タイトル: | 再公表特許(A1)_抗原特異的T細胞誘導剤、抗体産生誘導剤、免疫増強剤、及びワクチン |
出願番号: | 2006080420 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | A61K 39/245,A61K 39/39,A61P 35/00,A61P 31/04,A61P 37/04 |
戸田 正博 村木 智子 塚田 晃三 深谷 雷太 JP WO2006080420 20060803 JP2006301283 20060127 抗原特異的T細胞誘導剤、抗体産生誘導剤、免疫増強剤、及びワクチン 学校法人慶應義塾 899000079 株式会社GBS研究所 503355498 一色国際特許業務法人 110000176 戸田 正博 村木 智子 塚田 晃三 深谷 雷太 JP 2005020393 20050127 A61K 39/245 20060101AFI20080523BHJP A61K 39/39 20060101ALI20080523BHJP A61P 35/00 20060101ALI20080523BHJP A61P 31/04 20060101ALI20080523BHJP A61P 37/04 20060101ALI20080523BHJP JPA61K39/245A61K39/39A61P35/00A61P31/04A61P37/04 AP(BW,GH,GM,KE,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,NL,PL,PT,RO,SE,SI,SK,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV,LY,MA,MD,MG,MK,MN,MW,MX,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PG,PH,PL,PT,RO,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,SY,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,YU,ZA,ZM,ZW 再公表特許(A1) 20080619 2006520465 28 4C085 4C085AA03 4C085BA78 4C085CC08 4C085DD86 4C085EE06 4C085FF03 本発明は、単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus; HSV)を含有する抗原特異的T細胞誘導剤、抗体産生誘導剤、免疫増強剤、及びワクチンに関する。 生体に免疫反応を起こさせる物質(抗原)を接種する際、その免疫反応を増強させるために、抗原にアジュバントと呼ばれる免疫増強剤と混合して接種するということが行われてきた。アジュバントとしては、動物実験でよく使用される、フロインド完全アジュバント(Freund Complete Adjuvant)やフロインド不完全アジュバント(Freund Incomplete Adjuvant)など(Broderson, J. A., Lab. Anim. Sci. 39 (1989), 400-406)、様々なものが知られている。例えば、フロインド完全アジュバントは、鉱油に熱殺菌したマイコバクテリアを含む乳濁液であり、フロインド不完全アジュバントは、フロインド完全アジュバントにおいてマイコバクテリアを添加していない乳濁液である。フロインド完全アジュバント中、マイコバクテリアが免疫増強活性を有する有効成分である。 動物に、ワクチンを投与する際も、ワクチンの効果を増強させるためアジュバントが添加される。ワクチンには、生ワクチン、不活性化ワクチン、コンポーネントワクチン等があるが、アジュバントは特に不活性化ワクチンやコンポーネントワクチンに添加され、免疫原性の弱い抗原を用いたときでも効果的に抗体を作らせることができるようになる。 近年、コンポーネントワクチンや癌ワクチンなどの新しいワクチンが開発され、臨床的にもアジュバントの重要性が高まる中、新しいタイプのアジュバントが開発されてきた(Jin H, et al., Vaccine 22 (2004), 2925-2935; Flarend,R et al., Vaccine 15 (1997), 1314-1318; Villacres-Eriksson M, et al., Cytokine 9 (1997), 73-82; Weeratna, R, et al., Vaccine 18 (2000),1755-1762)。 本発明は、以上のような技術を背景とし、新規抗原特異的T細胞誘導剤、新規免疫増強剤、新規抗体産生誘導剤、及び新規ワクチンを開発することを目的としてなされた。 本発明にかかる抗原特異的T細胞誘導剤は、単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus; HSV)を有効成分として含有する、HSV以外の抗原に対する抗原特異的T細胞誘導剤である。従って、ヒト及びヒト以外の脊椎動物に対して投与した、HSV以外の抗原に対して前記抗原特異的なT細胞を誘導する方法であって、前記抗原と併用して前記抗原特異的T細胞誘導剤を投与することを特徴とする方法も、本発明の技術的範囲に属する。この抗原特異的T細胞誘導剤は、抗原特異的細胞障害性T細胞誘導剤であることが好ましい。また、前記単純ヘルペスウイルスが、不活性化されていることが好ましく、例えば、加熱、UV照射、放射線照射、固定、または遺伝子組み換えによって不活性化されていてもよい。さらに、前記抗原特異的T細胞誘導剤が、不完全フロイントアジュバント(Incomplete Freund adjuvant; IFA)を含有してもよい。 本発明にかかる抗体産生誘導剤は、単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus; HSV)を有効成分として含有する、HSV以外の抗原に対する抗体産生誘導剤である。従って、ヒト及びヒト以外の脊椎動物に対して投与した、HSV以外の抗原に対して抗体産生を誘導する方法であって、前記抗原と併用して前記抗体産生誘導剤を投与することを特徴とする方法も、本発明の技術的範囲に属する。また、前記単純ヘルペスウイルスが、不活性化されていることが好ましく、例えば、加熱、UV照射、放射線照射、固定、または遺伝子組み換えによって不活性化されていてもよい。さらに、前記抗体産生誘導剤が、不完全フロイントアジュバント(Incomplete Freund adjuvant; IFA)を含有してもよい。 本発明にかかる免疫増強剤は、単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus; HSV)を有効成分として含有する、HSV以外の抗原に対する免疫増強剤である。従って、ヒト及びヒト以外の脊椎動物において、HSV以外の抗原に対する免疫を増強する方法であって、前記免疫増強剤を投与することを特徴とする方法も、本発明の技術的範囲に属する。