生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_肺線維症予防剤
出願番号:2006041405
年次:2006
IPC分類:A61K 38/22,A61P 11/00,A61P 43/00


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貫和 敏博 中村 敏一 JP 2006131649 公開特許公報(A) 20060525 2006041405 20060217 肺線維症予防剤 中村 敏一 591115073 岩谷 龍 100077012 貫和 敏博 中村 敏一 A61K 38/22 20060101AFI20060421BHJP A61P 11/00 20060101ALI20060421BHJP A61P 43/00 20060101ALI20060421BHJP JPA61K37/24A61P11/00A61P43/00 105 3 1995100489 19950331 OL 8 特許法第30条第1項適用申請有り 平成7年3月15日 日本病理学会発行の「日本病理学会会誌第84巻第1号」に発表 4C084 4C084AA02 4C084BA03 4C084BA44 4C084CA23 4C084CA33 4C084DB54 4C084NA14 4C084ZA592 4C084ZB212 本発明は肺線維症の予防剤に関する。より詳細には、HGF(Hepatocyte Growth Factor)を有効成分として含有する肺線維症予防剤に関する。 肺線維症は、肺内にびまん性の線維増殖をきたし、咳嗽、息切れ、びまん性の肺陰影、拘束性換気障害、拡散障害、低酸素血症などを示す病態をいう。この病態は、間質性肺炎から移行するもので、多くは間質性肺炎が前段階となりうる。間質性肺炎の予後は不良で肺線維症へと移行するものが多く、肺線維症に移行すれば発症から4年以内に約半数が死亡する。 ここで、間質性肺炎とは、一般に肺胞領域の間質(肺胞壁や呼吸細気管支周囲の間質)を病変の主座とする疾患をいう。 間質性肺炎の病因としては以下に示すものが知られている。・原因が不明のもの1.特発性間質性肺炎2.閉塞性細気管支炎性間質性肺炎(BIP)3.剥離性間質性肺炎(DIP)4.類リンパ球性間質性肺炎(LIP)5.巨細胞性間質性肺炎・原因が明らかなもの1.無機じん:アスベスト、シリカ、タルク、ベリリウム等2.薬物(医原性間質性肺炎):抗癌・免疫抑制剤(ペプロマイシン、ブレオマイシン、シクロフォスファン、ニトロソウレア、インターフェロン等)、抗生物質・化学療法剤(セフェム、テトラサイクリン等)、金製剤等3.その他の物理・化学的物質:X線、コバルト、酵素、パラコート、水銀蒸気、パークロロエチレン等4.感染性:ウイルス、マイコプラズマ、弱毒細菌等5.肉芽腫性間質性肺炎:外因性アレルギー性肺胞炎(農夫肺症、サトウキビ肺症、鳥飼育者肺症等)等6.膠原病(膠原病性間質性肺炎):進行性全身性硬化症、慢性関節リウマチ、多発筋炎/皮膚筋炎、混合性結合組織病、全身性エリテマトーデス等7.代謝障害性疾患:尿毒症肺等 一方、HGFは気管支上皮細胞のラベリングインデックスを上昇させ細胞増殖に係わっていること、また肺胞の上皮細胞の増殖を促進し、肺障害を修復することが知られている(特許文献1)。特開平6−172207号公報 本発明は上記の従来の課題を解決するものである。即ち、本発明の目的は、新規な肺線維症予防剤の提供にある。 本発明は前記課題を解決するためになされたものであり、その要旨は、(1)HGFを有効成分として含有することを特徴とする肺線維症予防剤、(2)間質性肺炎から肺線維症への進展を予防する上記(1)記載の肺線維症予防剤、及び、(3)間質性肺炎が特発性間質性肺炎、医原性間質性肺炎又は膠原病性間質性肺炎である上記(2)記載の肺線維症予防剤に関する。 本発明に使用されるHGFとしては、医薬として使用できる程度に精製されたものであれば、種々の方法で精製されたものを用いることができる。 HGFの精製方法としては、各種の方法が知られている。例えば、ラット、ウシ、ウマ、ヒツジなどの哺乳動物の肝臓、脾臓、肺臓、骨髄、脳、腎臓、胎盤等の臓器、血小板、白血球等の血液細胞や血漿、血清などから抽出、精製して得ることができる(FEBS Letters, 224, 312, 1987、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86, 5844, 1989などを参照)。 