生命科学関連特許情報

タイトル:再公表特許(A1)_虚血又は虚血再灌流によって起こる心機能障害若しくは心筋障害の予防又は治療剤
出願番号:2006090699
年次:2008
IPC分類:A61K 31/4188,C07D 491/107,A61P 9/04,A61P 9/00,A61P 9/06


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矢部 千尋 岩田 和実 JP WO2006090699 20060831 JP2006303056 20060221 虚血又は虚血再灌流によって起こる心機能障害若しくは心筋障害の予防又は治療剤 株式会社三和化学研究所 000144577 矢部 千尋 504318256 特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所 110000659 矢部 千尋 岩田 和実 JP 2005044889 20050222 A61K 31/4188 20060101AFI20080627BHJP C07D 491/107 20060101ALI20080627BHJP A61P 9/04 20060101ALI20080627BHJP A61P 9/00 20060101ALI20080627BHJP A61P 9/06 20060101ALI20080627BHJP JPA61K31/4188C07D491/107A61P9/04A61P9/00A61P9/06 AP(BW,GH,GM,KE,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,NL,PL,PT,RO,SE,SI,SK,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV,LY,MA,MD,MG,MK,MN,MW,MX,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PG,PH,PL,PT,RO,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,SY,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,YU,ZA,ZM,ZW 再公表特許(A1) 20080724 2007504724 18 4C050 4C086 4C050AA04 4C050AA07 4C050BB05 4C050CC18 4C050EE02 4C050FF03 4C050GG03 4C050HH01 4C086AA01 4C086AA02 4C086CB22 4C086MA01 4C086MA04 4C086NA14 4C086ZA36 本発明は、 6-フルオロ-2',5'- ジオキソスピロ[クロマン-4,4'-イミダゾリジン]-2- カルボキサミドの新たな医薬用途に関するものである。 虚血又は虚血再灌流によって惹起される疾患としては、特に心筋梗塞や狭心症などの急性冠疾患によって引き起こされる心疾患イベントや心臓死が知られているが、その予後が不良な場合が少なくない。これらの疾患に対する薬物治療は、血圧コントロール、血栓溶解など血行動態のコントロールやその確保に限られ、心臓あるいは心筋を保護するための根本的な治療薬がないのが現状である。 日本人の冠動脈疾患は年々増加し、虚血性心疾患に対するわが国の手術件数は、2000年度には2万例を超えた。虚血性心疾患に対する冠血行再建の方法には、内科的治療法である経皮的冠動脈形成術(PTCA)と外科手術による冠動脈バイパス術(CABG)がある。その目的は、心筋梗塞への進展および突然死の予防、生命予後の改善である。PTCAによる再灌流療法は有効とされているが、早期に再狭窄、再梗塞が発現することが多い。末期的虚血性心筋症に至れば心臓移植が適応になるが、わが国では移植の適応はきわめて困難で、世界的にも心移植でのドナー不足は深刻である。 現状の薬物療法としては、虚血性心疾患の原因となる高血圧症、高脂血症又は動脈硬化症に対する治療薬である、カルシウム拮抗剤やアンジオテンシン受容体拮抗剤のような降圧剤、HMG-CoA還元酵素阻害剤のような高脂血症治療剤などを投与し、冠動脈の狭窄や閉塞を予防する試みがなされている。しかし、これらの薬物療法は、確実な有効性を見出せない現状にある。また、心不全に至った場合は、強心剤などが有効とされるが、心筋の仕事量を増加させ、効果は一時的とされている。