タイトル: | 公開特許公報(A)_乳酸菌存在下における生菌数測定方法 |
出願番号: | 2006104738 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | C12Q 1/06,C12N 1/20 |
五十嵐 英夫 酒井 史彦 山内 吉彦 高橋 千登勢 青山 顕司 柳平 修一 JP 2007274958 公開特許公報(A) 20071025 2006104738 20060405 乳酸菌存在下における生菌数測定方法 雪印乳業株式会社 000006699 村山 みどり 100098110 五十嵐 英夫 酒井 史彦 山内 吉彦 高橋 千登勢 青山 顕司 柳平 修一 C12Q 1/06 20060101AFI20070928BHJP C12N 1/20 20060101ALN20070928BHJP JPC12Q1/06C12N1/20 A 5 OL 11 4B063 4B065 4B063QA01 4B063QA18 4B063QQ06 4B063QQ16 4B063QR69 4B063QR90 4B063QX01 4B065AA01X 4B065BB02 4B065CA46 本発明は、乳酸菌を含有する試料中における乳酸菌以外の細菌の生菌数測定方法及びその方法に用いる寒天培地に関する。本発明は、特に、寒天培地に塩化リチウムを一定量添加することにより、乳酸菌以外の細菌、特にセレウス菌の生菌数を有効に測定し得る測定方法及びその方法に用いる寒天培地に関する。 チーズやヨーグルト等の乳製品は、殺菌した原料乳に大量の乳酸菌を接種して製造されるため、乳酸菌以外の汚染細菌が共存していても、乳酸菌の影響で増殖できず、死滅すると考えられている。そのため、乳酸菌を接種した乳製品の製造過程における汚染細菌の生菌数測定は無意味なものと考えられてきた。 しかし、ナチュラルチーズ等を原料とした乳製品の製造過程では、汚染細菌の生菌数を測定することが必要な場合がある。このような場合に、汚染細菌の生菌数が乳酸菌数より少ないと、共存する乳酸菌の影響を受けて、汚染細菌数を正確に測定することが不可能である。そのため、乳酸菌が共存する乳製品の製造過程において、汚染細菌の生菌数測定検査はほとんど実施されていない。 なお、食品衛生法には、成分規格の項目の一つとして、一般細菌数が規定されており、その測定法として標準寒天培地を使用する方法が記載されている。食品衛生法に掲載されている乳酸菌含有粉末清涼飲料の成分規格の生菌数は、乳酸菌を除いた生菌数と規定しており、乳酸菌を除く方法として、ペニシリンGを1μg/ml添加した標準寒天培地を用いて測定する検査法が掲載されている(平成17年9月22日、新日本法規出版発行、食品衛生研究会編集、食品衛生小六法平成18年版、食品の規格基準(D−各条)粉末清涼飲料、565〜567頁)。 ところが、本発明者らが、この検査法を実施したところ、チーズ製造等に利用されるスターター乳酸菌の発育が抑制されると同時に、食品由来の黄色ブドウ球菌、セレウス菌、リステリア菌、大腸菌、大腸菌群等の発育も抑制されてしまい、乳酸菌以外の細菌の生菌数を正しく測定することができなかった(参考例1参照)。 そのため、食品衛生法に規定されているペニシリンGを添加する方法は、乳酸菌が存在する試料における汚染細菌の測定に利用することができない。平成17年9月22日、新日本法規出版発行、食品衛生研究会編集、食品衛生小六法平成18年版、食品の規格基準(D−各条)粉末清涼飲料、565〜567頁 そのため、乳酸菌が存在する試料において、乳酸菌の影響を受けずに、乳酸菌以外の細菌の生菌数を測定する新規な方法が求められる。特に、セレウス菌の生菌数を測定する方法が特に望まれている。 本発明者は、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、寒天培地中に、塩化リチウムを特定量添加することにより、乳酸菌以外の細菌の生菌数を有効に測定できることを見出し、本発明を完成させた。 すなわち、乳酸菌含有試料中の乳酸菌以外の細菌の生菌数測定において、塩化リチウムを0.4%〜1.0%添加した寒天培地を使用することを特徴とする生菌数測定方法である。 本発明はまた、寒天培地が、標準寒天培地であることを特徴とする前記生菌数測定方法である。 