タイトル: | 公開特許公報(A)_動物細胞用新規発現ベクター |
出願番号: | 2006026215 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | C12N 15/09 |
浅田 眞弘 今村 亨 本田 絵美 JP 2007202490 公開特許公報(A) 20070816 2006026215 20060202 動物細胞用新規発現ベクター 独立行政法人産業技術総合研究所 301021533 浅田 眞弘 今村 亨 本田 絵美 C12N 15/09 20060101AFI20070720BHJP JPC12N15/00 A 8 OL 9 特許法第30条第1項適用申請有り 2005年11月25日 第28回日本分子生物学会年会組織委員会発行の「第28回日本分子生物学会年会講演要旨集」に発表 4B024 4B024AA20 4B024CA04 4B024CA20 4B024DA02 4B024EA04 4B024GA13 本発明は、細胞、特に動物細胞に遺伝子導入する際に用いる発現ベクターに関する。 哺乳類細胞に遺伝子を導入する際に用いられる発現ベクターは多数存在する。これらは、1)挿入配列を導入するためのマルチクローニングサイト(MCS)、2)挿入配列を発現するためのプロモーター及びポリA付加配列、3)遺伝子が導入された細胞を選択するための薬剤耐性マーカー遺伝子とこれを発現するためのプロモーター及びポリA付加配列、4)原核細胞内で複製されるための ori 配列、5)原核細胞での薬剤選択用の抗生物質耐性遺伝子、等から構成されている。 同一細胞に複数の外来遺伝子を導入するにあたっては、異なる薬剤耐性マーカー遺伝子をもつベクターを利用することが一般的であり、それぞれの外来遺伝子は、それぞれのベクターが有するMCSに合わせて挿入配列を調製することが必要である。 しかしながら、複数の外来遺伝子を導入する際には、挿入配列と薬剤選択マーカーの組合せを様々に変化させることが一般的である。従来は、同一ベクター、すなわち同一のMCSを有し、かつ異なる薬剤耐性マーカー遺伝子を有するベクターの例は、数少なかったため、そのたびに、異なる配列を有するMCSへ挿入配列を導入する必要が有り、このために、リンカーを付加したり、挿入配列全体を調製し直す等、手間がかかる作業が必要があった。 数少ない例外として、ネオマイシン耐性遺伝子を有するpcDNA3.1があり、これと同一のMCSを有したベクターでありながら、ハイグロマイシン耐性遺伝子を有するpcDNA3.1/Hygroやゼオシン耐性遺伝子を有するpcDNA3.1/Zeoが市販されている。 これら、pcDNA3.1、pcDNA3.1/Hygro、pcDNA3.1/Zeoは共通のMCSを有するため、相互に挿入配列の交換が可能であり、このため、薬剤選択マーカーの交換も容易である。しかし、これらpcDNA3.1/Hygro、pcDNA3.1/Zeoの製造法は明らかにされてはいない。 一方、近年、ネオマイシン、ハイグロマイシン、ゼオシン以外にも、より安価で効率よく遺伝子導入細胞を選択できる抗生物質が開発されており、ピューロマイシンやブラストシジンSはその例である。しかし、これらに対する耐性を有する発現ベクターは、背景となる配列が全く異なるベクターであり、このため、MCS配列も全く異なる。このため、pcDNA3.1に挿入していた外来遺伝子を、ピューロマイシン耐性やブラストシジンS耐性を指標にしてその導入細胞を選択するには、新規にベクター構築を図る必要があり、このため、そのMCSに適した末端配列を有する挿入配列を新たに構築する必要があった。 そこで、本発明の課題は、pcDNA3.1、pcDNA3.1/Hygro、pcDNA3.1/Zeoベクターと共通するマルチクローニングサイト(MCS)を有し、かつ薬剤選択マーカーをネオマイシン耐性でなく、新たにピューロマイシン耐性やブラストシジンS耐性とした発現ベクターを構築し、このような共通するMCSを有する発現ベクターにおいて使用可能な薬剤選択マーカーの種類を広げ、pcDNA3.1系の動物細胞用発現ベクターを使用する際の利便性を向上させることにある。 