タイトル: | 特許公報(B2)_ヤング率推定方法、ヤング率推定プログラム及びヤング率推定装置 |
出願番号: | 2006058443 |
年次: | 2011 |
IPC分類: | G01N 29/00,G01N 3/30 |
佐々木 康寿 山崎 真理子 JP 4696243 特許公報(B2) 20110311 2006058443 20060303 ヤング率推定方法、ヤング率推定プログラム及びヤング率推定装置 国立大学法人名古屋大学 504139662 特許業務法人暁合同特許事務所 110001036 佐々木 康寿 山崎 真理子 20110608 G01N 29/00 20060101AFI20110519BHJP G01N 3/30 20060101ALI20110519BHJP JPG01N29/18G01N3/30 Z G01N 29/00−29/52 G01N 3/30 JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) 特開2003−014598(JP,A) 特公平06−078974(JP,B2) 特公昭40−018194(JP,B1) 特開平01−158346(JP,A) 特開平07−005088(JP,A) 特開2000−105228(JP,A) 特開2003−166980(JP,A) 特開2004−239717(JP,A) 16 2007232698 20070913 17 20081218 鹿戸 俊介 本発明は、木材等の部材のヤング率を推定するためのヤング率推定方法、ヤング率推定プログラム及びヤング率推定装置に関する。 例えば、木造建築物の修理・改築・建替え等において、使用されている構造部材の継続使用、再使用が可能かどうかを判定するために、その構造部材の保有強度性能を知る必要がある。従来は、その判定を熟練大工の経験等に基づく主観的な評価によって行われていることが多く、構造部材の保有強度性能を客観的に、すなわち数値的に評価することが求められている。 このように構造部材の保有強度性能を数値的に評価するための方法としては、例えば以下のものがある。 (1)「負荷法」:構造部材に圧縮・引張・曲げなどの静的負荷を加えて、荷重と構造部材の変形との関係における比例定数を求める方法。 (2)「周波数解析法(打撃法)」:構造部材をハンマーで打撃し、打撃音をマイクロフォンで集音し、周波数分析器を用いて固有振動数を求めるとともに、構造部材の重量・体積を測定し、所定の関係式によりヤング率を算出する方法(下記特許文献1参照)。 (3)「超音波法」:超音波センサによって構造部材内の超音波の音速を測定するとともに、構造部材の密度を測定し、これらの超音波の音速及び密度から所定の関係式によりヤング率を算出する方法。 (4)「応力波法」:応力波伝播速度測定器を用いて構造部材内における応力波伝播速度を測定するとともに、構造部材の密度を測定し、これらの応力波伝播速度及び密度から所定の関係式によりヤング率を算出する方法(下記特許文献2参照)。特公平6−78974号公報特公昭40−18194号公報 しかしながら、上記負荷法では、構造部材の断面形状を特定する必要があり、断面形状が不定形な構造部材については正確な数値測定が難しくなるという問題がある。一方、上記した従来の周波数解析法、超音波法及び応力波法では、いずれも構造部材の密度を把握する必要があり、特に木造建築物に組み込まれたままで構造部材の保有強度性能を評価することが困難という問題がある。また、超音波法では、構造部材と超音波センサとの密着度に応じて超音波が減衰するため、両者の密着性が問題となり、未だ実験室レベルを超えておらず、実用性に欠ける。 本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、その目的は、測定対象部材の密度を直接測定することなく保有強度性能を客観的に評価することを可能とするヤング率推定方法、ヤング率推定プログラム及びヤング率推定装置を提供するところにある。 上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明に係るヤング率推定方法は、測定対象部材の応力波伝播速度を測定し、部材のヤング率−密度関係の実測データベースの範囲内に存在し得る複数の第1密度を規則的または不規則的に抽出し、当該各第1密度ごとに以下のステップ(A)〜(C)を繰り返し行うことで、前記応力波伝播速度に対応する前記測定対象部材のヤング率を推定する。 (A)前記実測データベースの回帰線と、前記第1密度とに基づきヤング率を抽出するヤング率抽出ステップ、 (B)所定の第1関係式に基づき、前記ヤング率抽出ステップで抽出された抽出ヤング率及び前記応力波伝播速度に対応する第2密度を算出する密度算出ステップ、 (C)前記第1密度と前記第2密度との誤差が設定許容範囲内にあることを条件に、前記抽出ヤング率を推定ヤング率として決定する推定ヤング率決定ステップ。 なお、本発明において「規則的に抽出」とは予め定めた順番で抽出することを意味し、「不規則的に抽出」とは例えば乱数発生法を利用してランダムに任意抽出することを意味する。 請求項2の発明に係るヤング率推定方法は、測定対象部材の長さ及び固有振動数を測定し、部材のヤング率−密度関係の実測データベースの範囲内に存在し得る複数の第1密度を規則的または不規則的に順次抽出し、当該各第1密度ごとに以下のステップ(A)〜(C)を繰り返し行うことで、前記測定対象部材の長さ及び固有振動数に対応する前記測定対象部材のヤング率を推定する。 (A)前記実測データベースの回帰線と、前記第1密度とに基づきヤング率を抽出するヤング率抽出ステップ、 (B)所定の第2関係式に基づき、前記ヤング率抽出ステップで抽出された抽出ヤング率、前記長さ及び前記固有振動数に対応する第2密度を算出する密度算出ステップ、 (C)前記第1密度と前記第2密度との誤差が設定許容範囲内にあることを条件に、前記抽出ヤング率を推定ヤング率として決定する推定ヤング率決定ステップ。 