タイトル: | 特許公報(B2)_LAMP法を用いたジフテリア毒素遺伝子検出方法およびこの方法に用いるプライマーセット |
出願番号: | 2006054058 |
年次: | 2012 |
IPC分類: | C12Q 1/68,C12N 15/09,G01N 21/83,G01N 21/78,G01N 33/50 |
岩城 正昭 高橋 元秀 荒川 宜親 JP 4876223 特許公報(B2) 20111209 2006054058 20060228 LAMP法を用いたジフテリア毒素遺伝子検出方法およびこの方法に用いるプライマーセット 財団法人ヒューマンサイエンス振興財団 803000056 特許業務法人特許事務所サイクス 110000109 岩城 正昭 高橋 元秀 荒川 宜親 20120215 C12Q 1/68 20060101AFI20120126BHJP C12N 15/09 20060101ALI20120126BHJP G01N 21/83 20060101ALI20120126BHJP G01N 21/78 20060101ALI20120126BHJP G01N 33/50 20060101ALI20120126BHJP JPC12Q1/68 AC12N15/00 AG01N21/83G01N21/78 CG01N33/50 P C12Q 1/68 C12N 15/09 CA/BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq UniProt/GeneSeq 厚生労働科学研究費補助金 新興・再興感染症研究事業 百日咳菌、ジフテリア菌、マイコプラズマ等の臨床分離菌の収集と分子免疫学的解析に関する研究 平成16年度 総括・分担研究報告書,第32−39頁(2005年) 日本臨床微生物学雑誌,第15巻,第1号,第1−8頁(2005年) J. Clin. Microbiol., vol. 40, pages 4713-4719 (2002) 4 2007228868 20070913 16 20090204 石丸 聡本発明は、LAMP法を用いたジフテリア毒素遺伝子検出方法およびこの方法に用いるプライマーセットに関する。ジフテリアは、主にジフテリア菌Corynebacterium diphtheriaeによって起こる感染症で、我が国の感染症法では2類に分類される重要な疾患である。ジフテリアは、日本ではワクチン接種の普及に伴い患者の報告が激減し、過去に10年間に数例の発生が見られるだけで報告のない年もある。しかし、1990年代のロシアでのジフテリア大発生(患者数15万人、死者4000人)により、まだ制圧にはほど遠いことが示されたのは記憶に新しい。ジフテリアのサーベイランスとワクチン接種の重要性が再認識されている。また、欧州ではジフテリア様患者から毒素産生性C.ulceransの分離報告があり、日本国内でも2001年と2002年に2名のジフテリア様患者から本菌が分離・確認された。近年、さまざまな疾病の診断に分子学的検査法が盛んに導入されており、ジフテリアの検査においても早期かつ簡便な方法が求められている。また、アジア地区ではジフテリアの散発が報告されている。臨床検査の現場におけるジフテリア毒素遺伝子検出の意義と現状ジフテリアの病態には、ジフテリア菌が産生する主要な病原因子であるジフテリア毒素が極めて重要な役割を果たしており、感染症法においても、患者から分離された菌がこのジフテリア毒素を産生するかどうかが、感染症としてのジフテリアと見なされるかどうかの決め手となる。従って、現行の実験室内診断(臨床検査)は基本的に分離菌のジフテリア毒素産生性の証明をクライテリアとしており、スワブ等の臨床検体から菌が分離されることが前提である。そのため、菌分離が不能で診断そのものが成り立たず「ジフテリア疑い」で終わってしまうことも多く、また運良く菌が分離されても菌の同定と毒素産生性の証明を経て診断が確定するまでに1週間近くの期間が必要である。ジフテリアは隔離が義務づけられる2類感染症であり、公衆衛生的見地から実験室診断(臨床検査)の迅速化が求められている。新規迅速診断法が備えるべき条件と問題前項に述べたように、「ジフテリア毒素産生菌」の存在を迅速に検知できることが条件である。この条件を満たすために、分子生物学的な手法を用いた試みがなされてきた。ジフテリア毒素遺伝子をターゲットとしたPCR法、リアルタイムPCR法が研究レベルではすでに開発されている(PCR法: Nakao et al. J. Clin. Microbiol. 