上記課題を解決するため、本発明者等はpcDNA3.1よりネオマイシン耐性遺伝子を除去し、代わりに、ピューロマイシン耐性やブラストシジンS耐性遺伝子の導入を試みた。 しかし、pcDNA3.1からネオマイシン耐性遺伝子のみを除去し、その前後に存在し、ネオマイシン耐性遺伝子の発現を制御するプロモーター領域(SV40 ori)やポリA付加配列(SV40 pA)に損傷を与えないための有効な制限酵素部位は存在しない。そこで、本発明者らは、pcDNA3.1ベクターのネオマイシン耐性遺伝子のプロモーターとして作用するSV40 oriとネオマイシン耐性遺伝子との間に存在するユニークなSma I認識部位と、ネオマイシン耐性遺伝子の下流でSV40 pA付加配列との間に存在するNae I 認識部位に着目し、さらに鋭意研究した結果、上記SV40 oriとSV40pAにより発現制御されるネオマイシン耐性遺伝子を、ピューロマイシン耐性遺伝子あるいはブラストシジンS耐性遺伝子に置換することに初めて成功し、本発明を完成させるに至ったものである。 すなわち、本発明は以下(1)〜(8)に示すとおりである。(1)SV40 ori とSV40 pAによって発現が制御される薬剤選択マーカー遺伝子を有し、かつマルチクローニングサイトを有する動物細胞用発現ベクターであって、薬剤選択マーカー遺伝子がピューロマイシン耐性遺伝子、またはブラストシジンS耐性遺伝子であることを特徴とする、動物細胞用発現ベクター。(2)上記マルチクローニングサイトが、pcDNA3.1(+) またはpcDNA3.1(-)におけるマルチクローニングサイトの各制限酵素認識部位と共通する制限酵素認識部位を有し、かつ該部位がpcDNA3.1(+) またはpcDNA3.1(-)と同一の順序で配置されていることを特徴とする、上記(1)に記載の動物細胞用発現ベクター(3) ピューロマイシン耐性遺伝子の3‘末端及び5‘末端にSmaI認識配列がそれぞれ付加されるとともに、3’末端に付加されるSmaI認識配列の内側にNaeI認識配列が配置されていること特徴とする、DNA断片。(4)配列番号4で示される塩基配列を有することを特徴とする、上記(3)に記載のDNA断片。(5)ブラストシジンS耐性遺伝子の3‘末端及び5‘末端にSmaI認識配列がそれぞれ付加されるとともに、3’末端に付加されるSmaI認識配列の内側にNaeI認識配列が配置されていること特徴とする、DNA断片。(6)配列番号3で示される塩基配列を有することを特徴とする、上記(5)に記載のDNA断片。(7)配列番号1に示される塩基配列を有することを特徴とするプラスミドベクター。(8)配列番号2に示される塩基配列を有することを特徴とするプラスミドベクター。 本発明は、マルチクローニングサイト(MCS)を有する動物細胞用ベクターにおいて、SV40 oriとSV40pAにより発現制御される薬剤耐性遺伝子を、ピューロマイシン耐性遺伝子あるいはブラストシジンS耐性遺伝子に置換したものであり、これにより、外来遺伝子組換え細胞の選択において、使用可能な薬剤選択マーカーの種類が広がり、より効率的な遺伝子導入試験が可能となる。 また、特に、本発明のpcDNA3.1(+)のネオマイシン耐性遺伝子をピューロマイシン耐性遺伝子に置換したベクター(pcDNA3.1(+)-PUR)及び同じくブラストサイジンS耐性遺伝子に置換したベクター(pcDNA3.1(+)-BSD)は、既存のベクターであるpcDNA3.1(+)、pcDNA3.1/Hygro(+)、pcDNA3.1/Zeo(+)と共に、共通のMCSを有している。このため、相互に挿入配列の交換が可能である。したがって、本発明によれば、薬剤選択マーカーの交換が格段に容易となり、その選択の幅も広がる。 マルチクローニングサイト(MCS)を有し、かつSV40 oriとSV40pAにより発現制御される薬剤耐性遺伝子を有する動物細胞用ベクターの具体例としては、pcDNA3.1(+)が挙げられる。 