タイトル: | 特許公報(B2)_毛髪中の酸化タンパク質を指標とする毛髪ダメージ評価方法 |
出願番号: | 2005516233 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | G01N 33/50,G01N 33/483,G01N 33/68,G01N 21/78 |
藤田 宏志 久保 早苗 安田 正明 平尾 哲二 川副 智行 JP 4116035 特許公報(B2) 20080425 2005516233 20041208 毛髪中の酸化タンパク質を指標とする毛髪ダメージ評価方法 株式会社資生堂 000001959 青木 篤 100099759 石田 敬 100077517 古賀 哲次 100087413 渡辺 陽一 100117019 西山 雅也 100082898 藤田 宏志 久保 早苗 安田 正明 平尾 哲二 川副 智行 JP 2003410415 20031209 20080709 G01N 33/50 20060101AFI20080619BHJP G01N 33/483 20060101ALI20080619BHJP G01N 33/68 20060101ALI20080619BHJP G01N 21/78 20060101ALI20080619BHJP JPG01N33/50 HG01N33/483 CG01N33/68G01N21/78 C G01N 33/50 G01N 21/78 G01N 33/483 G01N 33/68 特開昭55− 15099(JP,A) 特開平 8−271515(JP,A) 特開平 9−127105(JP,A) 特開昭61− 44353(JP,A) 特開平 7−224061(JP,A) 9 JP2004018670 20041208 WO2005057211 20050623 12 20070427 宮澤 浩 本発明は、毛髪における酸化タンパク質のカルボニル基を特異的に蛍光標識し、その蛍光を検出することで毛髪のダメージ度の評価を行う方法、及びその方法を実施するために利用されるキットを提供する。 毛髪はパーマ処理、ブリーチや酸化染毛剤処理、コーミング、ドライヤー等による熱処理、紫外線に対する暴露、プールでの次亜塩素酸に対する暴露など、様々な外的要因によってダメージを受ける。毛髪は一度ダメージを受けると修復することはない。加えて、ダメージが経時的に進行してしまう場合もある。従って、毛髪の健康状態を保つには日頃のケアによりダメージを与えにくくすることも当然ながら、そのダメージ度を認識しておき、ダメージの進行を抑制することも極めて重要である。毛髪のダメージ度を評価する方法として、視感評価、物性評価などの方法が知られており、例えば走査型電子顕微鏡による毛髪の表面分析法(Swift J.A.ら、J.Society of Cosmetic Chemists(1972)Vol.23,p.695)、毛髪の機械的強度を測定する引張試験法(Donald E.D.ら、J.Society of Cosmetic Chemists(1968)Vol.19,p.395)、毛髪の内部構造変化を測定する方法(Humphres W.T.ら、J.Society of Cosmetic Chemists(1972)Vol.23,p.359)、毛髪を蛍光物質で標識し、蛍光顕微鏡でダメージを測定する方法(Tate M.L.ら、J.Society of Cosmetic Chemists(1993)Vol.44,p.347)などがあるが、いずれも特別な装置を要したり、操作がめんどうであるといった欠点を有する。 特開平8−178920号公報や特開平8−271515号公報は、例えばパーマ処理などによるケラチンに多数含まれるS−S結合の切断の結果生ずるSH基を毛髪ダメージの指標とし、当該SH基を選択的に標識する蛍光物質、例えばN−(9−アクリジニル)マレイミドやN−(7−ジメチル−アミノ−4−メチルクマリニル)マレイミドで毛髮を蛍光染色して、毛髪のダメージ度を測定する方法を開示する。