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タイトル:特許公報(B2)_アミノ酸類−亜鉛錯体に含まれるアミノ酸類の定量方法
出願番号:2006054876
年次:2011
IPC分類:G01N 31/00,G01N 33/68,G01N 31/16


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張 恵蘭 JP 4758786 特許公報(B2) 20110610 2006054876 20060301 アミノ酸類−亜鉛錯体に含まれるアミノ酸類の定量方法 株式会社トクヤマ 000003182 高畑 靖世 100083688 張 恵蘭 20110831 G01N 31/00 20060101AFI20110811BHJP G01N 33/68 20060101ALI20110811BHJP G01N 31/16 20060101ALI20110811BHJP JPG01N31/00 VG01N33/68G01N31/00 YG01N31/16 G01N 31/00−31/22 JSTPlus(JDreamII) 特開平08−301876(JP,A) 特開2002−047266(JP,A) 特開2003−026642(JP,A) 特公平07−116160(JP,B2) 特開2004−210860(JP,A) 3 2007232581 20070913 8 20081002 草川 貴史 本発明は、アミノ酸類の少なくとも1のアミノ基と1のカルボキシル基とが亜鉛に配位して形成される錯体(以下、アミノ酸類−亜鉛錯体と称す)に含まれるアミノ酸類の定量方法に関する。 医薬品には極めて塩基性が弱い有機塩が多く存在し、その定量には非水滴定が用いられている。非水滴定は、測定対象化合物である弱酸、弱塩基をプロトン性溶媒に溶解させて滴定を行う方法で、水溶液中では直接滴定できないような弱酸や弱塩基であってもプロトン性溶媒に溶かすと強い酸性、塩基性を示すようになることを利用した滴定法である。プロトン性溶媒としては、例えば、酢酸、無水酢酸、ギ酸、トリフルオロ酢酸及びこれらの混合溶媒等が使用される。 非水滴定の一例として、酢酸に溶解させたα−アミノ酸を過塩素酸を用いて滴定する場合の反応を以下に示す。アミノ酸と過塩素酸は各々酢酸との間でプロトンの授受を行い、溶媒中では以下に示す2つの反応(1)、(2)が生じている。 これらの反応を併せた溶媒中で進行する反応(3)は以下の通りである。 ところで、L−カルノシン亜鉛錯体は、従来胃潰瘍治療薬として用いられており、その結晶形態には、結晶性のものと、アモルファス状態のものとが存在することが知られている。L−カルノシン亜鉛錯体は下記式(4)で示される化合物であり、特許文献1に記載の方法により、結晶性のものは亜鉛とL−カルノシンとがほぼモル比で1:1の割合で含まれる結晶として製造される。 (式(4)中、nは正の整数を示す。) 結晶性L−カルノシン亜鉛錯体はアモルファス状態のものと比較して優れた薬効を示すことが知られ、亜鉛とL−カルノシンの比が所定範囲内に保たれた結晶を得ることは、重要な課題となっている。特公平7−116160号公報(請求項6) 結晶性L−カルノシン亜鉛錯体に含まれる亜鉛とL−カルノシンの割合は、錯体に含まれる亜鉛とL−カルノシンの含量を、それぞれ定量することにより決定できる。本発明者は、L−カルノシンの含量は通常の非水滴定により測定できると考えた。 非水滴定におけるアミノ酸類の定量においては、通常、酢酸等のプロトン溶媒に溶解させた溶液について終点指示に電極間の電位差を利用する電位差滴定が用いられる。