生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル組成物
出願番号:2006080507
年次:2007
IPC分類:C08G 65/26,C07D 307/20,A23L 1/03


特許情報キャッシュ

田中 俊伯 小池 豊美 大前 薫 JP 2007254584 公開特許公報(A) 20071004 2006080507 20060323 ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル組成物 花王株式会社 000000918 古谷 聡 100087642 溝部 孝彦 100076680 持田 信二 100091845 義経 和昌 100098408 田中 俊伯 小池 豊美 大前 薫 C08G 65/26 20060101AFI20070907BHJP C07D 307/20 20060101ALI20070907BHJP A23L 1/03 20060101ALN20070907BHJP JPC08G65/26C07D307/20A23L1/03 6 OL 8 4B035 4C037 4J005 4B035LC01 4B035LC04 4B035LG07 4B035LK17 4C037DA07 4J005AA12 4J005BB00 4J005BC00 本発明は、高品質なポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル組成物及びその製造法に関する。 ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルは、ソルビトール及び/又はその無水物と脂肪酸との部分エステルの混合物であるソルビタン脂肪酸エステル(モノエステル、トリエステル)にエチレンオキサイドを付加させたもので、非イオン界面活性剤として有用であり、化粧品、洗浄剤等に広く使用されている。 また、2003年には新規指定の食品添加物として、ポリソルベート20(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウリン酸エステル)、ポリソルベート60(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアリン酸エステル)、ポリソルベート65(ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリステアリン酸エステル)、ポリソルベート80(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレイン酸エステル)が指定されている。 品質の良好なポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの製造法としては、例えば特許文献1に、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルに対して、特定のリン酸化合物を添加することにより、加熱着色が改良されることが記載されている。しかし、これら従来の製造法で得られるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルは、風味が悪く、食品添加物としては不十分である。 また、特許文献2にはポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの風味を改善する方法が開示されている。 ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを食品添加物として用いる場合には様々な規格を満たす必要があり、また、外観が透明で低温安定性に優れるものが要望されている。しかし、かかるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルについてはこれまで報告されていない。特開平4−108781号公報特開2005−23227号公報 本発明の課題は、外観が透明で低温安定性に優れ、更に食品添加物として用いることができる程に高品質なポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル組成物及びその製造法を提供することにある。 本発明は、ソルビタン脂肪酸エステルにエチレンオキサイドを付加させて得られるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル組成物であって、該ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル組成物中の脂肪酸残基組成が、パルミチン酸残基量45〜75重量%、ステアリン酸残基量15〜45重量%であり、且つ、該組成物中の水分量が1重量%以下、20℃のpHが4.5〜6.0であるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル組成物、並びにその製造法を提供する。 本発明により、外観が透明で低温安定性に優れた高品質なポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル組成物を提供することができ、特に食品添加物として有用なポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル組成物を提供することができる。 本発明におけるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル組成物中の脂肪酸残基組成は、全脂肪酸残基中のパルミチン酸残基量が45〜75重量%、ステアリン酸残基量が15〜45重量%である。