生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_疼痛の治療のための医薬
出願番号:2005517314
年次:2012
IPC分類:A61K 31/704,A61P 25/02


特許情報キャッシュ

二宮 幸三 二宮 周三 JP 5107521 特許公報(B2) 20121012 2005517314 20050126 疼痛の治療のための医薬 二宮 幸三 504032422 二宮 周三 504032374 特許業務法人特許事務所サイクス 110000109 二宮 幸三 二宮 周三 JP 2004017024 20040126 20121226 A61K 31/704 20060101AFI20121206BHJP A61P 25/02 20060101ALI20121206BHJP JPA61K31/704A61P25/02 101 A61K 31/704 CA/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) Effect of ginsenosides, active components of ginseng, on capsaicin-induced pain-related behavior.,Neuropharmacology,2000年,39(11),2180-2184 Chemical Abstracts,1986年,104(21),50,104:180057w Antinociceptive effects of ginsenosides injected intracerebroventricularly or intrathecally in substance P-induced pain model.,Planta Med. ,2003年,69(11),1001-1004 1 JP2005000979 20050126 WO2005070437 20050804 12 20070911 金子 亜希 本発明は、末梢神経損傷や中枢神経損傷の後に発生するニューロパシックペインなどの疼痛の治療及び/又は予防のための医薬に関する。 末梢神経障害は知覚鈍麻や運動機能低下を起こす一方で、痛覚過敏(通常で痛いと感じる刺激に対する反応性の増強)やアロディニア(通常では痛みを引き起こさない刺激により生じる痛み)などのニューロパシックペイン(「神経障害性疼痛」、「神経因性疼痛」と呼ばれる場合もある)を引き起こす。ニューロパシックペインは求心性一次知覚ニューロンが何らかの原因で傷害を受けた場合に発症するが、その発症メカニズムはいまだに不明であり、有効な治療法も確立されていないことから、患者に最も苦痛を与える痛みとされている(Textbook of Pain, 3rd Edition, London ; Longman Group, pp.201-224, 1994)。また、ニューロパシックペインの発症機序は本質的にはいまだ不明であり、様々な説が提唱されているが(非特許文献1)、脳幹を起始部とし脊髄後角に下降する下行性疼痛抑制系(ノルアドレナリン作動性神経系・セロトニン作動性神経系)の可塑的な変化が原因の一つとされている(Clinical Neuroscience, 20, pp.1122-1125, 2002)。 一方、最近薬用人参分画の一つであるジンセノサイドRb1が脳梗塞・脳卒中・脊髄損傷を予防・改善する効果が明らかになってきた。温らは、紅参末の経口投与や薬用人参の粗サポニンまたはジンセノサイドRb1の腹腔内投与を5分間の一過性前脳虚血前に1週間にわたってすると学習行動障害改善作用および遅発性神経細胞死抑制作用を認めたと報告した(Acta Neuropathol (Berl), 91, pp.15-22, 1996)。Limらは、一過性前脳虚血を負荷した直後よりジンセノサイドRb1を7日間脳室内に持続注入したところ、受動的回避学習実験の反応潜時がコントロールに比べて容量に依存して有意に延長し、海馬CA1領域の遅発性神経細胞死も有意に軽減することを報告した(Neuroscience Research, 28, pp.191-200, 1997)。また仲田は、脊髄圧迫直後より薬用人参の粗サポニン分画を静脈内投与すると運動麻痺改善効果がみられたと報告した(愛媛医学, 21-1, pp.24-30, 2002)。