従って、急性心筋梗塞や不整脈などで急性冠疾患に至った場合の有効な治療薬はなく、早期再灌流の実行に加え、心筋を保護する薬剤による介入が必要とされている。しかし、早期再灌流の実行においては、虚血時間が長引き心筋細胞の障害が明らかになった時点で再灌流を行うと、心筋障害を修復するどころか、かえって増悪させることがある(再灌流心筋障害)。そのため、虚血又は虚血再灌流による障害をいかに予防するかという問題が多くの注目を浴びている。このような虚血や虚血再灌流による心臓における臓器障害の成因として、細胞内ATP欠乏説、Ca過負荷説やフリーラジカル説が従来から広く唱えられている。 さらに、心臓弁膜症に対する弁置換術又は弁形成術、先天性の心異常(心室性中隔欠損症,心房中隔欠損症,肺動脈狭窄症など)の治療には、人工心肺下体外循環を用いた開心術が行われる。この開心術中に心筋は酸欠状態に陥るため、心筋壊死を防止するために手術時間が制限される。さらに、開心術負荷あるいは開心術後の血液再開による障害(虚血再灌流障害)により、重症不整脈や心収縮力の低下(心不全状態)を来たすため、抗不整脈剤や強心剤などの投与が必要で、集中治療室での厳格な管理の必要性が開心術の大きな問題となっている。 最近、アルドース還元酵素阻害剤であるzopolrestat が、糖尿病性心筋症患者の心機能を改善したとの報告があった(Johnson BF: Diabetes Care 27,448,2004)。しかし、zopolrestatは、肝障害などの副作用発現のためにその後開発が中止されている。 一方、本出願人会社において発見された(2S,4S)-6-フルオロ-2',5'- ジオキソスピロ[クロマン-4,4'-イミダゾリジン]-2- カルボキサミド (一般名:フィダレスタット,開発コード:SNK-860) は、強力なアルドース還元酵素阻害作用を有し、長期間にわたる服用でも高い安全性を有する化合物として開発され、現在、糖尿病性神経障害治療薬として世界的に臨床試験が進められている。 フィダレスタットについては、特開昭61−200991に糖尿病性神経障害に対する用途が、特開平6−135968には老化に伴う諸疾患に対する用途が、特開平7−242547には糖尿病性単純網膜症に対する用途が、特開平8−231549には糖尿病性角膜症に対する用途が記載されている。また、類似構造のヒダントイン誘導体については、特開平4−173791に循環器系疾患に対する用途が記載されているが、公開技法2006−500058に報告されているように、フィダレスタットには、このような薬理作用はない。特開昭61−200991特開平6−135968特開平7−242547特開平8−231549特開平4−173791Johnson BF: Diabetes Care 27,448,2004公開技法2006−500058 前述のように、虚血又は虚血再灌流によって起こる心機能障害若しくは心筋障害については、医療現場から、有効性かつ安全性の高い治療法の確立が強く求められている。特に、内科療法及び外科手術療法の安全性の面から、長期間服用が可能となる安全性の高い薬物療法の登場が強く求められているのが現状である。本発明は、このような背景を考慮してなされたものであり、既存の治療薬とは異なる機序で有効性を示し、長期服用が可能な虚血又は虚血再灌流によって起こる心機能障害若しくは心筋障害の予防又は治療剤を提供することを課題とする。 そこで、本発明者らは、汎用されている心臓の虚血・再灌流障害モデルを用いて、(2S,4S)-6-フルオロ-2',5'- ジオキソスピロ[クロマン-4,4'-イミダゾリジン]-2- カルボキサミド(一般名フィダレスタット)を評価した。その結果、当該薬物が、虚血又は虚血再灌流によって起こる心機能障害若しくは心筋障害に対して有効であることが判明した。即ち、本発明は、6-フルオロ-2',5'- ジオキソスピロ[クロマン-4,4'-イミダゾリジン]-2- カルボキサミド(ラセミ体も含む)を有効成分とする、虚血又は虚血再灌流によって起こる心機能障害、心筋障害の予防又は治療剤である。 虚血又は虚血再灌流によって起こる心機能障害若しくは心筋障害とは、心臓における虚血又は虚血再灌流障害である。具体的には、再灌流性不整脈、心イベント若しくは心臓死が挙げられる。これらは、不安定狭心症や心筋梗塞などの急性冠不全によって起こるもの、その治療に対する経皮的冠動脈形成術(PTCA)によって起こるもの、人工心肺下体外循環における心筋の虚血再灌流障害によって起こるもの、又は、人工心肺を用いない冠動脈バイパス手術などの開胸心臓手術によって起こるものに分けられる。 