食品添加物として用いる場合には、全脂肪酸残基中のパルミチン酸残基量は60〜69重量%が好ましく、60〜68重量%がより好ましい。また、ステアリン酸残基量は31〜40重量%が好ましく、32〜40重量%がより好ましい。脂肪酸残基組成は上記パルミチン酸残基やステアリン酸残基以外にもミリスチン酸残基等のその他の高級脂肪酸残基が多少含まれていても構わない。具体的には10重量%以内、より好ましくは5重量%以内である。 尚、本発明において、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル組成物の脂肪酸残基組成は、以下の方法で分析することができる。 50mlサンプル管にポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル組成物を0.2g計り取る。1/2N水酸化カリウム水溶液を5ml加え、100℃、1時間の条件で鹸化分解を行う。その後、水5mlを加え、pH1になるまで2N塩酸水溶液を加える。ジエチルエーテル10mlで抽出を3回行い、抽出されたジエチルエーテル層を水洗する。その後ジエチルエーテルを留去した後、ガスクロマトグラフィーにて脂肪酸残基組成を分析する。 本発明のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル組成物の製造原料であるソルビタン脂肪酸エステルは、ソルビトール及び/又はソルビタンと、脂肪酸とを、窒素ガス気流下、通常160〜280℃の温度で、生成水を留去させながら反応させることにより合成することができる。より具体的には、特開2002−284773号に記載の方法等が利用できる。 原料脂肪酸としては、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル組成物の脂肪酸残基組成と同様の組成を有するものを用いることが好ましい。また、原料脂肪酸の鹸化価は、209〜214が好ましく、食品添加物として用いる場合は210〜212が更に好ましい。 ソルビトールはエステル化反応時にソルビトール自身の分子内脱水反応が起こり、水1分子の脱水でソルビタンに、水2分子の脱水でソルバイドになる。従って、本発明で対象となるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル組成物は、ソルビトールエステル、ソルビタンエステル、ソルバイドエステルの混合物にエチレンオキサイドを付加反応させたものである。 ソルビタン脂肪酸エステルを得る際の脂肪酸の使用量は、ソルビトール及び/又はソルビタンに対してモル比で、脂肪酸:ソルビトール及び/又はソルビタン=(0.5〜5):1が好ましく、(0.8〜3.5):1が特に好ましい。 ソルビトール及び/又はソルビタンと脂肪酸との反応で得られるソルビタン脂肪酸エステルは、ソルビトール及び/又はソルビタンと脂肪酸との部分エステルの混合物であるが、これらの中で本発明に用いるソルビタン脂肪酸エステルは、平均エステル化度においてモノエステル又はトリエステルが好ましく、モノエステルがより好ましい。また、ソルビタン脂肪酸エステルの鹸化価は、145〜156が好ましく、146〜153が更に好ましい。 本発明のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル組成物は、ソルビタン脂肪酸エステルにエチレンオキサイドを付加させることにより得られる。エチレンオキサイドの平均付加モル数は、15〜30が好ましく、特に食品添加物として用いる場合は20〜25が更に好ましく、20〜22が特に好ましい。 ソルビタン脂肪酸エステルへのエチレンオキサイドの付加反応は、従来から知られる触媒を使用することができ、特に限定されないが、例えば水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、ナトリウムメチラート等のアルカリ金属触媒、脂肪酸石鹸類等が使用される。エチレンオキサイド付加反応の反応温度は80〜200℃が好ましく、140〜180℃が更に好ましい。また、反応圧力は0.1〜0.8MPaが好ましく、0.1〜0.6MPaが更に好ましい。 本発明のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル組成物は、外観が透明で優れた低温安定性を得る観点から、水分量が1重量%以下で、20℃のpHが4.5〜6.0である。食品添加物として用いる場合は、水分量は0.5重量%以下が好ましく、20℃のpHは5.0〜6.0が好ましい。 尚、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル組成物の水分量は、JIS K 0068の方法に準じて測定し、pHは、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル組成物を5重量%水溶液に希釈して20℃の条件下、ガラス電極(東亜電波製)で測定する。 本発明のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル組成物は、上記のようなソルビタン脂肪酸エステルにエチレンオキサイドを付加して得られる反応粗製物を、脱色処理、中和処理、水蒸気処理、蒸留処理及び水分調整から選ばれる少なくとも1種の処理を行なうことにより得ることができる。特に脱色処理及び/又は中和処理後に、必要により水蒸気処理を行うか又は蒸留処理を行い、更に水分を調整して、水分量が1重量%以下、20℃のpHが4.5〜6.0のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル組成物を得ることが好ましい。 