タイトル: | 特許公報(B2)_バイオピリン検出用イムノクロマトグラフィー測定方法及び装置 |
出願番号: | 2006036202 |
年次: | 2011 |
IPC分類: | G01N 33/53,G01N 33/543,G01N 33/577,C07K 16/18 |
難波 靖治 山口 登喜夫 JP 4778804 特許公報(B2) 20110708 2006036202 20060214 バイオピリン検出用イムノクロマトグラフィー測定方法及び装置 山口 登喜夫 301013893 井出 正威 100091502 難波 靖治 山口 登喜夫 20110921 G01N 33/53 20060101AFI20110901BHJP G01N 33/543 20060101ALI20110901BHJP G01N 33/577 20060101ALI20110901BHJP C07K 16/18 20060101ALN20110901BHJP JPG01N33/53 SG01N33/543 521G01N33/577 BC07K16/18 G01N 33/53−33/579 特開平07−325085(JP,A) 特開平08−151365(JP,A) 特開平01−175945(JP,A) 10 2007218593 20070830 13 20090213 山村 祥子本発明は、抗ビリルビン抗体が固定された捕捉部位を備える膜担体を用いた競合法によるバイオピリン検出用イムノクロマトグラフィー測定方法及び装置に関する。人体内で活性酸素が増加すると、がんや成人病、皮膚のトラブルをはじめ、あらゆる疾病の原因となることがわかっている。人体内で活性酸素が増加し、体がダメージを受けている状態は酸化ストレスといわれる。生体内における酸化ストレスの度合いを把握できれば、酸化ストレスが原因となる疾患の発生を予測し、予防のために処置を事前に講ずることができ、また、健康状態の指標にもなる。バイオピリンは、ビリルビン酸化生成物の総称であり、生体内で酸化ストレスがたまり活性酸素が増加するとビリルビンが酸化され、その結果、尿などにバイオピリンが検出される。このように、バイオピリンの量は生体内の活性酸素の量を反映するため、バイオピリンの量に基づいて、生体内における酸化ストレスの度合いを把握できる。従来、バイオピリンの測定法としては、ODSカラムを用いたHPLCやモノクローナル抗体を用いたELISA法など知られている(特許文献1及び2、非特許文献1及び2)。しかし、これらの方法は特別な機器を必要とするため操作が煩雑で測定にも時間がかかるものであった。特許第3230062号公報特開平8-151365号公報Takashi Suzuki ら、「Evaluation of biopyrrin concentration in urine by stress marker」医学と薬学;42(6):981-987Yamaguchi T ら、「Psychological stress increase bilirubin metabolites in human urine.」Biochemical and Biophysical Reseach Communications 293 (2002)517-520本発明は、特殊な機器及び熟練した技術を必要とせず臨床の場面で簡便かつ迅速な診断に使用可能なバイオピリンの測定方法及び装置を提供することを目的とする。本発明者等は、低分子物質であり非常に酸化を受けやすいバイオピリンを膜担体に安定に固相化することには困難が伴うのに対し、牛血清アルブミン(BSA)などの高分子物質に結合させることにより、この結合物を金コロイドなどの標識物質に安定に固相化できることを見出し、さらに、この標識体がバイオピリンとの競合的イムノクロマトグラフィー測定に使用できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明の一局面によれば、抗ビリルビン抗体を予め所定位置に固定せしめて形成された捕捉部位を備える膜担体、及び、バイオピリンと高分子化合物との結合物を標識物質で標識した標識体を用意し、該標識体と被験試料との混合液を、前記捕捉部位に向けて前記膜担体にてクロマト展開せしめることにより、前記標識体と前記被験試料中のバイオピリンとを競合的に前記捕捉部位に捕捉せしめること含むことを特徴とするバイオピリン検出用イムノクロマトグラフィー測定法が提供される。