タイトル: | 特許公報(B2)_常温溶融塩及び電気化学デバイス |
出願番号: | 2005513940 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | C07C 219/16,C07C 311/48,C07D 307/33,C07D 317/38,H01M 10/05,H01B 1/06,H01G 9/038,C07C 225/06,C07D 295/08 |
松本 一 JP 4478790 特許公報(B2) 20100326 2005513940 20040908 常温溶融塩及び電気化学デバイス 独立行政法人産業技術総合研究所 301021533 松本 一 JP 2003316471 20030909 20100609 C07C 219/16 20060101AFI20100520BHJP C07C 311/48 20060101ALI20100520BHJP C07D 307/33 20060101ALI20100520BHJP C07D 317/38 20060101ALI20100520BHJP H01M 10/05 20100101ALI20100520BHJP H01B 1/06 20060101ALI20100520BHJP H01G 9/038 20060101ALI20100520BHJP C07C 225/06 20060101ALN20100520BHJP C07D 295/08 20060101ALN20100520BHJP JPC07C219/16C07C311/48C07D307/32 PC07D317/38H01M10/40 AH01B1/06 ZH01G9/00 301DC07C225/06C07D295/08 Z C07C 219/16 C07C 311/48 C07D 307/33 C07D 317/38 H01B 1/06 H01G 9/038 H01M 10/05 C07C 225/06 C07D 295/08 CA/REGISTRY(STN) 国際公開第02/076924(WO,A1) 特開2002−190323(JP,A) 特開2001−357896(JP,A) 特開2003−201272(JP,A) 特開2002−075443(JP,A) 特開2001−035253(JP,A) 国際公開第2005/003108(WO,A1) 国際公開第2004/072015(WO,A1) 特開2004−262897(JP,A) 特開2004−262896(JP,A) 特開2004−247176(JP,A) 特開2004−146346(JP,A) 特開2004−111294(JP,A) 特開2002−208433(JP,A) 4 JP2004013393 20040908 WO2005027157 20050324 12 20051213 本堂 裕司 本発明は、常温容融塩(イオン性液体)及び該常温溶融塩を含む電気化学デバイスに関する。 有機溶媒は化学合成の媒体として、また高エネルギー密度の電気化学デバイス(リチウム電池等)の電解質溶媒として用いられる。有機溶媒の多くは揮発性であり、また沸点が高く揮発性の少ないものであっても引火性や発火性を示すため安全性に留意する必要があった。 また、本発明者の近年の研究により、リチウム電池にイオン性液体を適用し、安全なリチウム電池を構築する試みが行われ、ハードルの高いリチウム金属負極の利用に対する可能性が拓かれている(特許第2981945号;特開2003−331918;S.Sakaebe,H.Matsumoto,Electrochemical Communication,巻5,509頁(2003年))。 しかしながら、現状では炭素負極等の利用が現実的であり、炭素負極を用いたリチウム電池へのイオン性液体の適用について検討されはじめているが、イオン性液体のみを電解液に用いた場合に、良好な充放電にまでは至っていない。炭素電極を用いたリチウム電池には上記化合物例のなかのラクトンやカーボネート等の溶媒が必ず用いられている。それはこれらの溶媒が炭素負極上で極少量分解され、溶媒の分解を抑制する皮膜を形成するためであるといわれている。イオン性液体にも有機溶媒を添加する試みが知られているが、揮発性、引火性の有機溶媒を加えることは、イオン性液体の特徴である難揮発性、難燃焼性を損なうことになり、また加える量によっては従来の電解質との差がなくなってしまう。 本発明は、難燃性の溶媒として安全性の高い常温溶融塩を提供することを目的とする。 図1〜4:種々の溶媒及び本発明によって合成された新規イオン性液体の熱重量変化(昇温速度:10℃/分)(有機溶媒:GBL:γ−ブチロラクトン,PC:プロピレンカーボネート、ECETMA−Cl:ECETMA−TFSIは実施例2で得られた常温溶融塩である。TMOTFA−Cl:TMOTFA−TFSIは実施例4で得られた常温溶融塩である。