これらの方法によれば、ダメージの検出は蛍光顕微鏡などを要せずにして目視で行われ、測定の簡便化が図れる。一般に、パーマ処理は還元処理により毛髪ケラチン内のS−S結合を一旦切断してSH基を生じせしめ、後に酸化処理によりそのSH基をS−S結合に戻すといった工程から成る。また、ブリーチ処理は酸化処理だけからなる。しかし、パーマ処理、ブリーチ処理ともに酸化反応が過度に進行すると、SH基やS−S結合がシステイン酸(SO3H)に変化し、これが毛髪ダメージの一因であることが知られている。システイン酸は、SH基を選択的に標識する蛍光物質とは反応しないので、SH基を毛髪ダメージの指標とするこれらの方法により得られる結果は、毛髪の実際のダメージ度を的確に反映していない場合があると考えられる。 本発明は、簡便で、しかも毛髪の実際のダメージをより正確に反映した、毛髪ダメージ度を評価する方法の提供を課題とする。 本発明は、毛髪のダメージを評価する方法を提供する。この方法は、毛髪における酸化タンパク質のカルボニル基を特異的に蛍光標識し、その蛍光を検出することで評価を行うことを特徴とする。かかるダメージは毛髪のパーマ処理、ブリーチや酸化染毛剤処理、コーミング、ヘアドライヤー等の熱処理、紫外線に対する暴露、プールでの次亜塩素酸に対する暴露のいずれか又はそれらの複数の組合せに起因し得る。 好適な態様において、酸化タンパク質のカルボニル基の特異的な蛍光標識は、酸化タンパク質にヒドラジノ基含有蛍光物質を作用・結合させることにより実施する。好ましくは、かかるヒドラジノ基含有蛍光物質はフルオレセイン−5−チオセミカルバジド及びダンシルヒドラジンから成る群から選ばれる。 好適な態様において、上記評価は蛍光顕微鏡下で行われ得る。しかしながら、ヒドラジノ基含有蛍光物質がダンシルヒドラジンの場合、前記蛍光の検出は目視で行うことができる。 別の観点において、本発明は毛髪のダメージを評価する方法に利用するためのキットを提供する。このキットは、酸化タンパク質のカルボニル基を特異的に蛍光標識するための蛍光物質を含んで成ることを特徴とする。 好ましくは、蛍光物質はヒドラジノ基含有蛍光物質であり、より好ましくはヒドラジノ基含有蛍光物質はフルオレセイン−5−チオセミカルバジド及びダンシルヒドラジンから成る群から選ばれる。 本発明により、簡便で、しかも毛髪の実際のダメージを的確に反映する結果を示す、毛髪ダメージ評価方法が提供される。この評価方法により、パーマ処理、ブリーチや酸化染毛剤処理、コーミング、ヘアドライヤー等による熱処理、紫外線暴露、プールの次亜塩素酸薬剤に対する暴露などに起因するダメージが評価できる。 図1は、フルオレセイン−5−チオセミカルバジドによる毛髪酸化タンパク質の検出結果を示す。 図2は、紫外線処理、次亜塩素酸ナトリウム処理による毛髪酸化タンパク質の亢進を示す蛍光顕微鏡写真図を示す。 図3は、図2の結果を平均輝度に数値化した図である。 図4は、平均輝度による、パーマ処理、ブリーチ処理による毛髪酸化タンパク質の亢進を示す。 図5は、蛍光物質としてダンシルヒドラジンを用いた場合の、平均輝度による、パーマ処理、ブリーチ処理による毛髪酸化タンパク質の亢進を示す。 図6は、医療用紫外線蛍光ランプによる毛髪ダメージの定量実験の結果を示す。 図7は、人工太陽照明灯による毛髪ダメージの写真図(a)及びその定量実験の結果(b)を示す。 本発明は、毛髪における酸化タンパク質のカルボニル基を特異的に蛍光標識し、その蛍光を検出することで毛髪のダメージ度の評価を行う方法、及びその方法を実施するために利用されるキットを提供する。 毛髪(又は毛幹)はその表面を覆う毛小皮、その内部にあって毛髪の大部分を占める毛皮質及び中心部の毛髄質から構成される。特に毛小皮は毛髪の根元から先端に向かって鱗状に重なって毛髪の表面を覆い、内部を保護し、毛小皮に損傷がなく、健常な状態であれば、毛髪は艶やかに見える。毛髪はタンパク質80〜90%、脂質1〜8%、微量元素0.6〜1.0%、そして水12〜13%から概ね構成される。