1997, 35(7)1651-1655(非特許文献1、リアルタイムPCR法: Mothershed et al. J. Clin. Microbiol. 2002, 40(12)4713-4719(非特許文献 2)。ジフテリア菌の分子学的検査法としてはNakao et al. J. Clin. Microbiol. 1997, 35(7)1651-1655Mothershed et al. J. Clin. Microbiol. 2002, 40(12)4713-4719PCRを用いた実験室診断法はジフテリア菌DNA検出系として十分に実用に耐え得るものであり、現行の実験室診断を補助する方法として使われつつある。しかし、サーマルサイクラー等の特殊な機器を必要とすることが難点であり、より簡便で一般の実験室でも遂行可能な方法の開発が望まれている。近年、PCR法に代わる遺伝子診断法として、簡便かつ迅速な診断を可能とするLAMP法(Loop mediated isothermal Amplification)が開発され、多くの感染症でその応用研究が進められている。LAMP法はPCR反応に必須な遺伝子増幅装置を必要とせず、短時間に判定できる利点を有し、さらに反応系に蛍光色素を添加することで目視による判定を可能とする。そのため機器類が十分に整備されていない病院などの検査室にも導入可能な検査技術として注目されている。しかし、ジフテリア菌に対するLAMP法プライマーは、実用に耐え得る程度の増幅能力を有するものは開発されていないため、ジフテリア菌を特異的に検出するLAMP法プライマーの設計とその評価が必要であった。本発明は、ジフテリア毒素産生菌の簡便で高感度・特異的な検出を行なうことを課題としている。この課題を解決するために、本発明は、LAMP法によりジフテリア毒素遺伝子を高感度・特異的に増幅・検出できるプライマー配列を提供し、このプライマー配列を用いたジフテリア毒素遺伝子の検出方法を提供することを目的とする。さらに、本発明は、上記プライマー配列を用いたジフテリア毒素遺伝子検出用キットを提供することを目的とする。 上記課題を解決するための本発明は、以下のとおりである。[1]ジフテリア毒素遺伝子の少なくとも一部をLAMP法により増幅し得るプライマーセットを用意し、検体からDNAを抽出し、抽出したDNAを、前記プライマーセットを用いるLAMP法による増幅操作に供し、増幅操作後に、産物中に、増幅されたDNAが含まれるか否かを確認する、ことを含み、前記プライマーセットが配列表に示された配列番号1〜6の塩基配列を有する6つのDNAを含む、検体中に含まれるジフテリア毒素遺伝子を検出する方法。[2]増幅産物中に増幅されたDNAが含まれるか否かを、増幅産物の濁度を測定することで確認するか、または蛍光色素を用いて確認する[1]に記載の方法。[3]検体中の菌体に含まれるジフテリア毒素遺伝子をLAMP法により検出するために用いられる、配列表に示された配列番号1〜6の塩基配列を有する6つのDNAを含むプライマーセット。[4][3]に記載のプライマーセットを含む、検体中に含まれるジフテリア毒素遺伝子をLAMP法により検出するためのキット。本発明者らは、ジフテリア毒素に特異的な遺伝子領域(ジフテリア毒素遺伝子 (tox) のうち毒素Aサブユニットをコードする領域の内部)に対し6種のLAMP法プライマーを組み合わせたプライマーセットCd#16を設計することにより、高感度で特異性に優れたジフテリア毒素遺伝子検出系を構築した。本発明によれば、ジフテリア毒素遺伝子を高感度かつ特異的に検出することができる。LAMP法はPCR法のような煩雑な操作を必要しないため、病院などの検査室に導入可能な技術である。そのため、本発明により簡便かつ迅速なジフテリア診断が臨床現場で可能となる。これにより、感染症法で患者の隔離が義務づけられているジフテリアの診断の迅速化を通して、公衆衛生的に迅速な対応が可能になると期待される。本発明は、検体中の菌体に含まれるジフテリア毒素遺伝子を検出する方法に関する。この方法は、以下の工程を含む。(1)ジフテリア毒素遺伝子の少なくとも一部をLAMP法により増幅し得るプライマーセットを用意する。(2)検体からDNAを抽出する。(3)抽出したDNAを、前記プライマーセットを用いるLAMP法による増幅操作に供する。(4)増幅操作後に、産物中に、増幅されたDNAが含まれるか否かを確認する。[プライマーセット]本発明の方法では、ジフテリア毒素遺伝子の少なくとも一部をLAMP法により増幅し得るプライマーセットを用意する。