また、前記単純ヘルペスウイルスが、不活性化されていることが好ましく、例えば、加熱、UV照射、放射線照射、固定、または遺伝子組み換えによって不活性化されていてもよい。さらに、前記免疫増強剤が、不完全フロイントアジュバントを含有してもよい。ここで、免疫増強剤とは、一般に生体における免疫反応を増強させる薬剤のことをいう。この免疫反応には、抗原特異的T細胞誘導、抗体産生誘導、ナチュラルキラー細胞の活性化誘導、樹状細胞の活性化誘導、抑制性T細胞誘導の阻害なども含まれる。本発明にかかるワクチンは、単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus; HSV)以外の抗原に対するワクチンであって、単純ヘルペスウイルスを有効成分として含む免疫増強剤及び前記抗原を含有するワクチンである。前記ワクチンは、癌ワクチンであっても、病原体の感染に対するワクチンであってもよい。従って、ヒト及びヒト以外の脊椎動物における腫瘍の治療方法または病原体の感染に対する治療方法であって、前記ワクチンを接種することを特徴とする方法も、本発明の技術的範囲に属する。前記単純ヘルペスウイルスが、不活性化されていることが好ましく、例えば、加熱、UV照射、放射線照射、固定、または遺伝子組み換えによって不活性化されていてもよい。さらに、前記ワクチンが、不完全フロイントアジュバントを含有してもよい。本明細書でいう治療方法には、疾病の治療方法のみならず、疾病以前の予防方法も含むものとする。−関連文献とのクロスリファレンス− なお、本出願は、2005年1月27日出願の日本国出願番号特願2005−20393の優先権の利益を主張し、これを引用することにより本明細書に含める。本発明の一実施例において、GARC−1変異型ペプチドと不活性化HSVとを含むワクチンを投与されたマウスから得られたT細胞の、GARC−1ペプチド(変異型及び野生型)を提示する細胞に対する反応性を、IFN−γの産生量で表したグラフである。本発明の一実施例において、GARC−1変異型ペプチドと不活性化HSVとを含むワクチンを投与されたマウスから得られたT細胞の、GL261細胞に対する反応性を、IFN−γの産生量で表したグラフである。本発明の一実施例において、GARC−1変異型ペプチドと不活性化HSVとを含むワクチンを投与されたマウスから得られたCD8陽性T細胞の、GL261細胞に対する反応性を、IFN−γの産生量で表したグラフである。本発明の一実施例において、腫瘍細胞が移植され、AH1ペプチドと不活性化HSVとを含むワクチンを投与されたマウスにおいて、(A)及び(B)は、マウスに移植した腫瘍細胞の体積の変化で、癌ワクチンの抗腫瘍効果を評価した図であり、(C)は、そのマウスから得られたCD8陽性T細胞の、CT26細胞に対する細胞障害活性を評価した図であり、(D)は、AH1ペプチドと不活性化HSVとを含むワクチンを投与されたマウスから得られたCD4陽性T細胞及びCD8陽性T細胞の、AH1抗原に反応して産生されるIFN−γ量を表したグラフである。本発明の一実施例において、インフルエンザウイルスHA蛋白質と不活性化HSVとを含むワクチンを投与されたマウスにおいて、(A)は、そのマウスから得られたCD8陽性T細胞の、Kd拘束性HAペプチド(MHCクラスI)を認識して反応する細胞障害活性を評価した図であり、(B)は、そのマウスから得られたCD4陽性T細胞の、I−Ed拘束性HAペプチド(MHCクラスII)を認識して反応する増殖活性を評価した図である。 実施の形態及び実施例に特に説明がない場合には、J. Sambrook, E. F. Fritsch & T. Maniatis (Ed.), Molecular cloning, a laboratory manual (3rd edition), Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, New York (2001); F. M. Ausubel, R. Brent, R. E. Kingston, D. D. Moore, J.G. Seidman, J. A. Smith, K. Struhl (Ed.), Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons Ltd.などの標準的なプロトコール集に記載の方法、あるいはそれを修飾したり、改変した方法を用いる。また、市販の試薬キットや測定装置を用いる場合には、特に説明が無い場合、それらに添付のプロトコールを用いる。 なお、本発明の目的、特徴、利点、及びそのアイデアは、本明細書の記載により、当業者には明らかであり、本明細書の記載から、当業者であれば、容易に本発明を再現できる。以下に記載された発明の実施の形態及び具体的に実施例などは、本発明の好ましい実施態様を示すものであり、例示又は説明のために示されているのであって、本発明をそれらに限定するものではない。本明細書で開示されている本発明の意図並びに範囲内で、本明細書の記載に基づき、様々な改変並びに修飾ができることは、当業者にとって明らかである。==抗原特異的T細胞誘導剤、抗体産生誘導剤、免疫増強剤及び抗原混合物の作製== 本発明にかかる抗原特異的T細胞誘導剤、抗体産生誘導剤、免疫増強剤またはワクチンに含まれるHSVの種類は、特に限定しないが、実施例ではタイプIの野性株であるKOS株を用いた。HSVは、Vero細胞などを用いて、常法に従って増殖させることができる。 本発明に用いるHSVは、生体内で増殖することがないように、加熱、UV照射、放射線照射、固定、遺伝子組替えなどを用いて、不活性化することが好ましい。以下、各操作の典型的な条件例を挙げると、HSVを加熱する場合、例えば、56℃にて、30分間程度処理する。UV照射 の場合、UV lamps (wavelength, 253.7 nm)を10から15 cmの距離で、計120から650J/m2照射する(De Roda Husman AM,.et al., Appl Environ Microbiol. 70 (2004): 5089-5093.)。また、放射線照射の場合は、γ線を0.96 Gy/sで計200-800Gy照射する(De Roda Husman AM,.et al., Appl Environ Microbiol. 70 (2004): 5089-5093)。また、固定する場合、ホルムアルデヒド溶液、ホルマリン、グルタールアルデヒドなど、公知の組織固定剤を使用すればよい。遺伝子組換えによる不活性化は、例えば、遺伝子操作によってウイルスの複製を制御したり(ウイルスゲノムを、腫瘍細胞中でのみ複製し、正常細胞中では複製しないように遺伝子組換えを行う)(Mineta T, et al. Attenuated multi-mutated herpes simplex virus-1 for the treatment of malignant gliomas. Nat Med.9 (1995), 938-943.)、または、遺伝子操作によってウイルスを複製させないようにしたりする(Lim F, et al. Biotechniques.20 (1996):460-469.)ことが考えられる。なお、上記条件は典型的な条件例であり、具体的な操作では、上記の条件以外でも構わないし、場合によっては不活性化しなくてもかまわない。 