タイトル: | 特許公報(B2)_雲南紅豆杉由来イソタキシレシノールを成分とする骨粗しょう症治療・予防薬 |
出願番号: | 2005517653 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | A61K 31/085,A61P 19/10 |
門田 重利 信川 高寛 JP 4455504 特許公報(B2) 20100212 2005517653 20050127 雲南紅豆杉由来イソタキシレシノールを成分とする骨粗しょう症治療・予防薬 株式会社紅豆杉 399015218 藤原 道彦 100116816 門田 重利 信川 高寛 JP 2004026535 20040203 20100421 A61K 31/085 20060101AFI20100401BHJP A61P 19/10 20060101ALI20100401BHJP JPA61K31/085A61P19/10 A61K 31/00 - 31/327 REGISTRY(STN) CAplus(STN) MEDLINE(STN) EMBASE(STN) BIOSIS(STN) JSTPlus(JDream2) JMEDPlus(JDream2) JST7580(JDream2) 国際公開第03/075686(WO,A1) 特開平11−221048(JP,A) 国際公開第99/044621(WO,A1) 国際公開第02/017909(WO,A1) 特表2002−518437(JP,A) 国際公開第2004/009065(WO,A1) 2 JP2005001055 20050127 WO2005074905 20050818 10 20060124 北畑 勝彦 本発明はイソタキシレシノールとその類縁化合物を有効成分とする骨粗しょう症治療・予防薬に関するものである。 従来、タイワンスギ(Taiwania flousiana)に由来するリグナン系化合物が骨吸収抑制効果を有することが知られている。(例えば、特許文献1参照。)。 また、連翹(Forsythia suspense Vahl)に由来するピノレジノールが更年期障害の病状改善に効果を有することが知られている。そして、ピノレジノールが骨粗しょう症の予防に役立つことであろうことが示唆されている。(例えば、特許文献2参照。)。 特開平9−12592号公報特開2003−63971号公報 本発明の課題は、骨粗しょう症の治療と予防に役立つ医薬を提供することにある。 本発明者らは、雲南紅豆杉(Taxus yunnanensis)に由来するイソタキシレシノール(isotaxiresinol)が、インビボにおいて骨吸収抑制作用と骨形成を促進する生理活性を示すことを見出し、本発明を完成した。 すなわち、本発明は、式(1)(式中R1は炭素数1〜4のアルキルオキシ基を表す)で示される化合物、または式(1)化合物の医学的に許容される塩またはエステルを有効成分とする骨粗しょう症の治療または予防用医薬である。 本発明にかかる医薬は、骨吸収抑制作用のみならず骨形成促進作用をも有し、骨粗しょう症の治療または予防に有効である。 本発明においてエステルとは、式(1)中のメチロール基(CH2OH)の水酸基及び/またはフェノール性の水酸基が有機酸または無機酸と結合し、水分子が脱離した化合物を意味する。医学的に許容されるエステルは、医学・薬学の分野で公知のものが制限なく使用できる。例えば、有機酸として酢酸、無機酸としてリン酸が使用できる。 塩は、無機及び有機の塩基から誘導されるいかなる塩でもよく、化合物中のメチロール基がメチロキシドイオン(methyloxide ion)基となる塩、及び/またはフェノール性の水酸基がフェノキシドイオン(phenoxide ion)基となる塩を含む。医学的に許容される塩は、医学・薬学の分野で公知のものが制限なく使用できる。例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アミンの塩が使用出来る。 式(1)の化合物において、R1がCH3Oであるとき、すなわち式(2)の化合物はイソタキシレシノール(isotaxiresinol)(以下ITXと記す)である。 ITXは雲南紅豆杉の植物体(葉、樹皮、材部、芯部、根など)に含まれており、次のようにして抽出、単離することができる。まず、植物体を熱水抽出し水抽出物を得る。次に、その水抽出物を有機溶媒(例えば酢酸エチル)で抽出し有機溶媒画分を得る。さらに、その有機溶媒画分からクロマトグラフィー(カラムクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、HPLCなど)を用いてこれら化合物を単離する。 