本発明はまた、乳酸菌含有試料中のセレウス菌の生菌数測定において、塩化リチウムを0.4%〜0.6%添加したNGKG寒天培地を使用することを特徴とする生菌数測定方法である。 本発明はまた、塩化リチウムを0.4%〜1.0%添加したことを特徴とする、乳酸菌含有試料中の乳酸菌以外の細菌の生菌数測定用寒天培地である。 本発明はまた、塩化リチウムを0.4%〜0.6%添加したことを特徴とする、乳酸菌含有試料中のセレウス菌の生菌数測定用NGKG寒天培地である。 本発明によれば、乳酸菌が存在するナチュラルチーズ、ヨーグルト、それらを原料とする食品、あるいは漬物等の試料中において、乳酸菌以外の細菌の生菌数を、乳酸菌の影響を受けずに、有効に測定することができる。特に、本発明は、セレウス菌数を測定する場合に、非常に有用である。 以下、具体例を示しながら、本発明を詳しく説明する。 本発明において対象となる乳酸菌含有試料としては、特に限定されないが、各種ナチュラルチーズ、ヨーグルト類、それらを原料とする食品や飲料、漬物類等が例として挙げられる。 本発明においては、乳酸菌以外の細菌数を測定するために、一定量の塩化リチウムを添加した寒天培地を使用することを特徴とするが、寒天培地としては、標準寒天培地等が例として挙げられる。 なお、標準寒天培地とは、アメリカ公衆衛生協会の「乳および乳製品の標準試験法」が採用するプレートカウント寒天培地を、食品衛生法が生菌数測定用標準寒天培地として採用したものである。 セレウス菌の測定の場合には、NGKG寒天培地を用いることが好ましい。NGKG寒天培地は、乳酸菌の発育を積極的に抑制しないため、乳酸菌が増殖し、酸を産生しセレウス菌の発育を抑制する。そのため、乳酸菌の発育を抑制するために、塩化リチウムをNGKG寒天培地に対して添加し、選択的に乳酸菌の発育を抑制して、セレウス菌数を測定することができる。 なお、NGKG寒天培地とは、セレウス菌を他の細菌から選択的に分離するためにポリミキシンとグリシンが添加され、さらにセレウス菌の一つの特徴であるレシチナーゼによる卵黄反応陽性を確認するために卵黄が添加されたセレウス菌の分離・鑑別培地である。 塩化リチウムの添加量は、寒天培地に対して、0.4%〜1.0%であり、特に、0.4%〜0.6%とすることが好ましい。塩化リチウムの量が0.4%未満となると、乳酸菌の発育抑制はなく、乳酸菌以外の細菌と乳酸菌が共に発育するので、正しい生菌数の測定が不可能となる。また、1.0%超えると、乳酸菌の発育が抑制されるが、乳酸菌以外の細菌の発育も抑制されるので、正しい生菌数の測定が不可能となる。 特に、セレウス菌の測定の場合には、塩化リチウムの添加量の上限を0.6%とすることが好ましいが、0.6%を超えると、セレウス菌の発育の抑制が見られ、正しいセレウス菌数の測定が不可能となる。 以下、本発明の実施例を、実験例や参考例とともに示すが、本発明はこれに限定されるものではない。(参考例1)(スターター乳酸菌を含む各種細菌に対するペニシリンGの薬剤感受性試験) 表1に示すチーズ製造等に利用されるスターター乳酸菌(No.1〜3)、食品由来黄色ブドウ球菌(No.4〜17)、腸球菌(No.18)、セレウス菌(No.19〜21)、リステリア菌(No.22〜27)、大腸菌(No.28)、大腸菌群(No.29、30)等の30菌株、及び日本化学療法学会標準菌株Staphylococcus aureusJC−1(No.31)、Escherichia coliJC−2(No.32)を用いて、寒天平板希釈法による薬剤感受性試験を実施し、最小発育阻止濃度(minimum inhibitory concentration:MIC)を測定した。 ペニシリンG100μg/ml溶液を2倍に連続希釈して、表1に示すペニシリンGを0〜0.0039μg/ml含有する15希釈段階のペニシリンG含有標準寒天平板培地を調製した。これらのペニシリンG含有標準寒天平板培地に、トリプトソイブイヨンで20〜48時間培養した各種供試菌を接種し、35℃、24時間培養後の発育の有無を観察した。結果を表1に示す。 表1に示すように、供試した3株のスターター乳酸菌のMICは0.05〜0.2μg/mlで、ペニシリンGを1μg/ml添加した標準寒天培地では発育が抑制された。 しかし、乳酸菌以外の一部の黄色ブドウ球菌やその他ブドウ球菌、リステリア菌のMICは0.78μg/ml以下であり、ペニシリンGを1μg/ml添加した標準寒天培地では、発育が抑制されることが予想される。