本発明の更に他の局面によれば、抗ビリルビン抗体と、バイオピリンと高分子化合物との結合物を適当な標準物質で標識した標識体と、膜担体とを少なくとも備え、前記抗ビリルビン抗体は予め前記膜担体に固定されて捕捉部位を形成し、前記標識体は前記捕捉部位から離隔した位置から前記捕捉部位に向けて前記膜担体にてクロマト展開可能なように用意されてなることを特徴とするバイオピリン検出用イムノクロマトグラフィー測定装置が提供される。前記標識体は膜担体上に用意しておくと、膜担体に被験試料を注入するだけで測定が行えるので好都合である。前記標識体は、膜担体上に配置された含浸部材に含浸させて用意しておくと好都合である。本発明で使用する抗ビリルビン抗体は、ビリルビンに対する抗体であればよく、ポリクローナル抗体であっても、モノクローナル抗体であってもよいが、反応特異性の観点から、モノクローナル抗体であることが好ましい。ポリクローナル抗体は、例えば、精製したビリルビンを適当なアジュバンドとともに抗原として用いて常法に従って動物を免疫し、その抗血清から取得することができる。モノクローナル抗体は、例えば、精製したビリルビンを適当なアジュバンドとともに抗原としてマウスのような動物を免疫したのち、この免疫された動物の脾臓細胞とミエローマ細胞とを細胞融合して得られた融合細胞をHAT含有培地でセレクトした後に増殖せしめ、増殖せしめた株を前記精製ビリルビンを使用して、たとえば、酵素標識免疫法などにより選別することで、取得することができる。その際、特開平1−175945号公報に記載されるように、マウスを免疫するために用いる抗原として、分離したビリルビンと牛血清アルブミンとを酸無水物法により共有結合させたものを用いてもよい。この場合、ウシ血清アルブミンの代わりに、スカシガイヘモシアニン、卵白アルブミン、ウサギ血清アルブミン等の高分子化合物を用いてもよい。モノクローナル抗体としては、特開平1−175945号公報に記載のものを用いることができる。ビリルビンは低分子化合物であることから、ビリルビン分子のエピトープは限られており、通常、ビリルビン酸化生成物であるバイオピリンにも保存されていると考えられる。したがって、ビリルビンを抗原として取得された上記抗体は、通常、ビリルビン分子及びバイオピリンすなわち各種ビリルビン酸化生成物の両者を認識するものである。バイオピリンは10種類以上存在するとされており、全てが構造決定されているわけではないが、バイオピリンに含まれるビリルビン酸化生成物としては、例えば、特開平8−151365号公報に記載の1,14,15,17−テトラヒドロ−2,7,13−トリメチル−1,14−ジオキソ−3−ビニル−16H−トリピリン−8,12−ジプロピオン酸(1,14,15,17−tetrahydro−2,7,13−trimethyl−1,14−dioxo−3−vinyl−16H−tripyrrin−8,12−dipropionic acid)、および1,14,15,17−テトラヒドロ−3,7,13−トリメチル−1,14−ジオキソ−2−ビニル−16H−トリピリン−8,12−ジプロピオン酸(1,14,15,17−tetrahydro−3,7,13−trimethyl−1,14−dioxo−2−vinyl−16H−tripyrrin−8,12−dipropionic acid)が挙げられる。したがって、本発明の抗ビリルビン抗体は、これらのビリルビン酸化生成物を抗原として動物を免疫して得られた抗体、すなわち、抗ビリルビン酸化生成物抗体、または、抗バイオピリン抗体であってもよい。本発明で使用する上記標識体は、バイオピリンを高分子物質に結合させ、この結合物(conjugate)を標識物質で標識することによって得ることができる。ここで用いるバイオピリンは、被験試料中のバイオピリンと競合反応するものであればよく、ビリルビン自体であってもよく、また、ビリルビン酸化生成物の何れか1種であってもよく、これらの混合物であってもよい。上記結合物を構成する高分子物質としては、蛋白質などの生体高分子、特に、表面に親水基の多い蛋白質を用いることが好ましい。かかる蛋白質としては、ヒト血清アルブミンやウシ血清アルブミン等の血清アルブミン及び卵アルブミンなどのアルブミン類の他、キーホールリムペットヘモシアニン、ウシガンマグロブリン等が挙げられる。