ジフテリア菌は、Corynebacterium diphtheriae属する細菌であり、12種類のジフテリア菌(毒素原性、非毒素原性)遺伝子に特異的な配列を探索し、Aサブユニット遺伝子の内部の配列(配列番号7)を選定し、さらにこの配列に対しLAMP法プライマーの設計を行なった。設計にはLAMP法プライマー設計支援ソフト(PrimerExplorer Ver.3、栄研化学)を使用し、設計されたプライマーセットの中から本発明者らが、候補となり得ると考えた8種類のプライマーセットを選択した。そして、選択されたプライマーセットを合成し、各プライマーセットについて、その検出感度と特異性を1種類のジフテリア菌から精製したDNAを用いて検討した。その結果、本発明のプライマーセットが最も高い感度を示した。本発明においては、ジフテリア毒素遺伝子の少なくとも一部をLAMP法により増幅し得るプライマーセットとしては、以下の配列番号1〜4の4種類のDNAからなるプライマーセットを用いることが好ましい。図1に、ジフテリア菌のジフテリア毒素遺伝子に対するプライマーセットCd#16の設計位置を示した。LFとLBはloop プライマーを示し、LAMP法による増幅領域はF2からB2cである。配列番号1〜4の4種類のDNAからなるプライマーセットを用いることで、ジフテリア毒素遺伝子の一部のDNAをLAMP法により増幅することができる。増幅されるDNAの最小単位は70bpと計算されるが、LAMP法ではDNAがカリフラワー様に増幅するので、実際には70bp以外の様々なサイズの遺伝子が増幅される。Cd#16#F3#HPLC:AAAGGTTCGGTGATGGTG(配列番号1)Cd#16#B3#HPLC:CAATGAGCTACCTACTGATCG(配列番号2)Cd#16#FIP#HPLC:TAACGCTTTCGCCTGTTCCCTGTAGTGCTCAGCCTTCC(配列番号3)Cd#16#BIP#HPLC:GTGGAAAACGTGGCCAAGATCCTGACACGATTTCCTGC(配列番号4)Cd#16#F3は、tox遺伝子ORF中の位置:nt 449-466であり、Cd#16#B3:は、tox遺伝子ORF中の位置:nt 672-652である。Cd#16#FIPは、tox遺伝子ORF中の位置:nt 552-533, 474-491であり、Cd#16#BIPは、tox遺伝子ORF中の位置:nt 584-603, 651-634である。本発明の方法では、上記4種類のプライマーは、それぞれ上記で示した全配列を有することが、検体中にジフテリア毒素遺伝子が存在する場合、ジフテリア毒素遺伝子を菌株の種類によらず確実に増幅するという観点から好ましい。但し、各プライマーともその一部の塩基を欠失または置換したもの、あるいは、他の塩基が付加されたものでも、同様のプライマーとしての機能を発揮するものはあり得る。即ち、配列番号1〜4のいずれかの塩基配列において1から数個の塩基の欠失、置換及び/又は付加を有する塩基配列を有し、かつジフテリア毒素遺伝子の少なくとも一部をLAMP法によって増幅することができるプライマー機能を有するDNAを、プライマーセットの一部または全部のDNAとして含むプライマーセットも、本発明の方法で使用できる。本発明のプライマーセットは、前記4種類のDNAに加えて、以下のDNA(loopプライマー)をさらに含むことが好ましい。Cd#16#LF#HPLC:CGCTAGAACTCCCCTCAGC(配列番号5)Cd#16#LB#HPLC:GCGATGTATGAGTATATGGCTCAAG(配列番号6)Cd#16#LFは、tox遺伝子ORF中の位置:nt 514-496であり、Cd#16#LBは、tox遺伝子ORF中の位置:nt 604-628である。本発明の方法において、プライマーセットは、上記loopプライマーを含まなくても、ジフテリア毒素遺伝子の少なくとも一部をLAMP法によって増幅することはできる。しかし、上記loopプライマーを含む場合の方が、増幅時間を大幅に短縮でき、好ましい。上記loopプライマーにおいても、各プライマーの一部の塩基を欠失または置換したもの、あるいは、他の塩基が付加されたものでも、loopプライマーとしての機能を発揮するものはあり得る。即ち、配列番号5または6の塩基配列において1から数個の塩基の欠失、置換及び/又は付加を有する塩基配列を有し、かつジフテリア毒素遺伝子の少なくとも一部をLAMP法によって増幅する際のloopプライマー機能を有するDNAを、プライマーセットの一部のDNAとして含むプライマーセットも、本発明の方法で使用できる。