果を損なわない範囲で、育毛剤などの毛髪用化粧料に通常含有され得る他の成分、例えば、低級アルコール、多価アルコール、水溶性高分子、酸化防止剤、pH調整剤、紫外線防止剤、金属イオン封鎖剤、増粘剤、精製水、香料、防腐剤、抗菌剤、油剤、脂肪酸エステル、保湿剤、清涼剤、色素などの通常の化粧品成分;あるいは、ホルモン類、ビタミン類、アミノ酸類、収れん剤、および胎盤抽出物、エラスチン、コラーゲン、ムコ多糖、アロエ抽出物、ヘチマ水、ローヤルゼリー、バーチ、ニンジンエキス、カモミラエキス、甘草エキス、サルビアエキス、アルテアエキス、セイヨウノコギリソウエキスなどの動植物抽出成分などを、必要に応じて適宜含有してもよい。 本発明の発毛剤は、毛髪を休止期から成長期へ誘導して、発毛を促進し得る。発毛の促進は、例えば、ヘアサイクルが休止期にある毛を刈り取った後、この刈り取った部分に本発明の発毛剤を適用することにより確認できる。具体的には、成長する毛の比率、毛の成長速度、成長期の毛の単位面積当たりの割合、毛の太さなどが、非適用の場合に比べて増加することにより、確認できる。 本発明の発毛剤の塗布量は、特に制限されない。通常、成人に対して、アスタキサンチンとして、1日あたり0.1mg〜500mgを1〜3回、好ましくは1mg〜50mgを1〜2回塗布され得る。 (調製例1:アスタキサンチンモノエステルの調製) アスタキサンチンモノエステルを、次のように調製した。ヘマトコッカス・プルビアリス(Haematococcus pulvialis)K0084株を、25℃にて光照射条件下3%CO2を含むガスを通気しながら培養した。その後、栄養ストレス(窒素源欠乏)をかけてシスト化させた。シスト化した細胞を、当業者が通常用いる手段によって破砕し、エタノールで油性画分を抽出した。アスタキサンチン類は、トリグリセリドなどの脂質とともに抽出された。抽出物を、合成樹脂吸着剤を用いるカラムクロマトグラフィーにかけて、アスタキサンチンのモノエステルを含む精製物を得た。この精製物をHPLCによって分析し、このアスタキサンチンモノエステル精製物が、分子量858のモノエステルを主成分として含み、アスタキサンチンの遊離体およびジエステル体を含まず、わずかにジグリセリドを含んでいることを確認した。 (実施例1:発毛効果の検討) 上記調製例1で得たアスタキサンチンモノエステルについて、マウスにおける発毛効果を検討した。上記調製例1で得たアスタキサンチンモノエステルを、20%(v/v)エタノール含有α−トコフェロールに溶解し、10mg/mLのアスタキサンチンモノエステル試験液を調製した。7週齢のC3H/HeN Slc(SPF)雄マウスを1群10匹として、試験群、陽性コントロール群、および陰性コントロール群の3群に分けた。なお、45〜95日齢のC3Hマウスでは、ヘアサイクルは休止期にある。各マウスの背部の体毛を5cm×3cmの範囲で剃り、その部位に上記試験液を1日1回0.05mL、18日間にわたり塗布し、発毛状態を観察した。なお、陽性コントロール群には、1%(w/v)ミノキシジル(50%(v/v)エタノール中)を、および陰性コントロール群には50%(v/v)エタノールを塗布した。なお、発毛状態は以下のスコア基準を用い、変化が生じた面積を割合で示すことによって評価した。 0 皮膚がピンク色を呈する 1 皮膚が灰色に変化(50%未満) 2 皮膚が灰色に変化(50%以上)および発毛が認められる(50%未満) 3 皮膚が灰色に変化(50%以上)および発毛が認められる(50%以上80%未満) 4 発毛がはっきりと認められる(80%以上100%未満) 5 発毛がはっきりと認められる(100%) 結果を図1に示す。試験群では、陰性コントロール群よりも明らかに発毛効果が認められた。しかし、陽性コントロールと比較して、発毛効果の発現はやや遅かった。これは、アスタキサンチンモノエステルが、長期にわたって徐々にその発毛効果を発揮することを示唆するものである。また、試験群では、初期の発毛スピードは遅いものの、毛が生え始めてからの発毛の進行速度は陽性コントロール群よりも速くなっており、当然陰性コントロール群よりも速い。これは、試験群に特異な効果である。 (参考例1:HUVECに対する50%致死濃度の測定) ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)(ATCC CRL−1730)を、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションから入手し、1%Antibiotic-Antimycotic(GIBCO BRL, USA)を添加した10%ウシ胎児血清含有Endothelial Cell Growth Medium(CELL APPLICATIONS, USA))中、5%CO2雰囲気下、37℃にて予備培養した。 Matrigelマトリックス(BD Biosciences, USA)を融解して氷上で4℃にて保持し、そして50μLのマトリックスを96ウェル組織培養プレートの各ウェルに移した。プレートを37℃にて少なくとも1時間インキュベートして、マトリックス溶液を固化させた。 一方、上記調製例1で得たアスタキサンチンモノエステルを、ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解し、次いで蒸留水で希釈して、40(v/v)%DMSO中に25000、2500、250、25、および2.5μMのアスタキサンチンモノエステルを含むストック試験溶液を調製した。 100μLのHUVEC懸濁液(約2.5×103細胞/ウェル)を、5%CO2雰囲気下37℃にて96ウェルのMatrigelプレートに入れた。24時間後、100μLの増殖培地および上記の各ストック試験溶液またはベヒクル(40(v/v)%DMSO)2μLずつを、各2つのウェルに添加し、さらに72時間インキュベートした。DMSOおよびアスタキサンチンモノエステルの最終濃度は、250、25、2.5、0.25、および0.025μMであった。 インキュベーション終了後、20μLの90%alamarBlue試薬を個々のウェルに添加し、さらに6時間インキュベートした。次いで、各ウェルの蛍光強度を、Spectrafluor Plusプレートリーダーを用いて、励起波長530nmおよび発光波長590nmにて測定し、生存細胞数を計数した。これは、生存細胞が、alamarBlueを非蛍光性の酸化型(青)から蛍光性の還元型(赤)に変化させる能力に基づく。なお、50%致死濃度は、実験開始時の細胞数の50%になる濃度を算出した。 この結果、HUVECに対するアスタキサンチンモノエステルの50%致死濃度(LC50)は250μM(DMSOへの最大溶解濃度)以上であり、毒性が低いことがわかった。 本発明によれば、新たな発毛剤が提供される。本発明の発毛剤は、比較的遅効性である。しかし、非常に毒性が低いため、安全性が高く、長期間にわたる使用が可能である。アスタキサンチンモノエステルの試験群、陽性コントロール群、および陰性コントロール群における塗布部位の発毛スコアの経時変化を示すグラフである。 アスタキサンチンおよび/またはそのエステルを含有する、発毛剤。 【課題】新たな安全性の高い発毛剤を提供すること。【解決手段】本発明によれば、アスタキサンチンおよび/またはそのエステルを含有する、発毛剤が提供される。本発明の発毛剤は、非常に毒性が低いため、安全性が高く、長期間にわたる使用が可能である。【選択図】なし