タイトル: | 特許公報(B2)_エンドトキシン含有量を低減したゼラチンの製造方法および低エンドトキシンゼラチン |
出願番号: | 2006057656 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | C09H 3/02,A61L 27/00,A61K 47/42,A61K 9/48,A61P 7/08,C12N 1/00,C07K 1/34 |
金山 徳孝 酒井 康夫 JP 4404866 特許公報(B2) 20091113 2006057656 20060303 エンドトキシン含有量を低減したゼラチンの製造方法および低エンドトキシンゼラチン ゼライス株式会社 391024353 特許業務法人特許事務所サイクス 110000109 金山 徳孝 酒井 康夫 20100127 C09H 3/02 20060101AFI20100107BHJP A61L 27/00 20060101ALI20100107BHJP A61K 47/42 20060101ALI20100107BHJP A61K 9/48 20060101ALI20100107BHJP A61P 7/08 20060101ALI20100107BHJP C12N 1/00 20060101ALI20100107BHJP C07K 1/34 20060101ALI20100107BHJP JPC09H3/02A61L27/00 VA61K47/42A61K9/48A61P7/08C12N1/00 FC07K1/34 C09H 3/00 特開2005−289841(JP,A) 特開2004−300077(JP,A) 特開2007−211170(JP,A) 特開2004−089448(JP,A) 11 2007231225 20070913 18 20090130 阪野 誠司 本発明は、エンドトキシン含有量を低減したゼラチンの製造方法および低エンドトキシンゼラチンに関する。 ゼラチンは、ゲル化能、粘性、気泡性ならびに吸着防止能等の特徴から、食用、化粧用、工業用、医薬用等の様々な用途に利用されている天然物由来のタンパク質である。近年は、再生医療における細胞・組織のスキャッホールド(足場材料)としての利用も期待されている。細胞・組織のスキャッホールドは、そのまま再生部位に埋め込まれ、細胞の侵入ならびに増殖を助けるだけでなく、細胞分化を誘導するサイトカインの保持等の役割がある。しかしながら、この分野への応用は、とても高い安全性が要求されている。埋め込まれたスキャッホールドは、体内のタンパク質分解酵素により徐々に分解され、数週間後には再生部位の細胞と完全に置換されるようにコントロールされている。このように、長期間にわたって体内に留まるため、再生部位の細胞に限らず、生体への影響が非常に大きいからである。 通常、ゼラチンには微量ではあるがエンドトキシンが含まれている。このエンドトキシンは、極めて微量で強い発熱活性を示す耐熱性の毒素であるため、医療分野での利用を考えた場合には、ゼラチンからのエンドトキシン除去は不可欠である。 エンドトキシンは、リポポリサッカライド分子からなり、リポポリサッカライドサブユニットの分子量は、約2万と言われている。エンドトキシンは、熱によって失活するが、熱によってエンドトキシンを完全に失活させるには、250℃で30分以上の加熱が必要である(第十四改正日本薬局方エンドトキシン試験法)。加熱以外の方法でエンドトキシンを失活させる方法としては、酸または塩基でエンドトキシンを分解する酸・塩基処理法(特許文献1)、酸性電解水を用いる方法(特許文献2)が知られている。しかし、一般的にpHの変化に対してエンドトキシンは安定であるといわれている。 また、エンドトキシンは、リポポリサッカライドサブユニットの分子量が約2万であることから、一般的なろ過(ろ過精度:10μm程度)では除去することが不可能である。従って、現在まで利用されている除去方法としては、蒸留、逆浸透および吸着等が挙げられる。しかしながら、これらの方法を利用してゼラチンからエンドトキシンを除去することは困難である。蒸留は、水に含まれるエンドトキシンをほぼ完全に除去することが可能であるが、タンパク質溶液からの除去には不向きである。逆浸透は、タンパク質を構成するアミノ酸さえ通過することは出来ないため、ゼラチンのろ過には不適である。吸着は、例えばナイロン66膜にゼータ電位を付加させ、エンドトキシンを吸着ろ過する方法等があるが、ゼラチンのようなタンパク溶液は水よりイオン強度が高くエンドトキシン除去率に影響を与える要因が多く、水のように効率よく除去することが難しい(非特許文献1参照)。 血管内に直接投与する注射液は、エンドトキシン含量が厳しく制限されている。この注射液のエンドトキシン除去には、逆浸透や蒸留ではなく限外ろ過が利用されている。限外ろ過は多くの注射液に含まれる低分子(抗生物質、塩およびブドウ糖等)を完全に通過させ、エンドトキシンも除去することができる。その際、使用される限外ろ過膜の分画分子量は数千程度であり、最大でも1万である(非特許文献2、特許文献3)。Applied And Environmental M icrobiology,Dec,p1375−1377(1985)Applied And Environmental M icrobiology,Oct,p382−385(1977)特開昭58−73371号公報特開2004−089448号公報米国特許4082737号公報 前述のように、ゼラチンについても、低エンドトキシン化に対する要求は強い。これまでは、ゼラチンを購入した細胞培養をおこなう研究者や再生医療製品メーカーがこれらの処理を個々に行っていた。しかし、それらの処理は大変な手間であると同時に費用や時間がかなり必要である。そのため、ゼラチンメーカーが適切な低エンドトキシン化処理を行い、その品質を保証することはとても重要である。しかし、これまでは、工業的生産に適した低エンドトキシン化ゼラチンの製造方法は知られておらず、低エンドトキシン化ゼラチン容易に製造できる方法の確立は急務であった。 そこで本発明の目的は、エンドトキシンを低減化したゼラチンを多量生産に適した方法により製造する方法を提供することにある。