尚、本明細書で言う「1から数個の塩基の欠失、置換及び/又は付加を有する塩基配列」における「1から数個」の範囲は特には限定されないが、例えば、1から10個、好ましくは1から5個、より好ましくは1から4個、より好ましくは1から3個、さらに好ましくは1から2個、特に好ましくは1個を意味する。本発明の上記プライマーセットを構成する各DNAは、前記塩基配列に基づいて、既知のDNA調製方法により適宜入手することができる。本発明は、上記プライマーセットを用いる、ジフテリア毒素遺伝子の検出方法に関するが、本発明は、上記プライマーセット自体を発明として包含する。さらに本発明は、上記本発明のプライマーセットを含む、検体中の菌体に含まれるジフテリア毒素遺伝子をLAMP法により検出するためのキットも包含する。本発明のプライマーセットは、例えば、1回のLAMP法による遺伝子の増幅に必要な量の前記4種類または6種類のプライマー(DNA)を含む形態であることができる。1回のLAMP法による遺伝子の増幅に必要な量のプライマー(DNA)量は、例えば、5 〜 40 pmol / 反応チューブの範囲である。 [DNA抽出]本発明の方法では、検体からDNAを抽出する。具体的には、検体中の菌株から市販のDNA抽出キットを用いて直接DNAを抽出する。DNA抽出キットとしては例えば、QIAamp DNA Micro Kit (Cat. No. 56301、Qiagen社)を挙げることができる。あるいは、検体からDNAを抽出せず、菌体を煮沸(boil)するだけの簡単な調製法でも、本発明の方法において鋳型として用いるDNAは調製できる。[LAMP法による増幅]本発明の方法では、抽出したDNA(DNAテンプレイト)を、前記プライマーセットを用いるLAMP法による増幅操作に供する。LAMP法による増幅操作は、例えば、以下のように行うことができる。試薬(例えば、Bst DNAポリメラーゼ、反応バッファー、dNTPs、プライマーセット、蒸留水)を混合し、反応チューブに分注した後にDNAテンプレイト(抽出したDNA)を加える。次いで、例えば、65℃にてインキュベートする。インキュベート時間は、例えば、30分〜90分の範囲である。[増幅されたDNAの確認]本発明の方法では、増幅操作後に、産物中に、増幅されたDNAが含まれるか否かを確認する。検体中に含まれる菌体中にジフテリア毒素遺伝子が含まれている場合、増幅操作によりジフテリア毒素遺伝子が増幅される。逆に、検体中に含まれる菌体中にジフテリア毒素遺伝子が含まれていなければ、増幅操作によっても増幅されるDNAはない。増幅産物中に増幅されたDNAが含まれるか否かは、例えば、増幅産物の濁度を測定すること、または蛍光目視検出で確認することができる。増幅産物の濁度の測定は、具体的には、以下のように行うことができる。リアルタイム濁度測定装置により経時的に、あるいは濁度測定装置により最終増幅産物の濁度を測定する。蛍光目視検出は、蛍光目視試薬を添加して反応させ、UVランプを当てることにより目視で反応液の蛍光発色を観察することで行うことができる。本発明は、前記方法で説明したプライマーセットを包含する。さらに、本発明は、本発明のプライマーセットを含むキットも包含する。キットに含まれるものは、例えば、以下の物であることができる。1.Bst DNAポリメラーゼ2.反応バッファー3.dNTPs4.プライマーセット(本発明のプライマー)5.コントロールDNA(陽性コントロール)6.反応チューブ7.説明書前述のように、本発明の方法では、DNAの増副産物の有無を濁度測定または蛍光目視検出により行うことができる。蛍光目視で検出する場合は、上記キットに蛍光目視試薬を含めることができる。濁度測定装置を使用する場合には、キットには蛍光目視検出試薬は含めない。以下本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。材料と方法菌株と試薬ジフテリア菌ATCC700971(NCTC13129)は米国ATCCから購入した。その他のジフテリア菌菌株は研究室保存のものおよびATCCから購入したものを用いた。血液寒天培地は日水製薬(株)製のものを用いた。BHI (Brain Heart Infusion)液体培地はDifco (Becton Dickinson)製のものを37g/lになるように精製水で溶解し滅菌して用いた。DNA増幅には栄研化学製LoopAmp DNA増幅試薬キットを用いた。血液寒天上のコロニーからの総DNA抽出にはQiagen 社製のGenomic Tip -20または100とQiagen Genomic Buffer Setを用いた。