しかし、ジンセノサイドRb1のニューロパシックペイン動物モデルに及ぼす影響についての報告はみられない。なお、ジンセノサイドRc、Rd、Re及びRfがマウスで鎮痛効果を示すことは知られているが(General Pharmacology, 32, pp.653-659, 1999; Brain Research, 792, pp.218-228, 1998)、ジンセノサイドRb1が鎮痛効果を示すことを教示した報告はない。 本発明の課題は、末梢神経損傷や中枢神経損傷の後に発生するニューロパシックペインなどの疼痛の治療及び/又は予防のための医薬を提供することにある。 本発明者は上記の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、ジンセノサイドRb1がニューロパシックペインを顕著に軽減することができること、及びジンセノサイドRb1を有効成分として含む医薬が末梢神経損傷や中枢神経損傷の後に発生するニューロパシックペインなどの疼痛の治療及び/又は予防のために極めて有用であることを見出した。本発明は上記の知見を基にして完成されたものである。 すなわち、本発明により、疼痛の治療及び/又は予防のための医薬であって、ジンセノサイドRb1を有効成分として含む医薬が提供される。この発明の好ましい態様によれば、疼痛が慢性疼痛である上記の医薬;疼痛がニューロパシックペインである上記の医薬;ニューロパシックペインが末梢神経損傷及び/又は中枢神経損傷により惹起される疼痛である上記の医薬が提供される。また、本発明により、疼痛の治療及び/又は予防のための医薬であって、ジンセノサイドRb1を有効成分として含むα2Aアドレナリン受容体作動性の医薬が提供される。 本発明の別の観点からは、上記の医薬の製造のためのジンセノサイドRb1の使用;及び、疼痛の治療及び/又は予防方法であって、ジンセノサイドRb1の治療及び/又は予防有効量をヒトを含む哺乳類動物に投与する工程を含む方法が提供される。また、本発明により、疼痛の治療及び/又は予防方法であって、ジンセノサイドRb1の治療及び/又は予防有効量をヒトを含む哺乳類動物に投与することにより、α2Aアドレナリン受容体を介して疼痛の治療及び/又は予防を行う方法が提供される。坐骨神経絞扼後24時間目からジンセノサイドRb1を4週間持続投与することにより、絞扼後3週目以降で痛覚過敏は有意に緩和された結果を示した図である。坐骨神経絞扼後24時間目からジンセノサイドRb1を4週間持続投与しても、アロディニアの回復はみられなかった結果を示した図である。坐骨神経絞扼後3週間目にセロトニン涸渇薬(5,7-DHT)を投与して、その前後に熱テストを行ってジンセノサイドRb1による痛覚過敏抑制に対する効果を検討した結果を示した図である。絞扼後3週間目に熱テストを行い、その翌日にβアドレナリン受容体遮断薬(プロプラノロール)を投与して、その1時間後に再度熱テストを行ってジンセノサイドRb1による痛覚過敏抑制に対する効果を検討した結果を示した図である。絞扼後3週間目に熱テストを行い、その翌日にオピオイド受容体拮抗薬(ナロキソン)を投与して、その1時間後に再度熱テストを行ってジンセノサイドRb1による痛覚過敏抑制に対する効果を検討した結果を示した図である。絞扼後3週間目に熱テストを行い、その翌日にαアドレナリン受容体遮断薬(フェントラミン)を投与して、その1時間後に再度熱テストを行ってジンセノサイドRb1による痛覚過敏抑制に対する効果を検討した結果を示した図である。坐骨神経絞扼後3週間目の脊髄においてジンセノサイドRb1によるα2Aアドレナリン受容体のmRNA発現を示した図である。坐骨神経絞扼後3週間目の脊髄においてジンセノサイドRb1によるα2A アドレナリン受容体蛋白の発現を示した図である。 ジンセノサイドRb1は薬用人参サポニンであり、例えば、国際公開WO 00/37481、同WO 00/48608、同WO 01/15717、及び同WO 01/92289などに記載されているように、脳神経疾患の予防、処置又は治療や、神経外傷の予防、処置又は治療に有用であることが知られており、当業者が容易に入手可能な物質である。