タイトル: | 公開特許公報(A)_フルバスタチンナトリウムおよびその製造法 |
出願番号: | 2006029446 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | C07D 209/24 |
小野澤 隆 鈴木 良信 JP 2007210899 公開特許公報(A) 20070823 2006029446 20060207 フルバスタチンナトリウムおよびその製造法 コニカミノルタケミカル株式会社 592158512 小野澤 隆 鈴木 良信 C07D 209/24 20060101AFI20070727BHJP JPC07D209/24 4 OL 5 4C204 4C204AB14 4C204BB01 4C204CB03 4C204DB11 4C204DB18 4C204EB03 4C204FB03 4C204GB01 本発明は、HMG−CoA還元酵素阻害作用によって特徴づけられる、治療学的に有用な下式Iで示される一般名:フルバスタチンナトリウム(化学名:(±)−(3RS,5SR,6E)−sodium−7−[3−(4−fluorophenyl)−1−(1−methylethyl)−1H−indol−2−yl]−3,5−dihydroxy−6−heptenoate)の工業的に有益な粉末およびその製造法に関するものである。 近年、医療費増大による国の財政、患者負担の増大等の問題から、安価な医薬品の供給が望まれており、この観点から後発医薬品が注目を集めている。 フルバスタチンはコレステロール生合成過程において重要な役割を果たす3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル補酵素A(HMG−CoA)還元酵素を阻害し、コレステロールの生合成を抑制する結果、高コレステロール血症等の治療薬として用いられる。本発明者らは、フルバスタチンナトリウムを安定的かつ安価に製造する方法を提供することを課題とした。 フルバスタチンおよびそのナトリウム塩の製法は、特許文献1に開示されており、この特許でフルバスタチンナトリウムは凍結乾燥によって得られる。特許文献2では、凍結乾燥によって得られるフルバスタチンナトリウムがA型および不定形物質の混合物であるとし、B型と称する新たな結晶型を開示している。特公平2−46031特表2000−512992 特許文献1にて実施されている凍結乾燥法は氷の昇華によって乾燥させる為エネルギー消費量が大きく、乾燥エネルギーとして熱風乾燥の約2倍必要とされる。また乾燥設備のみならず、冷凍設備等、機械・設備に多くの投資が必要となることから製造コストが高くなる。一方、特許文献2にて実施されている結晶法では、溶媒中で結晶化せしめ得られたフルバスタチンの結晶の溶液から濾過等で結晶を分離する方法である。この方法では原料として使用したフルバスチンに対して100%結晶化することは不可能であり、濾液へのフルバスタチンの溶解による収率低下は免れない。 本発明者らはこれらの課題を解決するため鋭意検討した結果、噴霧乾燥機を用いた粉末化が有効であることを見出した。噴霧乾燥機を用いた粉末化は、溶液中の溶質を回収する他の方法(濃縮−濾過等)と比べ、濾液に逃げる溶質がないため非常に回収率が高く、コストを低く抑えることができる。 一般的に、医薬品の原体として使用する際、求められる溶解性を満足させるために粒径の調整が必要となる。噴霧乾燥の場合、噴霧乾燥機の作動条件を最適化して粉末化すれば、希望する粒径の粉末が得られるため、粒径を調整する必要はなくなり、工程を短縮できるというメリットがある。 本発明の目的は、フルバスタチンナトリウムを安定的かつ安価に製造する方法を提供することにある。 我々は、安価な医薬品を提供する観点からフルバスタチンナトリウムを得る方法を鋭意検討した結果、フルバスタチンナトリウムを含む溶液を噴霧乾燥することでフルバスタチンナトリウムを得ることに成功し、本発明の完成に至った。 すなわち、本発明は以下の手段により達成される。(1) 下記2θ値3.5,10.2,18.2にピークを有する特徴的な粉末X線回折パターンを示すフルバスタチンナトリウム。(2) フルバスタチンナトリウムの溶液を噴霧乾燥機を用いて粉末化させることを特徴とする、フルバスタチンナトリウムの製造法。(3) フルバスタチンナトリウムと水を混合撹拌して得られる水溶液を使用する(2)に記載のフルバスタチンナトリウムの製造法。(4) フルバスタチンと水酸化ナトリウムと水を混合撹拌して得られる水溶液を使用する、(2)に記載のフルバスタチンナトリウムの製造法。 