TMODA−Cl:TMODA−TFSIは実施例5で得られた常温溶融塩である。) 図5〜図6:充放電特性を示す。縦軸は電圧(Voltage)であり、横軸は比容量(Specific capacity)である。 本発明は、以下の常温溶融塩及び電気化学デバイスを提供するものである。項1.揮発性有機溶媒にカチオン性基を導入したカチオン成分と、無機イオン、スルホンイミドイオン、カルボン酸イオン、1価又は多価スルホン酸イオン、(置換基を有することのあるアルキル、シクロアルキルまたはアリール)4B−、(R1SO2)3C−{R1は置換基を有することのあるアルキル基、置換基を有することのあるハロゲン化アルキル基、置換基を有することのあるアリール基}、Rf−BF3−(式中、RfはCnF2n+1、nは1〜4の整数を示す)からなる群から選ばれるアニオン成分を有する常温溶融塩。項2.項1に記載の常温溶融塩を含む電気化学デバイス。項3.リチウム二次電池、電気二重層キャパシター、太陽電池またはエレクトロクロミックデバイスである項2に記載の電気化学デバイス。 本発明の常温溶融塩は、難燃性及び不揮発性を有することから、安全性の高い電気化学デバイスを作製することが可能である。 本発明の常温溶融塩の融点は、通常100℃以下、好ましくは80℃以下、より好ましくは60℃以下、さらに好ましくは40℃以下、特に25℃以下である。例えば燃料電池に使用する場合には100℃以下の常温溶融塩を広く使用することができる。一方、太陽電池やエレクトロクロミックデバイス、リチウム電池および電気二重層キャパシターでは常温溶融塩の融点は室温(25℃)以下が好ましく、より好ましくは0℃以下、特に−20℃以下であるのがさらに好ましい。 本発明の常温溶融塩のカチオン成分は、揮発性有機溶媒にカチオン性基を導入したものである。(1)カチオン性基 カチオン性基としては、アンモニウム基、スルホニウム基、ホスホニウム等のオニウムカチオンが例示され、好ましくはアンモニウム基である。カチオン性基は1つの有機溶媒化合物に1個または2個以上、好ましくは1個または2個導入することができる。 本発明の好ましい実施形態において、好ましい有機溶媒化合物としては、酸素原子を1または2以上含む有機溶媒(例えばエーテル、アルコール、エステル、カーボネート、グリコール、グリコールモノエーテルなど)が挙げられる。また、4級アンモニウム基は、酸素原子に結合した炭素原子に導入されるのが好ましい。 このようなカチオン性基は有機溶媒に必要に応じてアルキレン基を介して有機溶媒に導入される。有機溶媒としては、常圧での沸点が−100℃〜300℃、好ましくは30℃〜300℃であって、常温で固体または液体の化合物が例示され、具体的には以下の化合物が例示される:・エーテル類:ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジイソプロピルエーテル、ジフェニルエーテル、アニソール、フェネトール、グアイアコールなど;・アルキレングリコール類:エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールなど;・アルキレングリコールモノアルキルエーテル類:エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ブチレングリコールモノメチルエーテル、ブチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなど;・アルキレングリコールジアルキルエーテル類:エチレングリコールジメチルエーテル(DME)、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ブチレングリコールジメチルエーテル、ブチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルなど;・エステル類:酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸ブチル、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチルなど;・ラクトン類:γブチロラクトン(GBL)など・ケトン類:アセトン(ATN)、アセチルアセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノンなど;・ヘテロ芳香族炭化水素:ピリジンなど・脂環式炭化水素:シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなど:・ヘテロ脂環式化合物:ジオキサン、モルホリン、ピロリジンなど;・スルフィド類:ジメチルスルフィド、ジエチルスルフィド、ジ−n−プロピルスルフィド、ジイソプロピルスルフィドなど;・炭酸エステル類:エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネートなど;・アルコール類;エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノールなど; このような有機溶媒にカチオン性基を導入する方法としては、以下の方法が挙げられる。