脱色処理は、一般に過酸化水素等の脱色剤を用いて行う。脱色剤の添加量は、35%過酸化水素水の場合、反応粗製物100重量部に対し、0.01〜1.0重量部が好ましく、0.05〜0.5重量部が更に好ましい。脱色処理の温度は、70〜100℃が好ましく、処理時間は0.5〜2時間が好ましい。この脱色処理では同時に反応粗製物が中和される。 この脱色処理の代わりに、あるいは脱色処理と併用して、中和処理を行うこともできる。中和処理に用いられる中和剤は特に限定されないが、例えばリン酸、硫酸等の鉱酸、あるいは酢酸、乳酸、クエン酸等の有機酸を使用することができ、これら2種以上を混合あるいは併用してもよい。中和剤は、反応粗製物のpHが4.5〜6.0となるように添加することが好ましい。 水蒸気処理は、ソルビタン脂肪酸エステルにエチレンオキサイドを付加して得られる反応粗製物に、水蒸気を流通等で接触させることにより該反応粗製物中の不純物等を水蒸気と共に系外へ除去する処理である。 また蒸留処理は、ソルビタン脂肪酸エステルにエチレンオキサイドを付加して得られる反応粗製物に、水を添加して該反応粗製物中の不純物等を水と共に蒸留により系外へ除去する処理である。 水蒸気処理又は蒸留処理で使用する水蒸気又は水の量は、反応粗製物100重量部に対して6〜20重量部が好ましく、8〜12重量部がより好ましい。水蒸気処理又は蒸留処理の温度は、処理を効率良く行い、工業的に設備にかかる負荷を小さくする観点から、60〜200℃が好ましく、80〜160℃が更に好ましい。水蒸気処理は常圧又は減圧下で行うことができるが、一般的には減圧下で行う方が効率的であり、その場合の圧力は27kPa以下が好ましく、7kPa以下が更に好ましい。また、蒸留処理は、減圧下で行い、圧力は27kPa以下が好ましく、7kPa以下が更に好ましい。 水分調整は、水分量が1重量%以下となるように、減圧下で脱水することが好ましい。この場合の温度は110〜130℃が好ましく、115〜120℃が更に好ましい。また、圧力は2.7kPa以下が好ましく、1.3kPa以下が更に好ましい。 例中の「%」は、特記しない限り「重量%」である。 実施例1 パルミチン酸/ステアリン酸=63%/37%(鹸化価=210.6)に調整した脂肪酸541.3g、70%ソルビト−ル水溶液(JIS品)442.0g、48%水酸化ナトリウム4.2g、75%リン酸1.6gを温度計、攪拌器、窒素管、留出/減圧管を装着した2L四つ口フラスコにとり、窒素ガスにより反応系内を十分に窒素置換し、空気を追い出した後、加熱し245℃の温度で精製水を留去させながら5時間エステル化反応を行い、濾過により触媒を除去した。生成物の鹸化価は149.8mgKOH/gであった。この方法で得られたソルビタン脂肪酸エステル480.8gと48%水酸化カリウム0.47gをオートクレ−ブ(容量5リットル)にとり、110℃、2.7kPa(20torr)で1時間脱水した後、155℃でエチレンオキサイド991gを0.4MPaで圧入しながら2.5時間で付加反応を行った。 反応終了後、同一温度で1時間熟成を行った後、90℃まで冷却した。後処理として、得られた反応粗製物に35%過酸化水素水溶液2.86gを加えて1時間処理した。その後90℃、2.7kPa(20torr)で0.5時間脱水し、88%乳酸0.48gで0.5時間かけて中和し、水分0.1%、pH(20℃)5.2のポリオキシエチレン(EO平均付加モル数=22)ソルビタン脂肪酸エステル組成物を得た。 実施例2 実施例1において、乳酸中和後に水を7.0g添加する以外の条件は同じにして、エチレンオキサイドの付加反応を行った。その結果、水分0.5%、pH(20℃)5.2のポリオキシエチレン(EO平均付加モル数=22)ソルビタン脂肪酸エステル組成物を得た。 実施例3 実施例1において、88%乳酸0.44gを用いて中和した以外は、実施例1と同様にして、水分0.1%、pH(20℃)5.9のポリオキシエチレン(EO平均付加モル数=22)ソルビタン脂肪酸エステル組成物を得た。 比較例1 実施例1において、原料脂肪酸組成がパルミチン酸/ステアリン酸=50%/50%(鹸化価=207.8)であるソルビタン脂肪酸エステル(エマゾ−ルS-10V 花王製 鹸化価=150.9)を484.4g用いる以外は、実施例1と同様にして、水分0.1%、pH(20℃)5.5のポリオキシエチレン(EO平均付加モル数=22)ソルビタン脂肪酸エステル組成物を得た。 比較例2 実施例1において、乳酸中和後に水を38.5g添加する以外は、実施例1と同様にして、水分2.7%、pH(20℃)5.5のポリオキシエチレン(EO平均付加モル数=22)ソルビタン脂肪酸エステル組成物を得た。 比較例3 実施例1において、88%乳酸0.38gを用いて中和した以外は、実施例1と同様にして、水分0.1%、pH(20℃)6.3のポリオキシエチレン(EO平均付加モル数=22)ソルビタン脂肪酸エステル組成物を得た。 実施例1〜3及び比較例1〜3で得られたポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル組成物について、前記の方法で脂肪酸残基組成を分析し、また、下記方法で外観及び流動性を評価した。結果を表1に示す。 <外観の評価法> 外観はUV-1600(島津製)10mmセルにて常温で透過率を測定し、下記基準で評価した。 透過率95%以上:○ 透過率95%未満80%以上(薄い白濁):△ 透過率80%未満(白濁):× <流動性の評価法> ガラス容器に対象物をとり、22℃の恒温水槽に入れ2時間後に容器を傾けることにより、下記基準で評価した。 