請求項3の発明に係るヤング率推定プログラムは、コンピュータに、以下の処理(A)〜(D)を実行させることで、部材のヤング率−密度関係の実測データベースと、測定対象部材について実測された応力波伝播速度とに基づき前記測定対象部材のヤング率を推定する。 (A)前記実測データベースの範囲内に存在し得る複数の第1密度を規則的または不規則的に抽出する密度抽出処理、 (B)前記密度抽出処理で抽出された各第1密度について、メモリに記憶された前記実測データベースの回帰線情報と、当該各第1密度とに基づき各ヤング率を抽出するヤング率抽出処理、 (C)前記ヤング率抽出処理で抽出された各抽出ヤング率について、所定の第1関係式に基づき、当該各抽出ヤング率及び前記応力波伝播速度に対応する各第2密度を算出する密度算出処理、 (D)前記各第2密度について、それに対応する前記各第1密度との誤差が設定許容範囲内にある場合に、当該第2密度に対応する前記抽出ヤング率を推定ヤング率として決定する推定ヤング率決定処理。 請求項4の発明に係るヤング率推定プログラムは、コンピュータに、以下の処理(A)〜(D)を実行させることで、部材のヤング率−密度関係の実測データベースと、測定対象部材について実測された長さ及び固有振動数とに基づき前記測定対象部材のヤング率を推定する。 (A)前記実測データベースの範囲内に存在し得る複数の第1密度を規則的または不規則的に抽出する密度抽出処理、 (B)前記密度抽出処理で抽出された各第1密度について、メモリに記憶された前記実測データベースの回帰線情報と、当該各第1密度とに基づき各ヤング率を抽出するヤング率抽出処理、 (C)前記ヤング率抽出処理で抽出された各抽出ヤング率について、所定の第2関係式に基づき、当該各抽出ヤング率、前記長さ及び前記固有振動数に対応する各第2密度を算出する密度算出処理、 (D)前記各第2密度について、それに対応する前記各第1密度との誤差が設定許容範囲内にある場合に、当該各第2密度に対応する前記抽出ヤング率を推定ヤング率として決定する推定ヤング率決定処理。 請求項5の発明は、請求項3または請求項4に記載のヤング率推定プログラムにおいて、前記密度抽出処理は、モンテカルロシミュレーション法により前記実測データベース内の密度についての確率分布に従って前記第1密度を抽出する処理である。 請求項6の発明は、請求項3から請求項5のいずれかに記載のヤング率推定プログラムにおいて、前記ヤング率抽出処理は、前記回帰線上において前記第1密度に対応する平均ヤング率を求める平均ヤング率算出処理と、前記実測データベース内において前記第1密度に対応するヤング率のばらつきに基づき前記平均ヤング率を補正して前記抽出ヤング率とする補正処理とを含む。 請求項7の発明は、請求項3から請求項5のいずれかに記載のヤング率推定プログラムにおいて、前記ヤング率抽出処理は、前記回帰線上において前記第1密度に対応する平均ヤング率を求める平均ヤング率算出処理と、当該平均ヤング率に対する回帰残差を、モンテカルロシミュレーション法により正規分布に従って抽出する回帰残差抽出処理と、その抽出された回帰残差に応じて前記平均ヤング率を補正して前記抽出ヤング率とする補正処理とを含む。 請求項8の発明は、請求項7に記載のヤング率推定プログラムにおいて、回帰残差抽出処理では、一様乱数を発生させ、この一様乱数に基づき標準正規確率変数を算出し、当該標準正規確率変数に、前記実測データベース内において前記第1密度に対応するヤング率の標準偏差を乗じて前記回帰残差とする。 請求項9の発明は、請求項3から請求項8のいずれかに記載のヤング率推定プログラムにおいて、部材の種類及び環境のうち少なくともいずれか一方に基づき分類された複数種の実測データベースのなかから特定の実測データベースを指定させる指定処理を更に含み、前記指定処理で指定された実測データベースに基づき前記処理(A)〜(D)を実行させる。 請求項10の発明に係るヤング率推定装置は、測定対象部材の応力波伝播速度を取得する取得手段と、部材のヤング率−密度関係の実測データベースの回帰線情報及び密度情報が記憶される記憶手段と、前記密度情報に基づき前記実測データベースの範囲内に存在し得る複数の第1密度を規則的または不規則的に抽出する密度抽出手段と、前記密度抽出手段で抽出された各第1密度について、前記回帰線情報と、当該各第1密度とに基づき各ヤング率を抽出するヤング率抽出手段と、前記ヤング率抽出手段で抽出された各抽出ヤング率について、所定の第1関係式に基づき、当該各抽出ヤング率及び前記応力波伝播速度に対応する各第2密度を算出する密度算出手段と、前記各第2密度について、それに対応する前記各第1密度との誤差が設定許容範囲内にある場合に、当該第2密度に対応する前記抽出ヤング率を推定ヤング率として決定する推定ヤング率決定手段と、を備える。 請求項11の発明に係るヤング率推定装置は、測定対象部材の長さ及び固有振動数を取得する取得手段と、部材のヤング率−密度関係の実測データベースの回帰線情報及び密度情報が記憶される記憶手段と、前記密度情報に基づき前記実測データベースの範囲内に存在し得る複数の第1密度を規則的または不規則的に抽出する密度抽出手段と、前記密度抽出手段で抽出された各第1密度について、前記回帰線情報と、当該各第1密度とに基づき各ヤング率を抽出するヤング率抽出手段と、前記ヤング率抽出手段で抽出された各抽出ヤング率について、所定の第2関係式に基づき、当該各抽出ヤング率、前記長さ及び前記固有振動数に対応する各第2密度を算出する密度算出手段と、前記各第2密度について、それに対応する前記各第1密度との誤差が設定許容範囲内にある場合に、当該第2密度に対応する前記抽出ヤング率を推定ヤング率として決定する推定ヤング率決定手段と、を備える。 