(式中、Organic Solventは、上記の有機溶媒を示し、Raはアルキル基を示す。ZはNR1R2、PR1R2、またはSR1を示す。Nは窒素原子、Pはリン原子、Sは硫黄原子を各々表す。R1,R2は同一又は異なっていてもよく、アルキル基、ハロアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ポリエーテル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアラルキル基またはアルコキシアルキル基を示し、ZがNR1R2の場合、R1及びR2は窒素原子と一緒になって5〜8員環の置換されていてもよい含窒素複素環基を形成してもよい。Xは脱離基を示す。) R1,Raで表されるアルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、エイコシルなどの炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜6,より好ましくは炭素数1〜3の直鎖又は分枝を有するアルキル基が挙げられる。 ハロアルキル基としては、上記アルキル基の水素原子の少なくとも1つがハロゲン原子(塩素、臭素、フッ素、ヨウ素)、特にフッ素原子で置換された炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜6,より好ましくは炭素数1〜3の直鎖又は分枝を有するハロアルキル基が挙げられる。 アルコキシ基としては(O−上記アルキル)構造を有する炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜6,より好ましくは炭素数1〜3の直鎖又は分枝を有するアルコキシ基が挙げられる。 アルキルチオ基としては、(S−上記アルキル)構造を有する炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜6,より好ましくは炭素数1〜3の直鎖又は分枝を有するアルキルチオ基が挙げられる。 アリール基としては、フェニル基、トルイル基、キシリル基、エチルフェニル基、1,3,5−トリメチルフェニル基などの炭素数6〜10のアリール基が挙げられる。 アラルキル基としては、ベンジル、フェネチル、ナフチルメチルなどの炭素数7〜15のアラルキル基が挙げられる。 アルコキシアルキル基のアルコキシ基及びアルキル基は前記と同様であり、直鎖又は分枝を有する炭素数1〜20アルコキシ基で置換された直鎖又は分枝を有する炭素数1〜20のアルキル基が挙げられ、特にメトキシメチル基(CH2OCH3)、メトキシエチル基(CH2CH2OCH3)、エトキシメチル基(CH2OCH2CH3)、エトキシエチル基(CH2CH2OCH2CH3)が例示される。 ポリエーテル基としては、−(CH2)n1−O−(CH2CH2O)n2−(C1−C4アルキル)、または、−(CH2)n1−O−(CH2CH(CH3)n2−(C1−C4アルキル)で表される基が挙げられ、n1は1〜4の整数、n2は1〜4の整数、C1−C4アルキルとしては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチルが例示される。 また、R1とR2は、これらが結合している窒素原子と一緒になって、5〜8員環、好ましくは5員環または6員環の含窒素複素環基(ピロリジニウム、ピペリジニウム、ピロリニウム、ピリジニウム等)を形成してもよい。 前記アルキル基の任意の位置のC−C単結合の間に−O−、−COO−、−CO−、を1個または複数個介在させて、エーテル、エステルまたはケトン構造としてもよい。 アリール基、アラルキル基の置換基としては、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、水酸基、メトキシ基、ニトロ基、アセチル基、アセチルアミノ基などが挙げられる。 Xは脱離基を表し、具体的には、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、メタンスルホニル基、p−トルエンスルホニル基などが挙げられる。 好ましい1つの実施形態において、本発明は、低沸点、高揮発性の溶媒に4級アンモニウム基を導入して、常温溶融塩に導く。4級アンモニウム化は、上記のように、脱離基と第三級アミンを反応させて行っても良く、アミノ基を含む溶媒のアミノ基を四級化してもよい。