すばやく流動する:○ 飴状で流動しにくい:△ かろうじて流動するか若しくは流動しない:× ソルビタン脂肪酸エステルにエチレンオキサイドを付加させて得られるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル組成物であって、該ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル組成物中の脂肪酸残基組成が、パルミチン酸残基量45〜75重量%、ステアリン酸残基量15〜45重量%であり、且つ、該組成物中の水分量が1重量%以下、20℃のpHが4.5〜6.0であるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル組成物。 ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル組成物中の脂肪酸残基組成が、パルミチン酸残基量60〜69重量%、ステアリン酸残基量31〜40重量%である請求項1記載ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル組成物。 組成物中の水分量が0.5重量%以下、20℃のpHが5.0〜6.0である請求項1又は2記載のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル組成物。 ソルビタン脂肪酸エステルの鹸化価が145〜156である請求項1〜3いずれかに記載のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル組成物。 エチレンオキサイドの平均付加モル数が15〜30である請求項1〜4いずれかに記載のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル組成物。 原料脂肪酸中のパルミチン酸含有量が45〜75重量%、ステアリン酸含有量が15〜45重量%であるソルビタン脂肪酸エステルに、エチレンオキサイドを付加させて得られる反応粗製物に対し、脱色処理、中和処理、水蒸気処理、蒸留処理及び水分調整から選ばれる少なくとも1種の処理を行なう、請求項1〜5いずれかに記載のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル組成物の製造法。 【課題】 外観が透明で低温安定性に優れ、更に食品添加物として用いることができる程に高品質なポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル組成物及びその製造法の提供。 【解決手段】 ソルビタン脂肪酸エステルにエチレンオキサイドを付加させて得られるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル組成物であって、該ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル組成物中の脂肪酸残基組成が、パルミチン酸残基量45〜75重量%、ステアリン酸残基量15〜45重量%であり、且つ、該組成物中の水分量が1重量%以下、20℃のpHが4.5〜6.0であるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル組成物、並びにその製造法。【選択図】 なし


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特許公報(B2)_ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル組成物

生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル組成物
出願番号:2006080507
年次:2012
IPC分類:C08G 65/26,C07D 307/20


特許情報キャッシュ

田中 俊伯 小池 豊美 大前 薫 JP 5089899 特許公報(B2) 20120921 2006080507 20060323 ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル組成物 花王株式会社 000000918 古谷 聡 100087642 溝部 孝彦 100076680 持田 信二 100091845 義経 和昌 100098408 田中 俊伯 小池 豊美 大前 薫 20121205 C08G 65/26 20060101AFI20121115BHJP C07D 307/20 20060101ALI20121115BHJP JPC08G65/26C07D307/20 C08G 65/00−65/28 C08L 1/00−101/16 B01F 17/00−17/56 A23L 1/00−1/035 特開平04−333666(JP,A) 特開2005−023227(JP,A) 特開2001−200069(JP,A) 特表2001−519487(JP,A) 特開平02−296849(JP,A) 6 2007254584 20071004 8 20081205 井津 健太郎 本発明は、高品質なポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル組成物及びその製造法に関する。 ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルは、ソルビトール及び/又はその無水物と脂肪酸との部分エステルの混合物であるソルビタン脂肪酸エステル(モノエステル、トリエステル)にエチレンオキサイドを付加させたもので、非イオン界面活性剤として有用であり、化粧品、洗浄剤等に広く使用されている。 