バイオピリンと高分子物質を結合させる方法としては、上記特開平1−175945号公報に記載の酸無水物法などを使用することができる。標識に用いる標識物質としては、特に制限はなく、例えば、呈色標識物質、酵素標識物質、放射線標識物質などが挙げられるが、迅速に検査結果が得られることから、呈色標識物質であることが好ましい。呈色標識物質としては、コロイド金属および着色ラテックスなどが挙げられる。コロイド金属の代表例としては、白金コロイド、金コロイドなどが挙げられる。コロイド金属の粒子の大きさは、通常は、直径3〜100nm程度とされる。着色ラテックスの代表例としては、赤色および青色などのそれぞれの顔料で着色されたポリスチレンラテックスなどの合成ラテックスが挙げられる。ラテックスとして天然ゴムラテックスのような天然ラテックスも使用できる。着色ラテックスの大きさは、直径数拾nm乃至数百nm程度から選択することができる。これらの呈色標識物質は、市販品をそのまま使用できるが、場合によりさらに加工し、または、それ自体公知の方法で製造することもできる。また、呈色標識としては、蛍光標識なども使用することができる。上記結合物の標識は、各呈色標識物質に応じた常法に従って行なわれる。たとえば、呈色標識物質が金コロイド粒子の場合には、通常は、上記結合物と金コロイド溶液とを室温乃至常温下で数分間、長くても10分間、混合することによって両者を物理的に結合せしめることが可能である。本発明によれば、膜担体の所定位置に抗ビリルビン抗体を予め固定せしめて捕捉部位を形成しておき、バイオピリンと高分子物質との結合物の標識体を用意し、被験試料と該標識体との混合液を上記膜担体にイムノクロマト展開させることにより、被験試料中のバイオピリンと前記標識体とを競合的に前記捕捉部位に捕捉させるようにしたので、被験試料に含まれるバイオピリンを、特殊な機器及び熟練した技術を必要とせず、臨床の場面で簡便かつ迅速に測定することができる。本発明のイムノクロマトグラフィー測定法を実施するために使用できる測定装置は、公知のイムノクロマト法テストストリップの構成に準拠して容易に実施できる。以下、その具体例を図面に基づいて説明する。イムノクロマト法テストストリップの具体例としては、例えば図1に示されるテストストリップ10が挙げられる。図1において、数字1は粘着シート、2は含浸部材、3は膜担体、4は捕捉部位、5は吸収用部材、6は試料添加用部材を示している。図示の例では、膜担体3は、幅5mm、長さ36mmの細長い帯状のニトロセルロース製メンブレンフィルターからなり、同幅の粘着シート1の中程に貼り付けられている。膜担体3には、そのクロマト展開始点側、すなわち図1の左側(以下「上流側」と記す。なお、その逆の側、すなわち図1におけるクロマト展開方向側すなわち右側は以下「下流側」と記す。)の末端から下流側に6.0mmの位置に抗ビリルビン抗体が固定され、標識体と被験試料中のバイオピリンを競合的に捕捉するための第一の捕捉部位41が形成されている。さらに、膜担体3の上流側の末端から下流側に14.5mmの位置に所謂コントロールライン42が設けられている。このコントロールライン42は、分析対象物質であるバイオピリンの存否に係わらず反応が行われたことを確認するためのものであり、任意の標識された物質と免疫学的に特異的に結合する物質(分析対象物質を除く)を膜担体3に固定化することによって形成することができる。例えば、被験試料に共存させる任意の物質として標識されたヤギ抗体を用いた場合は、コントロールライン42は、該ヤギ抗体に対する抗体を塗布して固定することにより形成できる。この場合に標識に用いる標識物質としては、上記標識体に関して記述したと同様のものが挙げられるが、一般に呈色標識物質が好ましい。図1の装置では、膜担体3は、ニトロセルロース製メンブレンフィルターを用いているが、被験試料に含まれる分析対象物質をクロマト展開可能で、かつ、捕捉部位4を形成する抗体等の物質を固定可能なものであれば、いかなるものであってもよく、他のセルロース類膜、ナイロン膜、ガラス繊維膜なども使用できる。図1の装置において、抗バイオピリン抗体としては、上述のように、ビリルビンを抗原として取得された抗体を用いることができる。