毛髪中のタンパク質には様々なものが存在するが、主だったタンパク質はケラチンである。ケラチンを含む毛髪タンパク質はパーマ剤、ブリーチ剤、酸化染毛剤等に含まれる化学系酸化剤、紫外光、大気汚染物質、プールに使われる次亜塩素系薬剤、コーミングによる摩擦、ヘアドライヤー等による熱などの様々な因子に対する暴露に伴い、酸化を受けた結果カルボニル基が導入される。このような酸化には、タンパク質におけるLys、Arg、Proといったアミノ酸残基のNH2基が直接酸化されてカルボニル基となる場合と、脂質が酸化して過酸化脂質、更には分解して反応性の高いアルデヒドとなり、それがタンパク質と結合することで起こる場合とが考えられる。 本発明において利用できる酸化タンパク質のカルボニル基を特異的に蛍光標識する蛍光物質は、酸化タンパク質のカルボニル基に結合できるヒドラジノ基 −NHNH2 を有するものが好ましい。そのような蛍光物質の例には、フルオレセイン−5−チオセミカルバジド、ダンシルヒドラジン、テキサスレッドヒドラジド、ルシファーイエローヒドラシド等が挙げられる。 このようなヒドラジノ基含有蛍光物質を使用する場合、酸化タンパク質の検出は例えば以下のようにして実施できる: (1)毛髪を採取する; (2)これに適当な緩衝液(例えば100mMのMES−Na緩衝液(pH5.5))中のヒドラジノ基含有蛍光物質を室温にて数時間(例えば1時間)反応させる; (3)反応終了後に適当な生理溶液(例えば緩衝液リン酸緩衝生理食塩液(PBS))にて十分に洗浄した後、酸化タンパク質を例えば蛍光顕微鏡で検出する; (4)任意的に、顕微鏡写真撮影する。 紫外線を照射することにより目視できる蛍光を発光する蛍光物質、例えばダンシルヒドラジンをヒドラジノ基含有蛍光物質として使用する場合、蛍光標識された酸化タンパク質は蛍光顕微鏡を使うことなく、目視だけで検出することもできる。紫外線を照射することにより目視できる蛍光を発光するその他の蛍光物質としては、N−(9−フルオレニルメトキシカルボニル)ヒドラジン(FMOC−ヒドラジン)等が挙げられる。 紫外線を照射することにより目視できる蛍光を発光する蛍光物質、例えばダンシルヒドラジンをヒドラジノ基含有蛍光物質を使用する場合、酸化タンパク質の検出は例えば以下のようにして実施できる: (1)毛髪を採取する; (2)これに適当な緩衝液(例えば100mMのMES−Na緩衝液(pH5.5))中のヒドラジノ基含有蛍光物質を室温にて数時間(例えば1時間)反応させる; (3)反応終了後に適当な生理溶液(例えば緩衝液リン酸緩衝生理食塩液(PBS))にて十分に洗浄した後、これに例えばブラックライトなどを使用して紫外線を照射する; (4)蛍光を発する酸化タンパク質を目視観察する; (5)任意的に、写真撮影する。 酸化タンパク質の特異的な蛍光標識は、ビオチンヒドラジドと蛍光標識アビジンとの組合せを用いることもできる。ビオチンヒドラジドもヒドラジノ基を有するため、タンパク質のカルボニル基に結合できる。この場合、まず酸化タンパク質にビオチンヒドラジドを結合させ、しかる後に蛍光標識アビジンをビオチンーアビジン結合を介してビオチンヒドラジドに結合させ、その結果酸化タンパク質は蛍光標識される。ビオチンヒドラジドは当業界においてよく知られ、例えばピアース社から製造販売されているものを使用することができる。また、蛍光アビジンは、例えばフルオレセインアビジンなどが使用できる。 このようなヒドラジノ基含有蛍光物質を使用する場合、酸化タンパク質の検出は例えば以下のようにして実施できる: (1)毛髪を採取する; (2)これに適当な緩衝液(例えば100mMのMES−Na緩衝液(pH5.5))中のビオチンヒドラジドを室温にて数時間(例えば1時間)反応させる; (3)反応終了後に適当な生理溶液(例えば緩衝液リン酸緩衝生理食塩液(PBS))にて十分に洗浄した後、蛍光標識アビジンを室温にて数時間(例えば1時間)反応させる; (4)酸化タンパク質を例えば蛍光顕微鏡で検出する; (5)任意的に、顕微鏡写真撮影する。 