(2)アニオン成分 本発明の常温溶融塩のアニオン成分としては、以下に例示されるアニオンが使用可能である:・無機イオン:Cl−,Br−,F−,I−、SCN−、ClO4−、BF4−、BCl4−、BBr4−、PF6−、Al3Cl8−,Al2Cl7−,AlCl4−、AsF6−など;・スルホンイミドイオン{(RSO2)2N−、Rは置換基を有することのあるアルキル基、置換基を有することのあるハロゲン化アルキル基、置換基を有することのあるアリール基}、・1価又は多価カルボン酸イオン;例えば酢酸イオン、ギ酸イオン、プロピオン酸イオン、酪酸イオン、吉草酸イオン、イソ吉草酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、ジフルオロ酢酸イオン、モノフルオロ酢酸イオン、トリクロロ酢酸イオン、ジクロロ酢酸イオン、モノクロロ酢酸イオン、乳酸イオン、グリコール酸イオン、リンゴ酸イオン、・1価又は多価スルホン酸イオン(Rb−SO3−;−O3S−Rc−SO3−;Rbは置換されていてもよいアルキル基または置換されていてもよいアリール基、Rcは置換されていてもよいアルキレン基または置換されていてもよいアリーレン基、アリール基またはアルキル基は、水酸基、シアノ基、メトキシ基、エトキシ基、メチレンジオキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子で置換されていてもよい);例えばベンゼンスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオン、CnX12n+1−SO3−(X1は同一または異なってH,FまたはCl、n=1〜6)、CnX12n−(SO3−)2(X1は同一または異なってH,FまたはCl、n=1〜6)が例示される;・(置換基を有することのあるアルキル、シクロアルキルまたはアリール)4B−;例えば(Ph)4B−,(Et)3(シクロヘキシル)B−など、・(RbSO2)3C−{Rbは前記に定義される通りである}:例えば(CF3SO2)3C−など。・Rf−BF3−(式中、RfはCnF2n+1、nは1〜4の整数を示す)、例えばCF3BF3、C2F5BF3、C3F7BF3、C4F9BF3等が挙げられ、CnF2n+1は直鎖であっても分岐を有していてもよい。 これらのアニオン成分は公知であるか、公知の製法により容易に製造することができる。 本発明の常温溶融塩は、上記のカチオン成分とアニオン成分を混合することにより容易に製造することができる。 上記のカチオン成分及びアニオン成分は、各々単一成分であってもよいが、2種以上の成分を組み合わせて使用しても良く、その配合比率は任意である。 常温溶融塩を得るための塩交換反応は、所望の溶融塩が抽出可能である場合には、溶媒抽出法により行うことができ、或いは、アニオン交換樹脂を通してカチオン成分のカウンターアニオンをOH−に変換した後、H−(アニオン成分)溶液を当量添加することにより得ることができる。 本発明の常温溶融塩は、リチウム二次電池、電気二重層キャパシター、燃料電池、太陽電池等の電気化学デバイス、化学反応の溶剤として適している。 例えば、本発明の常温溶融塩を、リチウム二次電池に用いる活性の高い炭素負極やリチウム負極に対して電気化学的に不安定な常温溶融塩(例えば、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート等)に添加することにより、負極上への不動態皮膜形成により見掛け上電気化学安定性を大幅に向上させることができる。しかも添加剤となるものも常温溶融塩であるため、全体としての電解液の耐熱性が保たれる。 以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれら実施例には限定されない。実施例1 ジメトキシエタン(DME)のイオン性液体化:1−(2−メトキシ−エトキシエチル)−1−メチル−ピペリジニウム−ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(MEEMP−TFSI)の合成 1−ブロモエトキシ−2−メトキシエタン50gをアセトン300mLに溶解し1Lのフラスコにいれ,等モル量のメチルピペリジン(MP)アセトン溶液を氷浴で冷却しながら滴下混合し,室温下で撹拌。18h後,アセトン及び水をエバポレータにて留去することにより白色粉末1−(2−メトキシ−エトキシエチル)−1−メチル−ピペリジニウム臭化物(MEEMP−Br)を得る(収率90%)。アセトン/エタノール混合溶媒にて再結晶を行い精製したものとLi−TFSI(リチウムビス(トリフルオロメシルスルホニルイミド))を超高純度水(以下milli−Q水と略す)水中で等モル量混合すると,水に不溶の目的生成物(MEEMP−TFSI)が分離析するのでこれをジクロロメタンで抽出する。