請求項12の発明は、請求項10または請求項11に記載のヤング率推定装置において、前記密度抽出手段は、モンテカルロシミュレーション法により前記実測データベース内の密度についての確率分布に従って前記第1密度を抽出する。 請求項13の発明は、請求項10から請求項12のいずれかに記載のヤング率推定装置において、前記ヤング率抽出手段は、前記回帰線上において前記第1密度に対応する平均ヤング率を求める平均ヤング率算出手段と、前記実測データベース内において前記第1密度に対応するヤング率のばらつきに基づき前記平均ヤング率を補正して前記抽出ヤング率とする補正手段とを有する。 請求項14の発明は、請求項10から請求項12のいずれかに記載のヤング率推定装置において、前記ヤング率抽出手段は、前記回帰線上において前記第1密度に対応する平均ヤング率を求める平均ヤング率算出手段と、当該平均ヤング率に対する回帰残差を、モンテカルロシミュレーション法により正規分布に従って抽出する回帰残差抽出手段と、その抽出された回帰残差に応じて前記平均ヤング率を補正して前記抽出ヤング率とする補正手段とを有する。 請求項15の発明は、請求項14に記載のヤング率推定装置において、回帰残差抽出手段は、一様乱数を発生させ、この一様乱数に基づき標準正規確率変数を算出し、当該標準正規確率変数に、前記実測データベース内において前記第1密度に対応するヤング率の標準偏差を乗じて前記回帰残差とする。 請求項16の発明は、請求項10から請求項15のいずれかに記載のヤング率推定装置において、前記記憶手段には、部材の種類及び環境のうち少なくともいずれか一方に基づき分類された複数種の実測データベースの回帰線情報及び密度情報が記憶されており、前記複数の複数種の実測データベースのなかから特定の実測データベースを指定させる指定手段を備え、前記密度抽出手段及び前記ヤング率抽出手段は、前記指定手段で指定された実測データベースの回帰線情報及び密度情報に基づき処理を実行する。 <請求項1,3,10の発明> 本構成によれば、予め実験的に収集された各種、各環境下における部材のヤング率−密度関係の実測データベースの範囲内に存在し得る第1密度(実測値だけでなく、実測値群の確率分布から存在し得るとされた模擬的な値であってもよい)を不規則的または規則的に抽出し、これと実測データベースの回帰線とに基づきヤング率を抽出する。そして、この抽出ヤング率と、測定対象部材について実測した応力波伝播速度とに基づき所定の第1関係式を満たす第2密度を逆算する。ここで、この第2密度と上記第1密度との密度誤差が大きい場合には、抽出ヤング率と第2密度との組み合わせが、実測データベースの範囲内に存在する可能性が低いことを意味するから、この抽出ヤング率を測定対象部材の推定ヤング率として採用することはできない。逆に、第2密度と第1密度との密度誤差が小さい場合には、抽出ヤング率と第2密度との組み合わせが、実測データベースの範囲内に存在する可能性が高いことを意味するから、この抽出ヤング率を測定対象部材の推定ヤング率として採用することができる。 そして、本構成では、順次抽出される複数の第1密度に対して上記のステップ(処理、手段)を繰り返し行って、上記密度誤差が設定許容範囲内にある抽出ヤング率、つまり、実測した応力波伝播速度と、実測データベースの範囲内に存在し得る密度との間で上記所定の第1関係式が成り立つ可能性が高いヤング率を推定ヤング率として決定する。従って、決定された推定ヤング率(或いは推定ヤング率群)から測定対象部材の実際のヤング率を推定できる。 以上のように、本構成によれば、測定対象部材の密度を測定することなく、応力波伝播速度を測定することで測定対象部材の保有強度性能を科学的に数値化して客観的に評価することができる。また、応力波伝播速度は測定対象部材の支持方法の相違に影響しないことが実験的に確かめられている。従って、応力波法を採用する本構成では、測定対象部材が例えば建築物の一構造体として組み込まれている場合であっても、そのまま非破壊的に保有強度性能を評価できる。 <請求項2,4,11の発明> 本構成によれば、予め実験的に収集された各種、各環境下における部材のヤング率−密度関係の実測データベースの範囲内に存在し得る第1密度(実測値だけでなく、実測値群の確率分布から存在し得るとされた模擬的な値であってもよい)を不規則的または規則的に抽出し、これと実測データベースの回帰線とに基づきヤング率を抽出する。そして、この抽出ヤング率と、測定対象部材について実測した長さ及び固有振動数とに基づき所定の第2関係式を満たす第2密度を逆算する。ここで、この第2密度と上記第1密度との密度誤差が大きい場合には、上記抽出ヤング率と第2密度との組み合わせが、実測データベースの範囲内に存在する可能性が低いことを意味するから、この抽出ヤング率を測定対象部材の推定ヤング率として採用することはできない。逆に、第2密度と第1密度との密度誤差が小さい場合には、抽出ヤング率と第2密度との組み合わせが、実測データベースの範囲内に存在する可能性が高いことを意味するから、この抽出ヤング率を測定対象部材の推定ヤング率として採用することができる。 そして、本構成では、順次抽出される複数の第1密度に対して上記のステップ(処理)を繰り返し行って、上記密度誤差が設定許容範囲内にある抽出ヤング率、つまり、実測した長さ及び固有振動数と、実測データベースの範囲内に存在し得る密度との間で上記所定の第2関係式が成り立つ可能性が高いヤング率を推定ヤング率として決定する。従って、決定された推定ヤング率(或いは推定ヤング率群)から測定対象部材の実際のヤング率を推定できる。 