このようなHSVを抗原特異的T細胞誘導剤、抗体産生誘導剤、あるいは免疫増強剤とし、抗原特異的T細胞誘導、抗体産生誘導、または免疫増強の対象である抗原と混合して抗原混合物として用いる。これら抗原特異的T細胞誘導剤、抗体産生誘導剤、免疫増強剤及び抗原混合物の剤形は特に限定されず、液状、乳液状、ゲル状、固形状、乾燥粉末状など、いずれでもかまわない。また、HSVの他に、薬理上許容される担体や、乳化剤・界面活性剤・防腐剤・不完全アジュバントなどの添加剤を含有しても構わない。例えば、HSVを、予めフロインド不完全アジュバントと混合して、抗原特異的T細胞誘導剤、抗体産生誘導剤、あるいは免疫増強剤とし、抗原と混合して抗原混合物としてもよい。また、抗原混合物中の抗原は複数種類含まれていても構わない。 本発明で対象となる抗原はHSV(HSV由来の抗原も含む)以外であれば特に限定されず、最終的に生体内で抗原性を有するものであれば何でもよいが、例えば、抗原として、腫瘍の治療に用いるための癌抗原(癌特異的タンパク質やその一部となるペプチドなど)や、マイコプラズマ、ウイルス(エイズウイルス、インフルエンザウイルス、SARS(severe acute respiratory syndrome)コロナウイルスなど)、細菌(病原性大腸菌、緑濃菌、結核菌など)、原虫(マラリア、トキソプラズマなど)、寄生虫(線虫など)などの病原体の感染の予防などに用いるためには、不活性化した病原体やその一部(細胞壁、多糖類、タンパク質などの菌体成分、ウイルスを構成するタンパク質など)などの病原体抗原を用いれば、抗原混合物の一形態としてのワクチンを作製することができる。即ち、上記抗原特異的T細胞誘導剤、抗体産生誘導剤、あるいは上記免疫増強剤をワクチンに含有させ、癌抗原や病原体抗原と併用することにより、ワクチンの抗原性を増強することができる。ここで、ワクチンは、生ワクチン(弱毒化ワクチン)、死菌ワクチン、不活性化ワクチン、トキソイド、コンポーネントワクチン(成分ワクチン)、遺伝子組替えワクチン(ペプチドワクチンなども含む)、癌ワクチン等、どのようなものでも構わないが、不活性化ワクチン、コンポーネントワクチン、遺伝子組替えワクチン、癌ワクチンなどの、比較的抗原性の弱いワクチンが好ましい。また、ワクチン中の抗原が複数種類含まれる混合ワクチンとしてもよい。==抗原混合物の接種方法== こうして作製された抗原特異的T細胞誘導剤、抗体産生誘導剤、あるいは免疫増強剤と抗原との抗原混合物を、生体に接種する。抗原混合物の接種方法は特に限定されず、経口投与でも非経口投与でもよい。非経口投与としては、皮下、筋肉内、腹腔内、静脈内への注射、直腸内投与、粘膜投与、経皮投与あるいは粘膜投与などが挙げられるが、通常、皮下または腹腔内注射によって接種されることが多い。抗原が癌抗原の場合であっても、その癌抗原を有する腫瘍に直接接種する必要がなく、腫瘍以外の部位に接種すればよい。 なお、接種回数や接種場所も特に限定されず、同時に他の医薬品と併用してもよい。また、同時に異なる抗原混合物を接種してもよい。==疾病の治療方法(予防方法を含む)== 以上のように本発明による抗原混合物を生体に接種すると、抗原混合物に添加された抗原特異的なT細胞の分化・増殖や抗原特異的な抗体の産生が誘導される。抗原が癌抗原やその一部のペプチドであるような場合、典型的には、抗原特異的に誘導されたT細胞が、抗原を組織適合性抗原と共に細胞表面に提示した癌細胞を攻撃するため、抗原混合物によって腫瘍の治療をすることができる。また、抗原が病原体抗原である場合、典型的には、抗原特異的に産生誘導された抗体が病原体を攻撃するため、感染に先立って予め抗原混合物を生体に接種しておくことにより、病原体の感染に対する予防が可能となる。また、感染後においても抗原混合物を生体に接種することにより、病原体感染症を治療したり、病原体感染症の再発を予防したりすることができる。 なお、接種する抗原に対する疾病の治療方法の原理はここで述べた場合に限られず、例えば、本発明の方法により、腫瘍の予防を行ったり、癌抗原が細胞表面抗原である場合には、産生誘導された抗体で腫瘍の治療を行ったりしてもよい。<実施例1> GARC−1ペプチドを用いた癌ワクチン(1)HSVの調製 HSVとしてHSVタイプIの野性株であるKOS株を用い、常法に従って、Vero細胞に感染させて、その培養上清中に放出されたウイルスを回収した。なお、この時の培地は、無血清培地(血清を含まないDMEM)を用いた。ウイルス濃度を計測した後、15分のUV処理および56℃で30分の熱処理を行うか、または0.1%ホルマリンで1週間4℃で処理することにより、ウイルスを完全に不活性化して、以下の実験に用いた(以下、HSVのウイルス濃度は不活性化する前の値を示す)。なお、ウイルスなしのVero細胞の培養上清を上記と同様の処理をして、コントロール(Mock)として用いた。(2)GARC−1抗原(腫瘍抗原)を用いたワクチン マウスグリオーマ細胞株GL261(C57BL/6マウス由来)には、GARC−1遺伝子に、正常細胞には存在しない変異が存在するため、この変異を有するペプチド(AALLNKLYA、配列番号1)(MHC class IであるH-2Db上に提示される)は、腫瘍特異的な抗原としてT細胞に認識される。そこで、本実施例において用いる抗原として、このGARC−1変異型ペプチドを用い、コントロールとして、正常細胞に存在するGARC−1の野生型ペプチド(AALLDKLYA、配列番号2)を用いて、癌ワクチンの生成を行った。 ワクチンは、(1)10mg/mlのGARC−1変異型ペプチドあるいはGARC−1野生型ペプチドを10μl(100μg)、(2)不活化HSV (2×108pfu相当)を含む溶液あるいは含まない溶液(Mock)を50μl、(3)PBSを40μl、以上を混合した混合液(100μl)を、各組み合わせに対して4種類準備し、等量の不完全フロイントアジュバント(BACTO ADJUVANT INCOMPLETE FREUND、DIFCO社:263910)(100μl)と混合して作製した(計200μl)。 GL261の由来となるマウス系統であるC57BL/6マウスの両手足皮内にワクチン(200μl)を接種し、さらに5日後に再度、同じ各ワクチンを接種した。 ワクチン投与開始から2週間後、マウスのリンパ節及び脾臓より得た混合浮遊細胞を2×106個/mlに調整した。一方、GL261細胞をマイトマイシンC(200μg/ml)で60分処理した後、3×105個/mlに調整し、刺激細胞(stimulator cell)とした。これらの混合浮遊細胞と刺激細胞をそれぞれ1mlずつ混合し、24穴プレート(142575 NUNC)にて1週間共培養した。 その後、以下の3つの実験系において、T細胞の抗原特異的な反応性の解析(IFN−γ放出量解析)を行った。[1.GARC−1ペプチド(変異型及び野生型)を提示する細胞に対するリンパ球反応性] 上記のように、1週間共培養した得られた混合浮遊細胞を1×106個/mlに調整してエフェクター細胞とした。