生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_酒類処理用活性炭フィルター及びその使用方法
出願番号:2006098900
年次:2007
IPC分類:C12H 1/02,C12G 3/02,B01D 39/14


特許情報キャッシュ

光永 研一 山内 徹 遠藤 頼宏 JP 2007267695 公開特許公報(A) 20071018 2006098900 20060331 酒類処理用活性炭フィルター及びその使用方法 宝酒造株式会社 302026508 フタムラ化学株式会社 592184876 井上 昭 100087022 松田 大 100096415 古宮 一石 100106530 光永 研一 山内 徹 遠藤 頼宏 C12H 1/02 20060101AFI20070921BHJP C12G 3/02 20060101ALI20070921BHJP B01D 39/14 20060101ALI20070921BHJP JPC12H1/02C12G3/02 119TB01D39/14 M 6 OL 12 4B015 4B028 4D019 4B015KP03 4B015LG01 4B015LG02 4B015LG03 4B015NP08 4B028AC12 4B028AG06 4B028AP17 4B028AT07 4B028BC02 4D019AA03 4D019BA03 4D019BA20 4D019BB01 4D019BC05 4D019CA03 4D019CB04 4D019CB06 4D019CB09 本発明は、酒類処理用活性炭フィルター、並びに、その酒類処理用活性炭フィルターに酒類を通液させ、ろ過する酒類の処理方法に関する。 酒類、例えば清酒には、米や米麹等の原料に由来する物質であるフラビン類による着色、鉄との反応により生成したフェリクリシンによる着色、熟成中のメラノイジンによる着色、チロシン、トリプトファン、キヌレン酸やプロトカテキュ酸等が原因物質である日光着色などがある。一般に清酒の製造工程では、火入れ貯蔵前の生ろ過時や貯蔵後の精製時に、粉末活性炭や粒状活性炭を使用することにより着色物質を除去し、脱色している。また、活性炭素繊維(以下、ACFと略述する)による清酒の脱色も行われており、ACFを固定化した酒類処理装置は高温水再生による繰返し使用が可能であることから、粉末活性炭使用時に比べ廃棄物が発生しない点で優れている(特許文献1)。 しかしながら、ACFを固定化した酒類処理装置では、清酒に含まれる苦味成分、例えばチロソール、β−フェネチルアルコール等のアミノ酸誘導体を十分に低減することはできず、官能的に香味が良好な酒質とするにはまだ改善の必要があった。更に、ACFを固定化した酒類処理装置において、再生に高温水を使用するだけではACFに吸着した着色物質を十分に除去することはできず、再生後使用すると脱色能が低下してしまうため、脱色能を維持するには温苛性ソーダを使用したアルカリ再生を行う必要がある。 一方で、活性炭素繊維及び活性炭からなる活性炭成分にバインダーを混合した混合材料から成形された活性炭フィルターは、食品用途では浄水器用しかない(特許文献2)。酒類処理用として開発はなされていなかった。 このような状況から、酒類の脱色能に優れ、また、チロソール、β−フェネチルアルコール等の苦味物質を十分に低減でき、香味が良好な酒質を提供できる酒類処理装置の開発が望まれていた。特開平2−84167号公報特開2003−10614公報 本発明の目的は、酒類の脱色能に優れ、更に酒類中の苦味成分を低減でき、香味が良好な酒質を提供でき、また、繰返し再生使用が可能となる酒類処理用活性炭フィルター、並びに、その酒類処理用活性炭フィルターに酒類を通液させ、ろ過する酒類の処理方法を提供することにある。 