抽出したジクロロメタン溶液に当体積のmilli−Q水を加え再度撹拌の後,ジクロロメタン相を分液ロートにて分取し、ロータリーエバポレータにてジクロロメタンを留去し,最終的に70℃に加熱して真空乾燥を行って目的物(MEEMP−TFSI)を得た(収率70%)。LiTFSIのかわりにLiPF6を用いることにより室温で溶融するMEEMP−PF6を得る事ができる。MEEMP−TFSIの密度(25℃):1.40g/mLMEEMP−TFSIのNMRによる分析値は以下の通りである。1H−NMR[ppm](d−acetone,δ1.73(m),δ2.01(m),δ3.31(s),δ3.33(s),δ3.52(m),δ3.57(m),3.64(m),δ3.79,(m),δ4.06(s))13C−NMR[ppm](d−acetone,δ20.6,δ21.6,δ49.8,δ58.7,δ62.8,δ63.4,δ64.9,δ70.8,δ72.2δ116.1,δ119.3,δ122.5,δ125.6ppm)実施例2 ジエチルカーボネート(DEC)のイオン性液体化:(1−エトキシカルボニロキシエチル)トリメチルアンモニウム−ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(ECETMA−TFSI)の合成 実施例1の1−ブロモエトキシ−2−メトキシエタンのかわりに1−クロロエチルカーボネートを使用する以外は同じ手順で標記化合物を得た。収率77%ECETMA−TFSIのNMRによる分析値は以下の通りである。1H−NMR[ppm](d−methanol,δ1.34(t),δ1.71(d),δ3.18(s),δ4.31(q),5.94(q))13C−NMR[ppm](d−methanol,δ14.3,δ14.7,δ49.6,δ67.1,δ93.3,δ116.3,δ119.5,δ122.67,δ125.8,δ153.3)実施例3 アセトンのイオン性液体化:トリメチル(2−オキソプロピル)−アンモニウム−ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(TMOPA−TFSI)の合成 実施例1の1−ブロモエトキシ−2−メトキシエタンのかわりにブロモアセトンを使用する以外は同じ手順で標記化合物を得た。収率30% TMOPA−TFSIのNMRによる分析値は以下の通りである。1H−NMR[ppm](d−acetone,δ2.26(s),δ3.47(s),δ4.76(s))13C−NMR[ppm](d−acetone,δ28.4,δ54.5,δ70.4,δ116.0,δ119.2,δ122.4,δ125.6,δ200.0)実施例4 γ−ブチロラクトンのイオン性液体化:トリメチル(2−オキソ−テトラヒドロフラン−3−イル)アンモニウム−アンモニウム−ビス(トリフルオロメチルスルホニル)のイミド(TMOTFA−TFSI)の合成 原料となる臭化物の合成までは実施例1の1−ブロモエトキシ−2−メトキシエタンのかわりにブロモγブチロラクトンを使用する以外は同じ手順で合成(収率80%)。再結晶溶媒は実施例1のアセトン/エタノールのかわりにエタノール/酢酸エチルを使用。生成物(TMOTFA−TFSI)が水に溶解するためTFSIへのアニオン交換は水中ではなく,メタノール中で行い,メタノールをエバポレータで留去後,ジクロロメタンで抽出(収率30%)。 TMOTFA−TFSIのNMRによる分析値は以下の通りである。1H−NMR[ppm](d−acetone)δ3.01(m),δ3.55(s),δ4.43(m),δ4.63(m),δ5.07(m))13C−NMR[ppm](d−acetone)δ25.4,δ52.9,δ58.4,δ65.8,δ116.3,δ119.5,δ122.6,δ125.8,δ170.0)実施例5 エチレンカーボネート(EC)のイオン性液体化:トリメチル(2−オキソ−[1,3]−ジオキソラン−4−イル)アンモニウム−ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(TMODA−TFSI)の合成 原料となる塩化物の合成までは実施例1の1−ブロモエトキシ−2−メトキシエタンのかわりに塩化エチレンカーボネートを使用する以外は同じ手順で合成した(収率70%)。生成物は水と反応して分解するため、TFSIアニオンへの交換反応はアセトニトリル溶媒で行い、分離する副生成物(LiCl)を除去し、ジクロロメタンで抽出した(収率45%)TMODA−TFSIのNMRによる分析値は以下の通りである。