さらに本発明の目的は、エンドトキシンを低減化したゼラチンを提供することにある。 一般にゲル化し得るゼラチンの平均分子量は、最低でも約3万であり、このような分子量を有するゼラチンから分画分子量1万の限外ろ過膜を使用して、ゼラチン溶液に含まれるエンドトキシンを除去することは、理論的に不可能である、と考えられていた。なぜなら、例えば、平均分子量3万のゼラチンを分画分子量1万の限外ろ過膜で処理しても、透過液には、分子量1万以下のゲル化し得ない一部のゼラチンが含まれるだけであり、大部分のゲル化し得るゼラチンは、エンドトキシンと一緒に不透過液中に残留し、除去されてしまうと容易に推察されるからである。 特に、通常よく使用されるゲル化し得るゼラチンの平均分子量は約10万前後であり、限外ろ過膜を使用してのエンドトキシンの除去は、到底不可能であると考えられていた。一方、エンドトキシンのリポサッカライドサブユニットの分子量が約2万であることから、限外ろ過膜の透過特性を考慮すると、確実にエンドトキシンを除去するには、分画分子量1万を超える限外ろ過膜を選択する余地はなかった。 ところが、本発明者らが検討したところ、ゼラチン溶液においては、分画分子量が1万を超える限外ろ過膜を用いても、エンドトキシンは、不透過液側に残留し、透過液として所望の低エンドトキシンゼラチン溶液を得ることができることを発見した。即ち、種々の平均分子量を有するゼラチン溶液を用意し、20,000〜300,000の範囲の分画分子量を有する数種類の限外ろ過膜(但し、ゼラチン溶液に含有されるゼラチンの少なくとも一部が透過し得る分画分子量を有するもの)で処理すると、エンドトキシンは、不透過液側に残留し、透過液としてエンドトキシンを低減したゼラチン溶液が得られた。 これは、従来の限外ろ過膜を用いたエンドトキシン除去の対象が、低分子物質(抗生物質、塩およびブドウ糖等)であったのに対して、本発明では、ゼラチン溶液中のエンドトキシンが除去の対象であり、ゼラチンを構成するアミノ酸は、さまざまな電荷や疎水性、親水性を示すことから、ゼラチン溶液中では、エンドトキシンの存在状態が、限外ろ過膜を透過しにくい状態になっているためと推察される。このため、エンドトキシンのリポサッカライドサブユニットの分子量約2万より遥かに大きい、例えば、10万あるいは20万の分画分子量を有する限外ろ過膜であっても、エンドトキシンを不透過液側に残留させて、透過液として所望の低エンドトキシンゼラチン溶液を得ることができる、という全く予想できない結果であり、この予想外の結果に基づいて本発明は完成された。 本発明は、以下のとおりである。[1]ゼラチンおよびエンドトキシンを含む原料ゼラチン含有溶液を、分画分子量が20,000から300,000の範囲であり、かつ原料ゼラチン含有溶液に含有されるゼラチンの少なくとも一部が透過し得る分画分子量を有する限外ろ過膜で処理して、エンドトキシン含有量を低減したゼラチン含有液を透過液として得ることを含む、エンドトキシン含有量を低減したゼラチンの製造方法。[2]原料ゼラチン含有溶液に含まれるゼラチンの平均分子量が1,000から300,000の範囲である[1]に記載の製造方法。[3]原料ゼラチン含有溶液に含まれるゼラチンの平均分子量が30,000から200,000の範囲である[1]に記載の製造方法。[4]限外ろ過膜の分画分子量が25,000から150,000の範囲である[1]〜[3]のいずれかに記載の製造方法。[5]前記原料ゼラチン含有溶液は、ゼラチン濃度が1〜30質量%の範囲である[1]〜[4]のいずれかに記載の製造方法。[6]前記原料ゼラチン含有溶液は、ゼラチン濃度が5〜20質量%の範囲である[1]〜[4]のいずれかに記載の製造方法。[7]限外ろ過膜は、分画分子量が、原料ゼラチン含有溶液に含まれるゼラチンの平均分子量の0.5倍以上である[1]〜[4]のいずれかに記載の製造方法。[8]前記原料ゼラチン含有溶液は、タンパク質1.0%当たりのエンドトキシン量として1,000〜100,000EU/mL含有する[1]〜[7]のいずれかに記載の製造方法。[9]前記エンドトキシン含有量を低減したゼラチンは、タンパク質1.0%当たりのエンドトキシン量が1EU/mL未満である[1]〜[8]のいずれかに記載の製造方法。[10]限外ろ過膜での処理が、カセット、スパイラルカートリッジ、またはファイバーフローの形式で行われる[1]〜[9]のいずれかに記載の製造方法。[11]限外ろ過膜での処理は、20〜60℃で行われる[1]〜[10]のいずれかに記載の製造方法。 本発明によれば、エンドトキシンを低減化したゼラチンを多量生産に適した方法で製造することができる。さらに、本発明によれば、エンドトキシンを低減化したゼラチンを得ることができる。 本発明によれば、ゲル化能、生体親和性ならびに生体内分解能といったゼラチン本来の機能を損なわず、細胞培養にとって有害なエンドトキシンを低減化することにより、従来利用されていた細胞培養・再生医療分野へ新しい品質(低エンドトキシン)を付加された材料を提供することができる。 本発明の方法は、ゼラチンおよびエンドトキシンを含む原料ゼラチン含有溶液を、分画分子量が20,000から300,000の範囲であり、かつ原料ゼラチン含有溶液に含有されるゼラチンの少なくとも一部が透過し得る分画分子量を有する限外ろ過膜で処理して、エンドトキシン含有量を低減したゼラチン含有液を透過液として得ることを含む、エンドトキシン含有量を低減したゼラチンの製造方法である。 エンドトキシンは、化学的には、リポポリサッカライドであり、リポポリサッカライドサブユニットの分子量は約2万であり、グラム陰性細菌表層のペプチドグリカンを囲んで存在する外膜の重要構成成分で、細胞1個当たり約3×105分子(表面の20〜30%)存在すると言われているものであり、発熱・致死活性・ショック・血圧降下等を引き起こす原因とされている。前述のように、エンドトキシンは、極めて微量で強い発熱活性を示す耐熱性の内毒素である。 一方、本発明の方法に用いられるゼラチンは、例えば、平均分子量が1,000から300,000の範囲であることができる。後述するが、ゼラチンは、平均分子量が約30,000以上になるとゲル化能を有する。従って、ゲル化能を有するゼラチンは、平均分子量が約30,000から300,000の範囲である。