一方、293TKbDb細胞(MHC class I分子KbおよびDbを発現している293T細胞)を、GARC−1変異型ペプチドあるいはGARC−1野生型ペプチドのパルス処理(細胞培養液中に各ペプチドを10μg/mlの濃度で添加し、1時間培養後、PBSで2回洗浄)を行った後、1×106個/mlに調整し、ターゲット細胞とした。これらのエフェクター細胞及びターゲット細胞を、それぞれ100μlずつ混合して、96穴プレート(167008 NUNC)にて2日間共培養した。その後、培養上清中のIFN−γ放出量 をELISA kit (KM-IFNG Endogen社)を用いて解析した。 その結果、図1に示すように、腫瘍抗原であるGARC−1変異型ペプチドとmockとを含むワクチンを投与されたマウスのリンパ節及び脾臓から、GARC−1変異型ペプチドを提示する細胞特異的に反応してIFN−γを産生するT細胞が誘導されたが、このGARC−1変異型ペプチドとmockとを含むワクチン投与と比較して、GARC−1変異型ペプチドと不活性化HSVとを含むワクチンを投与されたマウスでは、GARC−1変異型ペプチドを提示する細胞特異的なリンパ球の反応性が増強された。一方、コントロールにおいては、自己抗原GARC−1野生型ペプチドを用いたワクチンによって、不活性化HSVを加えても、GARC−1野生型ペプチドを提示する細胞に特異的に反応してIFN−γを産生するリンパ球は誘導されなかった。 以上から、アジュバントとしてのHSVは、腫瘍抗原に対する抗原特異的な免疫を増強させるが、自己抗原に対しては、明らかな免疫増強効果を示さず、安全性の面からも有用であることが明らかとなった。従って、HSVを含有する組成物は、生体に投与された抗原に対する免疫増強剤として有用であることが結論された。[2.GL261細胞に対するリンパ球反応性I] 上記のように、1週間共培養した得られた混合浮遊細胞を1×106個/mlに調整してエフェクター細胞とした。一方、GL261細胞およびコントロールのEL4細胞をマイトマイシンC(200μg/ml)で60分処理した後、1×106個/mlに調整し、ターゲット細胞とした。これらのエフェクター細胞及びターゲット細胞を、それぞれ100μlずつ混合して、96穴プレート(167008 NUNC)にて2日間共培養した。その後、培養上清中のIFN−γ放出量をELISA kit(KM-IFNG Endogen社)を用いて解析した。 その結果、図2に示すように、GL261グリオーマ細胞の腫瘍抗原であるGARC−1変異型ペプチドを投与したマウスでは、不活性化HSVを含有させたワクチンを投与した時にのみ、GL261細胞に特異的に反応してIFN−γを産生するリンパ球が誘導された。 以上から、腫瘍抗原に加えHSVをアジュバントとして用いることにより、その腫瘍抗原を発現する腫瘍細胞に特異的な免疫を増強できることが示された。従って、HSVをワクチンに含有させることは、腫瘍免疫を増強させたり、病原体感染を予防したりするのに有用であることが結論された。[3.GL−261細胞に対するリンパ球反応性II] 上記のように、1週間共培養した得られた混合浮遊細胞よりCD8陽性T細胞(主として細胞障害性T細胞)を精製した後、5×105個/mlに調整してエフェクター細胞とした。一方、GL261細胞を56℃で30分間熱処理した後、5×105個/mlに調整し、ターゲット細胞とした。これらのエフェクター細胞及びターゲット細胞を、それぞれ100μlずつ混合して、96穴プレート(167008 NUNC)にて1日間共培養した。その後、培養上清中のIFN−γ放出量 をELISA kit(KM-IFNG Endogen社)を用いて解析した。 その結果、図3に示すように、GL261グリオーマ細胞の腫瘍抗原であるGARC−1変異型ペプチドとHSVとを含有するワクチンを用いてマウスに免疫した場合、それぞれを単独で免疫したマウスと比較して、GL261細胞に対してIFN-γを産生するCD8陽性T細胞の反応性が増強された(図3)。 以上から、腫瘍抗原に加えHSVをアジュバントとして用いることにより、腫瘍に反応するCD8陽性T細胞の誘導を増強することが示された。従って、HSVを含有する免疫増強剤は、それを併用した抗原に対し抗原特異的T細胞誘導剤として有用であることが結論された。<実施例2> AH1ペプチド(腫瘍抗原)を用いた癌ワクチン HSVの調製は実施例1と同様に行った。 抗原には、マウス大腸癌細胞株CT26(BALB/cマウス由来)の腫瘍抗原であり、MHC class I (H-2Ld)上に提示されるペプチドAH1(SPSYVYHQF、配列番号3)(Huang A et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93. 9730-9735, 1996)と、同じMHC class I (H-2Ld)上に提示されるコントロールペプチドとして、マウス肥満細胞腫細胞株P815の腫瘍抗原であるペプチドP815A(LPYLGWLVF、配列番号4)(Lethe B, et al, Eur. J. Immunol 22, 1992)を用いた。 ワクチンは、(1)AH1ペプチド(100μg)あるいはP815Aペプチド(100μg)(2)不活化HSV(2×108pfu相当)あるいはMock(3)PBSの混合液(100μl)を、各組み合わせに対して4種類準備し、等量の不完全フロイントアジュバント(100μl)と混合した(計200μl)。CT26の由来となるマウス系統であるBALB/cマウスの両手足皮内にワクチン(200μl)を投与し、さらに7日後に再度、同じ各ワクチンを投与した。2回目のワクチン投与の1週間後に、BALB/cマウスの背部にCT26腫瘍細胞を5×105個移植し、経時的に腫瘍径を計測して、腫瘍体積を解析した。結果を表1に示す。 P815A+HSV(3個体)、P815A+Mock(4個体)のワクチンが投与されたマウスでは、腫瘍移植後8日目にそれぞれ全例でCT26腫瘍の生着が確認され、その後腫瘍体積は増加して、拒絶されることはなかった。一方、AH1+Mockのワクチンが投与されたマウス(4個体)では、腫瘍移植後8日目に全例でCT26腫瘍の生着が確認されたが、その後、腫瘍は縮小し、腫瘍移植22日目では1例を除き、3例で腫瘍は拒絶された。さらにAH1+HSVのワクチンが投与されたマウス(3個体)では、観察期間内に腫瘍生着は見られず、全例で完全拒絶された。 以上から、HSVは、実際に大腸癌細胞CT26の抗原特異的な免疫反応を増強することが示され、癌ワクチンとしての効果を増強するためのアジュバントとしての有用性が示された。従って、HSVを含有する免疫増強剤を含有するワクチンは、癌ワクチンとして有効であることが結論された。 <実施例3>AH1ペプチド(腫瘍抗原)を用いた腫瘍の治療 HSVの精製は実施例1と同様に行った。また、腫瘍抗原は、実施例2と同様にAH1ペプチドを用い、その標的腫瘍細胞にCT26(マウス大腸癌)を、コントロール腫瘍細胞にMeth A(マウス線維肉腫)を用いた。 まず、CT26細胞(5×105個)をBalb/cマウスの背側部に移植し、移植5日目に第1回目の免疫を開始した。 