本発明によれば、工業的生産において安定的かつ安価にフルバスタチンナトリウムを製造できる。 フルバスタチンナトリウムを含む溶液の調製法としては、フルバスタチンナトリウムを溶媒に加え撹拌溶解させる方法が用いられる。フルバスタチンナトリウムおよび溶媒を撹拌容器に投入する順番に制限はない。 用いられる溶媒の種類はフルバスタチンナトリウムに対し不活性であれば制限はないが、噴霧乾燥時の条件設定に関し自由度を確保するために、好ましくは溶解度が3重量%から60重量%になるような溶媒が好ましい。例えば、水、メタノール、エタノールまたはその混合液が好適に用いられる。溶解時の適当な液温は、溶媒の種類により異なるが、10℃から90℃の範囲で溶解すると、噴霧乾燥を実施する上で好適な溶液が得られる。 噴霧乾燥に用いる溶液の調製方法として、フルバスタチンと水酸化ナトリウムを混合し、フルバスタチンナトリウムの溶液を得る方法も可能である。この方法を用いる場合は、フルバスタチンと水酸化ナトリウムは、等モル混合する必要がある。得られた溶液は、フルバスタチンナトリウムを溶媒に加え撹拌溶解させる方法で得られた溶液と同様に用いることができる。 フルバスタチンナトリウムの溶液からフルバスタチンナトリウムを得るため、噴霧乾燥機を用いる。噴霧乾燥とは、熱風中に溶液を噴出し、瞬時に粉末状固体を得る方法である。溶液を噴霧させる装置として、遠心噴霧法と加圧噴霧法があるが、どちらも好適に使用できる。 噴霧乾燥装置の熱風温度は、高いほど乾燥しやすくなり単位時間あたりの処理量も増加するが、フルバスタチンナトリウムは高温にさらされると不純物が増加する可能性がある。一方、熱風温度を低くすると含水率が上がり粉末の回収が困難となる。よって、熱風温度は、120℃から180℃の範囲に調節するのが好ましい。 フルバスタチンナトリウム溶液の濃度、噴霧装置の空気圧力、送液流量、熱風流量の最適値は、装置、規模によりそれぞれ異なる。例として、パルビスミニスプレーGA32型(ヤマト科学(株)製、最大水分蒸発能力 1300ml/時)を使用した場合、フルバスタチンナトリウム水溶液の濃度は5wt%、噴霧装置の空気圧力は0.1MPa/cm2、送液流量は9.3g/分、熱風流量は、0.29m3/分で、粉末化が可能であった。 噴霧乾燥して得られたフルバスタチンナトリウムは、必要であれば更に乾燥することができる。 以上の方法により得られたフルバスタチンナトリウムの粉末X線回折を測定したところ、2θ=3.5,10.2,18.2°のピークが観察された。なお、粉末X線回折の測定は、下記装置および条件にて実施した。 装置:RAD−IIB(株式会社リガク製) ターゲット:Cu フィルター:使用しない 電圧:40kV 電流:20mA スキャンスピード:2.0°/分 以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。 実施例1 ガラス製ビーカーにフルバスタチンナトリウム95.2gとイオン交換水1.9kgを加え、50℃の水浴で加熱しながら磁気撹拌装置で撹拌し、透明な黄色溶液を得た。この溶液を、噴霧乾燥装置(パルビスミニスプレーGA32型)の試料導入口から送液し、ほどなくして生成物容器に粉末の生成を確認した。溶液を全量送液して、フルバスタチンナトリウム72.8gを得た。収率76.5%。得られたフルバスタチンナトリウムの粉末X線回折スペクトルを図1に示す。実施例1で得たフルバスタチンの粉末X線回折スペクトル。 下記2θ値3.5,10.2,18.2にピークを有する特徴的な粉末X線回折パターンを示すフルバスタチンナトリウム。 フルバスタチンナトリウムの溶液を噴霧乾燥機を用いて粉末化させることを特徴とする、フルバスタチンナトリウムの製造法。 フルバスタチンナトリウムと水を混合撹拌して得られる水溶液を使用する、請求項2に記載のフルバスタチンナトリウムの製造法。 フルバスタチンと水酸化ナトリウムと水を混合撹拌して得られる水溶液を使用する、請求項2に記載のフルバスタチンナトリウムの製造法。 【課題】 工業的生産において安定的かつ安価にフルバスタチンナトリウムを製造する方法を提供する。【解決手段】 フルバスタチンナトリウム(化学名:(±)−(3RS,5SR,6E)−sodium−7−[3−(4−fluorophenyl)−1−(1−methylethyl)−1H−indol−2−yl]−3,5−dihydroxy−6−heptenoate)を含む溶液を噴霧乾燥する工業的に有益なフルバスタチンナトリウムを得ることができる。【選択図】なし