本発明を概説すれば、本発明の第1の発明は、活性炭素繊維及び活性炭からなる活性炭成分にバインダーを混合した混合材料から成形された活性炭フィルターであって、混合材料の活性炭素繊維と活性炭の質量部比率を50:50〜20:80で混合してなることを特徴とする酒類処理用活性炭フィルターに関する。本発明の第2の発明は、第1の発明の酒類処理用活性炭フィルターにおいて、使用する活性炭が、粒状活性炭と粉末活性炭とを配合したものからなり、その配合比率を、粒状活性炭と粉末活性炭の質量部比率50:50としてなることを特徴とする第1の発明に記載の酒類処理用活性炭フィルターに関する。本発明の第3の発明は、第1の発明の酒類処理用活性炭フィルターにおいて、使用するバインダーが、フィブリル化した繊維を少なくとも含むバインダーであり、当該バインダーを、活性炭成分100質量部に対して3〜20質量部用い、前記フィブリル化した繊維の絡み合いにより、前記成形されたフィルターの形状保持がなされていることを特徴とする第1の発明又は第2の発明に記載の酒類処理用活性炭フィルターに関する。本発明の第4の発明は、第3の発明のフィブリル化した繊維が、微小繊維状セルロースである第3の発明に記載の酒類処理用活性炭フィルターに関する。本発明の第5の発明は、再生使用が可能である第1〜第4の発明のいずれか1の発明に記載の酒類処理用活性炭フィルターに関する。更に、本発明の第6の発明は、第1〜第4の発明のいずれか1の発明に記載の酒類処理用活性炭フィルターに酒類を通液させ、ろ過する酒類の処理方法に関する。 本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、活性炭素繊維及び活性炭からなる活性炭成分にバインダーを混合した混合材料から成形された活性炭フィルターにおいて、混合材料の活性炭素繊維と活性炭の質量部比率、活性炭のうち粒状活性炭と粉末活性炭の質量部比率、更に活性炭成分に対するバインダーの混合比率を工夫することにより、優れた酒類処理用活性炭フィルターが得られ、当該酒類処理用活性炭フィルターに清酒を通液させ、ろ過すると、従来のACF単独よりもよく脱色された清酒が得られ、また、清酒中の苦味成分を低減できることを見出し、本発明を完成させた。更に、酒類処理用活性炭フィルターを、温苛性ソーダを使用したアルカリ洗浄を行うことにより、繰返し再生使用が可能となることを見出し、本発明を完成させた。 本発明の酒類処理用活性炭フィルターに酒類を通液させ、ろ過すると、従来のACF単独よりもよく脱色された酒類が得られ、また、酒類中のチロソール、β−フェネチルアルコールといった苦味成分を低減することができ、香味が良好な酒質を提供することができる。また、本発明の酒類処理用活性炭フィルターは、温苛性ソーダを使用したアルカリ洗浄を行うことにより、繰返し再生使用が可能となる。 以下、本発明を具体的に説明する。 本発明の酒類処理用活性炭フィルターは、活性炭素繊維及び活性炭からなる活性炭成分にバインダーを混合した混合材料から成形された活性炭フィルターであって、混合材料の活性炭素繊維と活性炭の質量部比率を50:50〜20:80で混合してなることを特徴とする。 また、活性炭における、粒状活性炭と粉末活性炭の配合の質量部比率を、50:50とすることが好ましい態様の一つである。 更には、フィブリル化した繊維を少なくとも含むバインダーを、活性炭成分100質量部に対して3〜20質量部用い、前記フィブリル化した繊維の絡み合いにより、前記成形された活性炭フィルターの形状保持がなされていることが好ましい態様の一つである。 以下、第1〜第4の発明における活性炭成分とバインダーについて説明する。 活性炭成分は、活性炭素繊維及び活性炭で構成される。活性炭素繊維としては、ポリアクリロニトリル系、フェノール系、ピッチ系、レーヨン系等の有機繊維から形成されたカーボンファイバー(炭素繊維)を賦活することにより得られる公知のもので、長さが0.1〜5mmにカットされたものが好適であるが、その長さは特に限定されない。