そこで、結晶性L−カルノシン亜鉛錯体を酢酸に溶解させ電位差滴定を行ってみたところ、電位差の変化率が最大となる終点が当量点から大きくずれてしまい、L−カルノシンを正確に定量できないことが判明した。 本発明の目的は、L−カルノシン亜鉛錯体等のアミノ酸類−亜鉛錯体に含まれるアミノ酸類の非水滴定による定量方法であって、錯体に含まれるアミノ酸類を正確に定量できる方法を提供することにある。 L−カルノシン亜鉛錯体等の電位差滴定曲線において示される終点が当量点と乖離する現象は、錯体に含まれる亜鉛により電位差の検出が妨害されるためと考えられる。 本発明者は、L−カルノシン亜鉛錯体等のアミノ酸類−亜鉛錯体に含まれるアミノ酸類の定量方法について検討を行ったところ、L−カルノシン亜鉛錯体をギ酸で処理した後に酢酸を加えて調製したスラリーについて過塩素酸による電位差滴定等の電気滴定を行った場合には、再現性に問題はあるものの終点と当量点とが一致し、錯体に含まれるアミノ酸類が正確に定量できる場合があるという知見を得るに至った。 そこで、本発明者は、上記の系における再現性を向上させるべく更に検討を行った結果、スラリー調製時に使用するギ酸の量を錯体の量に対して特定の範囲に制御することにより、再現性よく正確にアミノ酸類の定量を行うことができることを見出し、本発明を完成するに至った。 上記課題を解決する本発明は、以下に記載するものである。 〔1〕 アミノ酸類−亜鉛錯体1gに対し10〜60ml(25℃基準)のギ酸を加えて撹拌して形成したスラリーに酢酸を添加することによりスラリー状の試料を調製する工程、および過塩素酸を用いて前記試料の滴定を行う工程を含むことを特徴とする、アミノ酸類−亜鉛錯体に含まれるアミノ酸類の定量方法。 〔2〕 酢酸の添加容量がギ酸の添加容量の3〜100倍であって、アミノ酸類−亜鉛錯体1gが含まれるスラリーの総容積が1000mlとなるように酢酸の添加容量を調整する〔1〕に記載のアミノ酸類の定量方法。 〔3〕 滴定が電位差滴定である〔1〕に記載のアミノ酸類の定量方法。 〔4〕 アミノ酸類−亜鉛錯体がL−カルノシン亜鉛錯体である〔1〕に記載のアミノ酸類の定量方法。 本発明においては、アミノ酸類−亜鉛錯体にギ酸を加えて調製したスラリーに酢酸を添加後、過塩素酸により滴定を行うため、錯体に含まれる亜鉛の影響を低減し、電位差滴定等の電気化学的な終点決定方法によっては定量が難しかったアミノ酸類−亜鉛錯体に含まれるアミノ酸類を簡便な方法で正確に、しかも再現性良く定量することが可能となる。 本発明の定量方法では、アミノ酸類−亜鉛錯体に特定量のギ酸を加えて撹拌して形成したスラリーに酢酸を添加することにより調製したスラリー状の試料について過塩素酸を用いた滴定を行うことにより、前記試料に含まれるアミノ酸類−亜鉛錯体に含まれるアミノ酸類を定量する。 本発明において、試料調製の順序は極めて重要であり、例えば先にアミノ酸類−亜鉛錯体を酢酸に溶解させた溶液にギ酸を添加してスラリー状態とした場合には、測定誤差が大きくなってしまう。また、滴定の際にも試料はスラリーの状態を保っている必要があり、予めギ酸と接触させてスラリー状としても、酢酸を大量に添加して溶液としてから滴定を行った場合には所期の効果は得られない。さらに、試料調製時に使用するギ酸の量も重要であり、該量が特定の範囲から外れる場合にも所期の効果を得ることができない。 このような現象が見られるのは、電位差滴定における亜鉛の妨害を抑制する機構と関わっているものと考えられる。理論に拘束されるものではないが、本発明者は、本発明の方法により電位差滴定における亜鉛の妨害が抑制されるのは、亜鉛とギ酸とが何らかの複合体を形成するためであると考えており、そのために上記のような現象が起こると考えている。すなわち、最初にアミノ酸類−亜鉛錯体とギ酸とを接触させてスラリー調製した場合には、錯体に含まれるほぼ全ての亜鉛がギ酸と複合体形成できるので、十分な妨害抑制効果が得られると思われる。