培養凍結保存した菌を血液寒天培地に塗布あるいはBHI液体培地に懸濁し、37℃一晩から二晩培養して実験に用いた。これらの培養を同様の培地に植え継いだ培養も、同様に用いた。DNA調製(1) 血液寒天上コロニーからのQiagen による精製血液寒天平板培地上で37℃一晩培養した菌体を2mlの精製水に懸濁しながらコンラージ棒で集め、遠心して洗ったのち、Qiagenキットの指定に従い総DNAを抽出した。リゾチームのみ指定と異なる量(50mg/ml)を用いた。得られた精製DNAをテンプレートとして用いた。(2) 塩化セシウム-臭化エチジウム密度勾配超遠心による精製200mlのBHI液体培地で37℃一晩培養した菌体を遠心集菌し、生理食塩水で菌体を洗浄してから凍結融解したのち、27mg/mlのリゾチームを含むQiagen Genomic Buffer SetのB1溶液11mlに懸濁して37℃一晩インキュベート、さらにタカラバイオ社製Proteinase Kを1ml加えて37℃1時間インキュベートした。次にQiagen Genomic Buffer SetのB2溶液を4mlとQiagen RNase溶液を10μl加え50℃1時間インキュベートして菌体を溶解した。得られた菌体ライセートを、のフェノール/クロロホルム処理2回とのクロロホルム処理1回で除蛋白を行ない、エタノール沈澱で粗DNA画分を得た。粗DNA画分から、常法による塩化セシウム-臭化エチジウム密度勾配超遠心で精製DNAを得た。得られた精製DNAをテンプレートとして用いた。(3) 寒天平板培地上コロニーからのボイル法による粗DNAの調製血液寒天平板培地またはBHI寒天平板培地上に菌を塗布し37℃一晩培養して生じたコロニーをかきとり、精製水に懸濁してOD600を測定して適当に精製水で希釈して、OD6001= 1の懸濁液を調製した。このOD = 1の懸濁液をさらに10倍ずつ段階希釈し、OD = 0.001までの懸濁液を調製した。これらの懸濁液をアルミブロックヒーターで100℃30分加熱し、遠心した上清をDNAテンプレートとして用いた。プライマーの設計栄研化学(株)のwebサイト上で動作するwebアプリケーション"Primer Explorer Ver3"を用いて、NCBIから得られたジフテリア毒素遺伝子の塩基配列情報をもとにプライマーを設計した。設計したプライマーはジフテリア毒素Aサブユニットに対応する遺伝子領域上に位置し、上記配列番号1〜6に示す塩基配列である。プライマーは、全て北海道システムサイエンス社による受託合成(HPLC精製グレード)のものを用いた。LAMP法によるDNA増幅栄研化学(株)「LoopAmp DNA増幅試薬」の取扱説明書によった。増幅されたDNAの検出は、栄研化学LA-320c型リアルタイム濁度検出器によった。PCRLAMPプライマーセットの感度と特異性は、既存のPCR法(非特許文献1)と比較することにより実施した。遺伝子増幅の有無は、PCR産物5μLを1%アガロースゲル電気泳動で分離後、エチジウムブロマイド染色により確認した。LAMP検出系Loopamp DNA増幅試薬キット(栄研化学)を用いて、LAMPプライマーセットの検出感度と特異性を評価した。LAMP検出系は反応液25 μl中に、0.2 μM の各outer primer (F3, B3)、1.6 μMの各inner primer (FIP,BIP)、0.8 μMの各loop primer (LF,LB)、1 μlのBst-DNA polymerase、12.5 μlの2×反応液、1 μlのDNA溶液を含み、65℃で1時間反応させた。その後、80℃で2分間の反応停止処理を行なった。反応チューブにはLoopamp反応チューブ(栄研化学)を使用し、遺伝子増幅に伴う濁度の増加はリアルタイム測定装置(Loomamp LA-320C、栄研化学)を用いて測定した。表1にLAMP検出系の反応組成を示す。プライマーセットCd#16を用いたLAMP検出系の感度をまとめて以下の表2に示す。精製ジフテリア菌DNAを連続希釈し、LAMP検出系の検出限界を測定し、表に示した。リアルタイム測定装置(Loopamp LA-320C、栄研化学)を用いて濁度の増加を測定した結果である。BHI液体培地で培養したジフテリア菌C. diphtheriae ATCC700971株よりCsCl密度勾配超遠心法で精製したゲノムDNAを様々な濃度に希釈して鋳型として用い、通常の条件(64℃)で増幅反応を行なうことにより、10コピー以上のゲノムDNAが反応液中にあれば、本発明のプラーマーセットCd#16を用いたLAMP法で検出可能であることが明らかになった。