本発明に係るキットは、上述の蛍光物質の他に、上述の各種評価方法の実施に必要な試薬、例えば各種緩衝剤も一緒に含んでよい。 本発明者は、以降の実施例においても示すように、毛髪内の酸化タンパク質の量は毛髪のダメージ度にある程度相関することを見出した。例えば、パーマ処理に使用される酸化剤は一般に過酸化水素系のものと臭素酸ナトリウム系の2種類に分類され、その中で過酸化水素系の方が酸化力が強く、毛髪に及ぼすダメージが大きいことがよく知られている。そして、酸化タンパク質を指標とし、過酸化水素系及び臭素酸ナトリウム系パーマ処理による毛髪のダメージ度を比較したところ、過酸化水素系パーマ処理した毛髪の方が臭素酸ナトリウム系パーマ処理毛髪と比べ強いダメージを受けていることを見出した。また、毛髪のブリーチ処理は、パーマ処理とは異なり毛髪を酸化処理するだけの工程から成るものであり、反応が過度に進行するとSH基やS−S結合がシステイン酸(SO3H)に変化するため、従来のSH基を指標とした方法では、ダメージを正確に評価することができなかった。しかし、酸化タンパク質を指標とし、ブリーチ処理及びパーマ処理による毛髪のダメージ度を比較したところ、ブリーチ処理した毛髪の方がパーマ処理毛髪と比べ比較的強いダメージを受けることを見出した。これらの結果から、毛髪のダメージ度の上昇に伴い、毛髪中の酸化タンパク質の量も増大することが明らかとなった。よって、酸化タンパク質を指標とする毛髪ダメージ評価方法は、毛髪の実際のダメージをより的確に反映した結果を示すことがわかる。 上記の酸化タンパク質の検出方法及びキットを使用することで、酸化タンパク質を指標とした簡便な毛髪のダメージ測定が可能となる。本発明の方法はタンパク質の抽出操作、電気泳動操作、ウェスタンブロッティング操作などを必要とせず、蛍光顕微鏡さえあれば実施可能となる。また、蛍光物質としてダンシルヒドラジンなどを使用すれば、紫外線を照射するだけで蛍光染色された酸化タンパク質を目視評価することも可能である。従って、上記の酸化タンパク質の検出方法及びキットは、毛質の評価にとって有力な情報を簡単な操作及び設備で実施できるものとし、例えば化粧品販売の店頭等でも簡単に実施することが可能である。 本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明する。 [実施例1]フルオレセイン−5−チオセミカルバジドによる毛髪酸化タンパク質の検出 9人の被験者(毛髪化学的処理経験なし)の毛髪の根元側と先端側(根元から約20センチの箇所)を5センチの長さで1本ずつ採取し、下記の組成を有する洗浄剤(処方1)に室温で10分間浸して洗浄し、その後1時間水に浸してすすぎを行った。それを乾燥させた後に、アロンアルファでスライドガラスに固定した。それを20μMのフルオレセイン−5−チオセミカルバジドの100mMのMES−Na緩衝液(pH5.5)に1時間、室温で反応させた。反応終了後はPBSにて充分に洗浄した後、蛍光顕微鏡で観察し、画像を1サンプルにつき4枚ずつ取り込んだ。数値化に際しては、画像から毛髪と背景を分離し、毛髪の平均輝度を求めた。 処方1(洗浄剤) 原料名 配合量(質量%) アルスコープNM((株)東邦化学) 6.80 ヤシ油脂肪酸アミドプロピル ベタイン液(30%) 1.20 クエン酸 0.06 安息香酸ナトリウム 0.09 EDTA・3Na 0.01 イオン交換水 91.84 合計 100.00 図1にその結果を示す。図1から明らかなとおり、根元側では個人差が観察されなかった。それに対して、先端側ではかなりの個人差が観察された。髪の手入れの仕方の個人差等を反映しているものと考えられる。[実施例2]フルオレセイン−5−チオセミカルバジドによる毛髪酸化タンパク質の検出 一人の被験者(毛髪化学的処理経験なし)の毛髪の先端側を5センチの長さで3本採取し、洗浄剤(処方1)に室温で10分間浸して洗浄し、その後1時間水に浸してすすぎを行った。