それに対し、錯体の酢酸溶液にギ酸を添加してスラリーとした場合、ギ酸と混合して得たスラリーに酢酸を大量に添加して溶液とした場合、又はギ酸量が少なすぎて十分な複合体形成ができなかったり、ギ酸量が多すぎて複合体が不安定化したりする場合には、ギ酸と複合体形成できない亜鉛が無視できない量存在するようになり、亜鉛の妨害を十分に抑制することができなくなるため、上記のような現象が起こるものと考えられる。 本発明の定量方法では、まずアミノ酸類−亜鉛錯体にギ酸を加えて撹拌し、スラリーを調製する。錯体をスラリーとせずに溶解させた溶液の状態で滴定を行った場合には、正確な定量を行うことはできない。なお、スラリーは、可能な限り均一に調製することが好ましい。 ギ酸の添加量は、アミノ酸類−亜鉛錯体1gに対し、25℃基準の容量で10〜60mlとする必要があり、13〜30mlとすることがより好ましい。10ml未満では、スラリーの調製自体が難しく、60mlを超えると、誤差が大きくなり、場合によってはきれいな滴定曲線を得ることができず終点が不明瞭となる。 撹拌時間としては特に制限はないが、均一なスラリーを調製する観点から、10分以上とすることが好ましく、10〜30分とすることがより好ましい。 次に、このスラリーに酢酸を加えて滴定用のスラリー(試料)を調製し、錯体が分散したスラリーの状態を維持したまま、過塩素酸によるスラリーの滴定を行う。酢酸を添加しない場合には、測定結果の再現性が低下する。 酢酸の添加容量は、25℃基準で、ギ酸の添加容量の3〜100倍とすることが好ましく、15〜80倍とすることがより好ましい。3倍未満では、終点と当量点が乖離してアミノ酸類の定量が不正確となる傾向があり、100倍を超えるとスラリー濃度の低下により滴定における終点の決定が困難となる。 更に、酢酸の添加容量は、上述した範囲内で、アミノ酸類−亜鉛錯体1gが含まれるスラリーの総容積が1000mlとなるように調整することが好ましい。 滴定の際には、スラリーの温度を15〜35℃程度に維持し、スラリーを撹拌しながら行う。 終点の決定は、電位差滴定、伝導度滴定、電流滴定等の電気滴定により、系の電気化学的性質の変化を検出することにより行う。 本発明の対象となるアミノ酸類−亜鉛錯体には、ギ酸及び酢酸を添加した後スラリーの状態を維持できるものであれば特に制限することなく適用できる。具体的には、L−カルノシン亜鉛錯体、L−ホモカルノシン亜鉛錯体、グリシル−グリシン亜鉛錯体、L−グルタミン亜鉛錯体、L−アスパラギン亜鉛錯体、L−バリル−L−ヒスチジン亜鉛錯体、β−アラニル−L−アラニン亜鉛錯体、β−アラニル−グリシン亜鉛錯体、グリシル−グリシル−グリシン亜鉛錯体、グリシル−L−ヒスチジン亜鉛錯体等を挙げることができる。 実施例1 結晶性L-カルノシン亜鉛錯体0.2gにギ酸3ml(25℃基準)を加えて十分攪拌し、均一のスラリー状態にした。その後、酢酸を50ml(25℃基準)入れ、スラリー状態まま0.1N過塩素酸により電位差滴定を行い、L-カルノシンを定量した。その結果、L-カルノシン含量は77.27%であった(真値は77.42%で、標準偏差は0.25%以内である)。スラリーに0.1N過塩素酸を滴下したときの電位差滴定曲線を図1に示す。図1中、矢印Aは終点の位置を示す。 実施例2 結晶性L-カルノシン亜鉛錯体0.2gにギ酸2ml(25℃基準)を加えて十分攪拌し、均一のスラリー状態にしたが、均一化に時間がかかり、操作も困難であったため、時間をかけて慎重に操作した。その後、酢酸を50ml(25℃基準)入れ、スラリー状態まま0.1N過塩素酸により電位差滴定を行い、L-カルノシンを定量した。その結果、L-カルノシン含量は77.02%であった(真値は77.42%で、標準偏差は0.25%以内である)。