また、2003年には新規指定の食品添加物として、ポリソルベート20(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウリン酸エステル)、ポリソルベート60(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアリン酸エステル)、ポリソルベート65(ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリステアリン酸エステル)、ポリソルベート80(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレイン酸エステル)が指定されている。 品質の良好なポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの製造法としては、例えば特許文献1に、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルに対して、特定のリン酸化合物を添加することにより、加熱着色が改良されることが記載されている。しかし、これら従来の製造法で得られるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルは、風味が悪く、食品添加物としては不十分である。 また、特許文献2にはポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの風味を改善する方法が開示されている。 ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを食品添加物として用いる場合には様々な規格を満たす必要があり、また、外観が透明で低温安定性に優れるものが要望されている。しかし、かかるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルについてはこれまで報告されていない。特開平4−108781号公報特開2005−23227号公報 本発明の課題は、外観が透明で低温安定性に優れ、更に食品添加物として用いることができる程に高品質なポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル組成物及びその製造法を提供することにある。 本発明は、ソルビタン脂肪酸エステルにエチレンオキサイドを付加させて得られるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル組成物であって、該ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル組成物中の脂肪酸組成が、パルミチン酸量45〜75重量%、ステアリン酸量15〜45重量%であり、且つ、該組成物中の水分量が1重量%以下、20℃のpHが4.5〜6.0であるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル組成物、並びにその製造法を提供する。 本発明により、外観が透明で低温安定性に優れた高品質なポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル組成物を提供することができ、特に食品添加物として有用なポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル組成物を提供することができる。 本発明におけるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル組成物中の脂肪酸組成は、全脂肪酸中のパルミチン酸量が45〜75重量%、ステアリン酸量が15〜45重量%である。食品添加物として用いる場合には、全脂肪酸中のパルミチン酸量は60〜69重量%が好ましく、60〜68重量%がより好ましい。また、ステアリン酸量は31〜40重量%が好ましく、32〜40重量%がより好ましい。脂肪酸組成は上記パルミチン酸やステアリン酸以外にもミリスチン酸等のその他の高級脂肪酸が多少含まれていても構わない。具体的には10重量%以内、より好ましくは5重量%以内である。 尚、本発明において、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル組成物の脂肪酸組成は、以下の方法で分析することができる。 50mlサンプル管にポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル組成物を0.2g計り取る。1/2N水酸化カリウム水溶液を5ml加え、100℃、1時間の条件で鹸化分解を行う。その後、水5mlを加え、pH1になるまで2N塩酸水溶液を加える。ジエチルエーテル10mlで抽出を3回行い、抽出されたジエチルエーテル層を水洗する。その後ジエチルエーテルを留去した後、ガスクロマトグラフィーにて脂肪酸組成を分析する。 本発明のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル組成物の製造原料であるソルビタン脂肪酸エステルは、ソルビトール及び/又はソルビタンと、脂肪酸とを、窒素ガス気流下、通常160〜280℃の温度で、生成水を留去させながら反応させることにより合成することができる。より具体的には、特開2002−284773号に記載の方法等が利用できる。 原料脂肪酸としては、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル組成物の脂肪酸組成と同様の組成を有するものを用いることが好ましい。また、原料脂肪酸の鹸化価は、209〜214が好ましく、食品添加物として用いる場合は210〜212が更に好ましい。 ソルビトールはエステル化反応時にソルビトール自身の分子内脱水反応が起こり、水1分子の脱水でソルビタンに、水2分子の脱水でソルバイドになる。