このpcDNA3.1(+)の構造は図1(B)に示され、pcDNA3.1(+)は、マルチクローニングサイト(MCS)を有し、薬剤耐性遺伝子として、アンピシリン耐性遺伝子(Amp)及びネオマイシン耐性遺伝子(Neo)を有する。このうちネオマイシン耐性遺伝子は、ネオマイシン耐性遺伝子のプロモーターとして作用するSV40 oriとSV40pA付加配列の間に配置され、これらにより発現制御される。 マルチクローニングサイト(MCS)は、複数の制限酵素認識部位により構成されており、制限酵素切断部位は、プロモーターからBGH pA方向に向けて、順にNhe I, Pme I, Afl II, Hind III, Asp718 I, Kpn I, BamH I, BstX I, EcoR I, EcoR V, BstX I, Not I, Xho I, Xba I, Dra II, Apa I, Pme Iのように配置されている。 同様に、pcDNA3.1(-)の場合には、制限酵素切断部位は、プロモーターからBGH pA方向に向けて、順にNhe I, Pme I, Dra II, Apa I, Xba I, Xho I, Not I, BstX I, EcoR V, EcoR I, BstX I, BamH I, Asp718 I, Kpn I, Hind III, Afl II, Pme I,のように配置されている。本願発明におけるベクターは、具体的には、上記pcDNA3.1(+)またはpcDNA3.1(-)におけるネオマイシン耐性遺伝子が、ピューロマイシン耐性遺伝子あるいはブラストシジンS耐性遺伝子に置換され、上記マルチクローニングサイトにおける各制限酵素認識部位と共通する認識部位を有し、かつ同一の順序で配置されているものである。 しかし、共通する制限酵素認識部位及び同一の順序といっても、このことはマルチクローニングサイトの全領域に亘って完全に塩基配列が一致することを意味するものではない。 以下に、本発明の動物細胞用ベクターの構築法について、図1を参照して、ブラストシジンS耐性遺伝子を使用する場合を例にして具体的に説明する。pcDNA3.1(+)においては、ネオマイシン耐性遺伝子下流側でSV40pA付加配列との間にNae I認識部位が存在し、また、SV40 oriとネオマイシン耐性遺伝子の間にユニークなSma I認識部位が存在する。このSma I認識部位を利用して、ブラストシジンS耐性遺伝子の両末端にSma I認識部位を付加して、リガーゼにより連結すれば、ブラストシジンS耐性遺伝子をpcDNA3.1(+)に導入できる。しかし、pcDNA3.1(+)においては、ネオマイシン耐性遺伝子を除去するための適当な制限酵素切断部位がなく、ネオマイシン耐性遺伝子を除去することは、困難である。 すなわち、pcDNA3.1(+)においては、ネオマイシン耐性遺伝子下流側でSV40pA付加配列との間にNae I認識部位が存在するが、上記Nae Iはユニークなものではなく,SV40 oriの上流にも存在するので、Naeで切断するだけでは、SV40 ori が除去されて、充分な薬剤耐性が期待できない。 そこで、本発明においては、まず、導入するブラストシジンS耐性遺伝子の5‘末端にSma I認識部位を付加すると共に、3’末端にSma I認識部位及びその内側にNae I認識部位を付加したDNAを作成する(図1(A))。このDNAの塩基配列は、配列表の配列番号3に示される。この後、このDNAを2本鎖にした後、Sma Iで開裂したpcDNA3.1(+)にリガーゼで連結する(図1(B))。次いで、このように連結され、ブラストシジンS耐性遺伝子が挿入されたpcDNA3.1(+)をNaeIで消化する。これにより、上記制限酵素認識部位が付加されたブラストシジンS耐性遺伝子は、Nae 1認識部位で切断され、Nae I切断末端を有するブラストシジンS耐性遺伝子を含む断片が生成するが、このとき、ブラストシジンS耐性遺伝子を含む断片の他にも、ネオマイシン耐性遺伝子の前半と後半に由来する断片、あるいはpcDNA3.1(+)に由来する断片も生成する(図1(C))。