以上のように、本構成によれば、測定対象部材の密度を測定することなく、長さ及び固有振動数を測定することで測定対象部材の保有強度性能を科学的に数値化して客観的に評価することができる。 <請求項5,12の発明> 本構成によれば、ヤング率−密度関係の実測データベース内の密度の確率分布が不均一である場合であっても、実際の確率分布(データばらつき、累積頻度(確率密度)曲線)に基づく頻度で第1密度を抽出でき、ヤング率−密度関係の実測データベースに、より適合したヤング率を推定することができる。 <請求項6,13の発明> 本構成によれば、回帰線上において第1密度に対応する平均ヤング率について、その第1密度に対応するヤング率のばらつき(例えば標準偏差、最大最小ヤング率)を考慮して補正したものを抽出ヤング率として抽出する。従って、実測データベースに、より適合したヤング率を推定することができる。 <請求項7,14の発明> 本構成によれば、ヤング率−密度関係の実測データ群内において抽出密度データに対応するヤング率の実際の確率分布に基づく頻度で回帰残差を抽出でき、ヤング率推定シミュレーションの精度をより高めることができる。 <請求項8,15の発明> 本構成によれば、一様乱数を利用して、実測データベース内の確率分布に即した任意の回帰残差を抽出することができる。 <請求項9,16の発明> 本構成によれば、例えば測定対象部材の種類や環境が予め分かっていれば、それに対応する実測データベースを指定することで、より精度の高いヤング率推定を行うことができる。 本発明の一実施形態1を図1〜図4を参照しつつ説明する。 1.本実施形態の概要 本実施形態は、木材を測定対象部材(以下、「測定対象木材W」という)として、その保有強度(ヤング率)を、応力波法を利用して非破壊的に評価する方法に関するものである。ここで、材料のヤング率E[Pa]と、密度ρ[kg/m3]と、応力波伝播速度v[m/s]との間には、次の数式1(本発明の「第1関係式」に相当)が成り立つ。 従って、測定対象木材Wのヤング率は、その測定対象木材Wについて密度ρと応力波伝播速度vとを測定すれば上記数式1から求めることができる。しかしながら、測定対象木材Wの密度ρを測定するには、その測定対象木材W自体の重量や体積を測定する必要があり容易なことではない。特に、測定対象木材Wが例えば木造建築物の構造体として組み込まれたものである場合には、そのままの状態で密度ρを正確に測定することは極めて困難である。 ところで、現在、各樹種、各環境下における木材についての(曲げ)ヤング率ー密度関係の実測データベースが各研究機関等によって公開されている。しかし、これらの実測データベースからも分かるように、木材の樹種(特性)が異なる場合は勿論のこと、同じ樹種の木材であっても使用期間や使用環境によってヤング率ー密度関係は異なり、容易に法則化することは困難である。 そこで、本実施形態は、測定対象木材Wの応力波伝播速度vだけを測定し、この応力波伝播速度vとの間で上記数式1が成り立つ「ヤング率と密度」の組み合わせを、上述した研究蓄積のある「ヤング率ー密度関係の実測データベース」を基にモンテカルロシュミレーション法によって推定するようにした。 2.木材用ヤング率推定装置 (1)全体構成 以下では、木材用ヤング率推定装置10を例に挙げて説明する。この木材用ヤング率推定装置10は、例えば公知の応力波伝播速度測定器に本発明のヤング率推定機能の構成を組み込んだものとされている。 具体的には、木材用ヤング率推定装置10は、図1に示すように、全体として長方形状の扁平箱形をなす本体ケース12の一端面から1対のセンサ部11,11を導出させた構成となっている。各センサ11の先端には針が設けられており、これら1対のセンサ部11,11を測定対象木材Wの離れた箇所にそれぞれ打ち込むことができる。そして、一方のセンサ部11を図示しないハンマー等で打撃すると、その一方のセンサ部11で衝撃音が検知されてから他方のセンサ部11で衝撃音が検知されるまでの時間[μs](以下、「応力波伝播時間T」という)が測定されるようになっている。本体ケース12の表面には、例えば7セグメントの液晶表示部13と、確定キー14と、数値等を入力するための入力部15とが配されている。 図2には、木材用ヤング率推定装置10の内部構成を示した簡略図である。同図において、符号16は、上記各センサ部11に連なる加速度検知回路(図示せず)を備えた測定部であり、ここで測定された上記応力波伝播時間TがA/D変換されてCPU17に与えられる。表示制御部18は、CPU17からの制御信号に基づく表示パターンを表示部13に表示させる。操作部19は、上記入力部15での入力操作に応じた信号をCPU17に与える。 メモリ20(本発明の「記憶手段」に相当)には、例えばプログラム記憶領域、入力データ記憶領域、実測データベース記憶領域、推定データ記憶領域がそれぞれ確保されている。プログラム記憶領域には、後述するヤング率推定プログラムが記憶されている。入力データ記憶領域には、上記測定部16からの応力波伝播時間Tのデータや入力部15にて入力される距離L[m]のデータ及び許容誤差R[%]のデータが記憶される。実測データベース記憶領域には、次述するように、研究蓄積としての木材のヤング率ー密度関係の実測データベースに関するデータが記憶されている。推定データ記憶領域には、ヤング率推定プログラムの実行により抽出された推定ヤング率等のデータが記憶される。 (2)木材のヤング率ー密度関係の実測データベースに関するデータについて 図3には、ある木材についてのヤング率ー密度関係の実測データ群がプロットされたグラフが示されている。本実施形態では、まず、このヤング率ー密度関係の実測値について例えば最小二乗法により次の数式2に示す回帰直線F1(本発明の「回帰線」に相当)を求める。 [数2] E=a・ρ+b a,b:回帰係数 なお、実測データベース内において各密度に対応するヤング率のデータ分布が不均一であってヤング率ー密度関係を単純な回帰直線で表すことが不適当であると判断した場合には、これを是正するために重み付き回帰分析(加重回帰分析)等の処理を行うことが望ましい。 同図においては、密度の大きさによって、それぞれに対応するヤング率の分布がばらついているが、そのデータ分布と密度との間にある程度の相関関係が認められる。そこで、本実施形態では、密度の大きさに応じて複数の領域に分割し、各分割領域ごとにヤング率の標準偏差を個別に算出する。そして、これらの標準偏差と密度との関係について次の数式3に示す回帰直線F2を求める。 [数3] SDi=p・ρi+q SDi:ヤング率の標準偏差 p,q:回帰係数 なお、各密度に対応するヤング率のデータ分布(標準偏差)が全密度に亘ってほぼ均一である場合には、上記回帰直線F2の数式3はSDi=q(係数pはゼロ)となり、qは次の数式4で求められる。 α:回帰直線F1の決定係数 このように、図3の実測データベースにおいては、各密度に対応するヤング率のデータ分布は不均一であるが、そのデータ分布(標準偏差)と密度との間にほぼ比例関係をあるとみなすことができるため、上記数式3に示す回帰直線L2を利用することとした。 本実施形態では、例えばスギ、ヒノキなどの木材の樹種別ごとの複数種のヤング率ー密度関係の実測データベースを予め用意し、全樹種の実測データベース及び樹種別ごとの実測データベースそれぞれに対応する上記回帰直線(F1、F2)及び各実測データベース内の密度についての累積頻度(確率密度)曲線を算出する。そして、これらの回帰直線データ(F1、F2)及び累積頻度曲線データが、各実測データベース名に対応付けて実測データベース記憶領域に予め記憶されている。そして、これら複数の実測データベースから任意に選択された実測データベースを基にモンテカルロシュミレーションによるヤング率推定が実行できるようになっている。 (3)ヤング率推定プログラムによる処理 ヤング率推定プログラムによる処理内容について、図3、及び、図4に示すフローチャートを参照しつつ説明する。 ユーザは、まず、木材用ヤング率推定装置10の1対のセンサ部11,11を測定対象木材Wに打ち込み、木材用ヤング率推定装置10に電源を投入し、一方のセンサ部11をハンマー等で打撃する。すると、CPU17は、測定部16での応力波伝播時間Tを読み込んでその値を表示部13に表示させる。そして、ユーザによって確定キー14が押下されると、CPU17は、上記応力波伝播時間Tのデータをメモリ20の入力データ記憶領域に記憶し、例えば距離Lの入力を要求するメッセージを表示部13に表示させる。そして、上記1対のセンサ部11,11の打ち込み位置間の距離が、入力部15でのユーザによる入力操作によって入力され、確定キー14が押下されると、CPU17は、この距離Lのデータを入力データ記憶領域に記憶する。なお、距離Lを応力波伝播時間Tで除算したものが、測定対象木材Wの応力波伝播速度vである。従って、測定部16及び入力部15は、本発明の「取得手段」に相当する。 その後、CPU17は、例えば許容誤差Rの入力を要求するメッセージを表示部13に表示させ、ユーザによる入力操作がされ確定キー14が押下されると、その許容誤差Rのデータを入力データ記憶領域に記憶する。続いて、CPU17は、上記各種のヤング率ー密度関係の実測データベースから所望のものを指定させるためのメッセージを表示部13に表示させる。ここで、ユーザは、測定対象木材Wの樹種が特定できないのであれば、全樹種のヤング率ー密度関係の実測データベースを指定する。一方、測定対象木材Wの樹種が特定できるのであれば、その樹種のヤング率ー密度関係の実測データベースを指定することで、より正確な推定ヤング率を算出することができる。 ユーザにより実測データベースの指定がされ、確定キー14が押下されると、CPU17は、プログラム記憶領域からヤング率推定プログラムを読み出して、図4のフローチャートに示された処理を実行する。まず、CPU17は、S1で、指定された実測データベースに対応する累積頻度曲線データをメモリ20の実測データベース記憶領域から読み出して、S2で例えば区間[0,1]の一様乱数を発生させつつ累積頻度曲線データに当てはめて、任意の密度(本発明の「第1密度」に相当 以下、「抽出密度ρi」という)を抽出する。 ここで、図3からも分かるように、実測データベース中における実測密度データの確率分布は、各密度の値によってばらつきがあり、これを無視してモンテカルロシミュレーションを実行した場合には、実際に存在し得ないヤング率ー密度の組み合わせまで抽出してしまう可能性がある。従って、上述したように、累積頻度曲線データを用いることで、研究蓄積としての実測データベースに存在し得る抽出密度ρiを当該実測データベースの確率分布に従って抽出するようにしている。従って、ここで抽出される抽出密度ρiは、実測データベース上の実測密度だけでなく、上記確率分布に従って作成された擬似的な密度も含まれる。なお、乱数発生法としては、平中採用法や合同法など、公知の方法を利用できる。このときの処理が本発明の「密度抽出処理」に相当し、CPU17は本発明の「密度抽出手段」として機能する。 次に、CPU17は、S3でメモリ20の実測データベース記憶領域から上記指定された実測データベースに対応する回帰直線F1データを読み出し、その回帰直線F1上において、上記抽出密度ρiに対応する平均ヤング率Eiaveを算出する。このときの処理が本発明の「平均ヤング率算出処理」に相当し、CPU17は本発明の「平均ヤング率算出手段」として機能する。 そして、S4〜S6で、平均ヤング率Eiaveに対し、上記実測データベース内において抽出密度ρiに対応するヤング率の確率分布(標準偏差)を考慮した任意のヤング率(以下、「抽出ヤング率Ei」という)を抽出する。 