従って、本発明で対象となるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル組成物は、ソルビトールエステル、ソルビタンエステル、ソルバイドエステルの混合物にエチレンオキサイドを付加反応させたものである。 ソルビタン脂肪酸エステルを得る際の脂肪酸の使用量は、ソルビトール及び/又はソルビタンに対してモル比で、脂肪酸:ソルビトール及び/又はソルビタン=(0.5〜5):1が好ましく、(0.8〜3.5):1が特に好ましい。 ソルビトール及び/又はソルビタンと脂肪酸との反応で得られるソルビタン脂肪酸エステルは、ソルビトール及び/又はソルビタンと脂肪酸との部分エステルの混合物であるが、これらの中で本発明に用いるソルビタン脂肪酸エステルは、平均エステル化度においてモノエステル又はトリエステルが好ましく、モノエステルがより好ましい。また、ソルビタン脂肪酸エステルの鹸化価は、145〜156が好ましく、146〜153が更に好ましい。 本発明のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル組成物は、ソルビタン脂肪酸エステルにエチレンオキサイドを付加させることにより得られる。エチレンオキサイドの平均付加モル数は、15〜30が好ましく、特に食品添加物として用いる場合は20〜25が更に好ましく、20〜22が特に好ましい。 ソルビタン脂肪酸エステルへのエチレンオキサイドの付加反応は、従来から知られる触媒を使用することができ、特に限定されないが、例えば水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、ナトリウムメチラート等のアルカリ金属触媒、脂肪酸石鹸類等が使用される。エチレンオキサイド付加反応の反応温度は80〜200℃が好ましく、140〜180℃が更に好ましい。また、反応圧力は0.1〜0.8MPaが好ましく、0.1〜0.6MPaが更に好ましい。 本発明のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル組成物は、外観が透明で優れた低温安定性を得る観点から、水分量が1重量%以下で、20℃のpHが4.5〜6.0である。食品添加物として用いる場合は、水分量は0.5重量%以下が好ましく、20℃のpHは5.0〜6.0が好ましい。 尚、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル組成物の水分量は、JIS K 0068の方法に準じて測定し、pHは、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル組成物を5重量%水溶液に希釈して20℃の条件下、ガラス電極(東亜電波製)で測定する。 本発明のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル組成物は、上記のようなソルビタン脂肪酸エステルにエチレンオキサイドを付加して得られる反応粗製物を、脱色処理、中和処理、水蒸気処理、蒸留処理及び水分調整から選ばれる少なくとも1種の処理を行なうことにより得ることができる。特に脱色処理及び/又は中和処理後に、必要により水蒸気処理を行うか又は蒸留処理を行い、更に水分を調整して、水分量が1重量%以下、20℃のpHが4.5〜6.0のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル組成物を得ることが好ましい。 脱色処理は、一般に過酸化水素等の脱色剤を用いて行う。脱色剤の添加量は、35%過酸化水素水の場合、反応粗製物100重量部に対し、0.01〜1.0重量部が好ましく、0.05〜0.5重量部が更に好ましい。脱色処理の温度は、70〜100℃が好ましく、処理時間は0.5〜2時間が好ましい。この脱色処理では同時に反応粗製物が中和される。 この脱色処理の代わりに、あるいは脱色処理と併用して、中和処理を行うこともできる。中和処理に用いられる中和剤は特に限定されないが、例えばリン酸、硫酸等の鉱酸、あるいは酢酸、乳酸、クエン酸等の有機酸を使用することができ、これら2種以上を混合あるいは併用してもよい。中和剤は、反応粗製物のpHが4.5〜6.0となるように添加することが好ましい。 水蒸気処理は、ソルビタン脂肪酸エステルにエチレンオキサイドを付加して得られる反応粗製物に、水蒸気を流通等で接触させることにより該反応粗製物中の不純物等を水蒸気と共に系外へ除去する処理である。 また蒸留処理は、ソルビタン脂肪酸エステルにエチレンオキサイドを付加して得られる反応粗製物に、水を添加して該反応粗製物中の不純物等を水と共に蒸留により系外へ除去する処理である。 水蒸気処理又は蒸留処理で使用する水蒸気又は水の量は、反応粗製物100重量部に対して6〜20重量部が好ましく、8〜12重量部がより好ましい。水蒸気処理又は蒸留処理の温度は、処理を効率良く行い、工業的に設備にかかる負荷を小さくする観点から、60〜200℃が好ましく、80〜160℃が更に好ましい。水蒸気処理は常圧又は減圧下で行うことができるが、一般的には減圧下で行う方が効率的であり、その場合の圧力は27kPa以下が好ましく、7kPa以下が更に好ましい。また、蒸留処理は、減圧下で行い、圧力は27kPa以下が好ましく、7kPa以下が更に好ましい。 水分調整は、水分量が1重量%以下となるように、減圧下で脱水することが好ましい。この場合の温度は110〜130℃が好ましく、115〜120℃が更に好ましい。また、圧力は2.7kPa以下が好ましく、1.3kPa以下が更に好ましい。 例中の「%」は、特記しない限り「重量%」である。 