また、活性炭としては、粉末活性炭、粒状活性炭等、その大きさに限定されることなく、原料素材についても植物等の木質系、鉱物等の石炭系、石油系、合成樹脂系のいずれでもよく、賦活法についても塩化亜鉛賦活、水蒸気賦活等いずれでもよく、限定されるものではない。 バインダーは、フィブリル化した繊維が用いられる。フィブリル化は、アクリル繊維、アラミド繊維、セルロース繊維(パルプ)、レーヨン繊維等の繊維を、ビーターやリファイナーにより叩解して絡みやすい微細な枝を持たせた繊維をいう。バインダーとして微小繊維状セルロースを含むことが好ましい態様の一つである。例えば、商品名:セリッシュ〔ダイセル化学工業(株)製〕は、食品衛生法における食品添加物として認められているので、酒類処理用活性炭フィルターのバインダーとして安全で特に好適なものである。また、熱溶融性樹脂をバインダーに含めてもよい。この熱溶融性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等、熱可塑性合成樹脂からなり、その粉状又は粒状あるいは繊維状のものが適宜用いられる。更に、湿式成形の際の吸引ろ過温度あるいは乾燥温度で溶融するポリエステル繊維等の熱可塑性樹脂繊維としてもよい。バインダーの量は、少なすぎると成形性が低下し、多すぎると活性炭フィルターに占める活性炭成分の割合が減って酒類の脱色能が低下することから、活性炭成分100質量部に対して3〜20質量部が好適である。 本発明における酒類とは、清酒、焼酎、果実酒、リキュール等いずれでもよく、また、製造工程で脱色が必要とされるものであればいずれでもよく、限定されるものではない。 更に本発明を詳細に説明する。 第1の発明の酒類処理用活性炭フィルターは、活性炭成分にバインダーを混合した混合材料から成形されたもので、活性炭成分として活性炭素繊維と活性炭の質量部比率を50:50〜20:80で混合されている。 活性炭の脱色能をより有効に活用するために、活性炭の質量部比率は50以上とするのが好ましい。活性炭素繊維の質量部比率が50を超えると、脱色能に乏しくなり、また、20未満では、バインダーと絡みにくく、既述の成形された活性炭フィルターの成形性が低下することになる。 第2の発明の酒類処理用活性炭フィルターは、活性炭成分にバインダーを混合した混合材料から成形されたもので、活性炭成分として活性炭素繊維と活性炭の質量部比率を50:50〜20:80とし、更に、活性炭の配合比率を、粒状活性炭と粉末活性炭の質量部比率50:50で混合されている。 粉末活性炭の質量部比率を60超とすると、通液性が悪く、目詰まりしやすくなる。粒状活性炭と粉末活性炭の質量部比率は、60:40〜40:60とするのがよく、特に50:50が好ましい。 粒状活性炭と粉末活性炭の質量部比率を50:50とすることにより、効率よく脱色された酒類が得られ、また、酒類中のチロソール、β−フェネチルアルコールといった苦味成分を低減することができ、香味が良好な酒質とすることができる。 第3の発明の酒類処理用活性炭フィルターは、活性炭成分にバインダーを混合した混合材料から成形されたもので、活性炭成分として活性炭素繊維と活性炭の質量部比率を50:50〜20:80で混合されているか、あるいは、活性炭の配合比率を、粒状活性炭と粉末活性炭の質量部比率50:50で混合されていて、更に、フィブリル化した繊維を少なくとも含むバインダーを、活性炭成分100質量部に対して3〜20質量部用い、前記フィブリル化した繊維の絡み合いにより成形された活性炭フィルターの形状保持がなされている。 バインダーの量が3質量部未満では、形状が保持されないことになり好ましくない。バインダーの量が20質量部超では、脱色能の面から好ましくない。 第1〜第3の発明の酒類処理用活性炭フィルターの製造は、公知の湿式成形法にて行う。まず、活性炭素繊維及び活性炭からなる活性炭成分とバインダーを所定の割合で混合し、更に水を添加して混合スラリーを形成する。次いで、混合スラリーを吸引ろ過式成形型に充填し、該成形型に接続された真空ポンプでスラリーを吸引して成形型の内壁に付着させる。