具体的には、本実施形態では、平均ヤング率Eiaveに対し、実測データベース(ヤング率ー密度関係)内において抽出密度ρiに対応する各ヤング率の回帰残差は正規分布(回帰直線データF2において抽出密度ρiに対応する標準偏差SDi)に従うものと仮定している。そして、CPU17は、一様乱数を発生させ、これらの複数の一様乱数から中心極限定理による次の数式5に基づき標準正規確率変数Vを計算する(S4)。なお、一様乱数から正規乱数を発生させる方法としては、上記中心極限定理を利用する方法以外に、例えばボックス・ミューラー(Box-Muller)法 や、極座標法がある。 V=Σr rj:区間[0,1]の一様乱数 n:標本数であり例えばn=12 次に、この標準正規確率変数Vに上記標準偏差SDiを乗じて任意の回帰残差(V・SDi)を求め(S5)、この回帰残差を平均ヤング率Eiaveに加算して抽出ヤング率Ei(=Eiave+V・SDi)とする(S6)。これによりに、実測データベース(ヤング率ー密度関係)内において抽出密度ρiに対応して存在し得るヤング率の中から、抽出ヤング率Eiを正規分布(標準偏差SDi)に従って抽出することができる。このときの処理が本発明の「回帰残差抽出処理、補正処理」に相当し、CPU17は本発明の「回帰残差抽出手段、補正手段」として機能する。また、S3〜S6までの処理が本発明の「ヤング率抽出ステップ、ヤング率抽出処理」に相当し、CPU17は本発明の「ヤング率抽出手段」として機能する。 続いて、CPU17は、S7で入力データ記憶領域に記憶された応力波伝播時間Tのデータ及び距離Lのデータを読み出し、これらと抽出ヤング率Eiとの間で前述の数式1が成り立つ密度(本発明の「第2密度」に相当 以下、「算出密度ρk」という)を算出する。このときの処理が本発明の「密度算出ステップ、密度算出処理」に相当し、CPU17は本発明の「密度算出手段」として機能する。 そして、CPU17は、S8で、上記抽出密度ρiに対する算出密度ρkの密度誤差を算出し、許容誤差Rのデータを読み出して、抽出密度ρiに対する上記密度誤差の割合が許容誤差範囲(例えば1%)内にあるかどうかを判断する。 ここで、上記密度誤差が許容誤差範囲外にあると判断した場合には(S8で「N」)、上記の処理で算出された算出密度ρkと抽出ヤング率Eiとの組み合わせが、実測データベース内に存在する可能性が低いため、これらの算出密度ρk及び抽出ヤング率Ei等を推定データ記憶領域に記憶しない。一方、上記密度誤差が許容誤差範囲内にあると判断した場合には(S8で「Y」)、算出密度ρkと抽出ヤング率Eiとの組み合わせが、実測データベース内に存在する可能性が高い。即ち、算出密度ρk及び抽出ヤング率Eiの組み合わせは、応力波伝播時間T及び距離Lとの間で数式1を満たしつつ、実測データベースに即したものとみなすことができる。従って、抽出ヤング率Eiを推定ヤング率とし、抽出密度ρi及び算出密度ρkとともに推定データ記憶領域に記憶する(S9)。このときの処理が本発明の「推定ヤング率決定ステップ、推定ヤング率決定処理」に相当し、CPU17は本発明の「推定ヤング率決定手段」として機能する。 そして、以上のS1〜S9の処理を複数回(本実施形態では例えば5000回)実行した後に終了する(S10)。その結果、推定ヤング率として推定データ記憶領域に記憶された1または複数の抽出ヤング率Eiから、測定対象木材Wのヤング率を推定することができる。本実施形態では、例えば推定ヤング率としての抽出ヤング率Eiの最大値、最小値、平均値及び標準偏差を、上記表示部13に表示させるようになっている。これに加えて、推定ヤング率としての抽出ヤング率Eiに対応する算出密度ρkの最大値、最小値、平均値及び標準偏差をも表示させるようにしてもよい。なお、木材用ヤング率推定装置10に印刷機能を持たせて、これらの結果データを記録紙に印刷出力する構成であってもよい。また、上記の結果データを、記録媒体や通信手段によってパーソナルコンピュータ等の端末装置に出力できるようにしてもよい。 本実施形態では、例えば推定データ記憶領域に推定ヤング率として記憶された抽出ヤング率Eiがなかった場合には、表示部13にエラーメッセージが表示されるようになっている。この場合には、実測データベースの指定を変更したり、設定許容誤差の範囲を広げるなどして、再度ヤング率推定プログラムを実行させることもできる。 以上のように、本実施形態によれば、測定対象木材Wの密度を測定することなく、応力波伝播速度v(応力波伝播時間T、距離L)を測定することで測定対象木材Wの保有強度性能を科学的に数値化して客観的に評価することができる。しかも、研究蓄積としての実測データベースのデータ分布を十分に加味したモンテカルロシミュレーションにより推定ヤング率を抽出する構成なので、現実に存在する可能性が極めて高いヤング率を推定することができる。また、応力波伝播速度は測定対象部材の支持方法の相違に影響しないことが実験的に確かめられている。従って、応力波法を採用する本実施形態では、測定対象部材が例えば建築物の一構造体として組み込まれている場合であっても、そのまま非破壊的に保有強度性能を評価できる。 <他の実施形態> 本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。 (1)上記実施形態では、応力波伝播速度を測定し応力法によりヤング率を推定する方法を説明したが、測定対象木材の固有振動数を測定し打撃法(固有振動数解析)によりヤング率を推定するようにしてもよい。この場合、上記実施形態に対して、応力波伝播時間Tの代わりに固有振動数frを測定し、数式1の代わりに次の数式6(本発明の「第2関係式」に相当)を使用することになる。 