また、HGFを産生する初代培養細胞や株化細胞を培養し、培養物(培養上清、培養細胞等)から分離精製してHGFを得ることもできる。或いは遺伝子工学的手法により、HGFをコードする遺伝子を適切なベクターに組み込み、これを適当な宿主に挿入して形質転換し、この形質転換体の培養上清から目的とする組換えHGFを得ることができる(例えば、Nature, 342, 440, 1989、特開平5−111383号公報、Biochem. Biophys. Res. Commun., 163, 967, 1989など参照)。上記の宿主細胞は特に限定されず、従来からの遺伝子工学的手法で用いられている各種の宿主細胞、例えば大腸菌、枯草菌、酵母、糸状菌、植物又は動物細胞などを用いることができる。 より具体的には、HGFを生体組織から抽出精製する方法としては、例えば、ラットに四塩化炭素を腹腔内投与し、肝炎状態にしたラットの肝臓を摘出して粉砕し、S−セファロース、ヘパリンセファロースなどのゲルカラムクロマトグラフィー、HPLC等の通常の蛋白質精製法にて精製することができる。 また、遺伝子組換法を用い、ヒトHGFのアミノ酸配列をコードする遺伝子を、ウシパピローマウイルスDNAなどのベクターに組み込んだ発現ベクターによって動物細胞、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、マウスC127細胞、サルCOS細胞などを形質転換し、その培養上清より得ることができる。 かくして得られたHGFは、HGFと実質的に同効である限り、そのアミノ酸配列の一部が欠失又は他のアミノ酸により置換されていたり、他のアミノ酸配列が一部挿入されていたり、N末端及び/又はC末端に1又は2以上のアミノ酸が結合していたり、或いは糖鎖が同様に欠失又は置換されていてもよい。 本発明の予防剤は、肺線維症を予防する。本発明の対象となる好ましい疾患としては、間質性肺炎から進展する肺線維症が挙げられ、特に好ましくは、特発性間質性肺炎、医原性間質性肺炎又は膠原病性間質性肺炎から進展する肺線維症が挙げられる。 本発明の予防剤は、ヒトの他、哺乳動物(例えば、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、イヌ、ネコ等)における間質性肺炎の治療、予防に適用される。 本発明の予防剤は種々の製剤形態(例えば、液剤、固形剤、カプセル剤等)をとりうるが、一般的には有効成分であるHGFのみ又はそれと慣用の担体と共に注射剤、吸入剤、坐剤又は経口剤とされる。当該注射剤は常法により調製することができ、例えば、HGFを適切な溶剤(例えば、滅菌された水、緩衝液、生理食塩水等)に溶解した後、フィルター等で濾過して滅菌し、次いで無菌的な容器に充填することにより調製することができる。注射剤中のHGF含量としては、通常0.0002〜0.2(w/v%)程度、好ましくは0.001〜0.1(w/v%)程度に調整される。また、経口薬としては、例えば、錠剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、軟又は硬カプセル剤、液剤、乳剤、懸濁剤、シロップ剤などの剤形に製剤化され、これらの製剤は製剤化の常法に準じて調製することができる。坐剤も慣用の基剤(例えば、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチン、マクロゴール、ウィテップゾル等)を用いた製剤上の常法によって調製することができる。また、吸入剤も製剤上の常法手段に準じて調製することができる。 製剤中のHGF含量は、剤形、適用疾患などに応じて適宜調製することができる。 製剤化に際して、好ましくは安定化剤が添加される。安定化剤としては、例えば、アルブミン、グロブリン、ゼラチン、グリシン、マンニトール、グルコース、デキストラン、ソルビトール、エチレングルコールなどが挙げられる。更に、本発明の製剤は製剤化に必要な添加物、例えば、賦形剤、溶解補助剤、酸化防止剤、無痛化剤、等張化剤等を含んでもよい。液状製剤とした場合は凍結保存、又は凍結乾燥等により水分を除去して保存するのが望ましい。凍結乾燥製剤は、使用時に注射用蒸留水などを加え、再溶解して使用される。 本発明の予防剤は、その製剤形態に応じた適当な投与経路により投与され得る。例えば、注射剤の形態にして静脈、動脈、皮下、筋肉内などに投与することができる。その投与量は、患者の症状、年齢、体重などにより適宜調整されるが、通常HGFとして0.05mg〜500mg、好ましくは1mg〜100mgであり、これを1日1回ないし数回に分けて投与するのが適当である。 