また、ジンセノサイドRb1については、類似作用を有する物質(ジンセノサイドRb1様物質)のスクリーニング方法が知られているので(日本国特許出願、出願人:阪中雅広、発明の名称「ジンセノサイドRb1様物質のスクリーニング方法」)、その方法によりスクリーニングされた物質を本発明の医薬の有効成分として用いることもできる。本明細書において用いられる「ジンセノサイドRb1」という用語は、天然型のジンセノサイドRb1のほか、上記の方法でスクリーニングされた物質(例えば配糖体など)を包含しており、いかなる意味においても限定的に解釈してはならない。また、塩の形態の物質、あるいは水和物又は溶媒和物の形態の物質を本発明の医薬の有効成分として用いることもできる。 本発明の医薬は、疼痛の治療及び/又は予防に有用である。疼痛とは、一般的には、組織の実質的又は潜在的傷害と関連した、またはそのような傷害の言葉によって表される不快な感覚、情緒的経験とされており(国際疼痛学会(IASP)、1994年)、生理的疼痛(急性侵害性疼痛)、病的持続性疼痛(組織損傷性・炎症性疼痛、ニューロパシックペイン)、及び心因性疼痛が含まれる。本発明の医薬は、上記の疼痛のいずれにも適用可能であるが、好ましい適用対象として慢性疼痛を挙げることができ、そのなかでもニューロパシックペインをさらに好ましい提供対象として挙げることができる。 ニューロパシックペインは、末梢神経系又は中枢神経系の機能異常の結果として生ずる難治性疼痛のことであり、臨床上、慢性疼痛の大部分を占める。主な症状として、典型的には、通常で痛いと感じる刺激に対する反応性の増強である「痛覚過敏」(hyperalgesia)、通常では痛みを引き起こさない刺激により生じる痛みである「アロディニア」(allodynia)、及び「持続する自発痛」の3種を挙げることができる。本発明の医薬は、これらの症状のいずれにも適用可能であるが、「痛覚過敏」及び「持続する自発痛」を好ましい適用対象として挙げることができ、特に好ましい適用対象は「痛覚過敏」である。 ニューロパシックペインでは、インドメタシンなどの非ステロイド性抗炎症剤(NSAIDs)やモルヒネなどのオピオイド系鎮痛剤を含む既存の鎮痛剤に抵抗性の疼痛が多くみられ、難治性の疼痛として治療や予防が困難になることも多い。本発明の医薬は、このような既存の鎮痛剤に抵抗性のニューロパシックペインに対しても優れた鎮痛効果を発揮できる。例えば、末梢神経損傷、脳梗塞や脊髄損傷などに起因する中枢神経損傷の後に発生するニューロパシックペイン、癌に起因するニューロパシックペインなどは、本発明の医薬の好適な適用対象である。もっとも、本発明の医薬の適用対象となる疼痛の種類は上記に具体的に説明したものに限定されることはない。 本発明の医薬が疼痛に対して優れた効果を有することは、本明細書の実施例に具体的に示した方法により当業者が容易に確認できる。疼痛に関する動物実験モデルとしては、例えば、生理的疼痛モデルとして熱刺激及び機械刺激モデルを利用することができ、病的疼痛モデルとして炎症性疼痛モデル(化学刺激)及びニューロパシックペインモデルを利用することができる。ニューロパシックペインモデルとしては、例えば、Chronic constriction injury(CCI)モデル、Spinal nerve ligation (Chung)モデル、及びSpared nerve injuryモデルなどを利用できるが、これらに限定されることはない。 本発明の医薬としてはジンセノサイドRb1それ自体を投与してもよいが、好ましくは、当業者に周知の方法によって製造可能な経口用あるいは非経口用の医薬組成物として投与することができる。一般的には、本発明の医薬は非経口用の医薬組成物として調製することができ、例えば、注射剤、点滴剤、坐剤、吸入剤、点眼剤、点鼻剤、軟膏剤、経皮吸収剤、経粘膜吸収剤、クリーム剤、及び貼付剤などの形態、好ましくは静脈内投与用の注射剤又は点滴剤の形態の医薬として調製することができる。経口投与に適する医薬用組成物としては、例えば、経口投与に適したジンセノサイドRb1様物質又はプロドラッグとして調製したジンセノサイドRb1様物質を、例えば、錠剤、カプセル剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、液剤、及びシロップ剤等の形態の医薬として調製してものを挙げることができる。 