標識体は、イムノクロマト法テストストリップ10とは別体の適当な容器内で、被験試料及び展開溶媒と混合して混合液とした後、この混合液を図示のイムノクロマト法テストストリップ10の試料添加用部材6に注入して膜担体3をクロマト展開させてもよい。しかし、被験試料と展開溶媒とを混合して調製した混合液を試料添加用部材6に注入した時、標識体が、該混合液と混合して膜担体3へクロマト展開されるように、イムノクロマト法テストストリップ10と一体化して配置しておくことが好ましい。このために、図1の装置では、標識体は、膜担体3の上流側の端部に連接した含浸部材2に含浸させてイムノクロマト法テストストリップ10の一部を構成している。図示の例では、含浸部材2として、5mm×15mmの帯状のガラス繊維不織布を用いているが、これに限定されるものではなく、例えば、セルロース類布(濾紙、ニトロセルロース膜等)、ポリエチレン、ポリプロピレン等の多孔質プラスチック布類なども使用できる。さらに、含浸部材2には、反応が終了したことをコントロールライン42で確認できるように、コントロールライン42に固定された物質と抗原抗体反応する物質が、予め標識された状態で前記標識体とともに含浸されている。含浸部材2は、上記標識体及びコントロールラインに捕捉される物質の両者を含む懸濁液を前記ガラス繊維不織布等の部材に含浸せしめ、これを乾燥させることなどによって作製できる。イムノクロマト法テストストリップ10は、図1に示されるように、膜担体3を粘着シート1の中程に貼着し、該膜担体3の上流側の末端の上に、含浸部材2の下流側の末端を重ね合わせて連接するとともに、この含浸部材2の上流側部分を粘着シート1に貼着して作成できる。さらに、図1の装置では、含浸部材2の上面に試料添加用部材6の下流側部分を載置するとともに、該試料添加用部材6の上流側部分を粘着シート1に貼着しており、また、膜担体3の下流側部分の上面に吸収用部材5の上流側部分を載置するとともに、該吸収用部材5の下流側部分を粘着シート1に貼着せしめてイムノクロマト法テストストリップ10を構成している。試料添加用部材6としては、例えば、多孔質ポリエチレンおよび多孔質ポリプロピレンなどのような多孔質合成樹脂のシートまたはフィルム、ならびに、濾紙および綿布などのようなセルロース製の紙または織布もしくは不織布を用いることができる。吸収用部材5は、液体をすみやかに吸収、保持できる材質のものであればよく、綿布、濾紙、およびポリエチレン、ポリプロピレン等からなる多孔質プラスチック不織布等を挙げることができるが、特に濾紙が最適である。図1のイムノクロマト法テストストリップ10は、そのまま、ディップスティック形式の測定装置として用いることもでき、別法としては、適当なプラスチックシートで裏打ち又はサンドイッチしたディップスティック形式の測定装置として提供してもよい。好ましくは、図1のイムノクロマト法テストストリップ10は、試料添加用部材6と捕捉部位4の上方にそれぞれ被験試料注入部と判定部が開口された適当なプラスチック製ケース内に収容された測定装置として提供される。上述のとおり、本発明において、上記標識体は、イムノクロマト法テストストリップ10とは別体の適当な容器内で、被験試料及び展開溶媒と混合して混合液とした後、この混合液をイムノクロマト法テストストリップ10の試料添加用部材6に注入して膜担体3をクロマト展開させてもよいので、イムノクロマト法テストストリップ10をケース内に収容させた場合、上記標識体は、含浸部材2に含浸させてケース内に収容してもよいし、また、該ケースとは別体の適当な容器内に収容してケース外に収容しておいてもよい。かくして、被検者の生体試料などからなる被験試料を必要に応じて適当な展開溶媒と混合してクロマト展開可能な混合液を得た後、当該混合液を図1に示されるイムノクロマト法テストストリップ10の試料添加用部材6上に注入すると、該混合液は、該試料添加用部材6を通過して含浸部材2において、標識体と混合する。その際、該混合液中にバイオピリンが存在しなければ、標識体が、膜担体3中をクロマト展開されて捕捉部位4に到達し、第一の捕捉部位41に固定された抗ビリルビン抗体と抗原抗体反応して捕捉されるため、第一の捕捉部位41は強度のシグナルを呈する。