但し、ゲル化能を有さないゼラチンにも種々の用途はあり、本発明は、これらゲル化能を有さない1,000以上、30,000未満のゼラチンに対しても適用可能である。 本発明の方法では、原料ゼラチンに含まれるゼラチンは、上記範囲のいずれの平均分子量を有するものであっても良い。上記のように、本発明の方法に用いられるゼラチンとのリポポリサッカライドの分子量を比較すると、リポポリサッカライドのほうが分子量は圧倒的に小さい場合(特に、ゲル化能を有する平均分子量が約30,000以上のゼラチンの場合)もある。そのため、従来は、ろ過法により両者を分離することが困難と考えられてきた。 しかし、本発明者らの検討の結果、前述のように、ゼラチン溶液中でのエンドトキシンは、リポポリサッカライドサブユニットの分子量約2万と同等の20,000の分画分子量を有する限外ろ過膜から、リポポリサッカライドサブユニットの分子量約2万の15倍の300,000の分画分子量を有する限外ろ過膜まで、ほとんど透過せず、ゼラチンよりも見かけ上は、ろ過特性としては高分子量となっている。その結果、濃縮液側にエンドトキシンが濃縮され、ろ液(透過液)としてエンドトキシンを実質的に含有しないゼラチン溶液が得られる。 エンドトキシンを含むゼラチン原料を含有する溶液は、例えば、以下のように調製されるものである。 まず、エンドトキシンを含むゼラチン原料は、エンドトキシンを含むゼラチンであれば特に限定されない。一般的に利用されている哺乳動物の皮膚(真皮)、腱、骨、軟骨などの組織から酸やアルカリ液を用いて抽出されたゼラチンや魚鱗、魚皮から同様の方法で抽出されたゼラチンを原料として用いることができる。既知のゼラチン製造では、特にエンドトキシンを除去または不活化するような工程がなく、得られたゼラチンは通常エンドトトキシンが含まれた物となっている。 エンドトキシンを除去するためのゼラチン溶液の調製方法は、以下のとおりである。ペレット等の形態のゼラチンは、常温の水にて膨潤させ、所定の濃度になるように水分(塩が添加されたものでも良い)を加え、例えば、60℃程度のお湯で溶かすことで、ゼラチン溶液が得られる。ゼラチンが粉末の場合は、膨潤せず、所定の濃度になるように水分(塩が添加されたものでも良い)を加え、60℃程度のお湯で溶かすことで、ゼラチン溶液が得られる。液状のゼラチンは、そのまま、または適宜濃度調整をした後に本発明の方法に利用できる。 ゼラチン原料を含有する溶液は、ゼラチン原料を単に、水または温水に溶解することで調製されるが、これに必要に応じて添加剤を添加することもできる。但し、純粋なゼラチンを調製する場合には、そのような添加剤を添加することなく、限外ろ過に供される。 上記ゼラチン原料を含有する溶液は、ゼラチン濃度が、例えば、1〜30質量%の範囲であり、好ましくは3〜25質量%の範囲、好ましくは5〜20質量%の範囲であることが適当である。ゼラチン濃度が低すぎると、得られるゼラチン溶液の濃度も低下し、例えば、固形のゼラチンを調製する場合には、除去すべき水分量が多くなり不都合である。一方、ゼラチン濃度が高すぎると、ゼラチン原料を含有する溶液の粘度が高くなり、限外ろ過による処理操作が難しくなる傾向がある。特に、ゼラチン濃度が30質量%を超えると、ゼラチン原料を含有する溶液の粘度が上昇して、ろ過特性が低下する場合がある。そのような観点から、ゼラチン濃度は、上記範囲であることが適当である。 また、前述のように、ゼラチン溶液中では、エンドトキシンは、本来の分子量以上に限外ろ過膜を透過しにくい形態になっていると考えられる。例えば、エンドトキシンが高分子の凝集体を形成していることも推察される。しかし、これはあくまでも推察であり、本発明者らはこの推察に拘泥する意図はない。事実として、エンドトキシンは、ゼラチン溶液中では、本来の分子量を遥かに超える分画分子量を有する限外ろ過膜も透過しにくくなっている、ということである。 エンドトキシンは、ゼラチン溶液中では、本来の分子量を遥かに超える分画分子量を有する限外ろ過膜も透過しにくくなっているという現象は、少なくとも、平均分子量が1,000から300,000の範囲であるゼラチン溶液であって、ゼラチン濃度が1〜30質量%の範囲であれば、確認されている。従って、このような観点からも、ゼラチン溶液のゼラチン濃度は、1〜30質量%の範囲であることが適当である。 前記ゼラチン原料は、製造国の風土、製造環境、由来動物、抽出方法または使用器機の洗浄度等によって様々であるが、一般に、タンパク質1.0 %当たりのエンドトキシン量として1,000〜100,000EU/mL含有するものが多い。本発明の方法によってゼラチンに含まれるエンドトキシンをほとんど除去できるが、通常は、タンパク質1.0 %当たりのエンドトキシン量として1,000〜5,000EUのゼラチンを処理することが好ましく、より好ましくは100〜1,000EU、さらに好ましくは10〜100EU、さらに好ましくは、1〜10EUである。 前記ゼラチン原料に含まれるゼラチンは、例えば、平均分子量1,000から300,000の範囲であることができる。ゼラチンの平均分子量は、生体由来の骨や皮から抽出し精製されて得られるゼラチンは、その原料の部位や抽出温度ならびに時間、さらにはゼラチンをタンパク質分解酵素による分解等を制御することで、適宜決定できる。 平均分子量が1,000以上、10,000未満のゼラチンは比較的低分子量のゼラチンであり、例えば、タンパク質分解酵素等によって分解されたゼラチンペプチドを挙げることができ、この分子量分布のゼラチンは粘度が非常に低く、ゲル化能は有しない。ゲル化能は有しないが、種々の用途がある。 平均分子量が10,000以上、100,000未満のゼラチンは中程度の低分子量のゼラチンであり、一般的なゼラチンがこれに該当する。平均分子量が10,000以上、30,000未満のゼラチンは、比較的ゲル化能及び粘度が低く、分子量が大きくなるほどゲル化能ならびに粘度が高くなり、平均分子量が30,000以上のゼラチンは、良好なゲル化能を有する。従って、良好なゲル化能を有するという観点からは、平均分子量は30,000以上である。 平均分子量が100,000以上、300,000以下のゼラチンは比較的高分子量のゼラチンであり、例えば、熱による低分子化を抑えた熱変性コラーゲン(ゼラチン)を挙げることができ、3重螺旋構造が一部ほどけた状態である。 