その後、加熱乾燥させて形状固定し、次いで脱型することにより活性炭フィルターを得る。 本発明では、酒類処理用活性炭フィルターの脱色能の評価を脱色率により行う。 脱色率は、ろ過処理前後の酒類の着色度の測定から、例えば清酒の場合では次式により算出する。 脱色率(%)={(A−B)/A}×100 但し、A:ろ過処理前清酒の着色度(50mmセルによる430nmでの吸光度、国税庁所定分析法による)、B:ろ過処理後清酒の着色度(前記と同様)である。 本発明では、酒類処理用活性炭フィルターがどの程度酒類中の苦味成分を低減できるかについての評価は、アミノ酸誘導体であるチロソール、及びβ−フェネチルアルコールを苦味成分の指標として行う。 従来のACFを固定化した酒類処理装置では、再生に高温水を使用するだけではACFに吸着した着色物質を十分に除去できず、再生後使用すると脱色能が低下してしまうため、脱色能を維持するには苛性ソーダを使用したアルカリ再生を行う必要がある。しかしながら、アルカリ再生によっても脱色能を完全に維持するには至らない。本発明の酒類処理用活性炭フィルターは、温苛性ソーダを使用したアルカリ洗浄を行うことにより、脱色能にほとんど低下は認められず、また、酒類中の苦味成分を低減できる性能においても維持されており、繰返し再生が可能である。なお、温苛性ソーダの温度は特に限定されるものではないが、40〜80℃の範囲で適宜選択してアルカリ洗浄を行えばよい。 別紙添付した図面の図1は、本発明による酒類処理用活性炭フィルターをハウジングに装着した1例を示す図である。 以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明がこれらの実施例に限定されるものではない。 活性炭素繊維として石炭ピッチ系カーボンファイバー賦活物(3mmにカットされたもの)〔フタムラ化学(株)製〕50質量部と、粒状活性炭として商品名:太閤活性炭SGP(平均粒径400μm)〔フタムラ化学(株)製〕25質量部と、粉末活性炭として商品名:太閤活性炭FC(平均粒径40μm)〔フタムラ化学(株)製〕25質量部と、バインダーとして商品名:セリッシュ〔ダイセル化学工業(株)製〕をビーティングによりフィブリル化した繊維10質量部を配合し、スラリー濃度2〜3質量%になるように水を混合後、常温下30分混合してスラリーを形成した。このスラリーを吸引ろ過式成形型に充填し、真空吸引してスラリーを成形型の内壁に付着させ、その後、温度100℃、常圧下にて16時間乾燥させ、その後に成形品を脱型し、内径34mm、外径60mm、長さ246mmの活性炭フィルター(本発明品1)を作製した。次に、活性炭素繊維として石炭ピッチ系カーボンファイバー賦活物(3mmにカットされたもの)〔フタムラ化学(株)製〕20質量部と、粒状活性炭として商品名:太閤活性炭SGP(平均粒径400μm)〔フタムラ化学(株)製〕40質量部と、粉末活性炭として商品名:太閤活性炭FC(平均粒径40μm)〔フタムラ化学(株)製〕40質量部と、バインダーとして商品名:セリッシュ〔ダイセル化学工業(株)製〕をビーティングによりフィブリル化した繊維10質量部を配合し、スラリー濃度2〜3質量%になるように水を混合後、常温下30分混合してスラリーを形成した。このスラリーを本発明品1と同様の方法で同型の活性炭フィルター(本発明品2)を作製した。一方、活性炭素繊維に活性炭を配合する効果を確認するための対照として、活性炭素繊維単独成分に、バインダーとして商品名:セリッシュ〔ダイセル化学工業(株)製〕をビーティングによりフィブリル化した繊維10質量部を配合し、スラリー濃度2〜3質量%になるように水を混合後、常温下30分混合してスラリーを形成した。このスラリーを本発明品1、本発明品2と同様の方法で同型の活性炭フィルター(対照)を作製した。 以上のように作製したそれぞれの活性炭フィルターに、清酒の生酒を通液させ、ろ過することにより得られたろ過処理後清酒の脱色率、及び苦味成分の除去率を測定した。