これに対し、該混合液中にバイピリンが存在すれば、バイオピリンと標識体とが第一の捕捉部位41において競合的に捕捉されるので、第一の捕捉部位41は弱いシグナルを呈する。同時に、クロマト展開が正常に行われたことを第二の捕捉部位42がシグナルを呈したことにより確認できる。かくして、第一の捕捉部位のシグナルの度合い及び第二の捕捉部位のシグナルの度合いを検出することで、生体試料中のバイオピリンの存否を鑑別判定できる。捕捉部位のシグナルの度合いは、標識物質として金コロイドなどの呈色標識物質が使用されていれば、当該呈色標識物質の集積により第一及び第二の捕捉部位41a,41bが発色するので、直ちに、判定することができる。被験試料としては、バイオピリンが排泄される生体試料であれば特に制限はなく、例えば、尿の他、血液(全血でも、血清でも、血漿でもよい)等が挙げられるが、被検者に外部からの刺激を与えずに採取できるという点から、尿が好ましい。被験試料は、展開溶媒などの適当な希釈液で希釈して膜担体に注入してもよい。なお、全血を被験試料として用いるときで、特に標識物質として金コロイドなどの呈色標識物質が用いられる場合、前記試料添加用部材に血球捕捉膜部材を配置しておくことが好ましい。血球捕捉膜部材は、前記含浸部材と前記試料添加用部材との間に積層することが好ましい。これにより、赤血球が膜担体に展開されるのが阻止されるので、膜担体の捕捉部位における呈色標識の集積の確認が容易になる。血球捕捉膜部材としては、カルボキシメチルセルロース膜が用いられ、具体的には、アドバンテック東洋株式会社から販売されているイオン交換濾紙CM(商品名)や、ワットマンジャパン株式会社から販売されているイオン交換セルロースペーパーなどを用いることができる。下記の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。実施例1(抗ビリルビン抗体の作製)特開平1-175945公報に記載の方法に従い、分離したビリルビンと牛血清アルブミンとを酸無水物法により共有結合させることで、ウシ血清アルブミン結合ビリルビンを得た。このウシ血清アルブミン結合ビリルビンを抗原として用いてマウスを免疫し、常法によりモノクローナル抗体を作製した。その結果得られたモノクローナル抗体24G7は、下記式中の枠で示したビリルビンの部位すなわちエピトープを認識するものであることが確認された。このエピトープは数種のビリルビン酸化生成物にも存在するものである。実施例2(ウシ血清アルブミン結合ビリルビン(BR-BSA)の調製)ウシ血清アルブミン(以下「BSA」と記す)へのビリルビンの結合は、混合無水物(mixed anhydride)法を若干改変して行った。すなわち、実施例1と同様の方法で得られたビリルビンに等モル数のイソブチルクロロホルメート(isobutyl chloroformate)およびトリブチルアミン(tributylamine)を加え、20℃以下にて30分間攪拌し、反応終了後、BSAを加えpH8.5 に調製した後、4℃で攪拌しながら4時間反応させた。この反応溶液を水に対して透析した後、凍結乾燥してBR-BSAの粉末を得た。得られたBR-BSAはBSA1分子に対してビリルビン39分子程度が結合していた。実施例3(金コロイド標識BSA結合ビリルビンの調製)(1)金コロイド溶液の調製加熱によって沸騰させた超純水99mlに、1%(v/w)塩化金酸水溶液1mlを加え、さらに、その1分後に1%(v/w)クエン酸ナトリウム水溶液1.5mlを加えて加熱し5分間沸騰させた後、室温に放置して冷却した。次いで、この溶液に200mM炭酸カリウム水溶液を加えてpH9.0に調製し、これに超純水を加えて全量を100mlとして金コロイド溶液を得た。(2)金コロイド標識BSA結合ビリルビンの調製金コロイド3.5mlと0.25mg/mlの実施例2で得られたBSA結合ビリルビン140μlを混合し室温で2分間放置して、このBSA結合ビリルビンを金コロイド粒子表面に結合させた後、金コロイド溶液における最終濃度が1%になるように10%BSA水溶液を加え、この金コロイド粒子の残余の表面のことごとくこのBSAでブロックして、金コロイド標識BSA結合ビリルビン抗原を調製した。この溶液を遠心分離(7000rpm、25℃、25分間)して金コロイド標識BSA結合ビリルビン抗原を沈殿させ、上清液を除いて金コロイド標識BSA結合ビリルビン抗原を得た。