タイトル: | 公開特許公報(A)_新規微生物 |
出願番号: | 2006081919 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | C12N 1/20,B09C 1/10,C02F 3/34 |
辻 浩二 宮地 伸也 JP 2007252285 公開特許公報(A) 20071004 2006081919 20060324 新規微生物 財団法人石油産業活性化センター 590000455 コスモ石油株式会社 000105567 特許業務法人アルガ特許事務所 110000084 有賀 三幸 100068700 高野 登志雄 100077562 中嶋 俊夫 100096736 村田 正樹 100117156 山本 博人 100111028 的場 ひろみ 100101317 守屋 嘉高 100121153 大野 詩木 100134935 松田 政広 100130683 野中 信宏 100140497 辻 浩二 宮地 伸也 C12N 1/20 20060101AFI20070907BHJP B09C 1/10 20060101ALI20070907BHJP C02F 3/34 20060101ALI20070907BHJP JPC12N1/20 AC12N1/20 FC12N1/20 DB09B3/00 EC02F3/34 Z 6 OL 12 4B065 4D004 4D040 4B065AA01X 4B065AC12 4B065AC20 4B065BA23 4B065BB04 4B065BB29 4B065BC03 4B065BC26 4B065BC31 4B065BC47 4B065BC50 4B065CA56 4D004AA41 4D004AB05 4D004CA19 4D004CC07 4D040DD03 4D040DD11 本発明は、石油製品由来の炭化水素類、特に、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類を効率よく分解する微生物に関する。 石油製品由来の炭化水素類を含む土壌中の地下水を浄化する技術として、微生物による浄化技術が検討されている。 しかしながら、一般的に微生物による石油製品由来の炭化水素類の分解速度は比較的遅く、石油製品由来の炭化水素類を含む土壌中の地下水が浄化されるには数ヶ月から数年の期間が必要となっており、短期間で分解できる微生物が求められている。 土壌や地下水中には石油製品由来の炭化水素類を分解する微生物が含まれていることはよく知られている(非特許文献1参照)。 これまでにいくつかの石油製品由来の炭化水素類を分解する微生物種について報告がなされており、ベンゼン、トルエン、あるいはキシレン等の芳香族炭化水素類を分解する微生物も得られている(特許文献1、非特許文献2参照)。しかし、前記微生物のベンゼン、トルエン、キシレン等の成分ごとに対しての分解性は確認されているが、石油製品由来の芳香族炭化水素類であれば、通常複数の芳香族炭化水素類が混在している場合が多く、ベンゼン、トルエン及びキシレンの3成分が共存している状況下で、それぞれがどの程度分解されるかを確認するまでには至っていない。 また、別の微生物に関して、ベンゼン、トルエン及びキシレンが共存している状況下では、トルエンとキシレンだけが分解され、ベンゼンについては全く分解されないことが報告されている(非特許文献3参照)。特開平11−266858号公報バイオレメディエ−ションエンジニア 〜設計と応用〜、第104−114頁,エヌ・ティー・エス 1997年1月23日発行Lee, S.K., Appl Microbiol Biotechnol, 56, 270−275 (2001)Prenafeta-Boldu., Applied and Environmental Microbiology., 2660−2665 (2002) 土壌や地下水には、通常複数の石油系炭化水素類が共存している場合が多いが、上述したとおり、ベンゼン、トルエン及びキシレンの3成分が共存している状況下でこれら全ての成分を効率よく分解する能力を有する微生物は知られていない。 従って、本発明は、複数の石油系炭化水素類が共存する状況下でも、芳香族炭化水素類、特にベンゼン、トルエン及びキシレンを効率的に分解できる新規微生物を提供することを目的とする。 本発明者らは、このような状況に鑑み、既知の微生物及び未知の微生物を日本国内各地の土壌からスクリーニングした結果、カプリアビダス(Cupriavidus)属に属する微生物が石油系炭化水素類、特にベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類に対する分解能力が高く、複数の石油系炭化水素類が共存する土壌や地下水においても、ベンゼン、トルエン及びキシレン全てを効率良く分解できることを見出し、本発明を完成されるに至った。 