このような断片は、それぞれ分子長が異なるため、アガロースゲル電気泳動により、上記ブラストシジンS耐性遺伝子を含む断片を分離する。 この後、分離されたNae I切断末端を有するブラストシジンS耐性遺伝子は、上記ネオマイシン耐性遺伝子下流側でSV40pA付加配列の間にあるNae I認識部位に由来する切断末端で連結されるとともに、ネオマイシン耐性遺伝子は除去され、ブラストシジンS耐性遺伝子に置換されたベクター、pcDNA3.1(+)-BSD(配列番号1)が得られる(図1(D))。 また、ピューロマイシン耐性遺伝子の導入においては、導入するピューロマイシン耐性遺伝子の5‘末端にSma I認識部位を付加すると共に、3’末端にSma I認識部位及びその内側にNae I認識部位を付加したDNA(配列番号4)を作成し、ブラストシジンS耐性遺伝子の上記導入手法と同様の操作を行うことにより、pcDNA3.1(+)におけるネオマイシン耐性遺伝子がピューロマイシン耐性遺伝子に置換されたベクターpcDNA3.1(+)-PUR(配列番号2)が得られる。 本発明で新たに構築したpcDNA3.1(+)-BSD及びpcDNA3.1(+)-PURベクターは、既存のベクターであるpcDNA3.1(+)やpcDNA3.1/Hygro(+)、pcDNA3.1/Zeo(+)と全く同一のMCSを有する。このため、一度、挿入配列を構築すれば、いずれのベクターにも挿入することが可能であり、また、いずれかのベクターに挿入された挿入配列を切り出して他のベクターに挿入することも容易である。このため、一つの挿入配列遺伝子を、異なる薬剤耐性マーカー遺伝子を有するベクターに入れ替えることが容易となり、複数の遺伝子の作用を解析する上で、非常に有用なツールとなりうる。 例えば、動物細胞の糖鎖生合成の場合には、糖ヌクレオチド輸送体、糖転移酵素、糖分解酵素など、複数の遺伝子産物(蛋白質)の協調作用によって、最終的な機能性産物(糖蛋白質)が作られる。また、近年、複数の遺伝子産物が細胞内で複合体を形成して初めて機能を発揮する例も報告されている。このような対象の全体像を把握するためには、複数の遺伝子を様々な組合せで宿主細胞に導入し、その効果を検証することが必要である。本発明で得られたベクターのパネルは、このような研究において、有用なツールとなる。 本発明のブラストシジンS耐性遺伝子(BSD)あるいはピューロマイシン耐性遺伝子(PUR)を含む、ベクター(それぞれ配列番号1、2のDNA配列を有する)は、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに寄託番号FERM P-20732及びFERM P-20733にて、ともに平成17年12月9日に寄託されている。〔実施例1〕1.BSDの構築 ブラストシジンS耐性遺伝子(BSD)は、これを含むベクターpMAM2-BSDを鋳型としPCRで構築した。センスプライマーとして、その5’-末端にSma I 部位を付加したオリゴヌクレオチドを用い、アンチセンスプライマーとして、その5’-末端にSma I + Nae I部位を付加したオリゴヌクレオチドを用いた。具体的には、センスプライマーとして、#872 (5’-tcc ccc ggg tca ata tgc ctt tgt ctc a-3’)(配列番号5)を、アンチセンスプライマーとして、#891 (5’-taa ccc ggg ccg gct ggt gct tag ccc tcc c-3’)(配列番号6)を用い、耐熱性ポリメラーゼKOD-plus-を用いて、特異的にBSDを増幅した(図1(A))。 得られたDNA断片は、Zero Blunt TOPO PCR Cloning Kit を用いて、pCR-Blunt II-TOPO ベクターにクローニングした。ポジティブクローンを選択し、挿入配列に予期しない変異が入っていないことを確認した後、そのプラスミドを調製し、Sma Iで消化した。415 塩基対のDNA断片をアガロース電気泳動で、分離抽出し、以降のライゲーション反応に用いた。2.PURの構築 ピューロマイシン耐性遺伝子(PUR)は、これを含むベクターpPURを鋳型としPCRで構築した。