本発明の製造方法では、エンドトキシンを含むゼラチン原料を含有する溶液を、分画分子量が20,000から300,000の範囲であり、かつ原料ゼラチン含有溶液に含有されるゼラチンの少なくとも一部が透過し得る分画分子量を有する限外ろ過膜で処理する。従来、注射液等からエンドトキシンを除去するために使用された限外ろ過膜は、分画分子量が最大でも10,000であり、通常は数千であるが、本発明では、分画分子量が20,000から300,000の範囲の限外ろ過膜を用いる。分画分子量が20,000から300,000の範囲の限外ろ過膜であれば、ゼラチン溶液中のエンドトキシンは、実質的に透過液側に含まれることなく除去できる。但し、分画分子量が大きいほど、条件(ゼラチン濃度、ゼラチンの平均分子量、温度等)によっては、極一部ではあるが、エンドトキシンが限外ろ過膜を透過する可能性があり、エンドトキシンの除去を確認に行うという観点からは、限外ろ過膜の分画分子量は200,000以下であることが好ましい。 但し、限外ろ過膜の分画分子量は、透過液側に、所望のゼラチンが含まれるように、原料ゼラチン含有溶液に含有されるゼラチンの少なくとも一部が透過し得る分画分子量となるように選択する。好ましくは、原料ゼラチン含有溶液に含まれるゼラチンの平均分子量の0.5倍以上、好ましくは0.8倍以上、より好ましくは1倍以上の分画分子量を有する限外ろ過膜を用いる。限外ろ過膜を透過する分子は、一般に、分画分子量のプラスマイナス50%の範囲の分子量を有する分子である。例えば、分画分子量が100,000の限外ろ過膜であれば、50,000〜150,000の分子量を有する分子であれば透過できる。 また、ゼラチン溶液中のゼラチンの平均分子量に比べて限外ろ過膜の分画分子量が大きい方が、ろ過操作はスムーズである。また、限外ろ過膜で分画される分子の分子量は、上記のように、分画分子量のプラスマイナス50%の範囲の分子量を有する分子である。これらの点と、ゼラチン溶液中のゼラチンの平均分子量及び所望のエンドトキシン含有量を低減したゼラチンの平均分子量を考慮して、限外ろ過膜の分画分子量は決定される。限外ろ過膜の分画分子量が、ゼラチン溶液中のゼラチンの平均分子量に比べて十分に大きい場合には、エンドトキシン含有量を低減したゼラチンの平均分子量は、ゼラチン溶液中のゼラチンの平均分子量とほぼ同等になる。それに対して、限外ろ過膜の分画分子量が、ゼラチン溶液中のゼラチンの平均分子量と同等またはそれ以下の場合には、エンドトキシン含有量を低減したゼラチンの平均分子量は、ゼラチン溶液中のゼラチンの平均分子量より小さくなる場合がある。 使用する限外ろ過膜の分画分子量が30,000以上であれば、ゼラチンの平均分子量が30,000以上のゼラチン溶液を用いることで、ゲル化能を有するゼラチンを含むエンドトキシン含有量を低減したゼラチンが得られる。ゲル化能を有するゼラチンを含むエンドトキシン含有量を低減したゼラチンを、比較的容易なろ過操作で得るという観点からは、使用する限外ろ過膜の分画分子量は、好ましくは50,000以上、より好ましくは80,000以上、さらに好ましくは100,000以上が適している。また、限外ろ過膜の分画分子量の上限は、300,000であるが、好ましくは前述のように200,000、より好ましくは150,000である。 また、ゲル化能を有さないゼラチンを含むエンドトキシン含有量を低減したゼラチンを調製する場合には、分画分子量が20,000〜300,000、好ましくは25,000〜200,000、より好ましくは25,000〜150,000の限外ろ過膜を用い、平均分子量が1,000〜30,000のゼラチンを含むゼラチン溶液を限外ろ過に供することが適当である。 本発明において、使用される限外ろ過膜は、上記分画分子量を有する物であれは特に制限なく使用でき、例えば、再生セルロース、ナイロンおよび親水化ポリエーテルスルホン等からなる限外ろ過膜を使用できる。但し、これら以外の素材からなる限外ろ過膜も使用することはできる。 また、限外ろ過膜を用いたろ過方式にも特に制限はなく、例えば、デットエンドろ過ならびにクロスフローろ過のどちらも使用できる。しかし、処理量の観点からクロスフローろ過方式がより望ましい。また、クロスフロー方式には、カセットや、スパイラルカートリッジおよびファイバーフローの形態があるが、いずれの形態も使用できる。 カセットタイプの限外ろ過膜は、平らなカセットの中にろ過膜が組み込まれた形態であり、膜面に対して平行に液を流し、汚れを取り除きながら濾過を行なうものである。例えば、ミリポア製のペリコン2やアマシャム バイオサイエンス(株)製のフラットシートkvickカセット等が主な製品として挙げられる。このタイプは、カセットを挟む専用ホルダーに圧力計と送液用のチューブを接続し、適当な送液ポンプを用いて限外ろ過操作を行なうものである。実際の操作は、使用したカセット内の限外ろ過膜の最大圧力を超えないように送液ポンプの出力を調整して、限外ろ過操作を実施する。これは、取り扱い説明書等に記載された基本の方法に準じて行なえばよい。本発明によって得られる低エンドトキシンゼラチンは、ゲル化するものも処理化可能であるため、原料のゼラチン液ならびにろ液を作業途中でゲル化しないように一定の温度に保温することが重要であり、基本設備とは別に適当な保温・恒温装置を有することが好ましい。保温温度が高ければ粘度が低くなり、ろ過しやすくなるが、カセット内の限外ろ過膜の耐熱温度を超えない温度で実施する。処理量は、使用するカセットの膜面積ならびに使用するカセットの枚数によって、任意に選択することが可能である。 カセットタイプの限外ろ過膜を用いる方法では、例えば、250℃で2時間感熱滅菌したビンに1.0L毎、ろ液を分注し、各ビン中のゼラチンの濃度を測定する。ゼラチン濃度から、確実にゼラチンがろ過されている画分を確認し、ゼラチンを含むろ過画分液だけを集めて、目的の低エンドトキシンゼラチン溶液を得ることができる。また、ろ過画分液中には、極々微量のエンドトキシンが含まれることがあるので、品質管理上、エンドトキシン濃度を測定することが適当である。