すなわち、本発明は、石油製品由来の炭化水素類を分解する能力を有するカプリアビダス(Cupriavidus)属に属する微生物を提供するものである。 本発明の微生物は、ガソリン、灯油、軽油、重油、潤滑油などの石油製品由来の炭化水素類、特にベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類を効率よく分解できる。また、本発明の微生物は、ベンゼン、トルエン及びキシレンの3成分が共存している状況下でも、これらの成分全てを分解できるので、当該微生物を用いることにより、石油製品由来の炭化水素類を含有する土壌や地下水を効率よく浄化することができる。 本発明において石油製品とは、ガソリン、灯油、軽油、重油、潤滑油等をいい、石油製品由来の炭化水素類としては、例えばアルカン、アルケン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の単環芳香族炭化水素類、又は、ナフタレン、アンスラセン等の多環芳香族炭化水素類が挙げられる。 本発明の微生物は、カプリアビダス(Cupriavidus)属に属し、石油製品由来の炭化水素類を効率よく分解する微生物である。斯かるカプリアビダス属に属する微生物としては、石油製品由来の炭化水素類を分解する能力を有する微生物であれば特に制限されないが、芳香族炭化水素類を分解する能力を有する微生物が好ましく、特にベンゼン、トルエン及びキシレンのうちの2種又は3種の混合物を分解する能力を有する微生物が好ましく、さらに、ベンゼン、トルエン及びキシレンの共存下における3者に対する合計の分解率が50〜100%、特に90〜100%であるものが好ましい。具体的には、本発明者らが埼玉県内の土壌から単離したC−102株、C−112株であり、このうちC−112株が好ましい。 C−102株、C−112株は次の菌学的性質を有する。(1)C−112株の菌学的性質(2)C−102株の菌学的性質 これらの菌学的性質、リボソームの16S rDNAの塩基配列及びその相同性から、(BRENNER, (D.J), KRIEG, (N.R), STALEY, (J.T)and GARRITY, (G.M), Bergey's manual of Systematic Bacteriology. Vol. Two, The Proteobacteria, Part C The Alpha-, Beta-, Delta-, and Epsilonproteobacteria. 2005, Springer)を参考にして分類・同定した結果、C−112株はカプリアビダス(Cupriavidus)属に属すると同定された。しかしながら、種レベルでは硝酸塩を還元し、インドールを産生せず、ウレアーゼ及びプロテアーゼ等の活性を示さず、トルエンを資化し、グルコースを資化しない、41℃で生育性を示す、でんぷんを加水分解しない点がカプリアビダス属に含まれる既知の種と異なるため、新規な微生物と同定しカプリアビダス属 C−112株として、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに寄託した(FERM P-20820)。 また、C−102株についても、その菌学的性質、リボソームの16S rDNAの塩基配列及びその相同性から、カプリアビダス(Cupriavidus)属に属すると同定された。しかしながら、種レベルでは、硝酸塩を還元し、インドールを産生せず、ウレアーゼ及びプロテアーゼ等の活性を示さず、トルエンを資化し、グルコースを資化しない、でんぷんを加水分解しない点がカプリアビダス属に含まれる既知の種と異なり、更に細胞の大きさ、41℃で生育性を示さない点がC−112株とも異なるため、新規な微生物と同定しカプリアビダス属 C−102株として、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに寄託した(FERM P-20819)。 C−102株及びC−112株は、カプリアビダス属に属し、硝酸塩を還元し、インドールを産生せず、ウレアーゼ及びプロテアーゼ等の活性を示さず、トルエンを資化し、グルコースを資化しない、でんぷんを加水分解しないと云う性質を有する新種であると考えられる。C−102株及びC−112株の類縁菌としては、これらの性質を有するものが含まれる。 本発明の新規微生物を培養するための培地は、特に制限されず、微生物を培養するための培地で、かつ石油製品由来の炭化水素類の分解を妨げない培地であればいかなる組成の培地も用いることができる。