上記の医薬組成物は、薬理学的、製剤学的に許容しうる添加物を加えて製造することができる。薬理学的、製剤学的に許容しうる添加物の例としては、例えば、賦形剤、崩壊剤ないし崩壊補助剤、結合剤、滑沢剤、コーティング剤、色素、希釈剤、基剤、溶解剤ないし溶解補助剤、等張化剤、pH調節剤、安定化剤、噴射剤、及び粘着剤等を挙げることができる。上記の医薬組成物には、他の医薬、例えば疼痛治療のための鎮痛剤などを1種又は2種以上配合してもよい。ジンセノサイドRb1の医薬への使用については、例えば、特開2002-53467号公報、特開2000-191539号公報、及び特開2000-302798号公報などに記載があり、これらの特許公報に記載された形態の医薬を本発明の医薬として好適に使用できる。 本発明の医薬の投与量は特に限定されず、疼痛の種類、患者の体重や年齢、症状、投与経路など通常考慮すべき種々の要因に応じて、適宜増減することができる。一般的には、経口投与の場合には有効成分であるジンセノサイドRb1の重量として成人一日あたり 0.01〜1,000 mg程度の範囲で用いることができる。 以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。例1A.材料と方法(1)坐骨神経絞扼障害モデルの作成 坐骨神経絞扼障害モデルは、Bennettらが発表したニューロパシックペインモデルを竹葉の方法に準じて改変して作成した(Pain, 33, pp.87-107, 1988; 媛医, 21, pp.192-206, 2002)。3%ハロセンと笑気の吸入麻酔下、8−12週齢のWistar系雌ラット(日本クレア、大阪)の両側坐骨神経を露出した後27ゲージの注射針を沿わせ大腿骨中央レベルで4-0ポリグリコール酸縫合糸を用いて両側とも4カ所ずつ1mm間隔で結紮した後に注射針を抜き、坐骨神経絞扼障害モデルを作成した。結紮時の神経への刺激で下腿筋群がごくわずかに収縮する程度とし、結紮操作そのもので軸索の損傷が起きないように注意した。(2)ジンセノサイドRb1静脈内投与方法(a)持続注入ポンプの取り付け 持続注入ポンプは、Alzet mini-osmotic pump Model 2004(DURECT Corporation, Cupertino, USA)を使用した。右側外頸静脈を露出し、ポンプに接続したシリコンチューブ(HELIX MEDICAL, Carpinteria, USA)を静脈内に2.5cm挿入し固定後、ポンプをラットの背部皮下に留置した。なお、シリコンチューブはヘパリンを注入した後、一晩留置し、生理食塩液で洗浄した後に使用した。(b)ジンセノサイドRb1の静脈内投与 ジンセノサイドRb1は生理食塩液に溶解した。持続注入ポンプ内に前もってそれぞれ(i)ジンセノサイドRb1 12μg/day×28days(ii)ジンセノサイドRb1 60μg/day×28days(iii)生理食塩液(大塚)を充填した。 120μlのジンセノサイドRb1溶解液(0.10μg/μlまたは0.50μg/μl)あるいは等量の生理食塩液(saline)をラット坐骨神経絞扼後24時間目にワンショットで静脈内投与した。次に持続注入ポンプによって、ジンセノサイドRb1を12μg/day (以下、S12とする )又は60μg/day (以下、S60とする)の用量(それぞれ 0.25μl/時)で4週間の静脈内持続投与を行った。同様に、対照群として生理食塩液を4週間静脈内持続投与した。(3)疼痛の評価 疼痛評価の方法として熱テストと圧テストの二つを用いた。なお、以下の疼痛の評価は午前9時から午後0時までの間に室温を一定に保った静かな部屋で行った。(a)熱テスト 温熱刺激に対する逃避潜時(Thermal paw withdrawal latency)の測定のため、Ugo Basile社製のPlantar Test(Planter test 7370 ; Ugo Basile Italy)を用いて、Hargreavesらの方法に準じて熱テストを行った(Pain, 32, pp.77-88, 1988)。温度を23〜24℃に保ったプラスチック製の台上にラットを置き、熱刺激装置で足底を刺激し、逃避行動をとるまでの潜時(秒)を測定した。潜時の短縮をもって痛覚過敏を起こしていると判断した。