残留エンドトキシン濃度の許容量は、得られたゼラチンの用途により変化するが、例えば、1EU/mL未満、好ましくは0.1EU/mL未満、より好ましくは0.05EU/mL未満、さらに好ましくは0.03EU/mL未満である。 スパイラルカートリッジタイプの限外ろ過膜は、円柱カセットの中にろ過膜が渦巻状に組み込まれた形態で、膜面に対して平行に液を流し、汚れを取り除きながら濾過を行なうものである。例えば、ミリポア製のヘリコン等が主な製品として挙げられる。このタイプは、ホルダーを必要とせず円柱カセットに圧力計と送液用のチューブを接続し、適当な送液ポンプを用いて限外ろ過操作を行なうものである。実際の操作は、使用したカセット内の限外ろ過膜の最大圧力を超えないように送液ポンプの出力を調整して、限外ろ過操作を実施する。これは、取り扱い説明書等に記載された基本の方法に準じて行なえばよい。本発明によって得られる低エンドトキシンゼラチンは、ゲル化するものも処理化可能であるため、原料のゼラチン液ならびにろ液を作業途中でゲル化しないように一定の温度に保温することが重要であり、基本設備とは別に適当な保温・恒温装置を有するものが好ましい。保温温度が高ければ粘度が低くなり、ろ過しやすくなるが、カセット内の限外ろ過膜の耐熱温度を超えない温度で実施する。処理量は、使用する膜面積を対応させれば、任意に選択することが可能である。 スパイラルカートリッジタイプの限外ろ過膜を用いる方法では、例えば、250℃で2時間感熱滅菌したビンに1.0L毎、ろ液を分注し、各ビン中のゼラチン濃度を測定する。ゼラチン濃度から、確実にゼラチンがろ過されている画分を確認し、ゼラチンを含むろ過画分液だけを集めて、目的の低エンドトキシンゼラチン溶液を得ることができる。また、ろ過画分液中には、極々微量のエンドトキシンが含まれることがあるので、品質管理上、エンドトキシン濃度を測定することが適当である。残留エンドトキシン濃度の許容量は、得られたゼラチンの用途により変化するが、例えば、1EU/mL未満、好ましくは0.1EU/mL未満、より好ましくは0.05EU/mL未満、さらに好ましくは0.03EU/mL未満である。 ファイバーフロータイプの限外ろ過膜は、円柱カセットの中にろ過膜が細長い中空チューブとして束ねられて組み込まれた形態で、膜面に対して平行に液を流し、汚れを取り除きながら濾過を行なうものである。例えば、アマシャム バイオサイエンス(株)製のホローファイバーカートリッジや旭化成(株)製のmicroza等が主な製品として挙げられる。このタイプは、ホルダーを必要とせず円柱カセットに圧力計と送液用のチューブを接続し、適当な送液ポンプを用いて限外ろ過操作を行なうものである。実際の操作は、使用したカセット内の限外ろ過膜の最大圧力を超えないように送液ポンプの出力を調整して、限外ろ過操作を実施する。これは、取り扱い説明書等に記載された基本の方法に準じて行なえばよい。本発明によって得られる低エンドトキシンゼラチンは、ゲル化するものも処理化可能であるため、原料のゼラチン液ならびにろ液を作業途中でゲル化しないように一定の温度に保温することが重要であり、基本設備とは別に適当な保温・恒温装置を有するものが好ましい。保温温度が高ければ粘度が低くなり、ろ過しやすくなるが、カセット内の限外ろ過膜の耐熱温度を超えない温度で実施する。処理量は、使用する膜面積を対応させれば、任意に選択することが可能である。 ファイバーフロータイプの限外ろ過膜を用いる方法では、例えば、250℃で2時間感熱滅菌したビンに1.0L毎、ろ液を分注し、各ビン中のゼラチン濃度を測定する。ゼラチン濃度から、確実にゼラチンがろ過されている画分を確認し、ゼラチンを含むろ過画分液だけを集めて、目的の低エンドトキシンゼラチン溶液を得ることができる。また、ろ過画分液中には、極々微量のエンドトキシンが含まれることがあるので、品質管理上、エンドトキシン濃度を測定することが適当である。残留エンドトキシン濃度の許容量は、得られたゼラチンの用途により変化するが、例えば、1EU/mL未満、好ましくは0.1EU/mL未満、より好ましくは0.05EU/mL未満、さらに好ましくは0.03EU/mL未満である。 限外ろ過膜での処理は、ゼラチン溶液の粘度及び使用する膜の耐熱温度を考慮して決定されるが、通常20〜60℃で行われる。好ましい温度は40〜50℃である。この温度範囲で限外ろ過膜での処理を行うことで、ゲル化するような高分子ゼラチンも液体を保持し、限外ろ過処理を行なえるだけでなく、粘性がより低くなることによってろ過処理の時間が短縮されるという利点がある。 本発明の方法によれば、タンパク質1.0 %当たりのエンドトキシン量が1EU未満であるエンドトキシン含有量を低減したゼラチン含有液が、限外ろ過膜の透過液として得られる。好ましくは、タンパク質1.0 %当たりのエンドトキシン量が0.1EU未満、より好ましくは0.05EU未満、さらに好ましくは0.03EU未満であるゼラチン含有液が得られる。ゼラチン含有液に含まれるゼラチンは、原料ゼラチンの平均分子量及び限外ろ過膜の分画分子量等により変化するが、平均分子量が1,000から300,000の範囲を得ることができる。 限外ろ過膜の不透過液(濃縮液)は、エンドトキシンを原料に比べれば高濃度で含有するものである。従って、これを廃棄することもできるが、エンドトキシンの影響がない利用分野でのゼラチン原料として利用することもできる。 本発明は、タンパク質1.0 %当たりのエンドトキシン量が1EU未満であるゼラチンを包含する。本発明のゼラチンは、好ましくはタンパク質1.0 %当たりのエンドトキシン量が0.1EU未満、より好ましくは0.05EU未満、さらに好ましくは0.03EU未満である。このゼラチンは、平均分子量が1,000から300,000の範囲であることができる。さらに、ゼラチンの平均分子量は、(1)平均分子量が1,000以上、10,000未満のゼラチンは比較的低分子量のゼラチン、(2)平均分子量が10,000以上、100,000未満のゼラチンは中程度の分子量のゼラチン、及び(3)平均分子量が100,000以上、300,000以下のゼラチンは比較的高分子量のゼラチンに分類される。 本発明のゼラチン、および本発明の方法により製造されたゼラチンエンドトキシンが低減されているので、医療用具、細胞・組織加工医薬品等の原材料、医薬品等の製剤用の基材に好適に用いることができる。