また、供試した大腸菌及び大腸菌群、セレウス菌、黄色ブドウ球菌及びブドウ球菌の一部のMICは0.78以上であり、ペニシリンGを1μg/ml添加した標準寒天培地でも発育することが推測される。 すなわち、ペニシリンGを1μg/ml添加した標準寒天培地を使用した場合、乳酸菌以外のいくつかの汚染細菌の発育が抑制されることが明らかになった。 したがって、乳酸菌が存在する乳製品中の汚染細菌数の測定には、食品衛生法に規定するペニシリンGを1μg/ml添加した標準寒天培地を用いても、生菌数の測定は不可能であることが確認された。(実験例1)(スターター乳酸菌を含む34菌株の発育に及ぼす塩化リチウムの影響) 塩化リチウムを0、0.1、0.2、0.4、0.6、0.8、1.0%添加した標準寒天平板培地を調製した。この塩化リチウム含有標準寒天平板培地に、トリプトソイブイヨンで20〜48時間培養した、表2に示すスターター乳酸菌:4株(No.1〜4)、黄色ブドウ球菌:10株(No.5〜14)、黄色ブドウ球菌以外のブドウ球菌:5株(No.15〜19)、リステリア菌:6株(No.25〜30)、セレウス菌:3株(No.22〜24)、大腸菌:2株(No.31、32)、大腸菌群(No.33〜34):2株、腸球菌:1株(No.21)、ミクロコックス属菌:1株(No.20)の計34株を接種し、35℃、24〜48時間培養し、集落の形成を観察した。結果を表2に示す。 表2に示すように、供試した4株のスターター乳酸菌は、塩化リチウムを0.4%以上添加した標準寒天平板培地で発育が抑制された。これに対して、その他の細菌(黄色ブドウ球菌および黄色ブドウ球菌以外のブドウ球菌:15株、リステリア菌:6株、セレウス菌:3株、大腸菌および大腸菌群:4株、腸球菌:1株、ミクロコックス属菌:1株)の30菌株は、0.1%〜1.0%塩化リチウム含有標準寒天平板培地で発育し、塩化リチウムによる発育の抑制はほとんど見られなかった。 一方、乳製品の製造に利用されているスターター乳酸菌は塩化リチウム0.4%〜1.0%含有標準寒天平板培地で発育の抑制がみられ、実験に供試したスターター乳酸菌以外の種々の細菌は塩化リチウムを0.4%〜1.0%添加した標準寒天平板培地で発育することを確認した。 これらの結果から、塩化リチウムを0.4%〜1.0%添加した標準寒天培地を用いると、乳酸菌の影響を受けずに、各種細菌の生菌数を測定し得ることが明らかとなった。(実験例2)(腸球菌(Enterococcus faecalis, Enterococcus faecium)の発育に及ぼす塩化リチウムの影響) 塩化リチウムは腸球菌の発育に影響を及ぼすことが知られているので、表3に示す由来の異なるEnterococcus faecalis10株(No.1〜10)、Enterococcus faecium10株(No.11〜20)の計20株の腸球菌に対する影響を検討した。 20株の腸球菌をトリプトソイブイヨンで、35℃、24時間培養した。その培養液を塩化リチウム0、0.1、0.2、0.4、0.6、0.8、1.0%添加した標準寒天平板培地に接種し、35℃、48時間培養後の標準寒天平板培地上の集落の有無を観察した。結果を表3に示す。 表3に示すように、供試したEnterococcus faecali10株中8株は、1.0%塩化リチウム添加標準寒天平板培地で発育し、残る2株は0.8%塩化リチウム添加標準寒天平板培地で発育したが、1.0%塩化リチウム添加標準寒天平板培地では発育できなかった. 一方、供試したEnterococcus faecium10株中7株は1.0%塩化リチウム添加標準寒天平板培地で発育したが、3株は発育できなかった。発育できない3株中2株は0.8%、1株は0.6%塩化リチウム添加標準寒天培地で発育できなかったが、0.4%塩化リチウム添加標準寒天平板培地で発育した。 腸球菌の多くの菌株は0.6%以上の塩化リチウム添加標準寒天培地で発育するが、Enterococcus faeciumの1株は0.6%、0.8%および1.0%塩化リチウム添加標準寒天平板培地で発育の抑制がみられ、0.4%塩化リチウム添加標準寒天平板培地で発育した。 これらの結果から、塩化リチウムを標準寒天培地に対して0.6%未満添加した場合には、20株中19株の腸球菌は発育することが明らかとなった。