本発明の予防剤は、肺線維症の発症を抑えることができ、肺線維症を予防することができる。 以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。 方 法 C57BL/6 雌マウス8−12週令体重18−22gを使用した。マウスを(1)ブレオマイシン(以下、BLMという)とHGFを同時投与した群(HGF投与群)、(2)BLMのみを投与した群(対照群)の2群に分け、BLMによる薬剤性肺傷害に対するHGFの抑制効果を比較検討した。投与方法及び試験方法の詳細並びに結果を下記に示す。 BLM投与法 BLMはalza社製浸透圧性ミニポンプ モデル2001を用い、マウス1匹に対してBLM 100mg/kgを投与した。alza社製浸透圧性ミニポンプモデル2001は1週間持続的にポンプ内の薬液を排出する性能を有している。BLMは生理食塩水を溶媒として、浸透圧性ミニポンプによる薬液総投与量200μlが、マウスに対してBLMが上記の投与量となるように溶解した。チオペンタールナトリウム50mg/kgの腹腔内投与により全身麻酔したマウスの背部を剃毛・切開し、背部皮下組織を剥離し、このBLM溶液を浸透圧性ミニポンプに注入し、ミニポンプをマウス皮下に留置し1週間持続的にBLM皮下投与を行った。 HGF投与法 HGFはalza社製浸透圧性ミニポンプ モデル1007Dを使用し、マウス1匹当りヒト組換えHGF50μgを投与した。ミニポンプ モデル1007Dも1週間の持続薬液排出能を持つ。HGFは生理食塩水を溶媒とし、ミニポンプ容量100μl当りHGF50μgとなるよう溶解し、同溶液をミニポンプに注入した。チオペンタールナトリウム麻酔下にマウスを開腹し、腹腔内にミニポンプを挿入しHGFを連続1週間腹腔内投与した。 試験方法 HGF投与群・対照群ともに投与開始2週及び4週後にチオペンタールナトリウム腹腔内投与による麻酔下に開胸し、胸部下大静脈より脱血し屠殺し、肺を摘出した。次ぎに左肺を10%ホルマリンを用い48時間陰圧下に固定し、矢状断標本をパラフィンに包埋した。このパラフィンブロックよりマイクロトームにて厚さ3μmの組織切片を作成し、elastica-Masson染色を行い、病理組織学的検討を行った。 組織所見をより客観的に検討するため、Ashcroftのスコアー(Ashcroft T et al.:Simple method of estimating severity of pulmonary fibrosis on a numerical scale. J Clin Pathol 41(4): 467-70, 1988)とポイントカウンティング法(Snider GJ et al.: Chronic interstitial pulmonary fibrosis produced in hamsters by endotracheal bleomycin Am Rev Respir Dis 117: 1099-1108, 1978)にて肺組織傷害の定量的評価を試みた。Aschroftのスコアーは肺組織標本において、顕微鏡下100倍の倍率にて各視野毎に肺の線維化の程度を軽度から重度に0−8の段階に分けスコアー化し、全視野をスコアリングしてスコアの平均により肺全体の線維化程度を評価する方法である。ポイントカウンティング法は肺組織標本において、顕微鏡下200倍の倍率にて、接眼レンズに100x100の格子を装着し、そのうち5ポイント選び、各視野についてこの5ポイントごとに線維化があるかどうか評価する。また選択された各ポイントを、胸膜下領域(subpleura region)、血管周囲領域(perivascular region)、細気管支周囲領域(peribronchiolar region)、肺胞領域(alveolar region)の4領域に分類し、それぞれについて集計し、それぞれの領域の全カウント数に対する線維化を示したカウントの割合で表している。 肺内コラーゲン量は右肺のヒドロキシプロリン量によって検討した。マウスを屠殺後右肺を摘出し、ジエチルエーテルにて48時間以上脱水乾燥し、ホモジェナイズし、6N塩酸1mlを加え110℃にて24時間加水分解を行った。試料はHPLC法にてヒドロキシプロリン量を定量した。マウスは各群・各週とも3匹づつ使用し実験を行った。統計処理は、2 level nested ANOVA及びANOVAを用いた。 結 果 BLMによる肺傷害によるマウスの肺の変化とHGF同時投与による肺傷害の抑制効果を病理組織学的に検討した。