ITXのメトキシ基は、エトキシ基、プロピオキシ基、ブチロキシ基に置換されても良い。式(1)の化合物はITXから有機合成により合成することが出来る。 本発明にかかる医薬は経口、非経口、又は経皮投与することができる。投与形態は、通常医薬の投与に用いられる形態が制限なく使用可能であり、例えば錠剤もしくは被覆錠、カプセル、溶液、シロップ、粉末、座薬が挙げられる。 錠剤は化合物または抽出物を、賦形剤(乳糖、ブドウ糖、ショ糖、マンニットなど)、崩壊剤(コーンスターチ、アルギン酸など)、結合剤(スターチ、ゼラチンなど)、滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム、タルクなど)および/または遅延放出を与える剤(カルボキシメチルセルロース、セルロースアセテートフタレート、ポリビニルアルコールなど)を混合することにより製造できる。錠剤はいくつかの層からなっていてもよい。 被覆錠は錠剤と同様にして製造した芯を錠剤被覆に通常用いられる物質、例えばコリドン(collidone)、シェラック(shellac)、アラビアゴム、タルク、二酸化チタン、ショ糖などで被覆することにより製造できる。遅延放出を得るべく芯はいくつかの層からなっていてもよく、また錠剤についての上記賦形剤を用いることができる。 液剤、シロップの剤型にするには、式(1)化合物に、水、糖類(エリスリトール、キシリトール、マンニトール、ショ糖、トレハロース、マルトース、フラクトース、ソルビット、蜂蜜など)、防腐剤(パラベンなど)、各種香料、着色料、油類(大豆油など)を適宜添加、混合して調製することができる。 本発明にかかる医薬を含有するカプセルは、化合物または抽出物をゼラチンカプセルに封入し、または、化合物または抽出物と例えばラクトース、ソルビトールなどの不活性担体を混合し、混合物をゼラチンカプセルに封入、またはゼラチン膜で被包成形して製造することができる。 式(1)の化合物の投与量は、通常、1mg〜1000mg/人/日である。しかしながら、最初に小量を投与し、次いで、意図した効果が達成されるまで増量することにより、適当な投与量を決定することも意図されている。 式(1)の化合物は、従来から安全に摂取されている薬用植物である雲南紅豆杉の成分であり、安全な物質である。 以下に実施例により本発明をさらに説明する。この発明の実施例に記載されている原材料、化合物の抽出法などは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではなく、単なる説明例にすぎない。 (単離) 雲南紅豆杉の材部及び樹皮(合わせて木部)を粉砕機で粉砕し、30メッシュパスの粉末を得た。この粉末を乾燥した。乾燥粉末850gを4Lの純水で45分間還流抽出した。濾過後、残渣に4Lの純水を加えて45分間還流抽出した。さらに同じ還流抽出操作を1回繰り返した。3回の水抽出液を合わせて減圧濃縮し、水抽出物52.5gを得た。 次に、水抽出物52.5gを500mLの酢酸エチルで抽出し、酢酸エチル層を分離した。分離後、残渣に500mLの酢酸エチルを加えて抽出した。さらに同じ抽出操作を1回繰り返した。3回の抽出操作で得た酢酸エチル層を合わせて減圧濃縮し、酢酸エチル画分34.1gを得た。 続いて、シリカゲルカラム(内径3.5cm、長さ60cm、充填物:Silica gel 60(ナカライテスク株式会社)に前記酢酸エチル画分34.1gを添加し、クロロホルムにメタノールを添加した溶媒を使用して、溶出操作を行い500mL毎の9画分を得た。溶媒の組成と、各画分液体を減圧濃縮して得た流出物の重量、画分中に含まれる成分を表1に示した。 ITXの構造式は、分光学的および化学的な分析に基づき、決定、確認した。以下に、主要な分析データを記述する。ITX(isotaxiresinol):無色無定形固体(colorless amorphous solid)1H NMR (CD3OD), δ 6.69 (1H, d, J = 8.0 Hz, H-5'), 6.61 (1H, s, H-5), 6.52 (1H, d, J = 2.0 Hz, H-2'), 6.50 (1H, dd, J = 2.0, 8.0 Hz, H-6'), 6.19 (1H, s, H-2), 4.67 (2H, m, H-9), 4.67 (1H, m, H-9'), 4.66 (1H, d, J = 6.9 Hz, H-7’), 3.77 (3H, s, H-OMe), 3.40 (1H, dd, J = 4.3, 11.1 Hz, H-9'), 2.73 (1H, br d, J = 6.8 Hz, H-7), 1.97 (1H, m, H-8), 1.71 (1H, m, H-8')13C NMR (CD3OD), δ 