電位差滴定曲線は、図1と同じ形状のものが得られた。 実施例3 結晶性L-カルノシン亜鉛錯体0.2gにギ酸10ml(25℃基準)を加えて十分攪拌し、均一のスラリー状態にした。その後、酢酸を50ml(25℃基準)入れ、スラリー状態まま0.1N過塩素酸により電位差滴定を行い、L-カルノシンを定量した。その結果、図1と同様な電位差滴定曲線が得られ、該曲線から求めた終点に基づいて決定したL-カルノシン含量は77.08%であった(真値は77.42%で、標準偏差は0.25%以内である)。 実施例4 L−グルタミン亜鉛錯体0.2gにギ酸3ml(25℃基準)を加えて十分攪拌し、均一のスラリー状態にした。その後、酢酸を50ml(25℃基準)入れ、スラリー状態まま0.1N過塩素酸により電位差滴定を行い、L−グルタミンを定量した。その結果、L−グルタミン含量は68.55%であった(真値は68.79%で、標準偏差は0.25%以内である)。なお、電位差滴定曲線は、図1と同じ形状のものが得られた。 比較例1 結晶性L-カルノシン亜鉛錯体0.2gに酢酸50ml(25℃基準)を加えて十分攪拌し、均一なスラリー状態にした。その後、ギ酸3ml(25℃基準)を入れ、スラリー状態まま0.1N過塩素酸により電位差滴定を行い、L-カルノシンを定量した。スラリーに0.1N過塩素酸を滴下したときの電位差滴定曲線を図2に示す。図2においては、電位差滴定の終点が確認できなかった。 比較例2 結晶性L-カルノシン亜鉛錯体0.2gにギ酸25ml(25℃基準)を加えて十分攪拌し、均一のスラリー状態にした。その後、酢酸を25ml(25℃基準)入れ、スラリー状態まま0.1N過塩素酸により電位差滴定を行い、L-カルノシンを定量した。その結果、図1と同様な電位差滴定曲線が得られたものの、該曲線から求めた終点に基づいて決定したL-カルノシン含量は75.16%であり、真値(77.42%)との誤差が大きかった。 比較例3 結晶性L-カルノシン亜鉛錯体0.2gに酢酸を50ml(25℃基準)入れ、長時間攪拌し溶解させた。その後、0.1N過塩素酸によりL-カルノシンを定量した。その結果、図1と同様な電位差滴定曲線が得られたものの、該曲線から求めた終点に基づいて決定したL-カルノシン含量は71.23%で、真値(77.42%)との誤差が大きかった。 比較例4 結晶性L-カルノシン亜鉛錯体0.2gに酢酸を50ml(25℃基準)入れ、長時間攪拌し溶解させた。その後、ギ酸3ml(25℃基準)を添加してスラリー状態とし、0.1N過塩素酸によりL-カルノシンを定量した。その結果、図1と同様な電位差滴定曲線が得られたものの、該曲線から求めた終点に基づいて決定したL-カルノシン含量は74.22%で、真値(77.42%)との誤差が大きかった。実施例1で得られた電位差滴定曲線を示すグラフである。比較例1で得られた電位差滴定曲線を示すグラフである。L−カルノシン亜鉛錯体又はL−グルタミン亜鉛錯体1gに対し10〜60ml(25℃基準)のギ酸を加えて撹拌して形成したスラリーに酢酸を添加することによりスラリー状の試料を調製する工程、および過塩素酸を用いて前記試料の滴定を行う工程を含むことを特徴とする、L−カルノシン亜鉛錯体又はL−グルタミン亜鉛錯体に含まれるL−カルノシン又はL−グルタミンの定量方法。酢酸の添加容量がギ酸の添加容量の3〜100倍であって、L−カルノシン亜鉛錯体又はL−グルタミン亜鉛錯体1gが含まれるスラリーの総容積が1000mlとなるように酢酸の添加容量を調整する請求項1に記載のL−カルノシン又はL−グルタミンの定量方法。滴定が電位差滴定である請求項1に記載のL−カルノシン又はL−グルタミンの定量方法。


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