この金コロイド標識BSA結合ビリルビン抗原を10%サッカロース・1%BSA・0.5%トリトン(Triton)-X100を含有する50mMトリス塩酸緩衝液(pH7.4)に懸濁して金コロイド標識BSA結合ビリルビン抗原溶液を得た。実施例4(金コロイド標識ヤギIgG抗体の調製)(1)金コロイド溶液の調製実施例3と同様の方法で調製した。(2)金コロイド標識ヤギIgG抗体の調製0.25mg/mlのヤギIgG抗体14μlと金コロイド溶液3.5mlとを混合し、室温で2分間放置してこの抗体のことごとくを金コロイド粒子表面に結合させた後、金コロイド溶液における最終濃度が1%になるように10%ウシ血清アルブミン(BSA)水溶液を加え、この金コロイド粒子の残余の表面のことごとくをこのBSAでブロックして、金コロイド標識ヤギIgG抗体(以下、「金コロイド標識抗体」と記す)溶液を調製した。この溶液を遠心分離(7000rpm、25℃、25分間)して金コロイド標識抗体を沈殿させ、上清液を除いて金コロイド標識抗体を得た。この金コロイド標識抗体を10%サッカロース・1%BSA・0.5%トリトン(Triton)−X100を含有する50mMトリス塩酸緩衝液(pH7.4)に懸濁して金コロイド標識抗体溶液を得た。実施例5(バイオピリン検出用イムノクロマト法テストストリップの作製)(1)金コロイド標識体含浸部材の作製5mm×20cmの帯状のガラス繊維不織布に、実施例3で得られた金コロイド標識BSA結合ビリルビン(固相化量10μg/ml)30μl、および、実施例4で得られた金コロイド標識ヤギIgG抗体(固相化量1μg/ml)15μlを含浸し、これを室温で乾燥させて5mm×15mmの大きさに切断し、金コロイド標識体含浸部材とした。(2)テストラインの形成実施例1で得られた抗ビリルビンモノクローナル抗体24G7 10mg/mlを含む溶液0.5μlを図1に示されるクロマト展開用膜担体3におけるクロマト展開開始側の末端部から6.0mmの位置にライン上に塗布して、これを室温にて乾燥し、バイオピリン又は金コロイド標識BSA結合ビリルビンを捕捉する第一の捕捉部位41を形成した。(3)コントロールラインの形成抗ヤギIgGポリクローナル抗体を含む溶液0.5μlを上記(2)のクロマト展開用膜担体3におけるクロマト展開開始側の末端部から14.5mmの位置にライン上に塗布して、これを室温にて乾燥し、金コロイド標識ヤギIgG抗体を捕捉する第二の捕捉部位42を形成した。(4)イムノクロマト法テストストリップの作製図1に示されるように、粘着シート1の上に、上記(3)で得られた膜担体3、上記(1)で得られた含浸部材2、吸収用部材5、試料添加用部材6を配置し、イムノクロマト法テストストリップを作製した。実施例6(標準試薬を用いた測定)実施例2で得られたBSA結合ビリルビンを検体希釈液にて希釈し、所定濃度(0u/l, 0.8u/l, 3.2u/l, 12.8u/l,)に調製して被験試料液とした。そして、この被験試料100μLを実施例5で得られたイムノクロマト法テストストリップの試料添加用部材6にマイクロピペットで滴下し15分後、第一の捕捉部位41における捕捉量を肉眼で観察した。その結果を表1に示す。表1から、試料中の抗原濃度が上昇するほどテストラインにおける呈色が弱くなり、本発明の方法によりバイオピリンの量を判定できることが示された。実施例7(健常者の尿を用いた測定)健常者3名より採取された尿3種類を用い、尿検体間における測定値の変動について検査した。すなわち、実施例2で得られたBSA結合ビリルビンを各尿検体にて希釈し、所定濃度(0μg/ml, 10μg/ml, 20μg/ml, 40μg/ml, 80μg/ml)に調製して被験試料液とした。また、対照として、同様のBSA結合ビリルビンを緩衝液(Buffer)にて希釈し、所定濃度(0μg/ml, 10μg/ml, 20μg/ml, 40μg/ml, 80μg/ml)に調製したものを用いた。そして、この被験試料100μLを実施例5で得られたイムノクロマト法テストストリップの試料添加用部材6にマイクロピペットで滴下し15分後、第一の捕捉部位41における捕捉量を肉眼で観察した。その結果を表2に示す。表2から、尿検体によって反応性に若干の差が見られるものの、反応性は対照と連動しており、また、尿検体による非特異的反応は無いことが示された。