(実験例3)(種々の乳酸菌の発育に及ぼす塩化リチウムの影響) 表4に示す乳酸菌14株(Lactococcus lactis subsp. lactis:5株(No.1〜5);Lactococcus lactis subsp. ceremoris:2株(No.6、7);Streptococcus thermophilus:3株(No.8〜10);Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus:1株(No.11)、Lactobacillus paracasei:1株(No.12)、Lactobacillus casei subsp. casei:1株(No.13)、Lactobacillus pantrum:1株(No.14))の発育に及ぼす塩化リチウムの影響について検討した。 Lactococcus lactisは、GAM培地で30℃、72時間培養し、Streptococcus thermophilusはST培地、LactobacillusはMRS培地で35℃、72時間培養後、塩化リチウム0,0.1,0.2,0.4,0.6,0.8,1.0%添加した標準寒天平板培地に接種し、35℃,48時間培養後の集落の形成を観察した。結果を表4に示す。 表4に示すように、供試した乳酸菌14株は1.0%塩化リチウム添加標準寒天培地で発育が全て抑制された。0.8%塩化リチウム添加標準寒天培地ではLactococcus lactis subsp. lactisの1株以外の発育が抑制された。0.6%塩化リチウム添加標準寒天培地ではLactococcus lactis subsp. lactisの1株、Lactobacillus pantrumの1株の計2株以外は発育が抑制された。 さらに、0.4%塩化リチウム添加標準寒天培地ではLactococcus lactis subsp. lactisの2株、Lactococcus lactis subsp. ceremorisの1株、Lactobacillus pantrumの1株の計4株以外の発育は抑制された。0.2%塩化リチウム添加標準寒天培地ではLactococcus lactis subsp. lactisの1株、Lactococcus lactis subsp. ceremorisの1株、Streptococcus thermophilusの2株、Lactobacillus paracaseiの1株、Lactobacillus casei subsp. Caseiの1株の計5株の発育は抑制された。また、0.1%塩化リチウム添加標準寒天培地ではLactococcus lactis subsp. ceremorisの1株、Streptococcus thermophilusの2株の計3株の発育は抑制された。しかし、塩化リチウム無添加標準寒天培地では供試した乳酸菌14株は全て発育した。 これらの結果から、標準寒天培地に塩化リチウムを添加することにより、乳酸菌の発育が抑制されることが明らかとなった。(実施例1)(乳酸菌が共存する乳製品の生菌数測定における0.5%塩化リチウム添加標準寒天培地による生菌数測定) 乳酸菌が共存している市販の「発酵バター」と「ナチュラルチーズ」(雪印乳業社製)の2検体について、塩化リチウム無添加と0.5%添加標準寒天培地の2種類の培地を用いて生菌数を測定した。 「発酵バター」は5℃に保存し、「ナチュラルチーズ」は25℃、24時間放置後5℃に保存したものを実験に供試した。生菌数の測定はフィルター付ストマッカー袋に各検体10gを秤量し、それに滅菌生理的食塩水90mlを添加し、約5分間ストマックして2種類の検体の乳剤を調製した。各検体は中試験管に9ml入りの滅菌生理的食塩水を用いて10−7まで10倍連続希釈した。 各希釈段階の試料1mlをそれぞれ4枚の滅菌ポリシャーレに注加し、その2枚に加熱溶解後約50℃に保温した塩化リチウム無添加標準寒天培地、残りの2枚に同様に加熱溶解後約50℃に保温した0.5%塩化リチウム添加標準寒天培地を注加後、十分混釈し、固形後に倒置して35℃、48時間培養後、発育した集落数を測定した。表5に結果を示す。 表5に示されるように、「発酵バター」中の生菌数は、塩化リチウム無添加標準寒天培地においては、希釈倍数10−1、10−2、10−3、10−4、10−5の培地では、それぞれ1g当たり560個、72個、11個、3個、0個であった。これに対して、0.5%塩化リチウム添加標準寒天培地では10−1から10−7まで、全て1g当たり0個であった。 