1回目の免疫には、(1)AH1ペプチド(50μg)あるいはDMSO(2)不活化HSV(1×108 Pfu相当)あるいはMock(3)PBSの混合液(100μl)を3種類(AH1/HSV、及びネガティブコントロールとしてAH1/MockとDMSO/Mock)準備し、等量の不完全フロイントアジュバント(IFA)(100μl)と混合した(それぞれ、AH1/HSV(IFA)、及びネガティブコントロールとしてAH1/IFAとDMSO/IFAと記す;各200μl)。また、ポジティブコントロールとして、AH1ペプチドとPBSの混合液(100μl)を等量の完全フロイントアジュバント(CFA)(100μl)と混合した(AH1/CFAと記す;200μl)。このようにして調製した抗原(100μlずつ)をBalb/cマウスの両足フットパッドに投与した。 7日後の2回目の免疫には、(1)AH1ペプチド(AH1/HSV(IFA)、AH1/IFA、及びAH1/CFAに対して)あるいはDMSO(DMSO/IFAに対して)(2)PBSの混合液(100μl)を各組み合わせに対して調製し、等量の不完全フロイントアジュバントIFA(100μl)と混合し(計200μl)、同様に両足フットパッドに抗原(100μlずつ)を投与した。 その後、以下の3つの実験系において、T細胞の抗原特異的な反応性の解析を行った。1.抗腫瘍効果の評価 マウスに移植した腫瘍の体積を、14日までは2日ごとに、21日までは4日ごとに計測し、その腫瘍体積の変化で免疫効果を評価した。図4Aに、マウスごとの実験結果を、図4Bに、21日目の腫瘍体積の平均値を示す。 腫瘍体積の経時変化(図4A)からは、DMSO/IFA及びAH1/IFAを用いた場合に比べ、AH1/CFA(ポジティブコントロール)を用いた場合、腫瘍体積の増加が抑制されているが、AH1/HSVを用いた場合、さらに腫瘍体積の増加が抑制されていることがわかる。また、21日目の平均腫瘍体積を(図4B)比較すると、DMSO/IFA及びAH1/IFAを用いた場合に比べ、AH1/CFAを用いた場合は、統計学的に有意ではないが腫瘍体積の増加に抑制傾向が見られ、一方、AH1/HSVを用いた場合は、有意に(p<0.05)腫瘍体積の増加が抑制されていた。 このように、HSVは、AH1とともに投与することにより、大腸癌細胞CT26の腫瘍増殖の抑制効果を示すことが明らかになった。2.細胞障害活性の評価 腫瘍細胞移植21日後、各マウスの脾臓及びリンパ節より混合浮遊細胞を単離し、3〜5×106/mlに調製した。一方、抗原提示細胞として、正常マウスより調製した脾臓細胞にX線を照射(60Gy)し、ペプチド抗原AH1(10μM)で90分間反応させ、1×106/mlに調製した。これらの混合浮遊細胞と抗原提示細胞を、それぞれ1mlずつ混合し、24穴プレート(NUNC 142475)にて5日間共培養した。その後、共培養した浮遊細胞より精製したCD8陽性T細胞(E:T−ratio: 60,30,15; 3×105,1.5×105,0.75×105)を51Cr(Amersham社)でラベルしたCT26細胞(5×103個)と混合して、96穴プレート(U-bottom:BD35 3077)で4時間共培養した後、51Cr放出アッセイにより、細胞傷害活性を評価した。なお、コントロール細胞としては、Meth A細胞(5×103個)を用いた。また、CT26細胞には、1.85MBqの51Crを1mlの細胞浮遊液(1×106個)に加え、1〜2時間、37℃で振とうすることによりラベルを取り込ませた。 その結果、図4Cに示すように、AH1/HSVを用いた場合、DMSO/IFA及びAH1/IFAを用いた場合に対して、有意に(p<0.05)CT26細胞に対する特異的障害性が増強された。 このように、HSVは、AH1ペプチドとともに投与することにより、抗原特異的なCD8陽性T細胞(主に細胞傷害性T細胞と考えられる)を強力に誘導し、CT26細胞に対する細胞障害活性を増強することが示された。3.サイトカインIFN−γ産生の評価 BD Cytofix/Cytoperm kit(Pharmingen社)を使用して、上記により共培養した混合浮遊細胞内におけるIFN−γ産生細胞を解析した。 まず、共培養した混合浮遊細胞に対し、細胞内タンパク輸送を阻害するため、monensinの含有するBD GolgiStopを24穴プレートのウエルに1.5μl/2ml加え、8時間後、非特異的反応を抑制するためにFc レセプターに対する抗体Fc-Block (mAb 2.4G2: 100倍希釈)を添加し、さらにFITC標識抗CD4抗体(mAb GK1.5 e-Bioscience社 400倍希釈)またはFITC標識抗CD8抗体(mAb 53-6.7 e-Bioscience社 400倍希釈)で染色した。その後、BD Cytofix/Cytoperm solutionを100μl加えて4℃で20分間細胞を固定し、BD Perm/Wash solutionで2回洗浄し、PE(フィコエリスリン)標識抗IFN-γ抗体(mAb XMG1.2: e-Bioscience社 200倍希釈)を含むBD Perm/Wash solution 50μlで30分4℃で反応させ、FACS解析を行った。 その結果、AH1/HSV免疫群において、AH1ペプチド共培養によって増加するIFN−γ産生細胞のほとんどはCD4陽性T細胞ではなく、CD8陽性T細胞によることが判明した(図4D)。 以上から、癌抗原を用いた腫瘍の治療において、癌抗原とともにアジュバントとしてHSVを用いることにより、癌抗原特異的なCD8陽性T細胞が強く誘導され、癌免疫が増強されることが示された。従って、癌抗原とともにHSVを含有する免疫増強剤を含有するワクチンは、癌抗原を用いた腫瘍の治療に有効であることが結論された。<実施例4>ヘマグルチニン抗原(HA)を用いたインフルエンザウイルスワクチン HSVの精製は実施例1と同様に行った。なお、ここで用いた動物はBalb/cマウス(♀:n=4/群)である。 1回目の免疫には、ヘマグルチニン抗原タンパク質(HA)(H1N1:IFA-055-B0522)(10μg)を用い、(1)HA(10μg/10μl)あるいはDMSO(10μl)(2)不活化HSV(low):1×107 Pfu, 不活化HSV(high): 1×108 Pfu、あるいはMock(3)PBSの混合液(100μl)を各組み合わせに対して以下の5種類準備し、等量の不完全フロイントアジュバント(IFA)(100μl)と混合し(計200μl)、Balb/cマウスの両足フットパッドに上記ワクチン(100μlずつ)を投与した。 (1)DMSO/IFA(2)DMSO/HSV(3)HA/IFA(4)HA/HSV(low)(5)HA/HSV(high) 2回目の免疫には、ヘマグルチニン抗原のCD4エピトープ又はCD8エピトープに対する免疫応答を増強させる目的で、ペプチド抗原として、I−Ed拘束性HAペプチド(SVSSFERFEIFPK 配列番号5、アミノ酸番号124-136に対応)とKd拘束性HAペプチド(IYSTVASSL 配列番号6、アミノ酸番号533-541に対応)の混合ペプチド(各50μg)を用いた。すなわち、 7日後の2回目ワクチンは、(1)I−Ed拘束性HAペプチド(50μg)およびKd拘束性HAペプチド(50μg)、あるいはDMSO(2)PBSの混合液(50μl)を、等量の不完全フロイントアジュバント(50μl)と混合した(100μl)、各組み合わせに対して下記の通り、Balb/cマウスの両足フットパッドにワクチン(50μlずつ)を投与した。 (1)DMSO/IFA(2)〜(5)HAペプチド/IFA その後、以下の2つの実験系でT細胞の抗原特異的な反応性の解析を行い、さらに、誘導された抗体の抗体価を測定した。1.細胞障害活性の評価 2回目のワクチン投与の1週間後、各マウスの脾臓及びリンパ節より混合浮遊細胞を単離し、3〜5×106/mlに調製した。一方、抗原提示細胞として、正常マウスより調製した脾臓細胞にX線を照射(60Gy)し、I−Ed拘束性HAペプチド又はKd拘束性HAペプチド(10μM)で90分間処理し、1×106/mlに調製した。これらの混合浮遊細胞と抗原提示細胞を、それぞれ1mlずつ混合し、24穴プレート(NUNC 142475)にて5日間共培養した。その後、共培養した浮遊細胞より精製したCD8陽性T細胞(E:T-ratio: 60,30,15; 3×105,1.5×105,0.75×105)を51Crで上述のようにラベルしたCT26細胞(10μMのKd拘束性HAペプチドで処理)(5×103個)と混合して、96穴プレート(U-bottom:BD35 3077)で4時間共培養した後、51Cr放出アッセイにより、細胞傷害活性を評価した。なお、コントロール細胞としては、CT26細胞(P815Aペプチド10μMで処理)(5×103個)を用いた。 その結果、図5Aに示すように、(1)DMSO/IFA, DMSO/IFA、(3)HA/IFA, HAペプチド/IFAの組み合わせに比べて、(5)HA/HSV(high), HAペプチド/IFAの組み合わせは有意に(p<0.05)抗原特異的なCD8陽性T細胞を強力に誘導し、CT26細胞(10μMのKd拘束性HAペプチドで処理)に対する細胞障害活性を増強することが示された。2.増殖応答の評価 共培養した混合浮遊細胞より精製したCD4陽性T細胞(1×105個)を、X線照射(60Gy)後の上記抗原提示細胞(I−Ed拘束性HAペプチドで処理した脾臓細胞) (5×104個または1×105個)と3日間共培養し、培養終了の5時間前に培地に[3H]-thymidine(18.5kBq/well)を添加し、培養終了後、取り込み量([3H]のカウント値cpm)で増殖応答を評価した。 結果は、図5Bに示すように、(1)DMSO/IFA、DMSO/IFAの組み合わせで免疫したマウスのCD4陽性T細胞に対し、(4)HA/HSV(low)、HAペプチド/IFAの組み合わせおよび(5)HA/HSV(high)、HAペプチド/IFAの組み合わせで免疫したマウスのCD4陽性T細胞は抗原提示細胞の数に依存して有意な(p<0.05)増殖促進効果を示した。 このように、インフルエンザワクチンを投与する際、インフルエンザ抗原とともにアジュバントとしてHSVを用いることにより、抗原特異的なCD4陽性T細胞を誘導することができることが明らかになった。3.抗体価の測定 抗体価は、(1)〜(4)のマウス各4匹に対し、2回目ワクチンの1週間後、末梢血より血清を回収し、赤血球凝集抑制試験(HI)により測定した。 具体的には、インフルエンザウイルスHI試薬「生研」(デンカ生研(株))のキットを用いて、A型インフルエンザウイルスHA抗原に対する抗体価を調べた。検体0.1mlにRDE(Receptor Destroying Enzyme)0.3mlを加え、37℃で一晩培養することにより非特異的インヒビターを除去し、56℃で30分間加熱してRDE処理の反応を止め、生理食塩水0.6ml加えた。そのRDE処理検体に50%(v/v)のニワトリ赤血球浮遊液50μlずつ加え、混和後、4℃60分間静置し、遠心後、上清を1:10からスタートして段階希釈を作った。それぞれにHA抗原を加え十分混和後、さらに0.5%(v/v)のニワトリ赤血球浮遊液を加え、赤血球凝集が何倍希釈で抑制されたかを調べてHI抗体価を測定した。 この赤血球凝集抑制試験の結果、(1)DMSO/IFA,DMSO/IFAの組み合わせ、及び(2)DMSO/HSV,HAペプチド/IFAの組み合わせでは、何れもHI抗体価は10未満であった。一方、(3)HA/IFA,HAペプチド/IFAの組み合わせによりHI抗体価が検出されたが(65±64.03)、(4)HA/HSV(low),HAペプチド/IFAの組み合わせによりHI抗体価は有意に(p<0.05)増加した(140±40)。(ただし、カッコ内は、平均値±標準偏差) この結果から、インフルエンザ抗原とともにアジュバントとしてHSVを同時に投与することにより、インフルエンザ抗原に対する血清抗体価を有意に上昇させることが明らかになった。4.結論 以上より、HSVは、インフルエンザ抗原の抗原特異的な免疫反応を増強することが示され、インフルエンザワクチンとしての効果を増強するためのアジュバントとしての有用性が示された。従って、インフルエンザ抗原とともにHSVを含有する免疫増強剤を含有するワクチンは、インフルエンザワクチンとして有効であることが結論された。本発明によって、単純ヘルペスウイルスを含有する新規免疫増強剤、新規抗体産生誘導剤、及びそれらを含有するワクチンを提供することが可能になった。 単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus; HSV)を有効成分として含有する、HSV以外の抗原に対する抗原特異的T細胞誘導剤。 抗原特異的細胞障害性T細胞誘導剤であることを特徴とする請求項1に記載の抗原特異的T細胞誘導剤 前記単純ヘルペスウイルスが、不活性化されていることを特徴とする請求項1または2に記載の抗原特異的T細胞誘導剤。 前記単純ヘルペスウイルスが、加熱、UV照射、放射線照射、固定、または遺伝子組み換えによって不活性化されていることを特徴とする請求項3に記載の抗原特異的T細胞誘導剤。 不完全フロイントアジュバント(Incomplete Freund adjuvant; IFA)をさらに含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の抗原特異的T細胞誘導剤。 単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus; HSV)を有効成分として含有する、HSV以外の抗原に対する抗体産生誘導剤。 抗原特異的細胞障害性T細胞誘導剤であることを特徴とする請求項6に記載の抗体産生誘導剤。 前記単純ヘルペスウイルスが、不活性化されていることを特徴とする請求項6または7に記載の抗体産生誘導剤。 前記単純ヘルペスウイルスが、加熱、UV照射、放射線照射、固定、または遺伝子組み換えによって不活性化されていることを特徴とする請求項8に記載の抗体産生誘導剤。 不完全フロイントアジュバント(Incomplete Freund adjuvant; IFA)をさらに含有することを特徴とする請求項6〜9のいずれかに記載の抗体産生誘導剤。 単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus; HSV)を有効成分として含有する、HSV以外の抗原に対する免疫増強剤。 