1本目に対しては、紫外線(UVA)を200J/cm2照射し、2本目に対しては0.2mM次亜塩素酸ナトリウム中に37℃で16時間インキュベートし、最後の3本目に対しては何の処理も行わなかった。紫外線処理、次亜塩素酸ナトリウム処理を行った毛髪は、最後に、洗浄剤(処方1)に室温で10分間浸して洗浄し、その後1時間水に浸してすすぎを行った。それらを乾燥させた後に、アロンアルファでスライドガラスに固定した。それを20μMのフルオレセイン−5−チオセミカルバジドの100mMのMES−Na緩衝液(pH5.5)に室温で1時間反応させた。反応終了後はPBSにて充分に洗浄した後、蛍光顕微鏡で観察し、画像を1サンプルにつき12枚ずつ取り込んだ。数値化に際しては、画像から毛髪と背景を分離し、毛髪の平均輝度を求めた。 図2は上記のとおりに蛍光処理した毛髪の蛍光顕微鏡写真図であり、図3は各毛髪の平均輝度を示す。図2及び3に示すとおり、紫外線処理、次亜塩素酸ナトリウム処理、どちらの処理においても毛髪の酸化タンパクの亢進が観察された。[実施例3]フルオレセイン−5−チオセミカルバジドによる毛髪酸化タンパク質の検出 一人の被験者(毛髪化学的処理経験なし)の毛髪の先端側を5センチの長さで4本採取し、洗浄剤(処方1)に室温で10分間浸して洗浄し、その後1時間水に浸してすすぎを行った。1本目に対しては、ブリーチ処理、2本目に対してはパーマ処理(臭素酸ナトリウム系)、3本目に対してはパーマ処理(過酸化水素系)、最後の4本目に対しては何の処理も行わなかった。ブリーチ処理は、以下に示す処方2のA剤、B剤、C剤を4:6:1の割合で混合し、毛髪をその中に室温で30分浸した。この作業を4回繰り返した。パーマ処理(臭素酸ナトリウム系)は、以下に示す処方3の1液に30℃で10分間浸して、30秒水洗いし、2液(臭素酸ナトリウム系)に30℃で10分間浸した。パーマ処理(過酸化水素系)は、処方3の1液に30℃で10分間浸して、30秒水洗いし、3液(過酸化水素系)に30℃で5分間浸した。ブリーチ処理、パーマ処理を行った毛髪は、最後に、洗浄剤(処方1)に室温で10分間浸して洗浄し、その後1時間水に浸してすすぎを行った。それらを乾燥させた後に、アロンアルファでスライドガラスに固定した。それを20μMのフルオレセイン−5−チオセミカルバジドの100mMのMES−Na緩衝液(pH5.5)に室温で1時間反応させた。反応終了後はPBSにて充分に洗浄した後、蛍光顕微鏡で観察し、画像を1サンプルにつき8枚ずつ取り込んだ。数値化に際しては、画像から毛髪と背景を分離し、毛髪の平均輝度を求めた。 処方2(ブリーチダメージ用のブリーチ剤処方)A剤 原料名 配合量(質量%) アンモニア水(28%) 3.60 イオン交換水 96.40 合計 100.00B剤 原料名 配合量(質量%) 過酸化水素(30%) 20.00 リン酸(一級) 0.20 リン酸水素二ナトリウム(無水) 0.20 スズ酸ナトリウム 0.02 メチルパラベン 0.05 イオン交換水 79.53 合計 100.00C剤 原料名 配合量(質量%) 過硫酸カリウム 74.22 メタケイ酸ナトリウム 17.62 硫酸アンモニウム 1.91 ピロリン酸ナトリウム 6.25 合計 100.00 処方3(パーマダメージ用のパーマ剤処方)1剤 原料名 配合量(質量%) チオグリコール酸アンモニウム 液(50%) 12.90 モノエタノールアミン 0.90 炭酸アンモニウム(一級) 2.80 尿素 1.00 EDTA・3Na 0.10 ラウリルジメチルアミノ酢酸 ベタイン(40%) 0.30 イオン交換水 82.00 合計 100.002剤(臭素酸ナトリウム系) 原料名 配合量(質量%) 臭素酸ナトリウム液(20%) 40.00 リン酸水素カリウム 0.30 リン酸水素二ナトリウム(12水) 0.20 イオン交換水 59.30 合計 100.003剤(過酸化水素系) 原料名 配合量(質量%) 過酸化水素水(31%) 6.45 リン酸(1%) 2.00 リン酸水素二ナトリウム(12水) 0.03 イオン交換水 91.52 合計 100.00 図4に各毛髪の平均輝度の結果を示す。