実施例1 パルミチン酸/ステアリン酸=63%/37%(鹸化価=210.6)に調整した脂肪酸541.3g、70%ソルビト−ル水溶液(JIS品)442.0g、48%水酸化ナトリウム4.2g、75%リン酸1.6gを温度計、攪拌器、窒素管、留出/減圧管を装着した2L四つ口フラスコにとり、窒素ガスにより反応系内を十分に窒素置換し、空気を追い出した後、加熱し245℃の温度で精製水を留去させながら5時間エステル化反応を行い、濾過により触媒を除去した。生成物の鹸化価は149.8mgKOH/gであった。この方法で得られたソルビタン脂肪酸エステル480.8gと48%水酸化カリウム0.47gをオートクレ−ブ(容量5リットル)にとり、110℃、2.7kPa(20torr)で1時間脱水した後、155℃でエチレンオキサイド991gを0.4MPaで圧入しながら2.5時間で付加反応を行った。 反応終了後、同一温度で1時間熟成を行った後、90℃まで冷却した。後処理として、得られた反応粗製物に35%過酸化水素水溶液2.86gを加えて1時間処理した。その後90℃、2.7kPa(20torr)で0.5時間脱水し、88%乳酸0.48gで0.5時間かけて中和し、水分0.1%、pH(20℃)5.2のポリオキシエチレン(EO平均付加モル数=22)ソルビタン脂肪酸エステル組成物を得た。 実施例2 実施例1において、乳酸中和後に水を7.0g添加する以外の条件は同じにして、エチレンオキサイドの付加反応を行った。その結果、水分0.5%、pH(20℃)5.2のポリオキシエチレン(EO平均付加モル数=22)ソルビタン脂肪酸エステル組成物を得た。 実施例3 実施例1において、88%乳酸0.44gを用いて中和した以外は、実施例1と同様にして、水分0.1%、pH(20℃)5.9のポリオキシエチレン(EO平均付加モル数=22)ソルビタン脂肪酸エステル組成物を得た。 比較例1 実施例1において、原料脂肪酸組成がパルミチン酸/ステアリン酸=50%/50%(鹸化価=207.8)であるソルビタン脂肪酸エステル(エマゾ−ルS-10V 花王製 鹸化価=150.9)を484.4g用いる以外は、実施例1と同様にして、水分0.1%、pH(20℃)5.5のポリオキシエチレン(EO平均付加モル数=22)ソルビタン脂肪酸エステル組成物を得た。 比較例2 実施例1において、乳酸中和後に水を38.5g添加する以外は、実施例1と同様にして、水分2.7%、pH(20℃)5.5のポリオキシエチレン(EO平均付加モル数=22)ソルビタン脂肪酸エステル組成物を得た。 比較例3 実施例1において、88%乳酸0.38gを用いて中和した以外は、実施例1と同様にして、水分0.1%、pH(20℃)6.3のポリオキシエチレン(EO平均付加モル数=22)ソルビタン脂肪酸エステル組成物を得た。 実施例1〜3及び比較例1〜3で得られたポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル組成物について、前記の方法で脂肪酸組成を分析し、また、下記方法で外観及び流動性を評価した。結果を表1に示す。 <外観の評価法> 外観はUV-1600(島津製)10mmセルにて常温で透過率を測定し、下記基準で評価した。 透過率95%以上:○ 透過率95%未満80%以上(薄い白濁):△ 透過率80%未満(白濁):× <流動性の評価法> ガラス容器に対象物をとり、22℃の恒温水槽に入れ2時間後に容器を傾けることにより、下記基準で評価した。 すばやく流動する:○ 飴状で流動しにくい:△ かろうじて流動するか若しくは流動しない:× ソルビタン脂肪酸エステルにエチレンオキサイドを付加させて得られるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル組成物であって、該ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル組成物中の脂肪酸組成が、パルミチン酸量45〜75重量%、ステアリン酸量15〜45重量%であり、且つ、該組成物中の水分量が1重量%以下、20℃のpHが4.5〜6.0であるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル組成物。 ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル組成物中の脂肪酸組成が、パルミチン酸量60〜69重量%、ステアリン酸量31〜40重量%である請求項1記載ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル組成物。 組成物中の水分量が0.5重量%以下、20℃のpHが5.0〜6.0である請求項1又は2記載のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル組成物。 ソルビタン脂肪酸エステルの鹸化価が145〜156である請求項1〜3いずれかに記載のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル組成物。 エチレンオキサイドの平均付加モル数が15〜30である請求項1〜4いずれかに記載のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル組成物。 原料脂肪酸中のパルミチン酸含有量が45〜75重量%、ステアリン酸含有量が15〜45重量%であるソルビタン脂肪酸エステルに、エチレンオキサイドを付加させて得られる反応粗製物に対し、脱色処理、中和処理、水蒸気処理、蒸留処理及び水分調整から選ばれる少なくとも1種の処理を行なう、請求項1〜5いずれかに記載のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル組成物の製造法。


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