それ以外にも、化粧品、医薬部外品、食品用にも好適に用いることができる。尚、本発明の製造方法では、ゼラチンに替えてコラーゲンタンパク質を処理して、エンドトキシンを低減したコラーゲンタンパク質を調製することもできる。 本発明は、例えば、本発明のゼラチンを原料として得られるスポンジ状、シート状、フィルム状、塊状または線維状の材料を包含する。スポンジ状、シート状、フィルム状、塊状または線維状の材料は以下のようにして調製される。 この材料は、再生医療用途に適したものである。ここで再生医療用途とは、例えば、深い組織欠損に対して、真皮欠損グラフトのようにスポンジ状に加工した本品を埋め込み凹部の創治癒を促進させ、あるいは、創傷被覆材のように火傷の患部へシート状に加工した本品を貼ることにより湿潤環境を促進し、創治癒を促進させることへ利用することを指す。上記本発明のゼラチンを原料として得られるスポンジ状、シート状、フィルム状、塊状または線維状の材料は、再生医療向けの人工臓器および人工組織に用いることができる。人工臓器及び人工組織としては、例えば、人工皮膚、人工骨、人工軟骨、人工腱、人工血管、人工肝臓、人工靭帯、人工乳房、人工心臓弁、人工気管、人工角膜、人工歯周組織等を挙げることができる。 本発明は、例えば、本発明のゼラチンを原料として得られるコーティング剤、スキャッホールドまたはマトリックス素材、またはマイクロカプセルに関する。コーティング剤、スポンジやシートに加工したスキャッホールドまたはマトリックス素材は、細胞培養に適したものである。また、マイクロカプセルはDDS製剤に利用される。 本発明は、例えば、本発明のゼラチンを含む代用血漿または培養培地用添加剤に関する。代用血漿とは、出血に伴う循環血液量の減少を防ぐために、輸血を補助するために使用されるものであり、血清アルブミンやデキストラン等が挙げられる。培養培地用添加剤は、培養する細胞に対して、増殖能や代謝機能を活発にするために添加される機能性物質やそれらを安定化するような物質等が挙げられる。牛血漿アルブミンなどが安定剤として利用されているが、エンドトキシンを低減化させ、細胞毒性の低い本品を活用することは、より細胞にとって良い培地環境を得ることが出来る。 本発明は、例えば、本発明のゼラチンを含む安定化剤または賦形剤に関する。この安定化剤または賦形剤は、医薬品に利用できる。 以下に、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例1 ゼライス社製 酸処理豚皮ゼラチン(平均分子量100,000、80,000、60,000、40,000)を12%(W/V)に調製し、ミリポア製 セントリプラス(分画分子量 100,000ならびに50,000)に10mL注ぎいれ、50℃、3000rpm、20分の条件にて遠心作業をおこなった。ろ液のエンドトキシンの測定はCambrex Bio Science Walkersville 社製のエンドトキシン含有測定用のキットを用い、当該キットの取り扱い説明書に、マイクロプレートを用いた比色定量法(使用キット:Kinetic-QCL、プレートリーダー:Kinetic-QCL Reader、ソフトウェア:Kinetic-QCL software)ならびにゲル化転倒法(使用キット:パイロジェント03プラス)により測定を行った。ゲル化能は、ろ液を一晩4℃にて保管し、翌日、触感にて判定した。結果は表1に示す。比色定量法1.Kinetic-QCL中の大腸菌エンドトキシンバイアルの力価が50 EU/mlになるように、室温に戻したパイロジェンフリー水(日本薬局方 注射用水 大塚蒸留水、大塚製薬工場製)を加え、試験管ミキサー等で5分間激しく攪拌する。これをストック溶液とする。2.ストック溶液(冷蔵保存していた場合は室温に戻してから)を1分間激しく攪拌した後、直ちに、力価が5、0.5、0.05、0.005 EU/mlになるよう希釈溶液を調製する。これとストック溶液をエンドトキシン標準液とする。調製にはすべてパイロジェンフリー水を用いる。希釈後、分取前には1分間以上攪拌する。3.各試料の希釈溶液をパイロジェンフリー水を用いて調製する。4.プレートリーダーと接続したパソコンにより(リーダーを直接操作することもできる)、Kinetic-QCL Softwareを起動し、各試験のパラメーターを入力する。5.ディスプレー上の指示に従い、試薬及び検体に関する必要事項を入力する。6.マイクロプレートのウェルにパイロジェンフリー水(ブランク)、エンドトキシン標準液、検体、陽性コントロールを100μlずつ分注する。7.各溶液を分注したマイクロプレートをKinetic-QCL Readerの中に入れ、プレートを培養チャンバーに入れる。8.プレートを10分間、前処理(加温)する。9.前処理中にKinetic-QCL中のLAL/発色合成基質バイアルにパイロジェンフリー水2.6mlを静かに加え、泡立てないように注意しながら充分に混和・溶解する。10.前処理が終了したら、プレートを取り出し、LAL/発色合成基質を100μlずつ添加 する。11.Softwareに従って、Kinetic-QCL試験を行う。12.Kinetic-QCL Readerはマイクロプレート中の各ウェルの405nmにおける吸光度を連続的に測定する。各ウェルの初期吸光度をブランクとし、吸光度が0.200上昇するのに必要な時間を反応時間として求める。13.各エンドトキシン標準液について得られた反応時間とエンドトキシン濃度の対数/対 数関数を算出し、それによって得られた検量線を用いて各検体名のエンドトキシン量を算出する。ゲル化転倒法1.パイロジェント03プラス中のLAL試薬にパイロジェンフリー水(日本薬局方 注射用水 大塚蒸留水、大塚製薬工場製)5.2mlを静かに加え、泡立てないように注意しながら充分に混和・溶解する。充分に溶解したら、エンドトキシンフリー試験管(250℃ 2h乾熱滅菌、12×75 mm)に100μlずつ分注し、分注後直ちにエンドトキシンフリーキャップ(250℃ 2h乾熱滅菌)をする。これを−80℃で凍結保存し、使用時に取り出す。2.