更に、それぞれの活性炭フィルターを用いてろ過処理後清酒の官能評価試験を実施した。 以下に詳細を示す。 それぞれの活性炭フィルターをステンレス製のハウジングに装着し、生酒(アルコール濃度20v/v%、日本酒度+1)をポンプによって上向流で送液し、それぞれの活性炭フィルターに通液させ、ろ過を行った。生酒の通液速度はSV=47(370ml/min)とし、通液量はBV=173(81.7リットル)とした。なお、本発明でいうSVとは、通液の速度であり、空間速度(S.V.と略記)、あるいは液空間速度(LHSVと略記)のことであり、以下SVと略述する。また、本発明でいうBVとは、活性炭フィルター容量に対する比率のことであり、以下BVと略述する。例えば、BV=173とは、活性炭フィルター容量の173倍を意味する。ろ過処理時の液の温度は常温(25℃)以下とした。ろ過処理前後の生酒の着色度の測定を行い、脱色率を求めた。結果を表1に示す。 表1より、脱色率は、本発明品1で70.6%、本発明品2で75.0%であり、対照の脱色率43.0%に比べて非常に高い値を示し、良好に着色成分が低減されていた。すなわち、活性炭素繊維に活性炭を配合することにより酒類の脱色能に優れていることが確認された。 清酒中の苦味成分として、チロソール及びβ−フェネチルアルコールについて、高速液体クロマトグラフィー(以下、HPLCと略述する)を用いて分析した。HPLCはWaters600〔ウォーターズ社製〕を、カラムはCAPCELL PAK C18(4.6mmφ×250mm)〔(株)資生堂製〕を、溶媒は0.1%トリフルオロ酢酸含有の20%アセトニトリルを使用し、流速1ml/minとしてイソクラティック溶出分析、検出波長は210nmとした。各標準物質のスタンダードによる検量線を作成し、生酒中の各成分の溶出ピーク面積により濃度を定量計算した。チロソールについての結果を表2に、β−フェネチルアルコールについての結果を表3に示す。 表2及び表3より、生酒中の苦味成分であるチロソール及びβ−フェネチルアルコールの除去率は、本発明品1でチロソール39.9%、β−フェネチルアルコール33.9%であり、本発明品2でチロソール54.5%、β−フェネチルアルコール44.0%であり、対照のチロソール8.9%、β−フェネチルアルコール6.6%に比べて非常に高い値を示し、苦味成分を低減することができた。すなわち、活性炭素繊維に活性炭を配合することにより酒類の脱色能に優れていることのみならず、酒類中の苦味成分の低減にも優れていることが確認された。 本発明品1、本発明品2、対照のそれぞれの活性炭フィルターを用いてろ過処理を行った後の生酒について、4点法(1:優、2:良、3:可、4:不可)にて、酒類のパネラー12名による官能評価試験を実施した。平均点により評価した。結果を表4に示す。 表4より、本発明品1の評点は、味、香り、総合の順に1.3、1.5、1.2であり、本発明品2の評点は、味、香り、総合の順に1.5、1.5、1.4であり、ともに対照の評点より有意に良い結果となった。また、本発明品1、本発明品2とも味が丸い、味が柔らかい、味がきれいであるという良い評価を得ていたが、対照ではやや雑味がある、やや味がざらつく、香りにややクセありという評価であった。すなわち、活性炭素繊維に活性炭を配合することにより官能的にも優れた酒類を得られることが確認された。 実施例1で使用した活性炭フィルター本発明品1を用いて、アルカリ再生による繰返し使用試験を実施した。再生を10回実施し、実施例1と同様の条件により、生酒の通液処理を11回実施した。生酒を通液した後の再生条件は、表5に従って温苛性ソーダによるアルカリ洗浄を行った。清酒の通液処理回数ごとにろ過処理前後の生酒の着色度の測定を行い、脱色率を求めた。結果を表6に示す。 表6より、通液処理回数ごとの脱色率を見てみると、1回目処理(再生1)の70.6%に比べ、10回目処理(再生10)でも70.5%であり、脱色率の低下はほとんどなく、脱色能は維持されていた。