センスプライマーとして、その5’-末端にSma I 部位を付加したオリゴヌクレオチドを用い、アンチセンスプライマーとして、その5’-末端にSma I + Nae I部位を付加したオリゴヌクレオチドを用いた。さらに、PURの5’-端近くに内在するSma I 部位を破壊する目的で、センスプライマーには変異を導入した。具体的には、センスプライマーとして、#874’ (5’-tcc ccc ggg aag ctt acc atg acc gag tac aag ccc acg gtg cgc ctc gcc acc cgc gac gac gtc ccc agg-3’) (配列番号7)を、アンチセンスプライマーとして、#892 (5’-taa ccc ggg ccg gcg tca ggc acc ggg ctt g-3’)(配列番号8)を用い、耐熱性ポリメラーゼKOD-plus-を用いて、特異的にPURを増幅した。 得られたDNA断片は、Zero Blunt TOPO PCR Cloning Kit を用いて、pCR-Blunt II-TOPO ベクターにクローニングした。ポジティブクローンを選択し、挿入配列に予期しない変異が入っていないことを確認した後、そのプラスミドを調製し、Sma Iで消化した。621 塩基対のDNA断片をアガロース電気泳動で、分離抽出し、以降のライゲーション反応に用いた。3.pcDNA3.1(+)のSma I部位への挿入 pcDNA3.1(+)ベクターをSma I で消化し、5428 塩基対の線状DNA断片をアガロース電気泳動で分離抽出した。さらに、CIAPにより脱リン酸処理を行った後、以降のライゲーション反応に用いた。 Sma I で消化したpcDNA3.1(+)ベクターに、上記の通り調製したPURあるいはBSDのDNA断片を、Ligation Convenience Kitを用いてライゲーションした(図1(B))。ポジティブクローンは、挿入部位の前後にデザインしたプライマー(#893 (5’-gtg tgg tgg tta cgc gca-3’)(配列番号9)及び #894 (5’-cac aac tag aat gca gtg a-3’)(配列番号10)を用いたダイレクトPCRによりスクリーニングし、さらにこれらのプライマーと挿入配列を構築した際のプライマー(#872, #891, #874’, #892)とを組合せたPCRにより、挿入配列の方向を決定した。最終的に得られたクローンについては、ベクターと挿入配列の結合部位のDNA配列を確認した。4.Nae I 処理によるneo の除去 上記で得られたクローンをNae I で消化して、BSDの場合には、3804, 1062, 694, 283 bpの、PURの場合には、3804, 1268, 694, 283 bpのDNA断片がそれぞれ得られる。これらはそれぞれ、ベクター(pcDNA3.1(+))に由来する断片、BSD若しくはPUR耐性遺伝子に由来する断片、ネオマイシン耐性遺伝子の前半と後半に由来する断片に相当する(図1(C))。そこで、ベクターに由来する断片、及び、BSD若しくはPUR耐性遺伝子に由来する断片をアガロースゲル電気泳動により、分離・抽出し、ライゲーション反応に供することによって、ネオマイシン耐性遺伝子を除去した(図1(D))。 クローンの選択は、上記同様、#893と#894や挿入配列を構築した際のプライマー(#872, #891, #874’, #892)を用いたダイレクトPCRにより、方向も含めてポジティブなクローンを選択した。最終的に得られたクローンについては、ベクターと挿入配列の結合部位のDNA配列を確認し、pcDNA3.1(+)-PUR(配列番号2)、pcDNA3.1(+)-BSD(配列番号1)を得た。〔実施例2〕薬剤耐性試験 pcDNA3.1(+)及び、本発明で新たに構築したpcDNA3.1(+)-PUR、pcDNA3.1(+)-BSDを、FuGENE6を用いてChinese hamster 卵巣細胞(CHO細胞)に遺伝子導入し、それぞれ、ネオマイシン(1 mg/ml)、ピューロマイシン(10 micro-gram/ml)、ブラストシジンS(5 micro-gram /ml)の共存下で生存する細胞を選択した。 