パイロジェント03プラス中の大腸菌エンドトキシンバイアルの力価が20 EU/mlになるように、パイロジェンフリー水を加え、試験管ミキサー等を用いて15分間激しく攪拌する。これをストック溶液とする。3.エンドトキシンストック溶液を希釈し、エンドトキシン標準液を調整する(ex.0.2EU/ml)。4.各試料の希釈溶液をパイロジェンフリー水を用いて調製する。5.LAL試薬の入った試験管に、それぞれパイロジェンフリー水(ブランク)、エンドトキシン標準液、検体を100μlずつ分注する。6.37℃±1℃ 1hインキュベートする。その際、一切の衝撃を与えないように注意する。7.インキュベート終了後、速やかに試験管を180°転倒し、ゲル化の度合いを観察する。 上記表に示す結果から分かるように、分画分子量100,000の限外ろ過膜を使用した場合、ろ過液中のエンドトキシン濃度は全て0.03EU/mL未満であり、全てゲル化した。さらに、ろ過膜を通過出来なかったゼラチン液(不透過液)は、エンドトキシン含有量が初期含有量より増加していた。 一方、分画分子量50,000の限外ろ過膜を使用した場合、平均分子量100,000ならびに80,000のゼラチンは、ろ過膜をほとんど通過することが出来なかった。また、平均分子量60,00のならびに40,000のゼラチンは、ろ過液のエンドトキシン濃度は0.03EU/mL未満であった。 上記結果を参照して、限外ろ過膜の分画分子量とろ過できるゼラチンの平均分子量を把握することができる。実施例2 ゼライス社製 酸処理豚皮ゼラチン(平均分子量60,000)のものを12%(W/V)に調製し、20Lをミリポア製 プロフラックスM30を使用して限外ろ過操作を行なった。限外ろ過膜は、ミリポア製 スパイラルカートリッジ(分画分子量100,000)を使用し、最大圧力を超えないように送液ポンプの出力を調整して、送液温度は50℃に保温しながら、限外ろ過操作をおこなった。 本発明によって得られる低エンドトキシンゼラチンは、ゲル化するものも処理化可能であるため、材料のゼラチン液ならびにろ液を限外ろ過の作業途中でゲル化しないように保温することが重要である。保温温度が高ければ粘度が低くなり、ろ過しやすくなるが、限外ろ過膜の耐熱温度を超えない温度で実施する。例えば、再生セルロースを材料とした膜を使用した場合、耐熱温度は55.0℃であるので、50℃を上限としてろ過を行なった。 ろ液は、250℃で2時間感熱滅菌したビンに1.0L毎に分注し、各ビン中のゼラチン濃度ならびにエンドトキシン濃度を測定した。その結果、最初の数本のビンに得られたろ過液は、ゼラチン濃度が極端に薄いため廃棄し、ゼラチン濃度が安定し、エンドトキシン濃度が0.03EU/mL未満のろ過液15本(15 L)を混合し、目的の低エンドトキシンゼラチンを得ることができた。その結果、エンドトキシンが1,542EU/mLの原料ゼラチンに限外ろ過を行なうことで、0.03EU/mL未満まで低減したゼラチンがろ液として得ることができた。一方、実施例1と同様に、ろ過されないゼラチン濃縮液は、エンドトキシン含有量が初期含有量より増加していた。実施例3 ゼライス社製 酸処理豚皮ゼラチン(平均分子量60,000)のものを12%(W/V)に調製し、20Lをミリポア製 ペリコン製ミニホルダーシステムを使用して限外ろ過操作を行なった。限外ろ過膜は、ミリポア製 ペリコン2ミニフィルター(分画分子量100,000)を使用し、最大圧力を超えないように送液ポンプの出力を調整して、限外ろ過操作をおこなった。 本発明によって得られる低エンドトキシンゼラチンは、ゲル化するものも処理化可能であるため、材料のゼラチン液ならびにろ液を限外ろ過の作業途中でゲル化しないように保温することが重要である。保温温度が高ければ粘度が低くなり、ろ過しやすくなるが、限外ろ過膜の耐熱温度を超えない温度で実施した。250℃で2時間感熱滅菌したビンに1.0L毎に分注し、各ビン中のゼラチン濃度ならびにエンドトキシン濃度を測定した。その結果、最初の数本のビンに得られたろ過液は、ゼラチン濃度が極端に薄いため廃棄し、ゼラチン濃度が安定し、エンドトキシン濃度が0.03EU/mL未満のろ過液15本(15 L)を混合し、目的の低エンドトキシンゼラチンを得ることができた。その結果、エンドトキシンが1,542EU/mLの原料ゼラチンに限外ろ過を行なうことで、0.03EU/mL未満まで低減したゼラチンがろ液として得ることができた。一方、実施例1と同様に、ろ過されないゼラチン濃縮液は、エンドトキシン含有量が初期含有量より増加していた。実施例4 ゼライス社製 酸処理豚皮ゼラチン(平均分子量1,000〜2,000)のものを12%(W/V)に調製し、20Lをミリポア製 プロフラックスM30を使用して限外ろ過操作を行なった。限外ろ過膜は、ミリポア製 スパイラルカートリッジ(分画分子量10,000)を使用し、最大圧力を超えないように送液ポンプの出力を調整して、限外ろ過操作をおこなった。 温度が高ければゼラチンの粘度が低くなり、ろ過しやすくなるが、限外ろ過膜の耐熱温度を超えない温度で実施した。250℃で2時間感熱滅菌したビンに1.0L毎に分注し、各ビン中のゼラチン濃度ならびにエンドトキシン濃度を測定した。その結果、最初の数本のビンに得られたろ過液は、ゼラチン濃度が極端に薄いため廃棄し、ゼラチン濃度が安定し、エンドトキシン濃度が0.03EU/mL未満のろ過液15本(15 L)を混合し、目的の低エンドトキシンゼラチンを得ることができた。その結果、エンドトキシンが1,850EU/mLの原料ゼラチンに限外ろ過を行なうことで、0.03EU/mL未満まで低減したゼラチンがろ液として得ることができた。一方、実施例1と同様に、ろ過されないゼラチン濃縮液は、エンドトキシン含有量が初期含有量より増加していた。実施例5 ゼライス社製ゼラチン(平均分子量50,000または80,000)のものを10%(W/V)に調製し、20Lをミリポア製 ペリコン製ミニホルダーシステムを使用して限外ろ過操作を行なった。限外ろ過膜は、ミリポア製 ペリコン2ミニフィルター(分画分子量300,000)を使用し、最大圧力を超えないように送液ポンプの出力を調整して、限外ろ過操作をおこなった。 温度が高ければゼラチンの粘度が低くなり、ろ過しやすくなるが、限外ろ過膜の耐熱温度を超えない温度で実施した。