すなわち、活性炭素繊維に活性炭を配合した活性炭フィルターは、温苛性ソーダを使用したアルカリ洗浄を行うことにより、酒類の脱色能にほとんど低下は認められないことが確認された。 官能評価試験を、実施例1と同様にして行った。結果を表7に示す。 表7より、味、香り、総合の各評価において、1回目処理(再生1)、5回目処理(再生5)、10回目処理(再生10)を行った評点は、味で1.3、1.4、1.3、香りで1.4、1.4、1.3、総合で1.2、1.3、1.3とほぼ同等であった。また、再生1、再生5、再生10のすべてにおいて、味が丸い、味がすっきりしている、香味のバランスが良いといった同等の評価であり、5回目処理、10回目処理を行っても、1回目処理後と遜色のない同等の酒質評価であった。すなわち、本発明の活性炭フィルターは、温苛性ソーダを使用したアルカリ洗浄を行うことにより、再生で繰返し使用してもろ過処理後の酒質に影響を与えず、酒類中の苦味成分を低減できる性能は維持されており、繰返し再生使用が可能であることが確認された。 本発明の酒類処理用活性炭フィルターにより、着色成分が効率よく除去され、更に苦味成分が低減された香味の優れた酒類を得ることができ、また、温苛性ソーダを使用したアルカリ洗浄により、繰返し再生使用が可能であることから本発明は極めて有用である。 本発明の酒類処理用活性炭フィルターに酒類を通液させ、ろ過することにより、効率よく脱色され、かつ苦味成分が低減された酒類を得ることができるので、本発明は醸造の分野において優れた酒類の処理方法である。本発明による酒類処理用活性炭フィルターをハウジングに装着した1例を示す図である。 活性炭素繊維及び活性炭からなる活性炭成分にバインダーを混合した混合材料から成形された活性炭フィルターであって、混合材料の活性炭素繊維と活性炭の質量部比率を50:50〜20:80で混合してなることを特徴とする酒類処理用活性炭フィルター。 請求項1に記載の酒類処理用活性炭フィルターにおいて、使用する活性炭が、粒状活性炭と粉末活性炭とを配合したものからなり、その配合比率を、粒状活性炭と粉末活性炭の質量部比率50:50としてなることを特徴とする請求項1記載の酒類処理用活性炭フィルター。 請求項1に記載の酒類処理用活性炭フィルターにおいて、使用するバインダーが、フィブリル化した繊維を少なくとも含むバインダーであり、当該バインダーを、活性炭成分100質量部に対して3〜20質量部用い、前記フィブリル化した繊維の絡み合いにより、前記成形された活性炭フィルターの形状保持がなされていることを特徴とする請求項1又は2記載の酒類処理用活性炭フィルター。 請求項3に記載のフィブリル化した繊維が、微小繊維状セルロースであることを特徴とする請求項3記載の酒類処理用活性炭フィルター。 再生使用が可能であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の酒類処理用活性炭フィルター。 請求項1〜4のいずれか1項に記載の酒類処理用活性炭フィルターに酒類を通液させ、ろ過することを特徴とする酒類の処理方法。 【課題】 効果の優れた酒類処理用活性炭フィルター、並びに、その酒類処理用活性炭フィルターで酒類をろ過する酒類の処理方法を提供する。【解決手段】 活性炭素繊維及び活性炭からなる活性炭成分にバインダーを混合した混合材料から成形された活性炭フィルターであって、混合材料の活性炭素繊維と活性炭の質量部比率を50:50〜20:80で混合してなる酒類処理用活性炭フィルター。当該活性炭フィルターに酒類を通液させ、ろ過する酒類の処理方法。当該フィルターは再生使用が可能である。【効果】 酒類中の苦味成分を低減することができ、脱色された香味が良好な酒質が得られる。【選択図】 なし


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