1H−NMR[ppm](d−acetone,δ3.21(s),δ4.88(m),δ5.12(m),δ5.90(m))13C−NMR[ppm](d−acetone,δ45.5,δ65.8,δ94.0,δ116.3,δ119.5,δ122.7,δ125.9,δ152.5) 原料の溶媒としてプロピレンカーボネート(PC)を使用し、常法に従いメチル基に塩素原子を導入し、さらにトリエチルアミンを反応させ、さらにアニオン交換を行うことにより、以下のプロピレンカーボネート(PC)のイオン性液体を得ることができる。試験例1 γ−ブチロラクトン(GBL)、プロピレンカーボネート(PC),実施例3で得られたECETMA−Cl(カウンターアニオンがClである実施例2の常温溶融塩の製造中間体)及びECETMA−TFSI(実施例2で得られた常温溶融塩)を加熱し、重量変化を調べることで、耐熱性を評価した。 結果を図1に示す。 図1は、物質に熱をかけた場合の重量変化をあらわしたものであり,耐熱性の指針となる。GBLやPCなどの電池電解液として用いられる有機溶媒は沸点が200℃以上であるが,揮発性があるために,100℃より前から揮発して重量が減少している。DECもGBLやPCのような有機溶媒である。DECを塩に変換したものECETMA−Clは常温で固体の塩であるが,150℃付近まで安定であること,さらに対アニオンをClからTFSIにアニオン交換したもの(ECETMA−TFSI,室温で液体)ではさらに耐熱性が向上していることが、図1から明らかである。本発明の常温溶融塩を電池電解液として用いた場合,安全性が向上することが、図1の結果から明らかにされた。試験例2 リチウム電池で良く使われる溶媒分子は揮発性が高く、発火性を有する(DEC:ジエチルカーボネート,GBL:γ−ブチロラクトン,EC:エチレンカーボネート)。先ず、これらの溶媒を加熱し、重量変化を調べることで、耐熱性を評価した。結果を図2に示す。 次に、上記の3つの溶媒分子にトリメチルアンモニウム基を修飾してカチオン化し、且つ、アニオンをハロゲンとすると固体の塩となり、200℃でも揮発しない。該固体の塩についての熱分析測定結果を図3に示す。 さらに、アニオンをハロゲンからTFSIに交換するとさらに耐熱性が向上する。対応するTFSI塩の熱分析測定結果を図4に示す。なお、該TFSI塩は、室温でも溶融するイオン性液体を形成する。試険例3 以下の条件で、リチウム電池を作製し、充放電特性を調べた。結果を図5及び図6に示す。充電・放電レート0.1C(300mAh/gを理論値として)充電はCCCVモード5mV,10時間放電は1.2Vカットオフ電極:95wt%MCMB2800+5wt%PVdF、集電体は銅箔、対極はLi箔を用いた2極セル(ラミネート)電解質組成:EMI−TFSI+LiTFSI(10wt%,およそ0.4M) EMI−TFSI+ECETMA−TFSI(体積比5:1)+10wt%LiTFSI EMI−TFSIは電気化学安定性がアンモニウム系よりも劣っているが、粘性が比較的低いという長所がある。電気化学安定性が悪い点は、炭素を負極に用いた場合に如実に現れる。すなわち、図5において、充電時(点線)に500mAh/gもの大きな容量を示すが、これはEMIカチオンの不可逆的な還元反応が起こっていること、あるいは炭素負極へのEMIカチオンの挿入反応が起こっていること、その両方が起きていることを示唆する。また、放電時(実線)にはまったく容量が無く、EMI−TFSIのような電気化学安定性に劣る系は、全く炭素負極を用いる事が不可能である。 ところが、今回開発した溶媒構造を有するイオン性液体(ECETMA−TFSI)を少量添加することにより、図6に示すように、EMI−TFSIにおいても良好な充放電特性を示しうることがわかった。これはECETMA−TFSIの分解により炭素負極上にいわゆるSEI皮膜を形成し、EMIの分解や炭素材料への挿入を抑制したためである。このような効果は従来、DECやGBL,ECのようなカルボニル構造を有する有機溶媒で知られていた。GBL,ECのような有機溶媒は、耐熱性や引火性に問題があるが今回合成した有機溶媒構造を有するイオン性液体では、難粘性でありかつ耐熱性が大幅に向上し、安全性に大きく寄与するものである。 電気化学安定性に優れるアンモニウム系イオン液体においても同様の効果が期待される。 下記の化学式(1)で表される常温溶融塩(式中、Rはγ-ブチロラクトンまたは下記の化学式(2)で表される炭酸エステルである。TFSI−はビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドを表す。)(式中、R1、R2はメチル、エチルまたはR1とR2が一緒になって、炭素数2〜4の2価の炭化水素基を示す。) Rが、γブチロラクトン、ジエチルカーボネートまたはエチレンカーボネートである、請求項1に記載の常温溶融塩。 請求項2に記載の常温溶融塩を含む電気化学デバイス リチウム二次電池、電気二重層キャパシター、太陽電池またはエレクトロミックデバイスである請求項3に記載の電気化学デバイス。