これらの結果から、「発酵バター」には1g当たり5600個の乳酸菌の存在が確認され、さらに乳酸菌以外の汚染菌は存在していないことが示唆された。 また、「ナチュラルチーズ」では、塩化リチウム無添加標準寒天培地で10−1および10−2の平板には非常に小さい集落がびっしり発育しており、その上に大きい集落がそれぞれ24個および6個見られた。10−3の平板には1個の集落の形成が見られた。一方、0.5%塩化リチウム添加標準寒天培地では、10−1、10−2、10−3に、それぞれ25個、5個、1個の集落の形成が見られた。 これらの結果から、「ナチュラルチーズ」には乳酸菌が存在し、その上、汚染菌は1g当たり約250個共存していたことが測定できた。 これらの結果から、「発酵バター」中の生菌数を標準寒天培地で測定すると、1g当たり約10,000個の生菌が存在すると判断できるが、0.5%塩化リチウム添加標準寒天培地で測定すると、集落の形成が全く見られず、全ての生菌は乳酸菌であることが示唆された。 一方、「ナチュラルチーズ」では、1g当たり約1,000個の乳酸菌と乳酸菌以外の細菌が存在していることが示唆された。(実施例2)(塩化リチウム添加NGKG寒天培地のセレウス菌の選択性への影響) セレウス菌の選択培地であるNGKG寒天培地(日水製薬社製)に、表6に示すように、塩化リチウムを0、0.1、0.2、0.4、0.6、0.8、1.0%添加したNGKG寒天平板培地を調製した。次に、Lactococcus lactis subsp. lactis IFH576株の培養液とセレウス菌IFH137株の培養液の混合液(1ml当たりLactococcus lactis subsp. lactis:約103個、セレウス菌:約10個)を調製した。その混合液の0.1mlを各濃度の塩化リチウム含有NGKG寒天平板培地の表面に塗布し、35℃、24時間培養後、平板培地上の集落を観察した。結果を表6に示す。 塩化リチウム無添加および0.1%塩化リチウム添加NGKG寒天平板培地では、平板全体に小さい集落が密集し、平板全体が黄色に変化し、セレウス菌の集落は観察できなかった。塩化リチウム0.2、0.4、0.6、0.8%添加NGKG寒天平板培地では、大きなセレウス菌の集落がそれぞれ1、2、3および1個観察された。しかし、1.0%塩化リチウム添加NGKG平板培地ではセレウス菌の集落は観察されなかった。 この試料を塩化リチウム無添加の従来のNGKG寒天平板培地で検査すると、乳酸菌の影響で平板全体が黄色に変化し、セレウス菌の存在が確認されるにもかかわらず、セレウス菌陰性というような判定になる可能性が示唆された。 これらの結果から、乳酸菌が存在又は共存している検体からのセレウス菌の検査には0.4%〜0.6%の塩化リチウム添加NGKG寒天培地が有効であることが判明した。 本発明の生菌数測定方法は、乳酸菌が存在する試料中の乳酸菌以外の細菌、特にセレウス菌の生菌数を、乳酸菌の影響を受けずに測定することができる。本発明の測定方法を利用すれば、乳酸菌含有食品や飲料中の有害細菌による食中毒を、有効に防ぐことが可能となる。乳酸菌含有試料中の乳酸菌以外の細菌の生菌数測定において、塩化リチウムを0.4%〜1.0%添加した寒天培地を使用することを特徴とする生菌数測定方法。寒天培地が、標準寒天培地であることを特徴とする請求項1記載の生菌数測定方法。乳酸菌含有試料中のセレウス菌の生菌数測定において、塩化リチウムを0.4%〜0.6%添加したNGKG寒天培地を使用することを特徴とする生菌数測定方法。塩化リチウムを0.4%〜1.0%添加したことを特徴とする、乳酸菌含有試料中の乳酸菌以外の細菌の生菌数測定用寒天培地。塩化リチウムを0.4%〜0.6%添加したことを特徴とする、乳酸菌含有試料中のセレウス菌の生菌数測定用NGKG寒天培地。 【課題】 乳酸菌が存在する試料において、乳酸菌の影響を受けずに、乳酸菌以外の細菌の生菌数を測定する方法、特に、セレウス菌の生菌数を測定する方法を提供する。【解決手段】 乳酸菌含有試料中の乳酸菌以外の細菌の生菌数測定において、塩化リチウムを0.4%〜1.0%添加した寒天培地を使用する。寒天培地は、標準寒天培地が好ましい。細菌がセレウス菌である場合には、寒天培地はNGKG寒天培地であることが好ましい。塩化リチウムの添加量は、0.4%〜0.6%であることが好ましい。【選択図】 なし