両側の足底を3回ずつ、全て5分間隔で潜時を測定し、合計6回の平均値を測定値とした。(b)圧テスト 機械刺激に対する痛覚閾値 (von Frey withdrawal threshold) の測定のため、臨床におけるSemmes-Weinsteinテストと同様にvon Frey hair test を行った(Z. Gesamte Neurol. Psychiat., 79, pp.324-333, 1922; Perceptual and Motor Skills, 14, pp.351-354, 1962; The Journal of HAND SURGERY, 3, pp.211-216, 1978)。30×35×10cm大のワイヤーメッシュケージにラットを入れた後、後肢足底を最初は細いvon Frey filamentで4回刺激し、徐々に太いfilamentに変えて刺激を行い、4回全ての刺激に対して逃避行動をとった時点を陽性とした。その5分後に1回目に陽性と判定したfilamentより2段階細いfilamentから再び同様の方法で足底を4回刺激していき、4回全ての刺激に対して逃避行動をとるまで続けた。この手技にて両側足底の圧刺激に対する痛覚閾値 (グラム) を各2回ずつ測定し、合計4回の平均値を測定値とした。術前に比べて弱い刺激で逃避行動をとることでアロディニアを起こしていると判断した。(4)α2Aアドレナリン受容体mRNAの測定 偽手術群(n=7) 及び坐骨神経絞扼後24時間目より生理食塩液又はジンセノサイドRb1 60μg/日(S60)を静脈内持続投与した絞扼後3週間目のラット(各n=7)から坐骨神経支配領域の脊髄を摘出し、ISOGEN(Nippon Gene, Tokyo)を用いてtotal RNAの抽出を行った。抽出したtotal RNAをDNaseにて処理した後、oligo-dTプライマーとMoloney murine leukemia virus reverse transcriptase(Life Technologies, Rockville, USA)を用いて一本鎖cDNAを合成した。今回使用したプライマーの配列は以下の通りである。rat β-actin:sense: 5'-AGAAGAGCTATGAGCTGCCTGACG-3'antisense: 5'-TACTTGCGCTCAGGAGGAGCACTG-3'rat α2A アドレナリン受容体sense: 5'-GCTCGCTGAACCCTGTTATC-3'antisense: 5'-TCCCCTCCAAACTGGGTATT-3' PCRはTaq polymerase(Takara, Tokyo)を用いて下記の条件で行った。β-actin: 94℃・5分の後、熱変性94℃・1分、アニーリング55℃・1分30秒、伸長反応72℃・1分30秒で25サイクルとした。α2Aアドレナリン受容体:94℃・2分の後、熱変性94℃・1分、アニーリング60℃・1分、伸長反応72℃・1分で30サイクルとした。また、内部コントロールとしてβ-actinを用いた。(5)α2A アドレナリン受容体蛋白発現の検討 偽手術群(n=3)及び坐骨神経絞扼後24時間目より生理食塩液又はジンセノサイド Rb1 60μg/日(S60)を静脈内持続投与した絞扼後3週間目(各n=3)のラットから坐骨神経支配領域の脊髄を摘出して、10倍量の50 mM phosphate buffer、100 μM pAPMSF、0.5% Trinton-Xおよび0.5%SDSに入れて、ホモジナイズした。さらにそれに2分の1量の6%SDS(+beta-mercaptoethanol)を加え、99℃で10分間インキュベーションを行い、4℃で15,000rpmにて10分間遠心した後の上清をサンプルとした。10%SDSポリアクリルアミド電気泳動を行った後、さらにトランスブロット装置を用いてpolyvinylidinedilfluoride膜(Millipore, Bedford, U.S.A.)に蛋白を転写し、一次抗体として抗α2A adrenoceptor抗体(ALEXIS BIOCHEMICALS, San Diego, USA)を、二次抗体として抗ウサギIgG conjugated with alkaline phosphatase(SIGMA Chemicals, St. Louis, U.S.A)を用いてウェスタンブロッティングを行った。