パーマ処理、ブリーチ処理、ともに毛髪酸化タンパクの亢進が観察された。また、興味深いことに、過酸化水素系のパーマ処理の方が、臭素酸ナトリウム系のパーマ処理よりも酸化タンパクが多く観察された。これは、パーマ処理の方法が異なると毛髪が受ける酸化の度合いが異なることを反映しているものと考えられる。[実施例4]ダンシルヒドラジンによる毛髪酸化タンパク質の検出 一人の被験者(毛髪化学的処理経験なし)の毛髪の先端側を5センチの長さで4本採取し、洗浄剤(処方1)に室温で10分間浸して洗浄し、その後1時間水に浸してすすぎを行った。1本目に対しては、ブリーチ処理、2本目に対してはパーマ処理(臭素酸ナトリウム系)、3本目に対してはパーマ処理(過酸化水素系)、最後の4本目に対しては何の処理も行わなかった。ブリーチ処理は、処方2のA剤、B剤、C剤を4:6:1の割合で混合し、毛髪をその中に室温で30分浸した。この作業を4回繰り返した。パーマ処理(臭素酸ナトリウ厶系)は、処方3の1液に30℃で10分間浸して、30秒水洗いし、2液(臭素酸ナトリウム系)に30℃で10分間浸した。パーマ処理(過酸化水素系)は、処方3の1液に30℃で10分間浸して、30秒水洗いし、3液(過酸化水素系)に30℃で5分間浸した。ブリーチ処理、パーマ処理を行った毛髪は、最後に、洗浄剤(処方1)に室温で10分間浸して洗浄し、その後1時間水に浸してすすぎを行った。それらを乾燥させた後に、アロンアルファでスライドガラスに固定した。それを50μMのダンシルヒドラジンの100mMのMES−Na緩衝液(pH5.5)に室温で1時間反応させた。反応終了後はPBSにて充分に洗浄した後、蛍光顕微鏡で観察し、画像を1サンプルにつき4枚ずつ取り込んだ。数値化に際しては、画像から毛髪と背景を分離し、毛髪の平均輝度を求めた。 図5に各毛髪の平均輝度の結果を示す。パーマ処理、ブリーチ処理、ともに毛髪酸化タンパクの亢進が観察された。また、興味深いことに、過酸化水素系のパーマ処理の方が、臭素酸ナトリウム系のパーマ処理よりも酸化タンパクが多く観察された。これは、パーマ処理の方法が異なると毛髪が受ける酸化の度合いが異なることを反映しているものと考えられる。[実施例5] 本方法を用いて、健常黒髪及びブリーチ毛の紫外線による毛髪ダメージの定量を行った。(1)実験1 紫外線照射条件は、医療用紫外線蛍光ランプ(UV−B)[FL20S・E−30/DMR]3本を対象から15cmの高さに設定した。(0.641mW/cm2) サンプルは4水準▲1▼健常黒髪▲2▼ブリーチ毛1(健常黒髪にブリーチ処理15分行ったもの)▲3▼ブリーチ毛2(健常黒髪にブリーチ処理30分行ったもの)▲4▼ブリーチ毛3(健常黒髪にブリーチ処理30分×2回行ったもの) 上記4水準の毛髪を洗髪乾燥後、未照射と照射の2つに分け、照射サンプルのほうは、紫外線照射を70時間行った。照射後のサンプルは未照射のサンプルとあわせて洗浄し、本方法で毛髪の損傷評価を行った。得られた平均輝度を用いて以下の式を用いてヘアサンダメージを数値化した。 式:ヘアサンダメージ =照射毛髪平均蛍光輝度−未照射毛髪平均蛍光輝度 その結果を図6に示す。結果:メラニンの少なくなったブリーチ毛2及び3で、大きなヘアサンダメージが確認された。ブリーチの処理時間に依存して毛髪内部のメラニン量が減少する事から、ブリーチ毛ではメラニンの現象により、紫外線に対する防御力の低下が考えられる。 また、本試験法が毛髪の損傷評価に適していることがわかる。 今後の実験は影響力が大きいブリーチ毛3にて実験を行った。(2)実験2 ブリーチ処理30分×2回の毛髪を対象に実験を行った。 紫外線照射条件は、人工太陽照明灯SOLAX 500WのXC−500B形(セリック株式会社)製の照明1つを対象から40cmの高さに設定した。 (UV強度:54W/m2,UV照射量:210KJ/m2:UVセンサー[東レテクノ(株)製]で測定) 照射水準は6水準(3,6,12,24,48,72時間) ブリーチ毛を洗髪乾燥後、未照射と照射の2つに分け、照射サンプルのほうは、上記6水準にて人工太陽照射を行った。照射後のサンプルは未照射のサンプルとあわせて洗浄し、本方法で毛髪の損傷評価を行った。得られた平均輝度を用いて以下の式を用いてヘアサンダメージを数値化した。 式:ヘアサンダメージ =照射毛髪平均蛍光輝度−未照射毛髪平均蛍光輝度 その結果を図7に示す。結果:人工太陽照明の照射時間に依存してヘアサンダメージが増加する事が確認された。よって、本試験法が紫外線による毛髪の損傷を評価するのに適している事がわかる。 以下は、実験の効率を考え、人工太陽照明12時間照射で、抗酸化剤の効果を確認した。(3)実験3 ブリーチ処理30分×2回の毛髪を対象に実験を行った。 紫外線照射条件は、人工太陽照明灯SOLAX 500WのXC−500B形(セリック株式会社)製の照明1つを対象から40cmの高さに設定し、12時間照射を行った。 (UV強度:54W/m2,UV照射量:210KJ/m2:UVセンサー[東レテクノ(株)製]で測定) 試験水準:8水準▲1▼未塗布(イオン交換水)▲2▼紅茶エキス(0.1%:香栄興行社製)▲3▼ラベンダー抽出液(0.1%:香栄興行社製)▲4▼ブドウ種子エキス(0.1%:キッコーマン製)▲5▼トコフェロール(0.001%)▲6▼酢酸トコフェロール(0.001%)▲7▼チオタウリン(0.001%)▲8▼グリセリン(0.1%) ブリーチ毛を洗髪乾燥後、未照射サンプル群と照射サンプルの2つに分けた。照射サンプルのほうは、上記8水準の試料に毛髪サンプルを15分間浸漬し、引き上げ乾燥させた。乾燥後のサンプルに上記条件で人工太陽照明照射を行った。照射後のサンプルは未照射のサンプルとあわせて洗浄し、本方法で毛髪の損傷評価を行った。得られた平均輝度を、以下の式1と2を用いてヘアサンダメージ抑制効果を算出した。 便宜上、ヘアサンダメージ防御効果の評価基準は以下のように設定した。 A:80%以上 B:50〜80%未満 C:20〜50%未満 D:20%未満 以下に調査した薬剤の効果を示す。 紅茶エキス:B,ラベンダー抽出液:B,ブドウ種子エキス:A,トコフェロール:A,酢酸トコフェロール:A,チオタウリン:A,グリセリン:D 結果:本方法は抗酸化剤のスクリーニング系にも適している事が判明した。 毛髪のダメージを評価する方法であって、毛髪における酸化タンパク質のカルボニル基を特異的に蛍光標識し、その蛍光を検出することで評価を行うことを特徴とする方法。 前記ダメージが毛髪のパーマ処理、ブリーチ処理、酸化染毛剤処理、コーミング、熱処理、紫外線に対する暴露、プールでの次亜塩素酸に対する暴露のいずれか又はそれらの複数の組合せに起因する、請求項1記載の方法。 前記酸化タンパク質のカルボニル基の特異的な蛍光標識が、前記酸化タンパク質にヒドラジノ基含有蛍光物質を作用・結合させることにより実施する、請求項1又は2記載の方法。 前記ヒドラジノ基含有蛍光物質がフルオレセイン−5−チオセミカルバジド及びダンシルヒドラジンから成る群から選ばれる、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。 前記評価が蛍光顕微鏡下で行われる、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。 前記ヒドラジノ基含有蛍光物質がダンシルヒドラジンであり、前記蛍光の検出が目視で行われる、請求項3記載の方法。 毛髪のダメージを評価する方法に利用するためのキットであって、酸化タンパク質のカルボニル基を特異的に蛍光標識するための蛍光物質を含んで成ることを特徴とするキット。 前記蛍光物質がヒドラジノ基含有蛍光物質である、請求項7記載のキット 前記ヒドラジノ基含有蛍光物質がフルオレセイン−5−チオセミカルバジド及びダンシルヒドラジンから成る群から選ばれる、請求項7又は8記載のキット