前記単純ヘルペスウイルスが不活性化されていることを特徴とする請求項11に記載の免疫増強剤。 前記単純ヘルペスウイルスが、加熱、UV照射、放射線照射、固定、または遺伝子組み換えによって不活性化されていることを特徴とする請求項12に記載の免疫増強剤。 不完全フロイントアジュバント(Incomplete Freund adjuvant; IFA)をさらに含有することを特徴とする請求項11〜13のいずれかに記載の免疫増強剤。 単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus; HSV)以外の抗原に対するワクチンであって、 単純ヘルペスウイルスを有効成分として含む免疫増強剤及び前記抗原を含有するワクチン。 前記単純ヘルペスウイルスが、不活性化されていることを特徴とする請求項15に記載のワクチン。 前記単純ヘルペスウイルスが、加熱、UV照射、放射線照射、固定、または遺伝子組み換えによって不活性化されていることを特徴とする請求項16に記載のワクチン。不完全フロイントアジュバント(Incomplete Freund adjuvant; IFA)をさらに含有することを特徴とする請求項15〜17のいずれかに記載のワクチン。 癌ワクチンであることを特徴とする請求項15〜18のいずれかに記載のワクチン。 病原体の感染に対する予防ワクチンであることを特徴とする請求項15〜18のいずれかに記載のワクチン。 脊椎動物に対して投与した、HSV以外の抗原に対して抗原特異的なT細胞を誘導する方法であって、 前記抗原と併用して請求項1〜5のいずれかに記載の抗原特異的T細胞誘導剤、または請求項15〜20のいずれかに記載のワクチンを投与することを特徴とする方法。 前記T細胞が細胞障害性T細胞であることを特徴とする請求項21に記載の方法。 脊椎動物に対して投与した、HSV以外の抗原に対して抗原特異的な抗体産生を誘導する方法であって、 前記抗原と併用して請求項6〜10のいずれかに記載の抗体産生誘導剤、または請求項15〜20のいずれかに記載のワクチンを投与することを特徴とする方法。 ヒト以外の脊椎動物において免疫を増強する方法であって、 請求項11〜14のいずれかに記載の免疫増強剤、または請求項15〜20のいずれかに記載のワクチンを投与することを特徴とする方法。 ヒト以外の脊椎動物における腫瘍の治療方法であって、 請求項15〜19のいずれかに記載のワクチンを接種することを特徴とする方法。 ヒト以外の脊椎動物における病原体の感染に対する治療方法であって、 請求項15〜18,20のいずれかに記載のワクチンを接種することを特徴とする方法。 【課題】新規抗原特異的T細胞誘導剤、新規抗体産生誘導剤、新規免疫増強剤、及び新規ワクチン、並びに新規抗原特異的T細胞誘導方法、抗体産生誘導方法、新規免疫増強方法、新規腫瘍治療方法、及び新規病原体治療方法を提供すること。【解決手段】単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus; HSV)を不活性化し、不完全アジュバントに添加して作製した完全アジュバントを抗原特異的T細胞誘導剤、抗体産生誘導剤、または免疫増強剤とし、抗原にこれら抗原特異的T細胞誘導剤、抗体産生誘導剤、または免疫増強剤を併用してワクチンとする。その際、抗原として、癌特異的抗原や病原体特異的抗原を用いることにより、腫瘍治療方法及び病原体感染治療方法とする。配列表20060606A16333全文3 単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus; HSV)以外の抗原に対する抗原特異的T細胞誘導剤であって、 単純ヘルペスウイルスを有効成分として含有し、 前記抗原と併用して投与されることを特徴とする抗原特異的T細胞誘導剤。 単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus; HSV)以外の抗原に対する抗原特異的T細胞誘導剤であって、 単純ヘルペスウイルス及び前記抗原を有効成分として含有することを特徴とする抗原特異的T細胞誘導剤。 抗原特異的細胞障害性T細胞誘導剤であることを特徴とする請求項1または2に記載の抗原特異的T細胞誘導剤 前記単純ヘルペスウイルスが、不活性化されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の抗原特異的T細胞誘導剤。 前記単純ヘルペスウイルスが、加熱、UV照射、放射線照射、固定、または遺伝子組み換えによって不活性化されていることを特徴とする請求項4に記載の抗原特異的T細胞誘導剤。 不完全フロイントアジュバント(Incomplete Freund adjuvant; IFA)をさらに含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の抗原特異的T細胞誘導剤。 単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus; HSV)を有効成分として含有する、単純ヘルペスウイルス以外の抗原に対する抗体産生誘導剤。 前記抗原と併用して投与することを特徴とする、請求項7に記載の抗体産生誘導剤。 前記抗原を含有することを特徴とする、請求項7に記載の抗体産生誘導剤。 前記単純ヘルペスウイルスが、不活性化されていることを特徴とする請求項7〜10のいずれかに記載の抗体産生誘導剤。 前記単純ヘルペスウイルスが、加熱、UV照射、放射線照射、固定、または遺伝子組み換えによって不活性化されていることを特徴とする請求項10に記載の抗体産生誘導剤。 不完全フロイントアジュバント(Incomplete Freund adjuvant; IFA)をさらに含有することを特徴とする請求項7〜11のいずれかに記載の抗体産生誘導剤。 単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus; HSV)以外の抗原に対する免疫増強剤であって、 単純ヘルペスウイルスを有効成分として含有し、 前記抗原と併用して投与することを特徴とする免疫増強剤。 単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus; HSV)以外の抗原に対する免疫増強剤であって、 単純ヘルペスウイルス及び前記抗原を有効成分として含有する、単純ヘルペスウイルス以外の抗原に対する免疫増強剤。 前記単純ヘルペスウイルスが不活性化されていることを特徴とする請求項13または14に記載の免疫増強剤。 前記単純ヘルペスウイルスが、加熱、UV照射、放射線照射、固定、または遺伝子組み換えによって不活性化されていることを特徴とする請求項13〜15のいずれかに記載の免疫増強剤。 不完全フロイントアジュバント(Incomplete Freund adjuvant; IFA)をさらに含有することを特徴とする請求項13〜16のいずれかに記載の免疫増強剤。 請求項13〜17に記載の免疫増強剤を含有するワクチン。 癌ワクチンであることを特徴とする請求項18に記載のワクチン。 病原体の感染に対する予防ワクチンであることを特徴とする請求項18に記載のワクチン。 