固有振動数を測定する方法としては、例えば特公平6−78974号公報に開示された方法がある。但し、この方法では、測定対象木材が例えば建築物の一構造体として組み込まれた状態では、その固有振動数を測定できないため、非破壊的に保有強度性能を評価するためには、上記実施形態の方法が望ましい。 (2)上記実施形態では、乱数発生に基づき不規則的に抽出密度ρiを抽出する構成としたが、例えば、実測データベース上における密度の確率分布が均一である場合には、予め定められた所定の順次で抽出密度ρiを順次抽出する構成であってもよい。 (3)上記実施形態では、樹種別の実測データベースを指定できる構成としたが、樹種以外に、例えば「針葉樹」「広葉樹」「樹種」「新材」「古材」等で分類された複数の実測データベースから指定できるようにしてもよい。 (4)上記実施形態では、実測データベース上における実際のヤング率の標準偏差SDi(ばらつき)を加味して任意に抽出された回帰残差を平均ヤング率Eiaveに加えて抽出ヤング率としたが、これに限らず、例えば抽出密度ρiの値にかかわらず、平均ヤング率Eiaveに対して所定の許容量(例えば0.3%)分ずれた最大最小ヤング率を抽出ヤング率として抽出する構成であってもよい。更に、実測データベースのデータ分布にある程度一様と認められる場合には、平均ヤング率Eiaveそのものを抽出ヤング率として抽出する構成であってもよい。 (5)上記実施形態では、センサ部11,11を備えた木材用ヤング率推定装置10を例に挙げて説明したが、上記のヤング率推定プログラムをパーソナルコンピュータにインストールし、別途、応力波伝播速度測定器で測定した応力波伝播時間Tと距離Lとをパーソナルコンピュータに入力してヤング率推定プログラムを実行させる構成であってもよい。 (6)上記実施形態では、測定対象部材として木材を例に挙げて説明したが、これに限らず、例えば建築構造材料として利用される鉄、コンクリートなど、強度測定が必要な種々の部材について、本発明を適用することで上記実施形態と同様の効果を得ることができる。本発明の一実施形態に係る木材用ヤング率推定装置の外観図木材用ヤング率推定装置の内部構成を示した簡略図ヤング率ー密度関係の実測データ群がプロットされたグラフヤング率推定プログラムの処理内容を示すフローチャート符号の説明 10…木材用ヤング率推定装置 15…入力部(取得手段) 16…測定部(取得手段) 17…CPU(コンピュータ) 20…メモリ(記憶手段) F1…回帰直線(回帰線) Eiave…平均ヤング率 Ei…抽出ヤング率 W…測定対象木材 ρi…抽出密度(第1密度) ρk…算出密度(第2密度) v…応力波伝播速度測定対象部材の応力波伝播速度を測定し、部材のヤング率−密度関係の実測データベースの範囲内に存在し得る複数の第1密度を規則的または不規則的に抽出し、当該各第1密度ごとに以下のステップ(A)〜(C)を繰り返し行うことで、前記応力波伝播速度に対応する前記測定対象部材のヤング率を推定するヤング率推定方法。 (A)前記実測データベースの回帰線と、前記第1密度とに基づきヤング率を抽出するヤング率抽出ステップ、 (B)所定の第1関係式に基づき、前記ヤング率抽出ステップで抽出された抽出ヤング率及び前記応力波伝播速度に対応する第2密度を算出する密度算出ステップ、 (C)前記第1密度と前記第2密度との誤差が設定許容範囲内にあることを条件に、前記抽出ヤング率を推定ヤング率として決定する推定ヤング率決定ステップ。測定対象部材の長さ及び固有振動数を測定し、部材のヤング率−密度関係の実測データベースの範囲内に存在し得る複数の第1密度を規則的または不規則的に抽出し、当該各第1密度ごとに以下のステップ(A)〜(C)を繰り返し行うことで、前記測定対象部材の長さ及び固有振動数に対応する前記測定対象部材のヤング率を推定するヤング率推定方法。 (A)前記実測データベースの回帰線と、前記第1密度とに基づきヤング率を抽出するヤング率抽出ステップ、 (B)所定の第2関係式に基づき、前記ヤング率抽出ステップで抽出された抽出ヤング率、前記長さ及び前記固有振動数に対応する第2密度を算出する密度算出ステップ、 (C)前記第1密度と前記第2密度との誤差が設定許容範囲内にあることを条件に、前記抽出ヤング率を推定ヤング率として決定する推定ヤング率決定ステップ。コンピュータに、以下の処理(A)〜(D)を実行させることで、部材のヤング率−密度関係の実測データベースと、測定対象部材について実測された応力波伝播速度とに基づき前記測定対象部材のヤング率を推定するためのヤング率推定プログラム。 (A)前記実測データベースの範囲内に存在し得る複数の第1密度を規則的または不規則的に抽出する密度抽出処理、 (B)前記密度抽出処理で抽出された各第1密度について、メモリに記憶された前記実測データベースの回帰線情報と、当該各第1密度とに基づき各ヤング率を抽出するヤング率抽出処理、 (C)前記ヤング率抽出処理で抽出された各抽出ヤング率について、所定の第1関係式に基づき、当該各抽出ヤング率及び前記応力波伝播速度に対応する各第2密度を算出する密度算出処理、 (D)前記各第2密度について、それに対応する前記各第1密度との誤差が設定許容範囲内にある場合に、当該第2密度に対応する前記抽出ヤング率を推定ヤング率として決定する推定ヤング率決定処理。コンピュータに、以下の処理(A)〜(D)を実行させることで、部材のヤング率−密度関係の実測データベースと、測定対象部材について実測された長さ及び固有振動数とに基づき前記測定対象部材のヤング率を推定するためのヤング率推定プログラム。 (A)前記実測データベースの範囲内に存在し得る複数の第1密度を規則的または不規則的に抽出する密度抽出処理、 (B)前記密度抽出処理で抽出された各第1密度について、メモリに記憶された前記実測データベースの回帰線情報と、当該各第1密度とに基づき各ヤング率を抽出するヤング率抽出処理、 (C)前記ヤング率抽出処理で抽出された各抽出ヤング率について、所定の第2関係式に基づき、当該各抽出ヤング率、前記長さ及び前記固有振動数に対応する各第2密度を算出する密度算出処理、 (D)前記各第2密度について、それに対応する前記各第1密度との誤差が設定許容範囲内にある場合に、当該各第2密度に対応する前記抽出ヤング率を推定ヤング率として決定する推定ヤング率決定処理。前記密度抽出処理は、モンテカルロシミュレーション法により前記実測データベース内の密度についての確率分布に従って前記第1密度を抽出する処理である請求項3または請求項4に記載のヤング率推定プログラム。前記ヤング率抽出処理は、前記回帰線上において前記第1密度に対応する平均ヤング率を求める平均ヤング率算出処理と、前記実測データベース内において前記第1密度に対応するヤング率のばらつきに基づき前記平均ヤング率を補正して前記抽出ヤング率とする補正処理とを含む請求項3から請求項5のいずれかに記載のヤング率推定プログラム。前記ヤング率抽出処理は、前記回帰線上において前記第1密度に対応する平均ヤング率を求める平均ヤング率算出処理と、当該平均ヤング率に対する回帰残差を、モンテカルロシミュレーション法により正規分布に従って抽出する回帰残差抽出処理と、その抽出された回帰残差に応じて前記平均ヤング率を補正して前記抽出ヤング率とする補正処理とを含む請求項3から請求項5のいずれかに記載のヤング率推定プログラム。回帰残差抽出処理では、一様乱数を発生させ、この一様乱数に基づき標準正規確率変数を算出し、当該標準正規確率変数に、前記実測データベース内において前記第1密度に対応するヤング率の標準偏差を乗じて前記回帰残差とする請求項7に記載のヤング率推定プログラム。部材の種類及び環境のうち少なくともいずれか一方に基づき分類された複数種の実測データベースのなかから特定の実測データベースを指定させる指定処理を更に含み、 前記指定処理で指定された実測データベースに基づき前記処理(A)〜(D)を実行させる請求項3から請求項8のいずれかに記載のヤング率推定プログラム。測定対象部材の応力波伝播速度を取得する取得手段と、 部材のヤング率−密度関係の実測データベースの回帰線情報及び密度情報が記憶される記憶手段と、 前記密度情報に基づき前記実測データベースの範囲内に存在し得る複数の第1密度を規則的または不規則的に抽出する密度抽出手段と、 前記密度抽出手段で抽出された各第1密度について、前記回帰線情報と、当該各第1密度とに基づき各ヤング率を抽出するヤング率抽出手段と、 前記ヤング率抽出手段で抽出された各抽出ヤング率について、所定の第1関係式に基づき、当該各抽出ヤング率及び前記応力波伝播速度に対応する各第2密度を算出する密度算出手段と、 前記各第2密度について、それに対応する前記各第1密度との誤差が設定許容範囲内にある場合に、当該第2密度に対応する前記抽出ヤング率を推定ヤング率として決定する推定ヤング率決定手段と、を備えるヤング率推定装置。測定対象部材の長さ及び固有振動数を取得する取得手段と、 部材のヤング率−密度関係の実測データベースの回帰線情報及び密度情報が記憶される記憶手段と、 前記密度情報に基づき前記実測データベースの範囲内に存在し得る複数の第1密度を規則的または不規則的に抽出する密度抽出手段と、 前記密度抽出手段で抽出された各第1密度について、前記回帰線情報と、当該各第1密度とに基づき各ヤング率を抽出するヤング率抽出手段と、 前記ヤング率抽出手段で抽出された各抽出ヤング率について、所定の第2関係式に基づき、当該各抽出ヤング率、前記長さ及び前記固有振動数に対応する各第2密度を算出する密度算出手段と、 前記各第2密度について、それに対応する前記各第1密度との誤差が設定許容範囲内にある場合に、当該第2密度に対応する前記抽出ヤング率を推定ヤング率として決定する推定ヤング率決定手段と、を備えるヤング率推定装置。前記密度抽出手段は、モンテカルロシミュレーション法により前記実測データベース内の密度についての確率分布に従って前記第1密度を抽出する請求項10または請求項11に記載のヤング率推定装置。前記ヤング率抽出手段は、前記回帰線上において前記第1密度に対応する平均ヤング率を求める平均ヤング率算出手段と、前記実測データベース内において前記第1密度に対応するヤング率のばらつきに基づき前記平均ヤング率を補正して前記抽出ヤング率とする補正手段とを有する請求項10から請求項12のいずれかに記載のヤング率推定装置。前記ヤング率抽出手段は、前記回帰線上において前記第1密度に対応する平均ヤング率を求める平均ヤング率算出手段と、当該平均ヤング率に対する回帰残差を、モンテカルロシミュレーション法により正規分布に従って抽出する回帰残差抽出手段と、その抽出された回帰残差に応じて前記平均ヤング率を補正して前記抽出ヤング率とする補正手段とを有する請求項10から請求項12のいずれかに記載のヤング率推定装置。回帰残差抽出手段は、一様乱数を発生させ、この一様乱数に基づき標準正規確率変数を算出し、当該標準正規確率変数に、前記実測データベース内において前記第1密度に対応するヤング率の標準偏差を乗じて前記回帰残差とする請求項14に記載のヤング率推定装置。前記記憶手段には、部材の種類及び環境のうち少なくともいずれか一方に基づき分類された複数種の実測データベースの回帰線情報及び密度情報が記憶されており、 前記複数の複数種の実測データベースのなかから特定の実測データベースを指定させる指定手段を備え、 前記密度抽出手段及び前記ヤング率抽出手段は、前記指定手段で指定された実測データベースの回帰線情報及び密度情報に基づき処理を実行する請求項10から請求項15のいずれかに記載のヤング率推定装置。