これにより、本発明の方法でバイオピリンを測定する際、検体間差は無いことが示された。実施例8(患者検体を用いた測定1)胸腔鏡外科手術をうけた70代患者から7日間尿を採取し、ELISA法とイムノクロマト法を比較した。ELISA法は、市販のキット(商品名:Biopyrrin EIA Kit、(株)シノテスト社製)を用いて行った。イムノクロマト法は、患者から採取した尿をそのまま被験試料液としてイムノクロマト法テストストリップの試料添加用部材6に滴下した以外、実施例7と同様の方法で行った。なお、検体については、自動分析器(日立H7150)により尿中クレアチニン量を測定し、補正を行った。結果を表3及び図2に示した。表3及び図2から、ELISA法とイムノクロマト法のバイオピリン測定値は良く相関することが示された。また、ELISA法に比べ、イムノクロマト法はバイオピリン量の変動を顕著に示す傾向が示された。実施例9(患者検体を用いた測定2)開胸手術を受けた50代の患者から10日間尿を採取し、ELISA法及びとイムノクロマト法を比較した。ELISA法は、市販のキット(商品名:Biopyrrin EIA Kit、(株)シノテスト社製)を用いて行った。イムノクロマト法は、患者から採取した尿をそのまま被験試料液としてイムノクロマト法テストストリップの試料添加用部材6に滴下した以外、実施例7と同様の方法で行った。なお、検体については、自動分析器(日立H7150)により尿中クレアチニン量を測定し、補正を行った。結果を表4及び図3に示した。表4及び図3から、ELISA法とイムノクロマト法のバイオピリン測定値は良く相関することが示された。また、ELISA法に比べ、イムノクロマト法はバイオピリン量の変動を顕著に示す傾向が示された。本発明は、特殊な機器及び熟練した技術を必要とせず臨床の場面で簡便かつ迅速にバイオピリンを測定できるので、医療現場における患者の状態の診断や、個人による健康状態のチェックに有用である。aは本発明のイムノクロマトグラフィー測定装置の具体例を示す平面図、bはaで示された装置の縦断面図。実施例8の結果を示すグラフである。実施例9の結果を示すグラフである。符号の説明1 粘着シート2 含浸部材3 膜担体4 捕捉部位5 吸収用部材6 試料添加用部材10 イムノクロマト法テストストリップ抗ビリルビン抗体を予め所定位置に固定せしめて形成された捕捉部位を備える膜担体、及び、ビリルビン又はビリルビン酸化生成物と蛋白質との結合物を標識物質で標識した標識体を用意し、該標識体と被験試料との混合液を、前記捕捉部位に向けて前記膜担体にてクロマト展開せしめることにより、前記標識体と前記被験試料中のバイオピリンとを競合的に前記捕捉部位に捕捉せしめること含むことを特徴とするバイオピリン検出用イムノクロマトグラフィー測定法。前記抗ビリルビン抗体はモノクローナル抗体である請求項1に記載の測定法。前記混合液は、さらに、標識物質で標識した物質を含み、前記膜担体は、さらに、該物質に対して免疫学的に結合する物質を固定せしめて形成されたもう一つの捕捉部位を備えている請求項1に記載の測定法。前記標識物質は金属コロイドまたはラテックスである請求項1に記載の測定法。前記膜担体がニトロセルロース膜である請求項1に記載の測定法。抗ビリルビン抗体と、ビリルビン又はビリルビン酸化生成物と蛋白質との結合物を適当な標準物質で標識した標識体と、膜担体とを少なくとも備え、前記抗ビリルビン抗体は予め前記膜担体に固定されて捕捉部位を形成し、前記標識体は前記捕捉部位から離隔した位置から前記捕捉部位に向けて前記膜担体にてクロマト展開可能なように用意されてなることを特徴とするバイオピリン検出用イムノクロマトグラフィー測定装置。前記抗ビリルビン抗体はモノクローナル抗体である請求項6に記載の測定装置。さらに、標識物質で標識した物質を備え、この標識された物質は、前記捕捉部位から離隔した位置から前記捕捉部位に向けて前記膜担体にてクロマト展開可能なように用意されており、前記膜担体は、さらに、該物質に対して免疫学的に結合する物質を固定せしめて形成されたもう一つの捕捉部位を備えてなる請求項6に記載の測定装置。前記標識物質は金属コロイドまたはラテックスである請求項6に記載の測定装置。前記膜担体がニトロセルロース膜である請求項6に記載の測定装置。