本発明の虚血又は虚血再灌流によって起こる心機能障害若しくは心筋障害の予防又は治療剤は、他のAR阻害剤と比べると、低用量で著しい効果を示すのが特徴であり、安全性の面からも、全く問題がない。即ち、本発明は、長期の投与が可能な、虚血又は虚血再灌流によって起こる心機能障害若しくは心筋障害の予防又は治療剤を提供するものである。 以下に、本発明を更に詳細に説明する。 本発明化合物は、通常の製剤技術により、例えば、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、液剤、又はシロップ剤として、経口的に、或いは注射剤若しくは坐剤等として非経口的に投与することができる。製剤化については、固形剤の場合には、製剤化に際して薬理学的に認容し得る賦形剤、例えば澱粉、乳糖、精製白糖、グルコース、結晶セルロース、カルボキシセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、燐酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、アラビアゴム等を用いることができ、必要であれば滑沢剤、結合剤、崩壊剤、被覆剤、着色剤等を配合することができる。また、液剤の場合には、安定剤、溶解助剤、懸濁化剤、乳化剤、緩衝剤、保存剤等を用いることができる。投与量は、症状、年齢、投与法、剤型等により異なるが、通常の場合には、成人に対し本発明化合物として1日当たり 1 - 200mg の範囲内、好ましくは 1-100mg を1日当たり1回又は数回に分けて連日投与するのが好ましい。 本発明においては、このような治療薬の開発にとって重要なヒトでの有効性を予測するために、野生型マウスのみならず、ヒト型ARをマウスに遺伝的に高発現させたヒトARトランスジェニックマウス(hAR―TG)を作製し、検討した。尚、SNK-860の比較対照として、epalrestatとzopolrestatを使用した。1.薬効薬理試験方法実験には、7-9 週齢の野生型マウス(BDF-1)およびhAR-TGの心臓を用いた。これらのマウスから50 mg/kg i.p. ペントバルビタール麻酔下にて心臓を摘出し、生理食塩水にて氷冷した。摘出心をLangendorff 装置(Model IH-1 Type 844, HUGO SACHS ELEKTRONIK, Germany)により灌流圧 70 mmHg にて 20 分間灌流して安定化させた。その後、心機能測定下に30 分間灌流後、灌流液を30分間完全停止し、更に60分間再灌流することにより、虚血・再灌流負荷を行った。灌流液は5.55 mM glucose と 2 mM Na-pyruvate を含有するKrebs-Henseleit (KH) buffer を用いた。心機能評価は、左心室拡張末期圧 (LVEDP)および左心室収縮期圧最大上昇速度(dP/dt max) により行った。これらは、右心室上部に装着した電極より3 volt, 420 beats/min のペーシング下に、左心室内に挿入したバルーンに連結した圧トランスデューサーにより測定し、そのデータを4チャネル記録装置(OMUNIACE RT-3300, NEC, Japan)にて算出した。 AR 阻害薬は、図1に示すように、全虚血開始 15 分前に10 分間灌流液に添加した。各阻害薬( 1μM SNK-860:SNK, 1-10μM zopolrestat:ZOP, 10μM epalrestat:EPA)はDMSOに溶解し、灌流液中のDMSO終濃度は 0.05% とした。対照実験の灌流液中にも同濃度のDMSOを添加した。心筋細胞の傷害は再灌流60分間の creatine kinase (CK) 総漏出量を指標とし、再灌流60分後の心筋 ATP含量はluciferaseを用いたbioluminescence法(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)により、それぞれ定量した。尚、hAR-TGについては、littermate(LM:hAR非発現同産マウス)を、薬物無投与のコントロールマウスとして使用した。2.結果(1) 野生型マウスに対する効果野生型マウスを用いた検討において、虚血・再灌流後に認められる顕著な左心室拡張末期圧(LVEDP) の上昇は、1μM SNK-860又は1μM zopolrestat 添加群の摘出心で有意に改善していた(図2)。