250℃で2時間感熱滅菌したビンに1.0L毎に分注し、各ビン中のゼラチン濃度ならびにエンドトキシン濃度を測定した。その結果、平均分子量50,000及び80,000のいずれのゼラチンについても、最初の数本のビンに得られたろ過液は、ゼラチン濃度が極端に薄いため廃棄し、ゼラチン濃度が安定し、エンドトキシン濃度が0.03EU/mL未満のろ過液15本(15 L)を混合し、目的の低エンドトキシンゼラチンを得ることができた。その結果、エンドトキシンが2,950EU/mLの原料ゼラチンに限外ろ過を行なうことで、0.03EU/mL未満まで低減したゼラチンがろ液として得ることができた。一方、実施例1と同様に、ろ過されないゼラチン濃縮液は、エンドトキシン含有量が初期含有量より増加していた。実施例6 ゼライス社製ゼラチン(平均分子量50,000または80,000)のものを5%(W/V)または20%(W/V)に調製し、20Lをミリポア製 ペリコン製ミニホルダーシステムを使用して限外ろ過操作を行なった。限外ろ過膜は、ミリポア製 ペリコン2ミニフィルター(分画分子量30,000または100,000)を使用し、最大圧力を超えないように送液ポンプの出力を調整して、限外ろ過操作(温度40℃)をおこなった。250℃で2時間感熱滅菌したビンに1.0L毎に分注し、各ビン中のゼラチン濃度ならびにエンドトキシン濃度を測定した。 その結果、平均分子量50,000及び80,000のいずれのゼラチンについても、かつ分画分子量30,000の限外ろ過膜及び分画分子量100,000の限外ろ過膜を使用したいずれの場合も、エンドトキシンが0.03EU/mL未満まで低減したゼラチンがろ液として得ることができた。また、ろ過されないゼラチン濃縮液にエンドトキシンの初期活性が増加していた。実施例7 実施例2で得られた低エンドトキシンゼラチンを用いて、ゼラチンスポンジを作製した。ゼラチンスポンジ作成方法(1)0.1〜20%のゼラチン溶液を調製する。(2)氷水等で冷やしながら(または常温で)、速やかにハンドミキサーやホモジナイザー(AM−7、日本精機製作所製)で1〜5分間攪拌する。(3)型等に流し入れ、−50〜−80℃で凍結させる。(4)完全に凍結したものは、凍結乾燥機(FDU−830、EYELA製)を用いて乾燥させる。(5)乾燥したものを熱架橋、架橋剤等を用いて架橋し、ゼラチンスポンジを得た(図1右上)。実施例8 実施例2で得られた低エンドトキシンゼラチンを用いて、ゼラチンシートを作製した。 作成方法は、実施例7と同様とした。ただし、浅い型を使用した(図2)。実施例9 実施例2で得られた低エンドトキシンゼラチンを用いて、有効成分を含んだビーズを混ぜてゼラチンスポンジを作製した。ビーズ入りゼラチンスポンジ作成方法(1)0.1〜20%のゼラチン溶液を調製する。(2)氷水等で冷やしながら(または常温で)、速やかにハンドミキサーやホモジナイザー(AM−7、日本精機製作所製)で1〜5分間攪拌する。(3)ビーズを添加する。(4)型等に流し入れ、−50〜−80℃で凍結させる。(5)完全に凍結したものは、凍結乾燥機(FDU−830、EYELA製)を用いて乾燥させる。(6)乾燥したものを、熱架橋、架橋剤等を用いて架橋し、これをビーズ入りゼラチンスポンジとする(図1下)。実施例10 実施例2で得られた低エンドトキシンゼラチンをパイロジェンフリー水(日本薬局方 注射用水 大塚蒸留水、大塚製薬工場製)にて希釈し、5.0%に調製する。クリーンベンチ内で直径85mm培養シックシャーレ(アズワン株式会社)の蓋を取り、調製したゼラチン溶液を3.0mL加え、全面に伸ばす。余分なゼラチン液はピペット等によりとり除き、蓋を開けたまま、室温にて乾燥させて、低エンドトキシンゼラチンにてコーティングされた培養シャーレを得た(図3)。低エンドトキシンゼラチンを原料として作製されたスポンジ(右上)、およびビーズ入りスポンジ(下)。低エンドトキシンゼラチンを原料として作製されたシート。低エンドトキシンゼラチンにてコーティングされた培養シャーレ。ゼラチンおよびエンドトキシンを含む原料ゼラチン含有溶液を、分画分子量が20,000から300,000の範囲であり、かつ原料ゼラチン含有溶液に含有されるゼラチンの少なくとも一部が透過し得る分画分子量を有する限外ろ過膜で処理して、エンドトキシン含有量を低減したゼラチン含有液を透過液として得ることを含む、エンドトキシン含有量を低減したゼラチンの製造方法。原料ゼラチン含有溶液に含まれるゼラチンの平均分子量が1,000から300,000の範囲である請求項1に記載の製造方法。原料ゼラチン含有溶液に含まれるゼラチンの平均分子量が30,000から200,000の範囲である請求項1に記載の製造方法。限外ろ過膜の分画分子量が25,000から150,000の範囲である請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。前記原料ゼラチン含有溶液は、ゼラチン濃度が1〜30質量%の範囲である請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。前記原料ゼラチン含有溶液は、ゼラチン濃度が5〜20質量%の範囲である請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。限外ろ過膜は、分画分子量が、原料ゼラチン含有溶液に含まれるゼラチンの平均分子量の0.5倍以上である請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。前記原料ゼラチン含有溶液は、タンパク質1.0%当たりのエンドトキシン量として1,000〜100,000EU/mL含有する請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法。前記エンドトキシン含有量を低減したゼラチンは、タンパク質1.0%当たりのエンドトキシン量が1EU/mL未満である請求項1〜8のいずれか1項に記載の製造方法。限外ろ過膜での処理が、カセット、スパイラルカートリッジ、またはファイバーフローの形式で行われる請求項1〜9のいずれか1項に記載の製造方法。限外ろ過膜での処理は、20〜60℃で行われる請求項1〜10のいずれか1項に記載の製造方法。