147.1 (C-3), 146.2 (C-3'), 145.2 (C-4), 144.6 (C-4'), 138.7 (C-1'), 134.3 (C-1), 128.9 (C-6), 122.0 (C-6'), 117.4 (C-2), 117.3 (C-2'), 116.1 (C-5'), 112.3 (C-5), 66.0 (C-9), 62.4 (C-9'), 56.4 (C-OMe), 48.1 (C-8'), 47.8 (C-7'), 40.1 (C-8), 33.5 (C-7) [α]D25+47.3゜(c=0.4 in Ethanol) ITXの構造式は、King, F.E.; L.Jurd & King, T.J., isoTaxiresinol (3'-Demethylisolariciresinol), A New Lignan extracted from the Heartwood of the English Yew, Taxus baccata; J. Chem. Soc., 17-24(1952) に記載された構造式と一致した。 なお、表1中、SILはセコイソラリシレシノール、TAXはタキシレシノール、HYLは(7’R)−7’−ヒドロキシラリシレシノールを示している。 (試験例−抗骨粗しょう活性) ラットを用いてITXの抗骨粗しょう活性を試験した。 試験は10匹のラットを一群として行った。8ヶ月齢、体重260〜330gの雌性ウイスタラットの卵巣を摘出した。卵巣摘出2週間後から、週6回、ITX50mg/kg(ラット体重)とITX100mg/kg(ラット体重)を、1%カルボキシメチルセルロースナトリウム水溶液に懸濁し、それぞれのラット群に経口投与した。また、ポジティブコントロール(positive control)群のラットには、17β−estradiol(以下E2と略記する)0.1mg/kg(ラット体重)を5%ベンジルアルコール/95%コーン油混合液に溶かし、腹腔内投与した。 ネガティブコントロール(negative control)としてOVX群を設け、また、擬似手術を行った(Sham)群を設けた。OVX群とSham群には餌だけを与えた。 試験薬投与開始から6週間後(卵巣摘出から8週間後)、ラットを麻酔し、末梢骨定量的コンピュータ断層撮影法(peripheral quantitative computed tomography)(pQCT)を用いて脛骨の特性値を測定した。 測定は、pQCT system XCT Research M(Stratec Medizintechnik GmbH,Germany)を使ってラットの左側脛骨をスキャンした。ボクセルサイズは0.08mmに、スライスの厚さは0.5mmに、皮質骨のBMDのスレツシュホールド値は464mg/cm3に設定した。全骨中の海綿骨と皮質骨を区別するため、ピールモードは20に設定した。 予備走査を行い、成長板を確認したうえ、レファレンス位置を指定して、成長板下の1−5mmの所で4つの横断面をスキャンした。分離モード3と輪郭モード2に設定して、皮質骨と海綿骨のBMCとBMD、皮質骨の厚さ、皮質骨の内膜周囲長、外膜周囲長を測定した。 骨強度の3つ指標(X−,Y−,Polar−軸)はXCT Research Series Manual Software Version 5.4で、標準皮質骨BMDを1200mg/cm3として、計算により求めた。 さらに脛骨、大腿骨、子宮を摘出し、これらの重量などを測定した。 表2に各試験群ラットの脛骨と大腿骨の重量と長さの測定結果を示す。 表中のITX100は100mg投与群を、ITX50は50mg投与群を、E2はE2投与群を示し、数値は測定値の平均値と標準偏差を表示している。測定値は、以下の表3、表4についても同様に表示した。 OVXと比較して、ITX50の脛骨重量とITX100の大腿骨重量は増加したが、各グループ間での有意差は認められなかった。 表3に近位脛骨(proximal tibia bone)のBMC、BMD、骨強度その他の測定結果を示す。 表3は近位脛骨の成長板下の1mmのスライスのデータである。 表中の全骨は海綿骨と皮質骨を合わせて測定した骨全体の測定値を示している。BMC(Bone mineral content)は骨量(または骨塩量とも呼ばれる)を示し、BMD(Bone mineral density)は骨密度を示している。#印は、スチューデントのt検定(Student’s t−test)の結果、#p<0.05 ##p<0.01 ###p<0.001でSham群との間に有意差があることを示し、*印は、スチューデントのt検定(Student’s t−test)の結果、*p<0.05 **p<0.01 ***p<0.001でOVX群との間に有意差があることを示す。