得られたそれぞれの薬剤耐性細胞を、抗生物質を含まない培地(alpha-MEM, 10% FCS)で、2.0 x 105個ずつ6-ウェルプレートに播種し、7時間後、ネオマイシン(1 mg/ml)、ピューロマイシン(10 micro-gram /ml)、ブラストシジンS(5 micro-gram /ml)を含む培地に交換した。3日後に、培地交換を行い浮遊する死細胞を除去した。さらに3日後、同様の操作で洗浄した上で、写真を撮影した(図2)。 これによれば、抗生物質を含まない培地では、いずれの細胞も十分な増殖が観察された(パネルA, B, C)。元来pcDNA3.1(+)はネオマイシン耐性遺伝子を有しているため、pcDNA3.1(+)を導入した細胞ではネオマイシン(G418)の存在下でも生存・増殖したが(パネルD)、ピューロマイシンやブラストシジンSの存在下では死滅した(パネルG,J)。 新規なベクターであるpcDNA3.1(+)-PUR及びpcDNA3.1(+)-BSDは、共にネオマイシン耐性遺伝子を除去されているため、これらを導入した細胞はネオマイシン耐性を有しておらず、ネオマイシン(G418)の存在下では死滅した(パネルE,F)。一方、これらのベクターは、それぞれピューロマイシン、ブラストシジンSに対する耐性遺伝子を有しているため、これらを導入した細胞は、それぞれピューロマイシン存在下(パネルH)、ブラストシジンS存在下(パネルL)でも生存・増殖した。pcDNA3.1(+)-BSDベクターの構築手法の概略を示す模式図である。は、pcDNA3.1(+)、pcDNA3.1(+)-PUR、pcDNA3.1(+)-BSDによる安定発現細胞を、各種抗生物質の存在下で6日間培養後の結果を示す写真である。 SV40 ori とSV40 pAによって発現が制御される薬剤選択マーカー遺伝子、及びマルチクローニングサイトを有する動物細胞用発現ベクターであって、薬剤選択マーカー遺伝子がピューロマイシン耐性遺伝子、またはブラストシジンS耐性遺伝子であることを特徴とする、動物細胞用発現ベクター。 上記マルチクローニングサイトが、pcDNA3.1(+) またはpcDNA3.1(-)におけるマルチクローニングサイトの各制限酵素認識部位と共通する制限酵素認識部位を有し、かつ該部位がpcDNA3.1(+) またはpcDNA3.1(-)と同一の順序で配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の動物細胞用発現ベクター ピューロマイシン耐性遺伝子の5’末端にSmaI認識部位が付加されるとともに、3’末端にSmaI認識部位及びその内側にNaeI認識部位が付加されていること特徴とする、DNA断片。 配列番号4で示される塩基配列を有することを特徴とする、請求項3に記載のDNA断片。 ブラストシジンS耐性遺伝子の5‘末端にSmaI認識部位がそれぞれ付加されるとともに、3’末端に上記SmaI認識部位及びその内側にNaeI認識配列が付加されていること特徴とする、DNA断片。 配列番号3で示される塩基配列を有することを特徴とする、請求項5に記載のDNA断片。 配列番号1に示される塩基配列を有することを特徴とするプラスミドベクター。 配列番号2に示される塩基配列を有することを特徴とするプラスミドベクター。 【課題】 動物細胞用遺伝子導入ベクターについて、薬剤選択マーカーの選択の幅を広げるために、既存のベクターと同一のマルチクローニングサイトを有し、かつ異なる薬剤選択マーカー遺伝子を有する発現ベクターを創製する。【解決手段】SV40 ori とSV40 pAによって発現が制御される薬剤選択マーカー遺伝子を有し、かつマルチクローニングサイトを有する動物細胞用発現ベクターにおいて、薬剤選択マーカー遺伝子としてピューロマイシン耐性遺伝子、またはブラストシジンS耐性遺伝子を導入する。【選択図】なし配列表