図1に正常なマウス(図1a)、対照群としたBLM単独投与群及びHGFとBLM同時投与群(HGF投与群)の2週目及び4週目の肺の組織標本を示す。 BLM単独投与2週では(図1b)、肺胞組織は全体としては構築を保持していたが、胸膜下に所々線維化とそれに伴う気腔の消失を認め、一部では線維域が近傍の肺静脈枝に連なっていた。また、線維域及びその周囲ではII型細胞、泡沫マクロファージ及び少数のリンパ球が散在して認められた。このように、胸膜直下の線維化が著名で、肺胞構造の破壊がみられるが、蜂か肺としての変化は認められなかった。 HGF投与群2週目(図1c)では、胸膜下に線維化を生じているところもあるが、大部分は正常構造を呈していた。また線維化部もその程度は、BLM単独投与群と比較して軽く、泡沫マクロファージの出現も少なかった。このように、部分的に胸膜下に線維化が認められるが軽度であり、大部分は正常の肺胞構造を呈していた。 投与後4週目では、BLM投与群(図1d)においては、胸膜下を中心に強い線維化が生じ、線維化域は大型楔状の病巣を形成し部分的に蜂か肺構造を呈していた。胸膜から離れた部位では正常部分も認めたが、血管周囲・気道周囲では、胸膜下と同様に線維化が生じているところも存在した。線維化の周囲では、泡沫マクロファージの浸潤が目立った。このように、胸膜下から肺葉の中軸部を走る気道・血管の周囲まで連続的に広汎な線維化生じており、正常な肺胞構造はほとんど認められない。 それに対してHGF投与群(図1e)では、胸膜下に所々楔状の線維化が生じているが、その程度はBLM単独投与と比較すると軽く、蜂か肺様の構造を呈している部分も少なかった。しかし、その周囲では泡沫マクロファージが多数認められた。気道・血管周囲でも線維化は軽度であった。このように、胸膜下には楔状の線維化が認められるが、その範囲は肺葉中軸に及ぶものではなく、表層に留まっている。胸膜から離れた部位では、肺胞壁の肥厚や炎症性細胞浸潤も認められなかった。 病理組織学的には、投与後2週目・4週目ともに対照群としたBLM単独投与群に比べHGF投与群において肺傷害及び線維化の抑制が認められた。 病理組織学的な肺傷害の程度をより客観的に判定するためAshcroftのスコアーとポイントカウンティング法による数値化による比較を行った。図2に投与開始後2週目と4週目のAshcroftのスコアーを示す。2週目、4週目ともHGF投与群が対照群より低値を示し、線維化が抑制されていることを示している。4週目ではANOVAにて有意水準5%で両群間に有意の差を認めた。 図3は4週目におけるポイントカウンティング法による比較である。胸膜下領域、血管周囲領域、細気管支周囲領域、肺胞領域の各領域ともHGF投与群が対照群より線維化の割合が少なく、2 level nested ANOVAで両群間に5%の有意水準で差を認めた。 図4は右肺のヒドロキシプロリン量によって示された肺内コラーゲン量である。各群とも経時的にコラーゲン量は増加しており、2週・4週ともHGF投与群が対照群より低値を示し、HGF投与群のほうがより線維化の程度が低いことを示唆していた。BLM(ブレオマイシン)又はHGF+BLMを投与されたマウスの肺の病理組織標本(生物の形態)の写真である。図中、aはマウスの正常肺の病理組織標本;bはBLM単独投与2週目の病理組織標本;cはHGF・BLM同時投与2週目の病理組織標本;dはBLM単独投与4週目の病理組織標本;eはHGF・BLM同時投与4週目の病理組織標本である。投与開始後2週目と4週目のAshcroftのスコアーを示す図である。投与開始後4週目におけるポイントカウンティング法による比較を示す図である。ヒドロキシプロリン量によって示された肺内コラーゲン量を示す図である。 HGFを有効成分として含有することを特徴とする肺線維症予防剤。 間質性肺炎から肺線維症への進展を予防する請求項1記載の肺線維症予防剤。 間質性肺炎が特発性間質性肺炎、医原性間質性肺炎又は膠原病性間質性肺炎である請求項2記載の肺線維症予防剤。 【課題】肺線維症の予防に有用な薬剤を提供することを目的とする。【解決手段】本発明の肺線維症予防剤は、HGF(Hepatocyte Growth Factor, 肝細胞増殖因子)を有効成分として含有することからなる。本発明の肺線維症予防剤の有効成分であるHGFは、肺線維症の発症を抑制でき、肺線維症を予防することができる。特に間質性肺炎から進展する肺線維症を効果的に予防することができる。【選択図】なし


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