t検定の結果は、以下の表4についても同様に表示している。 Sham群と比較して、OVX群の全骨と海綿骨のBMD及び皮質骨のBMCは大きく減少した。 ITX100群とSham群の差異と、OVX群とSham群の差異を比較すると、ITX100群では、OVX群と比較して、海綿骨のBMCと皮質骨のBMDの減少が抑止された。ITX50群とSham群の差異と、OVX群とSham群の差異を比較すると、ITX50群では、OVX群と比較して、全骨と皮質骨のBMD、BMCの減少が抑止された。E2群とSham群の差異と、OVX群とSham群の差異を比較すると、E2群では、OVX群と比較して、全骨のBMDと海綿骨のBMCを除き、すべての減少が抑止された。 OVX群では、Sham群と比較して、内膜周囲長と外膜周囲長が増加し、皮質骨厚さが顕著に減少(Sham群と比較して13.6%減少)した。これは、骨代謝回転が速くなり骨形成よりも骨吸収が早くなったことを示している。 ITX50群、ITX100群では、OVX群に比較して内膜周囲長の増加が抑制された。これは骨内膜表面での骨吸収が抑制されたことを示している。一方、ITX50群、ITX100群の外膜周囲長は、OVX群に比較して同一または増加し、骨形成を抑制しないことが判った。この結果、皮質骨厚さの減少が抑制され、皮質骨厚さはSham群と同程度(ITX50群ではSham群と比較して98.3%、ITX100群ではSham群と比較して93.2%)であった。 ITX50群、ITX100群で観察された、内膜周囲長の増加抑制と皮質骨厚さの減少抑制は、ITXが骨内膜の吸収を抑制するとともに、骨外膜の形成を穏やかに促進することを示している。 一方、E2群では骨内膜表面での骨吸収が抑制されることにより、内膜膜周囲長の増加が抑制された。また、外膜周囲長は、OVX群に比較して減少し、皮質骨厚さはOVX群に比較して9.8%増加した。E2群の皮質骨厚さ減少防止効果は、骨代謝回転を抑制することに起因しており、以上の測定結果は、従来からの知見と合致している。 骨の塩構造(BMCとBMD)や寸法(皮質骨の厚さ、皮質骨の内膜周囲長、外膜周囲長)よりも、骨強度は骨粗しょう症治療・予防薬の評価に重要な要素である。 本試験においては、骨強度インデックスとして、PSSI(ねじれ強度)(polar−axis strength index)、XSSI(圧縮強度)(X−axis strength index)、YSSI(折れ強度)(Y−axis strength index)を測定した。 Sham群と比較して、OVX群ではPSSIが15.1%、XSSIが14.7%減少した。 ITX50群では、OVX群に比較して3つの骨強度インデックスがすべて増加(PSSIが16.2%、YSSIが24.0%、XSSIが14.2%増加)した。このような強度インデックスの減少防止効果は、皮質骨厚さの減少防止効果に起因するものと考えられて、ITXは強い抗骨折活性を持つことが判った。なお、骨折は骨粗しょう症の中で一番重要な問題である。 E2群では、OVX群と比較して、XSSIが15.3%増加、YSSIが23.5%増加した。 表4に、試験初期と終期のラット体重、及び試験終期の子宮重量の測定結果を示した。 Sham群に比較して、OVX群の終期の体重は大きく増加(13.4%)し、子宮重量は顕著に減少(71.4%)した。 ITX100群、ITX50群とSham群の差異と、OVX群とSham群の差異を比較すると、ITX100群、ITX50群では、終期の体重増加は抑制され、また、子宮重量はOVX群に比較して大きな違いは認められない。 一方、E2群とSham群の差異と、OVX群とSham群の差異を比較すると、E2群では、終期の体重増加が抑制され、同時に、子宮重量の減少は抑制(Sham群に比較して48.5%)された。 この試験結果から、ITXはE2と異なる機序で作用することが示唆される。従来よりE2は骨に作用すると共に、子宮や乳房に作用してこれらの癌の危険性を増大することが知られている。ITXは、子宮癌のリスクを増大させることなく骨粗しょう症に作用することが示唆された。 本発明にかかる医薬は、骨粗しょう症の治療・予防に用いることができる。 式(1) 式(1)(式中R1は炭素数1〜4のアルキルオキシ基を表す)で示される化合物、または式(1)化合物の医学的に許容される塩またはエステルを有効成分とする骨粗しょう症の治療または予防用医薬。 式(1) 式(1)(式中R1は炭素数1〜4のアルキルオキシ基を表す)で示される化合物、または式(1)化合物の医学的に許容される塩またはエステルを有効成分とする骨形成促進のために使用する治療用または予防用医薬。