炭素源としては、例えばベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;これらを含むガソリン等の石油製品;酢酸、ピルビン酸等の有機酸;等が挙げられる。窒素源としては、例えば硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、尿素等の無機窒素源;ペプトン、肉エキス、酵母エキス、カゼイン等の有機窒素源等が挙げられる。更に、無機塩類等を適宜添加することもできる。 培養条件としては、特に制限されず、一般に微生物が死滅しない培養条件であればよく、例えばpH6〜8、温度20〜35℃の条件下で、1〜60日間好気的に培養するのが好ましい。 本発明の新規微生物を用いて、石油製品由来の炭化水素類を含有する土壌又は土壌中の地下水を浄化する方法としては、微生物を石油製品由来の炭化水素類を含有する土壌や地下水に添加すればよい。添加する微生物は、培養により得られた培養液をそのまま用いてもよく、遠心分離等により集菌したものを用いてもよい。また、凍結乾燥処理したものや、公知の担体に担時させたものを用いてもよい。 以下、本発明について実施例をあげて具体的に説明するが、本発明はこれらによって何等限定されるものではない。実施例1 菌の取得: 表7に示す培地1を内径21mmの試験管に10mL入れ、121℃で15分滅菌処理し液体培地を作成した。これに埼玉県をはじめとして国内で採取した150試料の土壌をそれぞれ1g添加し、試験管振とう機により、30℃、250rpmの条件で好気的に培養を1年間行った。炭素源として、市販ガソリン10μLを3日間〜1週間ごとに添加した。1〜2ヶ月毎に培養液1mLを培地1へ新たに植え継いだ。生育の認められた培養液を栄養平板培地へ100μL塗布し、30℃で2日間培養を行った。出現したコロニーをそれぞれ白金耳に拾い、上記の培地1に植菌し、市販ガソリンを添加した条件下で2週間培養を行った。生育の認められた試料については、再び栄養平板培地へ塗布し、単一なコロニーを形成させた。この様にして、石油系炭化水素に対する分解能力が高い微生物としてC−102株、C−112株を取得した。実施例2 ベンゼン、トルエン、キシレンの分解試験: 全容50mlのガラス製遠心管に、培地1を10mL、C−112株、C−102株の培養液1mLを遠心分離し、上澄み液を除いた後、滅菌水で再度1mLに調製した微生物懸濁液を接種した後、ベンゼン、トルエン及びキシレンを0.04mgずつ添加して、30℃、100rpmにて15時間培養を行った。その後、培養液中に含まれる残存したベンゼン、トルエン、キシレンを測定することにより分解能力を測定した。 基質の残存量は、培養後の培養液10mLを塩化ナトリウム3g入りの20mLのバイアル瓶に導入、密閉し、バイアル瓶を80℃で30分加熱し、加熱後の気相部をガスクロマトグラフィーにより定量して求めた。基質の残存量と添加量を比較して、その減少率から分解率を求めた。また、対照試験として、実施例1における方法で取得する過程の初期で得られた土壌に含まれる微生物を用い、ベンゼン、トルエン、キシレンの分解能力を確認した。 15時間後のベンゼン、トルエン及びキシレンの残存量を測定した結果、表8に示すとおり、C−112株、C−102株を添加した系では、特にベンゼンに対して高い分解能力を有することが示された。また、ベンゼン、トルエン及びキシレンが共存する環境下においても、これら3成分同時に分解可能であることが示された。表中の数値は添加した基質に対する減少率を百分率で示している。石油製品由来の炭化水素類を分解する能力を有するカプリアビダス(Cupriavidus)属に属する微生物。石油製品由来の炭化水素類が芳香族炭化水素類である請求項1記載の微生物。芳香族炭化水素類が、ベンゼン、トルエン及びキシレンから選ばれる1種以上を含むものである請求項1又は2に記載の微生物。芳香族炭化水素類が、ベンゼン、トルエン及びキシレンから選ばれる2種又は3種の混合物である請求項1又は2に記載の微生物。硝酸塩を還元し、インドールを産生せず、ウレアーゼ及びプロテアーゼ等の活性を示さず、トルエンを資化し、グルコースを資化せず、でんぷんを加水分解しないものである請求項1〜4のいずれか1項記載の微生物。微生物が、カプリアビダスC−102株(FERM P-20819)、カプリアビダスC−112株(FERM P-20820)又はこれらの類縁菌である請求項1〜5の何れか1項に記載の微生物。 【課題】複数の石油系炭化水素類が共存する状況下でも、芳香族炭化水素類、特にベンゼン、トルエン及びキシレンを効率的に分解できる新規微生物の提供。【解決手段】石油製品由来の炭化水素類を分解する能力を有するカプリアビダス(Cupriavidus)属に属する微生物。【選択図】なし