ヒト以外の脊椎動物において、単純ヘルペスウイルス以外の抗原に対して抗原特異的なT細胞を誘導する方法であって、 請求項1〜6のいずれかに記載の抗原特異的T細胞誘導剤を投与することを特徴とする方法。 前記T細胞が細胞障害性T細胞であることを特徴とする請求項21に記載の方法。 ヒト以外の脊椎動物において、単純ヘルペスウイルス以外の抗原に対して抗原特異的な抗体産生を誘導する方法であって、 請求項8〜12のいずれかに記載の抗体産生誘導剤を投与することを特徴とする方法。 ヒト以外の脊椎動物において免疫を増強する方法であって、 請求項13〜17のいずれかに記載の免疫増強剤を投与することを特徴とする方法。 ヒト以外の脊椎動物における腫瘍の治療方法であって、 請求項18または19に記載のワクチンを接種することを特徴とする方法。 ヒト以外の脊椎動物における病原体の感染に対する治療方法であって、 請求項18または20に記載のワクチンを接種することを特徴とする方法。 単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus; HSV)以外の抗原に対する抗原特異的T細胞誘導剤、抗体産生誘導剤、免疫増強剤、またはワクチンの製造方法であって、 単純ヘルペスウイルスを不活性化し、前記抗原と混合することを特徴とする製造方法。 不活性化した前記単純ヘルペスウイルスをフロインド不完全アジュバント(Incomplete Freund adjuvant; IFA)と混合した後、前記抗原と混合することを特徴とする請求項27に記載の製造方法。20070115A16333全文3 単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus; HSV)以外の抗原に対する抗原特異的T細胞誘導剤であって、 単純ヘルペスウイルスを有効成分として含有し、 該単純ヘルペスウイルスと前記抗原との混合物として投与されることを特徴とする抗原特異的T細胞誘導剤。 単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus; HSV)以外の抗原に対する抗原特異的T細胞誘導剤であって、 単純ヘルペスウイルスと前記抗原の混合物を有効成分として含有することを特徴とする抗原特異的T細胞誘導剤。 抗原特異的細胞障害性T細胞誘導剤であることを特徴とする請求項1または2に記載の抗原特異的T細胞誘導剤 前記単純ヘルペスウイルスが、不活性化されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の抗原特異的T細胞誘導剤。 前記単純ヘルペスウイルスが、加熱、UV照射、放射線照射、固定、または遺伝子組み換えによって不活性化されていることを特徴とする請求項4に記載の抗原特異的T細胞誘導剤。 不完全フロイントアジュバント(Incomplete Freund adjuvant; IFA)をさらに含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の抗原特異的T細胞誘導剤。 単純ヘルペスウイルス以外の抗原に対する抗体産生誘導剤であって、 単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus; HSV)を有効成分として含有し、 該単純ヘルペスウイルスと前記抗原との混合物として投与されることを特徴とする抗体産生誘導剤。 単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus; HSV)以外の抗原に対する抗体産生誘導剤であって、 単純ヘルペスウイルスと前記抗原の混合物を有効成分として含有することを特徴とする抗体産生誘導剤。 前記単純ヘルペスウイルスが、不活性化されていることを特徴とする請求項7または8に記載の抗体産生誘導剤。 前記単純ヘルペスウイルスが、加熱、UV照射、放射線照射、固定、または遺伝子組み換えによって不活性化されていることを特徴とする請求項9に記載の抗体産生誘導剤。 不完全フロイントアジュバント(Incomplete Freund adjuvant; IFA)をさらに含有することを特徴とする請求項7〜10のいずれかに記載の抗体産生誘導剤。 単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus; HSV)以外の抗原に対する免疫増強剤であって、 単純ヘルペスウイルスを有効成分として含有し、 該単純ヘルペスウイルスと前記抗原との混合物として投与されることを特徴とする免疫増強剤。 単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus; HSV)以外の抗原に対する免疫増強剤であって、 単純ヘルペスウイルスと前記抗原の混合物を有効成分として含有することを特徴とする単純ヘルペスウイルス以外の抗原に対する免疫増強剤。 前記単純ヘルペスウイルスが不活性化されていることを特徴とする請求項12または13に記載の免疫増強剤。 前記単純ヘルペスウイルスが、加熱、UV照射、放射線照射、固定、または遺伝子組み換えによって不活性化されていることを特徴とする請求項12〜14のいずれかに記載の免疫増強剤。 不完全フロイントアジュバント(Incomplete Freund adjuvant; IFA)をさらに含有することを特徴とする請求項12〜15のいずれかに記載の免疫増強剤。 請求項12〜16に記載の免疫増強剤を含有するワクチン。 癌ワクチンであることを特徴とする請求項17に記載のワクチン。 病原体の感染に対する予防ワクチンであることを特徴とする請求項17に記載のワクチン。 ヒト以外の脊椎動物において、単純ヘルペスウイルス以外の抗原に対して抗原特異的なT細胞を誘導する方法であって、 請求項1〜6のいずれかに記載の抗原特異的T細胞誘導剤を投与することを特徴とする方法。 前記T細胞が細胞障害性T細胞であることを特徴とする請求項20に記載の方法。 ヒト以外の脊椎動物において、単純ヘルペスウイルス以外の抗原に対して抗原特異的な抗体産生を誘導する方法であって、 請求項8〜11のいずれかに記載の抗体産生誘導剤を投与することを特徴とする方法。 ヒト以外の脊椎動物において免疫を増強する方法であって、 請求項12〜16のいずれかに記載の免疫増強剤を投与することを特徴とする方法。 ヒト以外の脊椎動物における腫瘍の治療方法であって、 請求項17または18に記載のワクチンを接種することを特徴とする方法。 ヒト以外の脊椎動物における病原体の感染に対する治療方法であって、 請求項17または19に記載のワクチンを接種することを特徴とする方法。 単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus; HSV)以外の抗原に対する抗原特異的T細胞誘導剤、抗体産生誘導剤、免疫増強剤、またはワクチンの製造方法であって、 単純ヘルペスウイルスを不活性化し、前記抗原と混合された混合物を含有させることを特徴とする製造方法。 不活性化した前記単純ヘルペスウイルスをフロインド不完全アジュバント(Incomplete Freund adjuvant; IFA)と混合した後、前記抗原と混合された混合物を含有させることを特徴とする請求項26に記載の製造方法。