(6)統計方法 統計学的解析はOne factor ANOVAを行い、post hoc Bonferroni解析を行った。P<0.05を有意差ありとした。B.結果 坐骨神経絞扼後24時間目に熱テストを行い、両足の潜時の平均値が術前の90%以下のラットのみを使用した。動物32匹を3群( 各群10ないし11匹 )に任意にふり分け、実験に用いた。絞扼後3日目および1, 2, 3, 4, 5, 6週間目に圧テストおよび熱テストを行った。Rb1投与群と対照群の群間比較でアロディニアの回復は認めなかったが、絞扼後3週間目以降で痛覚過敏の改善を認めた。従って、絞扼後24時間目からRb1を4週間持続投与すると、絞扼後3週目以降で痛覚過敏は有意に緩和された(図1及び2)。 Rb1の作用機構の解明のため、セロトニン涸渇薬、オピオイド受容体拮抗薬、αアドレナリン受容体遮断薬、βアドレナリン受容体遮断薬などの脊髄下行性疼痛シグナル伝達に関与すると報告されている物質に対する涸渇薬あるいは遮断薬を用いた検討を行った(Biol. Pharm. Bull., 22-7, pp.691-697, 1999)。坐骨神経絞扼後24時間目に熱テストを行い、両足の潜時の平均値が術前の90%以下のラットのみを使用した。動物48匹を8群(各群6匹)に任意にふり分け、Rb1投与群と対照群を作成した。絞扼後3週間目にそれぞれセロトニン涸渇薬、オピオイド受容体拮抗薬、αアドレナリン受容体遮断薬、βアドレナリン受容体遮断薬を投与して、その前後に熱テストを行い比較検討した。 セロトニン涸渇薬である5,7-dihydroxytryptamine (5,7-DHT) (ICN Biomedicals Inc., Ohio, U.S.A)60μgは測定の1週間前に硬膜内投与し、絞扼後3週間目に熱テストを行った。また、絞扼後3週間目に熱テストを行い、その翌日にオピオイド受容体拮抗薬のnaloxone(USP, Rockville, U.S.A) 5mg/kg、βアドレナリン受容体遮断薬のpropranolol(SIGMA-ALDRICH C0., St.Louis, U.S.A) 10mg/kg、αアドレナリン受容体遮断薬のphentolamine(SIGMA-ALDRICH C0., St.Louis, U.S.A) 20mg/kgをそれぞれ皮下に注射した1時間後に再度熱テストを行った。その結果、5,7-DHT を投与した群としなかった群の間にはRb1投与群・対照群ともに有意差はなかった(図3)。同様に、propranololそしてnaloxone投与前後の熱テストでもRb1投与群・対照群ともに有意差はなかった(図4及び5)。しかし、phentolamine投与前後の熱テストにおいて対照群では有意差はなかったが、Rb1投与群においてはphentolamine投与後にRb1による痛覚過敏抑制効果が有意に阻害された(図6)。以上のことから、ジンセノサイドRb1による痛覚過敏抑制にαアドレナリン受容体が関与していることが示唆された。 ジンセノサイドRb1による痛覚過敏抑制効果にαアドレナリン受容体が関与していることが示唆されたため、αアドレナリン受容体のうち、特に脊髄レベルの鎮痛に最も関係が深いと考えられているα2Aアドレナリン受容体に関してRb1投与における遺伝子発現変化をRT-PCRにて検討した。その結果、坐骨神経絞扼後3週間目の脊髄におけるα2Aアドレナリン受容体mRNA発現は、対照群および偽手術群に比較してRb1投与群では有意に上昇していた(図7)。同様に、Rb1投与群におけるα2A アドレナリン受容体蛋白発現変化をImmunoblot解析にて検討した。その結果、坐骨神経絞扼後3週間目の脊髄におけるα2A アドレナリン受容体蛋白発現は、対照群および偽手術群に比較してRb1投与群では有意に増大していた(図8)。 本発明により、末梢神経損傷や中枢神経損傷の後に発生するニューロパシックペインなどの疼痛の治療及び/又は予防に高い有効性を有する医薬が提供される。 坐骨神経障害を原因とするニューロパシックペインの治療及び/又は予防のための医薬であって、ジンセノサイドRb1を有効成分として含む医薬。配列表


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