図2にBHI液体培養からCsCl精製したジフテリア菌DNA を鋳型とし、本発明のプライマーセットCd#16を用いて行ったLAMP増幅の結果を示す。10コピーを15〜30分で増幅する感度であった。また、実際の臨床検査現場での簡便な使用を考え、培養した菌体を蒸留水に懸濁し100℃で30分間加熱した上清を供試することでも検出が可能であった。血液寒天培地上のコロニーではOD600 = 1になるように懸濁した菌懸濁液から、BHI液体培地で培養した菌体の場合は、OD600 = 0.001になるように懸濁した菌懸濁液から、ジフテリア毒素遺伝子が検出された。Corynebacterium属細菌に対するLAMP検出系の特異性を示すため、ジフテリア菌14菌株および近縁菌Corynebacterium ulcerans 2菌株のDNAを鋳型として、プライマーセットCd#16を用いたLAMP法での検出結果とPCR法による検出結果を比較することで特異性を検討した結果を以下の表3に示す。表3に示すように、C. diphtheriae 14菌株と近縁菌Corynebacterium ulcerans 2菌株から精製したゲノムDNAについて、本発明のプライマーセットCd#16を用いてLAMP法によるジフテリア毒素遺伝子の検出を試みた。C. diphtheriae 14菌株のうち10菌株からジフテリア毒素遺伝子が検出され、残り4菌株からは検出されなかった。Corynebacterium ulcerans 2菌株についてはいずれからもジフテリア毒素遺伝子が検出された。これら16菌株についての検出結果は、従来法であるジフテリア毒素遺伝子を対象としたPCR法による検出結果と完全に一致したことから、本発明のプライマーセットCd#16は、特異性の高いLAMP法検出に適していることが示された。図3に血液寒天平板培地上コロニーからのボイル法によるジフテリア菌DNAを鋳型とし、本発明のプライマーセットCd#16を用いて行ったLAMP増幅の結果を示す。感度は1OD (約1 x 105 cfu)であった。図4にBHI寒天平板培地上コロニーからのボイル法によるジフテリア菌DNAを鋳型とし、本発明のプライマーセットCd#16を用いて行ったLAMP増幅の結果を示す。感度は、0.001OD (=100cfu)であった。ただしボイルしてすぐ使うことが好ましい。図5にBHI寒天平板培地上コロニーからのボイル法によるジフテリア菌DNAの調製DNAを鋳型とし、本発明のプライマーセットCd#16を用いて行ったLAMP増幅の結果とPCRを増幅の結果を合わせて示す。12菌株のジフテリア菌 (毒素原性、非毒素原性)(毒素原性C. ulcerans)を用いた。検出結果はPCRとよく一致した。本発明によるプライマーセットを用いたLAMP検出系は、ジフテリア菌感染症の体外診断薬としての実用化が期待できる。LAMP法プライマーの設計の説明図。BHI液体培養からCsCl精製したジフテリア菌DNAを鋳型とし、プライマーセットCd#16を用いて行ったLAMP増幅の結果を示す。血液寒天平板培地上コロニーからのボイル法によるジフテリア菌DNAを鋳型とし、プライマーセットCd#16を用いて行ったLAMP増幅の結果を示す。BHI寒天平板培地上コロニーからのボイル法によるジフテリア菌DNAを鋳型とし、プライマーセットCd#16を用いて行ったLAMP増幅の結果を示す。BHI寒天平板培地上コロニーからのボイル法によるジフテリア菌DNAを鋳型とし、プライマーセットCd#16を用いて行ったLAMP増幅の結果とPCRを増幅の結果を合わせて示す。ジフテリア毒素遺伝子の少なくとも一部をLAMP法により増幅し得るプライマーセットを用意し、検体からDNAを抽出し、抽出したDNAを、前記プライマーセットを用いるLAMP法による増幅操作に供し、増幅操作後に、産物中に、増幅されたDNAが含まれるか否かを確認する、ことを含み、前記プライマーセットが配列表に示された配列番号1〜6の塩基配列を有する6つのDNAを含む、検体中に含まれるジフテリア毒素遺伝子を検出する方法。増幅産物中に増幅されたDNAが含まれるか否かを、増幅産物の濁度を測定することで確認するか、または蛍光色素を用いて確認する請求項1に記載の方法。検体中の菌体に含まれるジフテリア毒素遺伝子をLAMP法により検出するために用いられる、配列表に示された配列番号1〜6の塩基配列を有する6つのDNAを含むプライマーセット。請求項3に記載のプライマーセットを含む、検体中に含まれるジフテリア毒素遺伝子をLAMP法により検出するためのキット。配列表