再灌流直後の左心室収縮期圧最大上昇速度(dP/dt max)の低下は、3種類のAR阻害薬のいずれの添加群でも有意に改善していたが、1μM SNK-860の添加群で最も顕著な効果を認めた(図3)。心筋細胞からのCK漏出量については、10μM epalrestatおよび1μM SNK-860添加群に有意の低下を認めたが、1μM zopolrestat 添加群では効果を認めなかった(図4)。(2) hAR-TGマウスに対する効果図5〜8に示すごとく、hAR-TG(TG)では、再灌流時に認められる心機能の低下(LVEDP の上昇,dP/dt maxの低下)、灌流液中へのCK漏出、及び心筋ATP含量の減少は、LMと比較してそれぞれ有意に憎悪していた。尚、hAR-TGの心臓における AR 活性は、 LMの約 1.7 倍の活性を示していた。hAR-TG(TG)では、LVEDP の上昇、dP/dt maxの低下については、1μM SNK-860、 10μM zopolrestat、または10μM epalrestatの添加群では有意な改善が見られた(図5,6)。一方、灌流液中へのCK漏出、心筋ATP含量減少については、10μM zopolrestat 添加群においては、有意な改善は認められなかったが、1μM SNK-860の添加群では、10μM epalrestatの添加群と同等の改善効果を示した(図7,8)。3.考察 これらの結果は、SNK-860が非糖尿病状態においても、心臓における虚血再灌流障害による心機能の悪化および心筋の破壊を完全に阻止したことを示している。また、zopolrestatやepalrestatのような他のAR阻害薬は、高濃度において部分的な効果が見られたに過ぎず、SNK-860はより低濃度で完全な効果を示し、作用強度の点で極めて優れていた。実験プロトコールを示す図である。野生型マウスにおける、LVEDP上昇に対するAR阻害剤の効果を示す図である。野生型マウスにおける、dP/dt maxの低下に対するAR阻害剤の効果を示す図である。野生型マウスにおける、心筋細胞からのCK漏出量に対するAR阻害剤の効果を示す図である。hAR-TGマウスにおける、LVEDP上昇に対するAR阻害剤の効果を示す図である。hAR-TGマウスにおける、dP/dt maxの低下に対するAR阻害剤の効果を示す図である。hAR-TGマウスにおける、心筋細胞からのCK漏出量に対するAR阻害剤の効果を示す図である。hAR-TGマウスにおける、心筋ATP含量に対するAR阻害剤の効果を示す図である。 6-フルオロ-2',5'- ジオキソスピロ[クロマン-4,4'-イミダゾリジン]-2- カルボキサミドを有効成分とする、虚血又は虚血再灌流によって起こる心機能障害若しくは心筋障害の予防又は治療剤。 虚血又は虚血再灌流によって起こる心機能障害若しくは心筋障害が、再灌流性不整脈、心イベント若しくは心臓死である、請求項1に記載の予防又は治療剤 虚血又は虚血再灌流によって起こる心機能障害若しくは心筋障害が、不安定狭心症や心筋梗塞などの急性冠不全によって起こるもの、あるいはその治療に対する経皮的冠動脈形成術(PTCA)によって起こるものである、請求項1に記載の予防又は治療剤。 虚血又は虚血再灌流によって起こる心機能障害若しくは心筋障害が、人工心肺下体外循環における心筋の虚血再灌流障害によって起こるもの、あるいは人工心肺を用いない冠動脈バイパス手術などの開胸心臓手術によって起こるものである、請求項1に記載の予防又は治療剤。 化合物が、(2S,4S)-6-フルオロ-2',5'- ジオキソスピロ[クロマン-4,4'-イミダゾリジン]-2- カルボキサミド(一般名フィダレスタット)である、請求項1〜4のいずれかに記載の予防又は治療剤。 【課題】既存の治療薬とは異なる機序で有効性を示し、長期服用が可能な、虚血又は虚血再灌流によって起こる、心機能障害若しくは心筋傷害の予防又は治療剤を提供とすることを課題とする。【解決手段】 本発明は、6-フルオロ-2',5'- ジオキソスピロ[クロマン-4,4'-イミダゾリジン]-2- カルボキサミド、中でもフィダレスタットを有効成分とする、虚血又は虚血再灌流によって起こる心機能障害若しくは心筋障害の予防又は治療剤である。虚血又は虚血再灌流によって起こる心機能障害若しくは心筋障害としては、再灌流性不整脈、心イベント若しくは心臓死等があげられる。


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